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特開2022-181170ガラス基板多層構造体、その製造方法、およびそれを含むフレキシブルディスプレイパネル
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  • 特開-ガラス基板多層構造体、その製造方法、およびそれを含むフレキシブルディスプレイパネル 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022181170
(43)【公開日】2022-12-07
(54)【発明の名称】ガラス基板多層構造体、その製造方法、およびそれを含むフレキシブルディスプレイパネル
(51)【国際特許分類】
   B32B 17/10 20060101AFI20221130BHJP
   C09D 4/02 20060101ALI20221130BHJP
   C09D 179/08 20060101ALI20221130BHJP
   G02B 1/14 20150101ALI20221130BHJP
   B32B 27/34 20060101ALI20221130BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20221130BHJP
【FI】
B32B17/10
C09D4/02
C09D179/08 Z
G02B1/14
B32B27/34
B32B27/30 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022058158
(22)【出願日】2022-03-31
(31)【優先権主張番号】10-2021-0066650
(32)【優先日】2021-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】308007044
【氏名又は名称】エスケー イノベーション カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SK INNOVATION CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】26, Jong-ro, Jongno-gu, Seoul 110-728 Republic of Korea
(71)【出願人】
【識別番号】519214271
【氏名又は名称】エスケー アイイー テクノロジー カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SK IE TECHNOLOGY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】26, Jong-ro, Jongno-gu, Seoul 03188 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】ユン チョル ミン
【テーマコード(参考)】
2K009
4F100
4J038
【Fターム(参考)】
2K009AA15
2K009BB02
2K009CC24
2K009DD02
2K009DD05
4F100AG00A
4F100AK25B
4F100AK49B
4F100AL05A
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100BA10C
4F100EH46B
4F100EH46C
4F100EJ08B
4F100GB41
4F100JK10
4F100JK10B
4F100JK12
4F100JK12C
4F100JK17A
4F100JN01
4F100JN18
4J038DJ021
4J038FA071
4J038FA261
4J038FA281
4J038HA446
4J038KA03
4J038NA11
4J038PA17
4J038PA19
4J038PB08
4J038PC03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】表面硬度が低下する現象が改善され、耐衝撃性が顕著に向上し、ガラス基板が破損する際の飛散現象が改善され、ユーザの安全を確保することができ、優れた光学特性を有するガラス基板多層構造体、その製造方法、およびそれを含むフレキシブルディスプレイパネルを提供する。
【解決手段】フレキシブルガラス基板10と、前記フレキシブルガラス基板の一面に形成される飛散防止層20と、を含むガラス基板多層構造体100であって、前記飛散防止層は、(メタ)アクリル系架橋重合体およびポリイミド重合体を含む、ガラス基板多層構造体である。好ましくは、前記フレキシブルガラス基板の他面に形成されるハードコーティング層30をさらに含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレキシブルガラス基板と、
前記フレキシブルガラス基板の一面に形成される飛散防止層と、を含むガラス基板多層構造体であって、
前記飛散防止層は、(メタ)アクリル系架橋重合体およびポリイミド重合体を含む、ガラス基板多層構造体。
【請求項2】
前記ガラス基板多層構造体は、前記フレキシブルガラス基板の他面に形成されるハードコーティング層をさらに含む、請求項1に記載のガラス基板多層構造体。
【請求項3】
前記(メタ)アクリル系架橋重合体は、アルキレン基、エーテル基、ウレタン基、エステル基、またはこれらの組み合わせを含む、請求項1または2に記載のガラス基板多層構造体。
【請求項4】
前記(メタ)アクリル系架橋重合体は、3~6個の(メタ)アクリル基を有する(メタ)アクリル系化合物から誘導された構造単位を含む、請求項1から3の何れか一項に記載のガラス基板多層構造体。
【請求項5】
前記(メタ)アクリル系化合物は、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、1,2,4-シクロヘキサントリ(メタ)アクリレート、ペンタグリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、多官能性ウレタン(メタ)アクリレート、多官能性ポリエステル(メタ)アクリレート、またはこれらの組み合わせを含む、請求項1から4の何れか一項に記載のガラス基板多層構造体。
【請求項6】
前記ポリイミド重合体は、フッ素原子を含む芳香族ジアミンから誘導された単位および芳香族二無水物から誘導された単位を含む、請求項1から5の何れか一項に記載のガラス基板多層構造体。
【請求項7】
前記ハードコーティング層は、(メタ)アクリル系ハードコーティング層を含む、請求項2から6の何れか一項に記載のガラス基板多層構造体。
【請求項8】
前記フレキシブルガラス基板は、厚さが1~100μmである、請求項1から7の何れか一項に記載のガラス基板多層構造体。
【請求項9】
前記飛散防止層は、厚さが1~20μmである、請求項1から8の何れか一項に記載のガラス基板多層構造体。
【請求項10】
前記ハードコーティング層は、厚さが1~15μmである、請求項2から9の何れか一項に記載のガラス基板多層構造体。
【請求項11】
前記ガラス基板多層構造体は、ASTM D3363に準じた鉛筆硬度が4H~9Hである、請求項1から10の何れか一項に記載のガラス基板多層構造体。
【請求項12】
前記ガラス基板多層構造体は、ペンドロップ試験(PEN DROP TEST)による耐衝撃性が10cm以上である、請求項1から11の何れか一項に記載のガラス基板多層構造体。
【請求項13】
フレキシブルガラス基板の一面にポリイミド前駆体および(メタ)アクリル系化合物を含む飛散防止組成物を塗布するステップと、
前記ポリイミド前駆体および(メタ)アクリル系化合物を含む組成物を硬化させて飛散防止層を形成するステップと、
を含む、ガラス基板多層構造体の製造方法。
【請求項14】
前記ガラス基板多層構造体の製造方法は、前記フレキシブルガラス基板の他面にハードコーティング組成物を塗布するステップと、
前記ハードコーティング組成物を硬化させてハードコーティング層を形成するステップと、をさらに含む、請求項13に記載のガラス基板多層構造体の製造方法。
【請求項15】
前記(メタ)アクリル系化合物は、アルキレン基、エーテル基、ウレタン基、エステル基、またはこれらの組み合わせをさらに含む、請求項13または14に記載のガラス基板多層構造体の製造方法。
【請求項16】
前記(メタ)アクリル系化合物は、3~6個の(メタ)アクリル基を含む、 請求項13から15の何れか一項に記載のガラス基板多層構造体の製造方法。
【請求項17】
前記(メタ)アクリル系化合物は、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、1,2,4-シクロヘキサントリ(メタ)アクリレート、ペンタグリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、多官能性ウレタン(メタ)アクリレート、多官能性ポリエステル(メタ)アクリレート、またはこれらの組み合わせを含む、請求項13から16の何れか一項に記載のガラス基板多層構造体の製造方法。
【請求項18】
前記ポリイミド前駆体は、フッ素原子を含む芳香族ジアミンから誘導された単位および芳香族二無水物から誘導された単位を含む、請求項13から17の何れか一項に記載のガラス基板多層構造体の製造方法。
【請求項19】
ハードコーティング組成物は、(メタ)アクリル系化合物を含む、請求項14から18の何れか一項に記載のガラス基板多層構造体の製造方法。
【請求項20】
請求項1から12の何れか一項に記載のガラス基板多層構造体を含む、フレキシブルディスプレイパネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ガラス基板多層構造体、その製造方法、およびそれを含むフレキシブルディスプレイパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォン、タブレットPCのようなモバイル機器の発展とともにディスプレイ装置の薄膜化が求められており、中でも、ユーザが望む際に曲げたり折り畳んだりできるフレキシブルディスプレイ装置、または製造工程において曲げたり折り畳んだりするステップを備えるフレキシブルディスプレイ装置が注目されている。
【0003】
かかるディスプレイ装置は、ディスプレイ画面を覆う透明なウィンドウを含むことができ、ウィンドウは、外部衝撃と使用中に加えられるスクラッチなどからディスプレイ装置を保護するよう機能する。
【0004】
ディスプレイ用ウィンドウとしては、機械的特性に優れた素材であるガラスまたは強化ガラスが一般的に用いられているが、従来のガラスは、柔軟性がなく、その重さにより、ディスプレイ装置の高重量化の原因になるという問題がある。
【0005】
上記のような問題を解決するために、フレキシブルガラス基板を薄膜化する技術が開発されているが、依然として曲げたり撓ませたりできるフレキシブル特性を実現することが充分ではなく、また、依然として外部衝撃に対して容易に破損するという問題を解決できていない。
【0006】
特にフレキシブルディスプレイ装置の場合、外部衝撃または曲がったり折り畳まれたりする過程でガラス基板ウィンドウが容易に割れ、その破片が飛散してユーザが負傷を受けるという問題があり、これを解決するために、フレキシブルガラス薄膜上に柔軟な構造に設計される飛散防止層を形成して問題を解決しようとする努力があった。
【0007】
しかしながら、前記飛散防止層を形成する場合、加圧によりガラス基板自体またはガラス基板上の表面硬度層に跡が発生することがあり、表面硬度が低下する問題が発生するなど、ガラス基板多層構造体自体の物性が低下するという問題が発生し得る。
【0008】
そこで、軟質樹脂を含む飛散防止層を形成するにも、前記表面硬度が低下する現象や、加圧時またはペンドロップ時に跡が発生する問題を画期的に改善した新しいガラス基板多層構造体を提供する必要がある。また、耐衝撃性が顕著に向上し、ガラス基板が破損する際の飛散現象が改善され、ユーザの安全を確保することができ、光学特性にも優れた新しいガラス基板積層体(Glass Substrates Laminate)の開発が必要な状態である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】大韓民国公開特許第10-2020-0078142号(2020.07.01)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
一実施形態は、表面硬度が低下したり、加圧時またはペンドロップ(PEN DROP)試験の実行時に跡が発生することがないガラス基板多層構造体を提供しようとする。
【0011】
一実施形態は、薄膜のガラス基板を基材として用いる場合、ガラス基板の一面に形成される飛散防止層、およびその反対面である他面に形成されるハードコーティング層を含む多層構造を有するとしても、ガラス基板またはハードコーティング層の表面硬度が低下したり圧痕現象が現れたりせず、耐衝撃性が顕著に向上し、ガラス基板が破損する際の飛散現象がさらに改善され、ユーザの安全を確保することができ、また、優れた光学特性を有する、フレキシブルディスプレイ装置に活用可能なガラス基板多層構造体を提供しようとする。
【0012】
また、一実施形態は、ガラス基板の一面に形成される飛散防止層、およびその反対面である他面に形成されるハードコーティング層を含む多層構造を有するとしても、指定された位置(高さ)からペンドロップ試験を進行する際、ガラス基板面またはハードコーティング層面にペンマークが発生しない、優れた表面特性を有するガラス基板多層構造体を提供しようとする。
【0013】
また、一実施形態は、優れた耐久性および耐飛散性を有し、柔軟な特性を有しており、折り畳んだり曲げたりする動作を繰り返しても、ガラスが割れたりクラックが発生することがないため、フレキシブルディスプレイ装置に活用可能なガラス基板多層構造体を提供しようとする。
【0014】
また、一実施形態は、黄色度(YI)、光透過率、および厚さ方向位相差(Rth)などの光学特性に優れており、視認性および透明性が顕著に向上するため、フレキシブルディスプレイ装置に活用可能なガラス基板多層構造体を提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の目的を達成するために、一態様は、フレキシブルガラス基板多層構造体において、飛散防止層として(メタ)アクリル系架橋重合体(または、多官能性(メタ)アクリル系架橋重合体を含むポリイミド層を採択することができる。
【0016】
一態様は、フレキシブルガラス基板、および前記フレキシブルガラス基板の一面に形成される飛散防止層を含むガラス基板多層構造体であって、前記飛散防止層は、多官能性(メタ)アクリル系架橋重合体およびポリイミド重合体を含むガラス基板多層構造体を提供することができる。
【0017】
一実施形態において、前記ガラス基板多層構造体は、前記フレキシブルガラス基板の他面に形成されるハードコーティング層をさらに含んでもよい。
【0018】
一実施形態において、前記多官能性(メタ)アクリル系架橋重合体は、アルキレン基、エーテル基、ウレタン基、エステル基、またはこれらの組み合わせをさらに含んでもよい。
【0019】
一実施形態において、前記多官能性(メタ)アクリル系架橋重合体は、3~6個の(メタ)アクリル基を有する多官能性(メタ)アクリル系化合物から誘導された構造単位を含んでもよい。
【0020】
一実施形態において、前記多官能性(メタ)アクリル系化合物は、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、1,2,4-シクロヘキサントリ(メタ)アクリレート、ペンタグリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、多官能性ウレタン(メタ)アクリレート、多官能性ポリエステル(メタ)アクリレート、またはこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0021】
一実施形態において、前記ポリイミド重合体は、フッ素原子を含む芳香族ジアミンから誘導された単位および芳香族二無水物から誘導された単位を含んでもよい。
【0022】
一実施形態において、前記ハードコーティング層は、(メタ)アクリル系ハードコーティング層を含んでもよい。
一実施形態において、前記フレキシブルガラス基板は、厚さが1~100μmであってもよい。
【0023】
一実施形態において、前記飛散防止層は、厚さが1~20μmであってもよい。
一実施形態において、前記ハードコーティング層は、厚さが1~15μmであってもよい。
【0024】
一実施形態において、前記ガラス基板多層構造体は、ASTM D3363に準じた鉛筆硬度が4H以上であってもよく、具体的には、4H~9Hであってもよい。
【0025】
一実施形態において、前記ガラス基板多層構造体は、ペンドロップ試験(PEN DROP TEST)による耐衝撃性が10cm以上であってもよい。
【0026】
他の一態様は、フレキシブルガラス基板の一面にポリイミド前駆体および多官能性(メタ)アクリル系化合物を含む飛散防止組成物を塗布し硬化させて飛散防止層を形成するステップを含むガラス基板多層構造体の製造方法を提供することができる。
【0027】
一実施形態において、前記ガラス基板多層構造体の製造方法は、前記フレキシブルガラス基板の他面にハードコーティング組成物を塗布し硬化させてハードコーティング層を形成するステップをさらに含んでもよい。
【0028】
一実施形態において、前記多官能性(メタ)アクリル系化合物は、アルキレン基、エーテル基、ウレタン基、エステル基、またはこれらの組み合わせを含んでもよい。
一実施形態において、前記多官能性(メタ)アクリル系化合物は、3~6個の(メタ)アクリル基を有してもよい。
【0029】
一実施形態において、前記多官能性(メタ)アクリル系化合物は、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、1,2,4-シクロヘキサントリ(メタ)アクリレート、ペンタグリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、多官能性ウレタン(メタ)アクリレート、多官能性ポリエステル(メタ)アクリレート、またはこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0030】
一実施形態において、前記ポリイミド前駆体は、フッ素原子を含む芳香族ジアミンから誘導された単位および芳香族二無水物から誘導された単位を含んでもよい。
【0031】
一実施形態において、前記ハードコーティング組成物は、多官能性(メタ)アクリル系化合物を含んでもよい。
【0032】
また他の一態様は、前記ガラス基板多層構造体を含むフレキシブルディスプレイパネルを提供することができる。
【発明の効果】
【0033】
一態様は、軟質樹脂(soft polymer)を含むとしても、表面硬度が低下せず、加圧時またはペンドロップ時に跡が発生しないガラス基板多層構造体を提供することができる。
【0034】
一態様に係るガラス基板多層構造体は、ガラス基板の一面に形成される飛散防止層、およびその反対面である他面に形成されるハードコーティング層を含む多層構造を有するとしても、表面硬度が低下したり圧痕現象が現れたりする問題、ペンドロップ時に跡が発生する問題が画期的に改善され、耐衝撃性が顕著に向上し、ガラス基板が破損する際の飛散現象が改善され、ユーザの安全を確保することができ、優れた光学特性を有することができる。
【0035】
また、一態様に係るガラス基板多層構造体は、ガラス基板の一面に形成される飛散防止層、およびその反対面である他面に形成されるハードコーティング層を含む多層構造を有するとしても、指定された位置(高さ)からペンドロップ試験を進行する際、ガラス基板面またはハードコーティング層面にペンマークが発生しない優れた表面特性を有することができる。
【0036】
また、一態様に係るガラス基板多層構造体は、優れた耐久性および耐飛散性を有し、曲げたり撓ませたりできる柔軟な特性を有しており、折り畳んだり曲げたりする動作を繰り返しても、ガラスが割れたりクラックが発生することがないため、フレキシブルディスプレイ装置に活用可能である。
【0037】
また、一態様に係るガラス基板多層構造体は、黄色度(YI)、光透過率、および厚さ方向位相差(Rth)などの光学特性に優れており、視認性および透明性が顕著に向上するため、フレキシブルディスプレイ装置に活用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】一態様に係るガラス基板多層構造体の断面の一例を概略的に示した分解斜視図である。図1に示したガラス基板多層構造体100は、フレキシブルガラス基板10、飛散防止層20、およびハードコーティング層30を含む。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、一態様に係るガラス基板多層構造体、その製造方法、およびそれを含むフレキシブルディスプレイパネルについて詳細に説明する。
この際、別に定義しない限り、全ての技術的用語および科学的用語は、本発明が属する当業者のうち一人により一般的に理解される意味と同一の意味を有する。本明細書において、説明で用いられる用語は、単に特定の具体例を効果的に記述するためのものであり、本発明を制限することを意図しない。
【0040】
また、明細書において、特に記載していない添加物の単位は、重量部であってもよい。
また、明細書および添付された請求範囲で用いられる単数の形態は、文脈上、特に指示しない限り、複数の形態も含むことを意図する。
【0041】
明細書の全般にわたって、ある部分がある構成要素を「含む」とは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除くものではなく、他の構成要素をさらに含んでもよいことを意味し得る。
【0042】
以下、本明細書において、特に定義しない限り、層、膜、薄膜、領域、板などの部分が他部分の「上方に」または「上に」存在するとする際、これは、他部分の「真上に」存在する場合だけでなく、その間にまた他の部分が存在する場合を含んでもよい。
【0043】
以下、本明細書において、特に定義しない限り、「これらの組み合わせ」とは、構成物の混合または共重合を意味し得る。また、「これらの組み合わせ」とは、その前に定義された要素のうち2以上がともに使用または提供可能であることを意味し得る。
【0044】
以下、本明細書において、特に定義しない限り、「Aおよび/またはB」とは、AおよびBを同時に含む態様を意味し、AおよびBの中から択一された態様を意味し得る。
【0045】
以下、本明細書において、特に定義しない限り、「誘導された」とは、化合物を含む反応から生成された構造または組成物を意味し得る。または、化合物の官能基のうち少なくとも何れか1つが変形されたことを意味し、具体的に、化合物の反応基および/または脱離基が反応により変形または脱離した形態を含んでもよい。また、互いに異なる化合物から誘導された構造が互いに同一であれば、何れか1つの化合物から誘導された構造は、他の何れか1つの化合物から誘導されて同一の構造を有する場合を含んでもよい。
【0046】
以下、本明細書において、特に定義しない限り、「重合体」は、相対的な高分子量の分子をいい、その構造は、低分子量の分子から誘導された単位の多重繰り返しを含んでもよい。一態様において、重合体は、交互(alternating)共重合体、ブロック(block)共重合体、ランダム(random)共重合体、分岐(branched)共重合体、架橋(crosslinked)共重合体、またはこれらを何れも含む共重合体(例えば、1種よりも多い単量体を含む共重合体)であってもよい。他の態様において、重合体は、単独重合体(homopolymer)(例えば、1種の単量体を含む共重合体)であってもよい。
【0047】
以下、本明細書において、特に定義しない限り、「オリゴマー」は、低分子量の分子に由来する少数の単位または同一の繰り返し単位を含む分子を意味し得る。オリゴマーは、重合体に比べてさらに少ない数の単量体単位(例えば、30個未満の単量体単位)を含んでもよく、重合体は、オリゴマーに比べてさらに多い数の単量体単位(例えば、30個超過の単量体単位)を含んでもよい。一態様において、オリゴマーは、2個~20個の単量体単位を含んでもよい。
【0048】
以下、本明細書において、特に定義しない限り、用語「フレキシブル(flexible)」は、フレキシブルな構成要素が曲がったり、撓んだり、および/または折り畳まれたりすることができることを意味し得る。
【0049】
以下、本明細書において、特に定義しない限り、「ハードコーティング層」は、「(メタ)アクリル系ハードコーティング層」を含む意味として用いられてもよい。
【0050】
以下、本明細書において、特に定義しない限り、「(メタ)アクリル」は、「メタクリル」および/または「アクリル」を含む意味として用いられてもよい。
【0051】
以下、本明細書において、特に定義しない限り、「ポリイミド」は、イミド構造を含む重合体であり、「ポリイミド」または「ポリアミドイミド」を含む意味として用いられてもよい。
【0052】
以下、本明細書において、特に定義しない限り、「(メタ)アクリル系架橋重合体」は、(メタ)アクリル基を有する(メタ)アクリル系化合物が互いに架橋されてなる架橋重合体を意味し、(メタ)アクリル系架橋重合体は、(メタ)アクリル基、例えば、(メタ)アクリレート基を含んでも含まなくてもよい。
【0053】
以下、本明細書において、特に定義しない限り、「約」は、明示された値の30%、25%、20%、15%、10%、または5%以内の値に考慮されてもよい。
【0054】
一実施形態は、軟質樹脂(soft polymer)の構造を含むとしても、表面硬度が低下したり、加圧時またはペンドロップ試験時に跡が発生することがないガラス基板多層構造体を提供することができる。
【0055】
図1は、表面硬度の減少を防止することができ、加圧または外部衝撃時に構造的変化または跡の発生を減らすことができるガラス基板多層構造体構造を示す。図1に示されたガラス基板多層構造体の一例は、フレキシブルガラス基板10、フレキシブルガラス基板10の一側(例えば、下側)に結合される飛散防止層20、および他側(例えば、上側)に結合されるハードコーティング層30を含む。
【0056】
一実施形態は、薄膜のガラス基板を基材として用いる場合、ガラス基板の一面に形成される軟質樹脂からなる飛散防止層、およびその反対面である他面に形成されるハードコーティング層を含む多層構造を有するとしても、表面硬度が低下したり圧痕現象が現れたりせず、および/またはフレキシブルディスプレイ装置に活用可能なガラス基板多層構造体を提供することができる。
【0057】
一態様を具体的に説明すれば次のとおりである。
一態様は、フレキシブルガラス基板と、
前記ガラス基板の一面に形成される飛散防止層と、を含むガラス基板多層構造体であって、前記飛散防止層は、多官能性(メタ)アクリル系架橋重合体およびポリイミド重合体を含む、ガラス基板多層構造体を提供することができる。
【0058】
他の一態様は、フレキシブルガラス基板と、
前記フレキシブルガラス基板の一面に形成される飛散防止層と、
前記フレキシブルガラス基板の他面に形成されるハードコーティング層と、を含むガラス基板多層構造体であって、前記飛散防止層は、多官能性(メタ)アクリル系架橋重合体およびポリイミド重合体を含む、ガラス基板多層構造体を提供することができる。
【0059】
一態様に係るガラス基板多層構造体は、フレキシブルガラス基板の一面に飛散防止層を含んでもよく、特に多官能性(メタ)アクリル系架橋重合体およびポリイミド重合体を含む飛散防止層を含んでもよい。特定の理論に制限されるものではないが、一態様に係る飛散防止層を含むガラス基板多層構造体は、フレキシブル特性(例えば、優れた柔軟性(flexibility))を実現しながらも、それとトレードオフ(trade-off)関係にある表面硬度の低下およびペンドロップ(PEN DROP)試験により測定される耐衝撃性の低下現象が顕著に改善され、光学特性にも優れるため、フレキシブルディスプレイパネルのカバーウィンドウとして活用されるのに好適である。
【0060】
一態様に係るガラス基板多層構造体において、前記多官能性(メタ)アクリル系架橋重合体は、加熱などの手段を介して多官能性(メタ)アクリル系化合物の架橋重合を誘導してなるものであってもよく、前記架橋重合は、前記多官能性(メタ)アクリル系化合物が全部または一部架橋されるものであってもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。前記多官能性(メタ)アクリル系化合物は、多官能性(メタ)アクリル基を有する化合物であり、前記(メタ)アクリル基は、例えば、アクリル基またはメタクリル基であってもよい。一態様において、前記多官能性(メタ)アクリル系架橋重合体は、前記飛散防止層のポリイミドマトリックス(matrix)樹脂に分散されて複合体(composite)を形成してもよい。但し、前記多官能性(メタ)アクリル系架橋重合体およびポリイミド重合体の相互間の結合は化学的結合を含まなくてもよく、例えば、多官能性(メタ)アクリル系架橋重合体およびポリイミド重合体は互いに共有結合しなくてもよい。
【0061】
一態様に係るガラス基板多層構造体において、前記多官能性(メタ)アクリル系架橋重合体は、アルキレン基、エーテル基、ウレタン基、エステル基、またはこれらの組み合わせをさらに含んでもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0062】
また、一態様に係るガラス基板多層構造体において、前記多官能性(メタ)アクリル系架橋重合体は3~6個、例えば4~6個、例えば5または6個の(メタ)アクリル基を有する多官能性(メタ)アクリル系化合物から誘導された構造単位を含んでもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。ここで、前記(メタ)アクリル基は、例えば、アクリル基またはメタクリル基であってもよい。
【0063】
一態様において、前記多官能性(メタ)アクリル系架橋重合体は、多官能性(メタ)アクリル基を有するモノマーおよび多官能性(メタ)アクリル基を有するオリゴマーなどの多官能性(メタ)アクリル系化合物から誘導された構造単位を含んでもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0064】
一態様において、前記飛散防止層は、上述した特性を満たす多官能性(メタ)アクリル系架橋重合体およびポリイミド重合体を含んでもよい。特定の理論に制限されるものではないが、一態様に係るガラス基板多層構造体は、フレキシブル特性を実現することができ、それとトレードオフ(trade-off)関係にある表面硬度の低下およびペンドロップ(PEN DROP)試験により測定される耐衝撃性の低下現象が顕著に改善されることができる。一態様に係るガラス基板多層構造体は、光学特性にも優れることができ、よって、フレキシブルディスプレイパネルのカバーウィンドウとして活用されるのにさらに好適である。
【0065】
より具体的に、一態様に係るガラス基板多層構造体は、ASTM D3363に準じた鉛筆硬度が約4H以上、具体的には約4H~約9H、より具体的には約5H~約6Hであってもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0066】
また、一態様に係るガラス基板多層構造体は、ペンドロップ試験(PEN DROP TEST)が、例えば、約10cm以上、約15cm以上、約20cm以上、約10cm~約25cm、または約10cm~約20cmの高さで行われた際に耐衝撃性を有してもよい。但し、必ずしも前記高さの範囲に限定されるものではない。この際、前記ペンドロップ試験(PEN DROP TEST)による耐衝撃性は、約0.7mmの直径を有し、約0.5gの重量を有するボールペンを前記ガラス基板多層構造体上の指定された位置(高さ)から垂直落下させた際の表面打痕および圧痕がない状態を意味する。
【0067】
特定の理論に制限されるものではないが、前記範囲の表面硬度および耐衝撃特性を有することで、一態様に係るガラス基板多層構造体は、柔軟性を確保するとともに、さらに優れたガラス基板本来の硬度、耐衝撃性、および耐久性を維持することができる。
【0068】
また、一態様に係るガラス基板多層構造体は、曲げ特性が約±0.4mm以内の値を有してもよく、例えば、約±0.3mm以内、例えば、約±0.25mm以内の値を有してもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。この際、前記曲げ特性は、除振台(Vibration isolation table)上に前記ガラス基板多層構造体を載置した後、常温でガラス基板多層構造体の曲げを測定したものであって、この際、除振台方向に基板が曲がり、ガラス基板の中心(center)がエア(air)層に曲がっている場合には、エッジを基準に中心の最上曲点部分との段差を測定し、負(応力)の値(mm)で示し、その逆に、除振台上でガラス基板の両端(エッジ)がエア(air)層方向に曲がっている場合には、中心を基準にエッジが上がった段差を測定し、正(張力)の値(mm)で示したものである。
【0069】
特定の理論に制限されるものではないが、前記範囲の曲げ特性を有することで、一態様に係るガラス基板多層構造体は、曲げたり撓ませたりできる柔軟な特性を有しており、折り畳んだり曲げたりする動作を繰り返しても、ガラスが割れたりクラックが発生することがないため、フレキシブルディスプレイ装置にさらに好適に活用されることができる。
【0070】
また、一態様に係るガラス基板多層構造体は、ASTM E313に準じて測定された黄色度(YI)が、例えば、約0.1~約5.0、約0.1~約3.0、約0.1~約2.0であってもよく、b*値が、例えば、約0.1~約2.0、約0.1~約1.5、約0.1~約1.0であってもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0071】
また、一態様に係るガラス基板多層構造体は、ASTM D1746に準じて400~700nmで測定された全光線透過率が、例えば、約85~約99.9%、約90~約99.9%であってもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0072】
一態様において、ガラス基板多層構造体は、ある程度の光学複屈折を示すため、ガラス基板多層構造体において、2つの直交偏光間の位相差を補うためには、2つの直交偏光間の位相差を測定することができる。これは、ガラス基板多層構造体を、Axoscanを用いて、フィルムを一定の大きさに切って厚さを測定した後、Axoscanで位相差を測定し、位相差値を補うためにC-plate方向に補正しつつ測定することができる。位相差は、光が最も高い屈折率と最も低い屈折率にて物質を通過する2つの直交偏光状態に該当する2つの直交偏光での光間の遅延であり、位相または距離で表すことができる。一態様において、測定された位相差(Rth)は、例えば、約10~約40μm、約10~約30μmであってもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。この際、位相差(Rth at 550nm))は、下記式1により計算した。
【0073】
[式1]
th=[(n+n)/2-n]×d
【0074】
(式1中、nは、面内屈折率のうち最も大きい屈折率であり、nは、面内屈折率のうちnと垂直な屈折率であり、nは、垂直な屈折率であり、dは、ガラス基板多層構造体の厚さを10μmに換算して計算した値である。)
【0075】
特定の理論に制限されるものではないが、前記範囲の光学特性を有することで、一態様に係るガラス基板多層構造体は、視認性および透明性などに非常に優れるため、フレキシブルディスプレイ装置にさらに好適に活用されることができる。
【0076】
以下、図1を参照して、本発明の一態様に係るガラス基板多層構造体100に含まれるフレキシブルガラス基板10、飛散防止層20、およびハードコーティング層30の各構成についてより具体的に説明する。しかし、これは例示的なものにすぎず、本発明が例示的に説明された具体的な実施形態に制限されるものではない。
【0077】
<フレキシブルガラス基板>
先ず、一態様に係るフレキシブルガラス基板について説明する。
一態様において、フレキシブル(flexible)ガラス基板は、折り畳んだり(folderble)曲がったり(curved)するガラス基板を意味し、ディスプレイ装置のウィンドウとして機能できるものであり、耐久性が良く、表面平滑性および透明度に優れる。
【0078】
一態様において、圧力または力により曲げられたフレキシブルガラス基板は、圧力または力の除去後に本来の形態に戻る、優れた復元特性を有してもよい。
【0079】
一態様において、ガラス基板多層構造体100は、フレキシブルディスプレイパネルの一面上に形成されてもよく、曲がりまたは折り畳まれに対応して曲がったり折り畳まれたりすることができる。この際、ガラス基板多層構造体100が比較的に小さい曲率半径で屈曲するかまたは折り畳まれる程度に変形されるためには、フレキシブルガラス基板10は、超薄型ガラス基材からなることができる。
【0080】
一態様に係るガラス基板多層構造体100において、フレキシブルガラス基板10は、超薄型のガラス基材であってもよく、その厚さは約100μm以下であってもよく、具体的には約1~約100μmであってもよく、より具体的には約30~約100μmであってもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0081】
一態様に係るガラス基板多層構造体100において、前記フレキシブルガラス基板10は、化学強化層をさらに含んでもよく、前記化学強化層は、フレキシブルガラス基板10の第1面または第2面のうち何れか1面以上に化学強化処理を行って形成されてよい。これにより、フレキシブルガラス基板10の強度がさらに顕著に向上することができる。
【0082】
上記のように化学強化処理された超薄型のフレキシブルガラス基板を形成する方法には種々の方法があるが、その一例としては、100μm以下の厚さを有するマザーガラス(Ultra thin glass、UTG)を準備し、切断、面取り、焼成などを経て所定の形状に加工した後、それを化学強化処理してもよい。他の一例としては、一般厚さのマザーガラスを準備し、約100μm以下の厚さにスリミング(slimming)作業をした後、形状加工および化学強化処理を順次行ってもよいが、これは非限定的な一例にすぎず、必ずしもこれに限定されるものではない。この際、スリミング作業は、機械的方法および/または化学的方法から選択される何れか1つおよび/または2つの方法をともに用いて行われてもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0083】
<飛散防止層>
次に、一態様に係る飛散防止層について説明する。
一態様に係る飛散防止層20は、前記フレキシブルガラス基板10の破損時に発生するエネルギーを吸収することで、破片が飛散するのを防止する基本機能の他に、非制限的な本発明の一態様として、ハードコーティング層が形成される方向とは反対面である他面に形成されることで、表面硬度が低下する現象をさらに改善し、耐衝撃性もさらに向上させることができる。
【0084】
一態様に係るガラス基板多層構造体100において、前記飛散防止層20は、多様な適した材料を含んでもよく、例えば、多官能性(メタ)アクリル系架橋重合体およびポリイミド重合体を含んでもよい。
【0085】
一態様に係るガラス基板多層構造体100において、前記多官能性(メタ)アクリル系架橋重合体は、加熱などの手段を介して多官能性(メタ)アクリル系化合物の架橋重合を誘導してなるものであってもよく、前記架橋重合は、前記多官能性(メタ)アクリル系化合物が全部または一部架橋されるものであってよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。前記多官能性(メタ)アクリル系化合物は、多官能性(メタ)アクリル基を有する化合物であり、前記(メタ)アクリル基は、例えば、アクリル基またはメアクリル基であってもよい。
【0086】
一態様において、前記多官能性(メタ)アクリル系架橋重合体は、前記飛散防止層のポリイミドマトリックス(matrix)樹脂に分散されて複合体(composite)を形成してもよい。但し、前記多官能性(メタ)アクリル系架橋重合体およびポリイミド重合体の相互間の結合は化学的結合を含まなくてもよく、例えば、多官能性(メタ)アクリル系架橋重合体およびポリイミド重合体は互いに共有結合しなくてもよい。
【0087】
一態様に係るガラス基板多層構造体100において、前記多官能性(メタ)アクリル系架橋重合体は、アルキレン基、エーテル基、ウレタン基、エステル基、またはこれらの組み合わせをさらに含んでもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0088】
また、一態様に係るガラス基板多層構造体において、前記多官能性(メタ)アクリル系架橋重合体は3~6個、例えば4~6個、例えば5または6個の(メタ)アクリル基を有する多官能性(メタ)アクリル系化合物から誘導された構造単位を含んでもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。ここで、前記(メタ)アクリル基は、例えば、アクリル基またはメアクリル基であってもよい。
【0089】
より具体的に、前記多官能性(メタ)アクリル系架橋重合体は、多官能性(メタ)アクリル基を有するモノマーおよび多官能性(メタ)アクリル基を有するオリゴマーなどの多官能性(メタ)アクリル系化合物から誘導された構造単位を含んでもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。本発明の一態様に係るガラス基板多層構造体100において、前記多官能性(メタ)アクリル系化合物は、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、1,2,4-シクロヘキサントリ(メタ)アクリレート、ペンタグリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、多官能性ウレタン(メタ)アクリレート、多官能性ポリエステル(メタ)アクリレート、またはこれらの組み合わせを含んでもよく、例えば、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、多官能性ウレタン(メタ)アクリレート、多官能性ポリエステル(メタ)アクリレート、またはこれらの組み合わせを含んでもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0090】
一態様に係るガラス基板多層構造体100において、前記多官能性ウレタン(メタ)アクリレートは、分子中にヒドロキシ基を含む(メタ)アクリレートおよびイソシアネート基を含む化合物を当該分野で公知の方法により触媒存在下で反応させて製造されるものであり、商業化された多官能性ウレタン(メタ)アクリレートの一例としてはウレタンアクリレート(PU9020、Miwon Specialty Chemical社製)が挙げられるが、これは非限定的な一例にすぎず、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0091】
この際、分子中にヒドロキシ基を含む(メタ)アクリレートの例としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシイソプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、カプロラクトン開環ヒドロキシアクリレート、ペンタエリスリトールトリ/テトラ(メタ)アクリレートの混合物、またはジペンタエリスリトールペンタ/ヘキサ(メタ)アクリレートの混合物、またはこれらの組み合わせから選択される何れか1つであってもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0092】
また、イソシアネート基を含む化合物の例としては、1,4-ジイソシアナトブタン、1,6-ジイソシアナトヘキサン、1,8-ジイソシアナトオクタン、1,12-ジイソシアナトドデカン、1,5-ジイソシアナト-2-メチルペンタン、トリメチル-1,6-ジイソシアナトヘキサン、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、トランス-1,4-シクロヘキセンジイソシアネート、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、イソホロンジイソシアネート、トルエン-2,4-ジイソシアネート、トルエン-2,6-ジイソシアネート、キシレン-1,4-ジイソシアネート、テトラメチルキシレン-1,3-ジイソシアネート、1-クロロメチル-2,4-ジイソシアネート、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルフェニルイソシアネート)、4,4’-オキシビス(フェニルイソシアネート)、ヘキサメチレンジイソシアネートから誘導される3官能イソシアネート、またはこれらの組み合わせなどから選択される何れか1つであってもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0093】
また、一態様に係るガラス基板多層構造体100において、前記多官能性ポリエステル(メタ)アクリレートは、ポリエステルポリオールとアクリル酸を当該分野で公知の方法により反応させて製造されるものであり、商業化された一例としてはポリエステルアクリレート(PS2500、Miwon Specialty Chemical社製)が挙げられるが、これは非限定的な一例にすぎず、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0094】
この際、前記多官能性ポリエステル(メタ)アクリレートの例としては、ポリエステルジアクリレート、ポリエステルテトラアクリレート、ポリエステルヘキサアクリレート、ポリエステルペンタエリスリトールトリアクリレート、ポリエステルペンタエリスリトールテトラアクリレート、ポリエステルペンタエリスリトールヘキサアクリレート、またはこれらの組み合わせなどを含んでもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0095】
一態様に係るガラス基板多層構造体100において、前記ポリイミド重合体は、フッ素系芳香族ジアミンから誘導された単位および芳香族二無水物から誘導された単位を含んでもよい。特定の理論に制限されるものではないが、この場合、光学的物性および機械的物性にさらに優れ、弾性力および復原力がさらに向上し、前記ガラス基板の変形を防止する効果をさらに増進させることができるが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0096】
一態様に係るガラス基板多層構造体100において、前記フッ素原子を含む芳香族ジアミンは、1,4-ビス(4-アミノ-2-トリフルオロメチルフェノキシ)ベンゼン(1,4-Bis(4-amino-2-trifluoromethylphenoxy)benzene、6FAPB)、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-ベンジジン(2,2’-Bis(trifluoromethyl)benzidine、TFMB)、および2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(2,2’-Bis(trifluoromethyl)-4,4’-diaminodiphenyl ether、6FODA)などから選択される何れか1つまたはこれらの2以上の混合物であってもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。また、前記フッ素原子を含む芳香族ジアミンは、フッ素原子を含むかもしくは含まない他の公知の芳香族ジアミン成分と混合して用いられてもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0097】
一態様に係るガラス基板多層構造体100において、前記芳香族二無水物は、4,4’-ヘキサフルオロイソプロピリデンジフタル酸無水物(6FDA)、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、オキシジフタル酸二無水物(ODPA)、スルホニルジフタル酸無水物(SO2DPA)、(イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(フタル酸無水物)(6HDBA)、4-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1,2-ジカルボン酸二無水物(TDA)、1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸二無水物(PMDA)、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、ビス(カルボキシフェニル)ジメチルシラン二無水物(SiDA)、ビス(ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物(BDSDA)、およびエチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)(Ethylene glycol bis(anhydrotrimellitate)、TMEG100)などから選択される何れか1つまたはこれらの2以上の混合物であってもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0098】
一態様に係るガラス基板多層構造体100は、特定の理論に制限されるものではないが、飛散防止層20がフレキシブルガラス基板10の背面に形成されることで、外部衝撃または曲がったり折り畳まれたりする過程でガラス基板が容易に割れ、その破片が飛散し得る問題を解決可能であるとともに、前記飛散防止層20に多官能性(メタ)アクリル系架橋重合体が含まれることで、フレキシブル特性とトレードオフ(trade-off)関係にある表面硬度、耐衝撃性、および耐久性などが低下する問題も顕著に改善させることができる。
【0099】
特に、前記多官能性(メタ)アクリル系架橋重合体を含む飛散防止層20は、ハードコーティング層30、特に(メタ)アクリル基を有する化合物を硬化させてなるハードコーティング層とともにフレキシブルガラス基板10の両面に構成されることで、ペンドロップ試験による歪みに対する抵抗性および耐衝撃性をさらに向上させることができる。
【0100】
一態様に係るガラス基板多層構造体100において、前記飛散防止層20の厚さは、特に制限されるものではないが、約1~約20μmであってもよく、具体的には約2~約10μm、より具体的には約5~約10μmであってもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0101】
<ハードコーティング層>
次に、本発明の一態様に係るハードコーティング層について説明する。
特定の理論に制限されるものではないが、ハードコーティング層30は、ガラス基板多層構造体100を外部の物理的および化学的損傷から保護するよう機能することができ、優れた光学的、機械的特性を有するものであってもよい。
【0102】
一態様において、前記ハードコーティング層30は、前記飛散防止層20が形成されたフレキシブルガラス基板10の他の一面(例えば、反対面)に形成されてもよく、例えば、前記フレキシブルガラス基板10は、表面が化学強化処理されてもよく、化学強化処理されたフレキシブルガラス基板10の表面にハードコーティング層30が形成されてもよい。
【0103】
また、一態様に係るガラス基板多層構造体100において、前記ハードコーティング層30は、例えば、前記フレキシブルガラス基板10の背面に形成される飛散防止層20の収縮現象と同一の特性を示してもよく、より具体的には、(メタ)アクリル系ハードコーティング層であってもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0104】
また、一態様に係るガラス基板多層構造体100において、前記ハードコーティング層30の厚さは、例えば、約1~約15μmであってもよく、約1~約10μm、約1~約5μmであってもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。前記範囲の厚さを有する場合、前記ハードコーティング層30は、優れた硬度および柔軟性を維持することができるため好ましい。
【0105】
一態様に係るガラス基板多層構造体100において、ハードコーティング層30は、無機粒子をさらに含んでもよく、無機粒子は、シリカ、金属酸化物などから選択された何れか1つ、またはこの中の2以上の組み合わせを含んでもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0106】
また、前記無機粒子は、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カリウムなどの水酸化物;金、銀、銅、ニッケル、およびこれらの合金のような金属粒子;炭素、カーボンナノチューブ、フラーレンなどの導電性粒子;ガラス;セラミック;などが挙げられるが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0107】
一態様において、無機粒子は、約1~約200nm、約10~約200nmの平均粒子直径を有してもよく、平均粒子直径の範囲内で2種以上の互いに異なる平均粒径を有する無機粒子を用いてもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。一態様において、前記無機粒子を含むことで、ハードコーティング層30の表面硬度を向上させることができる。
【0108】
<フレキシブルディスプレイパネル>
他の態様は、前記一態様に係るガラス基板多層構造体100を含むフレキシブルディスプレイパネルまたはフレキシブルディスプレイ装置を提供する。
【0109】
例えば、フレキシブルディスプレイ装置において、ガラス基板多層構造体100は、フレキシブルディスプレイパネルの最外面ウィンドウ基板として用いられてもよい。フレキシブルディスプレイ装置は、通常の液晶表示装置、電界発光表示装置、プラズマ表示装置、および電界放出表示装置などの各種画像表示装置であってもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0110】
<ガラス基板多層構造体の製造方法>
以下、また他の一態様に係るガラス基板多層構造体100の製造方法について詳細に説明する。
【0111】
一態様に係るガラス基板多層構造体100の製造方法は、フレキシブルガラス基板の一面に1つ以上のポリイミド前駆体および1つ以上の多官能性(メタ)アクリル系化合物を含む飛散防止組成物を塗布し硬化させて飛散防止層20を形成するステップを含んでもよい。
【0112】
また、他の一態様に係るガラス基板多層構造体100の製造方法は、フレキシブルガラス基板の一面にポリイミド前駆体および多官能性(メタ)アクリル系化合物を含む飛散防止組成物を塗布し硬化させて飛散防止層20を形成するステップと、
前記フレキシブルガラス基板の他面にハードコーティング組成物を塗布し硬化させてハードコーティング層30を形成するステップと、を含んでもよい。
【0113】
先ず、一態様に係るガラス基板多層構造体100の製造方法において、前記飛散防止層20を形成する飛散防止組成物について説明する。
先ず、前記飛散防止組成物は、前記1つ以上のポリイミド前駆体および前記1つ以上の多官能性(メタ)アクリル系化合物を含む組成物であってもよい。この際、前記飛散防止組成物に含まれるポリイミド前駆体は、フッ素原子を含む芳香族ジアミンから由来した単位および芳香族二無水物から由来した単位を含んでもよく、前記フッ素系芳香族ジアミンおよび芳香族二無水物としては、前記飛散防止層20に関する説明で詳述されたものと同一のものを用いてもよい。
【0114】
また、一態様に係る前記多官能性(メタ)アクリル系化合物は、アルキレン基、エーテル基、ウレタン基、エステル基、またはこれらの組み合わせをさらに含んでもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0115】
また、一態様に係るガラス基板多層構造体100の製造方法において、1つ以上の前記多官能性(メタ)アクリル系化合物のうち少なくとも1つは3~6個、例えば4~6個、例えば5または6個の(メタ)アクリル基を有してもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。ここで、前記(メタ)アクリル基は、例えば、アクリル基またはメタクリル基であってもよい。
【0116】
より具体的に、一態様に係る前記多官能性(メタ)アクリル系化合物は、多官能性(メタ)アクリル基を有するモノマーおよび多官能性(メタ)アクリル基を有するオリゴマーなどを含んでもよく、前記飛散防止層20に関する説明で詳述されたものと同一のものを用いてもよい。
【0117】
一態様に係るガラス基板多層構造体100の製造方法において、前記多官能性(メタ)アクリル系化合物は、前記1つ以上のポリイミド前駆体および多官能性(メタ)アクリル系化合物の全体100重量部を基準に約1~約50重量部で含まれてもよく、具体的には約10~約40重量部、より具体的には約20~約40重量部で含まれてもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0118】
前記多官能性(メタ)アクリル系化合物の含量が前記範囲を満たす場合、表面硬度が低下したりペンドロップ試験により圧痕が発生することがないという効果がさらに向上することができ、および/または過度な衝撃性の低下で耐久性が低下するなどの表面状態の不良化問題をさらに改善することができる。
【0119】
前記ポリイミド前駆体は、フッ素原子を含む芳香族ジアミンを有機溶媒中に溶解させた後、混合溶液に芳香族二無水物を添加して重合反応させることで得ることができる。この際、前記重合反応は、不活性気体または窒素気流下で行われてもよく、無水条件で行われてもよい。また、前記重合反応時の温度は約-20~約200℃、または約0~約180℃で行われてもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。また、前記重合反応に使用可能な有機溶媒としては、N,N-ジエチルアセトアミド(N,N-diethylacetamide、DEAc)、N,N-ジエチルホルムアミド(N,N-diethylformamide、DEF)、N-エチルピロリドン(N-ethylpyrrolidone、NEP)、ジメチルプロピオンアミド(DMPA)、およびジエチルプロパンアミド(DEPA)などから選択される何れか1つまたはこれらの2以上の混合物であってもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0120】
この際、一態様に係る前記ポリイミド前駆体は、有機溶媒中に溶解された溶液の形態で存在してもよい。一態様において、前記ポリイミド前駆体溶液は、1つ以上の有機溶媒(例えば、2、3、または4個の有機溶媒)に溶解されたポリイミド前駆体を含んでもよい。一態様において、ポリイミド前駆体は有機溶媒に存在してもよく、その溶液に第2有機溶媒を添加してポリイミド前駆体を希釈させてもよい。一態様において、ポリイミド前駆体は、固体粉末として有機溶媒に添加されてもよく、この際、ポリイミド前駆体は、有機溶媒との混合時に溶解されてポリイミド前駆体溶液を形成してもよい。
【0121】
一態様に係る前記飛散防止組成物は、前記ポリイミド前駆体溶液に前記1つ以上の多官能性(メタ)アクリル系化合物を添加して製造してもよい。
一態様に係るガラス基板多層構造体100の製造方法において、前記1つ以上の多官能性(メタ)アクリル系化合物の添加は、一例として、前記多官能性(メタ)アクリル系化合物を溶媒に希釈させた状態で前記ポリイミド前駆体溶液に投入した後、常温で撹拌する方式により行われてもよい。
【0122】
また、前記撹拌時に加熱などにより架橋および/またはイミド化を誘導してもよく、この際、架橋反応時に前記飛散防止組成物の溶媒に対する溶解性が増加し、架橋重合体が前記溶液中で均一に分散できる限り、その反応条件は制限されず、加熱温度は約50~約200℃であってもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0123】
前記多官能性(メタ)アクリル系化合物を希釈させる溶媒は、N,N-ジエチルアセトアミド(N,N-diethylacetamide、DEAc)、N,N-ジエチルホルムアミド(N,N-diethylformamide、DEF)、N-エチルピロリドン(N-ethylpyrrolidone、NEP)、ジメチルプロピオンアミド(DMPA)、およびジエチルプロパンアミド(DEPA)などから選択される何れか1つまたはこれらの2以上の混合物であってもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0124】
一態様に係るガラス基板多層構造体100の製造方法において、前記イミド化工程は、公知のイミド化方法を制限なしに用いてもよいが、具体的な一例として、化学イミド化方法、熱イミド化方法などが挙げられる。一態様としては、共沸熱イミド化法や化学イミド化法を用いてもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0125】
前記共沸熱イミド化法は、その一例として、前記多官能性(メタ)アクリル系化合物を含むポリイミド前駆体溶液にトルエンまたはキシレンを添加して撹拌し、約160~約200℃で約6~約24時間イミド化反応を行ってもよく、イミド環が生成されるにつれて放出された水は、トルエンまたはキシレンの共沸混合物として分離されてもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0126】
一態様に係るガラス基板多層構造体100の製造方法において、前記飛散防止組成物中の多官能性(メタ)アクリル系化合物は、前記イミド化反応が行われる温度でさらに架橋が行われることができる。
【0127】
以下、前記飛散防止層20を形成する方法について説明する。
一態様に係るガラス基板多層構造体100の製造方法において、前記飛散防止層20は、前記飛散防止組成物を前記フレキシブルガラス基板10の一面に塗布し硬化することで形成してもよい。この際、塗布する方法としては、バー(bar)コート、ディップ(dip)コート、ダイ(die)コート、グラビア(gravure)コート、コンマ(comma)コート、およびスリット(slit)コートの中から選択される何れか1つまたはこれらの混合方式であってもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0128】
前記硬化は約50~約250℃の温度で熱処理してもよく、前記熱処理回数は1回以上であってもよく、同一温度または異なる温度範囲で1回以上熱処理してもよいが、これは非限定的な一例にすぎず、必ずしもこれに限定されるものではない。また、前記熱処理時間は約1分~約60分であってもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0129】
上記のように熱処理が行われる場合、別の開始剤がなくても前記飛散防止組成物中の多官能性(メタ)アクリル系化合物の架橋が行われることができ、開始剤を含まないため常温での安定性も向上することができ、前記飛散防止組成物中で前記多官能性(メタ)アクリル系化合物が一部架橋された状態で存在する場合に組成物の等方性がさらに向上することができる。
【0130】
次に、一態様に係るガラス基板多層構造体100の製造方法において、前記ハードコーティング層30を形成するハードコーティング組成物を製造する方法について説明する。
【0131】
一態様において、前記ハードコーティング層30は、公知のハードコーティング組成物を含んで製造されてもよく、この際、前記ハードコーティング組成物は、前記飛散防止層の多官能性(メタ)アクリル系架橋重合体と同一の収縮特性を有するものであり、多官能性(メタ)アクリル系化合物を含む組成物を硬化させて製造されてもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0132】
一態様に係るガラス基板多層構造体100の製造方法において、薄膜のガラス基板を基材として用いる場合、前述したようにガラス基板の一面に形成される軟質樹脂からなる飛散防止層がコーティングおよび硬化するステップを含むことになり、それより多層構造体の撓みが発生して曲げ特性、耐久性などが低下するという問題が発生する。この際、前記飛散防止層の多官能性(メタ)アクリル系架橋重合体と同一または類似した収縮特性を有する(メタ)アクリル系材料が含まれたハードコーティング組成物を飛散防止層が形成された面の反対面である他面に塗布および硬化してハードコーティング層が形成される場合、飛散防止層により発生する撓み現象がさらに顕著に相殺されることで、曲げ特性、耐久性などにさらに優れたガラス基板多層構造体100を得ることができる。
【0133】
一態様に係るガラス基板多層構造体100の製造方法において、前記ハードコーティング層30が多官能性(メタ)アクリル系化合物を含む組成物を硬化させて製造される場合、前記ハードコーティング層30は、ハードコーティング組成物の塗布以後、光硬化または熱硬化ステップを経て製造されてもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0134】
また、一態様に係るガラス基板多層構造体100の製造方法において、前記ハードコーティング組成物は、光開始剤または熱開始剤をさらに含んでもよい。
【0135】
一態様において、前記光開始剤は、光カチオン開始剤としてオニウム塩および/または有機金属塩などを用いてもよく、例えば、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩、アリールジアゾニウム塩、鉄-アレーン錯体などから選択される何れか1つまたはこれらの2以上の組み合わせであってもよいが、これは非限定的な一例にすぎず、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0136】
前記光開始剤の含量は、特に限定されず、例えば、前記光開始剤は、前記ハードコーティング組成物100重量部に対して約0.01~約10重量部、具体的には約0.1~約10重量部、より具体的には約0.5~約5重量部で含まれてもよい。特定の理論に制限されるものではないが、前記光開始剤の含量が前記範囲内である場合、ハードコーティング組成物の硬化効率の維持にさらに優れるとともに、硬化後の残存成分による物性の低下をさらに防止することができる。
【0137】
前記熱開始剤は、カチオン性熱開始剤が用いられてもよく、前記ハードコーティング組成物100重量部に対して約0.01~約15重量部、具体的には約0.1~約15重量部、より具体的には約0.3~約10重量部で含まれてもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。特定の理論に制限されるものではないが、前記熱開始剤の含量が前記範囲内である場合、熱硬化反応がより有効な速度で行われることができ、ハードコーティング組成物の他成分の含量が減少してハードコーティング層30の機械的特性が低下するのをさらに防止することができる。
【0138】
一態様に係るガラス基板多層構造体100の製造方法において、前記ハードコーティング組成物は、架橋剤をさらに含んでもよい。前記架橋剤は、ハードコーティング組成物を固体化させ、ハードコーティング層30の硬度をさらに向上させることができる。架橋剤の例としては、ジアミン((メタ)アクリレート化合物のカルボニル基と縮合反応を促進することができる)、ポリビニル化合物、小分子架橋(例えば、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、重クロム酸カリウム、四酸化オスミウム、および過マンガン酸カリウム)などが挙げられる。
【0139】
一態様に係る架橋剤の含量は、特に限定されず、例えば、前記ハードコーティング組成物100重量部に対して約1~約30重量部、具体的には約5~約20重量部で含まれてもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0140】
一態様において、前記ハードコーティング組成物は、熱硬化剤をさらに含んでもよい。
前記熱硬化剤は、アミン系、イミダゾール系、酸無水物系、アミド系の熱硬化剤などを含んでもよく、変色防止および高硬度を実現するという面で、酸無水物系熱硬化剤をさらに用いてもよく、これらは単独または2種以上混合して用いてもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0141】
一態様に係るガラス基板多層構造体100の製造方法において、前記ハードコーティング組成物は、溶媒を介した固形分の希釈過程を経て製造されてもよく、この際、前記溶媒は、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブなどのアルコール系;メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系;ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどのヘキサン系;ベンゼン、トルエン、キシレンなどのベンゼン系;などから選択される何れか1つまたはこれらの2以上の組み合わせであってもよいが、これは非限定的な一例にすぎず、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0142】
一態様に係るガラス基板多層構造体100の製造方法において、前記ハードコーティング組成物は、無機粒子をさらに含んでもよく、前記無機粒子は、シリカおよび金属酸化物などから選択される何れか1つまたはこれらの2以上の組み合わせであってもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0143】
また、前記無機粒子は、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カリウムなどの水酸化物;金、銀、銅、ニッケル、これらの合金などの金属粒子;カーボン、カーボンナノチューブ、フラーレンなどの導電性粒子;ガラス;セラミック;などから選択される粒子をさらに含んでもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0144】
この際、前記無機粒子は、平均粒径が約1~約200nmであってもよく、具体的には約10~約200nmであってもよく、前記平均粒径の範囲内で、2種以上の異なる平均粒径を有する無機粒子を用いてもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。上記のような無機粒子を含むことで、前記ハードコーティング層30の表面硬度がさらに向上することができる。
【0145】
一態様に係るガラス基板多層構造体100の製造方法において、前記ハードコーティング組成物は、滑剤をさらに含んでもよい。滑剤は、巻取り効率、耐ブロッキング性、耐摩耗性、耐スクラッチ性などをさらに改善させることができる。前記滑剤の具体的な一例としては、ポリエチレンワックス、パラフィンワックス、合成ワックス、またはモンタンワックスなどのワックス類;シリコン系樹脂、フッ素系樹脂などの合成樹脂類;などが用いられてもよく、これらは単独でまたはこれらの2以上の組み合わせで用いられてもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0146】
以下、前記ハードコーティング層30を形成する方法について説明する。
一態様に係るガラス基板多層構造体100の製造方法において、前記ハードコーティング層30は、前記ハードコーティング組成物を前記飛散防止層20が形成される面の反対面に塗布し硬化して製造してもよい。この際、塗布する方法としては、バー(bar)コート、ディップ(dip)コート、ダイ(die)コート、グラビア(gravure)コート、コンマ(comma)コート、およびスリット(slit)コートの中から選択される何れか1つまたはこれらの混合方式などの多様な方式であってもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0147】
一態様に係るガラス基板多層構造体100の製造方法において、前記硬化を行う方法は、光硬化や熱硬化を単独で行う方法、光硬化以後に熱硬化を行う方法、または熱硬化以後に光硬化を行う方法などが挙げられるが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0148】
また、一態様において、前記光硬化前に前記ハードコーティング層形成用組成物を加熱して前処理するステップをさらに含んでもよく、前記前処理は、前記熱硬化よりも低い温度で行われてもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0149】
以下、実施例および比較例に基づいて一態様をより詳細に説明する。但し、下記の実施例および比較例は一態様をより詳細に説明するための1つの例示にすぎず、一態様が下記の実施例および比較例によって制限されるものではない。
【0150】
[物性の測定方法]
1)表面硬度
ASTM D3363に準じて、鉛筆硬度計(Kipae E&T社製)を用いて、750gfの荷重で、硬度別の鉛筆(Mitsubishi社製)を用いて、実施例および比較例で製造されたガラス基板多層構造体の表面に対する鉛筆硬度を測定した。この際、ガラス基板多層構造体の表面は、ハードコーティング層が形成された方向の表面を対象に測定した。
【0151】
2)耐衝撃性(ペンドロップ、PEN DROP)
BIC Orange 0.7mmのペンを下記の実施例および比較例で製造されたガラス基板多層構造体サンプル上に垂直にペンを立て、指定された位置(高さ)からペンを落下させた後、ガラス基板多層構造体の状態を下記基準によって評価を行った。この際、落下方向は、ハードコーティング層が形成された方向の表面を対象に測定した。
【0152】
<評価基準>
◎:打痕および圧痕がない
○:打痕および圧痕がある
X:割れ
【0153】
3)曲げ(Curl)
下記の実施例および比較例で製造されたガラス基板多層構造体を平たい地面に置き、前記ガラス基板多層構造体の上方向または下方向への曲げ程度を測定したものであり、ガラス基板のエッジ(edge)部分が上側に曲げが発生する場合を+値で示し、下側に曲げまたは丸めが発生する場合を-値で示した。
【0154】
具体的に、横180mm×縦76mm、厚さ40μmのガラス基板上に各飛散防止層およびハードコーティング層形成用組成物を塗布および硬化した直後、水平が正確に合わせられた除振台上にガラス基板多層構造体を載置した後、常温でガラス基板多層構造体の曲げを測定した。この際、除振台(Vibration isolation table)方向に基板が曲がり、ガラス基板の中心(center)がエア(air)層に曲がっている場合には、エッジを基準に中心の最上曲点部分との段差を測定し、負(応力)の値(mm)で示し、その逆に、除振台上でガラス基板の両端(エッジ)がエア(air)層方向に曲がっている場合には、中心を基準にエッジが上がった段差を測定し、正(張力)の値(mm)で示した。
【0155】
4)黄色度(YI)
黄色度は、ASTM E313の規格に準じて、分光光度計(Spectrophotometer)(日本電色工業社製、COH-5500)を用いて測定した。
【0156】
5)光透過率
ASTM D1746の規格に準じて、厚さ50μmのフィルムに対して、分光光度計(Spectrophotometer)(日本電色工業社製、COH-400)を用いて400~700nm波長領域全体で測定された全光線透過率を測定した。単位は%である。
【0157】
6)位相差(Rth
位相差は、Axoscanを用いて測定した。フィルムを一定の大きさに切って厚さを測定した後、Axoscanで位相差を測定し、位相差値を補うためにC-plate方向に補正しつつ測定した厚さ(nm)を入力した。
【0158】
[式1]
th=[(n+n)/2-n]×d
【0159】
(式1中、nは、面内屈折率のうち最も大きい屈折率であり、nは、面内屈折率のうちnと垂直な屈折率であり、nは、垂直な屈折率であり、dは、ガラス基板多層構造体の厚さを10μmに換算して計算した値である。)
【0160】
[飛散防止組成物の製造]
[製造例1]
窒素気流が流れる撹拌器内にN,N-dimethylpropionamide(DMPA)230gを充填した後、反応器の温度を25℃に維持した状態で、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(6FODA)41gを溶解させた。これにTMEG100(Ethylene glycol bis-anhydro trimellitate)50gを同じ温度で添加して一定時間撹拌しつつ溶解し、ポリイミド前駆体を含むポリイミド前駆体溶液を製造した。前記ポリイミド前駆体溶液に、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートをN,N-dimethylpropionamide(DMPA)溶媒に固形分濃度50重量部になるように希釈した溶液を25℃で添加し、一定時間撹拌した。この際、前記ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートは、前記ポリイミド前駆体とジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの全体100重量部を基準に30重量部で含んだ。その後、固形分濃度が20重量部になるようにジメチルプロピオンアミド(DMPA)を添加し、飛散防止組成物を製造した。
【0161】
[製造例2]
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートを、前記ポリイミド前駆体とジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの全体100重量部を基準に、20重量部で含むことを除いては、前記製造例1と同様に飛散防止組成物を製造した。
【0162】
[製造例3]
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの代わりにペンタエリスリトールテトラアクリレートを、前記ポリイミド前駆体とペンタエリスリトールテトラアクリレートの全体100重量部を基準に、30重量部で用いたことを除いては、前記製造例1と同様に飛散防止組成物を製造した。
【0163】
[製造例4]
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート代わりにウレタンアクリレート(PU9020、Miwon Specialty Chemical社製)を、前記ポリイミド前駆体とウレタンアクリレートの全体100重量部を基準に、30重量部で用いたことを除いては、前記製造例1と同様に飛散防止組成物を製造した。
【0164】
[製造例5]
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの代わりにポリエステルアクリレート(PS2500、Miwon Specialty Chemical社製)を、前記ポリイミド前駆体とポリエステルアクリレートの全体100重量部を基準に、30重量部で用いたことを除いては、前記製造例1と同様に飛散防止組成物を製造した。
【0165】
[比較製造例1]
窒素気流が流れる撹拌器内にN,N-dimethylpropionamide(DMPA)230gを充填した後、反応器の温度を25℃に維持した状態で、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(6FODA)41gを溶解させた。これにTMEG100(Ethylene glycol bis-anhydro trimellitate)50gを同じ温度で添加して一定時間撹拌しつつ溶解し、ポリイミド前駆体を含むポリイミド前駆体溶液を製造した。これに固形分濃度が20重量部になるようにジメチルプロピオンアミド(DMPA)を添加し、飛散防止組成物を製造した。
【0166】
[ハードコーティング組成物の製造]
[製造例6]
ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)91g、粒径が15nmの第1シリカ微粒子(表面処理:3-メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン)3g、光開始剤(Irgacure 184、Ciba社製)1.95gの固形分をMEK(methyl ethyl ketone)溶媒に固形分濃度35重量部になるように希釈し、アクリル系ハードコーティング層形成用組成物を製造した。
【0167】
[ガラス基板多層構造体の製造]
[実施例1]
ガラス基板(UTG 40μm)の一面に、前記製造例1で製造された飛散防止組成物を#20メイヤーバー(mayer bar)で塗布し、窒素雰囲気で80℃で15分間乾燥し、230℃で20分間乾燥し、5μmの厚さを有する飛散防止層を形成した。そして、前記ガラス基板のコーティングされていない他面に、製造例6で製造されたハードコーティング組成物を#10バー(bar)でコーティングし、65℃で3分間乾燥した以後、300mJ/cmの紫外線を照射し、5μmの厚さを有するハードコーティング層が形成されたガラス基板多層構造体を製造した。
【0168】
[実施例2]
前記実施例1において、飛散防止層の厚さが8μmであることを除いては、実施例1と同様にガラス基板多層構造体を製造した。
【0169】
[実施例3]
前記実施例1において、飛散防止層の厚さが2μmであることを除いては、実施例1と同様にガラス基板多層構造体を製造した。
【0170】
[実施例4]
前記実施例1において、前記飛散防止層として、前記製造例1で製造された飛散防止組成物の代わりに、前記製造例2で製造された飛散防止組成物を用いて形成したことを除いては、実施例1と同様にガラス基板多層構造体を製造した。
【0171】
[実施例5]
前記実施例1において、前記飛散防止層として、前記製造例1で製造された飛散防止組成物の代わりに、前記製造例3で製造された飛散防止組成物を用いて形成したことを除いては、実施例1と同様にガラス基板多層構造体を製造した。
【0172】
[実施例6]
前記実施例1において、前記飛散防止層として、前記製造例1で製造された飛散防止組成物の代わりに、前記製造例4で製造された飛散防止組成物を用いて形成したことを除いては、実施例1と同様にガラス基板多層構造体を製造した。
【0173】
[実施例7]
前記実施例1において、前記飛散防止層として、前記製造例1で製造された飛散防止組成物の代わりに、前記製造例5で製造された飛散防止組成物を用いて形成したことを除いては、実施例1と同様にガラス基板多層構造体を製造した。
【0174】
[比較例1]
前記実施例1において、前記飛散防止層として、前記製造例1で製造された飛散防止組成物の代わりに、前記比較製造例1で製造された飛散防止組成物を用いて形成したことを除いては、実施例1と同様にガラス基板多層構造体を製造した。
【0175】
前記実施例1~7および比較例1で製造されたガラス基板多層構造体の物性を測定し、下記表1に示した。
【0176】
【表1】
【0177】
前記表1を参照すると、(メタ)アクリル系架橋重合体およびポリイミド重合体を含む飛散防止層を含む実施例1~7のガラス基板多層構造体は、5H以上の優れた表面硬度を有し、ペンドロップ(PEN DROP)試験の結果、15cm以上(例えば、20cm)の高さからペンを落下させても、打痕ないし圧痕が発生しないため、非常に優れた表面特性を有することを確認することができる。
【0178】
また、全ての実施例において、曲げが0.1mm以下、0.2mm以下、または0.3mm以下に、曲げが効果的に抑制され、フレキシブルガラス基板多層構造体として用いられるのに好適であることを確認することができる。
【0179】
その反面、(メタ)アクリル系架橋重合体を含まない飛散防止層を含む比較例1のガラス基板多層構造体は、実施例1~7よりも低い表面硬度を有し、ペンドロップ(PEN DROP)試験の結果、15cmからペンを落下させた際、容易に割れが発生することを確認することができる。また、顕著に低い表面特性および0.05mm以下の低い曲げ特性を有することを確認した。
【0180】
それのみならず、実施例1~7のガラス基板多層構造体は、非常に優れた黄色度(YI)、光透過率、位相差(Rth)などの光学特性を有することを確認した。
【0181】
したがって、一実施形態により、多官能性(メタ)アクリル系架橋重合体およびポリイミド重合体を含む飛散防止層を有するガラス基板多層構造体は、表面硬度が低下したり圧痕現象が現れたりせず、耐衝撃性が顕著に向上し、ガラス基板が破損する際の飛散現象が改善され、ユーザの安全を確保可能でありながらも、優れた光学特性を有することができる。
【0182】
以上のように、本発明においては、特定の事項と限定された実施形態により、ガラス基板多層構造体、その製造方法、およびそれを含むフレキシブルディスプレイパネルを説明したが、これは本発明のより全般的な理解のために提供されたものにすぎず、本発明は上記の実施形態に限定されない。本発明が属する分野において通常の知識を有する者であれば、このような記載から多様な修正および変形が可能である。
【0183】
したがって、本発明の思想は、説明された実施形態に限定されて決まってはならず、添付の特許請求の範囲だけでなく、この特許請求の範囲と均等または等価的変形を有するものは、何れも本発明の思想の範囲に属するといえる。
【符号の説明】
【0184】
10:フレキシブルガラス基板
20:飛散防止層
30:ハードコーティング層
100:ガラス基板多層構造体
図1