(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022181181
(43)【公開日】2022-12-07
(54)【発明の名称】BDSスワップの問題を回避するために、モードSで動作する二次レーダーを管理する方法
(51)【国際特許分類】
G01S 13/78 20060101AFI20221130BHJP
G01S 13/72 20060101ALI20221130BHJP
【FI】
G01S13/78
G01S13/72
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022081347
(22)【出願日】2022-05-18
(31)【優先権主張番号】2105395
(32)【優先日】2021-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(71)【出願人】
【識別番号】511148123
【氏名又は名称】タレス
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ダビド・カルリエ
(72)【発明者】
【氏名】リオネル・マティアス
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ・ルイロン
(72)【発明者】
【氏名】イブ・メイニャン
【テーマコード(参考)】
5J070
【Fターム(参考)】
5J070AC02
5J070AC13
5J070AE04
5J070AK06
5J070BB04
5J070BB06
5J070BB13
5J070BB15
5J070BB16
5J070BC02
5J070BC06
5J070BC13
(57)【要約】 (修正有)
【課題】BDSスワップの問題を回避するために、モードSで動作する二次レーダーを管理する方法の提供。
【解決手段】モードSで動作する二次レーダーを管理する方法であって、
a)「探索モード」での検知であって、前記「探索モード」は、二次レーダーによって航空機が検知されるまで実施される、検知、
b)「追跡モード」での検知であって、前記「追跡モード」は、点呼呼び掛けに対する正当な応答が「探索モード」で検知された場合に実施される、検知
を含む方法において、「探索モード」での検知と、「追跡モード」での検知との間に実行される中間ステップa1)を含み、前記中間ステップは、
二次レーダーのノイズウィンドウ内で航空機の応答の存在又は不在を検知すること、前記ノイズウィンドウ内で航空機の応答が特定されない場合、第1の監視ウィンドウを使用して少なくとも1つの点呼呼び掛けを行うこと
を含むことを特徴とする方法に関する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モードSで動作する二次レーダーを管理する方法であって、
a)「探索モード」での検知であって、前記「探索モード」は、前記二次レーダーによって航空機が検知されるまで実施され、前記「探索モード」は、第1の監視ウィンドウにおいて、複数の全呼二次レーダー呼び掛け期間及び複数の点呼呼び掛け期間を含む、検知、
b)「追跡モード」での検知であって、前記「追跡モード」は、点呼呼び掛けに対する正当な応答が「探索モード」で検知された場合に実施され、前記「追跡モード」は、第2の監視ウィンドウにおいて、複数の全呼呼び掛け期間及び複数の点呼呼び掛け期間を含み、前記第2の監視ウィンドウは、全呼呼び掛けに応答して前記二次レーダーによって予測される航空機位置の周辺におけるものである、検知
を含む方法において、「探索モード」での前記検知と、「追跡モード」での前記検知との間に実行される中間ステップa1)を含み、前記中間ステップは、
i)前記二次レーダーのノイズウィンドウ内で前記航空機の応答の存在又は不在を検知すること、
ii)前記ノイズウィンドウ内で前記航空機の前記応答が特定されない場合、前記第1の監視ウィンドウを使用して少なくとも1つの点呼呼び掛けを行うこと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記二次レーダーは、アンテナを含み、前記第1の監視ウィンドウは、所与の航空機について、前記二次レーダーの前記アンテナの回転速度及び後続のアンテナ回転について予測される航空機位置に基づいて計算される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記予測される航空機位置は、全ての可能な航空機位置に基づいて計算され、前記全ての可能な航空機位置は、前記航空機の既知の経路及び前記二次レーダーによって受信されたレート関連の航空機パラメータに基づいて計算される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ノイズウィンドウは、前記航空機の理想的な経路と、前記二次レーダーによって予測される航空機位置との間の差に基づいて計算される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記航空機の前記理想的な経路は、前記航空機が一定の航空機速度で直線経路に沿って飛行するという仮定の組に基づいて計算される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記予測される航空機位置は、計算された不一致の組に基づいて計算され、不一致は、前記航空機の位置の推定と、前記航空機が最初に検知されたときから開始して、先行する回転の1つで測定された航空機位置との間の差に対応する、請求項2~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記不一致は、再帰フィルタを使用して時間に関して積分される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記再帰フィルタは、拡張カルマンフィルタである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記予測される航空機位置は、前記レーダーの測定誤差に基づいて計算される、請求項6~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の方法を実施するように構成されることを特徴とする二次レーダー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、レーダシステムに関し、特にモードSで動作する二次レーダーを管理する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
二次レーダーは、航空交通管制(ATC)に使用されている。二次レーダーは、航空機からの電磁波の反射を利用する1次レーダーとは対照的に、航空機に搭載されたトランスポンダ又は軍用機に搭載されたIFFレスポンダと、少なくとも航空機の識別(コード3/A)及び高度(コードC)を取得し、その位置を決定するために呼び掛けることによって対話する。
【0003】
第1世代の二次レーダー(モードAC)では、トランスポンダは、全ての二次レーダーへの呼び掛けに一律に応答するため、多くのRF汚染又は干渉が生じていた。更に、応答の内容は、データビットの数(多くとも12ビット)によって制約されていた。
【0004】
モードS(Sは、選択的を意味する)は、現在、広範に実装されており、RF汚染を減少させながら、レーダーのカバレッジ領域内で多数の航空機への呼び掛け及び追跡を行うことができる。
【0005】
第1世代の二次レーダーと同様に、モードS二次レーダーは、応答を検知した場合に航空機の高度及びアドレスを受信し、それから航空機の位置を判定する。レーダーは、航空機の種類、速度、目的地等に関する情報を受信することもできる。これらの追加的なデータは、番号で識別され、且つ要求時に利用可能な(1回の呼び掛け毎に1つのBDS)レジスタ(Comm-Bデータセレクタの場合にはBDS)の形式で提示される。
【0006】
モードSにおいて、呼び掛けは、全呼(全般的呼び掛け)又は点呼(選択的呼び掛け)のいずれかである。全呼呼び掛けにおいて、レーダーは、そのカバレッジ領域内に配置された全てのトランスポンダに対して、24ビットでそれらのモードSアドレス、すなわちそれらの識別番号を提供するように依頼する。
【0007】
レーダーが航空機を捕捉した場合、すなわち航空機の位置を予測可能である場合、それぞれの新たなアンテナ回転において、予測関連の不確実性に対応するために、最初に点呼モードで巨大な空間ウィンドウ内の航空機に呼び掛け、このフェーズは、以下では「探索モード」と呼ばれる。レーダーは、このように航空機の第1の精密な位置を取得することにより、後続の点呼呼び掛けに使用される呼び掛けウィンドウのサイズを縮小して、その監視領域内に存在する他の航空機への呼び掛けに他の空間/時間を割くことができる。この第2のフェーズは、以下では「追跡モード」と呼ばれる。
【0008】
図1は、所与のアンテナ回転における「追跡モード」のウィンドウのサイズの縮小を示し、このウィンドウは、「探索モード」で検知された航空機に中心を合わされる。
【0009】
航空機の捕捉が確認された場合、レーダーは、対象の航空機のトランスポンダを18秒間ロックアウトする。航空機のロックアウトされたトランスポンダは、航空機をロックアウトしたレーダーと同一のレーダー基地コードを有する呼び掛けレーダーからの全呼呼び掛けにもはや応答しない。このロックアウトは、ロックアウトコマンドを含む点呼呼び掛け毎に更新される(ロックアウト時間がリセットされ、すなわち18秒間継続する新たなロックアウトが開始される)。
【0010】
2つのレーダーが所与のトランスポンダに呼び掛けを送信し、これらの呼び掛けがほぼ同時にトランスポンダに到達した場合、トランスポンダは、2つの呼び掛けに対して1つの応答のみを発信する。
【0011】
トランスポンダによって呼び掛けが認識されたレーダー(レーダー1)は、自らへの呼び掛けに合致する応答(BDSを含む)を受信する。対照的に、呼び掛けが無視された二次レーダー(レーダー2)は、その呼び掛けではなく、レーダー1の呼び掛けに対応する同一の(従って誤った)応答を受信する。また、レーダー2は、自らが送った呼び掛けに対する応答を決して受信しない。
【0012】
このような問題は、BDSスワップと称される。BDSスワッピングの問題は、モードSの二次レーダーを高密度に含む領域で見られる。この問題は、監視システムの有効性に影響を及ぼすため、是正を要する。航空交通を管理する公知の自動システムは、このような不具合を扱い得るものの、アンテナが複数回回転した(すなわちアンテナの可動部分の複数回の回転)後に限られる。
【0013】
上述の問題及び結果は、欧州航空安全機関によってその文献EASA.2016.FC19 SC.001で詳述されている。特に、レーダーが不正確なデータを使用する場合、加速又は飛行経路の誤った変更を行う恐れがある。
【0014】
図2は、不正確なデータによって航空機との実際の距離に関してレーダーが誤りを犯した場合におけるBDSスワップの結果を示す。誤ったBDS応答を検知したレーダーは、それから誤った距離を導出する。従って、「追跡モード」における監視ウィンドウのサイズは、縮小するが、この誤った距離の程度に限られる。同一のアンテナ回転において、レーダーは、トランスポンダに呼び掛け続けるが、トランスポンダの応答が正しい監視ウィンドウに入っていないため、それらの応答を無視する。
【0015】
後続のアンテナ回転において、レーダーは、1つ前の位置に基づいて計算された予測ウィンドウ内のトランスポンダに呼び掛け続けるが、その位置は、誤っている。
図3に示すように、この予測位置が真の経路から離れているため、レーダーがトランスポンダを再び捕捉する可能性はない(例えば、レーダーには、目標が突然90°旋回したように見える)。
【0016】
トランスポンダは、ロックアウトされたために全呼呼び掛けに応答せず、従って、レーダーは、それを再配置することができない。トランスポンダのロックアウトが終了して、レーダーが航空機を再び捕捉するのを待つ必要がある。
【0017】
従来技術は、BDSスワップの問題を解決する解決策を提供している。
【0018】
第1の解決策は、UF/DFメッセージ(UF/DFは、アップリンク形式/ダウンリンク形式を表す)の整合性を検証することを含む。具体的には、呼び掛け(UFメッセージ)は、レーダーからトランスポンダに送られ、応答(DFメッセージ)は、トランスポンダからレーダーに送信される。
【0019】
応答が要求に対応しない場合、応答は、拒絶される。
【0020】
例えば、呼び掛けUF=4(監視、高度要求)に対して、応答DF=4(監視、高度応答)又は応答DF=20(Comm-B、高度応答)のみが期待される。呼び掛けUF=5(監視、要求識別)に対して、応答DF=5(監視、応答識別)又は応答DF=21(Comm-B、応答識別)のみが期待される。
【0021】
しかし、この解決策は、2つの呼び掛け装置が同一の情報を要求する場合、BDSスワップ問題を回避することができない。残念ながら、航空交通管制において同一の情報が要求されることは、稀ではない。
【0022】
第2の解決策は、レジスタBDS1,0、レジスタBDS2,0又は更にレジスタBDS3,0の第1バイトの整合性を検証することを含む。これらのレジスタの場合に限られるが、応答からBDS番号が抽出可能である場合、呼び掛けがこれらのBDSを対象としていたか否かを処理パイプラインが検証する。
【0023】
しかし、この解決案は、全てのBDSレジスタに適用できるわけではない。
【0024】
第3の公知の解決策は、トランスポンダから返送されたBDSを含むDF応答のパリティコードにBDSの数を含めることを含む。従って、呼び掛け装置が応答を受信した場合、パリティチェックにより、期待されるBDSレジスタにその応答が対応するか否かを検証することができる。この解決策は、Amendment 89 of ICAO Annex 10 Volume IVで紹介されているBDSオーバーレイと称する技術に対応する。
【0025】
しかし、この解決策の導入には、トランスポンダソフトウェアの更新が必要である点が制約となっている。
【0026】
文献D1“Data Integrity Augmentation by ADS-B SSR Hybrid Techniques”(Mariano et al.,2018 Integrated Communications,Navigation and Surveillance Conference)は、航空交通の管理システムのための対話型監視解決策を提示している。しかし、文献D1は、BDSスワッピングの問題の解決を求めるものではない。
【0027】
文献D2“Autonomous Continuous Target Tracking Technology for Safety in Air Traffic Radar Systems Network”(Koga et al.,2011 IEEE 6th International Symposium on Service Oriented System Engineering)は、2つのレーダーによる航空機の追跡を記述しているが、BDSスワッピングの問題の解決を求めるものではない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0028】
【非特許文献1】EASA.2016.FC19 SC.001
【非特許文献2】Amendment 89 of ICAO Annex 10 Volume IV
【非特許文献3】“Data Integrity Augmentation by ADS-B SSR Hybrid Techniques”(Mariano et al.,2018 Integrated Communications,Navigation and Surveillance Conference)
【非特許文献4】“Autonomous Continuous Target Tracking Technology for Safety in Air Traffic Radar Systems Network”(Koga et al.,2011 IEEE 6th International Symposium on Service Oriented System Engineering)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0029】
従って、二次レーダーを管理する改良された方法及び装置に対する必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0030】
本発明の主題は、従って、モードSで動作する二次レーダーを管理する方法であって、
a)「探索モード」での検知であって、前記「探索モード」は、二次レーダーによって航空機が検知されるまで実施され、「探索モード」は、第1の監視ウィンドウにおいて、複数の全呼二次レーダー呼び掛け期間及び複数の点呼呼び掛け期間を含む、検知、
b)「追跡モード」での検知であって、前記「追跡モード」は、点呼呼び掛けに対する正当な応答が「探索モード」で検知された場合に実施され、「追跡モード」は、第2の監視ウィンドウにおいて、複数の全呼呼び掛け期間及び複数の点呼呼び掛け期間を含み、前記第2の監視ウィンドウは、全呼呼び掛けに応答して二次レーダーによって予測される航空機位置の周辺におけるものである、検知
を含む方法において、「探索モード」での検知と、「追跡モード」での検知との間に実行される中間ステップa1)を含み、前記中間ステップは、
二次レーダーのノイズウィンドウ内で航空機の応答の存在又は不在を検知すること、
前記ノイズウィンドウ内で航空機の応答が特定されない場合、第1の監視ウィンドウを使用して少なくとも1つの点呼呼び掛けを行うこと
を含むことを特徴とする方法である。
【0031】
本方法は、有利には、以下の実施形態を含む。
【0032】
二次レーダーは、アンテナを含み、第1の監視ウィンドウは、所与の航空機について、二次レーダーのアンテナの回転速度及び後続のアンテナ回転について予測される航空機位置に基づいて計算される。
【0033】
予測される航空機位置は、全ての可能な航空機位置に基づいて計算され、全ての可能な航空機位置は、航空機の既知の経路及び二次レーダーによって受信されたレート関連の航空機パラメータに基づいて計算される。
【0034】
ノイズウィンドウは、航空機の理想的な経路と、二次レーダーによって予測される航空機位置との間の差に基づいて計算される。
【0035】
航空機の理想的な経路は、航空機が一定の航空機速度で直線経路に沿って飛行するという仮定の組に基づいて計算される。
【0036】
予測される航空機位置は、計算された不一致の組に基づいて計算され、不一致は、航空機の位置の推定と、航空機が最初に検知されたときから開始して、先行する回転の1つで測定された航空機位置との間の差に対応する。
【0037】
不一致は、再帰フィルタを使用して時間に関して積分される。
【0038】
再帰フィルタは、拡張カルマンフィルタである。
【0039】
予測される航空機位置は、レーダーの測定誤差に基づいて計算される。
【0040】
本発明は、上述の方法を実施するように構成された二次レーダーにも関する。
【0041】
本発明の他の特徴、詳細及び利点は、例として与えられる添付の図面を参照して与えられる記述を読むことで明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1】既に記述されており、(BDSスワップがない)名目上の事例における「探索モード」と「追跡モード」との間での呼び掛けウィンドウの縮小である。
【
図2】既に記述されており、(BDSスワップに続く)1つの失敗事例における「探索モード」と「追跡モード」との間での呼び掛けウィンドウの縮小である。
【
図3】既に記述されており、BDSスワップ及び航空機の誤った位置の出現である。
【
図5】本発明による方法で使用される各種のウィンドウ並びに応答及び関連するプロットの表現である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
【0044】
第1のステップa)において、二次レーダーによって航空機が検知されるまで「探索モード」を実施する。
【0045】
上に示すように、「探索モード」で使用される第1の監視ウィンドウは、モードSに関して欧州標準で指定されたレート関連の制約及び航空機の実際の位置で推定される不確実性の両方を受容するために極めて大きい。
【0046】
第1の監視ウィンドウは、所与の航空機について、二次レーダーのアンテナの回転速度及び後続のアンテナ回転について予測される航空機位置に基づいて計算され得る。
【0047】
図5に示す監視ウィンドウは、複数の独立要素:予測ウィンドウ及びノイズウィンドウを含む。
【0048】
予測ウィンドウは、航空機の予測位置の周辺に構築され、モードSに関する欧州標準が要求するレート関連の変化基準、例えば最大5gの横方向加速度及び最大1gの縦方向加速度を考慮する。
【0049】
ノイズウィンドウは、航空機の位置に中心を合わされ、先行する呼び掛けで生じた測定誤差の推定及び航空機の位置の予測に使用された予測モデルの推定された不正確さを考慮する。
【0050】
測定誤差の推定は、製造業者から提供されるデータである。
【0051】
予測モデルの不正確さは、レーダーによって推定される。これらは、飛行機の理想的な経路と、レーダーによって予測される飛行機位置との間の差を表す。飛行機の理想的な経路は、一定の速度での直線飛行又は一定の横方向及び縦方向加速での旋回を仮定して計算される。
【0052】
航空機の予測位置の不正確さは、測定された位置と、(物体が最初に検知されたときからの)先行する及び現在のアンテナ回転における予測位置との間の不一致(方位角、レーダーとの距離)を、再帰フィルタ(例えば、拡張カルマンフィルタ)を使用して時間に関して積分したものに基づいて、且つレーダー検知誤差(製造業者提供データ)及び経路モデルの不確実性を時間に関して積分したもの(操作者によって規定されるレーダーパラメータ)に基づいて推定される。
【0053】
所与のアンテナ回転において、二次レーダーのアンテナローブ内において且つ検知が「追跡モード」に切り替わる前に航空機が検知された場合、本方法は、中間ステップa1)を含む。
【0054】
中間ステップa1)は、2つの部分ステップを含む。
【0055】
第1の部分ステップi)は、点呼呼び掛けに対する航空機の応答が二次レーダーのノイズウィンドウ内で特定されるか否かを検知することを含む。
【0056】
航空機の応答がノイズウィンドウ内で特定されない2つの理由があり得る。
【0057】
第1の理由は、航空機の操縦、すなわち最大5gの横方向加速又は最大1gの縦方向加速の開始又は終了に関するものである。
【0058】
第2の理由は、受信された応答が、そのレーダーに対して意図されたものでなかったことであり、これは、BDSスワップの場合に典型的である。モードSのプロトコルは、応答内で航空機のBDSレジスタを識別しない。
【0059】
この場合、二次レーダーは、第1の監視ウィンドウを使用して新たな点呼呼び掛けを行う(第2の部分ステップii)。新たなBDSスワップが生じる確率は、極めて小さく、従って、目標の応答は、新たな呼び掛けの第1の監視ウィンドウのノイズウィンドウ内で特定されるはずである。
【0060】
民間交通の場合には極めて稀であるが、新たな点呼呼び掛けに続く航空機からの新たな応答がノイズウィンドウ内で特定されないと仮定して、第1の監視ウィンドウを使用して新たな点呼呼び掛けを行うなどである。
【0061】
呼び掛け及び監視ウィンドウの配置に使用されるアルゴリズムは、BDSスワッピングの問題を回避するために行われた新たな呼び掛けを考慮し、且つこのわずかな余分の処理負荷を管理できなければならない。従って、監視時間の制約は、一時的に大きくなる。
【0062】
上記にもかかわらず、この処理モードにより、BDSスワッピングの問題は、直ちに解決され、装置は、トラック損失を回避することができる。
【0063】
中間ステップa1)が実行された場合、「追跡モード」での検知を実施することができる。「追跡モード」により、より小さい監視ウィンドウで航空機を追跡することができる。
【0064】
これを行うために、レーダーは、「探索モード」の第1の監視ウィンドウよりもサイズが小さい第2の監視ウィンドウで一連の点呼呼び掛けを行う。第2の監視ウィンドウは、レーダーとの距離が正確に分かっている航空機の応答を捕捉するのに必要な最小サイズである。
【0065】
所与のアンテナ回転において、全てのトランザクション(呼び掛け/応答)が行われるまで又はレーダーのアンテナが航空機の方向を指さなくなるまで、「追跡モード」で呼び掛けが行われる。
【0066】
更に、中間ステップa1)において、点呼呼び掛けのいずれでも正当な応答が受信されず、且つ走査が終了していれば、本方法は、終了する。
【0067】
「探索モード」又は「追跡モード」のいずれかでの点呼呼び掛けの送信回数は、呼び掛けられた航空機の期待される位置に応じて動的に決定される。呼び掛けを行うために使用されるアルゴリズムは、特に、期待される応答が第2の呼び掛けに対する別の応答として同時に受信できないように呼び掛けを行わなければならない。
【0068】
本発明による方法は、航空機に現在設置されているトランスポンダの変更又は更に更新を必要としない。更に、二次レーダーの更新は、段階的に行われ得る。所与の領域の全ての二次レーダーが本発明による方法を実施する必要はない。
【0069】
本発明は、上述の方法を実施することが可能な二次レーダーにも関する。本発明による二次レーダーは、BDSスワップが生じた場合に追加的な呼び掛けウィンドウを挿入するように処理モジュールが構成されること以外、当業者に公知の二次レーダーと構造的に異ならない。
【外国語明細書】