(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022181185
(43)【公開日】2022-12-07
(54)【発明の名称】電気機械の固定子、その製造方法、及び電気機械
(51)【国際特許分類】
H02K 1/20 20060101AFI20221130BHJP
H02K 9/19 20060101ALI20221130BHJP
H02K 3/24 20060101ALI20221130BHJP
【FI】
H02K1/20 C
H02K9/19 A
H02K3/24 C
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022082730
(22)【出願日】2022-05-20
(31)【優先権主張番号】10 2021 113 440.4
(32)【優先日】2021-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】510238096
【氏名又は名称】ドクター エンジニール ハー ツェー エフ ポルシェ アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Dr. Ing. h.c. F. Porsche Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Porscheplatz 1, D-70435 Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100202647
【弁理士】
【氏名又は名称】寺町 健司
(72)【発明者】
【氏名】トビアス エンゲルハルト
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン エクスレン
【テーマコード(参考)】
5H601
5H603
5H609
【Fターム(参考)】
5H601AA16
5H601CC01
5H601CC11
5H601DD01
5H601DD09
5H601DD11
5H601DD30
5H601EE25
5H601GA02
5H601GB05
5H601GB12
5H601GB33
5H601GC12
5H601GE02
5H601GE10
5H601GE12
5H603AA13
5H603BB01
5H603BB09
5H603BB12
5H603CA01
5H603CA05
5H603CB02
5H603CC05
5H603CC07
5H603CC17
5H603CD02
5H603CE02
5H603CE05
5H609BB03
5H609PP06
5H609PP09
5H609QQ04
5H609QQ05
5H609QQ13
5H609RR37
5H609RR42
(57)【要約】 (修正有)
【課題】効果的な冷却機能及び高い機械的安定性を備える電気機械の新規の固定子、その製造方法、及び電気機械を提供する。
【解決手段】電気機械10の固定子11は、スロットを有するシートメタルブランク14からなる積層固定子コア13と、スロット絶縁体と共にスロットに配置された固定子巻線21とを備え、軸方向で見たとき、固定子巻線が、スロットから突き出て、積層固定子コアに対して横方向に突出し、積層固定子コアに横方向で隣接する巻線オーバーハング22を形成する。径方向で見たとき、クーラント流路24が、固定子巻線を収容するスロットに直接隣接して径方向内側に及び/又は径方向外側に形成される。積層固定子コアのスロットに収容された固定子巻線が電気絶縁性含浸材で含浸され、スロットの内部で、スロット絶縁体と固定子巻線との間の空いた空間が電気絶縁性含浸材で充填される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気機械(10)の固定子(11)であって、
スロット(20)を有するシートメタルブランク(14)からなる積層固定子コア(13)と、
スロット絶縁体(23)と共に前記積層固定子コア(13)の前記スロット(20)に配置された固定子巻線(21)とを備え、
前記スロット(20)の内部で、前記シートメタルブランク(14)のシートメタル材料から前記固定子巻線(21)を電気的に絶縁するために、それぞれの前記スロット絶縁体(23)が前記シートメタルブランク(14)と前記固定子巻線(21)との間に配置され、
軸方向で見たとき、前記固定子巻線(21)が、前記スロット(20)から突き出て、前記積層固定子コア(13)に対して横方向に突出し、前記積層固定子コア(13)に横方向で隣接する巻線オーバーハング(22)を形成する、
固定子(11)において、
径方向で見たとき、クーラント流路(24)が、前記固定子巻線(21)を収容する前記スロット(20)に直接隣接して径方向内側に及び/又は径方向外側に形成され、
前記積層固定子コア(13)の前記スロット(20)に収容された前記固定子巻線(21)が電気絶縁性含浸材(25)で含浸され、前記スロット(20)の内部で、前記スロット絶縁体(23)と前記固定子巻線(21)との間の空いた空間(26)が前記電気絶縁性含浸材(25)で充填される
ことを特徴とする固定子(11)。
【請求項2】
前記シートメタルブランク(14)のシートメタル材料が前記クーラント流路(24)と前記スロット(20)との間に配置されない
ことを特徴とする請求項1に記載の固定子。
【請求項3】
前記クーラント流路(24)が中に延びている前記シートメタルブランクの凹部(30)が、前記固定子巻線(21)が中に配置されている前記シートメタルブランクの前記スロット(20)に連通する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の固定子。
【請求項4】
前記クーラント流路(24)が中に延びている前記凹部(30)にシール(32)が配置され、前記シール(32)が、前記シートメタルブランク(14)に対して前記クーラント流路(24)を封止する
ことを特徴とする請求項1に記載の固定子。
【請求項5】
前記シール(32)のみが前記クーラント流路(24)を前記スロット(20)から分離することを特徴とする請求項4に記載の固定子。
【請求項6】
前記シール(32)が前記スロット絶縁体(23)の一部分によって形成されることを特徴とする請求項4に記載の固定子。
【請求項7】
径方向内側で前記積層固定子コア(13)を封止するスリーブ(35)が、径方向で見たとき、径方向内側で前記積層固定子コア(13)に隣接する
ことを特徴とする請求項1に記載の固定子。
【請求項8】
軸方向で見たとき、エンドプレート(31)が前記積層固定子コア(13)に隣接し、前記エンドプレート(31)が、前記積層固定子コア(13)の軸方向側で前記クーラント流路(24)を封止する
ことを特徴とする請求項1に記載の固定子。
【請求項9】
回転子(15)と、
固定子(11)と、を備える電気機械(10)であって、
前記固定子(11)が径方向外側で前記回転子(15)を囲み、前記回転子(15)と前記固定子(11)との間に空隙(L)を形成する、
電気機械(10)において、
前記電気機械(10)の前記固定子(11)が、請求項1に記載されるように設計される
ことを特徴とする電気機械(10)。
【請求項10】
請求項1に記載の固定子(11)を製造するための方法であって、
前記スロット(20)及び前記凹部(30)を有する前記シートメタルブランク(14)からなる前記積層固定子コア(13)を提供するステップと、
スロット絶縁体(23)を提供し、前記スロット絶縁体(23)を前記スロット(20)に配置するステップと、
前記固定子巻線(21)を前記スロット(20)に配置するステップと、
プレースホルダ(34)を前記凹部(30)に配置するステップと、
前記電気絶縁性含浸材(25)を提供し、前記固定子巻線(21)を前記電気絶縁性含浸材(25)で含浸するステップであって、このプロセス中、前記スロット(20)の内部で、前記スロット絶縁体(23)と前記固定子巻線(21)との間の空いた空間(26)が前記電気絶縁性含浸材(25)で充填される、ステップと、
前記凹部(30)から前記プレースホルダ(34)を取り外し、それにより前記クーラント流路(24)を解放するステップと
を少なくとも含む方法。
【請求項11】
まず、前記プレースホルダ(34)が前記凹部(30)に配置され、次いで、前記固定子巻線(21)が前記スロット(20)に配置されることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
まず、前記固定子巻線(21)が前記スロット(20)に配置され、次いで、前記プレースホルダ(34)が前記凹部(30)に配置されることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記プレースホルダ(34)及び前記固定子巻線(21)が、軸方向で前記積層固定子コア(13)の同じ側から前記凹部(30)及び前記スロット(20)に押し込まれることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気機械の固定子、固定子を備える電気機械、及び固定子を製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気機械の基本的な構造は、実践的な経験から知られている。すなわち、電気機械は固定子を備え、固定子は、ハウジングと、積層固定子コアと、巻線オーバーハングを有する固定子巻線とを有する。さらに、電気機械は回転子を備え、回転子は、回転子シャフト及び積層回転子コアを有する。
【0003】
電気機械の動作中、電気機械の構成要素で電力損失が生じる。電力損失は、熱として放出される。ここで、電気機械を最適な動作温度で動作させることができるように、電気機械から熱を放散させることが重要である。実践的な経験から、冷却回路を通してクーラントを流すことによって電気機械の固定子を冷却することができることが既に知られている。
【0004】
(特許文献1)には、固定子積層体で構成された積層固定子コアを備える電気機械の固定子が開示されている。積層固定子コアはスロットを有し、スロットは、固定子巻線を収容するために使用される。積層固定子コアの固定子積層体に貫通開口部が導入され、前記開口部は、積層固定子コアに位置合わせされて、冷却チャネルを形成する。冷却チャネルは、固定子巻線を収容するスロットに対して周方向で、径方向の間隔及びオフセットを有して配置される。
【0005】
(特許文献2)には、積層固定子コア及び固定子巻線を備える電気機械の固定子が開示されている。積層固定子コアを冷却するための冷却チャネルは、固定子巻線から離れて、積層固定子コアを通って延びている。
【0006】
(特許文献3)及び(特許文献4)には、電気機械の固定子の固定子巻線の巻線オーバーハングの冷却がそれぞれ開示されている。この場合、クーラントは、各巻線オーバーハングの周りを流れる。
【0007】
(特許文献5)には、積層固定子コア及び固定子巻線を備える電気機械の別の固定子が開示されている。これらの固定子巻線は積層固定子コアのスロットに収容され、冷却のためにクーラントが固定子巻線の周りを流れる。この場合、クーラントは、巻線を収容するスロットを通って流れる。電気機械の固定子と回転子との間の隙間にクーラントが入り込むのを防ぐために、スリーブとして設計された封止手段が固定子の径方向内側に提供される。
【0008】
電気機械の固定子の冷却については先行技術から既に知られているが、効果的な冷却機能及び高い機械的安定性を備える電気機械の新規の固定子が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際特許出願第2013/075 783号パンフレット
【特許文献2】独国特許出願公開第10 2017 214 427号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第10 2016 101 705号明細書
【特許文献4】独国特許出願公開第10 2019 113 950号明細書
【特許文献5】独国特許出願公開第10 2017 102 141号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、電気機械の新規の固定子、そのような固定子を備える電気機械、及びそのような固定子を製造するための方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的は、請求項1に記載の電気機械の固定子によって達成される。
【0012】
径方向で見たとき、クーラント流路は、固定子巻線を収容するスロットに直接隣接して径方向内側に及び/又は径方向外側に形成される。積層固定子コアのスロットに収容された固定子巻線が電気絶縁性含浸材で含浸され、スロットの内部で、スロット絶縁体と固定子巻線との間の空いた空間が電気絶縁性含浸材で完全に充填される。
【0013】
本発明による固定子では、積層固定子コアのスロットに収容された固定子巻線が電気絶縁性含浸材で含浸され、正確には、スロットの内部で、スロット絶縁体と固定子巻線との間の空いた空間が電気絶縁性含浸材で完全に充填されることが好ましい。したがって、クーラントがスロット自体を通って流れることはない。そうではなく、クーラントは、固定子巻線を収容するスロットに直接隣接して径方向内側に及び/又は径方向外側に形成されたクーラント流路を通って流れる。それにより、固定子の高い機械的安定性と併せて、固定子の効果的な冷却を保証することができる。
【0014】
シートメタルブランクのシートメタル材料がクーラント流路とスロットとの間に配置されないことが好ましい。クーラント流路が中に延びているシートメタルブランクの凹部は、シートメタルブランクのスロットに連通する。これにより、特に、固定子巻線から、したがって電気機械の固定子から熱を効果的に放散することが可能になる。
【0015】
クーラント流路が中に延びている凹部にシールが配置されることが好ましく、前記シールは、シートメタルブランクに対してクーラント流路を封止する。これにより、特に電気機械の固定子の有利な製造が可能になる。
【0016】
電気機械を請求項9に定義し、固定子を製造するための方法を請求項10に定義する。
【0017】
本発明の好ましい発展形態は、従属請求項及び以下の説明に記載する。本発明の例示的実施形態を、図面を参照してより詳細に説明するが、これらに限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】固定子及び回転子の領域での電気機械を通る概略的な軸方向断面図である。
【
図2】固定子の製造中の、
図1の固定子の詳細図である。
【
図4】
図2の詳細図に対する、固定子の代替詳細図である。
【
図7】
図6の詳細図に対する、固定子の代替詳細図である。
【
図8】固定子の製造に使用されるプレースホルダの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、電気機械10を通る概略的な軸方向断面を示す。電気機械10は、ハウジング12及び積層固定子コア13を有する固定子11を備え、積層固定子コア13は、複数のシートメタルブランク14で構成される。さらに、電気機械10は、回転子シャフト16及び積層回転子コア17を有する回転子15を備え、積層回転子コア17も同様に、複数のシートメタルブランク18で構成される。回転子15、すなわちシャフト16は、軸受19によって固定子11のハウジング12に回転可能に取り付けられる。固定子11と回転子15との間、すなわち積層固定子コア13と積層回転子コア17との間に空隙Lが形成される。
【0020】
既に説明したように、固定子11は積層固定子コア13を有し、積層固定子コア13はシートメタルブランク14で構成される。シートメタルブランク14、すなわち積層固定子コア13は複数のスロット20を有し、これらのスロット20は、固定子巻線21を収容するために使用される。固定子巻線21は、積層固定子コア13のスロット20の内部で積層固定子コア13の軸方向に延びており、軸方向で見たとき、固定子巻線21は、スロット20から延び出ており、積層固定子コア13に対して横方向で突出し、積層固定子コア13に横方向で隣接する巻線オーバーハング22を形成する。
【0021】
スロット20は、固定子巻線21だけでなくスロット絶縁体23も収容する。スロット絶縁体23は、積層固定子コア13のシートメタルブランク14のシートメタル材料と固定子巻線21との間に配置され、積層固定子コア13から固定子巻線21を電気的に絶縁する。
【0022】
本発明による固定子11の場合、径方向で見たとき、クーラント流路24は、固定子巻線21を収容するスロット20に直接隣接して径方向内側に及び/又は径方向外側に形成される。
【0023】
スロット20に配置された固定子巻線21は電気絶縁性含浸材25で含浸され、より具体的には、スロット20の内部でスロット絶縁体23と固定子巻線21との間の空いた空間26、及びスロット20の内部で固定子巻線21同士の空いた空間26が電気絶縁性含浸材25で完全に充填される。
【0024】
特に、それぞれのスロット20の領域で固定子巻線21とスロット絶縁体23との間の空いた空間26及び固定子巻線21同士の空いた空間26を完全に充填する電気絶縁性含浸材25は、固定子巻線21を収容するスロット20の領域で固定子11の高い機械的安定性を保証する。径方向内側で及び/又は径方向外側でスロット20に直接隣接するクーラント流路24を介して、固定子巻線21から、したがって固定子11から熱を効果的に放散させることができる。
【0025】
クーラント流路24は、固定子巻線21を収容するスロット20に直接隣接して形成される。シートメタルブランク14、すなわち積層固定子コア13のシートメタル材料は、径方向でクーラント流路24とスロット20との間には存在しない。クーラント流路24が中に延びているシートメタルブランク14の凹部30は、シートメタルブランク14のスロット20に連通する。固定子11を形成するためにまだ設置されていないそれぞれのシートメタルブランク14自体においては、完成した固定子11のクーラント流路24が中に延びる凹部30は、径方向内側で及び/又は径方向外側でスロット20の延長部分を形成しており、周方向で見たときにスロット20よりも小さい周方向幅を有する。
【0026】
凹部30及びクーラント流路24は、周方向でスロット20の中央に配置されることが好ましい。
【0027】
スロット20に直接隣接するクーラント流路24が径方向内側と径方向外側との両方にあるとき、径方向内側のクーラント流路24は、周方向で、径方向外側のクーラント流路24よりも小さい周方向幅を有することが好ましい。
【0028】
図1の電気機械10(その詳細は
図2及び
図3並びに
図6に示す)において、固定子11のハウジング12の第1の軸方向側では、この軸方向側に形成された巻線オーバーハング22の方向にクーラント流入27が行われ、クーラントは、この巻線オーバーハング22の周りに直接流れ、次いで矢印28に従って積層固定子コア13を通って、すなわち積層固定子コア13のクーラント流路24を通って軸方向に流れ、反対側の第2の軸方向側で積層固定子コア13から出て、この軸方向側に形成された巻線オーバーハング22の周りを直接流れ、したがって冷却し、クーラント流出29によって固定子11のハウジング12から放出される。クーラント流出29からクーラントを熱交換器33に送給してクーラントから熱を除去し、熱の除去後、冷却用閉回路という意味で、ポンプ(図示せず)を使用してクーラントを再びクーラント流入27に送給することができる。
【0029】
図1では、軸方向部分31a及び径方向部分31bを有するエンドプレート31は、積層固定子コア13の両方の軸方向端部に配置されている。
【0030】
これらのエンドプレート31、すなわちエンドプレート31の軸方向部分31aは、クーラントが積層固定子コア13の第1の軸方向側で漏れることなくクーラント流路24に入り、反対側の第2の軸方向側で漏れることなくクーラント流路24から出ることができることを保証する。
【0031】
さらに、エンドプレート31、すなわちエンドプレート31の径方向部分31bは、巻線オーバーハング22を冷却するクーラントが巻線オーバーハング22から回転子15の領域に達するのを防ぐ。既に述べたように、積層固定子コア13のスロット20は、固定子巻線21だけでなくスロット絶縁体23も収容する。
【0032】
図1、
図2、
図3、及び
図6の例示的実施形態では、クーラント流路24が中に延びている凹部30にシール32が配置されている。シール32は、シートメタルブランク14に対してクーラント流路24を封止する。
図6では、シール32は、クーラント流路24の周囲の全面でクーラント流路24を画定する。シール32は、クーラント流路24を通って流れるクーラントが回転子15の方向に、すなわち回転子15と固定子11との間に形成された空隙Lの方向に径方向内側へ流れるのを防ぎ、それによりクーラントが回転子15の領域に達するのを防ぐ。
【0033】
図1、
図2、
図3、及び
図6の例示的実施形態では、シール32は、クーラント流路24をスロット20から分離する。したがって、
図6の断面図で見たとき、スロット絶縁体23とシール32とがそれぞれ別個の収容空間を画定し、すなわち、スロット絶縁体23は、固定子巻線21及び含浸材25を収容するための収容空間を画定し、シール32は、クーラント流路24を収容するための収容空間を画定する。この場合、
図6によれば、シール32は、スロット絶縁体23の一部分によって形成される。
【0034】
図6とは異なり、
図7は、
図6と同様にシール32がスロット絶縁体の一部分によって形成されているが、シール32がクーラント流路24をスロット20から分離していない本発明の実施形態を示す。
図7では、この分離は、スロット絶縁体23と固定子巻線21との間の空いた空間26に導入される含浸材25によって達成される。
【0035】
したがって、
図1~
図3、
図6及び
図7の例示的実施形態では、一方ではエンドプレート31によって、他方ではシール32によって、クーラント側において固定子11から回転子15を封止することができ、このようにして固定子11から回転子15の領域にクーラントが入り込むのを防ぐ。クーラント流入27によって固定子11のハウジング12に入るクーラントは、まず、この第1の軸方向側に配置された巻線オーバーハング22の周りを直接流れることによって巻線オーバーハング22を冷却し、次いで、それぞれのエンドプレート31の軸方向部分31aを通ってクーラント流路24に入り、これらの流路24は少なくとも部分的にシール32によって画定される。積層固定子コア13の反対側の第2の軸方向側では、クーラントは、それぞれのエンドプレート31の軸方向部分31aを通ってクーラント流路24から出て、先と同様に、そこに配置された巻線オーバーハング22の周りを直接流れることによって巻線オーバーハング22を冷却し、その後、クーラント流出29によって固定子11のハウジング12から放出される。
【0036】
エンドプレート31は、巻線オーバーハング22を冷却するクーラントが回転子15の領域に達するのを防ぎ、シール32は、スロット20に配置された固定子巻線21を冷却するためにクーラント流路24を通って流れるクーラントがクーラント流路24から回転子15の領域に達するのを防ぐ。
【0037】
電気機械10(
図1~
図3、
図6、及び
図7に示される)の固定子11(同じ図に示される)を製造するための手順として、まず、積層シートメタルブランク14から積層固定子コア13が提供され、シートメタルブランク14、したがって積層固定子コア13は、一方でスロット20を有し、他方でスロット20に直接連通する凹部30を有する。
【0038】
さらに、スロット絶縁体23が提供され、スロット絶縁体23はスロット20に配置される。
図6及び
図7では、スロット絶縁体23の一部分が、凹部30に配置されるシール32を形成する。
【0039】
固定子巻線21がスロット20に配置される。プレースホルダ34が凹部30に配置される。
【0040】
図8は、そのようなプレースホルダ34を示す。また、
図2及び
図3並びに
図4及び
図5にプレースホルダ34が示されており、プレースホルダ34は、固定子11の製造又は生産中に凹部30内に、すなわち凹部30に配置されたシール32の内部に配置される。
【0041】
まずプレースホルダ34を凹部30又はシール32に配置し、次いで固定子巻線21をスロット20又はスロット絶縁体23に配置することが可能である。同様に、固定子巻線21をスロット20に配置し、次いでプレースホルダ34を凹部30に配置することも可能である。
【0042】
固定子巻線21がスロット20に配置され、プレースホルダ34が凹部30に配置された後、固定子巻線21は電気絶縁性含浸材25で含浸され、このプロセス中、スロット20の内部で、スロット絶縁体23と固定子巻線21との間の空いた空間26、及び隣接する固定子巻線21同士の間の空いた空間26が、電気絶縁性含浸材25で完全に充填されることが好ましい。含浸材25は、プレースホルダ34が配置されている領域に入り込まず、したがって、プレースホルダ34が凹部30から取り除かれた後、プレースホルダ34は、凹部30の領域でクーラント流路24を解放する。クーラント流路24は、クーラント流路24の周方向で見たときに
図6では全面で、及び
図7では部分的に、シール32によって画定されている。
【0043】
図1~
図3、
図6、及び
図7の固定子11の製造中、スロット絶縁体23がスロット20に配置された後、固定子巻線21がスロット20に配置される前、及びプレースホルダ34が凹部30に配置される前に、エンドプレート31が積層固定子コア13の軸方向端部に配置され、特に成形される。
【0044】
使用される含浸材は、例えばエポキシ樹脂でよい。含浸は、滴下含浸若しくは浸漬含浸、又は真空法によって達成することができる。
【0045】
固定子11の製造中、プレースホルダ34及び固定子巻線21は、軸方向で積層固定子コア13の同じ側から凹部30及びスロット20に押し込まれることが考えられる。プレースホルダ34を凹部30に挿入しやすくするために、プレースホルダ34は、円錐状に先細りした先端部34aを有する。これにより、特に有利にプレースホルダ34を凹部30に導入することができる。プレースホルダ34の取扱いを簡単にするために、プレースホルダ34は、先端部34aとは反対側の端部にグリップ34bを有する。プレースホルダ34は、グリップ34bの部分で幅が広くなっており、グリップ34bは、それぞれの凹部30へのそれぞれのプレースホルダ34の挿入深さを制限するストッパを画成する。
【0046】
プレースホルダ34が凹部30に押し込まれる軸方向側で、固定子巻線21は、固定子巻線21又は固定子巻線21の巻線オーバーハング22が一方では凹部30へのプレースホルダ34の妨げのない導入を可能にし、他方では凹部30からのプレースホルダ34の妨げのない取外しを可能にするように設計される。
【0047】
図1~
図3、
図6、及び
図7の例示的実施形態では、エンドプレート31は、積層固定子コア13の軸方向端部の領域に存在して、固定子11から回転子15の方向へのクーラントの流れを防ぐ。
図4及び
図5は、本発明による固定子の変形形態を示し、この変形形態では、クーラントが回転子15の領域に入り込むのを防ぐスリーブ35が、径方向内側で積層固定子コア13に隣接している。このスリーブ35があることで、凹部30のシール32をなくすことが可能になる。しかし、
図4及び
図5では、スリーブ35があるにもかかわらず、凹部30でシール32も使用されている。
【0048】
すべての他の詳細については、
図4及び
図5の例示的実施形態は、
図1~
図3、
図6、及び
図7の例示的実施形態に対応し、したがって、不要な繰り返しを避けるために、同一のサブアセンブリには同一の参照番号が使用され、
図1~
図3、
図6、及び
図7の実施形態に関する記述を参照することができる。
【符号の説明】
【0049】
10 電気機械
11 固定子
13 積層固定子コア
14 シートメタルブランク
15 回転子
20 スロット
21 固定子巻線
22 巻線オーバーハング
23 スロット絶縁体
24 クーラント流路
25 電気絶縁性含浸材
26 空いた空間
30 凹部
31 エンドプレート
32 シール
34 プレースホルダ
35 スリーブ
L 空隙