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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022181191
(43)【公開日】2022-12-07
(54)【発明の名称】インバータ装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20221130BHJP
   B60L 3/00 20190101ALI20221130BHJP
   B60L 9/18 20060101ALN20221130BHJP
【FI】
H02M7/48 M
B60L3/00 J
B60L9/18 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022084124
(22)【出願日】2022-05-23
(31)【優先権主張番号】202110573293.2
(32)【優先日】2021-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】300052246
【氏名又は名称】日本電産エレシス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100138689
【弁理士】
【氏名又は名称】梶原 慶
(72)【発明者】
【氏名】酒井 和弘
(72)【発明者】
【氏名】島津 学史
(72)【発明者】
【氏名】中田 雄飛
【テーマコード(参考)】
5H125
5H770
【Fターム(参考)】
5H125AA01
5H125AC12
5H125BB00
5H125EE08
5H125EE16
5H770BA02
5H770DA03
5H770DA41
5H770FA13
5H770HA02X
5H770HA03X
5H770HA07Z
5H770HA09X
5H770JA17W
5H770LA01X
5H770LA02X
5H770LB10
(57)【要約】      (修正有)
【課題】モータの回転時や、インバータ回路、放電回路、モータ、スイッチング素子、関連センサ等の故障時においても、コンデンサを放電させて安全性を向上させるインバータ装置を提供する。
【解決手段】インバータ装置2には、複数のスイッチング素子202とコンデンサ400とを有するインバータ回路20と、直列に接続された第1の放電抵抗501と放電スイッチ601,602とを有し、コンデンサ400の正極電極と負極電極との間に接続されたアクティブ放電回路30と、スイッチング素子202と放電スイッチ601,602とにそれぞれ接続された制御部110を有し、スイッチング素子202と放電スイッチ601,602とを制御する制御回路10と、を備える。制御部110は、インバータ装置外部から放電指令を受け、モータ回転時に前記放電スイッチをオンして前記コンデンサ400を放電させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インバータ装置であって、
車両のモータに接続され、複数のスイッチング素子とコンデンサとを有するインバータ回路と、
第1の放電抵抗と放電スイッチとが直列に接続され、前記コンデンサと並列に接続されたアクティブ放電回路と、
前記インバータ回路および前記アクティブ放電回路を制御する制御部を有する制御回路と、を有し、
前期制御部は、前記モータが回転している状態でインバータ装置の外部から放電指令を受けると、前記放電スイッチをオンして前記第1の放電抵抗を介して前記コンデンサを放電させることを特徴とする、インバータ装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記モータが回転しておらず、前記インバータ回路が正常である場合に、前記インバータ回路を介して前記コンデンサを放電させるように、前記インバータ回路の前記スイッチング素子のオンオフを制御することを特徴とする、請求項1に記載のインバータ装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記モータが回転せず、インバータ回路が故障している場合には、前記放電スイッチをオンして、第1の放電抵抗を介してコンデンサを放電させることを特徴とする、請求項1に記載のインバータ装置。
【請求項4】
前記インバータ回路は、前記コンデンサを放電するための第2の放電抵抗をさらに備え、前記第2の放電抵抗は、前記コンデンサと並列に接続され、
第2の放電抵抗の抵抗値は、第1の放電抵抗よりも大きいことを特徴とする、請求項1に記載のインバータ装置。
【請求項5】
前記放電スイッチは、直列に接続された2つのスイッチを含むことを特徴とする、請求項1に記載のインバータ装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記インバータ回路の故障を検出して放電指令を受信すると、前記放電スイッチをオンして前記第1の放電抵抗を介して前記コンデンサを放電させることを特徴とする、請求項1に記載のインバータ装置。
【請求項7】
前記放電スイッチはMOSFETで構成されていることを特徴とする、請求項1に記載のインバータ装置。
【請求項8】
並列に接続された複数のアクティブ放電回路を含むことを特徴とする、請求項1に記載のインバータ装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記第1の放電抵抗による放電が前回行われてから所定時間が経過した場合に、前記放電スイッチをオンさせることを特徴とする、請求項1に記載のインバータ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載用インバータ装置に関し、特に、コンデンサの放電を制御する制御部を備え、制御部が放電指令を受けたときに、インバータ装置のコンデンサを放電させるための車載用インバータ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車の高電圧安全は車全体の機能安全において注目すべき問題であり,インバータ装置自体は非緊急及び緊急状態で直流コンデンサの放電を実現しなければならない。
【0003】
通常、イグニッションスイッチがオフされ、車両制御装置(VCU)がメインリレーをオフしたときに、インバータ装置が放電可能となる。
【0004】
緊急状態とは、車両の衝突や低圧バッテリの停電等の状態をいう。
【0005】
いずれの場合も、インバータ装置のパワーダウンを招く。
【0006】
現在中国の法規では,完成車の停電は5秒以内に完了しなければならないと規定されている。
【0007】
実際にインバータ装置が放電するまでの時間は、放電指令の送信からのリレーの遅れや、実際にリレーが完全に開くまでに要する時間を考慮すると、通常2秒以上である。
【0008】
放電方式は様々であり,抵抗放電又は能動デバイス放電はいずれも高圧直流バスの放電を実現することができる。
【0009】
例えば、特許文献1には、車両衝突時には、リレーをオフして放電スイッチング素子40をオンすることにより(明細書段落0045から0056)、放電抵抗30を用いて放電する一方、車両停止時に放電する場合には、イグニッションスイッチIGオフ時にリレーがオフすると共に放電スイッチング素子40がオフして放電抵抗100を介して放電する(明細書段落0065以降)ことが記載されている。
【0010】
要するに、上記特許文献に開示された発明では、車両衝突時には放電抵抗30を用いて放電を行うことができ、車両停止時には放電抵抗100を用いて放電を行うことができる。
【0011】
従来、インバータ装置におけるフィルタコンデンサを放電させるために、インバータ回路や放電抵抗を用いてフィルタコンデンサを放電させることが一般的である。
【0012】
しかしながら、自動車の衝突や回路故障等により、インバータ装置がフィルタコンデンサを速やかに放電できなくなると、自動車の故障や感電等が発生するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特許第6171885号公報特許文献1
【0014】
図7は、従来のインバータ装置の構成を示す模式図である。
従来のインバータ装置では、フィルムコンデンサを常時放電させるための放電抵抗(破線で囲まれている)が設けられている。
【0015】
この放電抵抗の抵抗値が大きいため、フィルムコンデンサの放電時間が長い。
【0016】
これにより、車両制御装置からのADC(Active Dischargeの略で急速放電を含む)指令に応じてスイッチング素子が制御され、インバータに電流が流れ(実線で示す)、モータにトルクが発生しないように放電される。
【0017】
しかしながら、従来技術では、モータの回転時(フェールセーフ制御時を含む)には、急速放電を行うことができない。
【0018】
ここで、上記フェールセーフ制御とは、スイッチング素子の破壊やバッテリの過充電を防止するためのスイッチング素子の制御方法であって、インバータ回路における上アームと下アームの一方を全相オンさせ、他方を全相オフさせる制御であり、ASC制御と略称する。
【0019】
ASC制御が行われている間、モータは回転している。
【発明の概要】
【0020】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、モータの回転時や、インバータ回路、放電回路、モータ、スイッチング素子、関連センサ等が故障した場合であっても、フィルタコンデンサを速やかに放電させることができるインバータ装置を提供することを目的とする。
【0021】
また、インバータ装置は、制御部が車両制御装置からアクティブ放電指令を受けたときに、制御部が放電スイッチのゲートドライバに指令を出力することにより放電スイッチを制御して、フィルタコンデンサを急速放電させることができる。
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
上記課題を解決するために、本発明に係るインバータ装置の第1の態様では、車両のモータに接続され、複数のスイッチング素子とコンデンサとを有するインバータ回路と、直列に接続された第1の放電抵抗と放電スイッチとを有し、前記コンデンサに並列に接続されたアクティブ放電回路と、前記インバータ回路及び前記アクティブ放電回路を制御する制御部を有する制御回路とを備え、前記制御部は、前記モータが回転している状態で前記インバータ装置外部から放電指令を受けると、前記放電スイッチをオンして前記コンデンサを前記第1の放電抵抗を介して放電させる。
【0023】
本発明に係るインバータ装置の第2の態様は、第1の態様において、前記制御部は、前記モータが回転しておらず、前記インバータ回路が正常である場合に、前記インバータ回路を介して前記コンデンサを放電させるように前記インバータ回路の前記スイッチング素子のオンオフを制御することを特徴とする。
【0024】
このような構成によれば、第1の放電抵抗を用いることなく、急速放電を行うことができる。
【0025】
本発明に係るインバータ装置の第3の態様は、第1の態様において、前記制御部は、前記モータが回転しておらず、前記インバータ回路が故障している場合に、前記放電スイッチをオンして、前記第1の放電抵抗を介して前記コンデンサを放電させることが好ましい。
【0026】
この構成によれば、インバータ回路のスイッチング素子を用いることなく、急速放電を行うことができる。
【0027】
本発明に係るインバータ装置の第4の態様は、上記第1の態様において、前記インバータ回路は、前記コンデンサを放電するための第2の放電抵抗をさらに備え、前記第2の放電抵抗は、前記コンデンサと並列に接続され、前記第2の放電抵抗の抵抗値は、前記第1の放電抵抗よりも大きい。
【0028】
この構成によれば、第1の放電抵抗やインバータ回路のスイッチング素子が機能しなくても、常に放電を行うことができる。
【0029】
本発明に係るインバータ装置の第5の態様は、第1の態様において、前記放電スイッチは、直列に接続された2つのスイッチを含むことを特徴とする。
【0030】
この構成によれば、放電スイッチのうちの2つのスイッチの一方が導通を継続する導通故障状態であっても、他方のスイッチが正常であれば、適切なタイミングで放電を行うことができる。
【0031】
すなわち、放電スイッチを1つだけ設けた場合に比べて安全性が向上する。
【0032】
スイッチング素子等のインバータ回路の一部が故障すると、インバータ回路による急速放電ができなくなる。
【0033】
本発明に係るインバータ装置の第6の態様は、上記第1の態様において、前記制御部は、前記インバータ回路の故障を検出し、前記放電指令を受信した場合に、前記放電スイッチをオンして前記第1の放電抵抗を介して前記コンデンサを放電させることが好ましい。
【0034】
このような構成によれば、インバータ回路が故障しても、急速放電を行うことができる。
【0035】
本発明に係るインバータ装置の第7の態様は、第1の態様において、前記放電スイッチは、MOSFETで構成されていることを特徴とする。
【0036】
これにより、IGBTを用いた場合に比べてコストを低減することができる。
【0037】
本発明に係るインバータ装置の第8の態様は、第1の態様において、前記アクティブ放電回路は、複数並列に接続されていることを特徴とする。
【0038】
このような構成によれば、一方のアクティブ放電回路が故障しても、他方のアクティブ放電回路によって急速放電を行うことができる。
【0039】
本発明に係るインバータ装置の第9の態様は、上記第1の態様において、前記制御部は、前回第1抵抗による放電を実施してから所定の時間が経過した場合に前記放電スイッチをオンさせることが好ましい。
【0040】
この構成によれば、第1の抵抗を使用してから十分な時間が経過した後、すなわち十分に放熱された状態になった後に、再び第1の抵抗を使用して急速放電を行うことができる。
【0041】
すなわち、第1抵抗の故障を防止することができる。
【発明の効果】
【0042】
本発明のインバータ装置によれば、モータの回転時や、インバータ回路、放電回路、モータ、スイッチング素子、関連センサ等の故障時においても、コンデンサを放電させて安全性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1図1は、本発明に係るインバータ装置の構成を示す模式図である。
図2図2は、本発明に係るインバータ装置の制御フローチャート
図3図3は、本発明のインバータ装置が第1の状態で放電していることを示す模式図である。
図4図4は、本発明のインバータ装置が第2の状態で放電していることを示す模式図である。
図5図5は、本発明のインバータ装置が第3の状態で放電していることを示す模式図である。
図6図6は、本発明に係るインバータ装置の他の構成を示す模式図である。
図7図7は、従来のインバータ装置の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、本発明に係るインバータ装置の好適な実施形態について図面を参照して説明する。
【0045】
各図面において、同一又は相当部分には同一符号を付して説明する。
【0046】
図1は、本発明に係るインバータ装置2の構成を示す模式図である。
【0047】
本発明に係る車載電気システムは、一例として、電源1と、インバータ装置2と、モータ部3と、車両制御装置4とを備える。
【0048】
電源1は高圧直流バッテリ装置であり、その出力電圧は例えば300 Vである。
【0049】
車載電気システムは、電源1の出力電圧によってモータ部3を駆動する。
【0050】
モータ部3は、ロータとステータとを有し、三相交流の供給により回転駆動されるモータである。
【0051】
モータ部3としては、例えば永久磁石同期モータを用いることができる。
【0052】
モータ部3にはセンサ301が固定されており、このセンサ301は例えばレゾルバである。
【0053】
このセンサ301は、モータ部3の回転数を検出するためのものであり、センサ301は、検出した回転数検出信号を制御部110に送信する。
【0054】
車両制御装置4は、運転者の指令や車両状態等に応じてモータの動作状態や電力出力等を制御する制御手段であり、車両が失火したり、車両衝突が発生したり、車両故障が検出された場合等に、制御部110に対してアクティブ放電指令を発する。
【0055】
インバータ装置2は、制御回路10と、インバータ回路20と、アクティブ放電回路30と、パッシブ放電回路40とを備える。
【0056】
インバータ回路20は、フィルタコンデンサ400と、6つのスイッチング素子202および6つのゲートドライバからなるモータ駆動回路(上アーム3つ、下アーム3つ)と、インバータ故障検出部201とを備える。
【0057】
スイッチング素子202は、トランジスタと還流ダイオードとからなる公知の回路である。
【0058】
インバータ回路20は、電源1に蓄えられた直流電力を可変電圧および可変周波数の三相交流電力に変換してモータ部3に供給する。
【0059】
インバータ故障検出部201は、インバータ回路20に設けられた複数の電流センサ又は電圧センサを有し、インバータ回路20の電流、電圧を検出し、上記センサにより検出された電流値又は電圧値に基づいてインバータ回路20が故障しているか否かを判定し、故障検出信号を制御部110に送信する。
【0060】
例えば、インバータ故障検出部201は、インバータ回路20の電流または電圧が所定値を超えたことを検出すると、インバータ回路20に異常があることを示す故障検出信号を制御部110に送信する。
【0061】
フィルタコンデンサ400は、モータ駆動回路と並列に接続され、インバータ回路の入力電圧を平滑化する。
【0062】
フィルタコンデンサ400は、一端がリレー701を介して電源1の正極に接続され、他端がリレー702を介して電源1の負極に接続されている。
【0063】
インバータ回路20には、フィルタコンデンサ400の正極電極と負極電極との間の電圧を検出する電圧センサ(図示せず)が設けられており、検出した電圧信号を制御部110に送信する。
【0064】
アクティブ放電回路30は、フィルタコンデンサ400の正極電極と負極電極との間にフィルタコンデンサ400と並列に接続され、第1の放電スイッチ601及び第2の放電スイッチ602と、第1の放電抵抗501とを有し、第1の放電抵抗501を介してフィルタコンデンサ400を放電する。
【0065】
第1の放電抵抗501の抵抗値が小さいので、第1の放電抵抗501によるフィルタコンデンサ400の放電に要する時間が短くなり、フィルタコンデンサ400を速やかに放電させることができる。
【0066】
パッシブ放電回路40は、第2の放電抵抗502で構成されている。
【0067】
第2の放電抵抗502はフィルタコンデンサ400と並列に接続されており、第2の放電抵抗502の抵抗値は第1の放電抵抗501よりも大きいので、第2の放電抵抗502によるフィルタコンデンサ400の放電に要する時間は長い。
【0068】
第2の放電抵抗502は、フィルタコンデンサ400を放電するためのものである。
【0069】
制御回路10は、制御部(CPU)110を有する。
【0070】
制御部110は、インバータ装置2に設けられ、スイッチング素子202、第1の放電スイッチ601、第2の放電スイッチ602、センサ301、インバータ故障検出部201、リレー701、702にそれぞれ接続され、インバータ回路20、リレー部70及びアクティブ放電回路30を制御する。
【0071】
制御部110は、車両制御装置4からのアクティブ放電指令信号と、インバータ故障検出部201からの故障検出信号と、センサ301からの回転数検出信号と、フィルタコンデンサ400の電圧信号とを受信する。
【0072】
制御部110は、インバータ故障検出部201からの故障検出信号に基づいて、インバータ回路20が故障しているか否かを判定する。
【0073】
制御部110は、センサ301からの回転数検出信号に基づいて、モータ部3が回転状態にあるか否か及びモータ部3の回転数を判断する。
【0074】
制御部110は、アクティブ放電指令信号、故障検出信号、回転数検出信号、フィルタコンデンサ400の電圧信号に基づいて、インバータ回路20のスイッチング素子202、第1の放電スイッチ601、第2の放電スイッチ620、リレー701、702に制御信号を出力する。
【0075】
リレー部70は、外部の電源1とインバータ装置2との間に位置する。
【0076】
リレー部70のオンオフ制御は、車両制御装置4(VCU)によって実行される。
【0077】
リレー部70は、リレー701とリレー702とを有する。
【0078】
リレー701は、電源1の正極とフィルタコンデンサ400の正極との間に配置されたリレースイッチである。
【0079】
リレー702は、電源1の負極とフィルタコンデンサ400の負極との間に配置されたリレースイッチである。
【0080】
リレー701およびリレー702は、インバータ回路20、アクティブ放電回路30およびパッシブ放電回路40よりも電源1側に配置されている。
【0081】
放電時には、制御部110からのオフ信号を受けてリレー701、702がオフする。
【0082】
例えば、車両が衝突した場合、車両制御装置4は、制御部110によりリレー部70をオフさせ、インバータ装置2の制御回路10の制御部110にアクティブ放電指令を送信する。
【0083】
あるいは、車両が衝突していないにもかかわらず車両制御装置4が何らかの原因でリレーをオフした場合には、車両制御装置4はインバータ装置2の制御回路10の制御部110にアクティブ放電指令を送信する。
【0084】
次に、図2から図5を参照して、フィルタコンデンサ400の具体的な放電動作について説明する。
【0085】
図2は、本発明に係るインバータ装置2の制御フローチャートである。
【0086】
図3は、本発明のインバータ装置2が第1の状態で放電していることを示す模式図である。
【0087】
図4は、本発明に係るインバータ装置2が第2の状態で放電することを示す模式図である。
【0088】
図5は、本発明のインバータ装置2が第3の状態で放電していることを示す模式図である。
【0089】
車両制御装置4は、車両が失火したり、車両衝突が発生したり、車両故障が検出されたりすると、制御部110に対してアクティブ放電指令を出し、制御部110は、車両制御装置4(略称VCU)からのアクティブ放電指令を受けてアクティブ放電の実行を開始し、リレー701及びリレー702をオフする(ステップS 0)。
【0090】
これにより、電源1とフィルタコンデンサ400との間が遮断され、電源1の出力電圧がインバータ回路20に出力されなくなる。
【0091】
制御部110は、図示しない低電圧電源から制御基板(制御部110を含む)への電力供給が正常であるか否かを判定するとともに、制御部110(CPU)自身が正常であるか否かを判定する(ステップS11)。
【0092】
判定結果が正常である場合(ステップS11でYES)、ステップS12に移行する。
【0093】
ステップS12において、制御部110は、センサ301からの回転数検出信号に基づいて、モータ部3が回転状態であるか否か(すなわち回転数が0より大きいか否か)を判断する(ステップS12)。
【0094】
ここで、回転状態とは、モータの制御を停止しているがモータが回転している状態を含み、また、上アームまたは下アームのいずれか一方の全相スイッチング素子をオンさせ、他方の全相スイッチング素子をオフさせるASC制御を行う場合の状態を含む。
【0095】
ステップS12における判定の結果、モータ部3が回転している場合には(ステップS12における「YES」)、ステップS14に移行する。
【0096】
ステップS14において、制御部110は、アクティブ放電回路30が正常であるか否か(すなわち、第1の放電スイッチ601、第2の放電スイッチ602、及び第1の放電抵抗501が正常であるか否か)を判定する(ステップS14)。
【0097】
ステップS14において、アクティブ放電回路30が正常であると判定された場合(ステップS14においてYES)、処理はステップS15に進む。
【0098】
ステップS15において、制御部110は、前回の第1の放電抵抗501によるアクティブ放電との時間間隔が所定の閾値、例えば72秒未満であるか否かを判定する(ステップS15)。
【0099】
前回のアクティブ放電との時間間隔を72秒以上としたのは、第1の放電抵抗501によるアクティブ放電時に第1の放電抵抗501に多量の熱が発生し、第1の放電抵抗501を十分に冷却しないと回路故障が発生するおそれがあるからである。
【0100】
前回のアクティブ放電との時間間隔が72秒以上、すなわち第1の放電抵抗501が十分に冷えている場合には、第1の放電抵抗501を介して放電が行われる。
【0101】
ただし、例えば、制御部110がアクティブ放電指令を受けたときに、前回のアクティブ放電制御の実行から71秒しか経過していない場合には、図5に破線矢印で示すように、第2の放電抵抗502による放電(すなわち、第3の状態での放電)が行われる。
【0102】
1秒経過後、前回のアクティブ放電から72秒経過しても、制御部110が車両制御装置4から次のアクティブ放電指令を受信するまでは、インバータ装置は現在の状態(第3の状態)のまま放電する。
【0103】
ステップS15における判定の結果、前回のアクティブ放電との時間間隔が72秒以上である場合(ステップS15においてYES)、ステップS22に移行する。
【0104】
ステップS22において、制御部110は、第1の放電スイッチ601及び第2の放電スイッチ602にオン信号を送り、第1の放電スイッチ601及び第2の放電スイッチ602をオンさせ、フィルタコンデンサ400の正極と負極とを第1の放電抵抗501を介して接続する。
【0105】
図4に実線矢印で示すように、第1の放電スイッチ601、第2の放電スイッチ602、第1の放電抵抗501を介してフィルタコンデンサ400が放電され(第2の状態で放電されると略記)、フィルタコンデンサ400の正極と負極との間の電圧が時間の経過とともに低下する(ステップS22)。
【0106】
図4中の破線矢印は、アクティブ放電回路30によってフィルタコンデンサ400が放電されると同時に、第2の放電抵抗502を介して放電されることを示している。
【0107】
ステップS15における判定の結果、前回のアクティブ放電との時間間隔が72秒未満である場合には(ステップS15におけるNO)、ステップS23に移行し、第2の放電抵抗502を介してフィルタコンデンサ400を第3状態で放電させる(ステップS23)。
【0108】
ステップS12における判定の結果、モータ部3が回転していない場合(ステップS12における「NO」)には、ステップS13に移行する。
【0109】
ステップS13において、制御部110は、モータ駆動回路(インバータ回路20を含む)が正常であるか否かを判断する(ステップS13)。
【0110】
ステップS13における判定の結果、モータ駆動回路(インバータ回路20を含む)が正常である場合には(ステップS13における「YES」)、ステップS21に移行して、制御部110は、インバータ回路20に対して制御信号を発して、図3に実線矢印で示すように、インバータ回路20によってフィルタコンデンサ400に蓄積された電荷を放電させる(第1の状態で放電させると略記する)(ステップS21)。
【0111】
なお、図3に示したスイッチング素子のオンオフ関係は一例であり、6つのスイッチング素子202を用いて急速放電を行うことができれば、どのような構成であってもよい。
【0112】
図3の破線矢印は、インバータ回路20によってフィルタコンデンサ400が放電されると同時に、第2の放電抵抗502を介してフィルタコンデンサ400が放電されることを示している。
【0113】
ステップS13において、モータ駆動回路(インバータ回路20を含む)に異常があると判定された場合(ステップS13においてNO)、処理はステップS14に進む。
【0114】
ステップS14における判定の結果、アクティブ放電回路30に異常がある場合には(ステップS14におけるNO)、ステップS23に移行し、第2の放電抵抗502を介してフィルタコンデンサ400を放電させる(ステップS23)。
【0115】
ステップS11の判定結果が異常である場合(ステップS11でNO)、ステップS23に進み、フィルタコンデンサ400を第3の状態で放電させる(ステップS23)。
【0116】
ステップS21,S22,S23でフィルタコンデンサ400を放電させた後、ステップS16に移行する。
【0117】
ステップS16において、制御部110は、フィルタコンデンサ400の電圧検出値に基づいて、フィルタコンデンサ400の正極と負極との間の電圧が所定電圧(例えば60 V)よりも大きいか否かを判定する。
【0118】
その後、電圧が所定電圧よりも大きい場合(ステップS16でYES)、フィルタコンデンサ400の放電を継続し、ステップS11に戻る。
【0119】
フィルタコンデンサ400の電圧が所定電圧以下になると(ステップS16でNO)、フィルタコンデンサの放電が完了し、制御部110はアクティブ放電を停止する。
【0120】
図6は、本発明に係るインバータ装置の他の構成を示す模式図である。
【0121】
図6に示すように、インバータ装置2は、フィルタコンデンサ400の正極と負極との間に接続され、直列に接続された第3の放電抵抗503と第3の放電スイッチ603と第4の放電スイッチ604とを有するアクティブ放電回路31をさらに備えてもよい。
【0122】
アクティブ放電回路は、1つまたは2つに限らず、複数のアクティブ放電回路であってもよい。
【0123】
また、アクティブ放電回路30,31には、第1の放電抵抗501及び第3の放電抵抗503の温度を検出し、検出した温度検出信号を制御部に送信する温度センサが設けられていてもよい。
【0124】
制御部110は、第3の放電スイッチ603、第4の放電スイッチ604、及び第1の放電抵抗501、第3の放電抵抗503の温度センサにそれぞれ接続され、温度センサからの温度検出信号を受けて、この温度検出信号に基づいて第1の放電スイッチ601、第2の放電スイッチ602、第3の放電スイッチ603、第4の放電スイッチ604を制御する。
【0125】
アクティブ放電回路には、制御部110に接続され、放電抵抗の電圧または電流を検出し、検出した電圧または電流信号を制御部110に送信する電圧センサまたは電流センサが設けられている。
【0126】
制御部110は、アクティブ放電回路30の電圧センサや電流センサからの検出信号に基づいて、アクティブ放電回路が故障しているか否かを判定してもよい。
【0127】
これにより、あるアクティブ放電回路(放電スイッチ、放電抵抗)が故障した場合に、他のアクティブ放電回路でフィルタコンデンサを放電させることができ、インバータ装置の安全性を向上させることができる。
【0128】
また、制御部110は、第1の放電抵抗501の温度検出信号が第1所定値(例えば40度)より小さい場合に、第1の放電スイッチ601、第2の放電スイッチ602をオンさせ、第1の放電抵抗501の温度検出信号が第2所定値(例えば85度)より大きい場合に、第1の放電スイッチ601、第2の放電スイッチ602をオフさせてもよい。110
【0129】
これにより放電抵抗の温度が高すぎることによる回路素子の破損を回避し,回路故障の発生を回避する。
【0130】
また、制御部110は、第1の放電抵抗501の温度検出信号が第2の所定値(例えば85度)より大きく、かつ第3の放電抵抗503の温度が第1の所定値(例えば40度)より小さい場合には、制御部110は第1の放電スイッチ601と第2の放電スイッチ602にオフ信号を送信して第1の放電スイッチ601と第2の放電スイッチ602をオフさせ、第3の放電スイッチ603と第4の放電スイッチ604にオン信号を送信して第3の放電スイッチ603と第4の放電スイッチ604をオンさせ、第3の放電抵抗503と第3の放電スイッチ603と第4の放電スイッチ604を介してフィルタコンデンサ400を放電させる。
【0131】
制御部110は、受信したアクティブ放電指令に基づいて、故障検出信号及び回転数検出信号に基づいて、モータが回転していることやインバータ回路20のスイッチング素子等が故障していることを検出した場合には、第1の放電スイッチ601、第2の放電スイッチ602にそれぞれ制御信号を送信してアクティブ放電回路30のオンオフを制御することにより、第1の放電抵抗501を介してフィルタコンデンサ400を急速放電させることができる。
【0132】
また、制御部110は、インバータ故障検出部201からを受けると、センサ301からの信号に基づいて、モータ部3の回転速度が4000 rpmを超えたか否かを判定する。
【0133】
モータ部3の回転数が4000 rpmを超えない場合は、トルク制御を維持したままとする。
【0134】
モータ部3の回転数が4000 rpmを超えた場合、フェールセーフ制御が開始される。
【0135】
フェールセーフ制御時には、制御部110がアクティブ放電指令を受信すると、第1の放電スイッチ601及び第2の放電スイッチ602にオン信号を送信し、アクティブ放電回路30を介してフィルタコンデンサ400を放電させる。
【0136】
本発明のインバータ装置によれば、制御部110が、モータが回転している状態でインバータ装置外部から放電指令を受けたときに、放電スイッチをオンすることで、フィルタコンデンサ400が第1の放電抵抗501を介して放電することで、モータ回転時(故障等によりタイヤを連続回転させている状態やフェールセーフ制御であるASC制御を行っている最中等の緊急時)であっても、放電スイッチや第1の放電抵抗501によりフィルタコンデンサ400を急速に放電することができ、安全性が向上する。
【0137】
本発明のインバータ装置によれば、モータが回転しておらずインバータ回路20が正常であるときに、制御部110がインバータ回路20のスイッチング素子202のオンオフを制御して、フィルタコンデンサ400を、インバータ回路20を介して放電させることにより、モータが回転していないときやモータが停止しているときであっても、フィルタコンデンサ400を速やかに放電させることができ、安全性が向上する。
【0138】
本発明に係るインバータ装置によれば、モータが回転しておらずインバータ回路が故障しているときに、制御部110が放電スイッチをオンすることにより、フィルタコンデンサ400が第1の放電抵抗501を介して放電するので、モータ、スイッチング素子、その関連センサが故障しているときにインバータ回路による急速放電ができない場合でも、放電スイッチによりフィルタコンデンサ400を急速放電させることができ、安全性が向上する。
【0139】
本発明のインバータ装置によれば、インバータ回路20が、フィルタコンデンサ400を放電させるための第1の放電抵抗501よりも抵抗値が大きい第2の放電抵抗502を有し、第2の放電抵抗502がフィルタコンデンサ400と並列に接続されていることにより、インバータ回路のスイッチング素子や放電スイッチ等が故障した場合でも、第2の放電抵抗を介してフィルタコンデンサ400を放電させることができ、安全性が向上する。
【0140】
本発明のインバータ装置によれば、アクティブ放電回路30が直列に接続された2つの放電スイッチを含むことにより、すなわちアクティブ放電回路30に2つのゲートドライバと2つのスイッチを設けてアクティブ放電回路30のオンオフを制御することにより、一方の放電スイッチがオンし続ける故障や誤動作が発生した場合(例えば一方の放電スイッチが連続してオンする)であっても、他方の放電スイッチが正常にオンオフ動作すれば他方のスイッチにより回路をオフさせることができ、フィルタコンデンサ400を信頼性高く放電制御して不要な放電(すなわち第1の放電抵抗が発熱し続ける状態)を防止することができる。
【0141】
本発明のインバータ装置によれば、インバータ回路20の故障を検出して前記放電指令を受けたときに、制御部110が放電スイッチをオンしてフィルタコンデンサ400を第1の放電抵抗501を介して放電させ、第1の放電抵抗501を介してフィルタコンデンサ400を放電させることにより、ASC制御によりIGBT破壊やバッテリ過充電を防止しつつ、放電スイッチを介してフィルタコンデンサ400を放電させて安全性を向上させることができる。
【0142】
本発明のインバータ装置では、スイッチング素子202をIGBTで構成してもよい。
【0143】
モータの通常駆動時には、インバータ装置のスイッチング素子に大電流が流れるため、インバータ装置のスイッチング素子としてIGBTを用いることにより、インバータ装置の安全性を高めることができる。
【0144】
放電スイッチはMOSFETで構成することができ、フィルタコンデンサ400を放電させる際に放電スイッチに大電流が流れないので、放電スイッチとしてIGBTの代わりにMOSFETを用いることができ、コストをより低減することができる。
【0145】
本発明に係るインバータ装置である。
【0146】
2つの並列接続されたアクティブ放電回路30,31を備えてもよく、これにより、一方のアクティブ放電回路30の放電スイッチや放電抵抗が故障した場合には、故障していないアクティブ放電回路31を用いて急速放電を行うことができ、インバータ装置の安全性を高めることができ、放電スイッチや放電抵抗等が故障した場合にフィルタコンデンサ400を急速放電させることができる。
【0147】
本発明のインバータ装置によれば、制御部は、前回第1の放電抵抗501による放電が実施されてから所定の時間が経過した場合に放電スイッチ601、602をオンにすることができる。
【0148】
この構成によれば、第1の放電抵抗501を使用してから十分な時間が経過した後、すなわち十分な放熱状態になった後に、再び第1の放電抵抗501を使用して急速放電を行うことができる。
【0149】
すなわち、第1の放電抵抗501の故障を防止することができる。
【0150】
本発明では、前回の急速放電からの経過時間(例えば72秒)をトリガとして第1の放電スイッチ601及び第2の放電スイッチ602をオンさせているが、これに限定されず、例えば、第1の放電抵抗501の温度を検出する温度検出素子を設けてもよい。
【0151】
第1の放電抵抗の温度が所定の閾値以下であることを確認した後に、第1の放電スイッチ601及び第2の放電スイッチ602をオンすることで、放電抵抗の破壊を防止することができる。
【0152】
例えば、アクティブ放電回路30には、第1の放電抵抗501の温度を検出する温度センサが設けられており、制御部は、第1の放電抵抗501の温度が所定の閾値以下である場合に、第1の放電スイッチ601及び第2の放電スイッチ602をオンにする。
【0153】
これにより、所定時間待つことなく、第1の放電抵抗501が十分に冷却された後であれば、第1の放電抵抗501と第1の放電スイッチ601、第2の放電スイッチ602を介してフィルタコンデンサ400を放電させることができ、放電抵抗の冷却待ち時間を短縮することができるとともに、第1の放電抵抗の温度が所定値より大きいことを検出したときに放電スイッチをオフさせてインバータ装置の回路素子が高温により破壊されることを回避し、インバータ装置の安全性を高めることができる。
【0154】
本発明は、その範囲内において、実施形態における各部材を自由に組み合わせたり、実施形態における各部材を適宜変形、省略したりすることが可能であることを理解されたい。
【0155】
以上、本発明本発明を詳細に説明したが、上記説明はすべての点で例示であって、本発明はこれに限定されるものではない。
【0156】
例示されていない無数の変形例が、本発明の範囲から逸脱することなく想定され得るものとして解釈されるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0157】
本発明に係るインバータ装置は、EV(電気自動車)のモータ等の分野に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0158】
1 電源
2 インバータ装置
3 モータ部
4 車両制御装置
10 制御回路
20 インバータ回路
30、31 アクティブ放電回路
40 パッシブ放電回路
110 制御部(CPU)
201 インバータ故障検出部
202 スイッチング素子
301 センサ
400 フィルタコンデンサ
501 第1の放電抵抗
502 第2の放電抵抗
503 第3の放電抵抗
601 第1の放電スイッチ
602 第2の放電スイッチ
603 第3の放電スイッチ
604 第4の放電スイッチ
701 リレー
702 リレー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7