(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022181200
(43)【公開日】2022-12-07
(54)【発明の名称】プログラマブル直接描画装置のためのパターンデータ処理
(51)【国際特許分類】
H01L 21/027 20060101AFI20221130BHJP
【FI】
H01L21/30 541W
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022084484
(22)【出願日】2022-05-24
(31)【優先権主張番号】21175588.9
(32)【優先日】2021-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】509316578
【氏名又は名称】アイエムエス ナノファブリケーション ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100080816
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 朝道
(74)【代理人】
【識別番号】100098648
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 潔人
(72)【発明者】
【氏名】エルマー プラッツグマー
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ シュペングラー
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル ハーベルラー
【テーマコード(参考)】
5F056
【Fターム(参考)】
5F056AA07
5F056AA33
5F056CA01
5F056EA02
5F056EA05
5F056EA12
(57)【要約】 (修正有)
【課題】高冗長性の利点を利用できかつパターンに忠実なパターンデータ処理のアーキテクチャの提供。
【解決手段】荷電粒子マルチビーム装置(1A、1B)において、所望のパターンは入力パターンデータ(INPDAT)としてベクトル形式で提供され、パターンデータ処理フローによって処理される。データ前処理システム(101)は入力パターンデータ(INPDAT)を受信し、データ前処理システムへ提供される描画パラメータデータを用いて、入力パターンデータを描画プロセスとは独立に、前処理し、得られた中間パターンデータ(IMDAT)をデータ記憶装置(11M)に書き込む。描画プロセスにおいて、その描画コントロールシステム(14A、14B)は中間パターンデータをデータ記憶装置(11M)から読み出し、該データをパターンストリーミングデータ(SBUF)へと変換し、パターンストリーミングデータを描画装置へリアルタイム送信する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの荷電粒子マルチビーム装置(1A、1B)を用いてターゲットに対する所望のパターンの描画プロセスを実行するための方法であって、
前記所望のパターンはベクトル形式でコード化された入力パターンデータ(INPDAT)として提供され、
前記装置は照明システム、パターン画定システム及び投射光学系を含み、
前記照明システムは荷電粒子ビームを生成し、該荷電粒子ビームをパターン画定システムへ向けるよう構成され、前記パターン画定システムは前記荷電粒子ビームを前記パターンを表す複数のサブビームに形成するよう構成され、及び、前記投射光学系は前記複数のサブビームを前記ターゲット(7、7’)へ投射するために役立ち、
前記方法は、データ前処理システム(101)において描画プロセスから独立に実行される少なくとも以下のステップ:
前記入力パターンデータ(INPDAT)を受信すること、
中間パターンデータ(IMDAT)を取得するために、前記データ前処理システムに提供された描画パラメータデータを用いて前記入力パターンデータを前処理すること、
前記中間パターンデータをデータ記憶装置(11M)に書き込むこと、
を含み、
前記方法は、更に、前記少なくとも1つの装置(1A、1B)に関係付けられた少なくとも1つの描画コントロールシステム(14A、14B)によって、前記少なくとも1つの装置(1A、1B)を用いた描画プロセスの初期化及び/又は実行中に実行される少なくとも以下のステップ:
前記中間パターンデータを前記データ記憶装置から読み出すこと、
パターンストリーミングデータを取得するために、前記中間パターンデータ(LMDAT)を変換すること
前記パターンストリーミングデータを、前記少なくとも1つの装置の少なくとも1つのパターン画定システムへ送信すること、但し各パターン画定システムは前記パターンストリーミングデータに応じて前記描画プロセス中に前記少なくとも1つの装置の夫々の荷電粒子ビームを前記複数のサブビームへと形成すること、
を含むこと
を特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、
前記データ前処理システム(101)における前記入力データの前処理は、以下の少なくとも1つを含むこと:
ベクトル形式でコード化された前記入力パターンデータ(VECPAT)を複数のジオメトリ基本要素(SPLITGEOM)へ分割すること(91);
前記描画プロセスに先行して決定される理想的描画状態からのずれを補償するために、前記入力パターンデータ(VECPAT)又はジオメトリ基本要素(SPLITGEOM)にジオメトリ及び/又は線量補正を適用すること(92)、但し該ジオメトリ及び/又は線量補正は、先の描画プロセス及び/又は検査プロセス及び/又はモデル型シミュレーションに基づく外部データとして供給される補正データ(DOSEMOD、DISLOCMOD)を用いて実行されること
を特徴とする方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法において、
前記データ前処理システム(101)における前記入力データの前処理は、前処理された中間パターンデータをベクトル形式(SPLITGEOM、CORRGEOM)で生成し、該前処理された中間パターンデータは中間パターンデータとしてデータ記憶装置に書き込まれること、及び、
前記少なくとも1つの描画コントロールシステム(14A、14B)による描画プロセスの初期化及び/又は実行は、前記中間パターンデータを前記データ記憶装置から読み出した後、前記所望のパターンの少なくとも一部分をラスタグラフィックス形式で表すラスタグラフィックスデータ(PIX、PACKPIX)を取得するために、前記入力パターンデータを変換すること(93)を含むこと
を特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の方法において、
前記中間パターンデータは、前記描画プロセス中に使用されるべきラスタについてのラスタグラフィックスデータであること、
前記データ前処理システム(101)における前記入力データの前処理は、前記所望のパターンの少なくとも一部分をラスタグラフィックス形式で表すラスタグラフィックスデータ(PIX、PACKPIX)を取得するために、前記入力パターンデータを変換すること(93)を含むこと
を特徴とする方法。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の方法において、
前記少なくとも1つの描画コントロールシステム(14A、14B)によって描画プロセス中に実行されるステップ(複数)は、更に、以下の少なくとも1つを含むこと:
前記描画プロセス中に決定される理想的描画状態からのずれを補償するために、前記ラスタグラフィックスデータ(PIX)にジオメトリ及び/又は線量補正を適用すること(94);
ピクセルデータをディザ化すること(95)、但し予め決定されるグレー値スケールに合致するよう前記データを変換することを含む;
前記ピクセルデータが前記描画プロセスによって要求される伝送速度で送信されることを可能にするデータ形式へとピクセルデータをパッケージ化すること(96)
を特徴とする方法。
【請求項6】
請求項4に記載の方法において、
前記データ前処理システム(101)における前記入力データの前処理は、ラスタグラフィックスデータへの変換後、以下の少なくとも1つを含むこと:
前記描画プロセス中に決定される理想的描画状態からのずれを補償するために、前記ラスタグラフィックスデータ(PIX)にジオメトリ及び/又は線量補正を適用すること(94);
ピクセルデータをディザ化すること(95)、但し予め決定されるグレー値スケールに合致するよう前記データを変換することを含む;
前記ピクセルデータが前記描画プロセスによって要求される伝送速度で送信されることを可能にするデータ形式へとピクセルデータをパッケージ化すること(96)
その後、このように処理されたデータを中間パターンデータとして前記データ記憶装置へ書き込むこと
を特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1~6の何れかに記載の方法において、
前記荷電粒子マルチビーム装置は、並列に配置された2つ以上のマルチビームカラム(c1、c2、c3;c4、c5、c6)を含むこと、及び、
前記データ記憶装置から前記中間パターンデータを読み出すステップとそれ以降のステップは、前記マルチビームカラムにおいて1つ以上のターゲット(7、7’)に対し少なくとも部分的に並行的に実行されること
を特徴とする方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法において、
並列に配置された前記マルチビームカラム(複数)は、少なくとも2つの異なる照明システムを含み、好ましくは該マルチビームカラム(複数)の各々は各自の照明システムを含むこと
を特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1~8の何れかに記載の方法において、
前記データ記憶装置から前記中間パターンデータを読み出すステップとそれ以降のステップは、複数の異なる荷電粒子マルチビーム装置(1A、1B)において、好ましくは同時に、実行される2つ以上の別々の描画プロセスによって実行されること
を特徴とする方法。
【請求項10】
所望のパターンをターゲットに描画するための描画プロセスを実行するよう構成された荷電粒子マルチビーム装置(1A、1B)であって、
該装置は、照明システム、パターン画定システム、及び、投射光学系を含み、
前記照明システムは荷電粒子ビームを生成し、該荷電粒子ビームをパターン画定システムへ向けるよう構成され、前記パターン画定システムは前記荷電粒子ビームを前記パターンを表す複数のサブビームに形成するよう構成され、及び、前記投射光学系は前記複数のサブビームを前記ターゲット(7、7’)へ投射するために役立ち、
前記装置は、更に、描画コントロールシステム(14A、14B)を備え、
前記描画コントロールシステム(14A、14B)は、
前記所望のパターンの前処理されたパターンデータを含む中間パターンデータ(LMDAT)を読み出すためにデータ記憶装置にアクセスするよう、
パターンストリーミングデータ(SBUF)を取得するために前記中間パターンデータ(LMDAT)を変換するよう、
前記パターンストリーミングデータを前記パターン画定システムへ送信し、前記パターンストリーミングデータ(SBUF)に応じて前記描画プロセス中に前記荷電粒子ビームを前記複数のサブビームへと形成するように前記パターン画定システムに指示するよう
構成されていること
を特徴とする装置。
【請求項11】
請求項10に記載の装置において、
前記描画コントロールシステムは、前記装置(1A、1B)において実行される描画プロセスの初期化及び/又は実行中に前記中間パターンデータを読み出しかつ処理するよう構成されていること
を特徴とする装置。
【請求項12】
請求項10又は11に記載の装置において、
前記描画コントロールシステムは、更に、前記中間パターンデータの読み出し後、以下のステップの少なくとも1つを実行するよう構成されていること:
前記所望のパターンの少なくとも一部分をラスタグラフィックス形式で表すラスタグラフィックスデータ(PIX)を取得するために、前記パターンデータを変換すること(93);
前記描画プロセス中に決定される理想的描画状態からのずれを補償するために、前記ラスタグラフィックスデータ(PIX)にジオメトリ及び/又は線量補正を適用すること(94);
ピクセルデータをディザ化すること(95)、但し予め決定されるグレー値スケールに合致するよう前記データを変換することを含む;
前記ピクセルデータが前記描画プロセスによって要求される伝送速度で送信されることを可能にするデータ形式へとピクセルデータをパッケージ化すること(96)
を特徴とする装置。
【請求項13】
請求項10~12の何れかに記載の装置において、
前記荷電粒子マルチビーム装置は、中間パターンデータを読み出すために前記データ記憶装置にアクセスするステップとそれ以降のステップ(複数)を1つ以上のターゲット(7、7’)に対し少なくとも部分的に並行的に実行するよう構成された並列に配置された2つ以上のマルチビームカラム(c1、c2、c3;c4、c5、c6)を含むこと
を特徴とする装置。
【請求項14】
請求項13に記載の装置において、
並列に配置された複数の前記マルチビームカラムは、少なくとも2つの異なる照明システムを含み、好ましくは複数の前記マルチビームカラムの各々は各自の照明システムを含むこと
を特徴とする装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は2021年5月25日に出願された欧州特許出願第21175588.9号についてのパリ条約上の優先権の利益を主張するものであり、当該出願の全内容は引照を以って本書に繰り込みここに記載されているものとする。
【0002】
本発明は、ターゲットの処理(とりわけナノパターン形成又は半導体リソグラフィ)又は検査のためのプログラマブル荷電粒子マルチビーム装置における描画プロセスに関する。より詳細には、本発明は、少なくとも1つの荷電粒子マルチビーム装置を用いてターゲットに対する所望のパターンの描画プロセスを実行するための方法であって、前記所望のパターンはベクトル形式でコード化された入力パターンデータとして提供され、前記装置は照明システム、パターン画定システム及び投射光学系を含み、前記照明システムは荷電粒子ビームを生成し、該荷電粒子ビームをパターン画定システムへ向けるよう構成され、前記パターン画定システムは前記荷電粒子ビームを前記パターンを表す複数のサブビームに(前記荷電粒子ビームから前記パターンを表す複数のサブビームを)形成するよう構成され、及び、前記投射光学系は前記複数のサブビームを前記ターゲットへ投射するために役立つ、方法、及び、このタイプのマルチビーム装置に関する。
【背景技術】
【0003】
このタイプの描画プロセス及びマルチビーム構成は本出願人のUS7,214,951、US8,183,543及びUS9,443,699B2に記載されている。
【0004】
本出願人は、以下のような、荷電粒子マルチビームリソグラフィ及びナノパターン形成及び関連技術の分野において好適な幾つかの解決策及び技術を開発した:イオンマルチビームを使用する場合はCHARPAN(charged particle nanopatterning:荷電粒子ナノパターン形成)、電子マルチビームを使用する場合はマスク描画のためのeMET(electron mask exposure tool:電子マスク露光ツール)又はMBMW(multi-beam mask writer:マルチビームマスク描画機)、及び、基板、とりわけシリコン基板への直接描画リソグラフィのためのPML2(Projection Mask-Less Lithography:投射(投影)式マスクレスリソグラフィ)を作り出した。この意味で、本出願人名義の関連特許文献としてUS7,199,373、US7,214,951、US8,304,749、US8,183,543及びUS8,222,621がある。これらの文献の開示は引照を以って本書に繰り込みここに記載されているものとする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】US7,214,951
【特許文献2】US8,183,543
【特許文献3】US9,443,699B2
【特許文献4】US7,199,373
【特許文献5】US8,304,749
【特許文献6】US8,222,621
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
6”(インチ)マスクブランク又はシリコンウェハ基板のようなターゲットにおけるパターンの描画中には、所望の特徴及びパターン忠実度を有するマスク又はウェハを実現するために、マルチビーム描画プロセス中に考慮される必要がある非理想的状況がある。考慮されるべきあり得る問題は、例えば、加工(processing)に起因する基板の歪み、光学的偏向手段によっては補正できないビームアレイフィールドの歪み、後続のエッチングプロセスにおける「ローディング効果(loading effects)」、又は電荷誘導効果(charge induced influences)である。これらの効果はシミュレート及び/又は測定可能である。とりわけ、対応するデータは、マルチビーム描画機によって描画されるべきパターンのためのデータファイルを作成する場合、予め提供され得るし(「データ型補正」)、或いは、これらの効果の幾つか又は全ては効果のモデルに基づいて計算され得る(「モデル型補正」)。大抵の場合、補正は、現在及び将来のナノリソグラフィ技術の高い要求に適うために、ビームフィールドアレイのサイズ(面積)よりも小さい基板面積(「基板セグメント」)の部分(複数)について行われる必要があることが見出されるであろう。
【0007】
工業的応用について、そのような要求は、小さい限界寸法(CD:Critical Dimension)及び小さいレジストレーションエラー(位置ズレ)(REG:Registration Error)の達成及び、とりわけ、小さいフィールド(例えばMBWビームアレイフィールドのエリア(ないし面積))の内部におけるローカルCD均一性(LCDU:Local CD Uniformity)及びローカルレジストレーションエラー(LREG:Local Registration Error)のナノメートルレベルでの3σ又は6σ変動の達成及び基板(例えば6”マスクブランク又は300nmシリコンウェハ)上のMBW描画フィールド全体にわたるグローバルCD均一性(GCDU)及びグローバルレジストレーションエラー(GREG)のナノメートルレベルの3σ又は6σ変動の達成、に関する要求性能(performance requirements)として表現される。
【0008】
工業的応用に関する更なる重要な側面は、とりわけマスクレスリソグラフィ又はシリコンウェハへの直接描画への応用における、大量生産の場合のスループットである。スループットを数桁だけ増大するために、所要数の荷電粒子マルチビーム描画機の提供をスケールアップするという単純なアプローチは問題があるであろう。というのは、これは、とりわけパターン前処理工程に関し、処理工程の繰り返しという高い冗長性(重複)を無視しているからである。
【0009】
上記の観点から、本発明の目的は、上記の問題(複数)を克服することであり、とりわけ、高い冗長性を利用できかつパターン信頼性に影響を及ぼし得る上記の不利な効果に対処可能である一方で、同時に、コンピュータ計算及び時間要求の効果(効率)的なハンドリング(取り扱い)が達成されるパターンデータ処理のアーキテクチャを提供することである。これは、リアルタイム効果の適切なハンドリングも含む。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の視点により、
少なくとも1つの荷電粒子マルチビーム装置を用いてターゲットに対する所望のパターンの描画プロセスを実行するための方法が提供される。該方法において、前記所望のパターンはベクトル形式でコード化された入力パターンデータとして提供され、前記装置は照明システム、パターン画定システム及び投射光学系を含み、前記照明システムは荷電粒子ビームを生成し、該荷電粒子ビームをパターン画定システムへ向けるよう構成され、前記パターン画定システムは前記荷電粒子ビームを前記パターンを表す複数のサブビームに(前記荷電粒子ビームから前記パターンを表す複数のサブビームを)形成するよう構成され、及び、前記投射光学系は前記複数のサブビームを前記ターゲットへ投射するために役立ち、
前記方法は、データ前処理システムにおいて描画プロセスから独立に実行される少なくとも以下のステップ:
前記入力パターンデータを受信すること、
中間パターンデータを取得するために、前記データ前処理システムに提供された描画パラメータデータを用いて前記入力パターンデータを前処理すること、
前記中間パターンデータをデータ記憶装置に書き込むこと、
を含み、
前記方法は、更に、前記少なくとも1つの(荷電粒子マルチビーム)装置に関係付けられた少なくとも1つの描画コントロールシステムによって、前記少なくとも1つの(荷電粒子マルチビーム)装置を用いた描画プロセスの初期化及び/又は実行中に実行される少なくとも以下のステップ:
前記中間パターンデータを前記データ記憶装置から読み出すこと、
パターンストリーミング(リアルタイム送信)データを取得するために、前記中間パターンデータを変換すること
前記パターンストリーミングデータを、前記少なくとも1つの装置の少なくとも1つのパターン画定システムへ(リアルタイムで)送信すること(streaming)、但し各パターン画定システムは前記パターンストリーミングデータに応じて前記描画プロセス中に前記少なくとも1つの装置の夫々の荷電粒子ビームを前記複数のサブビームへと(前記少なくとも1つの装置の夫々の荷電粒子ビームから前記複数のサブビームを)形成すること、
を含むことを特徴とする(形態1)。
本発明の第2の視点により、所望のパターンをターゲットに描画するための描画プロセスを実行するよう構成された荷電粒子マルチビーム装置が提供される。該装置は、照明システム、パターン画定システム、及び、投射光学系を含み、前記照明システムは荷電粒子ビームを生成し、該荷電粒子ビームをパターン画定システムへ向けるよう構成され、前記パターン画定システムは前記荷電粒子ビームを前記パターンを表す複数のサブビームに形成するよう構成され、及び、前記投射光学系は前記複数のサブビームを前記ターゲットへ投射するために役立ち、
前記装置は、更に、描画コントロールシステムを備え、
前記描画コントロールシステムは、
前記所望のパターンの前処理されたパターンデータを含む中間パターンデータを読み出すためにデータ記憶装置にアクセスするよう、
パターンストリーミング(リアルタイム送信)データを取得するために前記中間パターンデータを変換するよう、
前記パターンストリーミングデータを前記パターン画定システムへ(リアルタイムで)送信し(stream)、前記パターンストリーミングデータに応じて前記描画プロセス中に前記荷電粒子ビームを前記複数のサブビームへと(前記荷電粒子ビームから前記複数のサブビームを)形成するように前記パターン画定システムに指示するよう
構成されていることを特徴とする(形態10)。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(形態1)上記本発明の第1の視点参照。
(形態2)形態1の方法において、前記データ前処理システムにおける前記入力データの前処理は、以下の少なくとも1つを含むことが好ましい:
ベクトル形式でコード化された前記入力パターンデータを複数のジオメトリ基本要素へ分割すること;
前記描画プロセスに先行して決定される理想的描画状態からのずれを補償するために、前記入力パターンデータ又はジオメトリ基本要素にジオメトリ及び/又は線量補正を適用すること、但し該ジオメトリ及び/又は線量補正は、先の描画プロセス及び/又は検査プロセス及び/又はモデル型シミュレーションに基づく外部データとして供給される補正データを用いて実行されること。
(形態3)形態2の方法において、前記データ前処理システムにおける前記入力データの前処理は、前処理された中間パターンデータをベクトル形式で生成し、該前処理された中間パターンデータは中間パターンデータとしてデータ記憶装置に書き込まれること、及び、
前記少なくとも1つの描画コントロールシステムによる描画プロセスの初期化及び/又は実行は、前記中間パターンデータを前記データ記憶装置から読み出した後、前記所望のパターンの少なくとも一部分をラスタグラフィックス形式で表すラスタグラフィックスデータを取得するために、前記入力パターンデータを変換することを含むことが好ましい。
(形態4)形態1又は2の方法において、前記中間パターンデータは、前記描画プロセス中に使用されるべきラスタについてのラスタグラフィックスデータであること、
前記データ前処理システムにおける前記入力データの前処理は、前記所望のパターンの少なくとも一部分をラスタグラフィックス形式で表すラスタグラフィックスデータを取得するために、前記入力パターンデータを変換することを含むことが好ましい。
(形態5)形態3又は4の方法において、前記少なくとも1つの描画コントロールシステムによって描画プロセス中に実行されるステップ(複数)は、更に、以下の少なくとも1つを含むことが好ましい:
前記描画プロセス中に決定される理想的描画状態からのずれを補償するために、前記ラスタグラフィックスデータにジオメトリ及び/又は線量補正を適用すること;
ピクセルデータをディザ化すること、但し予め決定されるグレー値スケールに合致するよう前記データを変換することを含む;
前記ピクセルデータが前記描画プロセスによって要求される伝送速度で(リアルタイム)送信されることを可能にするデータ形式へとピクセルデータをパッケージ化すること。
(形態6)形態4の方法において、前記データ前処理システムにおける前記入力データの前処理は、ラスタグラフィックスデータへの変換後、以下の少なくとも1つを含むことが好ましい:
前記描画プロセス中に決定される理想的描画状態からのずれを補償するために、前記ラスタグラフィックスデータにジオメトリ及び/又は線量補正を適用すること;
ピクセルデータをディザ化すること、但し予め決定されるグレー値スケールに合致するよう前記データを変換することを含む;
前記ピクセルデータが前記描画プロセスによって要求される伝送速度で(リアルタイム)送信されることを可能にするデータ形式へとピクセルデータをパッケージ化すること、
その後、このように処理されたデータを中間パターンデータとして前記データ記憶装置へ書き込むこと。
(形態7)形態1~6の何れかの方法において、前記荷電粒子マルチビーム装置は、並列に配置された2つ以上のマルチビームカラムを含むこと、及び、
前記データ記憶装置から前記中間パターンデータを読み出すステップとそれ以降のステップ(複数)は、前記マルチビームカラムにおいて1つ以上のターゲットに対し少なくとも部分的に並行的に実行されることが好ましい。
(形態8)形態7の方法において、並列に配置された前記マルチビームカラム(複数)は、少なくとも2つの異なる照明システムを含み、好ましくは該マルチビームカラム(複数)の各々は各自の照明システムを含むことが好ましい。
(形態9)形態1~8の何れかの方法において、前記データ記憶装置から前記中間パターンデータを読み出すステップとそれ以降のステップ(複数)は、複数の異なる荷電粒子マルチビーム装置において、好ましくは同時に、実行される2つ以上の別々の描画プロセスによって実行されることが好ましい。
(形態10)上記本発明の第2の視点参照。
(形態11)形態10の装置において、前記描画コントロールシステムは、前記(荷電粒子マルチビーム)装置において実行される描画プロセスの初期化及び/又は実行中に前記中間パターンデータを読み出しかつ処理するよう構成されていることが好ましい。
(形態12)形態10又は11の装置において、前記描画コントロールシステムは、更に、前記中間パターンデータの読み出し後、以下のステップの少なくとも1つを実行するよう構成されていることが好ましい:
前記所望のパターンの少なくとも一部分をラスタグラフィックス形式で表すラスタグラフィックスデータを取得するために、前記パターンデータを変換すること;
前記描画プロセス中に決定される理想的描画状態からのずれを補償するために、前記ラスタグラフィックスデータにジオメトリ及び/又は線量補正を適用すること;
ピクセルデータをディザ化すること、但し予め決定されるグレー値スケールに合致するよう前記データを変換することを含む;
前記ピクセルデータが前記描画プロセスによって要求される伝送速度で(リアルタイム)送信されることを可能にするデータ形式へとピクセルデータをパッケージ化すること。
(形態13)形態10~12の何れかの装置において、前記荷電粒子マルチビーム装置は、中間パターンデータを読み出すために前記データ記憶装置にアクセスするステップとそれ以降のステップ(複数)を1つ以上のターゲットに対し少なくとも部分的に並行的に実行するよう構成された並列に配置された2つ以上のマルチビームカラムを含むことが好ましい。
(形態14)形態13の装置において、並列に配置された複数の前記マルチビームカラムは、少なくとも2つの異なる照明システムを含み、好ましくは複数の前記マルチビームカラムの各々は各自の照明システムを含むことが好ましい。
【0012】
本発明に応じ、上記のタイプの描画プロセスを実行するための方法は、データ前処理システムにおいて、好ましくは描画プロセスから独立に―例えば描画プロセスに対し十分に先行して―実行される少なくとも以下のステップ:
-入力パターンデータを受信すること、
-中間パターンデータを取得するために、データ前処理システムに提供された描画パラメータデータを用いて入力パターンデータを前処理すること、及び、
-中間パターンデータをデータ記憶装置に書き込むこと、
を含み;
前記方法は、更に、少なくとも1つの荷電粒子マルチビーム装置に関係付けられた少なくとも1つの描画コントロールシステムによって、少なくとも1つの(荷電粒子マルチビーム)装置を用いた描画プロセスの初期化及び/又は実行中に実行される少なくとも以下のステップ:
-中間パターンデータをデータ記憶装置から読み出すこと、
-パターンストリーミングデータを取得するために、中間パターンデータを変換すること、及び、
-パターンストリーミングデータを、少なくとも1つの(荷電粒子マルチビーム)装置の少なくとも1つのパターン画定システムへ(リアルタイム)送信すること(streaming)、但し各パターン画定システムはパターンストリーミングデータに応じて描画プロセス中に少なくとも1つの(荷電粒子マルチビーム)装置の夫々の荷電粒子ビームを複数のサブビームへと(少なくとも1つの(荷電粒子マルチビーム)装置の夫々の荷電粒子ビームから複数のサブビームを)形成すること、
を含む。
【0013】
この解決策は、パターンデータの処理を、2つの主要セクション、即ち、典型的には実際の描画プロセスの前に、データ前処理システムにおいて実行される第1セクション、及び、典型的には描画プロセスが実行されるときに実行される第2セクションへと分割する。これにより、パターンデータ処理の時間効率の良い取り扱い(handling)が可能になると共に、描画プロセス中の計算量を低く維持することが可能になる。
【0014】
多くの実施形態では、データ前処理システムにおける入力データの前処理が、ベクトル形式でコード化された入力パターンデータを複数のジオメトリ基本要素へ分割すること;及び/又は、描画プロセスに先行して決定される理想的描画状態からのずれを補償するために、入力パターンデータ又はジオメトリ基本要素にジオメトリ及び/又は線量補正を適用すること、但しジオメトリ及び/又は線量補正は外部データとして供給される補正データを用いて実行される、を含むと、有利であり得る。外部データは、先の描画プロセス及び/又は検査プロセス、及び/又はそのようなプロセスのモデル型(model-based)シミュレーションから導き出され得る。
【0015】
本発明の多くの実施形態では、中間パターンデータはベクトル形式(format)である。そのような場合、データ処理システムにおける入力データの前処理は、前処理された中間パターンデータをベクトル形式で生成し、該前処理された中間パターンデータは中間パターンデータとしてデータ記憶装置に書き込まれることになる。更に、(1つ以上の)描画コントロールシステムによって実行されるような描画プロセスの初期化、又は描画プロセス自体は、中間パターンデータをデータ記憶装置から読み出した後、所望のパターンの少なくとも一部分をラスタグラフィックス形式で表すラスタグラフィックスデータを取得するために、入力パターンデータを変換することを含み得る。
【0016】
他の実施形態(複数)では、中間パターンデータは、描画プロセス中に使用されるべきラスタについてのラスタグラフィックスデータである。そのような場合、データ前処理システムにおける入力データの前処理は、所望のパターンの少なくとも一部分をラスタグラフィックス形式で表すラスタグラフィックスデータを取得するために、入力パターンデータを変換することを、通常は含むことになる。更に、描画プロセス中に実行されるステップ(複数)は、以下の少なくとも1つを更に含む:描画プロセス中に決定される理想的描画状態からのずれを補償するために、ラスタグラフィックスデータにジオメトリ及び/又は線量補正を適用すること;及び/又は、ピクセルデータをディザ化すること、これによって該データは予め決定されるグレー値スケールに合致するよう変換される;及び/又は、ピクセルデータが描画プロセスによって要求される伝送速度で(リアルタイム)送信されることを可能にするデータ形式へとピクセルデータをパッケージ化すること。ラスタグラフィックスデータに対する上記の線量補正は、例えば多数のピクセルをカバーするエリアに対する、グローバル線量補正、及び/又は、ローカル線量補正、例えばアパーチャ特異的線量補正、又は換言すれば、ピクセルグレーレベル補正、を含み得る。ピクセルデータをパッケージ化するステップは、ターゲット上におけるピクセル(複数)の描画シーケンスに(換言すれば、位置決めグリッドシーケンスに)合致するよう、データの再順序付け(re-ordering)を含み得る。これにより、描画プロセスによって要求される伝送速度で、ターゲットに生成され、位置決めグリッドに応じてソートされるアパーチャ画像(複数)のシーケンスに対応するピクセルデータのシーケンスが提供されることになる。
【0017】
更なる実施形態(複数)では、データ前処理システムにおける入力データの前処理は、更なる処理ステップとして、ラスタグラフィックスデータへの変換後であるがそのようにして処理されたデータを中間パターンデータとしてデータ記憶装置へ書き込む前に:描画プロセス中に決定される理想的描画状態からのずれを補償するために、ラスタグラフィックスデータにジオメトリ及び/又は線量補正を適用すること;及び/又は、ピクセルデータをディザ化すること、但しこれは予め決定されるグレー値スケールに合致するよう該データを変換することを含む;及び/又は、ピクセルデータが描画プロセスによって要求される伝送速度で(リアルタイム)送信されることを可能にするデータ形式へとピクセルデータをパッケージ化すること、を含み得る。ピクセルデータをパッケージ化するステップは、上記のようなデータの再順序付けを含み得る。
【0018】
本発明による描画プロセスは、複数の描画装置において同時に行われ得る。従って、データ記憶装置から中間パターンデータを読み出すステップとそれ以降のステップ(複数)を、異なる荷電粒子マルチビーム装置(複数)において、好ましくは同時に、実行される2つ以上の別々の描画プロセスによって実行させることによって、スループットは大きく増大され得る。更に、荷電粒子マルチビーム装置は、(
図1に記載されているように;
図7も参照)並列に配置された2つ以上のマルチビームカラムを含み得、及び、データ記憶装置から中間パターンデータを読み出すステップとそれ以降のステップは、マルチビームカラム(複数)において1つ以上のターゲットに対し少なくとも部分的に並行的に実行される。有利には、並列に配置された前記マルチビームカラム(複数)は、少なくとも2つの異なる照明システムを含み得、各照明システムはそれ自身の粒子源を含む;従って、各照明システムは、(1つ以上の)他の照明システムに関連付けられた(1つ以上の)カラムとは異なる(1つ以上の)カラムへビーム粒子を供給することになる。好ましくは、マルチビームカラム(複数)の各々は各自の(即ちそれ自身の)照明システム及びとりわけそれ自身の粒子源を含む。
【0019】
本発明による方法は、このような描画プロセスを実行するよう構成されかつ描画コントロールシステムを備えた荷電粒子マルチビーム装置において好適に実行される。この描画コントロールシステムは、所望のパターンの前処理されたパターンデータを含む中間パターンデータを読み出すためにデータ記憶装置にアクセスするよう、パターンストリーミングデータを取得するために中間パターンデータを変換するよう、パターンストリーミングデータをパターン画定システムへ(リアルタイムで)送信し、当該パターンストリーミングデータに応じて描画プロセス中に荷電粒子ビームを当該複数のサブビームへと(荷電粒子ビームから当該複数のサブビームを)形成するようにパターン画定システムに指示するよう、構成されている。描画コントロールシステムは、更に、荷電粒子マルチビーム装置(複数)において実行される描画プロセスの初期化及び/又は実行中に中間パターンデータを読み出しかつ処理するよう構成され得る。付加的に、描画コントロールシステムは、更に、中間パターンデータの読み出し後、以下のステップ(複数)の1つ、幾つか又は全てを実行するよう構成され得る:所望のパターンの少なくとも一部分をラスタグラフィックス形式で表すラスタグラフィックスデータを取得するために、パターンデータを変換すること;及び/又は、描画プロセス中に決定される理想的描画状態からのずれを補償するために、ラスタグラフィックスデータにジオメトリ及び/又は線量補正を適用すること;及び/又は、予め決定されるグレー値スケールに合致させるために、ピクセルデータをディザ化すること;及び/又は、ピクセルデータが描画プロセスによって要求される伝送速度で(リアルタイム)送信されることを可能にするデータ形式へとピクセルデータをパッケージ化すること(ここで、ピクセルデータをパッケージ化することは上述したようなデータの再順序付け(re-ordering)を含み得る)。
【0020】
以下に、本発明を更に説明するために、図面に模式的に示されているような、例示的かつ非限定的実施形態が議論(説明)される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明に応じたマルチカラム描画機ツールの一例の模式的断面図。
【
図2】従来技術に応じたパターン画定システムの一例の縦断面図。
【
図3A】ターゲットに対するカラム(複数)の第1配置の部分的平面図(矩形配置)。
【
図4A】ストライプ(複数)を用いるターゲットにおける基本描画ストラテジ。
【
図4B】ターゲットへ結像されたアパーチャ(複数)の一例示的配置。
【
図5A】露光されるべき一例示的パターンのピクセルマップの一例。
【
図5B】露光されるべき一例示的パターンのピクセルマップの一例。
【
図6A】M=2、N=2のアパーチャ(複数)の一配置。
【
図6B】「ダブルグリッド」配置でのピクセル(複数)のオーバーサンプリングの一例。
【
図7】1つ以上の描画ツールにおける描画プロセスについて部分的にその上流において(前工程として)、部分的に当該描画プロセス中に行われるパターンデータ処理フローに関係する装置の一例の概観。
【
図8】パターンデータ処理フローの第1実施形態に応じたパターンデータ処理パイプラインのフローチャートの一例。
【
図9】パターンデータ処理フローの他の実施形態に応じたパターンデータ処理パイプラインのフローチャートの一例。
【
図10】パターンデータ処理フローの更に他の実施形態に応じたパターンデータ処理パイプラインのフローチャートの一例。
【
図11】描画ツールへのデータストリーミングプロセスの二層ストリーミングアーキテクチャの一例。
【実施例0022】
以下に与えられる本発明の例示的実施形態(複数)の詳細な議論は本発明の基本的思想及び更なる有利な発展を開示する。本発明の特定の適用に好適であると認められるようなここで議論される実施形態(複数)の幾つか又は全てを任意に組み合わせることは当業者には明らかなはずである。この開示全体において、「有利な」、「例示的な」又は「好ましい」のような用語は、本発明又はその一実施形態に特に好適である(但し不可欠ではない)要素又は寸法を表し、当業者によって好適であると認められる場合であれば、明示的に要求されない限り、修正可能である。本発明は、説明の目的のために与えられかつ単に本発明の好適な具体化例を提示するに過ぎない以下に議論する例示的実施形態(複数)に限定されないことは当然である。この開示の範囲内において、「上」又は「下」のような垂直(鉛直)方向に関する用語は、縦方向(「垂直軸」)に沿って下方に進行すると考えられるビームの方向について理解されるべきである。この垂直軸は、更に、X方向とY方向が横切るZ方向と同一であると見なされる。
【0023】
以下において議論される実施形態(複数)は、描画機ツールにおいてターゲットに描画されるべきパターン画像データの効率的なハンドリング(処理)のためのアプローチ(複数)を開示する。
【0024】
リソグラフィ装置
【0025】
図1は、マルチカラム荷電粒子光学系2のための真空ハウジング10とターゲットチャンバ3を備えたマルチカラム描画機ツール1の一例を模式的断面図で示す。なお、ターゲットチャンバ3には、マルチカラム荷電粒子光学系がカラム基底プレート4によって取り付けられている。ターゲットチャンバ3の内部には、X-Yステージ5、例えばレーザ干渉計制御型空気ベアリング真空ステージがあるが、このステージ上には、基板チャック6が適切な操作システムを用いてロードされる。チャック6は、これは好ましくは静電チャックであるが、ターゲットとしての役割を果たすシリコンウェハのような、基板7を保持する。荷電粒子マルチビームリソグラフィのために、基板は、例えば、電子又はイオンビーム感受(感応)性レジスト層[7a]で被覆されている。
【0026】
マルチカラム光学系2は、複数のサブカラム9(図示のカラムの個数は、見易さの観点から減少されて示されているが、実際の具体化におけるマルチカラム装置に存在する遥かに多くの個数のカラムを代表している)を含む。好ましくは、サブカラム9は、同じ構成ないし設定(セットアップ:setup)を有し、それらの軸が互いに平行をなすよう並べて配置されている。各サブカラムは、電子又はイオン源11a、抽出システム11b及び静電マルチ電極コンデンサ光学系11cを含む照明システム11と、荷電粒子縮小投射光学系16を有し、照明システム11(ないしコンデンサ光学系11c)は、当該アパーチャ(ビーム整形装置)を通り抜けるサブビーム(「ビームレット」)の形状を画定する複数のアパーチャのみをビームに通過させるよう適合化されたパターン画定(PD(pattern definition))システム12へ幅広のテレセントリック荷電粒子ビームを供給し、荷電粒子縮小投射光学系16は、好ましくは静電及び/又は磁気レンズ及び場合により他の粒子光学装置を含む複数の電気磁気光学式(electro-magneto-optical)連続投射ステージから構成されている。
図1に示した実施形態では、投射光学系16は、例えば3つのレンズを含む:第1レンズは加速型静電マルチ電極レンズ16aであり、他方、第2、第3レンズ16b、16cは、とりわけ電子を使用する場合には磁気レンズであり、或いは、例えば粒子がイオンの場合には静電レンズである。
【0027】
投射荷電粒子光学系16の加速型第1レンズは、粒子の低い運動エネルギ(例えば5keV)でPDシステム12を作動させる一方で、縮小投射光学系のクロスオーバー(複数)に高いビームエネルギ(例えば50keV)を提供する、従って、確率的クーロン相互作用を最小化するという重要な利点を提供する。更に、基板における高いビームエネルギは、ターゲット、とりわけ荷電粒子感受性層8[7a]を露光する場合、荷電粒子の散乱を予め低減するために有益である。
【0028】
投射光学系の第1レンズは第1クロスオーバーを形成するのに対し、第2レンズは第2クロスオーバーを形成する。各サブカラムにおけるこの位置には、PDシステムにおいて逸らされたビームを除去するよう構成された遮断プレート15がある。サブカラムの第3レンズ16cと遮断プレート15は、適切な締結手段18によってカラム基底プレート4に取り付けられている参照プレート17に取り付けられている。参照(基準)プレート17には、オフアクシス(off-axis)光学アライメントシステムの部分19が設けられている。
【0029】
参照プレートは、軽量、高弾性率及び高熱伝導率を有し、及び、(静電荷を流出させることにより)帯電を回避するために、少なくとも関連する(適切な)部分において導電性被膜(コーティング)によって被覆され得る、酸化シリコン又は酸化アルミニウム系のセラミック材料のような、低い熱膨張(率)を有する適切な基材から製造される。
【0030】
図2の縦断面詳細図において見出すことができるように、従来技術によるPDシステム12は、連続的構成で上下に配置された3つのプレート:アパーチャアレイプレート20(AAP(aperture array plate))、偏向アレイプレート30(DAP(deflection array plate)、ブランキングアレイプレートとも称される)及びフィールド境界アレイプレート40(FAP(field-boundary array plate))を含む。ここで、用語「プレート」は、関連する装置の全体形状に関係するが、プレートが単一の(一枚の)プレートコンポーネント、これは通常は好ましい具現化の仕方ではあるが、として実現されることを必ずしも示しておらず;寧ろ、特定の実施形態(複数)では、AAPのような「プレート」は、複数のサブプレートから構成され得ることに注意することは重要である。これらのプレートは、好ましくは、Z方向に沿って共通の(同じ)間隔で、互いに対し平行に配置される。
【0031】
AAP20のフラットな上面は、コンデンサ光学系11cに対する定義された電位界面(potential interface)を形成する。AAPは、例えば、薄葉(肉薄)化中央部22を有するシリコンウェハ(凡そ1mm厚)21の方形又は矩形片からなり得る。このプレートは導電性保護層23によって被覆され得るが、このことは(US6,858,118に応じて)水素又はヘリウムイオンを使用する場合格別に有利であろう。電子又は重イオン(例えばアルゴン又はキセノン)を使用する場合、層23は夫々21及び22の表面部分によって提供されるシリコンでもあり得るが、その結果、層23とバルク部分21/22の夫々の間には界面は存在しない。
【0032】
AAP20は、薄葉化部22を(上下方向に)横断する(貫通する)孔(複数)によって形成される複数のアパーチャ24を有する。図示の実施形態では、アパーチャ24は、層23に形成された直線(垂直)プロフィール(輪郭)部とAAP20のバルク層の「下方拡開(retrograde)」プロフィール(輪郭)部を有するよう具現化され、そのため、孔の下方出口(出射口)25は、アパーチャ24の主要部よりも幅が広い。直線プロフィール部及び下方拡開プロフィール部は何れも反応性イオンエッチングのような従来技術の構造化技術によって形成されることができる。下方拡開プロフィール部は、孔を貫通通過するビームのミラー帯電効果(mirror-charging effects)を強く低下させる。
【0033】
DAP30は、それぞれの位置がAAP20のアパーチャ(複数)24の位置に対応する複数の孔33を備えるプレートである。これらの孔33は、当該孔33を貫通通過する個別のサブビームを選択的に夫々の経路から逸らすよう構成された電極35、38を備える。DAP30は、例えば、ASIC回路を備えたCMOSウェハの後処理によって製造されることができる。DAP30は、例えば、方形又は矩形形状を有する一個のCMOSウェハから作られると共に、薄葉化された(但し22の厚みと比べてより厚いことが適切であり得る)中央部32を保持するフレームを形成する肉厚部31を含む。中央部32におけるアパーチャ孔33は24と比べて(例えば
図2の左右両側において夫々凡そ2μmだけ)より幅が広い。CMOS電子回路34は、MEMS技術によって提供される電極35、38を制御するために使用される。各孔33の近くに、「アース」電極35と偏向電極38が設けられる。アース電極(複数)35は、電気的に相互に接続され、共通のアース電位に接続され、及び、帯電を阻止するための下方拡開(径大)部36とCMOS回路への不所望のショートカットを阻止するための絶縁部37を含む。アース電極35は、シリコンバルク部31及び32と同じ電位にあるCMOS回路34の部分にも接続され得る。
【0034】
偏向電極38は、静電電位(ポテンシャル)が選択的に印加されるよう構成されている;そのような静電電位が電極38に印加されると、この電極は、対応するサブビームに対し偏向を引き起こし、該サブビームをその公称経路から逸らす電界を生成する。電極38も、帯電を回避するために下方拡開(径大)部39を有してもよい。電極38の各々は、その基部において、CMOS回路34の内部の夫々のコンタクト部に接続される。
【0035】
アース電極35の高さ(長さ)は、ビーム間のクロストーク効果を抑制するために、偏向電極38の高さ(長さ)よりも高い(長い)。
【0036】
偏向電極38は、描画プロセス中にリアルタイムでDAP30に供給されるデータ及び制御信号によって選択的に活性化(電力供給)及び制御される。これらのデータ及び制御信号は、まとめて、ストリーミングパターンデータと称される。
図1を参照すると、ストリーミングパターンデータは、描画機ツール1のコントロールシステム14によってデータラインの束(これは
図1ではまとめてデータパスライン13として表されている)を介してPDシステム12へ供給される。
【0037】
FAPとしての役割を果たす第3プレート40は、荷電粒子縮小投射光学系16の第1レンズ部へ向かって下方を指向し、従って該投射光学系の第1レンズ16aに対する定義された電位界面を提供するフラットな表面を有する。FAP40の肉厚部41は、シリコンウェハの一部からなり、薄葉(肉薄)化中央部42を有する、方形又は矩形フレームである。FAP40は、AAP20及びDAP30の孔24、33に対応するが、これらと比べて幅がより広い複数の孔43を備えている。
【0038】
PDシステム12は、とりわけその第1の部分であるAAP20は、幅広の荷電粒子ビーム50(ここで「幅広(broad)」のビームは、ビームがAAP20に形成されたアパーチャアレイのエリア全体をカバーするために十分に幅が広いことを意味する。)によって照射され、かくして、ビーム50は、アパーチャ(複数)24を通って送出されると、分割されて、何千本もの(極めて多数の)マイクロメートルサイズ(径)のビーム51となる。ビーム51は、妨げられることなく、DAP及びFAPを横断する(通過する)ことになる。
【0039】
既述のとおり、偏向電極38がCMOS電子回路によって電力供給される場合、偏向電極と対応するアース電極の間に電界が生成され、これにより、その都度通過するビーム52の小さいが十分な偏向が生じる(
図2)。偏向されたビームはDAP及びFAPを妨げられることなく横断する(通り抜ける)ことができる。なぜなら、夫々の孔33及び34は十分に広い幅で形成されているからである。しかしながら、偏向されたビーム52は、サブカラムの遮断プレート15(
図1)において除去される。従って、DAPによって影響を受けないビームのみが基板に到達する。
【0040】
荷電粒子縮小光学系16の縮小率は、PDシステム12におけるビームの寸法及びその相互間距離及びターゲットにおける基板の所望の寸法の観点から適切に選択される。これにより、PDシステムにおいてマイクロメートルサイズのビームが可能になる一方で、ナノメートルサイズのビームが基板に投射される。
【0041】
AAPによって形成される(影響を受けていない)ビーム51の束は、荷電粒子投射光学系の予め設定された縮小率Rで基板に投射される。従って、基板においては、幅BX=AX/R及びBY=AY/R、但しAX及びAYは夫々X方向及びY方向に沿ったアパーチャアレイフィールドのサイズを示す、を有する「ビームアレイフィールド(BAF(beam array field))」が投射される。基板における個々の(個別)サブビームのビームサイズはbX=aX/RとbY=aY/R、但しaX及びaYは夫々DAP30のレベル(高さ)におけるX方向及びY方向に沿って測定されるビーム51のサイズを示す、によって与えられる。
【0042】
図2(及びそれ以降の類似の図面)に記載された個別ビーム51、52は、二次元X-Yアレイに配置される遥かにより多くの本数の、典型的には何千本もの、サブビームを代表していることに注意することは重要である。本出願人は、例えば、何千本もの(例えば262,144本の)プログラム可能ビームを備えるイオン及び電子マルチビームカラムについて、R=200の縮小率を有するマルチビーム荷電粒子光学系を既に実現している。また、本出願人は、基板において凡そ82μm×82μmのビームアレイフィールドを有するそのようなカラムを既に実現している。これらの例は、説明の目的のために言及したものであり、限定的な例として理解されるべきではない。
【0043】
図3に概略的に示した配置は、上記の種類の多数のサブカラムが最先端の集積回路デバイス製造のための基板として使用される300mmシリコンウェハのような基板の領域内に収まるような直径を有するサブカラムを具現化するために使用される。450mmシリコンウェハサイズのための193nm液浸フォトリソグラフィ、EUV及びナノインプリントリソグラフィツールの開発が現在進行中である。本書において提示されるマルチカラム構成は、450mm径シリコンウェハサイズのような他の任意のウェハサイズに対し、対応してより多くの個数のサブカラムを提供することによって、スループットのロスなしに容易に適合されることができる。
【0044】
以下に示す種々の実施形態は、基板(例えばシリコンウェハ)が例えば長さDX及び幅DYを有する典型的にはDX=33mm及びDY=26mmを有するダイフィールド(die-fields)を有する193nm液浸スキャナツールによって露光されるマルチビームツールに関するものである。このタイプのマルチビームツールは、本出願人のUS 2015/0311031 A1及びUS 9,443,699に記載されているが、これらの教示は引照を以って本書に繰り込みここに記載されているものとする。1つのダイフィールドは、幾つかのチップ(chips)を含み得るが、通常は幾つかのチップを含む。多くの実施形態は限定的なものではなく、従って、本発明は他のレイアウトや応用にも関連し得る。
【0045】
本発明に好適なコンパクトなサブカラム配置60及び70の例示的実施形態は夫々
図3A及び
図3Bに示されているが、これらはターゲットの面に関する配置(複数)の平面図の詳細を示す。
図3Aには、「矩形」レイアウトの一例が示されているが、アパーチャアレイフィールド62を有する1つのサブカラム61(これは象徴的に円で表されている)は、(夫々異なる種類のハッチングで示されている)1つのダイフィールドの領域63を露光するために使用される;従って、カラム(複数)の相互配置はダイフィールド(複数)の相互配置を反映したものである。
図3Bはカラムの「菱形」配置の一例を示しており、アパーチャアレイフィールド72を有する1つのサブカラム71は2つのダイフィールドの領域73を露光するために使用されるが、隣り合う2つのカラムの間の距離はただ1つのダイフィールドの対角線(の長さ)に対応する。
【0046】
DX=33mm及びDY=26mmとすれば、
図3Aの場合、サブカラム61の直径は凡そ24mm、アパーチャアレイフィールド62のサイズは凡そ8.2mm×8.2mmであるのに対し、
図3Bの場合、サブカラム71の直径は凡そ40mm、アパーチャアレイフィールド72のサイズは凡そ16.4mm×16.4mmである。アパーチャのピッチが16μmであるとすると、アパーチャアレイフィールド62は512×512=262,144本のビームを提供することができるのに対し、アパーチャアレイフィールド72は1024×1024=1,048,576本のビームを提供することができる。
【0047】
明らかであることは、上記のマルチカラムレイアウトは、マルチカラム装置の多数のPDシステムを適切に制御するために、多数のデータ及び制御信号が入力信号としてDAP(複数)へ供給されることを必要とすることである。更に、出力信号を提供するために、偏向装置(複数)から読み出すための追加の制御ライン(複数)が存在し得る。DAP(複数)のこれらの入力ライン及び出力ラインは、まとめて、データパスと称される。
【0048】
とりわけ、データパスは、例えば、本出願人のUS2015/0311031 A1及びUS 9,443,699に記載されているような光ファイバ及び/又は電気ラインコンポーネント(例えばフラット(リボン)ケーブル(flatband cables))を含む。
【0049】
パターンの描画
【0050】
図4Aを参照すると、PDシステム4によって画定(定義)されるパターン画像pmはターゲット7上に生成される。荷電粒子感応性レジスト層8[7a]で被覆されたターゲット表面は、露光されるべき1つ以上のエリアr1を含む。一般的に、ターゲット上で露光されるパターン画像pmは、通常は、パターンが形成されるべきエリアr1の幅よりも十分に小さい有限のサイズy0を有する。従って、スキャニング(走査)ストライプ露光ストラテジが利用されるが、この場合、ターゲットは、ターゲット上においてビームの位置が絶えず変化されるよう、入射ビーム下で動かされる:即ち、ビームはターゲット表面(全体)にわたって効率的にスキャン(走査)される。ここで強調すべきことは、本発明の目的のためには、ターゲット上におけるパターン画像pmの相対運動のみが重要であることである。この相対運動によって、パターン画像pmはエリアr1(全体)にわたって動かされて、幅y0の一連のストライプ(複数)s1,s2,s3,...sn(露光ストライプ)が形成される。ストライプの完全なセットは基板表面の全エリア(全領域)をカバーする。スキャン(走査)方向sdは一定方向(隣り合うストライプ間でパターン画像の運動方向が同じ)であってもよく、或いは、1つのストライプから次のストライプへの運動の方向が反転(交互に変化)しても(隣り合うストライプ間でパターン画像の運動方向が逆であっても)よい。
【0051】
図5Aは、10×18=180ピクセルのサイズを有する画像化パターンpsの単純な一例を示す。ここで、露光エリアの幾つかのピクセルp100は100%のグレーレベル401に露光され、他の幾つかのピクセルp50はフルグレーレベルの50%のみ402に露光される。残りのピクセルは0%線量(dose)403に露光される(即ち全く露光されない)。
図5Bは50%レベルを実現する仕方を示す:即ち、各ピクセルは複数回、1ピクセル当たり0~100%のグレーレベルで、露光されるが、グレーレベルは、活性化されるピクセルについて対応する露光回数を選択することによって実現される;グレーレベルは露光の総回数に対する活性化された露光の割合である。この例では、50%レベルは4回のうち2回を選択することによって実現される。勿論、本発明の現実の適用では、標準的画像のピクセルの個数は遥かにより大きいであろう。しかしながら、
図5A及び
図5Bでは、ピクセルの個数は見易さの観点から180個のみとされている。更に、一般的には、0%~100%のスケールの間で一層より多くのグレーレベルが使用される。
【0052】
かくして、パターン画像pm(
図4A)は、露光されるべき所望のパターンに応じた線量値で露光される複数のパターンピクセルpxから構成される。尤も、PDシステムのアパーチャフィールドには有限の数のアパーチャしか存在しないため、同時に露光されることができるのは(1つの)サブセットのピクセル(複数)pxのみであることに留意すべきである。スイッチオンされるアパーチャ(複数)のパターンは基板に露光されるべきパターンに応じて選択される。従って、実際のパターンにおいては、ピクセルのすべてが完全な線量で露光されるのではなく、幾つかのピクセルは実際のパターンに応じて「スイッチオフ」される;ピクセル毎に(換言すれば、ピクセルをカバーするビームレット毎に)、露光線量は、ピクセルがターゲット上で露光又は構造化されるべきパターンに応じて「スイッチオン」されるか又は「スイッチオフ」されるかにより、ピクセル露光サイクル毎に異なり得る。
【0053】
基板16が連続的に動かされている間に、ターゲット上の(1つの)パターンピクセルpxに対応する同じ画像要素は、一連のアパーチャの画像(複数)によって何回もカバーされ得る。同時に、PDシステムにおけるパターンは、PDシステムのアパーチャ(複数)を介して、段階的に、シフトされる。従って、ターゲット上の或る位置における1つのピクセルについて考えると、これらのアパーチャが当該ピクセルをカバーするとするとき、すべてのアパーチャがスイッチオンされたとすれば、最大露光線量レベル、即ち、100%に相当する「ホワイト」シェード、が得られる。「ホワイト」シェードの他にも、ターゲットにおける(1つの)ピクセルを、最小(「ブラック」)及び最大(「ホワイト」)露光線量レベル間を補間するより低い線量レベル(「グレーシェード」ともいう。)に応じて露光することも可能である。グレーシェードは、例えば、1つのピクセルの描画に関与するアパーチャ(複数)のサブセットのみをスイッチオンすることによって実現され得る;例えば、16個のうちの4個のアパーチャは25%のグレーレベルを与えるであろう。他の一アプローチは、関与するアパーチャ(複数)についてブランキングされない露光の時間(期間)を短縮することである。従って、1つのアパーチャ画像の露光時間は、グレースケールコード、例えば整数値によって制御される。露光されたアパーチャ画像は、ゼロと最大露光時間及び(最大)線量レベルに対応する所与数のグレーシェード(複数)の1つの現れである。グレースケールは、通常、一セットのグレー値(複数)、例えば0,1/(ny―1)...,i/(ny―1),...,1、但しnyはグレー値の個数、iは整数(「グレーインデックス」、0≦i≦ny)を定める。尤も、一般的には、グレー値(複数)は等間隔である必要はなく、0~1の間の非減少数列を形成する。
【0054】
図4Bは、一基本レイアウトに応じた、PDシステムのアパーチャフィールドにおけるアパーチャ(複数)の好ましい一配置を示し、更に、以下において使用される幾つかの量及び略語を示している。図示されているのは、ターゲットに投射されたアパーチャ画像(複数)b1の配置であり、これらは黒のシェードで示されている。主軸X及びYは、夫々、ターゲット運動の進行方向(スキャン(走査)方向sd)及びその直角(直交)方向に対応する。各アパーチャ画像は方向X及びYに沿って夫々幅bX及びbYを有する。アパーチャ(複数)は、夫々MX個及びMY個のアパーチャを有する行及び列に沿って配置されており、各行及び各列において隣り合うアパーチャ間のオフセット(ずれ)は夫々NX・bX及びNY・bYである。その結果、各アパーチャ画像には、NX・bX・NY・bYの面積を有する概念上のセルC1が属し(割り当てられ)、アパーチャ配置は、矩形状に配置されたMX・MY個のセルを含む。以下において、これらのセルC1は「露光セル」と称される。完全なアパーチャ配置は、ターゲットに投射されると、BX(=MX・NX・bX)×BY(=MY・NY・bY)の寸法を有する。以下の議論においては、矩形グリッドの特殊例としての方形グリッドを想定し、b=bX=bY、M=MX=MY及びN=NX=NYとし、Mは整数とする。これらは以下のすべての説明のためのものであり、一般化に対し如何なる制限を課すものではない。かくして、(1つの)「露光セル」はターゲット基板上においてN・b×N・bのサイズを有する。
【0055】
隣り合う2つの露光位置間のピッチは以下においてeで表される。一般的に、距離eはアパーチャ画像の公称幅bと異なり得る。最も単純な場合では、2×2露光セル(複数)C3の配置の例についての
図6Aに示されているb=eであり、1つのアパーチャ画像bi0は1つのピクセル(の公称位置)をカバーする。
図6Bに示されている(更にはUS 8,222,621及びUS 7,276,714の教示に従っている)重要な他の1つの場合では、eはアパーチャ画像の幅bの分数b/oであり得る。ここで、o>1であり、好ましくは整数である(但し必ずしも整数に限られない)が、oはオーバーサンプリング係数(factor)とも称される。この場合、夫々異なる露光の経路にあるアパーチャ画像(複数)は空間的に重なり合い、生成されるべきパターンのより高解像度の位置決め(placement)が可能になる。その結果、(1つの)アパーチャの各画像は、一度で、多数のピクセル、具体的にはo
2個のピクセルをカバーすることになる。ターゲットに結像されるアパーチャフィールドの全エリアは(NMo)
2個のピクセルを含むことになる。アパーチャ画像の位置決めの観点からは、このオーバーサンプリングは、ターゲットエリアを単にカバーするために必要なものとは(間隔(spacing)より精細であるがゆえに)異なるいわゆる位置決めグリッドに対応する。
【0056】
図6Bは、「ダブルグリッド」と称される位置決めグリッドと組み合わされたo=2のオーバーサンプリングの一例、具体的には、(1つの)露光セルC4によるアパーチャアレイの画像がパラメータo=2、N=2を有する一例を示す。そのため、各公称位置(
図6Bの小さい方形フィールド)に、4つのアパーチャ画像bi1(破線)がプリントされるが、これらは正規のグリッド上においてX及びYの両方向にピッチeだけオフセットされている(ずらされている)。アパーチャ画像のサイズは同じ値bであるのに対し、位置決めグリッドのピッチeは今やb/o=b/2である。従前の公称位置に対するオフセット(位置決めグリッドのオフセット)もb/2のサイズである。同時に、各ピクセルの線量及び/又はグレースケールは、夫々のピクセルをカバーするアパーチャ画像について適切なグレー値を選択することによって適合化(減少)され得る。その結果、サイズaのエリアがプリントされるが、位置決めグリッドはより精細であるが故に位置決め正確性(精度)は増大されている。
図6Aと
図6Bを直接比較することにより、アパーチャ画像(複数)の位置(複数)は以前の2倍(一般的にはo倍)精細に位置決めグリッド上に配置される一方で、アパーチャ画像(複数)自身は重なり合っている(オーバーラップしている)。露光セルC4は今や描画プロセス中に処理されるべき(No)
2の位置(即ち「ピクセル」)を含み、従って、o
2倍だけ、従前より多くのピクセルを含む。これに応じて、アパーチャ画像b×bのサイズを有するエリアbi1は、
図6Bのo=2でのオーバーサンプリングの場合(「ダブルグリッド」とも称される)、o
2=4個のピクセルと関連付けられる。勿論、oは他の任意の整数値、とりわけ4(「クワッドグリッド」、不図示)又は8も取り得る。パラメータoには、US 9,653,263に示されている「ダブルセンタグリッド(Double-Centered Grid)」の場合に対応する、2
1/2=1.414又は2
3/2=2.828のような、1より大きい非整数値が割り当てられてもよい。
【0057】
連結(interlocking)グリッド(o>1)を用いると、「ディザ化(ディザリング:dithering)」によってグレーシェードの数を増加することができる一方で、線量分布は一様に維持されることに注意することは重要である。これの根拠は、何れかの公称グリッドについてのグレーシェード(複数)は等しいということにある。このことは、ダブル連結グリッドについては、実現可能な有効な線量レベルの数は非連結グリッドについてのものより4倍より多いことを意味する。一般的に言えば、オーバーサンプリング型露光グリッド(即ちo>1)は何れもX方向及びY方向に距離b/oだけシフトされるo2個までの公称グリッドから構成される。従って、これらのo個のグリッドの1つのみの線量レベルが増大される場合、1つの線量レベルから次の線量レベルへのステップはo個のサブステップへと分割されることができる;これは、すべてのサブグリッドが公称レベルを露光するまで、他のグリッドについて繰り返し行うことができる。当業者であれば分かるように、基板におけるビーム形状は、(アパーチャプレートの)機械的ブラー(ボケ)とアパーチャプレートの縮小されたアパーチャ形状の畳み込みである。幅bを露光グリッド定数eの自然数倍に設定することによって、換言すれば、o=b/eを整数にすることによって、基板上に均一な(一様な)線量分布を得ることができる。そうでない場合、線量分布は、エイリアシング効果のために、露光グリッドの周期での最小値及び最大値を有し得る。多数のグレーシェードはより良好な特徴位置決めを可能にする。従って、グレーレベルの増大は、ピクセル位置当たりのグレーシェードが特定の数に制限される場合、重要である。
【0058】
パターンデータ処理
【0059】
本発明に応じ、描画機ツールは、描画されるべきパターンを、(何れも夫々のPDシステムによって形成される個別カラム(複数)のビームアレイフィールドについてのものである)ターゲット上のピクセルアレイへのグレーレベル割当て又はビームレット線量割当てのような、ラスタ(raster)上で定義される線量割当ての表現へ変換するデータ処理システムを含む。典型的には、パターンは、同じ基板上で、例えば直接描画法の場合(1つの)シリコンウェハ上の多数のダイ(チップ)へ、及び/又はマスク描画法の場合連続的に多数のマスクブランクへと、繰り返し描画される。描画機ツール処理システムは、以下の2つの主要部分(1)及び(2)から構成される:
(1)第1部分、これは、描画プロセスから独立に、好ましくは描画プロセスに先行して、パターンデータを前処理することにより、中間データを生成し、該中間データが場合により長期間維持されることが可能な記憶部に当該中間データを記憶するよう構成されている。この第1部分は、
図7にユニット101として示されている、「データ前処理ユニット」又は「データセンタ(Data Center)」とも称される専用の独立システムとして実現され得る。この第1部分は、分散型コンピュータネットワークの形によるような、他の方式でも実現され得ることは当業者であれば分かるであろう;
及び、
(2)第2部分、これは、描画プロセス中にデータ処理フローを続けることにより、中間データを記憶部から読み出し、場合により幾つかの更なる処理ステップを中間データに適用し、中間データをストリーミングデータへ変換し、及び、ストリーミングデータを個別カラムPDシステムへ基板露光毎に描画プロセス中にリアルタイムで送信(streaming)するよう構成されている。この第2部分102は「データストリーミングユニット」又は「データパス(Data Path)」とも称される。これは、通常は、例えば
図7の例において複数の破線の矩形(ブロック)162で象徴的に示されており夫々がマルチカラム描画機ツールの対応する描画システム又はカラムに関連付けられている複数のユニットとして示された描画機ツールの複数のコントロールシステムの各々における複数の個別インスタンスによって具現化される。この第2部分102は、他の構成を用いて、例えば1つの単独サーバコンピュータ、又はコンピュータアレイ(該コンピュータアレイの各コンピュータはマルチカラム描画機ツールの対応するグループのカラム(又は1つの単独カラムのみ)をサポートする)を用いても実現され得る。
【0060】
図7は、複数の描画機ツール1A、1Bと、描画機ツールにおいて処理される夫々のターゲット7、7’に描画されるべきパターンデータを生成するための前処理システム101とから構成される描画システムの一例におけるパターンデータ処理フローの一例の単純化した模式的概念図である。描画されるべきパターン、入力パターンデータINPDATは前処理システム101のデータ前処理ステーション111へ供給される。データ前処理ステーション111は、入力パターンデータを処理して中間データIMDATを生成し、それらを、LANを介してアクセス可能なハードドライブ型大容量記憶装置又は描画システムに専用的に備えられる専用記憶システムのような、1つ以上の記憶装置11Mに書き込む;(1つ以上の)記憶装置11Mにおいて、中間データは、データストリーミングユニット162によってアクセスされることができるように、適切な方法で記憶される。
図7に示されている例では、複数のデータストリーミングユニット162が(1つ以上の)記憶装置11Mにアクセスして中間データを読み出すが、これは、場合により後述するような夫々のローカル中間記憶部LMDAT(例えばSSDメモリ)及び/又は特別な追加的データ処理を用いて、好ましくは同時に実行され得る。そして、各データストリーミングユニット162は、データをバッファ記憶部SBUF(例えばコントロールシステムのRAMメモリ)を介して、描画プロセス中にデータを使用する描画機ツールカラムへと(リアルタイムで)送信する(stream)。
図7の模式図では、夫々複数のカラム(見易さの観点から各描画機ツールについて夫々3つのカラムc1、c2、c3及びc4、c5、c6のみが図示されている)を含む2つの描画機ツール1A、1Bには、パターンデータが、対応する数の(
図7では6つの)データストリーミングユニットによって供給されるが、これらは全て究極的にはデータ前処理ユニット101からの中間データIMDATにアクセスする。一般的に、描画機ツール1A、1Bの個数は1、2又は他の任意の数であり得ることは明らかであろう。各描画機ツール1A、1Bについて、夫々に属するデータストリーミングユニット162は夫々のコントローラ14A、14B(これらは夫々
図1のコントロールシステム14に対応する)の部分を構成する。
【0061】
パターンデータ
【0062】
多くの実施形態では、描画されるべきパターンは、例えば矩形、台形又は一般的なポリゴン(多角形)のようなジオメトリ(幾何学図形)要素のコレクション(集合)として、ベクトル形式で記述される;これは典型的にはより良好なデータ圧縮を提供し、従ってデータ記憶に対する要求を小さくする。ポリゴン頂点密度は、パターンの複雑性についての尺度としての役割(機能)を果たし得るが、ポリゴン頂点値の典型的な一例は2000頂点/μm2である。更に、典型的には、パターンは複数の基板に対し長期間にわたり繰り返し描画されるが、初期パターンデータは、一旦、中間データへと前処理され、そして、該長期間を通じたストリーミングのために記憶される。直接描画法の一典型例では、パターンは辺の長さ31mm×26.8mmを有するダイのエリア(面積)をカバーするが、2×4バイト/頂点の上記頂点密度を考慮すると凡そ13.3TBのメモリ記憶空間を必要とするであろう。
【0063】
図8~
図11はパターンデータ処理フローの例を模式的に示す。なお、矩形の図形は特定のデータ構造又はデータフォーマットステージに対応するノードを表し、エッジ(又は矢印)は処理及び/又はストリーミングオペレーションを表す。とりわけ、第1ノードはベクトル形式でデータセンタ101へインプットパターンデータINPDAT(
図7参照)の形で供給されるパターンVECPATを表す。更に、
図8~
図10において、各データステージの(紙面)左側には、単純なジオメトリ構造の一例についての夫々のデータステージの象徴的な画像(イラスト)が示されている。
図8~
図11の破線のボックスは、夫々、処理フローの各部が実行されるセクション/ユニットを象徴的に示しているが、その他には、パターンデータ処理フローを実行するプロセッサ及びコントロールシステムは、明確性のために、これらの図では図示されていないが、それらは当業者によって理解されかつ簡単に具現化されるものである。
【0064】
データ処理
【0065】
本発明の1つのグループの実施形態では、データセンタ101はパターンを前処理して、中間データとして使用される、個別カラムのための(下位の)ビームレット線量割当てを生成する。描画プロセス中、(描画)ツールは基板をスキャン(走査)し、(各シングルカラム及びそれに属するPDシステムのための)各データパスは中間データをデータセンタからそのPDシステムへと(リアルタイムで)送信する。
【0066】
図8は、パターンデータ処理フローの第1実施形態のデータセンタ181及びデータパス182におけるパターンデータ処理パイプラインのフローチャートの一例を示す。
【0067】
第1ステップ91では、パターンVECPATは、場合によっては幾何学的にオーバーラップする複数の小データチャンクSPLITGEOMへ分割される。各チャンクは例えば1つ以上のジオメトリ要素を含む。典型的実施形態(複数)では、各チャンクは複数のポリゴンからなり得るが、各ポリゴンは、予め決定される最大数より少ない頂点及び予め決定される最大辺長より短い辺(複数)を有する。例えば、頂点の最大数は、7560又は8192個のような10000のオーダーであり得、最大辺長は1μmのオーダーの値であり得る。ステップ91のこの分割プロセスは、個別カラムの如何なる性質も考慮せず、従って、データはこのステージ(ステップ)での個別処理のためにコピーされる必要はない。
【0068】
データ前処理ユニット181は、処理による基板の歪み、光学的偏向手段によっては補正されることができないビームアレイフィールドの歪み、先行の、並列(並行)的な又は後続のエッチングプロセスから生じる「ローディング効果」、電荷誘導作用(効果)及び/又はその他の有害作用(悪影響)のような非理想的描画状態を補償するよう構成された補正サブユニットを含み得る。例えば、ステップ92として、ベクトルドメインにおいてこのステージ(ステップ)ですべてのカラムに対し同じ仕方で影響を及ぼす補償を適用することは好都合であり得る。対応する処理は、すべてのチャンクSPLITGEOMに対し独立に、場合によっては並列(並行)的に、実行され得るが、得られるデータは、後続のステップ(複数)のコンピュータ計算速度を改善する仕方で分類及びコード化される。最も一般的には、これは、後方散乱電子によるフォギング(fogging)、(エッチローディング効果のような)マスク処理効果、及び前方散乱電子による近接効果のような効果(作用)を補償できるようにするために、これらのジオメトリ(幾何学図形)に割り当てられる公称線量の変化を伴うであろう。これは、適切な線量補正データDOSEMODに基づいて実行されるが、該データは、例えば、線量と基板に描画される特徴(複数)の限界寸法の間の関係のモデル型(モデルベースのないしモデルに基づく:model-based)及び/又は測定型(測定ベースのないし測定に基づく:measurement-based)分析から取得される、外部入力として供給されることができる。線量補正の適切な方法は従来技術から周知である。更に、US9,568,907B2に記載されているような、平行移動(並進運動)、スケーリング(拡大縮小)又は回転のような、ジオメトリに対する変換の適用によって、粒子ビームに対する横方向の空間的位置変化の補正を含むことが可能である。これは、位置変化補正データDISLOCMODに基づいて実行され得るが、このデータは、例えば、線量と(例えば基板又は露光装置の部分の荷電又は加熱による)特徴位置変化の間の関係の分析から類似の仕方で決定される、外部入力として供給されることができる。そのような分析の結果は、データセンタの補正サブユニットへ適切な形式(フォーマット)で、例えばモデルのパラメータ(複数)又は処理された測定結果として、供給され、そして、ステップ92の補正プロセスにおいて使用される。ステップ92は、
図8においてCORRGEOMと称されている、出力を提供するが、これはチャンク(複数)のコレクション(集合)であり、すべてのチャンクはジオメトリ要素(複数)のコレクションを含む。
【0069】
次のラスタ化ステップ93では、チャンク(複数)は、より正確には全てのチャンクのジオメトリ要素(複数)は、ラスタグラフィックスアレイPIXへ変換される。ここで、ピクセルグレーレベルは対応するアパーチャ画像の物理的線量を表す。完全にある1つのジオメトリの内部にあるすべてのピクセルにはポリゴンのカラーが割り当てられ、他方、ある1つのジオメトリの1つの辺を横切るピクセル(複数)のカラーは該ジオメトリによってカバーされるピクセルの面積の分数(fraction)で重み付けされる。この方法は、ジオメトリの面積とラスタ化後の全線量との間の線形関係を示唆する。線量は、まず、浮動小数点数として計算される;その後にのみ、それらはPDシステムによってサポートされるような線量値の離散的セットへと変換される。ラスタグラフィックスアレイPIXは、複数のサブグリッドアレイ(これらは後続する描画スキャン(複数)で描画されることによって重ね合わせられる)も含み得る;サブグリッドアレイ(複数)は、例えば、位置決めグリッド(複数)に対応し得る。ラスタ化の結果として、ラスタグラフィックスアレイPIXの(又は各サブグリッドアレイの)ピクセルデータは、例えば浮動小数点数の形式(フォーマット)で、夫々のピクセルについての公称(nominal)線量値を表現していることになる。典型的には、ピクセルドメインでの入力パターンデータの表現は、記憶に対する要求を一桁増大する。これらのデータの処理のためには、グラフィックス処理ユニット(GPU)は格別に好適である一方で、データ通信オーバーヘッドは実用上無視可能な程度であり、かつ、データに対する計算オペレーションは並列的に実行可能である。
【0070】
この実施形態の一変形形態ないし一相補的形態では、すべてのカラムに対し同じ仕方で影響を及ぼす描画条件に対する有害作用(悪影響)の補正は、SPLITGEOMの要素におけるオペレーションというより寧ろ(又はそれに対し補足的に)、既にピクセルドメインにおいてアレイPIXのデータへ適用されることができる。同じこと(考察)が、入力データについて既に検討したように、補正プロセスDOSEMOD及びDISLOCMODに当て嵌る;尤も、出力PIXはラスタグラフィックスアレイ又はサブグリッドアレイのコレクションであるが。
【0071】
次のステップ94では、ラスタグラフィックスアレイPIXのピクセルデータは描画状態(条件)に対するカラム特異的な有害効果(悪影響)について補正され得る。この補正ステップは、入力ピクセルデータの個別に補正されたコピーとしての、補正された(補正済)ピクセルデータCORRPIXを生成することになる。例えば、この補正ステップは、本出願人のUS9,568,907B2、US9,520,268B2及びUS10,325,757B2に夫々記載されているような、光学的ビーム偏向手段、ビームアレイフィールド内におけるビームブラー(ボケ)の空間的変化及び/又は荷電粒子ビームの電流密度の空間的変化によっては補正できないビームアレイフィールドの歪みを含み得る。なお、これらの文献は複数の補正技術を記載しており、これらの文献の教示は引照を以って本書に繰り込みここに記載されているものとする。
【0072】
ピクセルドメインにおける補正の一例はUS9,520,268B2に記載されている:即ち、予め決定されるカラム特異的ブラー均質化カーネルCOLMODのセットがビームアレイフィールドのピクセルデータに適用され得る。このタイプの補正は、カーネル(複数)によるピクセルデータの畳み込みによって実行される。畳み込みカーネルは典型的にはブラーの範囲、これは数十ナノメートルであるが、に作用するため、ビームアレイのピクセルデータが異なるCPU(複数)及び/又はGPU(複数)に分散される効果的な仕方で計算プロセス(複数)を並列化することができる。
【0073】
この実施形態の一変形形態ないし一相補的形態では、描画状態(条件)に対するカラム特異的有害作用(悪影響)の補正は既にベクトルドメインにおいても適用され得る。とりわけ、空間的位置変化は、本出願人のUS9,568,907B2に記載されているように、そのような補正に適している。
【0074】
次に、ステップ95のディザ化(ディザリング:dithering)プロセスは、予め決定されたグレー値スケールに基づいて、ピクセルデータCORRPIXの線量値データをグレー値データDITHPIXへ変換する。これは、丸めエラーが近くのピクセル(複数)にわたって平均化されることを保証(確保)する位置依存的丸めプロセスであるが、これは、オーバーサンプリングとの組み合わせにより、ただ1つのアパーチャについて利用可能な線量値の離散的セットによるものよりも遥かにより精細な線量変化を可能にする;これは、ヴィジュアル画像データのピクセルグラフィックスへの変換のための既知のアルゴリズムによって実現可能である。このステージ(ステップ)において追加の補正を、それらがピクセルドメインにおいて適用可能であれば、実際の補正(例えばUS9,269,543B2に記載されているような不良アパーチャ補正)に応じてディザ化の直前又は直後に、適用することも可能である。結果として得られるデータDITHPIXは、例えば、ラスタアレイ上で表現される整数データである。
【0075】
ステップ96では、ピクセルパッケージ化(パッケージング:packaging)が実行され得る。ステージ(ステップ)95から得られるデータDITHPIXは、ターゲット上に生成され、位置決めグリッドシーケンスに応じてソートされるアパーチャ画像(複数)のシーケンスに対応するピクセルデータのシーケンスへと分散(分配)される。これは、ピクセルデータをPDシステムによって受容可能な適切な形へ再順序付け(reorder)するために役立ちかつ描画法と適合的であり(compatible)、結果として得られるピクセルパッケージデータPACKPIXは、描画プロセスによって要求されるアクセス速度及び伝送レートをサポート可能な専用の記憶装置(
図7の記憶装置11M)に記憶される。例えば、
図4~
図6を参照して既に説明した描画法によって、同じ露光セルの内部で(互いに)隣り合う2つのピクセルは、それらの間で多数の他のピクセル露光、例えばそれらの間で(No)
2-2までのピクセル露光によって露光され得る。従って、この実施形態では、ピクセルパッケージデータは、同じパターンの繰り返し露光のために複数(多数)回アクセスされ得るメモリに保持される中間データを形成する。
【0076】
各カラムについてのデータ前処理ユニットのコンピュータ計算量を考慮すると、可及的長期間、但し最大でも所要数のウェハ又はマスクが露光されるまで、中間データを記憶しておくことは好都合であろう。尤も、非理想的描画状態をもたらす有害作用(悪影響)は時間と共に変化し、(そのため)データ前処理を通じて適用される補正は再調整される必要がある。この可能性を考慮すると、描画状態が補正の再調整を修正するほど十分に変化したときフィードバックを提供可能なインサイチュ(in-situ)及びエクスサイチュ(ex-situ)プロセスによって(描画)ツール及び各カラムの特性(値)を監視することは有利であり得る。インサイチュプロセスは、例えば、ファラデーカップによる荷電粒子電流の測定を伴い得る。他方、エクスサイチュプロセスは、典型的には、独立の測定装置、例えば走査型電子顕微鏡によるターゲット基板へ描画される参照パターンの検査(観察)を伴う。プロセスから得られるツールモニタデータは、次いで、モデル型及び/又は測定型分析で使用されることにより、補正の程度が決定されるが、これは、次いで、ステップ92、93、94及び95について説明したように適用される。補正が再調整される必要がある場合、前処理全体は、ベクトル形式の入力パターンデータを用いて、最初から開始される必要がある。例えば、このケースのデータ処理パイプラインは、例えば1つ以上の個別ソースにおける変動のために、各サブカラムがサブカラムの照明システムの補正の頻繁な再調整を必要とするマルチカラムツールにとって有利であり得る。そのような再調整は、実際上前処理を最初から開始することを必要とするデータ前処理ユニットにおいて適用されることができる。理想的には、この前処理は、現在実行中のストリーミングプロセスが完了した後にのみ、次のストリーミングプロセスのために中間データを置換することができるよう、現在実行中のストリーミングプロセスと並列(並行)的に実行されることができる。これは、リソグラフィ装置が中断されることなく作動できると同時に高品質を維持できることを保証する。
【0077】
最後に、データストリーミングユニット182は、メモリからピクセルパッケージデータPACKPIXを読み出し、当該データを、
図8にステップ97として象徴的に示されている、対応する描画ツールのPDシステムに関連付けられたバッファメモリSBUFへ(リアルタイムで)送信する。
【0078】
ベクトルデータ型中間データ
【0079】
図9は、パターンデータ処理フローの他の一実施形態のデータセンタ191及びデータパス192におけるパターンデータ処理パイプラインのフローチャートを示す。この例では、データ前処理ユニット191は、
図8のプロセスにおけるもののようなステップ91、92及び93のベクトル形式でのパターン入力データを、カラム特異的補正を含まない一般ラスタグラフィックス表現PIXへと変換する。その結果、即ち、ピクセルデータPIXは、データストリーミングユニットによる高伝送レートでのアクセスを保証(確保)するよう記憶媒体に記憶される中間データを形成する。この場合、データストリーミングユニット192は、ステップ94の、カーネルCOLMODのような、カラム特異的補正をストリーミングプロセス中にピクセルデータに適用するための付加サブユニット(複数)を含み得る。更にこの変形形態では、そのような補正の作業負荷(仕事量:workload)は、並列(並行)的に実行されること、(即ち)複数のCPU及び/又は複数のGPU及び/又は複数のFPGAに分散されることができ、そのため、この処理はリアルタイムで、即ちデータストリーミングレートを顕著に減少することなく、実行されることができる。次のステップ95及び96は、データストリーミングユニットにおいて同様に実行され得、ステップ97以降は
図8のプロセスにおけるものと同様に実行される。データセンタとデータパスのこの代替的分離は、補正サブユニット(複数)を頻繁に調整することを、描画状態がそれを必要とするのであれば、可能にする。例えば、データ処理パイプラインのこの場合は、各カラムが、例えば1つ以上の個別ソースにおける変動のために、サブカラムの照明システムについての補正の頻繁な再調整を必要とするマルチカラムツールにとって格別に有利である。そのような再調整は、インサイチュ測定によって決定され、リソグラフィ装置のオペレーションの中断又は追加の負担なしに、ステップ94の補正ユニットにおいて直ちに適用されることができる。
【0080】
図10は、パターンデータ処理フローの更に他の一実施形態のデータセンタ131及びデータパス132におけるパターンデータ処理パイプラインのフローチャートの一例を示す。この例では、データ処理ユニット131は、上述したものと同じ2つのステップ91及び92のみにおけるパターン入力データを変換して、複数の補正されたジオメトリ要素のデータCORRGEOMを生成する。この例では、データCORRGEOMは、永続メモリに記憶され、そして、描画プロセス中に要求に応じてデータストリーミングユニット132によってアクセスされる中間データを形成する。これは、典型的には、中間データの記憶必要量をラスタ化ピクセルデータPIXと比べて10の倍数で減少する。他方、このセットアップでは、データストリーミングユニットは、ラスタ化プロセス93、及び上述したそれ以降のステップ(複数)を実行することになる。
【0081】
データストリーミング
【0082】
上記のとおり、データストリーミングユニット182、192、132はピクセルパッケージデータをPDシステムに関連付けられたバッファメモリSBUFへ(リアルタイムで)送信する。描画プロセスの詳細については、2つ要件に同時に従うことが得策である:
(1)スキャン(走査)ストライプ露光法は、ターゲットが、ビームレットアレイフィールドを形成するPDシステムを含むカラムに対し相対的に運動することを伴う(含む)。
(2)PDシステムへ(リアルタイム)送信されるピクセルパッケージデータは、ビームレットアレイフィールドが露光されるべきパターンの夫々のエリアをカバーする場合、ターゲット上の露光されるべきパターンに対応しなければならない。
【0083】
これらの2つの要件は、厳格であるが、例えば
図11に示されているストリーミングプロセスのための2ステージストリーミングアーキテクチャを用いることによって満たされることが可能である。この2ステージストリーミングプロセスは、関連する描画機ツール1A/1Bの、
図7~
図10のユニット102、182、192、132の何れかに対応する、データストリーミングユニット112において実行される。
【0084】
第1ステージでは、データストリーミングユニット112は記憶装置11Mから中間データを取得するが、それらをローカル中間記憶装置LMDATに記憶し得る。そこから、データストリーミングユニット112は、場合によっては処理113を中間データに適用した後に、データをバッファサブユニットSBUFへ伝送する。中間データは、
図8~
図10に関し、PIX(
図9)又はCORRGEOM(
図10)のような、データPACKPIX又はその前駆(precursor)データに対応し得る。前駆データの場合、そのようなデータは、データをPACKPIX形式(又はそれと同等の形式)で取得するために、ストリーミングユニット112内におけるストリーミングプロセスの部分として実行可能な追加処理113を必要とするであろう;例えば、PIX又はCORRGEOMの場合、処理113は、
図9の処理ステップ94~96又は
図10の処理ステップ93~96を含むであろう。中間データがPACKPIXデータ(
図8)である場合、これらは既にPDシステムにとって適切(適合的)であり、処理113はスキップされる。記憶装置11Mとデータストリーミングユニット112の間のデータ伝送は、従来技術の光学式通信リンク(複数)を用いて実現されることができる。(PACKPIXのようなデータ形式での)結果として得られるデータは、ラスタグラフィックスアレイ又はサブグリッドアレイのコレクションに対応するが、次いで、バッファサブユニットSBUFに書き込まれる。
【0085】
ストライプスキャン(走査)のためのデータは、通常、1つ以上のサブグリッドアレイに対応する。次のストライプスキャンのための全データがバッファサブユニットSBUFにおいて利用可能になると直ぐに、当該ストライプ、即ち、ピクセルサブグリッドアレイ、のための描画プロセスを含むストリーミングの第2ステージが開始される又は継続されることができる:夫々のバッファされたデータ114は、バッファサブユニットSBUFから読み出され、描画ツールのPDシステムへ一定のレートで供給され、その間、ターゲットは、対応する一定の速度でPD装置に対し相対的に運動されることができる。
【0086】
ストリーミングデータ114は、PD装置12へ供給されるだけではなく、投射(投影)光学系16のビーム偏向装置へも、これが描画プロセス中に重要な役割を有するため、供給されることに言及することは重要である:ビーム偏向装置は、露光サイクル中にビーム(複数)をそれらの位置決めグリッド位置(複数)に固定された状態に維持するため、かつ、ビーム(複数)を位置決めグリッド上におけるそれらの次の位置へとシフトするために役立つ。スキャニングストライププロセス中、カラム1A/1Bは位置決めユニット(X-Yステージ)5によって露光ターゲット7に対し相対的に動かされており、その間、ターゲットの位置決めはレーザ計測ユニット8によってモニタされる。後者(レーザ計測ユニット8)は位置情報115をバッファサブユニットへフィードバックする。位置情報115についても、データ伝送は従来技術の光学式通信リンクによって実現されることができる。
【0087】
バッファサブユニットSBUFと組み合わせた位置情報115に基づくこのフィードバックサイクルは、ストリーミングアーキテクチャの第2ステージの極めて有利な特徴を形成する。それにより、PD装置12へ(リアルタイム)送信されるパターンデータがターゲット7の一と同期していること、及び、そのようにして露光されるパターンはその設計位置に忠実に位置付けられることが保証(確保)される。
【0088】
上記の実施形態の全部又は一部は以下の付記として記載可能であるが、それらに限定されない。
[付記1]少なくとも1つの荷電粒子マルチビーム装置を用いてターゲットに対する所望のパターンの描画プロセスを実行するための方法。
前記所望のパターンはベクトル形式でコード化された入力パターンデータとして提供される。
前記装置は照明システム、パターン画定システム及び投射光学系を含む。
前記照明システムは荷電粒子ビームを生成し、該荷電粒子ビームをパターン画定システムへ向けるよう構成される。前記パターン画定システムは前記荷電粒子ビームを前記パターンを表す複数のサブビームに(前記荷電粒子ビームから前記パターンを表す複数のサブビームを)形成するよう構成される。前記投射光学系は前記複数のサブビームを前記ターゲットへ投射するために役立つ。
前記方法は、データ前処理システムにおいて描画プロセスから独立に実行される少なくとも以下のステップを含む:
前記入力パターンデータを受信すること;
中間パターンデータを取得するために、前記データ前処理システムに提供された描画パラメータデータを用いて前記入力パターンデータを前処理すること;及び、
前記中間パターンデータをデータ記憶装置に書き込むこと。
前記方法は、更に、前記少なくとも1つの装置に関係付けられた少なくとも1つの描画コントロールシステムによって、前記少なくとも1つの装置を用いた描画プロセスの初期化及び/又は実行中に実行される少なくとも以下のステップを含む:
前記中間パターンデータを前記データ記憶装置から読み出すこと;
パターンストリーミング(リアルタイム送信)データを取得するために、前記中間パターンデータを変換すること;及び、
前記パターンストリーミングデータを、前記少なくとも1つの装置の少なくとも1つのパターン画定システムへ(リアルタイムで)送信すること、但し各パターン画定システムは前記パターンストリーミングデータに応じて前記描画プロセス中に前記少なくとも1つの装置の夫々の荷電粒子ビームを前記複数のサブビームへと(前記少なくとも1つの装置の夫々の荷電粒子ビームから前記複数のサブビームを)形成すること。
[付記2]上記の方法において、前記データ前処理システムにおける前記入力データの前処理は、以下の少なくとも1つを含む:
ベクトル形式でコード化された前記入力パターンデータを複数のジオメトリ基本要素へ分割すること;
前記描画プロセスに先行して決定される理想的描画状態からのずれを補償するために、前記入力パターンデータ又はジオメトリ基本要素にジオメトリ及び/又は線量補正を適用すること、但し該ジオメトリ及び/又は線量補正は、先の描画プロセス及び/又は検査プロセス及び/又はモデル型シミュレーションに基づく外部データとして供給される補正データを用いて実行される。
[付記3]上記の方法において、前記データ前処理システムにおける前記入力データの前処理は、前処理された中間パターンデータをベクトル形式で生成し、該前処理された中間パターンデータは中間パターンデータとしてデータ記憶装置に書き込まれる;
前記少なくとも1つの描画コントロールシステムによる描画プロセスの初期化及び/又は実行は、前記中間パターンデータを前記データ記憶装置から読み出した後、前記所望のパターンの少なくとも一部分をラスタグラフィックス形式で表すラスタグラフィックスデータを取得するために、前記入力パターンデータを変換することを含む。
[付記4]上記の方法において、前記中間パターンデータは、前記描画プロセス中に使用されるべきラスタについてのラスタグラフィックスデータである;
前記データ前処理システムにおける前記入力データの前処理は、前記所望のパターンの少なくとも一部分をラスタグラフィックス形式で表すラスタグラフィックスデータを取得するために、前記入力パターンデータを変換することを含む。
[付記5]上記の方法において、前記少なくとも1つの描画コントロールシステムによって描画プロセス中に実行されるステップ(複数)は、更に、以下の少なくとも1つを含む:
前記描画プロセス中に決定される理想的描画状態からのずれを補償するために、前記ラスタグラフィックスデータにジオメトリ及び/又は線量補正を適用すること;
ピクセルデータをディザ化すること、但し予め決定されるグレー値スケールに合致するよう前記データを変換することを含む;及び、
前記ピクセルデータが前記描画プロセスによって要求される伝送速度で(リアルタイム)送信されることを可能にするデータ形式へとピクセルデータをパッケージ化すること。
[付記6]上記の方法において、前記データ前処理システムにおける前記入力データの前処理は、ラスタグラフィックスデータへの変換後、以下の少なくとも1つを含む:
前記描画プロセス中に決定される理想的描画状態からのずれを補償するために、前記ラスタグラフィックスデータにジオメトリ及び/又は線量補正を適用すること;
ピクセルデータをディザ化すること、但し予め決定されるグレー値スケールに合致するよう前記データを変換することを含む;及び、
前記ピクセルデータが前記描画プロセスによって要求される伝送速度で(リアルタイム)送信されることを可能にするデータ形式へとピクセルデータをパッケージ化すること、
その後、このように処理されたデータを中間パターンデータとして前記データ記憶装置へ書き込むこと。
[付記7]上記の方法において、前記荷電粒子マルチビーム装置は、並列に配置された2つ以上のマルチビームカラムを含む;
前記データ記憶装置から前記中間パターンデータを読み出すステップとそれ以降のステップは、前記マルチビームカラムにおいて1つ以上のターゲットに対し少なくとも部分的に並行的に実行される。
[付記8]上記の方法において、並列に配置された前記マルチビームカラム(複数)は、少なくとも2つの異なる照明システムを含み、好ましくは該マルチビームカラム(複数)の各々は各自の照明システムを含む。
[付記9]上記の方法において、前記データ記憶装置から前記中間パターンデータを読み出すステップとそれ以降のステップは、複数の異なる荷電粒子マルチビーム装置において、好ましくは同時に、実行される2つ以上の別々の描画プロセスによって実行される。
[付記10]所望のパターンをターゲットに描画するための描画プロセスを実行するよう構成された荷電粒子マルチビーム装置。
該装置は、照明システム、パターン画定システム、及び、投射光学系を含む;
前記照明システムは荷電粒子ビームを生成し、該荷電粒子ビームをパターン画定システムへ向けるよう構成され、前記パターン画定システムは前記荷電粒子ビームを前記パターンを表す複数のサブビームに形成するよう構成され、及び、前記投射光学系は前記複数のサブビームを前記ターゲットへ投射するために役立つ。
前記装置は、更に、描画コントロールシステムを備える;
前記描画コントロールシステムは、
前記所望のパターンの前処理されたパターンデータを含む中間パターンデータを読み出すためにデータ記憶装置にアクセスするよう、
パターンストリーミング(リアルタイム送信)データを取得するために前記中間パターンデータを変換するよう、
前記パターンストリーミングデータを前記パターン画定システムへ(リアルタイムで)送信し、前記パターンストリーミングデータに応じて前記描画プロセス中に前記荷電粒子ビームを前記複数のサブビームへと形成するように前記パターン画定システムに指示するよう
構成されている。
[付記11]上記の装置において、前記描画コントロールシステムは、前記装置において実行される描画プロセスの初期化及び/又は実行中に前記中間パターンデータを読み出しかつ処理するよう構成されている。
[付記12]上記の装置において、前記描画コントロールシステムは、更に、前記中間パターンデータの読み出し後、以下のステップの少なくとも1つを実行するよう構成されていること:
前記所望のパターンの少なくとも一部分をラスタグラフィックス形式で表すラスタグラフィックスデータを取得するために、前記パターンデータを変換すること;
前記描画プロセス中に決定される理想的描画状態からのずれを補償するために、前記ラスタグラフィックスデータにジオメトリ及び/又は線量補正を適用すること;
ピクセルデータをディザ化すること、但し予め決定されるグレー値スケールに合致するよう前記データを変換することを含む;
前記ピクセルデータが前記描画プロセスによって要求される伝送速度で(リアルタイム)送信されることを可能にするデータ形式へとピクセルデータをパッケージ化すること。
[付記13]上記の装置において、前記荷電粒子マルチビーム装置は、中間パターンデータを読み出すために前記データ記憶装置にアクセスするステップとそれ以降のステップ(複数)を1つ以上のターゲットに対し少なくとも部分的に並行的に実行するよう構成された並列に配置された2つ以上のマルチビームカラムを含む。
[付記14]上記の装置において、並列に配置された複数の前記マルチビームカラムは、少なくとも2つの異なる照明システムを含み、好ましくは複数の前記マルチビームカラムの各々は各自の照明システムを含む。
【0089】
本発明の全開示(特許請求の範囲及び図面を含む)の枠内において、さらにその基本的技術思想に基づいて、実施形態の変更・調整が可能である。また、本発明の全開示の枠内において種々の開示要素(各請求項の各要素、各実施形態の各要素、各図面の各要素等を含む)の多様な組み合わせないし選択(「非選択」を含む。)が可能である。すなわち、本発明は、特許請求の範囲及び図面を含む全開示、本発明の技術的思想にしたがって当業者であればなし得るであろう各種変形、修正を含むことは勿論である。特に、本書に記載した数値範囲については、当該範囲内に含まれる任意の数値ないし小範囲が、別段の記載のない場合でも具体的に記載されているものと解釈されるべきである。
【0090】
更に、特許請求の範囲に付記した図面参照符号は専ら発明の理解を助けるためのものであり、本発明を実施形態及び図示の実施例に限定することは意図していない。
【0091】
更に、上記の各文献の全内容は引照を以って本書に繰り込みここに記載されているものとする。