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特開2022-181222画像形成装置及び画像形成装置の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022181222
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】画像形成装置及び画像形成装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03G 5/05 20060101AFI20221201BHJP
   G03G 5/047 20060101ALI20221201BHJP
   G03G 5/147 20060101ALI20221201BHJP
   G03G 9/097 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
G03G5/05 104A
G03G5/047
G03G5/147
G03G5/05 102
G03G9/097 375
G03G9/097 374
G03G9/097 371
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021088025
(22)【出願日】2021-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147304
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 知哉
(74)【代理人】
【識別番号】100148493
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 浩二
(72)【発明者】
【氏名】木原 彰子
(72)【発明者】
【氏名】倉内 敬広
(72)【発明者】
【氏名】加納 匡則
【テーマコード(参考)】
2H068
2H500
【Fターム(参考)】
2H068AA14
2H068AA28
2H068AA29
2H068AA35
2H068BA58
2H068CA06
2H068CA33
2H068EA16
2H068EA19
2H068FC15
2H500AA10
2H500AA11
2H500CA34
2H500CB06
2H500CB12
2H500EA44D
2H500EA45D
2H500EA47D
2H500EA52D
(57)【要約】
【課題】長期間使用された場合でも感光体のクリーニング性の悪化及びフィルミングの発生を抑制することができ、高い信頼性で画像を安定して形成することができる画像形成装置を提供する。
【解決手段】画像形成装置は、感光体の表面に静電潜像を形成させ、該静電潜像に現像されたトナーを被転写材に転写する画像形成装置において、該感光体は少なくとも電荷を輸送する電荷輸送層を備え、前記電荷輸送層は、30nm以下の平均一次粒子径を有する無機微粒子を7質量%以上25質量%以下含み、前記表面は、0.1μm以上0.5μm以下の表面粗さRzを有し、前記トナー粒子は、母粒子と、該母粒子の表面を外添する外添剤を有し、前記外添剤は少なくとも水酸化アルミニウムおよびシリカからなる組成物でありかつその表面がシラン処理されている微粉体を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光体の表面に静電潜像を形成させ、該静電潜像に現像されたトナーを被転写材に転写する画像形成装置において、
該感光体は少なくとも電荷を輸送する電荷輸送層を備え、
前記電荷輸送層は、30nm以下の平均一次粒子径を有する無機微粒子を7質量%以上25質量%以下含み、
前記表面は、0.1μm以上0.5μm以下の表面粗さRzを有し、
前記トナー粒子は、
母粒子と、該母粒子の表面を外添する外添剤を有し、
前記外添剤は少なくとも水酸化アルミニウムおよびシリカからなる組成物でありかつその表面がシラン処理されている微粉体を含むことを特徴とする
画像形成装置。
【請求項2】
前記外添剤は、更に、前記微粉体の平均一次粒子径より小さい平均一次粒子径を有する第1のシリカ粒子を含むことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記外添剤は、更に、前記微粉体の平均一次粒子径より大きい平均一次粒子径を有する第2のシリカ粒子を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記無機微粒子がジメチルクロロシランまたはヘキサメチルシラザンで処理されていることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記無機微粒子は、シリカを含み、表面が疎水化処理されていることを特徴とする
請求項1から3までのいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項6】
温度25℃、相対湿度50%の環境下で前記感光体の表面に押し込み最大荷重30mNを5秒間付加した場合の前記感光体のビッカース硬度は、26N/mm以上32N/mm以下である
請求項1から5までのいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項7】
温度25℃、相対湿度50%の環境下で前記感光体の表面に押し込み最大荷重30mNを5秒間付加した場合の前記感光体のビッカース硬度は、26.5N/mm以上28.5N/mm以下である
請求項1から6までのいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記無機微粒子により構成される凝集体は、10μm以下の定方向接線径を有する
請求項1から7までのいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項9】
a)溶媒及び前記溶媒に分散される固形分を含み50以上300以下の降伏値を有する塗布液を塗布して塗膜を形成する工程と、
b)前記塗膜を乾燥させて前記電荷輸送層を形成する工程と、
を備える請求項1から8までのいずれかに記載の画像形成装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、画像形成装置及び画像形成装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年においては、電子写真方式の画像形成装置に備えられる電子写真感光体には、有機感光体が広く用いられている。以下では、電子写真感光体に用いられる有機感光体が、単に「感光体」と呼ばれる。また、近年においては、電子写真方式の画像形成装置により形成される画像の画質、階調性等を向上するために、トナーの改良が検討されている。例えば、当該画像を高精細化するために、トナーに含まれるトナー粒子を小粒径化、球形化等することが検討されている。
【0003】
例えば、実質的に曲面で形成された表面を有する球状磁性体粒子を含有し、5μm以下の粒径を有する磁性トナー粒子が17~60個数%含有され、6.35~10.08μmの粒径を有する磁性トナー粒子が5~50個数%含有され、10.08μm以上の粒径を有する磁性トナー粒子が5.0体積%以下で含有される粒度分布を有する絶縁性磁性トナーが検討されている。
【0004】
また、特許文献1は、3~6μmの体積平均粒径を有する懸濁重合トナーを開示する。
【0005】
しかし、トナー粒子が小粒径化、球形化等された場合は、ファンデルワールス力等に起因してトナー粒子の感光体の表面に対する付着力が強くなる。このため、感光体の表面に付着したトナーをクリーニングすることが困難になる。また、感光体の表面に付着したトナーを転写材に転写することが困難になる。このため、感光体から転写材へのトナーの転写効率が低くなる。
【0006】
また、感光体の表面に付着したトナーのクリーニングを容易にし、感光体の表面の汚染を減らすために、トナー粒子の形状及び表面組成構造を制御することが検討されている。
【0007】
例えば、静電荷像現像用トナーの製造において、トナー粒子の球形化処理を行い、表面に凹凸を有する粒子を形成することが検討されている。
【0008】
しかし、トナー粒子が小粒径化された場合は、トナーに外添され離型性を向上させるワックスの含有率が大きくなる可能性がある。このため、感光体の表面が長期に渡って使用された場合に、感光体の表面に付着する付着物が多くなる可能性がある。
【0009】
感光体の表面に付着したトナーをクリーニングする手段としては、潤滑作用を有する微粒子を感光体の表面に塗布することが提案されている。
【0010】
例えば、特許文献2は、ブレードと感光層との間に滑材を介在させることを開示する。また、特許文献4は、滑材の存在下でクリーニングを行うことにより、感光体のクリーニングを良好に行うことができることを開示する。
【0011】
しかし、潤滑作用を有する微粒子、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等からなる微粒子が感光体の表面に塗布される際には、当該微粒子を感光体の表面に均一に塗布するための塗布機構が必要になる。このため、画像形成装置のコストを低下させること、及び画像形成装置を小型化することが要求されている昨今においては、潤滑作用を有する微粒子を感光体の表面に塗布することを回避することが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平5-72808号公報
【特許文献2】特開平2-101488号報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従来の画像形成装置及びクリーニング装置においては、小粒径化又は球形化されたトナー粒子により構成されるトナーを感光体の表面から除去することが困難であった。このため、感光体の表面に付着した付着物質を除去することが困難であった。このため、感光体の表面のクリーニング不良が画像形成装置のロングライフ化の障害となっていた。
【0014】
除去されない付着物質は、トナーに含まれる外添された小粒径シリカを主成分とする核が生成され、生成した核に記録紙に含まれる炭酸カルシウム及び大粒径シリカが付着することにより大きく成長する。そして、除去されない付着物質は、画像形成装置により形成される画像の不良につながる。
【0015】
本開示は、これらの問題に鑑みてなされた。本開示は、長期間使用された場合でも感光体のクリーニング性の悪化及びフィルミングの発生を抑制することができ、高い信頼性で画像を安定して形成することができる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本開示の一形態の画像形成装置は、感光体の表面に静電潜像を形成させ、該静電潜像に現像されたトナーを被転写材に転写する画像形成装置において、該感光体は少なくとも電荷を輸送する電荷輸送層を備え、前記電荷輸送層は、30nm以下の平均一次粒子径を有する無機微粒子を7質量%以上25質量%以下含み、前記表面は、0.1μm以上0.5μm以下の表面粗さRzを有し、前記トナー粒子は、母粒子と、該母粒子の表面を外添する外添剤を有し、前記外添剤は少なくとも水酸化アルミニウムおよびシリカからなる組成物でありかつその表面がシラン処理されている微粉体を含む。
【発明の効果】
【0017】
本開示によれば、長期間使用された場合でも感光体のクリーニング性の悪化及びフィルミングの発生を抑制することができ、長期間に渡って高い信頼性で画像を安定して形成することができる画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本実施形態の画像形成装置を模式的に図示する断面図である。
図2】本実施形態の画像形成装置に備えられる感光体を模式的に図示する断面図である。
図3】本実施形態の画像形成装置に備えられる電荷輸送層に含まれる無機微粒子を模式的に図示する図である。
図4】本実施形態の画像形成装置に備えられる現像器により供給されるトナー粒子を模式的に図示する図である。
図5】本実施形態の画像形成装置に備えられる電荷輸送層の形成方法を示すフローチャートである。
図6】本実施形態の画像形成装置に備えられる現像器により供給されるトナーに備えられる母粒子の製造方法を示すフローチャートである。
図7】本実施形態の画像形成装置に備えられる現像器により供給されるトナーの製造方法に含まれる外添剤の外添方法を示すフローチャートである。
図8】パス数が互いに異なる実施例1、4及び5のキャッソンプロットを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、図面については、同一又は同等の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0020】
1 画像形成装置の構成
図1は、本実施形態の画像形成装置を模式的に図示する断面図である。
【0021】
図1に図示される画像形成装置1は、記録媒体Mの上に画像を形成する電子写真方式の画像形成装置である。記録媒体Mは、記録紙、転写紙等である。
【0022】
画像形成装置1は、プリンタである。プリンタは、レーザプリンタである。画像形成装置1がプリンタ以外の画像形成装置であってもよい。例えば、画像形成装置1が複写機、複合機、ファクシミリ機等であってもよい。
【0023】
画像形成装置1は、モノクロ画像を形成するモノクロ画像形成装置である。画像形成装置1がカラー画像を形成するカラー画像形成装置であってもよい。カラー画像形成装置は、例えば、中間転写方式のカラー画像形成装置である。中間転写方式のカラー画像形成装置は、例えば、タンデム方式のフルカラー画像形成装置である。タンデム方式のフルカラー画像形成装置は、特定の方向に配列された複数の電子写真感光体を備える。特定の方向は、例えば、水平方向、略水平方向等である。複数の電子写真感光体の各々には、トナー像が形成される。
【0024】
図1に図示されるように、画像形成装置1は、電子写真感光体11、帯電器12、露光器13、現像器14、転写器15、クリーナ16、分離機構17、定着器18及びハウジング19を備える。また、画像形成装置1は、図示されない駆動機構、搬送機構及び除電器を備える。
【0025】
電子写真感光体11は、単に感光体11とも呼ばれる。感光体11は、画像形成装置1の本体に回転自在に支持される。感光体11は、図示されない導電性支持体を備える。導電性支持体は、感光体11の芯体を構成する。
【0026】
図示されない駆動機構は、感光体11を回転軸11aの周りに回転駆動する。駆動機構は、感光体11を回転方向D1に回転駆動する。駆動機構は、例えば、電動機及び減速歯車を備える。駆動機構は、駆動力を発生し、発生した駆動力を感光体11に備えられる導電性支持体に伝える。これにより、駆動機構は、所定の周速度で感光体11を回転させる。
【0027】
帯電器12、露光器13、現像器14、転写器15及びクリーナ16は、感光体11の表面11sに沿って配置される。感光体11の表面11sは、感光体11の外周面である。帯電器12、露光器13、現像器14、転写器15及びクリーナ16は、記載された順序で回転方向D1に配列される。
【0028】
帯電器12は、感光体11の表面11sを帯電させて帯電表面11tを形成する。帯電器12は、感光体11の表面11sを均一に帯電させ、感光体11の表面11sに所定の正の電位を与える。帯電器12において採用される帯電方式は、非接触帯電方式及び接触帯電方式のいずれであってもよい。非接触帯電方式は、例えば、帯電チャージャーにより感光体11の表面11sを帯電させるコロナ帯電方式である。接触帯電方式は、例えば、帯電ローラにより感光体11の表面11sを帯電させるローラ帯電方式又は帯電ブラシにより感光体11の表面11sを帯電させるブラシ帯電方式である。
【0029】
露光器13は、感光体11の帯電表面11tを露光して感光体11の帯電表面11tに静電潜像を形成する。露光器13は、画像情報に応じた光を感光体11の帯電表面11tに照射することにより、感光体11の帯電表面11tに画像情報に応じた静電潜像を形成する。画像情報に応じた光を感光体11の帯電表面11tに照射することにより感光体11の帯電表面11tに画像情報に応じた静電潜像が形成されるのは、感光体11の帯電表面11tに含まれる、光が照射された部分から表面電位が除去されて、感光体11の表面11sに含まれる、光が照射された部分の表面電位と、感光体11の表面11sに含まれる、光が照射されなかった部分の表面電位と、の間に差違が生じるためである。露光器13は、図示されない光源を備える。光源は、例えば、半導体レーザである。光源が半導体レーザである場合は、露光器13は、光源により出力されるレーザビーム光を帯電表面11tに照射する。レーザビーム光の結像点は、帯電器12が対向する位置と現像器14が対向する位置との間にある。レーザビーム光が照射される位置は、回転軸11aと平行をなす主走査方向に繰り返し走査される。これにより、感光体11の帯電表面11tに静電潜像が順次に形成される。露光器13は、画像情報に応じてレーザビーム光の照射状態をレーザビーム光が感光体11の帯電表面11tに照射される状態とレーザビーム光が感光体11の帯電表面11tに照射されない状態との間で切り替える。これにより、均一に帯電されていた感光体11の帯電表面11tの帯電量に差異が生じて静電潜像が形成される。
【0030】
現像器14は、トナーにより静電潜像を現像してトナー像を形成する。これにより、現像器14は、静電潜像を可視像化する。図1に図示されるように、現像器14は、例えば、現像ローラ21及びケーシング22を備える。現像ローラ21は、帯電表面11tを望む。現像ローラ21は、感光体11の帯電表面11tにトナーを供給する。ケーシング22は、回転軸11aと平行をなす回転軸の周りに回転可能に現像ローラ21を支持する。ケーシング22には、内部空間が形成される。内部空間は、トナーを含む現像剤を収容する。
【0031】
転写器15は、トナー像を記録媒体Mの上に転写する。転写器15は、例えば、接触式の転写器である。接触式の転写器は、例えば、帯電器を備える。帯電器は、トナーの極性と逆の極性を有する電荷を記録媒体Mに与える。これにより、トナー像が記録媒体Mの上に転写される。転写器15は、転写帯電器とも呼ばれる。
【0032】
図示されない搬送機構は、記録媒体Mを搬送して記録媒体Mを感光体11と転写器15との間のギャップに供給する。搬送機構は、搬送方向D2に記録媒体Mを搬送する。搬送機構は、例えば、搬送ベルトを備える。
【0033】
クリーナ16は、トナー像が記録媒体Mの上に転写された後に感光体11の表面11sの上に残留するトナーを除去し、除去したトナーを回収する。これにより、クリーナ16は、感光体11の表面11sを清掃する。図1に図示されるように、クリーナ16は、例えば、クリーニングブレード31及び回収用ケーシング32を備える。クリーニングブレード31は、感光体11の表面11sの上に残留するトナーを感光体11の表面11sから剥離させる。回収用ケーシング32は、剥離されたトナーを収容する。
【0034】
図示されない除電ランプは、感光体11の帯電表面11tに光を照射して感光体11の帯電表面11tに残留する表面電荷を除電する。当該除電ランプは、クリーナ16と共に配置される。
【0035】
定着器18は、トナー像を記録媒体Mの上に定着させて記録媒体Mの上に画像を形成する。定着器18は、搬送方向D2について、感光体11と転写器15との間のギャップより下流に配置される。このため、定着器18には、ギャップを通過した記録媒体Mが搬送されてくる。図1に図示されるように、定着器18は、例えば、加熱ローラ41及び加圧ローラ42を備える。加熱ローラ41は、図示されないヒータを備える。加熱ローラ41は、ヒータにより発せられた熱を加熱ローラ41に接触する記録媒体Mに伝える。加圧ローラ42は、加熱ローラ41に対向する。加圧ローラ42は、加熱ローラ41に向かって押圧される。これにより、加熱ローラ41及び加圧ローラ42が互いに当接する当接部が形成される。
【0036】
分離機構17は、感光体11から記録媒体Mを分離する。
【0037】
ハウジング19は、感光体11、帯電器12、露光器13、現像器14及びクリーナ16を収容する。
【0038】
2 画像形成装置の画像形成動作
画像形成装置1により画像が形成される場合は、まず、図示されない駆動機構が、感光体11を回転方向D1に回転駆動する。
【0039】
また、駆動機構が感光体11を回転駆動している間に、回転方向D1について露光器13により出力される光の結像点より上流において、帯電器12が、感光体11の表面11sを帯電させて帯電表面11tを形成する。また、露光器13が、感光体11の帯電表面11tを露光して感光体11の帯電表面11tに静電潜像を形成する。また、当該光の結像点より下流において、現像器14が、トナーにより静電潜像を現像してトナー像を形成する。
【0040】
露光器13が感光体11の帯電表面11tを露光するのと同期して、図示されない搬送機構が、記録媒体Mを搬送して記録媒体Mを感光体11と転写器15との間のギャップに供給する。また、転写器15が、トナー像を記録媒体Mの上に転写する。また、搬送機構が、トナー像がその上に転写された記録媒体Mを搬送して記録媒体Mに定着器18を通過させる。定着器18は、記録媒体Mが定着器18に形成された当接部を通過する際に、記録媒体Mを加熱及び加圧してトナー像を記録媒体Mの上に定着させる。これにより、トナー像が堅牢な画像に変化して画像がその上に形成された記録媒体Mが得られる。また、図示されない搬送機構が、画像がその上に形成された記録媒体Mを搬送して記録媒体Mを画像形成装置1の外部に排出する。
【0041】
クリーナ16は、トナー像が記録媒体Mの上に転写された後に感光体11の表面11sの上に残留するトナーを除去し、除去したトナーを回収する。また、図示されない除電ランプは、トナーが除去された、感光体11の帯電表面11tに光を照射して感光体11の帯電表面11tに残留する表面電荷を除電する。これにより、感光体11の帯電表面11tに形成された静電潜像が消去される。
【0042】
帯電器12による帯電から始まるこれらの一連の動作が行われた後も、図示されない駆動機構は、感光体11を回転方向D1にさらに回転駆動する。これにより、帯電器12による帯電から始まるこれらの一連の動作が繰り返し行われ、画像が連続的に形成される。
【0043】
3 感光体
図2は、本実施形態の画像形成装置に備えられる感光体を模式的に図示する断面図である。
【0044】
図2に図示されるように、感光体11は、その上に形成される層を支持する導電性支持体51、導電性支持体51から積層型感光体への電荷の注入を抑制する下引き層52、電荷を発生する電荷発生層53及び電荷を受け入れ輸送する電荷輸送層54を備える。
【0045】
下引き層52は、導電性支持体51の上に配置される。電荷発生層53は、下引き層52の上に配置される。電荷輸送層54は、電荷発生層53の上に配置される。電荷発生層53及び電荷輸送層54は、導電性支持体51がある内側から外側へ向かって記載された順序で積層されて積層構造を有する感光層61を構成する。したがって、感光体11は、積層型感光体である。
【0046】
電荷発生層53は、電荷を発生する電荷発生物質を含む。
【0047】
電荷輸送層54は、電荷輸送物質、バインダ樹脂及び必要な添加剤を含む。電荷輸送物質は、発生させられた電荷を受け入れ、受け入れた電荷を輸送する。バインダ樹脂は、電荷輸送物質を互いに結着する。これらにより、電荷輸送層54は、発生させられた電荷を受け入れ、受け入れた電荷を感光体11の表面11sまで輸送する。感光体11が、表面保護層を備えてもよい。表面保護層は、電荷輸送層を構成する。
【0048】
4 無機微粒子
図2に図示されるように、電荷輸送層54は、無機微粒子71を含む。無機微粒子71は、フィラーである。
【0049】
無機微粒子71は、電荷輸送層54中に分散している。無機微粒子71は、望ましくは、30nm以下の平均一次粒子径を有する。電荷輸送層54は、望ましくは、7質量%以上25質量%以下の無機微粒子71を含む。これにより、電荷輸送層54の表面54sすなわち感光体11の表面11sは、0.1μm以上0.5μm以下の表面粗さRzを有する。
【0050】
無機微粒子71は、さらに望ましくは、7nm以上30nm以下の平均一次粒子径を有する。平均一次粒子径は、数平均一次粒子径である。
【0051】
無機微粒子71の平均一次粒子径が7nmより小さくなった場合は、無機微粒子71の凝集力が強くなる可能性がある。このため、無機微粒子71を解砕することが困難になる可能性がある。このため、無機微粒子71の分散性が低くなる可能性がある。
【0052】
無機微粒子71の平均一次粒子径が測定される際には、走査型電子顕微鏡(SEM)により、3000~300000倍の倍率、例えば、10000倍の倍率で、ランダムに選択された100個の無機微粒子71の一次粒子が観察されてSEM画像が得られる。続いて、SEM画像が画像解析されてフェレ方向平均径が算出される。また、算出されたフェレ方向平均径が無機微粒子71の平均一次粒子径とされる。
【0053】
感光体11の表面11sの表面粗さRzが測定される際には、表面粗さ測定装置により、感光体11の軸方向の中央部の表面粗さRzが測定される。表面粗さ測定装置としては、株式会社ミツトヨ製の1400Dが使用される。また、基準長さが0.8mmに設定され、カットオフ波長が0.8mmに設定され、測定速度が0.1mm/秒に設定され、カットオフ種類がガウシアンに設定される。
【0054】
図3は、本実施形態の画像形成装置に備えられる電荷輸送層に含まれる無機微粒子を模式的に図示する図である。
【0055】
図3に図示されるように、無機微粒子71は、微粒子本体141及び疎水化部142を備える。微粒子本体141は、微粒子本体141は、シリカ等の無機化合物を含む。このため、微粒子本体141及び疎水化部142を備える無機微粒子71は、疎水化部142により疎水化されたシリカ粒子を構成する。疎水化部142は、微粒子本体141の表面に付着する。疎水化部142は、疎水基を有するシランにより微粒子本体141の表面をシラン処理することにより形成される。したがって、疎水化部142は、ケイ素及び疎水基を含む。疎水基は、例えば、炭化水素基及びフッ素化された炭化水素基からなる群より選択される少なくとも1種を含む。シラン処理は、シランを微粒子本体141の表面に接触させて微粒子本体141の表面を疎水化する疎水化処理である。シランは、例えば、ジメチルジクロロシラン及びヘキサメチルジシラザンからなる群より選択される少なくとも1種を含む。これにより、電荷輸送層54を形成するための電荷輸送層用塗布液中の無機微粒子71の分散安定性を高くすることでき、電荷輸送層54中の無機微粒子71の分散安定性を高くすることできる。また、通電疲労による電荷輸送層54の電気特性の変化を抑制することができる。これにより、感光体11の電子写真特性を良好にすることができる。
【0056】
本開示において、「シリカ」は、二酸化ケイ素(SiO)を意味する。微粒子本体141となるシリカ粒子は、例えば、乾式シリカ粒子及び湿式シリカ粒子からなる群より選択される少なくとも1種を含む。
【0057】
乾式シリカ粒子は、乾式法により合成されたシリカ粒子であり、例えば、シランを燃焼させることにより得られる燃焼法シリカ粒子、プラズマが有するエネルギー等の高エネルギーによりシリカを気相中で微粒子化することにより得られるアーク法シリカ粒子及び金属珪素粉を爆発的に燃焼させることにより得られる爆燃法シリカ粒子からなる群より選択される少なくとも1種を含む。シランは、例えば、四塩化珪素を含む。燃焼法シリカ粒子は、ヒュームドシリカとも呼ばれる。
【0058】
湿式シリカ粒子は、湿式法により合成されたシリカ粒子であり、例えば、珪酸ナトリウムを鉱酸と中和反応させることにより得られる湿式シリカ粒子、酸性珪酸をアルカリ性にして重合させることにより得られるコロイダルシリカ粒子及び有機シラン化合物を加水分解することにより得られるゾルゲル法シリカ粒子からなる群より選択される少なくとも1種を含む。有機シラン化合物は、例えば、アルコキシシランを含む。コロイダルシリカ粒子は、シリカゾル粒子とも呼ばれる。
【0059】
珪酸ナトリウムを鉱酸と中和反応させることにより得られる湿式シリカ粒子は、例えば、アルカリ条件下において合成され凝集させられた沈降法シリカ及び酸性条件下において合成され凝集させられたゲル法シリカ粒子からなる群より選択される少なくとも1種を含む。
【0060】
シリカ粒子は、望ましくは、燃焼法シリカ粒子を含む。これにより、シリカ粒子の表面に存在するシラノール基を少なくすることができ、空隙が少ない空隙構造をシリカ粒子に付与することができる。このため、残留電位の発生その他の電気特性の悪化に起因する画像欠陥が発生することを抑制することができる。例えば、細線再現性が悪化することを抑制することができる。
【0061】
5 トナー粒子
図4は、本実施形態の画像形成装置に備えられる現像器により供給されるトナー粒子を模式的に図示する図である。
【0062】
現像器により供給されるトナーは、図4に図示されるトナー粒子を備える。
【0063】
図4に図示されるように、トナー粒子81は、母粒子91及び第1の外添剤101を備える。
【0064】
第1の外添剤101は、微粉体111を備える。第1の外添剤101は、母粒子91の表面に外添され、母粒子91の表面に付着する。微粉体111は、微粉体本体121及び疎水化部122を含む。微粉体本体121は、水酸化アルミニウム及びシリカを含む。疎水化部122は、微粉体本体121の表面に付着している。疎水化部122は、疎水基を有するシランにより微粉体本体121の表面をシラン処理することにより形成される。したがって、疎水化部122は、ケイ素及び疎水基を含む。疎水基は、例えば、炭化水素基及びフッ素化された炭化水素基からなる群より選択される少なくとも1種を含む。
【0065】
図4に図示されるように、トナー粒子81は、望ましくは、微粉体111の平均一次粒子径より小さい平均一次粒子径を有する第1のシリカ粒子131を備える第2の外添剤102を備え、さらに望ましくは、微粉体111の平均一次粒子径より大きい平均一次粒子径を有する第2のシリカ粒子132を備える第3の外添剤103を備える。第2の外添剤102及び第3の外添剤103は、母粒子91の表面に外添され、母粒子91の表面に付着する。以下では、第1のシリカ粒子131が小粒径シリカ粒子とも呼ばれ、第2のシリカ粒子132が大粒径シリカ粒子とも呼ばれる。
【0066】
第1の外添剤101、第2の外添剤102、第3の外添剤103等の外添剤は、トナーの搬送性及び帯電性を向上し、現像器14がトナー及びキャリアを含む二成分の現像剤により静電潜像を現像する場合にトナー及びキャリアの攪拌性を向上する。
【0067】
6 感光体とトナーとの組み合わせがもたらす効果
通常の場合は、除去されない付着物質を含むフィルミング層は、トナーに外添として添加された小粒径シリカが、感光体の表面に付着して小粒径シリカを主成分として含む核となり、記録紙に含まれる炭酸カルシウム及び大粒径シリカが、小粒径シリカが付着した感光体の表面にさらに付着して成長することにより、感光体の表面に積層される。これにより、感光体が長期間に渡って使用された場合に、画像欠陥が発生する。
【0068】
一方で、近年においては、感光体のロングライフ化が求められている。このため、感光体には、高い耐刷性を有する材料が含められ、高い耐刷性を有する積層構造が与えられる。このため、近年においては、フィルミング層が掻き取られることなく感光体の表面に積層されることが多くなっている。その結果として、感光体の表面とクリーニングブレード、感光体の表面の上に残留したトナー等との間の親和性が高まっている。このため、感光体の表面と感光体の表面に接触するクリーニングブレードとの間に発生する摩擦力が大きくなっている。そして、当該摩擦力が大きくなった場合は、クリーニングブレードの内部に生じるせん断応力が大きくなる。このため、クリーニングブレードにかかる負荷が大きくなる。その結果として、クリーニングブレードのエッジが欠ける、クリーニング不良に起因する画像欠陥が発生する等の問題が発生する。
【0069】
しかし、本実施形態においては、微粉体本体121が水酸化アルミニウムを含むことにより、微粉体本体121の表面に疎水化部122が強力に固定される。このため、トナー粒子81の表面の疎水性の安定性が高くなる。このため、感光体11の表面11sを有する電荷輸送層54に7質量%以上25質量%以下の無機微粒子71を含め電荷輸送層54中の無機微粒子71の分散状態を制御して感光体11の表面11sの表面粗さRzを0.1μm以上0.5μm以下にすることにより、トナーに含まれる外添剤が感光体11の表面11sに付着することを抑制することができる。このため、高い耐フィルミング性及び耐刷性を有する、すなわち、長期間使用された場合でも感光体11のクリーニング性の悪化及びフィルミングの発生を抑制することができ、長期間に渡って高い信頼性で画像を安定して形成することができる画像形成装置1を提供することができる。すなわち、高い耐フィルミング性及び耐刷性を有する画像形成装置1を提供することができる。これにより、サービスマンによる感光体11の交換の周期を長くすることができる。これらの効果は、交流(AC)帯電により感光体11の表面が劣化しやすい場合、トナー粒子81が小粒径化された場合等の、フィルミングが発生しやすい場合に特に顕著に現れる。
【0070】
しかし、感光体11の表面11sの表面粗さRzが0.1μmより小さくなった場合は、感光体11の表面11sとクリーニングブレード31との間に発生する摩擦力が大きくなる。このため、クリーニングブレード31にかかる負荷が大きくなる。その結果として、クリーニングブレード31のエッジが欠ける等の問題が発生する。一方、感光体11の表面11sの表面粗さRzが0.5μmより大きくなった場合は、感光体11の表面11sの凹部にフィルミング層が定着しやすくなる。このように感光体11の表面11sの凹部に定着したフィルミング層は、クリーニングブレード31によりクリーニングすることが困難である。したがって、フィルミング層が形成されやすくなる。
【0071】
また、本実施形態においては、トナー粒子81が第2の外添剤102及び第3の外添剤103を含むことにより、感光体11のクリーニング性の悪化及びフィルミングの発生をさらに抑制することができる。
【0072】
7 電荷輸送層用塗布液の降伏値
無機微粒子71は、ナノサイズの粒子である。このため、電荷輸送層用塗布液中に無機微粒子71が均一に分散した場合は、無機微粒子71の間のファンデルワールス力により、電荷輸送層用塗布液中に無機微粒子71により三次元網目構造が形成される。このため、電荷輸送層用塗布液は、チキソトロピー性を有する。
【0073】
電荷輸送層用塗布液中の無機微粒子71の濃度が低く、無機微粒子71の間の相互作用を無視することができる場合は、式(1)に示されるアインシュタインの理論式が成立する。
【0074】
【数1】
【0075】
式(1)において、ηは、電荷輸送層用塗布液の粘度であり、ηは、溶媒の粘度であり、φは、無機微粒子71の体積分率である。
【0076】
しかし、実際の電荷輸送層用塗布液においては、電荷輸送層用塗布液中の無機微粒子71の間の相互作用を無視することができない。このため、式(1)に示されるアインシュタインの理論式が成立しない。この場合は、式(2)に示されるキャッソン(Casson)の式により、無機微粒子71の分散性を定量的に評価することができる。
【0077】
【数2】
【0078】
式(2)において、ηは、電荷輸送層用塗布液の粘度であり、ηは、電荷輸送層用塗布液の残留粘度であり、τは、電荷輸送層用塗布液の降伏値であり、γは、せん断速度である。電荷輸送層用塗布液の残留粘度ηは、せん断速度γが無限大である場合の電荷輸送層用塗布液の粘度である。電荷輸送層用塗布液の降伏値τは、電荷輸送層用塗布液を流動させるために必要な最小の力である。
【0079】
キャッソンの式により算出される電荷輸送層用塗布液の降伏値τは、無機微粒子71の分散性の指標となる。電荷輸送層用塗布液は、望ましくは、50以上350以下の降伏値を有する。これにより、無機微粒子71の分散性を好適な分散性に維持することができる。また、高い塗工性及び高い無機微粒子71の分散安定性を有する電荷輸送層用塗布液を得ることができる。これにより、電荷輸送層54の形成に好適な電荷輸送層用塗布液を得ることができる。
【0080】
電荷輸送層用塗布液の降伏値τが測定される際には、B型粘度計により、せん断速度γを変化させながら電荷輸送層用塗布液の粘度ηが測定される。また、せん断速度γ及び電荷輸送層用塗布液の粘度ηがキャッソンの式に適用されて電荷輸送層用塗布液の降伏値τ0が算出される。
【0081】
8 感光体のビッカース硬度
温度25℃、相対湿度50%の環境下で感光体11の表面11sに押し込み最大荷重30mNを5秒間付加した場合の感光体11のビッカース硬度は、望ましくは、26N/mm以上32N/mm以下であり、さらに望ましくは、26.5N/mm以上28.5N/mm以下である。
【0082】
感光体11の表面11sを有する電荷輸送層54は、上述した無機微粒子71を備える。このため、感光体11は、高いビッカース硬度を有する。
【0083】
感光体11のビッカース硬度が上述した範囲より低くなった場合は、感光体11と上述したトナーとの組み合わせにおいて、耐刷性が低くなる可能性がある。一方、感光体11のビッカース硬度が上述した範囲より高くなった場合は、耐刷性が高くなる可能性があるが、感光体11がもろくなる可能性がある。このため、感光体11と上述したトナーとの組み合わせにおいて、電荷輸送層54中に分散した無機微粒子71の周辺に内部応力が集中して電荷輸送層54に亀裂が発生する可能性がある。このため、画像欠陥が発生する可能性がある。
【0084】
感光体11のビッカース硬度は、日本産業規格(JIS)Z2244に準拠する方法により測定される。具体的には、温度25℃、相対湿度50%の環境下で感光体11の表面に押し込み最大荷重30mNを5秒間付加した場合の感光体11のビッカース硬度が、硬度計により測定される。硬度計としては、株式会社フィッシャー・インストルメンツ製のフィッシャースコープH100Vを使用することができる。感光体11の表面に押し込まれる圧子としては、ビッカース圧子を使用することができる。
【0085】
9 凝集体の定方向接線径
無機微粒子71により構成される凝集体は、望ましくは、10μm以下の定方向接線径を有する。
【0086】
凝集体の定方向接線径が10μmより大きくなった場合は、クリーニングブレード31の設定によっては、電荷輸送層54中に内部応力が集中して凝集体から電荷輸送層54の表面に至る亀裂が発生する可能性がある。このため、画像欠陥が発生する可能性がある。この傾向は、凝集体の定方向接線径が30μmより大きくなった場合に特に顕著になる。
【0087】
凝集体の定方向接線径が測定される際には、イオンミリング装置により、電荷輸送層54の断面出しが行われる。イオンミリング装置としては、株式会社日立ハイテクノロジーズ製のE-3500を使用することができる。また、断面出しが行われた電荷輸送層54から測定用サンプルとなる切片が切り出される。
【0088】
続いて、走査型電子顕微鏡により、測定サンプルの、電荷輸送層54の厚さ方向に相当する方向の断面が観察される。走査型電子顕微鏡としては、株式会社日立ハイテクノロジーズ製のS-4800を使用することができる。断面の観察は、加速電圧1kV、無蒸着の条件で行うことができる。また、観察された全観察視野に含まれる20μm×20μmの領域における無機微粒子71により構成された凝集体の定方向接線径が測定される。
【0089】
10 電荷輸送層の形成方法
図5は、本実施形態の画像形成装置に備えられる電荷輸送層の形成方法を示すフローチャートである。
【0090】
電荷輸送層54が形成される際には、図5に示される工程S101及びS102が実行される。
【0091】
工程S101においては、電荷輸送層用塗布液が塗布されて塗膜が形成される。
【0092】
電荷輸送層用塗布液は、例えば、溶媒にバインダ樹脂を混合してバインダ樹脂溶液を調製し、調製したバインダ樹脂溶液に電荷輸送物質及び無機微粒子71を分散させることにより、調製される。したがって、電荷輸送層用塗布液は、溶媒及び固形分を含む。固形分は、溶媒に分散されている。塗布液は、上述したように、50以上300以下の降伏値を有する。
【0093】
電荷輸送層用塗布液に含まれる溶媒としては、公知の溶媒を使用することができる。
【0094】
溶媒は、例えば、芳香族炭化水素、ハロゲン化炭化水素、エーテル類及び非プロトン性極性溶剤からなる群より選択される少なくとも1種を含む。
【0095】
芳香族炭化水素は、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン及びモノクロルベンゼンからなる群より選択される少なくとも1種を含む。
【0096】
ハロゲン化炭化水素は、例えば、ジクロロメタン及びジクロロエタンからなる群より選択される少なくとも1種を含む。
【0097】
エーテル類は、例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサン及びジメトキシメチルエーテルからなる群より選択される少なくとも1種を含む。
【0098】
非プロトン性極性溶剤は、例えば、N,N-ジメチルホルムアミドを含む。
【0099】
溶媒が、必要に応じて、アルコール類、アセトニトリル及びメチルエチルケトンからなる群より選択される少なくとも1種をさらに含んでもよい。溶媒は、望ましくは、非ハロゲン系有機溶剤を含む。これにより、溶媒が地球環境に与える影響を抑制することができる。
【0100】
溶媒としては、1種の溶媒が単独で使用されてもよいし、2種以上の溶媒が組み合わされて使用されてもよい。
【0101】
電荷輸送層用塗布液に含まれるバインダ樹脂としては、公知のバインダ樹脂を使用することができる。
【0102】
バインダ樹脂は、結着性を有し、望ましくは、電荷輸送物質との高い相溶性を有する。
【0103】
バインダ樹脂は、例えば、ビニル重合体樹脂、共重合体樹脂、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリエステルカーボネート、ポリスルホン、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリアリレート、ポリアミド、ポリエーテル、ポリウレタン、ポリアクリルアミド、フェノール樹脂、ポリフェニレンオキサイド及び熱硬化性樹脂から選択される群より少なくとも1種を含む。
【0104】
ビニル重合体樹脂は、例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン及びポリ塩化ビニルからなる群より選択される少なくとも1種を含む。
【0105】
共重合体樹脂は、少なくとも1種の共重合体を含み、共重合体は、例えば、メチルメタクリレート、スチレン及び塩化ビニルからなる群より選択される2種以上の共重合体である。
【0106】
熱硬化性樹脂は、例えば、ビニル重合体樹脂、共重合体樹脂、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリエステルカーボネート、ポリスルホン、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリアリレート、ポリアミド、ポリエーテル、ポリウレタン、ポリアクリルアミド、フェノール樹脂及びポリフェニレンオキサイドからなる群より選択される少なくとも1種を部分的に架橋して得られる樹脂である。
【0107】
バインダ樹脂は、望ましくは、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアリレート及びポリフェニレンオキサイドから選択される群より少なくとも1種を含み、さらに望ましくは、ポリカーボネートを含む。これらの樹脂は、1013Ω以上の体積抵抗値を有し、高い電気絶縁性を有する。また、これらの樹脂は、優れた成膜性、電位特性等も有する。
【0108】
バインダ樹脂としては、1種のバインダ樹脂のみが単独で使用されてもよいし、2種以上のバインダ樹脂が組み合わされて使用されてもよい。
【0109】
電荷輸送層用塗布液に含まれる電荷輸送物質としては、公知の電荷輸送物質を使用することができる。
【0110】
電荷輸送物質は、例えば、カルバゾール誘導体、ピレン誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、チアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、イミダゾロン誘導体、イミダゾリジン誘導体、ビスイミダゾリジン誘導体、スチリル化合物、ヒドラゾン化合物、多環芳香族化合物、インドール誘導体、ピラゾリン誘導体、オキサゾロン誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、キナゾリン誘導体、ベンゾフラン誘導体、アクリジン誘導体、フェナジン誘導体、アミノスチルベン誘導体、トリアリールアミン誘導体、トリアリールメタン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、スチルベン誘導体、エナミン誘導体、ベンジジン誘導体、これらの化合物から誘導される基を主鎖又は側鎖に有するポリマー及びポリシランからなる群より選択される少なくとも1種を含む。
【0111】
ポリマーは、例えば、ポリ-N-ビニルカルバゾール、ポリ-1-ビニルピレン、エチルカルバゾール-ホルムアルデヒド樹脂、トリフェニルメタンポリマー及びポリ-9-ビニルアントラセンからなる群より選択される少なくとも1種を含む。
【0112】
電荷輸送物質としては、1種の電荷輸送物質が単独で使用されてもよいし、2種以上の電荷輸送物質が組み合わされて使用されてもよい。
【0113】
電荷輸送物質の質量Gとバインダ樹脂の質量Hとの比率G/Hは、望ましくは、10/12から10/30である。
【0114】
固形分の全体における無機微粒子71の含有量は、望ましくは、7質量%以上25質量%以下である。
【0115】
電荷輸送層54が形成される際に電荷輸送層用塗布液中の無機微粒子71の分散性を制御することにより、0.1μm以上0.5μm以下の表面粗さRzを有する感光体11の表面11sを得ることができる。
【0116】
続く工程S102においては、形成された塗膜が乾燥させられて電荷輸送層54が形成される。電荷輸送層54においては、バインダ樹脂が電荷輸送物質を結着している。
【0117】
電荷輸送層54は、望ましくは、5μm以上50μm以下の厚さを有し、さらに望ましくは、10μm以上40μm以下の厚さを有する。
【0118】
電荷輸送層54の厚さがこれらの範囲より薄い場合は、感光体11の表面11sの帯電性能が低下する可能性がある。一方、電荷輸送層54の厚さがこれらの範囲より厚い場合は、感光体11の解像度が低下する可能性がある。
【0119】
11 微粉体
図4に図示されるように、トナー粒子81は、母粒子91及び第1の外添剤101を備え、第1の外添剤101は、微粉体111を備え、微粉体111は、微粉体本体121及び疎水化部122を含む。微粉体本体121は、水酸化アルミニウム及びシリカを含む。また、微粉体本体121の表面は、シラン処理されている。
【0120】
微粉体本体121において、シリカは、微粉体本体121の主成分であり、水酸化アルミニウムは、微粉体本体121の副成分である。微粉体本体121は、望ましくは、5質量%以上15質量%以下の水酸化アルミニウムを含み、さらに望ましくは、10質量%程度の水酸化アルミニウムを含む。
【0121】
微粉体111は、母粒子91の表面の上において、望ましくは、0.94以上の分散値数fを有し、さらに望ましくは、0.94以上0.99以下の分散値数fを有する。微粉体111の分散値数fが0.94より小さくなった場合は、下述する環境帯電性能Aが大きくなる可能性がある。
【0122】
分散値数fは、母粒子91の表面の上における微粉体111の分散性を数値で示す。分散値数fは、次式により算出することができる。
【0123】
分散値数f=微粉体111のみが外添されたトナーの抵抗成分値/外添剤が外添されていないトナーの抵抗成分値
【0124】
微粉体111は、望ましくは、10nm以上40nm以下の平均一次粒子径を有し、さらに望ましくは、12nm以上25nm以下の平均一次粒子径を有し、特に望ましくは、13nm以上20nm以下の平均一次粒子径を有する。微粉体111の平均一次粒子径がこれらの範囲より小さくなった場合は、微粉体111の一次粒子が母粒子91の表面の上において凝集して微粉体111の分散値数fが小さくなる可能性がある。一方、微粉体111の平均一次粒子径がこれらの範囲より大きくなった場合は、微粉体111の添加量に応じた母粒子91の表面の被覆率を得ることが困難になって環境帯電性能A値が大きくなる可能性がある。
【0125】
12 小粒径シリカ粒子(第1のシリカ粒子)
第2の外添剤102に含まれる小粒径シリカ粒子(第1のシリカ粒子)131は、上述したように、微粉体111の平均一次粒子径より小さい平均一次粒子径を有し、望ましくは、7nm以上40nm以下の平均一次粒子径を有し、さらに望ましくは、7nm以上30nm以下の平均一次粒子径を有し、特に望ましくは、7nm以上12nm以下の平均一次粒子径を有する。
【0126】
小粒径シリカ粒子は、例えば、四塩化ケイ素を酸水素火炎中において燃焼させる火炎加水分解法、ゾルゲル法等によりシリカ粒子を合成し、合成したシリカ粒子の表面をヘキサメチルジシラザン(HMDS)、ジメチル―ジクロロシラン(DDS)、オクチルシラン(OTAS)及びポリジメチルシロキサン(PDMS)からなる群より選択される少なくとも1種により疎水化処理することにより得られる。
【0127】
13 大粒径シリカ粒子(第2のシリカ粒子)
第3の外添剤103に含まれる大粒径シリカ粒子(第2のシリカ粒子)132は、上述したように、微粉体111の平均一次粒子径より大きい平均一次粒子径を有し、望ましくは、50nm以上300nm以下の平均一次粒子径を有し、さらに望ましくは、65nm以上200nm以下の平均一次粒子径を有し、特に望ましくは、80nm以上120nm以下の平均一次粒子径を有する。
【0128】
大粒径シリカ粒子は、小粒径シリカ粒子と同様に、四塩化ケイ素を酸水素火炎中において燃焼させる火炎加水分解法、ゾルゲル法等によりシリカ粒子を合成し、合成したシリカ粒子の表面をHMDS、DDS、OTAS及びPDMSからなる群より選択される少なくとも1種により疎水化処理することにより得られる。
【0129】
14 外添剤による母粒子の表面の被覆率
トナーは、望ましくは、母粒子91の静電容量値数aが1より小さい場合に、下記の条件Aを満たし、母粒子91の静電容量値数aが1以上である場合に、下記の条件Bを満たす。
【0130】
(条件A)小粒径シリカ粒子(第1のシリカ粒子)131、微粉体111及び大粒径シリカ粒子(第2のシリカ粒子)132による母粒子91の表面の被覆比率1:P:Qが、P≧0.20及び0.27≧Q≧0.04という関係を満たす。
【0131】
(条件B)小粒径シリカ粒子131、微粉体111及び大粒径シリカ粒子132による母粒子91の表面の被覆比率1:X:Yが、X≧0.46及び0.27≧Y≧0.04という関係を満たす。
【0132】
母粒子91の静電容量値数aは、母粒子91の圧粉体からなる固形試料の静電容量成分の測定値である。
【0133】
母粒子91は、望ましくは、0.900以上1.100以下の静電容量値数aを有する。
【0134】
小粒径シリカ粒子131、微粉体111及び大粒径シリカ粒子132による母粒子91の表面の被覆比率は、母粒子91の平均粒径及び比重並びに小粒径シリカ粒子131、微粉体111及び大粒径シリカ粒子132の平均粒径及び比重を用いて投影面積におけるモデル計算を行って小粒径シリカ粒子131、微粉体111及び大粒径シリカ粒子132の被覆率の比として得ることができる。当該被覆比率は、トナーのSEM画像により確認することができる。
【0135】
条件Aにおいて母粒子91の静電容量値数aが1より小さい場合に微粉体111による母粒子91の表面の被覆比率Pが0.2以上であることが望まれるのは、被覆比率Pが0.20より小さくなった場合は、環境帯電性能A値が大きくなる可能性があるからである。また、被覆比率Pは、さらに望ましくは、0.29以上である。また、被覆比率Pは、望ましくは、0.8以下である。
【0136】
条件Aにおいて母粒子91の静電容量値数aが1以上である場合に大粒径シリカ粒子132による母粒子91の被覆比率Qが0.04以上0.27以下であることが望まれるのは、被覆比率Qが0.04より小さくなった場合又は0.27より大きくなった場合は、環境帯電性能A値が大きくなる可能性があるからである。また、被覆比率Qは、さらに望ましくは、0.06以上0.12以下である。
【0137】
条件Bにおいて母粒子91の静電容量値数aが1以上である場合に微粉体111による母粒子91の被覆比率Xが0.46以上であることが望まれるのは、被覆比率Xが0.46より小さくなった場合は、環境帯電性能A値が大きくなる可能性があるからである。また、被覆比率Xは、さらに望ましくは、0.58以上である。また、被覆比率Xは、望ましくは、0.8以下である。
【0138】
条件Bにおいて母粒子91の静電容量値数aが1以上である場合に大粒径シリカ粒子132による母粒子91の被覆比率Yが0.04以上0.27以下であることが望まれるのは、被覆比率Yが0.04より小さくなった場合又は0.27より大きくなった場合は、環境帯電性能A値が大きくなる可能性があるからである。また、被覆比率Yは、さらに望ましくは、0.06以上0.12以下である。
【0139】
第1の外添剤101、第2の外添剤102、第3の外添剤103等の外添剤の添加量は、上述した条件A及びBが満たされる限り制限されないが、望ましくは、100質量部の母粒子91に対して1.0質量部以上5.0質量部以下の外添剤が含まれる添加量であり、さらに望ましくは、100質量部の母粒子91に対して2.0質量部以上4.0質量部以下の外添剤が含まれる添加量である。
【0140】
外添剤が小粒径シリカ粒子131及び微粉体111である場合は、小粒径シリカ粒子131の質量に対する微粉体111の質量の比は、望ましくは、0.1以上1.0以下である。
【0141】
外添剤が小粒径シリカ粒子131、微粉体111及び大粒径シリカ粒子132である場合は、小粒径シリカ粒子131の質量に対する微粉体111の質量の比は、望ましくは、0.1以上1.0以下であり、小粒径シリカ粒子131の質量に対する大粒径シリカ粒子132の質量の比は、望ましくは、0.4以上2.5以下である。
【0142】
15 母粒子
母粒子91は、負帯電し、上述した特定の物性を有する外添剤により外添されている。母粒子91は、結着樹脂、着色剤、離型剤及び帯電制御剤を含む。母粒子91が、結着樹脂、着色剤、離型剤及び帯電制御剤以外の添加剤を含んでもよい。
【0143】
16 結着樹脂
母粒子91に含まれる結着樹脂としては、公知の結着樹脂を使用することができる。
【0144】
結着樹脂は、例えば、ポリエステル系樹脂を含む。
【0145】
ポリエステル系樹脂は、例えば、2価のアルコール成分及び3価以上の多価アルコール成分からなる群より選択される少なくとも1種と2価のカルボン酸及び3価以上の多価カルボン酸からなる群より選択される少なくとも1種とに、縮重合反応、エステル化又はエステル交換反応を行わせることにより得られる。
【0146】
縮重合反応の条件は、縮重合反応を行わせるモノマー成分の反応性に応じて設定される。縮重合反応の反応温度は、望ましくは、170℃以上250℃以下に設定される。また、縮重合反応の反応圧力は、望ましくは、5mmHg以上常圧以下に設定される。縮重合反応は、望ましい物性を有する重合体が得られた時点で終了させられる。
【0147】
2価のアルコール成分は、例えば、ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物、ジオール類、ビスフェノールA、ビスフェノールAのプロピレン付加物、ビスフェノールAのエチレン付加物及び水素添加ビスフェノールAからなる群より選択される少なくとも1種を含む。
【0148】
ビスフェノールAは、例えば、ポリオキシプロピレン(2.2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(3.3)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(2.0)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(2.0)-ポリオキシエチレン(2.0)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン及びポリオキシプロピレン(6)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンからなる群より選択される少なくとも1種を含む。
【0149】
ジオール類は、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-ブテンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール及びポリテトラメチレングリコールからなる群より選択される少なくとも1種を含む。
【0150】
3価以上の多価アルコール成分は、例えば、ソルビトール、1,2,3,6-ヘキサンテトロール、1,4-ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、スクロース(蔗糖)、1,2,4-ブタントリオール、1,2,5-ペンタントリオール、グリセロール、2-メチルプロパントリオール、2-メチル-1,2,4-ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン及び1,3,5-トリヒドロキシメチルベンゼンからなる群より選択される少なくとも1種を含む。
【0151】
アルコール成分としては、1種のアルコール成分が単独で使用されてもよいし、2種以上のアルコール成分が組み合わされて使用されてもよい。
【0152】
2価のカルボン酸は、例えば、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸、マロン酸、n-ドデセニルコハク酸、n-ドデシルコハク酸、n-オクチルコハク酸、イソオクテニルコハク酸、イソオクチルコハク酸並びにこれらの酸無水物及び低級アルキルエステルからなる群より選択される少なくとも1種を含む。
【0153】
3価以上の多価カルボン酸は、例えば、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸、1,2,5-ベンゼントリカルボン酸、2,5,7-ナフタレントリカルボン酸、1,2,4-ナフタレントリカルボン酸、1,2,4-ブタントリカルボン酸、1,2,5-ヘキサントリカルボン酸、1,3-ジカルボキシル-2-メチル-2-メチレンカルボキシプロパン、1,2,4-シクロヘキサントリカルボン酸、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8-オクタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、エンポール三量体酸並びにこれらの酸無水物及び低級アルキルエステルからなる群より選択される少なくとも1種を含む。
【0154】
カルボン酸としては、1種のカルボン酸が単独で使用されてもよいし、2種以上のカルボン酸が組み合わされて使用されてもよい。
【0155】
結着樹脂は、望ましくは、9000以上90000以下の質量平均分子量を有し、100000以上の分子量を有する分子を10質量%以上30質量%以下含む。これにより、定着器18がベルト定着装置を備える場合にベルト定着装置において低温定着性及び耐ホットオフセット性を両立することができる。
【0156】
しかし、結着樹脂の質量平均分子量が9000より小さくなった場合は、定着高温側における剥離性が低くなる可能性がある。一方、結着樹脂の質量平均分子量が90000より大きくなった場合は、低温定着性が低くなる可能性がある。結着樹脂の質量平均分子量は、望ましくは、20000以上である。これにより、定着高温側における剥離性をより高くすることができる。また、結着樹脂の質量平均分子量は、望ましくは、70000以下である。これにより、低温定着性をより高くすることができる。したがって、結着樹脂の質量平均分子量は、望ましくは、20000以上70000以下である。
【0157】
また、100000以上の分子量を有する分子の含有量が10質量%より少なくなった場合は、定着高温側における剥離性が低くなる可能性がある。一方、100000以上の分子量を有する分子の含有量が30質量%より多くなった場合は、低温定着性が低くなる可能性がある。100000以上の分子量を有する分子の含有量は、望ましくは、20質量%以下である。これにより、低温定着性をより高くすることができる。したがって、100000以上の分子量を有する分子の含有量は、望ましくは、10質量%以上20質量%以下である。
【0158】
母粒子91は、望ましくは、60質量%以上90質量%以下の結着樹脂を含み、さらに望ましくは、70質量%以上85質量%以下の結着樹脂を含む。
【0159】
17 着色剤
母粒子91に含まれる着色剤としては、公知の着色剤を使用することができる。
【0160】
着色剤は、例えば、有機系の顔料、有機系の染料、無機系の顔料及び無機系の染料からなる群より選択される少なくとも1種を含む。着色剤の色は、様々であり、例えば、黒色、白色、黄色、橙色、赤色、紫色、青色、緑色等である。
【0161】
黒色の着色剤は、例えば、カーボンブラック、酸化銅、二酸化マンガン、アニリンブラック、活性炭、非磁性フェライト、磁性フェライト及びマグネタイトからなる群より選択される少なくとも1種を含む。
【0162】
白色の着色剤は、例えば、亜鉛華、酸化チタン、アンチモン白及び硫化亜鉛からなる群より選択される少なくとも1種を含む。
【0163】
黄色の着色剤は、例えば、黄鉛、亜鉛黄、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、ミネラルファストイエロー、ニッケルチタンイエロー、ネーブルイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローG、ベンジジンイエローGR、キノリンイエローレーキ、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキ、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94及びC.I.ピグメントイエロー138からなる群より選択される少なくとも1種を含む。
【0164】
橙色の着色剤は、例えば、赤色黄鉛、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、インダスレンブリリアントオレンジRK、ベンジジンオレンジG、インダスレンブリリアントオレンジGK、C.I.ピグメントオレンジ31及びC.I.ピグメントオレンジ43からなる群より選択される少なくとも1種を含む。
【0165】
赤色の着色剤は、例えば、ベンガラ、カドミウムレッド、鉛丹、硫化水銀、カドミウム、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピラゾロンレッド、ウオッチングレッド、カルシウム塩、レーキレッドC、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキ、ブリリアントカーミン3B、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド15、C.I.ピグメントレッド16、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド53:1、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド139、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178及びC.I.ピグメントレッド222からなる群より選択される少なくとも1種を含む。
【0166】
紫色の着色剤は、例えば、マンガン紫、ファストバイオレットB及びメチルバイオレットレーキからなる群より選択される少なくとも1種を含む。
【0167】
青色の着色剤は、例えば、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー部分塩素化物、ファーストスカイブルー、インダスレンブルーBC、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー16及びC.I.ピグメントブルー60からなる群より選択される少なくとも1種を含む。
【0168】
緑色の着色剤は、例えば、クロムグリーン、酸化クロム、ピクメントグリーンB、マイカライトグリーンレーキ、ファイナルイエローグリーンG及びC.I.ピグメントグリーン7からなる群より選択される少なくとも1種を含む。
【0169】
着色剤としては、1種の着色剤が単独で使用されてもよいし、2種以上の着色剤が組み合わされて使用されてもよい。組み合わされる2種以上の着色剤は、同じ色の着色剤であってもよいし、互いに異なる色の着色剤であってもよい。
【0170】
組み合わされる2種以上の着色剤が複合粒子化されてもよい。複合粒子は、例えば、2種以上の着色剤に適量の水、低級アルコール等を添加して湿潤粉末を調製し、調整した湿潤粉末に対してハイスピードミル等の造粒機により造粒を行い、造粒が行われた湿潤粉末を乾燥させることにより製造される。着色剤がマスターバッチ化されてもよい。着色剤がマスターバッチ化された場合は、結着樹脂中に着色剤を均一に分散させることができる。複合粒子及びマスターバッチは、トナー組成物が乾式混合される際にトナー組成物に混入させられる。
【0171】
トナーは、100質量部の結着樹脂に対して、望ましくは、0.1質量部以上20質量部以下の着色剤を含み、さらに望ましくは、0.2質量部以上10質量部以下の着色剤を含む。換算すれば、トナーは、望ましくは、2.5質量%以上7.5質量%以下の着色剤を含み、さらに望ましくは、3.0質量%以上6.5質量%以下の着色剤を含む。これにより、トナーの物性を損なうことなく、高い画像濃度を有し高い画像品位を有する画像を形成することができる。
【0172】
18 離型剤
母粒子91に含まれる離型剤としては、公知の離型剤を使用することができる。
【0173】
離型剤は、例えば、石油系ワックス、炭化水素系合成ワックス、植物系ワックス、動物系ワックス、油脂系合成ワックス、長鎖カルボン酸及びその誘導体、長鎖アルコール及びその誘導体、シリコーン系重合体並びに高級脂肪酸からなる群より選択される少なくとも1種を含み、望ましくは、炭化水素系ワックスを含む。
【0174】
石油系ワックスは、例えば、パラフィンワックス及びマイクロクリスタリンワックス並びにこれらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1種を含む。
【0175】
炭化水素系合成ワックスは、例えば、フィッシャー・トロプシュワックス、ポリオレフィンワックス、低分子量ポリプロピリンワックス及びポリオレフィン系重合体ワックス並びにこれらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1種を含む。
【0176】
ポリオレフィンワックスは、例えば、ポリエチレンワックス及びポリプロピレンワックスからなる群より選択される少なくとも1種を含む。
【0177】
ポリオレフィン系重合体ワックスは、例えば、低分子量ポリエチレンワックスを含む。
【0178】
植物系ワックスは、例えば、カルナバワックス、ライスワックス及びキャンデリラワックス並びにこれらの誘導体、並びに木蝋からなる群より選択される少なくとも1種を含む。
【0179】
動物系ワックスは、蜜蝋及び鯨蝋からなる群より選択される少なくとも1種を含む。
【0180】
油脂系合成ワックスは、例えば、脂肪酸アミド及びフェノール脂肪酸エステルからなる群より選択される少なくとも1種を含む。
【0181】
上述した誘導体は、酸化物、ビニル系モノマーとワックスとのブロック共重合物及びビニル系モノマーとワックスとのグラフト変性物からなる群より選択される少なくとも1種を含む。
【0182】
離型剤としては、1種の離型剤が単独で使用されてもよいし、2種以上の離型剤が組み合わされて使用されてもよい。
【0183】
離型剤は、望ましくは、70℃以下の融点を有する。これにより、定着器18がベルト定着装置を備える場合にベルト定着装置において低温定着性及び耐ホットオフセット性を両立することができ、低温定着性を高くすることができる。離型剤は、望ましくは、60℃以上の融点を有する。
【0184】
トナーは、100質量部の結着樹脂に対して、望ましくは、0.2質量部以上20質量部以下の離型剤を含み、さらに望ましくは、0.5質量部以上10質量部以下の離型剤を含み、特に望ましくは、1.0質量部以上8.0質量部以下の離型剤を含む。換算すれば、トナーは、望ましくは、2.0質量%以上7.0質量%以下の離型剤を含み、さらに望ましくは、3.0質量%以上5.0質量%以下の離型剤を含む。これにより、トナーの物性を損なうことなく、高い画像濃度を有し高い画像品位を有する画像を形成することができる。
【0185】
19 帯電制御剤
母粒子91に含まれる帯電制御剤としては、公知の帯電制御剤を使用することができる。
【0186】
帯電制御剤は、負電荷制御用の電荷制御剤を含む。
【0187】
負電荷制御用の電荷制御剤は、例えば、油溶性染料、含金属アゾ化合物、アゾ錯体染料、ナフテン酸金属塩、サリチル酸及びその誘導体の金属錯体及び金属塩、ホウ素化合物、脂肪酸石鹸、長鎖アルキルカルボン酸塩並びに樹脂酸石鹸からなる群より選択される少なくとも1種を含む。
【0188】
油溶性染料は、例えば、オイルブラック及びスピロンブラックからなる群より選択される少なくとも1種を含む。
【0189】
金属は、例えば、クロム、亜鉛及びジルコニウムからなる群より選択される少なくとも1種を含む。
【0190】
帯電制御剤としては、1種の帯電制御剤が単独で使用されてもよいし、2種以上の帯電制御剤が組み合わされて使用されてもよい。
【0191】
トナーは、100質量部の結着樹脂に対して、望ましくは、0.5質量部以上3質量部以下の帯電制御剤を含み、さらに望ましくは、1質量部以上2質量部以下の帯電制御剤を含む。換算すれば、トナーは、望ましくは、0.5質量%以上2.0質量%以下の帯電抑制剤を含み、さらに望ましくは、0.7質量%以上1.5質量%以下の帯電抑制剤を含む。これにより、トナーの物性を損なうことなく、高い画像濃度を有し高い画像品位を有する画像を形成することができる。
【0192】
20 トナーの平均一次粒子径
現像器14により供給されるトナーは、望ましくは、4μm以上10μm以下の平均一次粒子径を有し、さらに望ましくは、5μm以上8μm以下の平均一次粒子径を有する。
【0193】
トナーの平均一次粒子径がこれらの範囲より小さくなった場合は、母粒子91の粒子径が小さくなりすぎる可能性がある。このため、母粒子91の比表面積が大きくなりする可能性がある。このため、トナーの帯電量が大きくなりすぎる可能性がある。また、トナーの流動性が悪くなる可能性がある。これらのため、トナーを感光体11に安定して供給することが困難になって地肌かぶり、画像濃度の低下等が発生する可能性がある。一方、トナーの平均一次粒子径がこれらの範囲より大きくなった場合は、母粒子91の粒子径が大きくなりすぎる可能性がある。このため、形成された画像の層厚が厚くなって当該画像が粒状性を感じさせる画像となる可能性がある。このため、高い精細さを有する画像を形成することが困難になる可能性がある。また、母粒子91の比表面積が小さくなりする可能性がある。このため、トナーの帯電量が小さくなりすぎる可能性がある。このため、トナーを感光体11に安定して供給することが困難になってトナーの飛散により画像形成装置1の内部が汚染される可能性がある。
【0194】
21 母粒子の製造方法
図6は、本実施形態の画像形成装置に備えられる現像器により供給されるトナーに備えられる母粒子の製造方法を示すフローチャートである。
【0195】
現像器14により供給されるトナーに備えられる母粒子91は、例えば、公知の装置を用いて公知の方法により製造され、望ましくは、乾式法により製造され、さらに望ましくは、粉砕法により製造される。母粒子91が乾式法により製造された場合は、母粒子91が湿式法により製造された場合と比較して、工程数が少なくなり、設備コストを下げることができる。
【0196】
母粒子91が粉砕法により製造される場合は、図6に示される混合工程S121、微粉砕工程S122、分級工程S123及び球形化処理工程S124が実行される。
【0197】
混合工程S121においては、結着樹脂、着色剤及び離型剤を含み粗粉砕された溶融混錬物と、フィラーと、が互いに混合されて混合物が調製される。混合工程S121の条件は、調製される混合物に望まれる物性及び混合される材料に応じて設定される。
【0198】
続く微粉砕工程S122においては、調製された混合物が微粉砕されて微粉砕物が調製される。微粉砕工程S122の条件は、調製される微粉砕物に望まれる物性及び微粉砕される材料に応じて設定される。
【0199】
続く分級工程S123においては、調製された微粉砕物が分級されて分級物が調製される。分級工程S123の条件は、調製される分級物に望まれる物性及び分級される材料に応じて設定される。
【0200】
続く球形化処理工程S124においては、調製された分級物が熱風により球形化されて母粒子91が調製される。球形化処理工程S124の条件は、調製される母粒子91に望まれる物性及び球形化される材料に応じて設定される。
【0201】
22 外添剤の外添方法
図7は、本実施形態の画像形成装置に備えられる現像器により供給されるトナーの製造方法に含まれる外添剤の外添方法を示すフローチャートである。
【0202】
現像器14により供給されるトナーが製造される際には、図7に示される第1の外添工程S111及び第2の外添工程S112が実行される。
【0203】
第1の外添工程S111においては、小粒径シリカ粒子(第1のシリカ粒子)131を備える第2の外添剤102が母粒子91に外添される。第2の外添剤102が母粒子91に外添される際には、第2の外添剤102が母粒子91に添加される。また、母粒子91及び添加された第2の外添剤102が互いに混合されて混合粒子が調製される。
【0204】
又は、第1の外添工程S111においては、小粒径シリカ粒子(第1のシリカ粒子)131を備える第2の外添剤102及び大粒径シリカ粒子(第2のシリカ粒子)132を備える第3の外添剤103が母粒子91に外添される。第2の外添剤102及び第3の外添剤103が母粒子91に外添される際には、第2の外添剤102及び第3の外添剤103が母粒子91に添加される。また、母粒子91並びに添加された第2の外添剤102及び第3の外添剤103が互いに混合されて混合粒子が調製される。
【0205】
第1の外添工程S111において行われる添加及び混合の操作は、公知の装置を用いて実行することができる。第1の外添工程S111の条件は、調製される混合粒子に望まれる物性、並びに添加される材料及び混合される材料に応じて設定される。
【0206】
第2の外添工程S112においては、微粉体111を備える第1の外添剤101が母粒子91に外添される。第1の外添剤101が母粒子91に外添される際には、第1の外添剤101が、調製された混合粒子に添加される。また、混合粒子及び添加された第1の外添剤101が互いに混合されてトナーが調製される。
【0207】
第2の外添工程S112において行われる添加及び混合の操作は、公知の装置を用いて実行することができる。第2の外添工程S112の条件は、調製されるトナーに望まれる物性、並びに添加される材料及び混合される材料に応じて設定される。
【0208】
第2の外添工程S112において混合が行われる際の攪拌時間T2は、望ましくは、第1の外添工程において混合が行われる際の攪拌時間T1の1.1倍以上である。例えば、攪拌時間T1が0.5分間から1分間である場合は、攪拌時間T2は、0.6分間から1.1分間程度である。攪拌時間T2が攪拌時間T1の1.1倍より短い場合は、環境帯電性能A値が大きくなる可能性がある。また、攪拌時間T2は、望ましくは、攪拌時間T1の5倍以下である。
【0209】
23 現像剤
現像器14は、一成分の現像剤により静電潜像を現像してもよいし、二成分の現像剤により静電潜像を現像してもよい。
【0210】
二成分の現像剤は、上述したトナー及びキャリアを含む。
【0211】
キャリアとしては、公知のキャリアを使用することができる。
【0212】
キャリアは、例えば、フェライトからなるキャリア及びキャリア芯粒子が被覆物質により表面被覆されたキャリアからなる群より選択される少なくとも1種を含む。
【0213】
フェライトは、例えば、単独フェライト及び複合フェライトからなる群より選択される少なくとも1種を含み、鉄、銅、亜鉛、ニッケル、コバルト、マンガン及びクロムからなる群より選択される少なくとも1種を含む。
【0214】
キャリアは、望ましくは、10μm以上100μm以下の平均粒径を有し、さらに望ましくは、20μm以上50μm以下の平均粒径を有する。
【0215】
キャリアの添加量は、制限されないが、望ましくは、100質量部の母粒子91に対して4質量部以上15質量部以下のキャリアが含まれる添加量であり、さらに望ましくは、100質量部の母粒子91に対して5質量部以上10質量部以下のキャリアが含まれる添加量である。
【実施例0216】
[感光体の製造方法1]
(下引き層の形成)
3質量部の酸化チタン及び2質量部の共重合ポリアミド(ナイロン)を25質量部のメチルアルコールに加えた。また、ペイントシェーカーにより、酸化チタン及び共重合ポリアミドをメチルアルコールに8時間分散させて3リットルの下引き層用塗布液を調製した。酸化チタンとしては、石原産業株式会社製のタイベークTTO-D-1を使用した。共重合ポリアミドとしては、東レ株式会社製のアミラン(登録商標)CM8000を使用した。
【0217】
続いて、下引き層用塗布液に導電性支持体51を浸漬した後に下引き層用塗布液から導電性支持体51を引き上げて導電性支持体51の表面の上に塗膜を形成した。導電性支持体51としては、30mmの直径及び255mmの長さを有する、アルミニウム製のドラム状支持体を使用した。また、塗膜を自然乾燥させて導電性支持体51の表面の上に1μmの厚さを有する下引き層52を形成した。
【0218】
(電荷発生物質の合成)
電荷発生物質を合成した。電荷発生物質は、構造式(11)により示される分子構造を有するオキソチタニルフタロシアニンである。
【0219】
【化1】
【0220】
オキソチタニルフタロシアニンを合成する際には、29.2gのジイミノイソインドリン及び200ミリリットルのスルホランを混合して混合物を得た。また、混合物に17.0gのチタニウムテトライソプロポキシドを加えた。また、混合物及びチタニウムテトライソプロポキシドを窒素雰囲気下において140℃で2時間反応させて反応混合物を得た。また、反応混合物を放冷した。また、放冷した反応混合物から析出物を濾取した。また、析出物を、クロロホルム及び2%の塩酸水溶液で順次洗浄した後に水及びメタノールでさらに順次洗浄してから乾燥させて25.5gの青紫色の結晶物を得た。結晶物を化学分析したところ、結晶物が構造式(11)により示される分子構造を有するオキソチタニルフタロシアニンであることを確認することができた。収率は、88.5%であった。
【0221】
(電荷発生層の形成)
1質量部のオキソチタニルフタロシアニン及び1質量部のブチラール樹脂を98質量部のメチルエチルケトンに加えた。ブチラール樹脂としては、デンカ株式会社製のBM-2を使用した。また、ペイントシェーカーにより、オキソチタニルフタロシアニン及びブチラール樹脂をメチルエチルケトンに2時間分散させて3リットルの電荷発生層用塗布液を調製した。
【0222】
続いて、電荷発生層用塗布液に導電性支持体51及び下引き層52を備える中間品を浸漬してから電荷発生層用塗布液から中間品を引き上げて中間品の表面の上すなわち下引き層52の上に塗膜を形成した。また、塗膜を自然乾燥させて中間品の表面の上に0.3μmの厚さを有する電荷発生層53を形成した。
【0223】
(電荷輸送層の形成)
69.4gのシリカ粒子を430gのテトラヒドロフランに懸濁させた。シリカ粒子としては、日本アエロジル株式会社製のAEROSIL(登録商標)R972を使用した。R972は、16nmの数平均一次粒子径を有しジメチルジクロロシランにより表面処理されているシリカ粒子である。また、ボールミルにより、シリカ粒子及びテトラヒドロフランを12時間攪拌してシリカフィラー懸濁液を得た。また、脱泡装置により、シリカフィラー懸濁液を10分間脱泡して脱泡されたシリカフィラー懸濁液を得た。脱泡装置としては、株式会社シンキー製のあわとり練太郎(登録商標)ARE-310を使用した。また、250gの電荷輸送物質、375gのポリカーボネート及び2295gのテトラヒドロフランを脱泡されたシリカフィラー懸濁液に加えた。電荷輸送物質としては、構造式(12)により示される分子構造を有する化合物を使用した。ポリカーボネートとしては、帝人化成株式会社製のTS2040を使用した。また、ボールミルにより、電荷輸送物質、ポリカーボネート、テトラヒドロフラン及びシリカフィラー懸濁液を30時間攪拌して混合物を得た。また、粒子分散装置により、混合物に対して6パスの分散処理を行った。粒子分散装置としては、マイクロフルイディックスLLC製のM-110Pを使用した。また、分散処理を行った混合物を20℃の温度下において1週間安置して電荷輸送層用塗布液を調製した。
【0224】
【化2】
【0225】
続いて、電荷輸送層用塗布液に導電性支持体51、下引き層52及び電荷発生層53を備える中間品を浸漬してから中間品を電荷輸送層用塗布液から引き上げて中間品の表面の上すなわち電荷発生層53の上に塗膜を形成した。また、塗膜を115℃で1.5時間乾燥させて中間品の表面の上に35μmの厚さを有する電荷輸送層54を形成した。
【0226】
これらにより、図2に図示される感光体11を製造した。
【0227】
[感光体の製造方法2]
電荷輸送層用塗布液の調製において、シリカ粒子としてR972に代えて日本アエロジル株式会社製のAEROSIL(登録商標)RX200を使用した点を除いて、感光体の製造方法1と同様にして感光体11を製造した。RX200は、12nmの数平均一次粒子径を有しヘキサジメチルジシラザンにより表面処理されているシリカ粒子である。
【0228】
[感光体の製造方法3]
電荷輸送層用塗布液の調製において、シリカ粒子としてR972に代えて日本アエロジル株式会社製のAEROSIL(登録商標)RY200Sを使用した点を除いて、感光体の製造方法1と同様にして感光体11を製造した。RY200Sは、16nmの数平均一次粒子径を有しポリジメチルシロキサンにより表面処理されているシリカ粒子である。
【0229】
[感光体の製造方法4]
電荷輸送層用塗布液の調製において、混合物に対して6パスの分散処理に代えて3パスの分散処理を行った点を除いて、感光体の製造方法1と同様にして感光体11を製造した。
【0230】
[感光体の製造方法5]
電荷輸送層用塗布液の調製において、混合物に対して6パスの分散処理に代えて2パスの分散処理を行った点を除いて、感光体の製造方法1と同様にして感光体11を製造した。
【0231】
[感光体の製造方法6]
電荷輸送層用塗布液の調製において、シリカ粒子の添加量を69.4gから54.3gに減らした点を除いて、感光体の製造方法1と同様にして感光体11を製造した。
【0232】
[感光体の製造方法7]
電荷輸送層用塗布液の調製において、シリカ粒子の添加量を69.4gから197gに増やした点を除いて、感光体の製造方法1と同様にして感光体11を製造した。
【0233】
[感光体の製造方法8]
電荷輸送層用塗布液の調製において、混合物に対して6パスの分散処理に代えて2パスの分散処理を行った点を除いて、感光体の製造方法3と同様にして感光体11を製造した。
【0234】
[感光体の製造方法9]
電荷輸送層用塗布液の調製において、ポリカーボネートとしてTS2040に代えて帝人化成株式会社製のTS2050を使用し、電荷輸送物質の添加量を250gから223gに減らし、ポリカーボネートの添加量を375gから402gに増やした点を除いて、感光体の製造方法3と同様にして感光体11を製造した。
【0235】
[感光体の製造方法10]
電荷輸送層用塗布液の調製において、ポリカーボネートとしてTS2040に代えて三菱ガス化学株式会社製のZ800を使用し、テトラヒドロフランの添加量を2295gから2725gに増やし、電荷輸送物質、ポリカーボネート、テトラヒドロフラン及びシリカフィラー懸濁液を攪拌する時間を30時間から15時間に短くし、電荷輸送層54の上に表面保護層を形成した点を除いて、感光体の製造方法1と同様にして感光体11を製造した。
【0236】
表面保護層を形成する際には、250gの電荷輸送物質、375gのポリカーボネート、2000gのテトラヒドロフラン及び550gのアルミナ微粒子スラリーを30時間攪拌して混合物を得た。電荷輸送物質としては、構造式(12)により示される分子構造を有する化合物を使用した。ポリカーボネートとしては、帝人化成株式会社製のTS2050を使用した。アルミナ微粒子スラリーとしては、シーアイ化成株式会社のアルミナ微粒子スラリーを使用した。当該アルミナ微粒子スラリーに含まれるアルミナ微粒子は、31nmの平均粒子径を有する。当該アルミナ微粒子スラリーは、15%の固形分及びテトラヒドロフランを含む。また、粒子分散装置により、混合物に対して6パスの分散処理を行った。粒子分散装置としては、マイクロフルイディックス社製のM-110Pを使用した。また、分散処理を行った混合物を20℃の温度下において1週間安置して表面保護層用塗布液を調製した。
【0237】
続いて、スプレー塗工により、表面保護層用塗布液を導電性支持体51、下引き層52、電荷発生層53及び電荷輸送層54を備える中間品に塗布して塗膜を形成した。また、塗膜を120℃で0.5時間乾燥させて中間品の表面の上に5μmの厚さを有する表面保護層を形成した。
【0238】
[感光体の製造方法11]
電荷輸送層用塗布液の調製において、シリカ粒子としてR972に代えて日本アエロジル株式会社製のAEROSIL(登録商標)R9200を使用した点を除いて、感光体の製造方法1と同様にして感光体11を製造した。R9200は、12nmの数平均一次粒子径を有しジメチルジクロロシランにより表面処理された後に構造改質されているシリカ粒子である。
【0239】
[感光体の比較製造方法1]
電荷輸送層用塗布液の調製において、シリカ粒子の添加量を69.4gから32.9gに減らした点を除いて、感光体の製造方法1と同様にして感光体11を製造した。
【0240】
[感光体の比較製造方法2]
電荷輸送層用塗布液の調製において、シリカ粒子の添加量を69.4gから243gに増やした点を除いて、感光体の製造方法1と同様にして感光体11を製造した。
【0241】
[感光体の比較製造方法3]
電荷輸送層用塗布液の調製において、シリカ粒子としてR972に代えてアドマテック株式会社製のSO-E1を使用し、シリカ粒子の添加量を69.4gから54.3gに減らした点を除いて、感光体の製造方法1と同様にして感光体11を製造した。SO-E1は、200から400nmの数平均一次粒子径を有し表面処理されていないシリカ粒子である。
【0242】
[感光体の比較製造方法4]
電荷輸送層用塗布液の調製において、シリカ粒子の添加量を69.4gから197gに増やし、混合物に対して6パスの分散処理に代えて3パスの分散処理を行った点を除いて、感光体の製造方法1と同様にして感光体11を製造した。
【0243】
[トナーの製造方法1]
(母粒子の調製)
気流混合機により、20質量部の結着樹脂、7質量部の着色剤、5質量部の離型剤及び1質量部の帯電制御剤を5分間前混合して前混合物を得た。結着樹脂としては、結晶性ポリエステル樹脂を使用した。着色剤としては、カーボンブラックを使用した。カーボンブラックとしては、三菱ケミカル株式会社製のMA100を使用した。離型剤としては、モノエステル系ワックスを使用した。モノエステル系ワックスとしては、日油株式会社製のWEP(登録商標)-3を使用した。帯電制御剤としては、サリチル酸系化合物を使用した。サリチル酸系化合物としては、オリエント化学工業株式会社製のBONTRON(登録商標)E-84を使用した。気流混合機としては、ヘンシェルミキサを使用した。ヘンシェルミキサとしては、三井鉱山株式会社(現 日本コークス工業株式会社)製のFM20Cを使用した。また、オープンロール型連続混練機により、前混合物を溶融混練して溶融混錬物を得た。オープンロール型連続混練機としては、三井鉱山株式会社(現 日本コークス工業株式会社)製のMOS320-1800を使用した。オープンロールの条件については、加熱ロールの供給側温度を130℃に設定し、加熱ロールの排出側温度を100℃に設定し、冷却ロールの供給側温度を40℃に設定し、冷却ロールの排出側温度を25℃に設定した。また、加熱ロール及び冷却ロールとしては、320mmの直径及び1550mmの有効長を有するロールを使用した。また、供給側及び排出側におけるロール間ギャップを0.3mmに設定した。また、加熱ロールの回転数を75rpmに設定し、冷却ロールの回転数を65rpmに設定した。また、前混合物の供給量を5kg/hに設定した。
【0244】
続いて、前混合物を冷却ベルトにより冷却した。また、φ2mmのスクリーンを有するスピードミルにより、冷却した前混合物を粗粉砕して粗粉砕品を得た。
【0245】
続いて、ジェット式粉砕機により、粗粉砕品を微粉砕して微粉砕物を得た。この工程は、上述した微粉砕工程S122に相当する。ジェット式粉砕機としては、日本ニューマチック工業株式会社製のIDS-2を使用した。
【0246】
続いて、エルボージェット分級機により、微粉砕物を分級して母粒子91を調製した。この工程は、上述した分級工程S123に相当する。エルボージェット分級機としては、日鉄鉱業株式会社製のEJ-LABOを使用した。
【0247】
調製した母粒子91の静電容値数aは、0.995であった。
【0248】
(微粉体の調製)
微粉体111としては、シャープ株式会社製のFPS-D15を使用した。
【0249】
微粉体111は、次のように調製した。
【0250】
500ミリリットルのイオン交換水及び50gの親水性ヒュームドシリカを互いに混合して分散液を得た。親水性ヒュームドシリカとしては、日本アエロジル株式会社製のAEROSILR(登録商標)130を使用した。また、分散液を45℃に加熱した。また、加熱した分散液に、pHが6.0になるまで100ミリリットルのアルミン酸ナトリウム溶液及び5N水酸化ナトリウム水溶液を滴下し、pHが3から4になるまで0.5N希塩酸を添加した。アルミン酸ナトリウム溶液としては、50g/リットルのAl(OH)濃度を有するアルミン酸ナトリウム溶液を使用した。また、これらを滴下した分散液に、25gのγ-アミノプロピルトリエトキシシランを添加した。また、γ-アミノプロピルトリエトキシシランを添加した分散液に、pHが6.5になるまで2N水酸化ナトリウム水溶液を滴下した。また、2N水酸化ナトリウム水溶液を滴下した分散液をろ過してウエットケーキを得た。また、ウエットケーキを、水で洗浄してから乾燥させて、第1の乾燥物を得た。
【0251】
続いて、衝突板式ジェット粉砕機により、第1の乾燥物を粉砕して粉砕物を得た。衝突板式ジェット粉砕機としては、日本ニューマチック工業株式会社製のIJT-2を使用した。粉砕圧は、0.6MPaに設定した。
【0252】
続いて、500ミリリットルのn-ヘキサン及び0.2gのアミノ変性シリコーンオイルをミキサーに投入した。また、ミキサーにより、n-ヘキサン及びアミノ変性シリコーンオイルを混合して表面処理溶液を調製した。また、粉砕物50gを表面処理溶液に加えた。また、粉砕物及び表面処理溶液を攪拌して混合液を得た。また、混合液を70℃に加熱した。また、加熱した混合液を攪拌した。また、減圧乾燥機により、攪拌した混合液を乾燥させて第2の乾燥物を得た。
【0253】
続いて、電気炉により、第2の乾燥物を200℃で3時間加熱してから冷却してシリカ及び水酸化ナトリウムの組成物の凝集体を得た。
【0254】
続いて、衝突板式ジェット粉砕機により、凝集体を粉砕して微粉体111を調製した。ジェット粉砕機としては、日本ニューマチック工業株式会社製のIJT-2を使用した。粉砕圧は、0.6MPaに設定した。
【0255】
(外添処理)
100質量部の母粒子91、1.2質量部の小粒径シリカ粒子131及び4.0質量部の大粒径シリカ粒子132をFMミキサーに投入した。小粒径シリカ粒子131としては、EVONIK社製のR974を使用した。R974は、12nmの平均一次粒子径を有する。大粒径シリカ粒子132としては、EVONIK社製のSX-110を使用した。SX-110は、110nmの平均一次粒子径を有する。FMミキサーとしては、日本コークス工業株式会社製のFM-20を使用した。また、FMミキサーにより、母粒子91、小粒径シリカ粒子131及び大粒径シリカ粒子132を1分間混合して母粒子91、小粒径シリカ粒子131及び大粒径シリカ粒子132の混合物を得た。母粒子91、小粒径シリカ粒子131及び大粒径シリカ粒子132を混合する際には、攪拌羽根先端部の最外周における周速度を40m/秒に設定した。この工程は、上述した第1の外添工程S111に相当する。
【0256】
続いて、0.7質量部の微粉体111をFMミキサーにさらに投入した。微粉体111としては、上述したように、シャープ株式会社製のFPS-D15を使用した。FPS-D15は、15nmの平均一次粒子径を有する。また、FMミキサーにより、母粒子91、小粒径シリカ粒子131及び大粒径シリカ粒子132の混合物並びに微粉体111を1.5分間混合して母粒子91、微粉体111、小粒径シリカ粒子131及び大粒径シリカ粒子の混合物を得た。母粒子91、小粒径シリカ粒子131及び大粒径シリカ粒子の混合物並びに微粉体111を混合する際には、攪拌羽根先端部の最外周における周速度を40m/秒に設定した。この工程は、上述した第2の外添工程S112に相当する。
【0257】
続いて、母粒子91、微粉体111、小粒径シリカ粒子131及び大粒径シリカ粒子の混合物を270メッシュの篩により篩別して外添トナーを調製した。この工程は、上述した分級工程S113に相当する。
【0258】
調製した外添トナーにおける母粒子91の被覆比率P及びQは、それぞれ0.29及び0.24であった。
【0259】
(二成分現像剤の調製)
外添トナー及びコートキャリアをトナーの濃度が7質量%となるようにV型混合機に投入した。また、V型混合機により、外添トナー及びコートキャリアを20分間混合して二成分現像剤を調製した。コートキャリアとしては、シャープ株式会社製のMX-5111FN用純正キャリアを使用した。V型混合機としては、株式会社徳寿工作所製のV-5を使用した。
【0260】
[トナーの製造方法2]
外添処理において、大粒径シリカ粒子132の添加量を4.0質量部から0.16質量部に減らした点を除いて、トナーの製造方法1と同様にして二成分現像剤を調製した。
【0261】
調製した外添トナーにおける母粒子91の被覆比率P及びQは、それぞれ0.29及び0.01であった。
【0262】
[トナーの製造方法3]
外添処理において、大粒径シリカ粒子132の添加量を4.0質量部から5.0質量部に増やした点を除いて、トナーの製造方法1と同様にして二成分現像剤を調製した。
【0263】
調製した外添トナーにおける母粒子91の被覆比率P及びQは、それぞれ0.29及び0.3であった。
【0264】
[トナーの製造方法4]
外添処理において、微粉体111の添加量を0.7質量部から0.48質量部に減らした点を除いて、トナーの製造方法1と同様にして二成分現像剤を調製した。
【0265】
調製した外添トナーにおける母粒子91の被覆比率P及びQは、それぞれ0.20及び0.26であった。
【0266】
[トナーの製造方法5]
外添処理において、大粒径シリカ粒子132の添加量を4.0質量部から0質量部に減らした点を除いて、トナーの製造方法1と同様にして二成分現像剤を調製した。
【0267】
調製した外添トナーにおける母粒子91の被覆比率P及びQは、それぞれ0.29及び0であった。
【0268】
[トナーの製造方法6]
外添処理において、小粒径シリカ粒子131として、EVONIK社製のR972を使用した点を除いて、トナーの製造方法1と同様にして二成分現像剤を調製した。R972は、16nmの平均一次粒子径を有する。
【0269】
調製した外添トナーにおける母粒子91の被覆比率P及びQは、それぞれ0.39及び0.32であった。
【0270】
[トナーの比較製造方法1]
外添処理において、微粉体111に代えて酸化チタン粉末を母粒子91、小粒径シリカ粒子131及び大粒径シリカ粒子132の混合物と混合した点を除いて、トナーの製造方法1と同様にして二成分現像剤を調製した。
【0271】
[画像形成装置の特性評価]
実施例1-16及び比較例1-6においては、感光体の製造方法とトナーの製造方法とを表1及び表2に示されるように組み合わせて画像形成装置1の特性評価を行った。表1には、微粉体111の種類、微粉体111の含有量、微粉体111の数平均一次粒子径、大粒径シリカ粒子132の平均一次粒子径及び小粒径シリカ粒子131の平均一次粒子径も示されている。表2には、フィラーの種類、フィラーの表面処理の有無、フィラーの表面処理に用いられた表面処理剤、フィラーの数平均一次粒子径及びフィラーの含有量も示されている。
【0272】
【表1】
【0273】
【表2】
【0274】
(1)感光体の表面の表面粗さRzの測定
上述した方法により、感光体11の表面11sの表面粗さRzを測定した。測定した感光体11の表面11sの表面粗さRzを表3に示す。
【0275】
【表3】
【0276】
(2)電荷輸送層用塗布液の降伏値
上述した方法により、電荷輸送層用塗布液の降伏値を測定した。測定した電荷輸送層用塗布液の降伏値を表3に示す。
【0277】
(3)ビッカース硬度の測定
上述した方法により、感光体11のビッカース硬度を測定した。測定した感光体11のビッカース硬度を表3に示す。
【0278】
(4)10μm以上の定方向接線径を有する異物の有無の確認及び当該異物の定方向接線径の測定
上述した方法により、感光層61中の、10μm以上の定方向接線径を有する異物の有無を確認した。また、当該異物の定方向接線径を測定した。確認した異物の有無及び測定した当該異物の定方向接線径を表3に示す。
【0279】
(5)画像形成装置の特性
表1に示される感光体の製造方法又は比較製造方法により製造された感光体11を、試験用に改造したデジタル複写機のユニットに装着し、当該ユニットに現像器14を取り付け、クリーナに備えられるクリーニングブレード31が感光体11に接する圧力すなわちクリーニングブレード圧を21gf/cm(2.05×10-1N/cm:初期線圧)に調整した。デジタル複写機としては、シャープ株式会社製のMX-4151を使用した。また、温度25℃、相対湿度8%の環境下において30万枚の記録紙に文字テストチャートを印刷することにより、耐刷試験を行った。また、耐刷性、耐クリーニング性及び耐クラック性の判定を行い、総合評価を行った。文字テストチャートとしては、ISO19752に準拠する文字テストチャートを使用した。
【0280】
[耐刷性の判定]
耐刷性を判定する際には、膜厚測定装置により、耐刷試験を開始した時及び20万枚の記録紙に文字テストチャートを印刷した後の感光層61の厚さを測定した。膜厚測定装置としては、フィルメトリックス株式会社社製のF-20-EXRを使用した。また、耐刷試験を開始した時の感光層61の厚さと20万枚の記録紙に文字テストチャートを印刷した後の感光層61の厚さとの差から、感光体11のドラムの10万回転あたりの削れ量を求めた。また、求めた削れ量から耐刷性を判定した。
【0281】
耐刷性の判定は、削れ量が大きくなるほど耐刷性が悪くなるように行った。
【0282】
具体的には、削れ量が0.50μmより小さい場合は、耐刷性を大変良い(VG)と判定した。この場合は、ロングライフを要求される複合機又はプリンタにおいても感光体11を問題なく使用することができる。
【0283】
また、削れ量が0.50μm以上であるが0.70μmより小さい場合は、耐刷性を良い(G)と判定した。この場合は、削れ量がやや大きいがロングライフを要求される複合機及びプリンタ以外においては感光体11を問題なく使用することができる。
【0284】
また、削れ量が0.70μm以上であるが0.85μmより小さい場合は、耐刷性を悪くない(NB;Not Bad)と判定した。この場合は、削れ量が大きいが安価な複合機又はプリンタにおいて感光体11を問題なく使用することができる。
【0285】
また、削れ量が0.85μm以上である場合は、耐刷性を悪い(B)と判定した。この場合は、削れ量が大きく実使用上の問題が生じる。
【0286】
求めた削れ量及び判定した耐刷性を表3に示す。
【0287】
[耐クリーニング性]
耐クリーニング性は、耐刷試験を終了した後の感光体11のクリーニング不良発生レベルを確認するために判定した。耐クリーニング性を判定する際には、30万枚の記録紙に文字テストチャートを印刷した後の感光体11をデジタル複写機に装着した。また、100%濃度の未転写画像をA4用紙に1枚転写し、その直後にデジタル複写機を強制的に停止させ、感光体11の表面11sを目視で観察して発生したクリーニング不良の本数を数えた。また、クリーニング不良の本数から耐クリーニング性を判定した。
【0288】
クリーニング不良が発生しなかった場合は、耐クリーニング性を大変良い(VG)と判定した。
【0289】
また、クリーニング不良の本数が1本又は2本である場合は、耐クリーニング性を良い(G)と判定した。この場合は、高画質を要求される複合機又はプリンタにおいても感光体11を問題なく使用することができる。
【0290】
また、クリーニング不良の本数が3本から5本である場合は、耐クリーニング性を悪くない(NB)と判定した。この場合は、安価な複合機又はプリンタにおいて感光体11を問題なく使用することができる。
【0291】
また、クリーニング不良の本数が6本以上である場合は、耐クリーニング性を悪い(B)と判定した。この場合は、実使用上の問題が生じる。
【0292】
判定した耐クリーニング性を表3に示す。
【0293】
[耐クラック性]
耐クラック性は、感光体11のクラック不良発生レベルを確認するために判定した。耐クラック性を判定する際には、耐刷試験を行っている間に記録紙に印刷された画像を確認した。また、画像にクラックが発生しているか否かを調べた。また、画像にクラックが発生していた場合は、何枚目の記録紙に印刷された画像にクラックが発生していたのかを特定した。また、耐刷試験を終了した後に感光体11の表面にクラックが発生しているか否かを調べた。
【0294】
耐刷試験を終了するまで画像にクラックが発生せず、耐刷試験を終了した後に感光体11の表面にクラックが発生していなかった場合は、耐クラック性を大変良い(VG)と判定した。
【0295】
また、耐刷試験を終了するまで画像にクラックが発生せず、耐刷試験を終了した後に感光体11の表面にクラックが発生していた場合は、耐クラック性を良い(G)と判定した。
【0296】
また、耐刷試験を終了するまでに画像にクラックが発生していた場合は、耐クラック性を悪い(B)と判定した。
【0297】
判定した耐クラック性を表3に示す。
【0298】
[総合評価]
全部の項目が大変良い(VG)と判定された場合は、総合評価を大変良い(VG)と判定した。この場合は、ロングライフ及び高画質を要求される複合機又はプリンタにおいても感光体11を問題なく使用することができる。
【0299】
また、全部又は一部の項目が良い(G)と判定されたが全部の項目が良い(G)以上と判定された場合は、総合評価を良い(G)と判定した。この場合は、ロングライフ及び高画質を要求される複合機及びプリンタ以外においては感光体11を問題なく使用することができる。
【0300】
また、全部又は一部の項目が悪くない(NB)と判定されたが全部の項目が悪くない(NB)以上と判定された場合は、総合評価を悪くない(NB)と判定した。この場合は、安価な複合機又はプリンタにおいて感光体11を問題なく使用することができる。
【0301】
また、全部又は一部の項目が悪い(B)と判定された場合は、総合評価を悪い(B)と判定した。判定した総合評価を表3に示す。
【0302】
表1、表2及び表3からは、下記のことを理解することができる。
【0303】
電荷輸送層54中の無機微粒子71の含有量が7質量%以上25質量%以下であり、無機微粒子71の平均一次粒子径が30nm以下であり、電荷輸送層54の表面54sの表面粗さRzが0.1μm以上0.5μm以下であり、トナー粒子81が第1の外添剤101を備え、第1の外添剤101が水酸化アルミニウム及びシリカを含む微粉体の表面をシラン処理したものを含む実施例1-11においては、トナー粒子81が第1の外添剤101を備えない比較例1-2、電荷輸送層54中のシリカ粒子の含有量が7質量%以上25質量%以下でない比較例3-4、シリカ粒子の平均一次粒子径が30nm以下でない比較例5、電荷輸送層54の表面54sの表面粗さRzが0.1μm以上0.5μm以下でない比較例2、3、5及び6と比較して、耐刷性を高くすることができ、フィルミングの発生しやすさに起因して低くなる耐クリーニング性を高くすることができ、耐クラック性を高くすることができる。これは、第1の外添剤101が水酸化アルミニウムを含む微粉体本体121を備えることにより、疎水化部122が微粉体本体121の表面に強固に固定されてトナー粒子81の表面の安定性が高くなることによるものと考えられる。また、実施例1-11においては、電荷輸送層54中にシリカ粒子を分散させて電荷輸送層54の表面の凹凸形状を制御することにより、第1の外添剤101、第2の外添剤102及び第3の外添剤103が感光体11の表面11sに付着することを抑制することができ、耐フィルミング性を高くすることができ、長期間に渡って安定した画像を形成することができる。
【0304】
また、電荷輸送層54中に分散させられる無機微粒子71がシリカを含む微粒子の表面をジメチルジクロロシラン又はヘキサメチルジシラザンによりシラン処理したものを含む実施例1及び2は、電荷輸送層54中に分散させられる無機微粒子71がシリカを含む微粒子の表面をジメチルジクロロシラン又はヘキサメチルジシラザンによりシラン処理したものを含まない実施例3及び10と比較して、電荷輸送層54中に無機微粒子71を良好に分散することができ、感光体11の表面11sの表面粗さRzを0.2μm程度に抑制することができ、耐クラック性を高くすることができる。電荷輸送層54中に無機微粒子71を安定して分散することにより感光体11の表面11sの表面粗さRzを0.2μm程度に小さくすることができるのは、感光体11の表面11sの表面粗さRzは、電荷輸送層54における無機微粒子71の分散性の影響を受け、分散粒子径が大きくなった場合は大きくなり、分散粒子径が小さくなった場合は小さくなるためである。したがって、感光体11の表面11sの表面粗さRzが大きくなった場合は、分散されずに残った無機微粒子71の凝集体が電荷輸送層54中に多く存在する。この場合は、感光体11が長期間に渡って使用されたときに、当該凝集体の周辺に内部応力が集中し、当該凝集体から感光体11の表面に至るクラックが発生する可能性がある。特に、10μm以上の定方向接線径を有する凝集体が電荷輸送層54中に存在する場合は、当該凝集体を起点とするクラックが発生しやすい。このため、電荷輸送層54に無機微粒子71を良好に分散して無機微粒子71の凝集体の定方向接線径を小さくし、耐クラック性を高くすることが望まれる。
【0305】
電荷輸送層用塗布液の降伏値が50以上350以下である実施例1においては、電荷輸送層用塗布液の降伏値が50以上350以下でない実施例6、7、8及び10と比較して、電荷輸送層用塗布液中に無機微粒子71を良好に分散することができ、電荷輸送層54中に無機微粒子71を良好に分散することができ、耐刷性、耐クリーニング性及び耐クラック性が高くなる。しかし、電荷輸送層用塗布液の降伏値が350より大きくなった場合は、電荷輸送層用塗布液中に無機微粒子71を良好に分散することができない可能性があり、電荷輸送層54中に無機微粒子71を良好に分散することができない可能性があり、耐クリーニング性及び耐クラック性が低くなる可能性がある。電荷輸送層用塗布液の降伏値が50より小さくなった場合は、電荷輸送層用塗布液中の無機微粒子71の間の相互作用が小さくなる可能性があり、無機微粒子71を添加する効果が小さくなる可能性があり、耐刷性が低くなる可能性がある。
【0306】
無機微粒子71の含有量が上述した範囲内である場合は、せん断流動を大きくしたときに電荷輸送層用塗布液の粘度が低くなり、せん断流動を小さくしたときに電荷輸送層用塗布液の粘度が高くなるチキソトロピー性を電荷輸送層用塗布液に付与することができる。チキソトロピー性は、電荷輸送層用塗布液中に無機微粒子71により三次元網目構造が形成されることにより電荷輸送層用塗布液に付与される。その結果として、電荷輸送層用塗布液が降伏値を有するようになる。降伏値は、上述したキャッソンの式により算出される。降伏値は、電荷輸送層用塗布液中の無機微粒子71の分散性を評価する指標となる。
【0307】
図8は、パス数が互いに異なる実施例1、4及び5のキャッソンプロットを示すグラフである。
【0308】
図8においては、せん断速度の-1/2乗が横軸に取られており、粘度の1/2乗が縦軸にとられている。
【0309】
キャッソンプロットの傾きが大きいことは、電荷輸送層用塗布液の降伏値が大きいことを意味する。このため、キャッソンプロットの傾きが大きいことは、電荷輸送層用塗布液中の無機微粒子71の分散性が低いことを意味する。したがって、図8からは、実施例1、実施例4及び実施例5の順で、電荷輸送層用塗布液中の無機微粒子71の分散性が低くなることを理解することができる。
【0310】
感光体11のビッカース硬度が26N/mm以上32N/mm以下である実施例1においては、感光体11のビッカース硬度が26N/mm以上32N/mm以下でない実施例6及び7と比較して、耐刷性が高くなる。感光体11のビッカース硬度は、電荷輸送層54に含まれる無機微粒子71又はバインダ樹脂の含有量が大きくなった場合に大きくなる傾向を有する。また、感光体11のビッカース硬度は、電荷輸送層54中に無機微粒子71が良好に分散された場合に大きくなる傾向を有する。このため、感光体11のビッカース硬度は、耐刷性と相関を有する。そして、上述した感光体11とトナーとの組み合わせが採用された場合は、感光体11のビッカース硬度が上述した範囲より小さくなったときは、耐刷性が低くなる可能性がある。一方、感光体11のビッカース硬度が上述した範囲より大きくなった場合も、電荷輸送層54がもろくなり、耐刷性が低くなる可能性がある。
【0311】
トナー粒子81が小粒径シリカ粒子131を備える第2の外添剤102及び大粒径シリカ粒子132を備える第3の外添剤103を備え第2の外添剤102及び第3の外添剤103の含有量が最適範囲内である実施例1においては、耐刷性及び耐クリーニング性を高くすることができる。しかし、第3の外添剤103の含有量が最適範囲より多い実施例12においては、母粒子91の表面に付着しきれない大粒径シリカ粒子132が発生し、当該大粒径シリカ粒子132に起因するフィルミングが発生する。一方、第3の外添剤103の含有量が最適範囲より少ない実施例11及び14においては、小粒径シリカ粒子131の平均1次粒子径が微粉体111の平均1次粒子径より大きい場合等にトナーの流動性が低くなり、感光体11の表面11sに対するトナーの転写性が低くなる。これらのことから、第3の外添剤103の含有量は、個々の画像形成装置1において最適化されなければならない。
【0312】
本開示は、上記実施の形態に限定されるものではなく、上記実施の形態で示した構成と実質的に同一の構成、同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成で置き換えてもよい。
【符号の説明】
【0313】
1 画像形成装置、11 電子写真感光体(感光体)、11a 回転軸、11s 表面、11t 帯電表面、12 帯電器、13 露光器、14 現像器、15 転写器、16 クリーナ、17 分離機構、18 定着器、19 ハウジング、21 現像ローラ、22 ケーシング、31 クリーニングブレード、32 回収用ケーシング、41 加熱ローラ、42 加圧ローラ、51 導電性支持体、52 下引き層、53 電荷発生層、54 電荷輸送層、54s 表面、61 感光層、71 無機微粒子、81 トナー粒子、91 母粒子、101 第1の外添剤、102 第2の外添剤、103 第3の外添剤、111 微粉体、121 微粉体本体、122 疎水化部、131 小粒径シリカ粒子(第1のシリカ粒子)、132 大粒径シリカ粒子(第2のシリカ粒子)、141 微粒子本体、142 疎水化部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8