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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022181229
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】蓄電装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20221201BHJP
   H02H 7/18 20060101ALI20221201BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
H02J7/00 Y
H02J7/00 301E
H02H7/18
H01M10/48 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021088045
(22)【出願日】2021-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【弁理士】
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【弁理士】
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】影山 洋一
(72)【発明者】
【氏名】西中 大貴
(72)【発明者】
【氏名】畑田 裕介
(72)【発明者】
【氏名】井手 悠輔
(72)【発明者】
【氏名】鳥島 健太
【テーマコード(参考)】
5G053
5G503
5H030
【Fターム(参考)】
5G053AA16
5G053DA03
5G053EA06
5G053FA05
5G503EA08
5G503FA01
5H030AS11
5H030FF41
5H030FF42
5H030FF43
5H030FF44
(57)【要約】
【課題】蓄電部の破損や破裂の発生事前に察知し、蓄電部の破損や破裂を未然に防止する。
【解決手段】蓄電装置1は、蓄電部2と検出基板3と検出回路4と、を含む。検出基板3は、蓄電部2の第1主面2Aに対面する第1基板5と、第1主面2Aに対して第1基板5よりも近くに配置され、第1端子7と第2端子8とによって第1基板5に固定されて、第1端子7と第2端子8とを導通可能とする導体部9が設けられて蓄電部2が変形したときに第1主面2Aに接触可能な第1主面2Aに対面する第2基板と6、を有する。検出回路4は、第1端子7と第2端子8とに接続されて、第1端子7および第2端子8の電圧もしくは導体部9の抵抗値に基づいて導体部9の状態検出が可能であり、導体部9の異常を検出したときに蓄電部2が所定の劣化水準に達したと判定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁材料からなる外装体を有し、第1主面と第2主面とを有する板状の蓄電部と、
検出基板と、
前記検出基板に接続された検出回路と、
を備え、
前記検出基板は、
前記第1主面に対面する第1基板と、
前記第1主面に対して前記第1基板よりも近くに配置され、第1端子と第2端子とによって前記第1基板に固定されて、前記第1端子と前記第2端子とを導通可能とする導体部が設けられて前記蓄電部が変形したときに前記第1主面に接触可能な前記第1主面に対面する第2基板と、を有し、
前記検出回路は、
前記第1端子と前記第2端子とに接続されて、前記第1端子および前記第2端子の電圧値もしくは前記導体部の抵抗値に基づいて前記導体部の状態検出が可能であり、
前記導体部の異常を検出したときに前記蓄電部が所定の劣化水準に達したと判定する、
蓄電装置。
【請求項2】
前記検出基板と前記蓄電部とを保持する保持体をさらに備えた、
請求項1に記載の蓄電装置。
【請求項3】
前記検出回路は、
前記第1端子から前記第2端子へ試験電流を供給して前記第1端子と前記第2端子との電位差を検出することで前記導体部の状態検出が可能であり、前記電位差が所定の範囲外となったことを検出したときに、前記蓄電部に異常が発生したと判定する、
請求項1に記載の蓄電装置。
【請求項4】
前記検出回路は、
前記導体部の抵抗値の検出が可能であり、前記抵抗値が所定の範囲外となったことを検出したときに、前記蓄電部に異常が発生したと判定する、
請求項1に記載の蓄電装置。
【請求項5】
前記検出回路は、
前記第1端子に印加されている所定の電圧に対して、前記第2端子で検出された電圧が閾値以下であるときに、前記蓄電部に異常が発生したと判定する、
請求項1に記載の蓄電装置。
【請求項6】
前記第2基板が有する第2抗折力は前記第1基板が有する第1抗折力よりも小さな値を有する、
請求項1に記載の蓄電装置。
【請求項7】
前記第2基板は前記導体部を横切る方向の溝部を有する、
請求項1に記載の蓄電装置。
【請求項8】
前記導体部は前記第2基板の第1面に設けられ、前記溝部は第2基板の前記第1面の反対面である第2面に設けられた、
請求項7に記載の蓄電装置。
【請求項9】
前記第2基板と前記第1主面との間に配置された第3基板をさらに備え、
前記第2基板は前記蓄電部が変形したときに前記第3基板を介して前記第1面に接触可能であり、
前記第3基板は、前記第3基板から前記第2基板へ向かって突出する凸部を有する、
請求項1に記載の蓄電装置。
【請求項10】
前記第1基板は前記第2基板に対面した位置に開口部を有する、
請求項1に記載の蓄電装置。
【請求項11】
前記第2基板の外周形状は前記開口部よりも小さい、
請求項9に記載の蓄電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種電気機器に使用される蓄電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
以下、従来の蓄電装置について図面を用いて説明する。従来の蓄電装置では、蓄電部における充放電時の充放電回路における電流値や蓄電部の電圧値を検出することで電流値や電圧値の関係などから蓄電部の内部抵抗の値を推定し、劣化進行に伴って蓄電部の内部抵抗の値が上昇する特性を用いて蓄電部における劣化進行に対する診断を実行していた。
【0003】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2018/139213号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の蓄電装置では特に蓄電部がフィルムなどの容易に変形が生じる外装体によって密封された構造である場合は、蓄電部の劣化が進行すると蓄電容量の低下や内部抵抗の上昇が生じるとともに、蓄電部の内部で発生するガスによって蓄電部が膨張や変形を起こし、蓄電部の外装体が破損に至った場合は蓄電部に用いられている電解材質が漏れ出すことで他の電気機器に悪影響を及ぼす可能性があるという課題を有するものであった。
【0006】
そこで本発明は、蓄電部の外装体の破損を事前に検知して未然に防ぐことを容易に可能とすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そして、この目的を達成するために本発明は、絶縁材料からなる外装体を有し、第1主面と第2主面とを有する板状の蓄電部と、検出基板と、前記検出基板に接続された検出回路と、を備え、前記検出基板は、前記第1主面に対面する第1基板と、前記第1主面に対して前記第1基板よりも近くに配置され、第1端子と第2端子とによって前記第1基板に固定されて、前記第1端子と前記第2端子とを導通可能とする導体部が設けられて前記蓄電部が変形したときに前記第1面に接触可能な前記第1主面に対面する第2基板と、を有し、前記検出回路は、前記第1端子と前記第2端子とに接続されて、前記第1端子および前記第2端子の電圧値もしくは前記導体部の抵抗値に基づいて前記導体部の状態検出が可能であり、前記導体部の異常を検出したときに前記蓄電部が所定の劣化水準に達したと判定する、ことを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、蓄電装置は、蓄電部が劣化に伴い大幅な変形や膨張を起こすと容易に変形や膨張を検出し、劣化に関する警告を発信することができる。これにより蓄電装置は蓄電部の破損や破裂の発生事前に察知し、蓄電部の破損や破裂およびこれに伴う電解材質の漏出に起因した他のデバイスへの悪影響を未然に防止することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施の形態における蓄電装置の構成を示す第1概要側面図
図2】本発明の実施の形態における蓄電装置の構成の一部を示す概要上面図
図3】本発明の実施の形態における蓄電装置の構成を示す第2概要側面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0011】
(実施の形態)
図1は本発明の実施の形態における蓄電装置1の構成を示す第1概要側面図であり、図2は本発明の実施の形態における蓄電装置1の構成の一部を示す概要上面図である。
【0012】
蓄電装置1は、蓄電部2と検出基板3と検出回路4とを含む。検出基板3は第1基板5と第2基板6とを有する。また、検出基板3は第1端子7と第2端子8を有する。さらに第2基板6は導体部9を有する。
【0013】
ここで、蓄電部2は絶縁材料からなる外装体10を有したうえで板状の形状を有していて、第1主面2Aと第1主面2Aの反対面に相当する第2主面2Bとを有する。そして、検出回路4は検出基板3に接続されている。検出回路4は検出基板3に実装されていても、あるいは検出基板3とは異なる基板(図示せず)に設けられていてもよい。
【0014】
検出基板3はともに第1主面2Aに対面する、第1基板5と第2基板6とを有する。ここで第2基板6は第1基板5よりも第1主面2Aに近い位置に配置されている。また、第2基板6は、第1端子7と第2端子8とによって第1基板5に固定されている。またさらに、第2基板6に設けられた導体部9は第1端子7と第2端子8とを導通可能としている。そして、第2基板6は蓄電部2が変形したときに第1主面2Aに接触可能となっている。
【0015】
ここで検出回路4は、検出基板3が有する第1端子7と第2端子8とに接続されている。そして検出回路4は、第1端子7と第2端子8との電位差Vもしくは導体部9の抵抗値Rに基づいて導体部9の状態検出が可能であり、検出回路4は導体部9の異常を検出したときに蓄電部2が所定の劣化水準に達したと判定する。
【0016】
以上の構成および動作により、蓄電部2が劣化の進行に伴う変形や膨張に伴って、第1主面2Aが第2基板6に接触し、さらには第1主面2Aが第2基板6を押圧する状態となる。そして、第1主面2Aが第2基板6を押圧し続けることで第2基板6が変形や破壊を起こし、第2基板6に設けられた導体部9に断線などを生じさせることとなる。
【0017】
これにより、検出回路4は、第1端子7と第2端子8のそれぞれの電圧値や、第1端子7と第2端子8との電位差Vもしくは導体部9の抵抗値Rに基づいた導体部9の状態検出を通じて、蓄電部2の変形や膨張の度合いに相当する蓄電部2の劣化状態を判定することが可能となる。そして蓄電装置1は、蓄電部2の劣化が所定水準を超越したと判断すると、劣化に関する警告を検出回路4から蓄電装置1の外部などに向けて発信することもできる。
【0018】
この結果として、蓄電装置1は蓄電部2の破損や破裂の発生事前に察知し、蓄電部2の破損や破裂およびこれに伴う電解材質の漏出に起因した他のデバイス(図示せず)への悪影響を未然に防止することができるものである。
【0019】
以下で、蓄電装置1の詳細について図1図2および図3の本発明の実施の形態における蓄電装置1の構成を示す第2概要側面図を用いて説明する。
【0020】
先にも述べたように、蓄電装置1は、蓄電部2と検出基板3と検出回路4とを含む。検出基板3は第1基板5と第2基板6とを有する。また、検出基板3は第1端子7と第2端子8を有する。さらに第2基板6は導体部9を有する。
【0021】
ここで蓄電部2は、フィルムなどの絶縁材料からなる外装体10によってラミネート加工やパウチ加工により複数の電極板(図示せず)や電解液(図示せず)をはじめとする蓄電要素などが包含されていて、概ね板状の形状を有してればよい。そして上記板状の形状において変形や膨張が最も顕著に現れる大きな表面積の領域に相当する2つの面を、第1主面2Aと第1主面2Aの反対面に相当する第2主面2Bとしている。
【0022】
検出回路4は検出基板3に接続されている。検出回路4は検出基板3に実装されていても、あるいは検出基板3とは異なる基板(図示せず)に設けられていてもよい。検出回路4は電圧検出を実行可能な電圧検出部や、所定の電流や電圧を供給可能な電源部や、データの保存や演算実行が可能な演算部などの各機能部を有し、これらを総称して検出回路4が構成されていてもよい。
【0023】
検出基板3は、ともに第1主面2Aに対面する、第1基板5と第2基板6とを有する。ここで第2基板6は第1基板5よりも第1主面2Aに近い位置に配置されている。いいかえると、蓄電部2の劣化によって当初は概ね平面状であった第1主面2Aが、蓄電部2から検出基板3へと向かう方向に凸形状を有して変形、膨張を起こすことで、第1主面2Aは第1基板5ではなく少なくとも先に第2基板6に接触し始める。さらに蓄電部2の劣化が進行し、変形や膨張が大きく顕著になるにつれ第1主面2Aは第2基板6を押圧し始め、その押圧力は漸増する。そして第1主面2Aが第2基板6を押圧する力が限界値を超えるとことで第2基板6が変形や割れによる破壊を起こし、第2基板6に設けられた導体部9に断線などを生じさせることとなる。ここで、特に第2基板6が割れることによって破壊を起こし、第2基板6に設けられた導体部9が断線する水準としては、例えば以下のように設定すればよい。
【0024】
蓄電部2の第1主面2Aにおける、ほとんど劣化していない初期状態と蓄電部2に破裂が生じる水準との一般的な寸法差をT1とし、第1主面2Aにおける、ほとんど劣化していない初期状態と第2基板6が割れて導体部9に断線が生じる水準の寸法差をT2とすると、T2はT1よりも小さな値とすればよい。これにより、蓄電部2に破裂が生じる前に導体部9に断線が生じる状態となる。いいかえると、先に述べた蓄電部2の劣化に伴い第1主面2Aが第2基板6を押圧する力が限界値を超える第1主面2Aの膨張の水準がT2の寸法差に相当する。
【0025】
ここで、蓄電部2の変形や膨張によって第1主面2Aは第2基板6を押圧し始め、その押圧力が漸増する関係を正しく反映させるために、検出基板3と蓄電部2とを保持する保持体がもうけられていることが望ましい。保持体11は単一の構造物であっても複数の要素で構成された構造物であってもよい。また保持体11は枠状の構造物であっても筐体状の構造物であってもよい。
【0026】
また、第2基板6は、第1端子7と第2端子8とによって第1基板5に固定されている。ここで第1端子7と第2端子8とは、第2基板6を第1基板5から第1主面2Aにむかって持ち上げるように、第2基板6と第1基板5とを接続しているとよい。またさらに、第2基板6に設けられた導体部9は第1端子7と第2端子8とを導通可能としている。ここで導体部9は単一の導体として設けられていても、あるいは導体に抵抗体(図示せず)が接続された電気回路であってもよい。
【0027】
ここで検出回路4は、検出基板3が有する第1端子7と第2端子8とに接続されている。そして検出回路4は、第1端子7と第2端子8のそれぞれの電圧値や、第1端子7と第2端子8との電位差Vもしくは導体部9の抵抗値Rに基づいて導体部9の状態検出が可能であり、検出回路4は導体部9の異常を検出したときに蓄電部2が所定の劣化水準に達したと判定する。
【0028】
例えば蓄電装置1が車両12に搭載されているとした場合、車両12が搭乗者によって起動の指示を受けたと同時に、車両制御装置13から発せられる起動信号に応じて検出回路4は起動を始める。次に検出回路4は第1端子7から第2端子8に所定の試験電流Iを供給する。第2基板6が正常な時の第1端子7と第2端子8との間の抵抗値Rは予め設定された値であり、第2基板6が割れていない状態の第1主面2Aの変形が小さな正常な時の第1端子7と第2端子8との間の電位差Vの値は抵抗値Rと試験電流Iとの積となる。そして電位差Vの値が所定範囲から外れたときに第2基板6が割れて導体部9が切断されたあるいは切断に近い状態として蓄電部2の劣化水準が限界値に達したあるいは限界値を超越したと検出回路4が判定するとよい。
【0029】
あるいは、導体部9の抵抗値Rが非常に小さな値である場合などでは、検出回路4は、第1端子7に印加されている所定の電圧V1に対して、第2端子8で検出された電圧V2が閾値以下であるときに、蓄電部2に異常が発生したと判定してもよい。
【0030】
いいかえると、検出回路4は第1端子7と第2端子8との双方の電圧を検出し、ここで検出回路4が高電位側の第1端子7に電圧V1を印加あるいは第1端子7に印加されている電圧V1を検出し、そのとき低電位側の第2端子8の電圧V2が閾値以下の値である場合に、第2基板6が割れて導体部9が切断されたあるいは切断に近い状態として蓄電部2の劣化水準が限界値に達したあるいは限界値を超越したと検出回路4が判定するとよい。
【0031】
またあるいは、検出回路4は導体部9と導体部9に直列に接続した分圧抵抗(図示せず)との両端に試験電圧VEを印加し、第1端子7と第2端子8との電位差Vを検出する。第2基板6が正常な時の第1端子7と第2端子8との間の抵抗値Rは予め設定された値であり、第2基板6が割れていない状態の第1主面2Aの変形が小さな正常な時の第1端子7と第2端子8との間の電位差Vの値は分圧抵抗(図示せず)の値に応じて得られる。そして、電位差Vの値が所定範囲から外れたときに第2基板6が割れて導体部9が切断されたあるいは切断に近い状態として蓄電部2の劣化水準が限界値に達したあるいは限界値を超越したと検出回路4が判定するとよい。
【0032】
さらに、第1端子7と第2端子8との間の抵抗値Rが、試験電流Iと第1端子7と第2端子8との電位差Vとから演算で得られ、予め与えられていた正常値の所定範囲から外れたときに第2基板6が割れて導体部9が切断されたあるいは切断に近い状態として蓄電部2の劣化水準が限界値に達したあるいは限界値を超越したと検出回路4が判定するとよい。
【0033】
以上のように蓄電装置1では、劣化による蓄電部2の変形、第2基板6の破壊、検出回路4による導体部9の断線検出の順により蓄電部2の劣化水準の限界が検出される。ここで第1基板5と第2基板6とは共に概ね平板状で、平行にあるいは層状に配置されている。そして、第2基板6は蓄電部2からの応力を受けた場合、第2基板6とは第1端子7,第2端子8によって結合された第1基板5にも応力が生じる。このとき、第1基板5が応力を吸収しないで蓄電部2から加えられた力で第2基板6が少なくとも第1基板5よりも先に破壊されるように、第2基板6が有する第2抗折力は第1基板5が有する第1抗折力よりも小さな値として設定されるとよい。
【0034】
これにより、蓄電部2の劣化で生じた過剰な変形や膨張に伴う押圧力は、第1基板5には吸収されにくくなり第2基板6を的確に破壊して導体部9を断線させることが可能となる。例えば第2基板6はセラミック基板などの割れ易い材質によって構成された基板とし、第1基板5は樹脂基板や絶縁金属基板などの割れ難い材質によって構成された基板とすればよい。
【0035】
あるいは、第1基板5が応力を吸収しないで蓄電部2から加えられた力で第2基板6が少なくとも第1基板5よりも先に破壊されるために機械的に脆弱な部分として、第2基板6は溝部14を有してもよい。ここで溝部14は導体部9を横切る方向に設けられているとよい。これにより、第2基板6が破壊される際には非常に高い確率で導体部9を断線させることが可能となり、蓄電装置1における蓄電部2の状態検出に関する動作の信頼性が向上する。
【0036】
さらには、導体部9は導体部9の一部に波状の曲線部を有したうえで溝部14は導体部9の曲線部を複数箇所で横切るように設けられるとよい。これにより、第2基板6が破壊される際にはさらに非常に高い確率で導体部9を断線させることが可能となる。
【0037】
またこの場合、導体部9は第2基板6の第1面6Aに設けられ、溝部14は第2基板6の第1面6Aの反対面である第2面6Bに設けられるとよい。これにより、導体部9は比較のうえで平坦度の高い第1面6Aに設けられるので、第2基板6が破壊状態でない正常時において導体部9の抵抗値を安定させやすく、蓄電装置1の動作信頼性の向上が可能となる。
【0038】
なお、溝部14が第2基板6の第2面6Bに設けられた場合は、蓄電部2からの押圧力は第2基板6の平坦面である第1面6Aに安定的に作用することができる。一方で、溝部14が第2基板6の第1面6Aに設けられた場合は、導体部9が蓄電部2に接触することが無く、導体部9における絶縁性についての信頼性が向上する。
【0039】
蓄電装置1には、第2基板6と蓄電部2の第1主面2Aとの間に第3基板15がさらに設けられてよい。ここで、第2基板6は蓄電部2が変形したときに第3基板15を介して第1主面2Aに接触可能であり、第3基板15は、第3基板15から第2基板6へ向かって突出する凸部16を有する。
【0040】
これにより、蓄電部2の第1主面2Aに劣化による変形や膨張を生じる際に、変形や膨張が第1主面2Aの全面にわたって連続的に起こり、かつ、第1主面中央2ACで最も変形量が大きくなる場合であっても、あるいは、変形や膨張が第1主面2Aの全面にわたって連続的に起こらず、かつ、第1主面中央2ACで最も変形量が大きくならない場合であっても、第3基板15の凸部16は第2基板6に対して適切に蓄電部2の変形や膨張の状態を押圧力として伝えることができる。ここで特に第3基板15は、蓄電部2の第1主面2Aよりも弾性が小さく変形が容易な材料や形状であることがよい。また凸部16は第2基板6と同等の弾性を有したうえで第2基板6よりも高い抗折力を有するとよい。
【0041】
また、第1基板5は第2基板6に対面した位置に開口部17を有してもよい。これにより、第1基板5と第2基板6とが接近した位置関係で積層状態として設けられた場合であって第2基板6に撓みが生じた状態であっても、第2基板6と第1基板5とは接触することを回避でき、第1主面2Aが第2基板6を押圧する力が限界値を超えるとことで第2基板6に生じる破壊は適切に実行される。
【0042】
また、第2基板6の外周形状は開口部17の形状よりも小さくするとよい。これにより第2基板6と第1基板5とは完全な積層状態でなく、第2基板6の一部が第1基板5の開口部17に埋没する位置関係とすることができる。これにより、蓄電装置1を薄型化や小型化することが可能となる。
【0043】
そして蓄電装置1は、蓄電部2の劣化が所定水準を超越したと判断すると、劣化に関する警告を検出回路4から蓄電装置1の外部である例えば車両12の車両制御装置13などに向けて発信することもできる。
【0044】
これにより蓄電装置1は蓄電部2の破損や破裂の発生事前に察知し、車両制御装置13を通じて車両12の搭乗者に認識させることができ、蓄電部2の破損や破裂およびこれに伴う電解材質の漏出に起因した他のデバイス(図示せず)への悪影響を未然に防止することができる。
【0045】
第1主面2Aと第2主面2Bとで蓄電部2の劣化に伴う変形の度合いが異なる場合は、蓄電部2の劣化に伴う変形の度合い大きい方の面を第1主面2Aとして設定するとよい。これにより、劣化の進行が早い段階で検知可能となり、安全性が向上する。
【0046】
また、第1基板5への第2基板6への固定は第1端子7と第2端子8とに加えて、第2基板6における第1端子7が設けられている同一辺に第1ダミー端子7Aと、第2基板6における第2端子8が設けられている同一辺に第2ダミー端子8Aが設けられるとよい。これにより、第1基板5と第2基板6との位置関係が安定し、蓄電装置1の信頼性は向上する。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の蓄電装置は、蓄電部の外装体の破損を事前に検知して未然に防ぐことができるという効果を有し、各種電気機器において有用である。
【符号の説明】
【0048】
1 蓄電装置
2 蓄電部
2A 第1主面
2B 第2主面
3 検出基板
4 検出回路
5 第1基板
6 第2基板
6A 第1面
6B 第2面
7 第1端子
7A 第1ダミー端子
8 第2端子
8A 第2ダミー端子
9 導体部
10 外装体
11 保持体
12 車両
13 車両制御装置
14 溝部
15 第3基板
16 凸部
17 開口部
図1
図2
図3