(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022181259
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】計測装置および計測方法
(51)【国際特許分類】
G01R 19/00 20060101AFI20221201BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
G01R19/00 B
H01M10/48 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021088092
(22)【出願日】2021-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000237592
【氏名又は名称】株式会社デンソーテン
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉村 総一郎
(72)【発明者】
【氏名】梶 信之
(72)【発明者】
【氏名】太田 雄一
(72)【発明者】
【氏名】高橋 洸平
(72)【発明者】
【氏名】篠原 俊樹
【テーマコード(参考)】
2G035
5H030
【Fターム(参考)】
2G035AA00
2G035AB03
2G035AC01
2G035AC02
2G035AD26
2G035AD28
2G035AD49
2G035AD65
5H030AA10
5H030AS08
5H030FF41
5H030FF42
5H030FF43
5H030FF44
5H030FF52
(57)【要約】
【課題】2つの計測部によって計測される計測値間の誤差を抑制することができる計測装置および計測方法を提供する。
【解決手段】実施形態の一態様に係る計測装置においては、第1計測部と、第2計測部と、計測処理部とを備える。第1計測部は、第1計測期間の間、二次電池の電流を計測する。第2計測部は、第1計測期間より短い第2計測期間の間、二次電池の電流および電圧の少なくともいずれかを計測する。計測処理部は、第1計測部による計測が行われる第1計測期間の間に、第2計測部による計測が複数回行われ、当該複数回の計測による計測値の平均値を第2計測部の計測結果とする。
【選択図】
図1D
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1計測期間の間、二次電池の電流を計測する第1計測部と、
前記第1計測期間より短い第2計測期間の間、前記二次電池の電流および電圧の少なくともいずれかを計測する第2計測部と、
前記第1計測部による計測が行われる前記第1計測期間の間に、前記第2計測部による計測が複数回行われ、当該複数回の計測による計測値の平均値を前記第2計測部の計測結果とする計測処理部と
を備えることを特徴とする計測装置。
【請求項2】
前記第1計測部による計測が行われる前記第1計測期間のうちの第1タイミングと、前記第2計測部による計測が行われる前記第2計測期間のうちの第2タイミングとが重なるように、前記第2計測部の計測処理を含む所定処理を開始させるまでの待ち時間を設定する設定部
を備えることを特徴とする請求項1に記載の計測装置。
【請求項3】
前記第1タイミングは、
前記第1計測部による計測が開始されるタイミングであること
を特徴とする請求項2に記載の計測装置。
【請求項4】
前記第2タイミングは、
前記第2計測部による前記複数回の計測のうち初回の計測が開始されるタイミングであること
を特徴とする請求項2または3に記載の計測装置。
【請求項5】
前記第1タイミングは、
前記第1計測部による計測が終了するタイミングであること
を特徴とする請求項2に記載の計測装置。
【請求項6】
前記第2タイミングは、
前記第2計測部による前記複数回の計測のうち最後の計測が終了するタイミングであること
を特徴とする請求項2または5に記載の計測装置。
【請求項7】
第1計測期間の間、二次電池の電流を計測する第1計測工程と、
前記第1計測期間より短い第2計測期間の間、前記二次電池の電流および電圧の少なくともいずれかを計測する第2計測工程と、
前記第1計測工程による計測が行われる前記第1計測期間の間に、前記第2計測工程による計測が複数回行われ、当該複数回の計測による計測値の平均値を前記第2計測工程の計測結果とする計測処理工程と
を含むことを特徴とする計測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計測装置および計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、HEV(Hybrid Electric Vehicle)やEV(Electric Vehicle)に搭載されるリチウムイオン二次電池(LIB:Lithium-Ion rechargeable Battery)の電流や電圧を計測する技術が種々提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記した電池の電流などは、2つの計測部によって計測されることがある。しかしながら、例えば電流などが比較的大きく変動するような状態の場合、2つの計測部によって計測された計測値の間で誤差が増大するおそれがあり、改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、2つの計測部によって計測される計測値間の誤差を抑制することができる計測装置および計測方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、計測装置において、第1計測部と、第2計測部と、計測処理部とを備える。第1計測部は、第1計測期間の間、二次電池の電流を計測する。第2計測部は、前記第1計測期間より短い第2計測期間の間、前記二次電池の電流および電圧の少なくともいずれかを計測する。計測処理部は、前記第1計測部による計測が行われる前記第1計測期間の間に、前記第2計測部による計測が複数回行われ、当該複数回の計測による計測値の平均値を前記第2計測部の計測結果とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、2つの計測部によって計測される計測値間の誤差を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1A】
図1Aは、実施形態に係る計測方法の概要を示す図である。
【
図1B】
図1Bは、実施形態に係る計測方法の概要を示す図である。
【
図1C】
図1Cは、比較例に係る計測方法を説明する図である。
【
図1D】
図1Dは、実施形態に係る計測方法の概要を示す図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係るバッテリ管理ECUを含む車載システムの構成例を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、電流監視IC、電池監視ICの処理や待ち時間等を説明するためのタイミングチャートである。
【
図4】
図4は、バッテリ管理ECUが実行する処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、本願の開示する計測装置および計測方法の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0010】
<1.計測装置による計測方法の概要>
以下では先ず、実施形態に係る計測装置による計測方法の概要などについて
図1A~
図1Dを参照して説明する。
図1A、
図1Bおよび
図1Dは、実施形態に係る計測方法の概要を示す図である。
図1Cは、本実施形態の比較例に係る計測方法を説明する図である。
【0011】
実施形態に係る計測方法は、例えば車両100に搭載されるバッテリ管理ECU(Electronic Control Unit)10によって実行される。なお、バッテリ管理ECU10は、計測装置の一例である。また、以下では、バッテリ管理ECU10が、車両100に搭載されるリチウムイオン二次電池(以下、LIB20と記載する)の状態を管理する場合を一例に挙げて説明するが、バッテリ管理ECU10による管理の対象は、車両100に搭載されるLIBに限定されず、任意の機器に搭載されるLIBであってもよい。
【0012】
図1Aに示すように、自動車などの車両100には、車載システム1が搭載される。車載システム1は、バッテリ管理ECU10と、LIB20と、上位ECU30とを備える。
【0013】
バッテリ管理ECU10、上位ECU30、および、図示しない他のECUは、CAN(Controller Area Network)等のネットワークNにより相互通信可能に接続され、それぞれ制御プログラムを実行することによって、それぞれに対応する制御対象を電子制御する。
【0014】
バッテリ管理ECU10は、制御対象としてLIB20を電子制御する。また、上位ECU30は、バッテリ管理ECU10の上位のECUであり、例えば走行する車両100の車両状況を随時取得して、かかる車両状況に応じてバッテリ管理ECU10等を制御する。
【0015】
LIB20は、例えば複数のセルを含み、充電または放電可能な二次電池(バッテリ)である。なお、LIB20は、二次電池の一例である。
【0016】
図1Bに示すように、バッテリ管理ECU10は、電流監視IC(Integrated Circuit)11と、電池監視IC12と、マイコン13とを備える。電流監視IC11は、LIB20の電流を計測して監視する。なお、電流監視IC11は、第1計測部の一例である。
【0017】
電池監視IC12は、LIB20の電流および電圧(詳しくはセルの電圧)を計測して監視する。なお、電池監視IC12は、LIB20の電流および電圧のいずれかを計測するように構成されてもよい。すなわち、電池監視IC12は、LIB20の電流および電圧の少なくともいずれかを計測するように構成される。以下では、電池監視IC12が、LIB20の電流を計測する場合を例に挙げて説明を続ける。なお、電池監視IC12は、第2計測部の一例である。
【0018】
マイコン13は、電流監視IC11および電池監視IC12の監視結果や、上位ECU30から取得した車両状況等に基づいて、LIB20の充放電制御を実行することができる。また、マイコン13には、電流監視IC11によって計測された計測値を示す情報および電池監視IC12によって計測された計測値を示す情報が入力され、入力された情報を上位ECU30へ通知することができる。
【0019】
なお、電流監視IC11とマイコン13との間、および、電池監視IC12とマイコン13との間において、データは、例えばSPI(Serial Peripheral Interface)によるシリアル通信によりやり取りされる。
【0020】
ところで、従来技術にあっては、LIBの電流を検出する電流センサから出力されるアナログ電流値をマイコンのADコンバータでAD変換して、電流を計測するように構成されていた。また、近年、LIB20の電流を高精度に計測することが望まれている。そこで、本実施形態にあっては、LIB20の電流を、従来技術に比べて高精度に計測するため、上記したように電流計測用の電流監視IC11を備えるようにした。なお、電流監視IC11は、LIB20の電流を高精度に計測可能なICである。
【0021】
ここで、上記したようにLIB20の電流が、電流監視IC11および電池監視IC12の2つの計測部で計測される場合、各監視IC11,12の計測値を比較することで、各監視IC11,12の異常を検知することが可能になる。すなわち、例えば電流監視IC11が電流を計測するタイミングと、電池監視IC12が電流を計測するタイミングとを同期させ、そのときの電流監視IC11の計測値と電池監視IC12の計測値との差が所定値以上である場合、言い換えると2つの計測値間が比較的大きく乖離している場合、各監視IC11,12に何らかの異常が発生したと判定することが可能になる。
【0022】
しかしながら、電流監視IC11および電池監視IC12の計測を同期させたとしても、例えばLIB20の電流などが比較的大きく変動するような状態の場合、2つの計測値間で誤差が増大するおそれがあった。このLIB20の電流の変動に起因する2つの計測値間の誤差について、
図1Cを参照して説明する。
【0023】
図1Cは、実施形態の比較例における、電流監視IC11および電池監視IC12に関する処理手順を示すタイミングチャートである。なお、
図1Cおよび後述する
図1D,3では、上から順に、LIB20の実際の電流、電流監視IC11に関する処理、電池監視IC12に関する処理を示している。
【0024】
先ず、電流監視IC11で実行される各処理について説明する。電流監視IC11では、
図1Cに示すように、「通信」、「計測準備」および「電流計測」等の処理が実行される。なお、
図1Cに示す「通信準備」は、マイコン13側での処理である。
【0025】
「通信準備」、「通信」および「計測準備」は、電流監視IC11による電流計測の事前に行われる処理であり、各処理の詳細については後述する。
【0026】
「電流計測」は、電流監視IC11がLIB20の電流を計測する電流計測期間を示している。なお、電流監視IC11の電流計測期間は、後述する電池監視IC12の電流計測期間より長くなる。例えば、電流監視IC11の電流計測期間は、電池監視IC12の電流計測期間に比べて数倍長くなる。また、各監視IC11,12の電流計測期間は、各監視IC11,12の仕様や性能などに応じて予め設定されるが、これに限定されるものではない。
【0027】
比較例に係る電流監視IC11にあっては、電流計測期間の間、LIB20の電流を時間軸における複数のタイミングでサンプリングし、得られたサンプリング値(測定値)の平均値を計測結果としている。
【0028】
ここで、電流監視IC11による計測と電池監視IC12による計測との同期について説明すると、比較例にあっては、
図1Cに示すように、同期目標点が予め決定される。同期目標点は、電流監視IC11による計測と電池監視IC12による計測とを同期させるときに目標となる時点である。
【0029】
図1Cでは、同期目標点は、電流監視IC11が実際にLIB20の電流を計測する電流計測期間(
図1Cにおいて時刻T12~T16)のうちの中間点(時刻T14)に決定される。以下、電流監視IC11の電流計測期間のうち、かかる同期目標点として決定されたタイミングを「第1タイミング」という場合がある。
【0030】
そして、比較例に係る電池監視IC12にあっては、LIB20の電流の計測が同期目標点(第1タイミング)で行われるように構成される。具体的に説明すると、マイコン13は、タイマ(ウェイトタイマ)を備える。従って、マイコン13において、かかるタイマによる待ち時間Cxが適宜に設定(セット)されることで、電池監視IC12による電流の計測が同期目標点で行われることとなる。なお、待ち時間Cxは、例えば所定の作業者によって決定される。
【0031】
電池監視IC12に関する各処理について説明すると、電池監視IC12では、「通信」、「計測準備」および「電流計測」等の処理が実行される。なお、
図1Cに示す「タイマ設定」、「待ち時間」、「遅延」および「通信準備」は、マイコン13側での処理である。
【0032】
「タイマ設定」は、マイコン13がタイマの設定をするためのソフトの準備処理時間である。「待ち時間」は、マイコン13において設定されたタイマによる待ち時間であり、言い換えると、電池監視IC12による電流の計測を同期目標点で行うための待ち時間である。
【0033】
「遅延」、「通信準備」および「計測準備」は、電池監視IC12による電流計測の事前に行われる処理であり、各処理の詳細については後述する。
【0034】
「電流計測」は、電池監視IC12がLIB20の電流を計測する電流計測期間を示している。なお、電池監視IC12の電流計測期間は、上記したように、電流監視IC11の電流計測期間より短い。
【0035】
比較例に係る電池監視IC12にあっては、電流計測期間の間、LIB20の電流を時間軸における複数のタイミングでサンプリングし、得られたサンプリング値(測定値)の平均値を計測結果としている。
【0036】
また、比較例に係る電池監視IC12にあっては、LIB20の電流計測が同期目標点で行われるように構成される。
図1Cでは、同期目標点は、比較例に係る電池監視IC12が実際にLIB20の電流を計測する電流計測期間(
図1Cにおいて時刻T13~T15)のうちの中間点(時刻T14)に決定される。以下、電池監視IC12の電流計測期間のうち、かかる同期目標点として決定されたタイミングを「第2タイミング」という場合がある。
【0037】
比較例では、電池監視IC12が電流計測を行う第2タイミングが同期目標点(第1タイミング)となるように、待ち時間Cxが予め決定されてタイマに設定されることで、電流監視IC11および電池監視IC12の計測が同期することとなる。
【0038】
しかしながら、電流監視IC11および電池監視IC12の計測を同期させたとしても、
図1Cの上段に示すように、LIB20の電流が比較的大きく変動するような状態の場合、2つの計測値間で誤差が増大してしまう。
【0039】
すなわち、電流監視IC11においては、比較的長い電流計測期間(時刻T12~T16)の間に計測される電流の平均値を計測結果としている。これに対し、電池監視IC12においては、比較的短い電流計測期間(時刻T13~T15)の間に計測される電流の平均値を計測結果としている。そのため、例えば時刻T13~T15におけるLIB20の電流が一時的に大きくなった場合、電池監視IC12による計測値が電流監視IC11による計測値より大きくなり、2つの計測値間の誤差が増大してしまう。なお、かかる計測値間の誤差が増大すると、上記した各監視IC11,12の異常を検知する異常検知処理においても誤判定を招くおそれがある。
【0040】
そこで、本実施形態にあっては、2つの計測部(電流監視IC11および電池監視IC12)によって計測される計測値間の誤差を抑制するように構成した。
【0041】
以下、本実施形態に係る処理等について
図1Dを参照して具体的に説明する。
図1Dは、実施形態における、電流監視IC11および電池監視IC12に関する処理手順の一例を示すタイミングチャートである。
【0042】
図1Dに示すように、本実施形態にあっては、電流監視IC11による計測が行われる電流計測期間の間に、電池監視IC12による計測が複数回(ここでは4回)行われ、当該複数回の計測による計測値の平均値を電池監視IC12の計測結果とするようにした。
【0043】
詳説すると、先ず、電流監視IC11では、比較例と同様、「通信」、「計測準備」および「電流計測」等の処理が実行される。また、「通信準備」は、マイコン13側での処理である。
【0044】
「通信準備」は、マイコン13が電流監視IC11と通信を開始するためのソフトの準備処理時間である。「通信」は、電流監視IC11とマイコン13との通信にかかる時間である。
【0045】
「計測準備」は、電流監視IC11がLIB20の電流を計測するための準備処理時間である。なお、電流監視IC11は、マイコン13から出力される電流計測指示に応じて電流の計測を開始する。従って、「計測準備」は、電流監視IC11がマイコン13からの電流計測指示を受信してから実際に電流の計測を開始するまでの時間であるともいえる。「電流計測」は、上記したように、電流監視IC11がLIB20の電流を計測する電流計測期間を示している。
【0046】
本実施形態に係る電流監視IC11にあっては、電流計測期間の間、LIB20の電流の計測を継続的に行い、電流計測期間のうちの任意のタイミングで電流の計測結果を出力することができる。例えば、電流監視IC11は、LIB20の電流を時間軸における複数のタイミングでサンプリングし、得られたサンプリング値に基づき、電流計測期間のうちの任意のタイミングでLIB20の電流値を確定させ、確定した電流値を計測結果として出力することができる。
【0047】
なお、電流監視IC11は、上記したサンプリング値の平均値を計測結果するが、これに限定されるものではない。すなわち、例えば、電流監視IC11は、電流計測期間のうちの任意のタイミングで得られたサンプリング値(言い換えると瞬時値)をLIB20の電流の計測結果とするなど、その他の手法で求めたLIB20の電流を計測結果としてもよい。
【0048】
また、本実施形態において、同期目標点は、例えば電流監視IC11が実際にLIB20の電流を計測する電流計測期間(
図1Dにおいて時刻T22~T29)のうちの任意のタイミングであって、かつ、電流監視IC11の電流計測期間の間に、電池監視IC12による計測を複数回行うことができるようなタイミングに決定される。
【0049】
図1Dの例では、同期目標点は、電流監視IC11の電流計測期間のうち、電流監視IC11による計測が開始されるタイミング(
図1Dで時刻T22)に決定される。従って、電流監視IC11の電流計測期間のうちの第1タイミングは、同期目標点として決定された、電流監視IC11による計測が開始されるタイミングとなる。
【0050】
次に、電池監視IC12等について説明する。電池監視IC12にあっては、LIB20の電流の計測が同期目標点(第1タイミング)で行われるように構成される。例えば、同期目標点は、電池監視IC12が実際にLIB20の電流を計測する電流計測期間のうちの任意のタイミングに決定される。
【0051】
図1Dの例では、同期目標点は、電池監視IC12による複数回の計測のうち初回の計測が開始されるタイミング(
図1Dで時刻T22)に決定される。従って、電池監視IC12の電流計測期間のうちの第2タイミングは、同期目標点として決定された、電池監視IC12による複数回の計測のうち初回の計測が開始されるタイミングとなる。
【0052】
そして、本実施形態にあっては、電池監視IC12が電流計測を行う第2タイミングが同期目標点(第1タイミング)となるように、待ち時間C1が予め決定されてタイマに設定されることで、電流監視IC11および電池監視IC12の計測を同期させる。また、電流監視IC11と同期した電池監視IC12においては、電流計測が複数回行われ、当該複数回の計測による計測値の平均値を電池監視IC12の計測結果とする。
【0053】
具体的に説明すると、電池監視IC12では、時刻T21以降、「通信」、「計測準備」および「電流計測」等の処理が実行される。また、「タイマ設定」、「待ち時間」、「遅延」および「通信準備」は、マイコン13側での処理である。
【0054】
「タイマ設定」および「待ち時間」の処理内容は、比較例と同様であるため、説明を省略する。但し、
図1Dでは、本実施形態に係る「待ち時間」は、電池監視IC12による電流の計測を同期目標点で行うための待ち時間として「C1」がタイマに設定された例を示している。なお、待ち時間「C1」の詳細については後述する。
【0055】
「遅延」は、タイマの設定によって処理に遅延が生じたときの遅延時間である。詳説すると、例えば仮に、タイマによる待ち時間が終了した時点で、マイコン13における他の機能(処理)により、割り込み禁止処理が実行されていたり、電流計測処理と同じ優先度を有する他の処理が実行されていたりする場合がある。かかる場合、待ち時間の終了後、電流計測処理を直ちに開始することができない。上記した「遅延」は、そのような割り込み禁止処理や、同じ優先度を有する他の処理が終了するまで電流計測処理を遅延させる時間(言い換えると電流計測処理を待機させる時間)である。この「遅延」時間は、予め想定される遅延時間の内の最大値が設定されるが、これに限られず、例えば想定される遅延時間の平均値などでもよい。なお、上記したような割り込み禁止処理や同じ優先度を有する他の処理が実行されない場合、遅延時間はゼロとなる、言い換えると、
図1Dに示す「遅延」は無くなる。
【0056】
「通信準備」は、マイコン13が電池監視IC12と通信を開始するためのソフトの準備処理時間である。「通信」は、電池監視IC12とマイコン13との通信にかかる時間である。
【0057】
「計測準備」は、電池監視IC12がLIB20の電流を計測するための準備処理時間である。なお、電池監視IC12は、マイコン13から出力される電流計測指示に応じて電流の計測を開始する。従って、「計測準備」は、電池監視IC12がマイコン13からの電流計測指示を受信してから実際に電流の計測を開始するまでの時間であるともいえる。「電流計測」は、上記したように、電池監視IC12がLIB20の電流を計測する電流計測期間を示している。
【0058】
電池監視IC12において初回(1回目)の電流計測が終了すると、続いて2回目の電流計測が行われる。具体的には、上記した「遅延」、「通信準備」、「通信」、「計測準備」が1回目の電流計測の終了後の時刻T23~T24の間で行われ、「電流計測」の処理が時刻T23~T24の間で実行される、言い換えると、2回目の電流計測が行われる。
【0059】
続いて、電池監視IC12において2回目の電流計測が終了すると、3回目の電流計測が行われる。具体的には、上記した「遅延」、「通信準備」、「通信」、「計測準備」が2回目の電流計測の終了後の時刻T25~T26の間で行われ、「電流計測」の処理が時刻T26~T27の間で実行される、言い換えると、3回目の電流計測が行われる。
【0060】
続いて、電池監視IC12において3回目の電流計測が終了すると、4回目の電流計測が行われる。具体的には、上記した「遅延」、「通信準備」、「通信」、「計測準備」が3回目の電流計測の終了後の時刻T27~T28の間で行われ、「電流計測」の処理が時刻T28~T29の間で実行される、言い換えると、4回目の電流計測が行われる。
【0061】
そして、電池監視IC12は、複数回(ここでは4回)の電流計測による計測値の平均値を電池監視IC12の計測結果とする。
【0062】
これにより、電流監視IC11によって計測される計測値と、電池監視IC12によって計測される計測値(ここでは4回の電流計測による計測値の平均値)との間の誤差を抑制することができる。
【0063】
すなわち、
図1Dの上段に示すように、LIB20の電流が比較的大きく変動するような状態の場合、電池監視IC12は、電流計測期間が電流監視IC11の電流計測期間より短いため、変動の影響を受け易い。一例としては、電流が一時的に大きくなるような変動の場合、電池監視IC12は、一時的に大きくなった電流のみを計測してしまうなど、変動の影響を受け易い。
【0064】
本実施形態に係る電池監視IC12は、電流監視IC11による計測が行われる電流計測期間(時刻T22~T29)の間に、複数回の電流計測を行い、複数回の電流計測による計測値の平均値を計測結果とすることで、計測結果に対する変動の影響を低減させることができる。
【0065】
そのため、電流監視IC11の計測値と、電池監視IC12の計測値(ここでは4回の電流計測による計測値の平均値)との間の誤差を可能な限り小さくすることができる、言い換えると、電流監視IC11および電池監視IC12によって計測される計測値間の誤差を抑制することができる。
【0066】
なお、上記では、電池監視IC12が電流計測を4回行うようにしたが、これは例示であって限定されるものではなく、電池監視IC12は電流計測を複数回行うように構成されていればよい。
【0067】
また、電池監視IC12にあっては、電流計測期間の間(
図1Dでは時刻T22~T23、時刻T24~T25、時刻T26~T27および時刻T28~T29)、LIB20の電流の計測を継続的に行うことができる。一例として、電池監視IC12は、LIB20の電流を、電流計測期間のうちの複数のタイミングでサンプリングし、得られたサンプリング値の平均値を、当該電流計測期間で計測された計測値とするが、これに限定されるものではない。すなわち、例えば、電池監視IC12は、電流計測期間のうちの任意のタイミングで得られたサンプリング値(言い換えると瞬時値)を、当該電流計測期間で計測された計測値とするなど、その他の手法で求めたLIB20の電流を計測値としてもよい。
【0068】
<2.バッテリ管理ECUを含む車載システムの全体構成>
以下、上述した計測方法を適用したバッテリ管理ECU10について
図2以降を参照してさらに具体的に説明する。
図2は、実施形態に係るバッテリ管理ECU10を含む車載システム1の構成例を示すブロック図である。なお、
図2では、本実施形態の特徴を説明するために必要な構成要素のみを表しており、一般的な構成要素についての記載を省略している。
【0069】
換言すれば、
図2のブロック図に図示される各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。例えば、各機能ブロックの分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することが可能である。
【0070】
図2に示すように、車載システム1のバッテリ管理ECU10は、上記した電流監視IC11と、電池監視IC12と、マイコン13とを備える。電流監視IC11は、上記したようにLIB20の電流を計測する。
【0071】
ここで、電流監視IC11処理等について
図3も参照して説明する。
図3は、電流監視IC11、電池監視IC12の処理や待ち時間等を説明するためのタイミングチャートである。
【0072】
図3に示すように、電流監視IC11は、電流計測期間D1の間、LIB20の電流を計測する。なお、電流計測期間D1(
図3の例では時刻T22~T29)は、第1計測期間の一例である。
【0073】
電池監視IC12は、電流計測期間D1より短い電流計測期間D2の間、LIB20の電流を計測する。また、上記したように、電池監視IC12は、電流監視IC11の電流計測期間D1の間に、電流計測を複数回(ここでは4回)行う。なお、電流計測期間D2(
図3の例では時刻T22~T23、時刻T24~T25、時刻T26~T27および時刻T28~T29)は、第2計測期間の一例である。
【0074】
図2に示すように、電池監視IC12は、計測処理部12aを備える。計測処理部12aは、複数回の計測による計測値の平均値を電池監視IC12の計測結果とする処理を行う。これにより、電流監視IC11によって計測される計測値と、電池監視IC12によって計測される計測値との間の誤差を抑制できることは、既に述べた通りである。
【0075】
なお、計測処理部12aは、複数回の計測によって得られる全ての計測値の平均値を算出するが、これに限定されるものではない。すなわち、例えば、計測処理部12aは、複数回の計測によって得られる計測値から複数個の計測値を選択し、選択された複数個の計測値の平均値を算出するなど、複数回の計測による計測値の一部について平均値を算出してもよい。
【0076】
マイコン13は、制御部14と、記憶部15とを備える。制御部14は、通信部14aと、設定部14bと、計測指示部14cと、処理部14dと、充放電制御部14eとを備える。
【0077】
制御部14は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、入出力ポートなどを有するコンピュータや各種の回路を含む。
【0078】
コンピュータのCPUは、例えば、ROMに記憶されたプログラムを読み出して実行することによって、制御部14の通信部14a、設定部14b、計測指示部14c、処理部14dおよび充放電制御部14eとして機能する。
【0079】
また、制御部14の通信部14a、設定部14b、計測指示部14c、処理部14dおよび充放電制御部14eの少なくともいずれか一部または全部をASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアで構成することもできる。
【0080】
また、記憶部15は、例えば、データフラッシュや不揮発性メモリ、レジスタといった記憶デバイスである。記憶部15は、待ち時間情報15aを記憶する。
【0081】
待ち時間情報15aは、上記したマイコン13のタイマに設定(セット)される待ち時間を示す情報である。具体的には、待ち時間情報15aは、待ち時間C1(
図3参照)を示す情報である。待ち時間情報15aの待ち時間は、例えば電流監視IC11や電池監視IC12、マイコン13における各種処理時間等を考慮して、予め決定される時間である。なお、待ち時間の決定については、例えば作業者によって行われるが、これに限定されるものではない。
【0082】
制御部14の通信部14aは、電流監視IC11との間、および、電池監視IC12との間でシリアル通信によりデータのやり取りを行う。例えば、通信部14aは、電流監視IC11に対して電流計測指示を出力したり、電池監視IC12に対して電流計測指示を出力したりする。また、通信部14aには、電流監視IC11からLIB20の電流の計測結果を示す情報が入力される。また、通信部14aには、電池監視IC12からLIB20の電流の計測結果(例えば複数回の計測による計測値の平均値)を示す情報が入力される。
【0083】
なお、LIB20の電圧が電池監視IC12によって計測される場合、通信部14aには、かかる電圧の計測結果を示す情報が入力される。通信部14aは、入力された各計測結果を、処理部14dや充放電制御部14e等へ出力する。
【0084】
設定部14bは、タイマに待ち時間を設定する。ここで、タイマに設定される待ち時間について
図3を参照しつつ説明する。
【0085】
図3に示すように、待ち時間C1は、電池監視IC12によってLIB20の電流の計測を行う第2タイミングが同期目標点(第1タイミング)となるように予め決定され、タイマに設定(セット)される。
【0086】
ここで、電池監視IC12による電流の計測は、待ち時間C1の経過後に開始されることから、上記した待ち時間C1は、電池監視IC12に計測処理を含む所定処理を開始させるまでの、マイコン13の待ち時間であるといえる。なお、所定処理は、電池監視IC12によるLIB20の電流の計測に必要な一連の処理である。具体的に所定処理には、
図3に示す「通信準備」、「通信」、「計測準備」および「電流計測」などの処理が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0087】
このように、本実施形態に係る設定部14bは、電池監視IC12による電流の計測が行われる電流計測期間D1のうちの第1タイミングと、電池監視IC12による電流の計測が行われる電流計測期間D2のうちの第2タイミングとが重なるように、電池監視IC12に計測処理を含む所定処理を開始させるまでの、マイコン13の待ち時間C1をタイマに設定する。すなわち、本実施形態にあっては、第1タイミングと第2タイミングとが同期目標点と一致あるいは略一致するように待ち時間C1がタイマに設定される。
【0088】
別言すると、本実施形態にあっては、マイコン13が電流監視IC11と通信を開始してから電流監視IC11が電流を計測する第1タイミングまでの期間A1(時刻T21~T22)と、マイコン13がタイマ設定処理を開始してから電池監視IC12が電流を計測する第2タイミングまでの期間B1(時刻T21~T22)とが同じになるように、待ち時間C1が予め計算により求められ(決定され)、かかる待ち時間C1がタイマに設定される。
【0089】
このように、本実施形態では、例えばマイコン13から電流監視IC11や電池監視IC12へ電流計測指示を出力するときの通信時間や準備時間、電流監視IC11および電池監視IC12において電流計測に要する時間(計測準備時間や計測期間)等を考慮してタイマの待ち時間C1が設定される。これにより、電流監視IC11によって電流を計測するタイミングと、電池監視IC12によって電流を計測するタイミングとを精度良く同期させることができる。
【0090】
また、同期目標点は、上記したように、電流監視IC11の電流計測期間D1の間に、電池監視IC12による計測を複数回行うことができるようなタイミングに決定されている。そのため、第2タイミングが同期目標点となるような待ち時間C1がタイマに設定されることで、電池監視IC12は、電流計測を複数回行うことができる。
【0091】
ここで、同期目標点に同期させる各監視IC11,12のタイミング(第1タイミング、第2タイミング)について説明する。
【0092】
電流監視IC11の第1タイミングは、電流計測期間D1のうち、電流監視IC11による計測が開始されるタイミングとされる。また、電池監視IC12の第2タイミングは、電流計測期間D2のうち、電池監視IC12による複数回の計測のうち初回の計測が開始されるタイミングとされる。
【0093】
これにより、電池監視IC12は、電流計測を確実に複数回行うことが可能になる。すなわち、電池監視IC12による電流計測は、電流監視IC11の電流計測期間D1の間に行われる。そのため、第1、第2タイミングが上記のように設定されることで、電流監視IC11の計測開始と同じタイミングで、電池監視IC12の初回の計測が開始されることとなる。すなわち、各監視IC11,12の計測開始タイミングを揃えることができる。これにより、電流監視IC11の電流計測期間D1の間に、可能な限り電池監視IC12の計測を繰り返し行うことができる、すなわち、電池監視IC12は、電流計測を確実に複数回行うことが可能になる。
【0094】
なお、第1タイミングおよび第2タイミングは、上記のタイミングに限定されるものではない。すなわち、第1、第2タイミングは、上記したタイミングに加えてあるいは代えて、その他のタイミングに設定されてもよい。
【0095】
他の例としては、
図3に一点鎖線で示すように、電流監視IC11の第1タイミングは、電流計測期間D1のうち、電流監視IC11による計測が終了するタイミングとされる(
図3では時刻T29)。また、電池監視IC12の第2タイミングは、電流計測期間D2のうち、電池監視IC12による複数回の計測のうち最後の計測が終了するタイミングとされる(
図3では時刻T29)。
【0096】
これにより、電池監視IC12は、電流計測を確実に複数回行うことが可能になる。具体的に説明すると、第1、第2タイミングが上記のように設定されることで、電流監視IC11の計測終了と同じタイミングで、電池監視IC12の最後の計測が終了することとなる。すなわち、各監視IC11,12の計測終了タイミングを揃えることができる。これにより、電流監視IC11の電流計測期間D1が終了する前に、可能な限り電池監視IC12の計測を繰り返し行うことができる、すなわち、電池監視IC12は、電流計測を確実に複数回行うことが可能になる。
【0097】
図2の説明を続けると、計測指示部14cは、通信部14aを介して電流計測指示を電流監視IC11へ出力することができる。例えば、計測指示部14cは、電流監視IC11との通信開始を準備する「通信準備」処理(
図3参照)を行った後、電流監視IC11の「通信」処理(
図3参照)における適宜なタイミングで電流計測指示を出力し、電流監視IC11にLIB20の電流の計測を開始させる。
【0098】
また、計測指示部14cは、通信部14aを介して電流計測指示を電池監視IC12へ出力することができる。例えば、計測指示部14cは、電池監視IC12との通信開始を準備する「通信準備」処理(
図3参照)を行った後、電池監視IC12の「通信」処理(
図3参照)における適宜なタイミングで電流計測指示を出力し、電池監視IC12にLIB20の電流の計測を開始させる。
【0099】
処理部14dは、電流監視IC11によって計測された電流の計測結果を示す情報、および、電池監視IC12によって計測された電流の計測結果(例えば複数回の計測による計測値の平均値)を示す情報を上位ECU30へ通知する処理を行うことができる。
【0100】
なお、処理部14dは、各監視IC11,12の計測値を比較することで各監視IC11,12の異常を検知する異常検知処理を行ってもよい。例えば、処理部14dは、電流監視IC11によって計測された電流の計測値と、電池監視IC12によって計測された電流の計測値との差が所定値以上である場合、各監視IC11,12に何らかの異常が発生したと判定する。そして、処理部14dは、異常の発生を示す情報を上位ECU30へ通知する。なお、上記した所定値は、各監視IC11,12に何らかの異常が発生したと判定することができる値に設定されるが、これに限定されず、任意の値に設定可能である。
【0101】
本実施形態にあっては、上記したような異常検知処理において、誤検知の発生を抑制することができる。具体的に説明すると、例えば電流などが比較的大きく変動するような状態の場合、電池監視IC12の計測値は、電流計測期間D2が短いため変動の影響を受け易い。そのため、変動の状態によっては、電池監視IC12の計測値と電流監視IC11の計測値との間の誤差が一時的に増大し、これによって異常検知処理において異常が発生したと誤検知しやすくなる。しかしながら、本実施形態に係る電池監視IC12は、複数回の電流計測を行って計測値の平均値を計測結果とするようにしたので、異常検知処理においては、変動の影響が低減された電池監視IC12の計測値を用いることができる。そのため、本実施形態にあっては、電流などが比較的大きく変動するような状態であっても、電池監視IC12の計測値と電流監視IC11の計測値との間の誤差が一時的に増大しにくく、よって異常検知処理における誤検知の発生を抑制することができる。
【0102】
なお、上記では、異常検知処理が処理部14dによって行われる例を示したが、これに限れられず、例えば上位ECU30や電流監視IC11、電池監視IC12などその他の装置で行われてもよい。
【0103】
充放電制御部14eは、上位ECU30から取得した車両状況等に基づいて、LIB20の充放電制御を実行することができる。また、LIB20の電圧が電池監視IC12によって計測される場合、充放電制御部14eは、かかる電圧の計測結果、および、各監視IC11,12の電流の計測結果等に基づいて、LIB20のSOC(State Of Charge)を推定する処理を実行し、推定されたSOCの情報を上位ECU30へ通知してもよい。
【0104】
<3.実施形態に係るバッテリ管理ECU(計測装置)の制御処理>
次に、バッテリ管理ECU(計測装置)10における具体的な処理手順について
図4を用いて説明する。
図4は、バッテリ管理ECU10が実行する処理手順を示すフローチャートである。
【0105】
図4に示すように、バッテリ管理ECU10は、記憶部15の待ち時間情報15a(
図2参照)を読み込む(ステップS10)。次いで、バッテリ管理ECU10は、待ち時間情報15aである待ち時間C1をタイマに設定(セット)する(ステップS11)。
【0106】
続いて、バッテリ管理ECU10は、LIB20の電流の計測行う。例えば、バッテリ管理ECU10は、電流監視IC11による電流計測を実行させる(ステップS12)。バッテリ管理ECU10は、ステップS12の処理と並行して、電池監視IC12による電流計測を複数回実行させる(ステップS13)。詳しくは、バッテリ管理ECU10は、電流監視IC11による計測が行われる電流計測期間D1の間に、電池監視IC12による計測を複数回行う。
【0107】
次いで、バッテリ管理ECU10は、電流監視IC11の複数回の計測による計測値の平均値を電池監視IC12の計測結果とする(ステップS14)。次いで、バッテリ管理ECU10は、電流監視IC11によって計測された電流の計測結果、および、電池監視IC12によって計測された電流の計測結果を示す情報を上位ECU30へ通知するなど各種の処理を実行する(ステップS15)。
【0108】
上述してきたように、実施形態に係るバッテリ管理ECU10(計測装置の一例)は、電流監視IC11(第1計測部の一例)と、電池監視IC12(第2計測部の一例)と、計測処理部12aとを備える。電流監視IC11は、電流計測期間D1(第1計測期間の一例)の間、LIB20(二次電池の一例)の電流を計測する。電池監視IC12は、電流計測期間D1より短い電流計測期間D2(第2計測期間の一例)の間、LIB20の電流および電圧の少なくともいずれかを計測する。計測処理部12aは、電流監視IC11による計測が行われる電流計測期間D1の間に、電池監視IC12による計測が複数回行われ、当該複数回の計測による計測値の平均値を電池監視IC12の計測結果とする。これにより、2つの計測部によって計測される計測値間の誤差を抑制することができる。
【0109】
なお、上記した実施形態において、マイコン13が設定部を備えるようにしたが、これに限定されるものではなく、例えば電流監視IC11や電池監視IC12が設定部の機能を有するように構成してもよい。
【0110】
また、上記した待ち時間の決定、待ち時間を記憶部15へ記憶させる処理などの一部あるいは全部について、設定部14bが行うように構成してもよい。また、上記した待ち時間の決定等は、車載システム1の出荷前に行われるが、これに限られず、出荷後(例えば車両100の走行前や走行中)に行われてもよい。
【0111】
また、上記では、電池監視IC12で電流の計測を行ったが、これに限られず、電池監視IC12はLIB20の電圧の計測を行ってもよい。かかる場合、バッテリ管理ECU10は、電流監視IC11による計測が行われる第1計測期間の間に、電池監視IC12による電圧計測が複数回行われ、当該複数回の電圧計測による計測値の平均値を電池監視IC12の計測結果とする処理を行ってもよい。
【0112】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0113】
1 車載システム
10 バッテリ管理ECU
11 電流監視IC
12 電池監視IC
12a 計測処理部
13 マイコン
14 制御部
14b 設定部