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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022181288
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】タイヤ製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 33/02 20060101AFI20221201BHJP
   B29C 35/02 20060101ALI20221201BHJP
   B29D 30/06 20060101ALI20221201BHJP
   B29L 30/00 20060101ALN20221201BHJP
【FI】
B29C33/02
B29C35/02
B29D30/06
B29L30:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021088156
(22)【出願日】2021-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小野 了
【テーマコード(参考)】
4F202
4F203
4F215
【Fターム(参考)】
4F202AA45
4F202AH20
4F202AM32
4F202AR07
4F202AR12
4F202CA21
4F202CB01
4F202CU12
4F203AA45
4F203AB03
4F203AH20
4F203AM32
4F203DA11
4F203DB01
4F203DC01
4F203DL12
4F215AH20
4F215AR07
4F215VA01
4F215VD22
4F215VL08
4F215VL14
4F215VL27
4F215VP15
4F215VR01
4F215VR03
(57)【要約】
【課題】エア残りが低減されたタイヤ製造方法の提供。
【解決手段】このタイヤ製造方法は、
(A)一方の端部と他方の端部とを有するゴムシートを巻いて、これらの端部を含むジョイントを形成する工程、
(B)ゴム部材をゴムシートにアッセンブリーして、ジョイントに起因するスペースを有するローカバー4を得る工程、
(C)キャビティ面6Aを有するモールド6と、ボディ8C及びこのボディ8Cから突出する突条8Eを有するブラダー8とを含む加硫装置2に、ローカバー4を投入し、このローカバー4をモールド6とブラダー8との間に位置させる工程、
並びに
(D)ブラダー8を膨張させて、ローカバー4をキャビティ面6Aに押し付けつつ、突条8Eでスペースを押しつぶす工程を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)一方の端部と他方の端部とを有するゴムシートを巻いて、これらの端部を含むジョイントを形成する工程、
(B)ゴム部材を前記ゴムシートにアッセンブリーして、前記ジョイントに起因するスペースを有するローカバーを得る工程、
(C)キャビティ面を有するモールドと、ボディ及びこのボディから突出する突条を有するブラダーとを含む加硫装置に、前記ローカバーを投入し、このローカバーを前記モールドと前記ブラダーとの間に位置させる工程、
並びに
(D)前記ブラダーを膨張させて、前記ローカバーを前記キャビティ面に押し付けつつ、前記突条で前記スペースを押しつぶす工程
を含む、タイヤ製造方法。
【請求項2】
前記工程(C)において、周方向において前記スペースの位置に前記突条が位置する様に、前記ローカバーと前記ブラダーとの位置を合わせる、請求項1に記載のタイヤ製造方法。
【請求項3】
前記工程(D)において、前記ボディから先端に向かって先細りな形状を備える前記突条で、前記スペースを押しつぶす、請求項1又は2に記載のタイヤ製造方法。
【請求項4】
前記工程(D)において、前記突条の長手方向に垂直な断面形状が三角形であり、前記三角形の底辺と他の辺とがなす内角が3.8°以上21.8°以下である、前記突条で、前記スペースを押しつぶす、請求項3に記載のタイヤ製造方法。
【請求項5】
前記工程(D)において、高さが1mm以上6mm以下である、前記突条で、前記スペースを押しつぶす、請求項3又は4に記載のタイヤ製造方法。
【請求項6】
前記工程(A)において、前記ゴムシートを巻いて、前記ジョイントを形成し、インナーライナーを得る、請求項1から5のいずれかに記載のタイヤ製造方法。
【請求項7】
ローカバーの半径方向内側から前記ローカバーの内面に押し付けられるブラダーを備え、
前記ブラダーがボディと前記ボディから突出し前記ローカバーの内面に押し付けられる突条とを有する、タイヤ加硫装置。
【請求項8】
前記突条が前記ボディに貼り付けられている、請求項7に記載のタイヤ加硫装置。
【請求項9】
前記ローカバーに対して前記ブラダーを相対的に回転させて、前記ローカバーに対する前記ブラダーの周方向位置を調整する回転装置を、更に備える、請求項7又は8に記載のタイヤ加硫装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤ製造方法では、帯状ゴムシートが巻かれ、一方の端部と他方の端部が重ね合わされる。この一方の端部と他方の端部とが圧着されジョイントが形成される。この様にして、ジョイントを有するインナーライナーが得られる。このインナーライナーと他のゴム部材とがアッセンブリーされてローカバーが形成される。このローカバーが加硫装置に投入される。加硫装置が備えるブラダーがローカバーに押し付けられ、ローカバーが加圧及び加熱される。この加圧及び加熱によって、ローカバーからタイヤが得られる。この様なタイヤ製造方法に用いられる加硫装置が、特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-273077公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このインナーライナーには、ジョイントによって段差が形成される。インナーライナーとインナーライナーを覆うカーカス等の他のゴム部材との間に、この段差に起因してスペースが生じる。この様な、ジョイントに起因するスペースには、エアが残留し易い。このエアの残留は、ローカバーから得られるタイヤにエア残りを生じさせる。このエア残りは、タイヤの品質を低下させる。
【0005】
本発明の目的は、エア残りが低減されたタイヤ製造方法の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るタイヤ製造方法は、
(A)一方の端部と他方の端部とを有するゴムシートを巻いて、これらの端部を含むジョイントを形成する工程、
(B)ゴム部材を前記ゴムシートにアッセンブリーして、前記ジョイントに起因するスペースを有するローカバーを得る工程、
(C)キャビティ面を有するモールドと、ボディ及びこのボディから突出する突条を有するブラダーとを含む加硫装置に、前記ローカバーを投入し、このローカバーを前記モールドと前記ブラダーとの間に位置させる工程、
並びに
(D)前記ブラダーを膨張させて、前記ローカバーを前記キャビティ面に押し付けつつ、前記突条で前記スペースを押しつぶす工程
を含む。
【0007】
好ましくは、前記工程(C)において、周方向において前記スペースの位置に前記突条が位置する様に、前記ローカバーと前記ブラダーとの位置を合わせる。
【0008】
好ましくは、前記工程(D)において、前記ボディから先端に向かって先細りな形状を備える前記突条で、前記スペースが押しつぶされる。
【0009】
好ましくは、前記工程(D)において、前記突条の長手方向に垂直な断面形状が三角形であり、前記三角形の底辺と他の辺とがなす内角が3.8°以上21.8°以下である、前記突条で、前記スペースが押しつぶされる。
【0010】
好ましくは、前記工程(D)において、高さが1mm以上6mm以下である、前記突条で、前記スペースが押しつぶされる。
【0011】
好ましくは、前記工程(A)において、前記ゴムシートを巻いて、前記ジョイントを形成し、インナーライナーが得られる。
【0012】
本発明に係るタイヤ加硫装置は、ローカバーの半径方向内側から前記ローカバーの内面に押し付けられるブラダーを備える。前記ブラダーは、ボディと前記ボディから突出し前記ローカバーの内面に押し付けられる突条とを有する。
【0013】
好ましくは、前記突条は前記ボディに貼り付けられている。
【0014】
好ましくは、このタイヤ加硫装置は、前記ローカバーに対して前記ブラダーを相対的に回転させて、前記ローカバーに対する前記ブラダーの周方向位置を調整する回転装置を、更に備える。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るタイヤ製造方法は、ジョイントに起因するスペースを、ブラダーが有する突条で押しつぶす。これにより、エアの残留が抑制される。ローカバーから得られるタイヤのエア残りが低減される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明の一実施形態に係るタイヤ製造方法のための加硫装置の一部が示された概念図である。
図2図2(A)は図1の加硫装置が備えるブラダーの正面図であり、図2(B)はこのブラダーの底面図である。
図3図3図2(A)の線分III-IIIに沿った断面図である。
図4図4(A)は図1の加硫装置の使用状態の説明図であり、図4(B)は他の使用状態の説明図であり、図4(C)は更に他の使用状態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0018】
図1には、タイヤ加硫装置2の一部がローカバー4と共に示されている。この加硫装置2は、モールド6、ブラダー8及び一対のクランプ10を備える。この加硫装置2によって、ローカバー4が加圧及び加熱され、ローカバー4からタイヤが得られる。図1の上下方向が加硫装置2及びローカバー4の軸方向であり、図1の左右方向が半径方向であり、図1の紙面に垂直な方向が周方向である。
【0019】
このモールド6は、複数のセグメント12、一対のサイドプレート14及び一対のビードリング16を備える。複数のセグメント12は周方向に並べられている。それぞれのセグメント12は、周方向に隣り合う他のセグメント12と当接している。セグメント12の軸方向一方の端部に一方のサイドプレート14が当接し、他方の端部に他方のサイドプレート14が当接している。それぞれのサイドプレート14に、半径方向内側に位置するビードリング16が当接している。図1のモールド6は、閉姿勢にある。このモールド6は、ローカバー4が当接するキャビティ面6Aを備える。
【0020】
図示されないが、それぞれのセグメント12は、半径方向外向きに移動可能である。この半径方向外向きの移動によって、それぞれのセグメント12は互いに離れた位置に移動可能である。一対のサイドプレート14は、軸方向に互いに離れた位置に移動可能である。一対のビードリング16も、軸方向に互いに離れた位置に移動可能である。このモールド6は、複数のセグメント12、一対のサイドプレート14及び一対のビードリング16が離れて位置する姿勢、即ち開姿勢に姿勢変化可能である。このモールド6は、開姿勢と図1の閉姿勢とに姿勢変化可能である。
【0021】
ブラダー8は、モールド6の半径方向内側に位置している。ブラダー8は可撓性である。ブラダー8は、流体の充填によって膨張可能であり、流体の排出によって収縮可能である。図1では、膨張したブラダー8が示されている。図1では、ブラダー8は、ローカバー4の内面4Aに当接している。このブラダー8は、トロイド形状であるローカバー4の内面4Aに沿って膨張している。
【0022】
一対のクランプ10は、上下方向において、互いに離れた位置と近づいた位置とに移動可能である。一方のクランプ10は、ブラダー8の一方の端8Aを保持している。他方のクランプ10は、ブラダー8の他方の端8Bを保持している。それぞれのクランプ10の形状は、円盤状であるが、これに限定されない。
【0023】
図1に示される様に、ブラダー8は、一方の端8Aから他方の端8Bまで延びるボディ8Cを備える。図2(A)及び図2(B)に示される様に、ブラダー8は、ボディ8Cが形成するボディ外面8Dから外向きに突出する突条8Eとを備える。図1に示される様に、突条8Eとボディ8Cとは、ローカバー4の内面4Aに当接している。突条8Eは、ローカバー4に当接する範囲のボディ外面8Dから突出している。この突条8Eは、ローカバー4の一方のビード4Bから他方のビード4Cまで、内面4Aに沿って延びている。突条8Eは、ビードリング16及びクランプ10に当接する範囲には形成されていない。
【0024】
図2(A)及び図2(B)に示される様に、突条8Eは、ボディ外面8Dに、一方の端8A側から他方の端8B側まで、筋状に延びている。この突条8Eは、ボディ外面8Dの軸方向に面する範囲で半径方向に延びている。突条8Eは、ボディ外面8Dの半径方向に面する範囲で軸方向に延びている。この突条8Eの延びる方向は例示であって、これに限定されない。
【0025】
図3には、突条8Eの長手方向に垂直な断面が示されている。この突条8Eは、ボディ外面8Dに貼り付けられている。突条8Eは、ボディ8Cに例えば接着剤で接着されている。このボディ8Cと突条8Eとは、同じゴム材料からなっている。この突条8Eは、ボディ8Cと一体成形で形成されてよい。
【0026】
図3の両矢印Wは、突条8Eの幅を表している。幅Wは、ボディ外面8Dに沿って測定される。両矢印Hは、突条8Eの高さを表している。この高さHは、ボディ外面8Dから先端Ptまでの距離として測定される。
【0027】
この突条8Eの断面形状は、三角形である。この三角形は、底辺8Fと、底辺8Fから先端Ptまでの延びる他の辺8G及び8Hを備える。両矢印θは、底辺8Fと他の辺8Gとがなす内角と、底辺8Fと他の辺8Hとがなす内角とを表している。ここでは、底辺8Fと他の辺8Gがなす内角θと、底辺8Fと他の辺8Hとのなす内角θは等しくされているが、これらの内角θの大きさは異なってもよい。
【0028】
図4(A)には、ブラダー8の一部とローカバー4の一部とが示されている。ここでは、ローカバー4の一部として、ゴムシートから形成されたインナーライナー22、ゴム部材24及びゴム部材26が示されている。図4(A)から図4(C)では、左右方向が加硫装置2及びローカバー4の周方向であり、上下方向下向きが加硫装置2及びローカバー4の半径方向外向きである。このインナーライナー22は、ローカバー4の内面4Aを形成している。
【0029】
ゴム部材24及びゴム部材26のそれぞれは帯状部材が巻かれて形成されている。このゴム部材26の内面26Aにゴム部材24が圧着され、ゴム部材24の内面24Aにインナーライナー22が圧着されている。ゴム部材24及びゴム部材26は特に限定されない。ゴム部材24又はゴム部材26は、例えば、ゴムから形成されてもよいし、コードとトッピングゴムとから形成されてもよい。
【0030】
インナーライナー22は、周方向に巻かれた帯状ゴムシートの一方の端部と他方の端部とが重ね合わされて形成されたジョイント28を有する。このジョイント28は、一方の端部から形成された一方の圧着部22Aと他方の端部から形成された他方の圧着部22Bとからなっている。他方の圧着部22Bが内面24Aに圧着されている。一方の圧着部22Aは他方の圧着部22Bに圧着されている。図4(A)に示される様に、このジョイント28では、圧着部22Bの端面22Cによって段差が生じている。この端面22Cに面してスペース30が形成されている。このスペース30は、ジョイント28に起因してインナーライナー22とゴム部材24との間に形成されている。
【0031】
図4(A)では、ブラダー8は、ローカバー4の内面4Aから離れている。周方向において、ブラダー8の突条8Eはスペース30の位置に位置している。周方向において、突条8Eの先端Ptは、スペース30の位置に位置している。
【0032】
図4(B)では、ブラダー8がローカバー4の内面4Aに当接している。突条8Eが、インナーライナー22に押し付けられている。突条8Eは、端面22C及び内面24Aに向かってスペース30を押しつぶしている。
【0033】
図4(C)では、ブラダー8がローカバー4の内面4Aに当接している。ボディ8C及び突条8Eが、インナーライナー22に押し付けられている。突条8Eは、更に、端面22C及び内面24Aに向かってスペース30を押しつぶしている。
【0034】
ここで、この加硫装置2を用いて、タイヤ製造方法が説明される。このタイヤ製造方法では、図示されない帯状ゴムシートが準備される(STEP1)。この帯状ゴムシートが、図示されないドラムの外周面に巻かれ、一方の端部と他方の端部とが重ね合わされる(STEP2)。
【0035】
この重ね合わされた一方の端部と他方の端部とが圧着され、ジョイント28が形成される(STEP3)。この工程(STEP3)では、ジョイント28を有するインナーライナー22が形成される。この工程(STEP3)では、例えば、圧着ローラが、重ね合わされた一方の端部と他方の端部とをドラムの外周面に向かって押し付ける。これにより、一方の端部と他方の端部とが圧着される。
【0036】
このインナーライナー22の半径方向外側に、帯状ゴム材料が巻かれゴム部材24が形成される(STEP4)。このゴム部材24の半径方向外側に、更に、他の帯状ゴム材料が巻かれゴム部材26が形成される(STEP5)。このインナーライナー22、ゴム部材24及びゴム部材26に、更に他のゴム部材がアッセンブリーされて、ローカバー4が形成される(STEP6)。このローカバー4は、ジョイント28に起因するスペース30を有する。
【0037】
このローカバー4は、図示されない搬送装置によって、開姿勢にあるモールド6に投入される(STEP7)。この工程(STEP7)では、ブラダー8は収縮している。半径方向において、このローカバー4は、モールド6とブラダー8との間に位置させられる。この工程(STEP7)では、周方向において、スペース30の位置に、膨張したときのブラダー8の突条8Eが位置する様に、ローカバー4とブラダー8との位置が合わせられる。
【0038】
このブラダー8に流体が充填され膨張させられる(STEP8)。この工程(STEP8)で、ブラダー8によって、所定の姿勢にローカバー4が保持される。モールド6が閉じられる(STEP9)。工程(STEP9)では、モールド6が開姿勢から閉姿勢に変化する。ブラダー8は、ローカバー4をモールド6のキャビティ面6Aに押し付ける。工程(STEP9)では、加硫装置2は図1に示される使用状態にされる。この使用状態で、ローカバー4が加圧及び加熱される(STEP10)。この工程(STEP10)では、モールド6はヒータで加熱される。ブラダー8は加圧流体及び加熱流体によって加圧及び加熱される。この工程(STEP10)で、ローカバー4からタイヤが得られる。
【0039】
このタイヤ製造方法では、工程(STEP8)から工程(STEP10)において、ブラダー8は、図4(A)の使用状態から図4(B)の使用状態を経て、図4(C)の使用状態にされる。この工程(STEP8)から工程(STEP10)において、ブラダー8がローカバー4の内面4Aに押し付けられる。これにより、ブラダー8の突条8Eによって、スペース30が押しつぶされる。
【0040】
この製造方法では、工程(STEP8)及び工程(STEP9)において、膨張したブラダー8の突条8Eがスペース30を押しつぶす。工程(STEP10)において、突条8Eがローカバー4をモールド6のキャビティ面6Aに押し付けて、突条8Eがスペース30を押しつぶす。この工程(STEP10)において、スペース30がより小さく押しつぶされる。突条8Eでスペース30を押しつぶした状態で、ローカバー4が加圧及び加熱されている。この工程(STEP10)により、スペース30がより小さく押しつぶされる。このタイヤ製造方法では、スペース30を押しつぶすことで、タイヤのエア残りが低減される。
【0041】
このタイヤ製造方法は、工程(STEP7)において、周方向においてスペース30の位置に突条8Eが位置する様に、ローカバー4とブラダー8との位置が合わされる(STEP7)。この工程(STEP7)では、膨張したブラダー8において、周方向においてスペース30の位置に突条8Eが位置する様に、位置合わせがされる。この工程(STEP7)により、より確実に、スペース30が押しつぶされる。この観点から、好ましくは、このタイヤ製造方法は、この工程(STEP7)を含む。
【0042】
工程(STEP8)から工程(STEP10)では、この突条8Eが、スペース30を押しつぶす。この突条8Eは、先細りな形状を備えているので、局所的に、スペース30を押しつぶすことができる。この突条8Eは、スペース30をより小さくすることができる。この観点から、好ましくは、突条8Eは、ボディ8Cから先端Ptに向かって先細りな形状を備える。
【0043】
工程(STEP8)から工程(STEP10)において、内角θが小さすぎる突条8Eは、スペース30を押しつぶす効果が小さい。この観点から、この内角θは、好ましくは、3.8°以上であり、更に好ましくは7.5°以上である。一方で、内角θが大きすぎる突条8Eも、スペース30を押しつぶす効果が小さい。この観点から、この内角θは、好ましくは、21.8°以下であり、更に好ましくは18.3°以下であり、特に好ましくは14.9°以下である。
【0044】
工程(STEP8)から工程(STEP10)において、高さHが大きい突条8Eは、スペース30を押しつぶす効果が大きい。この観点から、高さHは、好ましくは1mm以上であり、更に好ましくは2mm以上である。一方で、高さHが大きすぎる突条8Eは、突条8Eに隣接する領域での押し付け力が小さい。これにより、却ってエア残りが生じ易い。この観点から、高さHは好ましくは6mm以下であり、更に好ましくは5mm以下であり、特に好ましくは4mm以下である。
【0045】
この加硫装置2のブラダー8では、突条8Eの幅Wは30mmにされた。この突条8Eの幅Wは、特に限定されないが、小さすぎる突条8Eは、スペース30を押しつぶす効果が小さい。この観点から、この幅Wは、好ましくは、20mm以上である。一方で、幅Wが大きすぎる突条8Eも、スペース30を押しつぶす効果が小さい。この観点から、この幅Wがは、好ましくは、40mm以下である。
【0046】
この工程(STEP3)では、ジョイント28を有するインナーライナー22が形成される。このインナーライナー22は、ローカバー4の内面4Aを形成している。このインナーライナー22に突条8Eが直に押し付けられることで、インナーライナー22によって形成されるスペース30は、ぶされ易い。この観点から、この工程(STEP3)では、帯状のゴムシートからインナーライナー22が得られることが好ましい。
【0047】
なお、ここでは、インナーライナー22を例にタイヤの製造方法が説明されたが、このタイヤの製造方法は、インナーライナー22に限定されない。ローカバー4において、インナーライナー22より半径方向外側に積層された他のゴムシートのジョイントに起因するスペースが押しつぶされてもよい。
【0048】
この加硫装置2では、ブラダー8の突条8Eがボディ8Cに貼り付けられている。この突条8Eは、既存のブラダーに貼り付けることで、ブラダー8として用いることができる。ローカバー4のジョイント28の配置に合わせて、突条8Eの貼り付け位置が変更可能である。この観点から、好ましくは、突条8Eはボディ8Cに貼り付けられる。
【0049】
前述の様に、工程(STEP7)では、膨張したブラダー8において、周方向においてスペース30の位置に突条8Eが位置する様に、位置合わせがされる。このローカバー4とブラダー8との位置を合わせる方法は、周方向においてスペース30の位置に突条8Eが位置する様にされればよく、特に限定されない。
【0050】
このローカバー4とブラダー8との位置を合わせるために、例えば、加硫装置2が、ローカバー4とブラダー8との位置を合わせる回転装置を備えてもよい。この回転装置は、例えば、加硫装置2に投入されるローカバー4が載置される待機テーブルに設けられてもよいし、加硫装置2にローカバー4を投入する搬送装置に設けられてもよい。また、この回転装置は例示であって、ローカバー4とブラダー8との位置を合わせられればよく、ローカバー4を回転させる装置に限定されない。この回転装置は、ローカバー4とブラダー8との両者を回転させてもよいし、ブラダー8のみを回転させてもよい。
【0051】
また、ローカバー4のスペース30の位置を特定する方法は特に限定されない。例えば、工程(STEP2)、工程(STEP3)、工程(STEP3)等で、スペース30の位置が特定されてもよい。更に、特定されたスペース30の位置を表示するマークが付されてもよい。また、加硫装置2は、スペース30の位置を検出するセンサーを備えてもよい。ローカバー4とブラダー8との位置を合わせる工程(STEP7)に先立って、センサーでスペース30の位置が検出されてもよい。センサーは、スペース30の位置をローカバー4の形状から特定してもよいし、前述のマークの位置から特定してもよい。
【実施例0052】
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
【0053】
[実施例1]
図1に示される加硫装置が準備された。このブラダーの突条の高さHは3mmであり、内角θは11.3°であった。この加硫装置を用い、タイヤが製造された。
【0054】
[比較例]
突条を備えない他は、実施例1と同様にされた加硫装置が準備された。この加硫装置を用いた他は実施例1と同様にして、タイヤが製造された。
【0055】
[実施例2-6]
突条の高さHと内角θとを表1に示される通りとした他は実施例1と同様にして、タイヤが製造された。
【0056】
[エア残りの評価]
得られたタイヤで、エア残りの発生率が評価された。実施例1から6のエア残りの評価結果が、比較例での評価結果を100とする指数で表されている。この指数は、小さいほどエア残りの発生率が低く、好ましい。その評価結果が、表1に示されている。
【0057】
【表1】
【0058】
表1に示されるように、実施例の製造方法では、比較例の製造方法に比べて評価が高い。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0059】
以上説明された方法は、タイヤの製造に広く適用されうる。
【符号の説明】
【0060】
2・・・加硫装置
4・・・ローカバー
4A・・・内面
6・・・モールド
6A・・・キャビティ面
8・・・ブラダー
8C・・・ボディ
8D・・・ボディ外面
8E・・・突条
22・・・インナーライナー
28・・・ジョイント
30・・・スペース
図1
図2
図3
図4