(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022181320
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】野球用グローブ
(51)【国際特許分類】
A63B 71/14 20060101AFI20221201BHJP
【FI】
A63B71/14 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021088202
(22)【出願日】2021-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000108258
【氏名又は名称】ゼット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154726
【弁理士】
【氏名又は名称】宮地 正浩
(72)【発明者】
【氏名】鶴田 昌博
(57)【要約】
【課題】手口部に挿入された手の甲を露出させる窓部の手口部側に配置されて、当該手の甲に沿って手幅方向に延びる帯状の甲部ベルトを備えた野球用グローブにおいて、良好な装着性を維持しながら、手の甲の蒸れを抑制できる技術を提供する。
【解決手段】手口部5に挿入された手の甲を露出させる窓部6の手口部5側に配置されて、当該手の甲に沿って手幅方向に延びる帯状の甲部ベルト20を備えた野球用グローブ1であって、甲部ベルト20の内面に、手口部5と窓部6とに亘る複数の通気用溝部22が、手幅方向に沿って並設されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
手口部に挿入された手の甲を露出させる窓部の前記手口部側に配置されて、当該手の甲に沿って手幅方向に延びる帯状の甲部ベルトを備えた野球用グローブであって、
前記甲部ベルトの内面に、前記手口部と前記窓部とに亘る複数の通気用溝部が、前記手幅方向に沿って並設されている野球用グローブ。
【請求項2】
前記甲部ベルトの内面に、内方に膨出する3以上の膨出部が、隣接間に前記通気用溝部となる間隔を隔てた状態で前記手幅方向に沿って並設されている請求項1に記載の野球用グローブ。
【請求項3】
前記甲部ベルトが、外面を構成する外皮と内面を構成する内皮との間に前記膨出部を形成する弾性体を内装して構成されており、
前記内皮が、前記弾性体の表面に沿って膨出されていると共に、その内皮における当該弾性体の周囲縁部が、前記外皮側に縫合されている請求項2に記載の野球用グローブ。
【請求項4】
前記甲部ベルトを構成する内皮が、ヌバックレザーで構成されている請求項3に記載の野球用グローブ。
【請求項5】
前記通気用溝部の幅が、前記膨出部の高さよりも大きいものに設定されている請求項2~4の何れか1項に記載の野球用グローブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、野球やソフトボールなどで捕球するために手に装着して使用される野球用グローブで、特に、手口部に挿入された手の甲を露出させる窓部の前記手口部側に配置されて、当該手の甲に沿って手幅方向に延びる帯状の甲部ベルトを備えた野球用グローブに関する。
【背景技術】
【0002】
野球用グローブの甲部ベルトの内面には、一般的に、手口部に挿入された手の甲を保護しながら装着性を向上させるためにボア(起毛材)が貼り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
野球やソフトボールのような夏季に屋外で行われるスポーツでは、野球用グローブのような装着具において十分な暑さ対策を施すことが望まれている。
しかしながら、上述の従来の野球用グローブのように、内面にボアが貼着されている甲部ベルトでは、手口部に挿入された手の甲と甲部ベルトとの間の隙間がボアで塞がれて、手の甲が蒸れるという問題がある。
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、手口部に挿入された手の甲を露出させる窓部の前記手口部側に配置されて、当該手の甲に沿って手幅方向に延びる帯状の甲部ベルトを備えた野球用グローブにおいて、良好な装着性を維持しながら、手の甲の蒸れを抑制できる技術を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1特徴構成は、手口部に挿入された手の甲を露出させる窓部の前記手口部側に配置されて、当該手の甲に沿って手幅方向に延びる帯状の甲部ベルトを備えた野球用グローブであって、
前記甲部ベルトの内面に、前記手口部と前記窓部とに亘る複数の通気用溝部が、前記手幅方向に沿って並設されている点にある。
【0006】
本構成によれば、装着者が手を手口部に挿入した装着時において、当該手の甲とそれに沿って設けられた甲部ベルトとの間には、手口部と窓部とに亘る複数の通気用溝部が形成されている。よって、手口部に挿入された手の甲の表面において、甲部ベルトとの間に形成された複数の通気用溝部を介して、手口部と窓部との間で通気が容易に行われることになるので、当該手の甲の蒸れを好適に抑制することができる。また、これら複数の通気用溝部が手幅方向に沿って並設されているので、甲部ベルトの内面において、互いに隣接する通気用溝部の間の部分が、手口部と窓部とに亘って手の甲に当接し、装着性を良好なものに保つことができる。
従って、本発明により、手口部に挿入された手の甲を露出させる窓部の前記手口部側に配置されて、当該手の甲に沿って手幅方向に延びる帯状の甲部ベルトを備えた野球用グローブにおいて、良好な装着性を維持しながら、手の甲の蒸れを抑制できる技術を提供することができる。
【0007】
本発明の第2特徴構成は、前記甲部ベルトの内面に、内方に膨出する3以上の膨出部が、隣接間に前記通気用溝部となる間隔を隔てた状態で前記手幅方向に沿って並設されている点にある。
【0008】
本構成によれば、甲部ベルトの内面において、手幅方向に沿って並設された3以上の膨出部の隣接間の夫々に、手口部と窓部とに亘る通気用溝部を好適に形成することができる。また、これら3以上の膨出部の夫々の頂部が亘って、手口部に挿入された手の甲に当接させて、装着性を向上させることができる。
【0009】
本発明の第3特徴構成は、前記甲部ベルトが、外面を構成する外皮と内面を構成する内皮との間に前記膨出部を形成する弾性体を内装して構成されており、
前記内皮が、前記弾性体の表面に沿って膨出されていると共に、その内皮における当該弾性体の周囲縁部が、前記外皮側に縫合されている点にある。
【0010】
本構成によれば、甲部ベルトにおいて、外皮と内皮との間に弾性体を内装し、内皮における当該弾性体の周囲縁部を外皮側に縫合させる形態で、甲部ベルトの内面に、内方に膨出する膨出部を形成することができる。
【0011】
本発明の第4特徴構成は、前記甲部ベルトを構成する内皮が、ヌバックレザーで構成されている点にある。
【0012】
本構成によれば、甲部ベルトの内面を構成する内皮として、牛革の表面をバフがけして製作されるヌバックレザーを用いることで、甲部ベルトの内面において特に手の甲に接触する部分の耐摩耗性を向上しながら蒸れ感や滑りを軽減して、良好な装着感を得ることができる。
【0013】
本発明の第5特徴構成は、前記通気用溝部の幅が、前記膨出部の高さよりも大きいものに設定されている点にある。
【0014】
本構成によれば、甲部ベルトの内面において、通気用溝部の幅がその両側に形成された膨出部の高さよりも大きいものに設定されているので、膨出部が手の甲で押しつぶされて側方に膨らむ場合であっても、通気用溝部の閉鎖を抑制して、当該通気用溝部を介した通気の維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図3】本実施形態の野球用グローブの手口部側から甲部ベルトの内面を見た斜視図
【
図4】本実施形態の野球用グローブの手口部の端面図
【
図5】本実施形態の野球用グローブの甲部ベルトの内面側の図
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係る野球用グローブ1の実施形態について図面に基づいて説明する。
図1、
図2及び
図3に示すように、本実施形態の野球用グローブ1は、装着者の手H(
図2参照)の5本の指が順に挿入される親指挿入袋部11、人差し指挿入袋部12、中指挿入袋部13、薬指挿入袋部14、及び小指挿入袋部15を設けると共に、親指挿入袋部11と人差し指挿入袋部12の間にウェブ16が設けた構成を有する。また、手Hが挿入される手口部5の甲側(背面側)で手Hの挿入方向の先方側には、窓部6が設けられており、この窓部6により手口部5に挿入された手の甲Haが露出される。更に、手Hが挿入される手口部5の甲Ha側で窓部6の手口部5側(手Hの挿入方向における後方側)には、手の甲Haに沿って手幅方向(手Hの挿入方向に直交する手Hの幅方向)に延びる帯状の甲部ベルト20が設けられている。
【0017】
甲部ベルト20は、基端部が親指挿入袋部11の基端側背面である親指背面基部11a側から手幅方向に延出し、その先端部が遊離されている。その遊離された甲部ベルト20の先端部は、小指挿入袋部15の基端側背面である小指背面基部15aに対して甲部ベルト20の長さ調整可能な状態で革紐30により結合されている。
【0018】
以上が本実施形態の野球用グローブ1の基本構成であるが、本実施形態の野球用グローブ1は、良好な装着性を維持しながら、手の甲Ha(
図2、
図4参照)の蒸れを抑制するための特徴構成を有しており、その詳細について以下に説明を加える。
【0019】
図2及び
図3に示すように、甲部ベルト20の内面には、手口部5と窓部6とに亘って手口部5に対する手Hの挿入方向に延びる2つの通気用溝部22が手幅方向に沿って並設されている。具合的に、甲部ベルト20の内面には、内方に膨出する3つの膨出部21が、隣接間に上記通気用溝部22となる間隔を隔てた状態で手幅方向に沿って並設されている。
このような構成により、特に
図4及び
図5に示すように、装着者が手Hを手口部5に挿入した装着時において、当該手の甲Haとそれに沿って設けられた甲部ベルト20の内面(内皮25)との間には、手口部5と窓部6とに亘る2つの通気用溝部22が形成される。すると、手口部5に挿入された手の甲Haの表面において、甲部ベルト20との間に形成された2つの通気用溝部22を介して、手口部5と窓部6との間で通気が容易に行われる。よって、手の甲Haの蒸れが好適に抑制されることになる。また、これら複数の通気用溝部22が手幅方向に沿って並設されているので、甲部ベルト20の内面において、互いに隣接する通気用溝部22の間の膨出部21が、手口部5と窓部6とに亘って手の甲Haに当接し、装着性が良好なものに保たれることになる。
【0020】
図4に示すように、甲部ベルト20は、外面を構成する外皮26と内面を構成する内皮25との間に膨出部21を形成するウレタン系エラストマーやゴムなどの弾性体27を内装して構成されている。また、内皮25には、外皮26と比べて伸縮性が高い皮革を利用しており、その内皮25が弾性体27の表面に沿って膨出することで、膨出部21が形成されている。また、内皮25における膨出部21(弾性体27)の周囲縁部は、外皮26側に縫合されている。よって、
図5に示すように、夫々の通気用溝部22の両側部には、膨出部21の周囲縁部の縫合部であるステッチ28が形成されることになる。そして、この両ステッチ28により通気用溝部22の幅wが確保されている。
【0021】
尚、
図5に示すように、夫々の膨出部21の通気用溝部22側の外形は、それらの隣接間に形成される通気用溝部22の幅が手口部5と窓部6とに亘って略一定に保たれるものに適宜設定されている。また、夫々の膨出部21の通気用溝部22側以外の外形については、甲部ベルト20の内面の周縁部に沿わせた形状とされている。
【0022】
図4に示すように、甲部ベルト20の内面において、通気用溝部22の幅wがその両側に形成された膨出部21の高さhよりも大きいものに設定されている。このことで、膨出部21が手の甲Haで押しつぶされて通気用溝部22側の側方に膨らむ場合であっても、その膨出部21の側方への膨らみによる通気用溝部22の閉鎖が抑制されて、通気用溝部22を介した通気が維持される。尚、この通気用溝部22を介した通気性を確保可能な範囲内において、通気用溝部22の幅wを膨出部21の高さhよりも小さくすることもできる。
【0023】
甲部ベルト20の内面を構成する内皮25としては、手Hと接触する他の部位と同様に、牛革が使用されている。更に、この内皮25には、牛革の表面(手の甲Haに接触する側の面)をバフがけして製作されるヌバックレザーが用いられている。よって、甲部ベルト20の内面において特に手の甲Haに接触する膨出部21の耐摩耗性を向上しながら蒸れ感や滑りを軽減して、良好な装着感が得られている。
【0024】
〔別実施形態〕
本発明の他の実施形態について説明する。尚、以下に説明する各実施形態の構成は、それぞれ単独で適用することに限らず、他の実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0025】
(1)上記実施形態では、本発明を内野手や外野手にて用いられる野球用グローブ1に適用した実施形態を説明したが、当然、本発明はファーストミットやキャッチャーミットなどの各種の野球用グローブにも適用することができる。
【0026】
(2)上記実施形態では、甲部ベルト20の内面に、複数の膨出部21を形成してその隣接間に通気用溝部22を形成したが、膨出部21を形成することなく、甲部ベルト全体を厚肉に形成し、その甲部ベルトの内面に薄肉部としての通気用溝部22を形成するように構成しても構わない。
【0027】
(3)上記実施形態では、甲部ベルト20の内面において、2つの通気用溝部22を隣接間に挟む形態で3つの膨出部21を形成した例を示したが、これら通気用溝部22の数については装着性と通気性を確保するべく2つ以上あればよく、それに伴ってこれら通気用溝部22を隣接間に形成する膨出部21の数については3つ以上であればよい。
【0028】
(4)上記実施形態では、甲部ベルト20の内皮25において、弾性体27の周囲縁部を外皮26側に縫合したが、膨出部21を形成可能な範囲でその縫合部を省略又は簡略化することも可能である。また、縫合に代えて、溶着又は接着等を行っても構わない。
【0029】
(5)上記実施形態では、甲部ベルト20の内皮25としてヌバックレザーを用いたが、ヌバックレザーの代わりに、スエードなどの別の加工を施した皮革や伸縮性や通気性を有する布地などを甲部ベルト20の内皮25として利用しても構わない。
【符号の説明】
【0030】
1 野球用グローブ
5 手口部
6 窓部
20 甲部ベルト
21 膨出部
22 通気用溝部
25 内皮
26 外皮
27 弾性体
28 ステッチ
Ha 手の甲