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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022181321
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】ダイレータ及びカテーテル組立体
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/06 20060101AFI20221201BHJP
【FI】
A61M25/06 550
A61M25/06 556
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021088204
(22)【出願日】2021-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】390030731
【氏名又は名称】朝日インテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111615
【弁理士】
【氏名又は名称】佐野 良太
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【弁理士】
【氏名又は名称】村雨 圭介
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 翔太
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA02
4C267AA05
4C267AA16
4C267BB02
4C267BB03
4C267BB11
4C267BB12
4C267BB31
4C267CC08
4C267HH07
(57)【要約】
【課題】カテーテルの性能を損ねることなく、カテーテル挿入時にカテーテル先端部のめくれ上がりを抑制することができるダイレータ及びカテーテル組立体を提供する。
【解決手段】本発明のダイレータ1は、ガイドワイヤGWが挿通される、先端部3と基端部5との間に少なくとも外径が拡縮可能な中間部4を備えた中空状のシャフト2を有する。中間部4の肉厚は先端部3及び基端部5の肉厚よりも厚く、シャフト2にガイドワイヤGWが挿通された状態では、中間部4の外径が基端部5の外径よりも大きく、シャフト2にガイドワイヤGWが挿通されていない状態では、中間部4の外径が基端部5の外径以下に縮径するように、又は縮径可能に構成されている。また、本発明のカテーテル組立体10は、カテーテル7と、カテーテル7内に進退可能に収容されるダイレータ1とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガイドワイヤが挿通される、先端部と基端部との間に少なくとも外径が拡縮可能な中間部を備えた中空状のシャフトを有し、
前記中間部の肉厚が、前記先端部及び前記基端部の肉厚よりも厚く、
前記シャフトにガイドワイヤが挿通された状態では、前記中間部の外径が前記基端部の外径よりも大きく、
前記シャフトにガイドワイヤが挿通されていない状態では、前記中間部の外径が前記基端部の外径以下に縮径するように、又は縮径可能に構成されているダイレータ。
【請求項2】
前記シャフトにガイドワイヤが挿通されていない状態で、前記中間部の外径が、前記基端部の外径よりも大きく、
前記中間部が、前記先端部側の端部から外径が漸増していく第1テーパ部と、前記基端部側の端部から外径が漸増していく第2テーパ部とを備える、請求項1に記載のダイレータ。
【請求項3】
前記シャフトにガイドワイヤが挿通されていない状態で、前記中間部の内径が、前記先端部及び前記基端部の内径よりも小さく、
前記中間部が、前記先端部側の端部から内径が漸減していく内周テーパ部を備える、請求項1に記載のダイレータ。
【請求項4】
前記中間部に、前記シャフトの軸方向に沿って一又は二以上のスリットが設けられている、請求項1~3のいずれか1項に記載のダイレータ。
【請求項5】
カテーテルと、該カテーテル内に進退可能に収容される請求項1~4のいずれか1項に記載のダイレータとを備え、
前記ダイレータの前記先端部及び前記中間部が、前記カテーテルの先端より先端側に位置した状態で、前記シャフトにガイドワイヤが挿通された場合に、前記中間部の外径が前記基端部に組み付けられた前記カテーテルの外径と等しいかそれよりも大きい、カテーテル組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイレータ、及びカテーテル内にダイレータが収容されたカテーテル組立体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カテーテルを例えば血管等の管状器官内に挿入するときは、まずシースと呼ばれる管状部材をガイドワイヤに沿って管状器官内に挿入し、シースを通してカテーテルを管状器官内の所定の部位に達するように押し込む手法がとられていたが、近年、更なる低侵襲を実現すべく、シースを用いずにカテーテルを挿入するシースレス法が普及している。シースレス法では、カテーテルの中に穿刺部拡張の役割を担うダイレータを挿入したカテーテル組立体を、ガイドワイヤに沿って管状器官内に挿入し、カテーテルを管状器官内の所定の部位にまで挿入した後、ダイレータ及びガイドワイヤをカテーテル組立体から抜き去ることによって、カテーテルの管状器官内への挿入を実現している。
【0003】
シースレス法ではカテーテルにダイレータを内挿し、これを管状器官内に挿入していくが、カテーテル先端部(チップ)においてダイレータとの段差が生じるので、当該段差が皮膚組織等に引っ掛かり、カテーテルのチップがめくれ上がってしまい、カテーテルを管状器官内の所定の位置まで挿入できなくなることが生じ得る。これに関連して、特許文献1には、カテーテル先端チップの内径をダイレータの外径よりも小さくすることによってカテーテル先端チップとダイレータとの密着性を高めることにより、カテーテル先端部のチップめくれを抑制する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-154903号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のようにカテーテルのチップ部分の内径を、カテーテル本体の内径よりも小さく構成すると、カテーテルのチップ部分のみカテーテル本体よりも内腔のスペースが小さくなってしまい、当該カテーテル内に併用できるデバイスが限定されてしまうという問題がある。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、カテーテルの性能を損ねることなく、カテーテル挿入時にカテーテル先端部のめくれ上がりを抑制することができるダイレータ及びカテーテル組立体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、第一に本発明は、ガイドワイヤが挿通される、先端部と基端部との間に少なくとも外径が拡縮可能な中間部を備えた中空状のシャフトを有し、前記中間部の肉厚が、前記先端部及び前記基端部の肉厚よりも厚く、前記シャフトにガイドワイヤが挿通された状態では、前記中間部の外径が前記基端部の外径よりも大きく、前記シャフトにガイドワイヤが挿通されていない状態では、前記中間部の外径が前記基端部の外径以下に縮径するように、又は縮径可能に構成されているダイレータを提供する(発明1)。
【0008】
かかる発明(発明1)によれば、ダイレータのシャフトにガイドワイヤを挿通することにより、中間部の外径が基端部の外径よりも大きい状態が維持される。この状態で、ガイドワイヤを介してダイレータを先端部から体内に挿入すると、ダイレータの中間部が、基端部に組み付けられているカテーテル先端部の外径程度にまで穿刺部を拡張するため、カテーテル先端部のめくれ上がりを抑制しながら、カテーテルを体内へ挿入することができる。
【0009】
上記発明(発明1)においては、前記シャフトにガイドワイヤが挿通されていない状態で、前記中間部の外径が、前記基端部の外径よりも大きく、前記中間部が、前記先端部側の端部から外径が漸増していく第1テーパ部と、前記基端部側の端部から外径が漸増していく第2テーパ部とを備えていてもよい(発明2)。
【0010】
かかる発明(発明2)によれば、中間部が先端部側から外径が徐々に大きくなっていく形状となっていることにより、ガイドワイヤを介してダイレータを先端部から体内に挿入した場合に、ダイレータの中間部の外径が先端部や基端部の外径よりも大きくなっているとしても、スムーズに体内へと挿入されていく。また、中間部が基端部側から外径が徐々に大きくなっていく形状となっていることにより、ダイレータをカテーテルから抜き去るときに、ダイレータの中間部がスムーズにカテーテル内に導入されていく。
【0011】
上記発明(発明1)においては、前記シャフトにガイドワイヤが挿通されていない状態で、前記中間部の内径が、前記先端部及び前記基端部の内径よりも小さく、前記中間部が、前記先端部側の端部から内径が漸減していく内周テーパ部を備えていてもよい(発明3)。
【0012】
かかる発明(発明3)によれば、シャフトにガイドワイヤを挿通すると、内周テーパ部の形状に対応して中間部の外径が先端部側から徐々に大きくなっていく形状となり、ガイドワイヤを介してダイレータを先端部から体内に挿入した場合に、ダイレータの中間部の外径が先端部や基端部の外径よりも大きくなっているとしても、スムーズに体内へと挿入されていく。
【0013】
上記発明(発明1~3)においては、前記中間部に、前記シャフトの軸方向に沿って一又は二以上のスリットが設けられていてもよい(発明4)。
【0014】
かかる発明(発明4)によれば、スリットが存在していることにより、スリットが開くか又は閉じることにより、中間部の拡径・縮径がスムーズに行われる。
【0015】
第二に本発明は、カテーテルと、該カテーテル内に進退可能に収容される発明1~4のいずれかのダイレータとを備え、前記ダイレータの前記先端部及び前記中間部が、前記カテーテルの先端より先端側に位置した状態で、前記シャフトにガイドワイヤが挿通された場合に、前記中間部の外径が前記基端部に組み付けられた前記カテーテルの外径と等しいかそれよりも大きい、カテーテル組立体を提供する(発明5)。
【発明の効果】
【0016】
本発明のダイレータ及びカテーテル組立体によれば、カテーテルの性能を損ねることなく、カテーテル挿入時にカテーテル先端部のめくれ上がりを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1実施形態に係るダイレータの構造を示す説明図である。
図2】同ダイレータの内部構造を示す説明図であり、(a)はダイレータの側面視断面図であり、(b)は(a)におけるA-A’線上の切断面である。
図3】同ダイレータを備えるカテーテル組立体の構造及び同ダイレータの中間部の機能を示す説明図であり、(a)はカテーテル組立体においてダイレータにガイドワイヤが挿通された状態を示し、(b)はダイレータからガイドワイヤが抜去された状態を示し、(c)はカテーテルからダイレータが抜去される様子を示す。
図4】本発明の第2実施形態に係るダイレータの構造を示す説明図である。
図5】本発明の第3実施形態に係るダイレータの構造を示す説明図である。
図6】本発明の第4実施形態に係るダイレータの構造を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<第1実施形態>
本発明の第1実施形態を図面に基づいて説明する。図1は本実施形態に係るダイレータ1の構造を示す説明図である。また、図2はダイレータ1の内部構造を示す説明図であり、(a)はダイレータの側面視断面図であり、(b)は(a)におけるA-A’線上の切断面である。なお、本発明は以下に説明する実施形態にのみ限定されるものではなく、実施形態はあくまでも本発明の技術的特徴を説明するために記載された例示にすぎない。また、各図面に示す形状や寸法はあくまでも本発明の内容の理解を容易にするために示したものであり、実際の形状や寸法を正しく反映したものではない。
【0019】
なお、本明細書において、「穿刺部」とは、ダイレータやガイドワイヤ、カテーテル等が挿入される生体の部位であって、ダイレータ等が接触し穿刺される部位を意味する。「先端方向」とは、ダイレータの軸方向に沿う方向であって、ダイレータが穿刺部に向かって進行する方向を意味する。「基端方向」とは、ダイレータの軸方向に沿う方向であって、先端方向と反対の方向を意味する。
【0020】
ダイレータ1は、ガイドワイヤGWが挿通される、先端部3と基端部5との間に少なくとも外径が拡縮可能な中間部4を備えた中空状のシャフト2を有し、シャフト2の基端側の端部(基端部5の基端方向の端部)にはハブ6が取り付けられている。シャフト2はその内部にガイドワイヤGWが挿通される内腔21を軸方向に沿って有する長尺な管状部材であり、使用目的や使用位置等によって、その形状(長さや径)が適宜設計される。
【0021】
シャフト2を構成する材料としては、特に限定されるものではないが、体腔内に挿通されることから、抗血栓性、可撓性および生体適合性を有すると共に、手元の押し込み力を先端部3まで確実に伝達できるように、高い剛性を有していることが好ましい。このような材料としては、例えば、ポリケトン、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリウレタン、シリコーン、フッ素樹脂などの樹脂材料;ステンレス鋼、超弾性合金(ニッケル―チタン合金)などの金属材料等を採用することができる。これらの中で、剛性(曲げ弾性率)を高める観点から、シャフト2を構成する材料としてポリエーテルエーテルケトン(PEEK)が採用されてもよいし、硬さと滑りを併せ持つ特性を考慮して、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体からなるフッ素樹脂(ETFE)が採用されてもよい。これらの材料を採用することにより、シャフト2を介して手元の押し込み力をダイレータ1の先端部まで確実に伝達することできる。
【0022】
先端部3は、ガイドワイヤを介して穿刺部から最初に体内に挿入される部分であり、基端方向の端部が中間部4に連結され、先端方向に向かって先細りとなる形状を有している。また、先端部3の外径は中間部4に連結される端部近傍が最大となっており、当該最大外径が後述する基端部5の外径と同じ寸法となっている。
【0023】
基端部5は、ダイレータ1が後述するカテーテル7とともにカテーテル組立体10を構成する際、カテーテル7が組み付けられる部分であり、基端部5の外径はカテーテル7の内径とほぼ同一であるか、カテーテル7の内径よりもやや小さな外径を有している。なお、ダイレータ1にカテーテル7が組み付けられた際に、基端部5の外周面とカテーテル7の内周面との間に隙間があると、カテーテル組立体10が生体内に挿入される過程でカテーテル7が引っ掛かるおそれがあるため、少なくとも基端部5の先端側においては、基端部5の外径とカテーテル7の内径との差がない、あるいはできる限り小さいことが望ましい。また、基端部5の外径は、必ずしも基端部5の全長に亘って同一である必要はなく、例えば基端部5の先端側よりも基端部5の基端側の外径が小さいことや、基端部5において部分的に外径が小さくなっている部分が存在していることも許容される。
【0024】
本実施形態においては、シャフト2にガイドワイヤGWが挿通された状態では、中間部4の外径Dが基端部5の外径よりも拡径しており、シャフト2にガイドワイヤGWが挿通されていない状態では、中間部4の外径Dが基端部5の外径以下に縮径可能に構成されている。中間部4の内径dは、シャフト2にガイドワイヤGWが挿通されていない状態で、先端部3及び基端部5の内径とほぼ等しくなっている一方で、中間部4の外径Dが、基端部5の外径よりも大きく構成されているので、中間部4の肉厚は、先端部3及び基端部5の肉厚よりも厚いことになる。このように中間部4が構成されていることにより、ダイレータ1のシャフト2にガイドワイヤGWを挿通すると、中間部4の外径が必ず先端部3及び基端部5の外径よりも大きい状態が維持されることになる。
【0025】
ここで、中間部4の一番厚い部分の肉厚をX、基端部5の外径をYとすると、中間部4の肉厚Xと基端部5の外径Yとは2X≦Yを満たす関係になっている。すなわち、中間部4の肉厚Xが基端部5の外径Yの半分以下となっていることにより、シャフト2にガイドワイヤGWが挿通されていない状態で、中間部4の外径Dが基端部5の外径以下に縮径可能な構造を実現することができる。
【0026】
中間部4には、シャフト2の軸方向に沿って4本のスリット41が軸方向断面視で(すなわち図2(b)の切断面に表されているように)上下左右対称な位置に設けられている。このようなスリット41が存在していることにより、スリット41が開くか又は閉じることにより、中間部4の拡径・縮径がスムーズに行われる。なお、中間部4にスリット41を設ける際、そのスリット41の本数は4本に限られるものではなく、シャフト2の材料や形状等によってスリット41の本数が適宜決定されてよい。
【0027】
中間部4は、先端部3側の端部から基端方向に向かって外径Dが漸増していく第1テーパ部42を備える。このように中間部4が先端部3側から外径Dが徐々に大きくなっていく形状となっていることにより、ガイドワイヤGWを介してダイレータ1を先端部2から体内に挿入した場合に、ダイレータ1の中間部4の外径Dが先端部3や基端部5の外径よりも大きくなっているとしても、スムーズに体内へと挿入されていく。
【0028】
また、中間部4は、基端部5側の端部から先端方向に向かって外径Dが漸増していく第2テーパ部43を備える。このように中間部4が基端部5側から外径Dが徐々に大きくなっていく形状となっていることにより、ダイレータ1をカテーテル7から抜き去るときに、ダイレータ1の中間部4がスムーズにカテーテル7内に導入されていく。
【0029】
図3は、ダイレータ1を備えるカテーテル組立体10の構造及びダイレータ1の中間部4の機能を示す説明図であり、(a)はカテーテル組立体10においてダイレータ1にガイドワイヤGWが挿通された状態を示し、(b)はダイレータ1からガイドワイヤGWが抜去された状態を示し、(c)はカテーテル7からダイレータ1が抜去される様子を示す。なお、図3においては、ダイレータ1の中間部4の機能をわかりやすく説明するために、カテーテル組立体10の全体構造を示す各図中にダイレータ1の中間部4の断面構造を併せて示している。また、ガイドワイヤGWの外径は0.025~0.038インチであることが一般的である。
【0030】
カテーテル組立体10は、カテーテル7と、カテーテル7内に進退可能に収容されるダイレータ1とを備える。カテーテル7は、カテーテル本体71と、先端チップ72と、コネクタ73とから構成され、カテーテル本体71の先端方向の端部に先端チップ72を備えるとともに、カテーテル本体71の基端方向の端部にはコネクタ73が取り付けられている。先端チップ72を備えたカテーテル本体71は、その内部にダイレータ1を収容可能な貫通孔(不図示)を軸方向に沿って有する長尺な管状部材であり、使用目的や使用位置等によって、その形状(長さや径)が適宜設計される。
【0031】
カテーテル7のカテーテル本体71を構成する材料は、特に限定されるものではないが、例えば、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリエステルエラストマー、ポリウレタン、ポリウレタンエラストマー、シリコーン、フッ素樹脂などの樹脂材料等が挙げられる。また、カテーテル7の先端チップ72を構成する材料は、カテーテル本体71を構成する材料よりも柔軟な材料で形成するものとすることができ、例えば、ポリウレタン、ポリウレタンエラストマー、ポリアミド、ポリアミドエラストマーなどの樹脂材料等が挙げられる。
【0032】
カテーテル組立体10においては、図3(a)に示すように、ダイレータ1の先端部3及び中間部4がカテーテル7から突出するように、カテーテル7がダイレータ1の基端部5に組み付けられている。また、ダイレータ1のシャフト2にガイドワイヤGWが挿通された状態では、ダイレータ1の中間部4の外径Dが基端部5に組み付けられたカテーテル7(の先端チップ72)の外径と等しいかそれよりも拡径している。
【0033】
ダイレータ1のシャフト2にガイドワイヤGWが挿通されていれば、ガイドワイヤGWがダイレータ1のシャフト2の内径を維持するので、カテーテル組立体10を体内に挿入する過程においては、ダイレータ1の中間部4の外径Dがカテーテル7の外径以上に拡径した状態が維持される。この状態で、ガイドワイヤGWを介してダイレータ1を先端部3から体内に挿入すると、ダイレータ1の中間部4が、基端部5に組み付けられているカテーテル7の先端チップ72の外径程度にまで穿刺部を拡張するため、カテーテル7の先端チップ72のめくれ上がりを抑制しながら、カテーテル7を体内へ挿入することができる。
【0034】
図3(b)に示すように、ダイレータ1からガイドワイヤGWを引き抜くと、ダイレータ1のシャフト2の内径を維持するものがなくなり、ダイレータ1の中間部4の外径Dは、外力によって基端部5の外径程度にまで縮径可能になる。
【0035】
ダイレータ1からガイドワイヤGWを引き抜いた後、図3(c)に示すように、ダイレータ1をカテーテル7から引き抜こうと基端方向に動かすと、中間部4にスリット41が設けられていることで、中間部4の外径Dがカテーテル7の内径以下まで縮径され、中間部4がカテーテル7に干渉することなく、ダイレータ1をカテーテル7から抜去可能になる。特に、中間部4が第2テーパ部43を備えることにより、ダイレータ1を基端方向に引くだけで、ダイレータ1の中間部4がスムーズにカテーテル7内に導入され、中間部4の縮径が実現される。
【0036】
なお、本実施形態においては、ダイレータ1の中間部4の外径Dが基端部5に組み付けられたカテーテル7(の先端チップ72)の外径以上に拡径しているものとしたが、少なくともダイレータ1の中間部4の外径Dが基端部5の外径よりも拡径されていれば、カテーテル7の先端チップ72において生じるダイレータ1との段差が拡径された中間部4の存在によって低減されるので、カテーテル7の先端チップ72のめくれ上がりの抑制効果がある。
【0037】
<第2実施形態>
本発明の第2実施形態を図面に基づいて説明する。図4は本実施形態に係るダイレータ1Aの構造を示す説明図であり、ダイレータ1Aの有するシャフト2Aの中間部4Aの構造のみが第1実施形態と異なっている。そのため、第1実施形態に係るダイレータ1と同じ構造の部材、部位については、図4において第1実施形態と同じ符号で示されており、また以下においてその詳細な説明は省略する。
【0038】
ダイレータ1Aは、ガイドワイヤGWが挿通される、先端部3と基端部5との間に少なくとも外径が拡縮可能な中間部4Aを備えた中空状のシャフト2Aを有し、シャフト2AにガイドワイヤGWが挿通された状態では、中間部4Aの外径Dが基端部5の外径よりも拡径しており、シャフト2AにガイドワイヤGWが挿通されていない状態では、中間部4Aの外径Dが基端部5の外径以下に縮径するように構成されている。中間部4Aは、シャフト2AにガイドワイヤGWが挿通されていない状態で、中間部4Aの外径Dが、先端部3及び基端部5の外径とほぼ等しくなるように構成されている一方で、中間部4Aの内径dが、先端部3及び基端部5の内径よりも小さくなるように、中間部4Aの肉厚を先端部3及び基端部5の肉厚よりも厚く構成している。このように中間部4Aが構成されていることにより、ダイレータ1Aのシャフト2AにガイドワイヤGWを挿通すると、中間部4Aの外径が必ず先端部3及び基端部5の外径よりも大きい状態が維持されることになる。
【0039】
ここで、中間部4Aの一番厚い部分の肉厚をX、基端部5の外径をYとすると、中間部4Aの肉厚Xと基端部5の外径Yとは2X≦Yを満たす関係になっている。すなわち、中間部4Aの肉厚Xが基端部5の外径Yの半分以下となっていることにより、シャフト2AにガイドワイヤGWが挿通されていない状態で、中間部4Aの外径Dが基端部5の外径以下に縮径している構造を実現することができる。
【0040】
また、中間部4Aには、シャフト2Aの軸方向に沿って4本のスリット41Aが軸方向断面視で上下左右対称な位置に設けられている。このようなスリット41Aが存在していることにより、スリット41Aが開くか又は閉じることにより、中間部4Aの拡径・縮径がスムーズに行われる。なお、中間部4Aにスリット41Aを設ける際、そのスリット41Aの本数は4本に限られるものではなく、シャフト2Aの材料や形状等によってスリット41Aの本数が適宜決定されてよい。
【0041】
ダイレータ1Aがこのような中間部4Aを備えるシャフト2Aを有する場合、シャフト2AにガイドワイヤGWを挿通させようとすると、中間部4Aの内径dが先端部3及び基端部5の内径よりも小さいため、ガイドワイヤGWが中間部4Aを外側に向かって押し拡げる方向に力が働く。その結果、中間部4Aはスリット41Aが開きながら外周方向に向かって拡径され、第1実施形態のダイレータ1の中間部4と同じように、シャフト2AにガイドワイヤGWが挿通されている間は中間部4Aの外径Dがカテーテル7の外径と等しいかそれよりも拡径した状態が維持される。
【0042】
なお、中間部4Aは、先端部3側の端部から基端方向に向かって内径dが漸減していく内周テーパ部44Aを備える。このように中間部4Aが先端部3側から内径dが徐々に小さくなっていく形状となっていることにより、ガイドワイヤGWを挿通させた状態では、中間部4Aは、先端部3側の端部から基端方向に向かって外径Dが漸増していく構造となる。このように中間部4Aが先端部3側から外径Dが徐々に大きくなっていく形状となっていることにより、ガイドワイヤGWを介してダイレータ1Aを先端部2から体内に挿入した場合に、ダイレータ1Aの中間部4Aの外径Dが先端部3や基端部5の外径よりも大きくなっているとしても、スムーズに体内へと挿入されていく。また、中間部4Aは、上記内周テーパ部44Aに加えて、基端部5側の端部から先端方向に向かって内径dが漸減していく第2内周テーパ部を備えていてもよい。
【0043】
<第3実施形態>
本発明の第3実施形態を図面に基づいて説明する。図5は本実施形態に係るダイレータ1Bの構造を示す説明図であり、ダイレータ1Bの有するシャフト2Bの中間部4Bの構造のみが第1実施形態と異なっている。そのため、第1実施形態に係るダイレータ1と同じ構造の部材、部位については、図5において第1実施形態と同じ符号で示されており、また以下においてその詳細な説明は省略する。
【0044】
ダイレータ1Bは、ガイドワイヤGWが挿通される、先端部3と基端部5との間に少なくとも外径が拡縮可能な中間部4Bを備えた中空状のシャフト2Bを有し、シャフト2BにガイドワイヤGWが挿通された状態では、中間部4Bの外径Dが基端部5の外径よりも拡径しており、シャフト2BにガイドワイヤGWが挿通されていない状態では、中間部4Bの外径Dが基端部5の外径以下に縮径可能に構成されている。中間部4Bは、シャフト2BにガイドワイヤGWが挿通されていない状態で、中間部4Bの内径dが、先端部3及び基端部5の内径とほぼ等しく、かつ中間部4Bの外径Dが、基端部5の外径よりも大きく構成されているので、中間部4Bの肉厚は、先端部3及び基端部5の肉厚よりも厚いことになる。このように中間部4Bが構成されていることにより、ダイレータ1Bのシャフト2BにガイドワイヤGWを挿通すると、中間部4Bの外径が必ず先端部3及び基端部5の外径よりも大きい状態が維持されることになる。
【0045】
ダイレータ1Bがこのような中間部4Bを備えるシャフト2Bを有する場合、シャフト2BにガイドワイヤGWが挿通された状態では、第1実施形態のダイレータ1の中間部4と同じように、シャフト2BにガイドワイヤGWが挿通されている間は中間部4Bの外径Dがカテーテル7の外径と等しいかそれよりも拡径した状態が維持される。
【0046】
ここで、中間部4Bの一番厚い部分の肉厚をX、基端部5の外径をYとすると、中間部4Bの肉厚Xと基端部5の外径Yとは2X≦Yを満たす関係になっている。すなわち、中間部4Bの肉厚Xが基端部5の外径Yの半分以下となっていることにより、シャフト2BにガイドワイヤGWが挿通されていない状態で、中間部4Bの外径Dが基端部5の外径以下に縮径可能な構造を実現することができる。
【0047】
中間部4Bは、容易に変形させることができる軟質樹脂材料によって形成されており、これにより中間部4Bの拡径・縮径をスムーズに行うことができるようになっている。軟質樹脂材料としては、ガイドワイヤGWを介してダイレータ1Bを先端部3から体内に挿入した際に、中間部4Bが、基端部5に組み付けられているカテーテル7の先端チップ72の外径程度にまで穿刺部を拡張することができる程度の硬さを有する一方で、ダイレータ1BからガイドワイヤGWを引き抜いた後、ダイレータ1Bをカテーテル7から引き抜こうと基端方向に動かした際に、中間部4Bが変形してカテーテル7に引き込まれていく程度の軟さを有するものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、ポリケトン、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリウレタン、シリコーン、フッ素樹脂などの樹脂材料があげられる。また、中間部4Bの外表面に、ヒアルロン酸、ポリビニルピロリドン(PVP)等の親水性コーティングを施してもよい。中間部4Bの外表面に親水性コーティングを施すことにより、中間部4Bを形成する軟質樹脂材料が摺動抵抗の大きいものであっても、ダイレータ1Bをカテーテル7からスムーズに引き抜くことができる。
【0048】
中間部4Bは、先端部3側の端部から基端方向に向かって外径Dが漸増していく第1テーパ部42Bを備える。このように中間部4Bが先端部3側から外径Dが徐々に大きくなっていく形状となっていることにより、ガイドワイヤGWを介してダイレータ1Bを先端部2から体内に挿入した場合に、ダイレータ1Bの中間部4Bの外径Dが先端部3や基端部5の外径よりも大きくなっているとしても、スムーズに体内へと挿入されていく。
【0049】
また、中間部4Bは、基端部5側の端部から先端方向に向かって外径Dが漸増していく第2テーパ部43Bを備える。このように中間部4Bが基端部5側から外径Dが徐々に大きくなっていく形状となっていることにより、ダイレータ1Bをカテーテル7から抜き去るときに、ダイレータ1Bの中間部4Bがスムーズにカテーテル7内に導入されていく。
【0050】
<第4実施形態>
本発明の第4実施形態を図面に基づいて説明する。図6は本実施形態に係るダイレータ1Cの構造を示す説明図であり、ダイレータ1Cの有するシャフト2Cの中間部4Cの構造のみが第1実施形態と異なっている。そのため、第1実施形態に係るダイレータ1と同じ構造の部材、部位については、図6において第1実施形態と同じ符号で示されており、また以下においてその詳細な説明は省略する。
【0051】
ダイレータ1Cは、ガイドワイヤGWが挿通される、先端部3と基端部5との間に少なくとも外径が拡縮可能な中間部4Cを備えた中空状のシャフト2Cを有し、シャフト2CにガイドワイヤGWが挿通された状態では、中間部4Cの外径Dが基端部5の外径よりも拡径しており、シャフト2CにガイドワイヤGWが挿通されていない状態では、中間部4Cの外径Dが基端部5の外径以下に縮径するように構成されている。中間部4Cは、シャフト2CにガイドワイヤGWが挿通されていない状態で、中間部4Cの外径Dが、先端部3及び基端部5の外径とほぼ等しくなるように構成されている一方で、中間部4Cの内径dが、先端部3及び基端部5の内径よりも小さくなるように、中間部4Cの肉厚を先端部3及び基端部5の肉厚よりも厚く構成している。このように中間部4Cが構成されていることにより、ダイレータ1Cのシャフト2CにガイドワイヤGWを挿通すると、中間部4Cの外径が必ず先端部3及び基端部5の外径よりも大きい状態が維持されることになる。
【0052】
ダイレータ1Cがこのような中間部4Cを備えるシャフト2Cを有する場合、シャフト2CにガイドワイヤGWを挿通させようとすると、中間部4Cの内径dが先端部3及び基端部5の内径よりも小さいため、ガイドワイヤGWが中間部4Cを外側に向かって押し拡げる方向に力が働く。その結果、中間部4Cは外周方向に向かって拡径され、第3実施形態のダイレータ1Bの中間部4Bと同じように、シャフト2CにガイドワイヤGWが挿通されている間は中間部4Cの外径Dがカテーテル7の外径と等しいかそれよりも拡径した状態が維持される。
【0053】
ここで、中間部4Cの一番厚い部分の肉厚をX、基端部5の外径をYとすると、中間部4Cの肉厚Xと基端部5の外径Yとは2X≦Yを満たす関係になっている。すなわち、中間部4Cの肉厚Xが基端部5の外径Yの半分以下となっていることにより、シャフト2CにガイドワイヤGWが挿通されていない状態で、中間部4Cの外径Dが基端部5の外径以下に縮径している構造を実現することができる。
【0054】
中間部4Cは、容易に変形させることができる軟質樹脂材料によって形成されており、これにより中間部4Cの拡径・縮径をスムーズに行うことができるようになっている。軟質樹脂材料としては、ガイドワイヤGWを介してダイレータ1Cを先端部3から体内に挿入した際に、中間部4Cが、基端部5に組み付けられているカテーテル7の先端チップ72の外径程度にまで穿刺部を拡張することができる程度の硬さを有する一方で、ダイレータ1CにガイドワイヤGWを挿通させることにより、中間部4Cが変形して外側に向かって押し拡げられる程度の軟さを有するものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、ポリケトン、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリウレタン、シリコーン、フッ素樹脂などの樹脂材料があげられる。また、中間部4Cの外表面に、ヒアルロン酸、ポリビニルピロリドン(PVP)等の親水性コーティングを施してもよい。中間部4Cの外表面に親水性コーティングを施すことにより、中間部4Cを形成する軟質樹脂材料が摺動抵抗の大きいものであっても、ダイレータ1Cをカテーテル7からスムーズに引き抜くことができる。
【0055】
なお、中間部4Cは、先端部3側の端部から基端方向に向かって内径dが漸減していく内周テーパ部44Cを備える。このように中間部4Cが先端部3側から内径dが徐々に小さくなっていく形状となっていることにより、ガイドワイヤGWを挿通させた状態では、中間部4Cは、先端部3側の端部から基端方向に向かって外径Dが漸増していく構造となる。このように中間部4Cが先端部3側から外径Dが徐々に大きくなっていく形状となっていることにより、ガイドワイヤGWを介してダイレータ1Cを先端部2から体内に挿入した場合に、ダイレータ1Cの中間部4Cの外径Dが先端部3や基端部5の外径よりも大きくなっているとしても、スムーズに体内へと挿入されていく。
【0056】
以上、本発明に係るダイレータ及びカテーテル組立体について図面に基づいて説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されることはなく、種々の変更実施が可能である。例えば、上記実施形態においては、ダイレータのシャフトの中間部を拡径・縮径させるための構造として、スリットを設けることや、中間部を軟質樹脂素材で構成することを示したが、中間部の構造はこれらに限られるものではない。例えば、中間部を袋状に形成し、中間部にエアを送り込むことにより拡径させ、エアを排出することにより縮径させてもよいし、中間部を加温することにより膨張するような材料で構成してもよい。
【0057】
また、中間部に形成するスリットは、スリットが開くか又は閉じることにより、中間部の拡径・縮径がスムーズに行われるように形成されていればよく、例えばスリットを軸方向に対してやや傾斜するように設けたり、螺旋状に設けたりしてもよい。
【符号の説明】
【0058】
10 カテーテル組立体
1,1A,1B,1C ダイレータ
2,2A,2B,2C シャフト
21 内腔
3 先端部
4,4A,4B,4C 中間部
41,41A スリット
42,42B 第1テーパ部
43,43B 第2テーパ部
44A,44C 内周テーパ部
5 基端部
6 ハブ
7 カテーテル
71 カテーテル本体
72 先端チップ
73 コネクタ
GW ガイドワイヤ
図1
図2
図3
図4
図5
図6