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特開2022-181346直流遮断器、および直流遮断器の制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022181346
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】直流遮断器、および直流遮断器の制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02H 3/087 20060101AFI20221201BHJP
   H02H 9/02 20060101ALI20221201BHJP
   H01H 33/59 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
H02H3/087
H02H9/02
H01H33/59 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021088251
(22)【出願日】2021-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000003942
【氏名又は名称】日新電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】豊田 玄紀
【テーマコード(参考)】
5G004
5G013
5G028
【Fターム(参考)】
5G004AA04
5G004BA03
5G004DC07
5G013AA02
5G013BA01
5G013CA10
5G028AA21
5G028FB02
5G028FC02
(57)【要約】
【課題】半導体スイッチをオンにする前に、事前に直流遮断器の二次回路に短絡がないかを確認できる直流遮断器を実現する。
【解決手段】直流遮断器(10)は、入力端子(I1・I2)に接続されている第一開閉器(SW1)と第二開閉器(SW2)とを閉することで、コンデンサ(C)を充電し、第一開閉器と第二開閉器とを開した状態で第三開閉器(SW3)を閉にすることで、コンデンサの電荷によって出力端子間(O1・O2)の電位差を計測し、電位差が所定の電位差以上の場合に、第一開閉器と第二開閉器とを閉する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源が接続される第一入力端子および第二入力端子と、
直流負荷が接続される第一出力端子および第二出力端子と、
前記第一入力端子および前記第一出力端子の間に位置する接続点と、
前記第一出力端子および前記接続点の間に接続されるスイッチ部と、
前記接続点および前記第二出力端子の間に接続される、互いに直列に接続されたコンデンサおよび抵抗と、
前記第一入力端子および前記接続点の間に接続される第一開閉器、ならびに前記第二入力端子および前記第二出力端子の間に接続される第二開閉器のうちの少なくとも1つを含む一次側開閉器と、
前記第一出力端子と前記第二出力端子との間の電位差を計測する電圧計と、を備え、
前記スイッチ部がオフしている状態で、前記一次側開閉器をオンすることで、前記コンデンサを充電し、
前記一次側開閉器をオフしている状態で、前記スイッチ部をオンにして前記電位差を計測し、
前記電位差に基づき、前記一次側開閉器をオンにする直流遮断器。
【請求項2】
前記電位差が所定の電位差以上の場合に、前記一次側開閉器をオンにする請求項1に記載の直流遮断器。
【請求項3】
前記電位差が所定の電位差未満の場合に、前記一次側開閉器および前記スイッチ部をオフにする請求項1または2に記載の直流遮断器。
【請求項4】
前記スイッチ部は、半導体スイッチおよび第三開閉器が並列に接続されたものである請求項1から3のいずれか1項に記載の直流遮断器。
【請求項5】
前記一次側開閉器をオフしている状態で、前記第三開閉器をオンにして前記電位差を計測し、
前記電位差が所定の電位差以上の場合に、前記一次側開閉器をオンにし、
前記半導体スイッチをオンにした後で、前記第三開閉器をオフにする請求項4に記載の直流遮断器。
【請求項6】
前記スイッチ部に並列に接続されるスナバ回路をさらに備える請求項1から5のいずれか1項に記載の直流遮断器。
【請求項7】
前記一次側開閉器に流れる電流を計測する電流計をさらに備える請求項1から6のいずれか1項に記載の直流遮断器。
【請求項8】
直流電源が接続される第一入力端子および第二入力端子と、
直流負荷が接続される第一出力端子および第二出力端子と、
前記第一入力端子および前記第一出力端子の間に位置する接続点と、
前記第一出力端子および前記接続点の間に接続されるスイッチ部と、
前記第一入力端子および前記接続点の間に接続される第一開閉器、ならびに前記第二入力端子および前記第二出力端子の間に接続される第二開閉器のうちの少なくとも1つを含む一次側開閉器と、を備える直流遮断器の制御方法であって、
前記直流遮断器は、
前記第一出力端子と前記第二出力端子との間の電位差を計測する電圧計と、
前記接続点および前記第二出力端子の間に接続される、互いに直列に接続されたコンデンサおよび抵抗と、をさらに備え、
前記スイッチ部がオフしている状態で、前記一次側開閉器をオンすることで、前記コンデンサを充電する充電ステップと、
前記一次側開閉器をオフしている状態で、前記スイッチ部をオンにして前記電位差を計測する計測ステップと、
前記電位差に基づき、前記一次側開閉器をオンにする開閉ステップと、を含む直流遮断器の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は直流遮断器に関する。
【背景技術】
【0002】
各種電気負荷へ直流電力を供給する直流配電網が提案されている。直流配電網では、電気負荷への直流電力の供給を高信頼、高品質で行えることが要求されている。そのため、このような直流配電網では、電気負荷などで短絡等が発生した場合における過電流からシステムを保護するために、直流電源と電気負荷との間に直流遮断器を設けることが一般的である。
【0003】
特許文献1には、突入電流を検出しても過電流と検出しないために、導通後の時間経過に伴い、過電流と判定する閾値を変化させていく技術が開示されている。
【0004】
直流遮断器としては、機械接点による遮断ではなく、半導体スイッチによる遮断が好まれている。これは、機械式となると導体を接触させて通電させており、遮断するのに接点を開放させているため、接点部の損耗により通電時の開閉耐久回数に制限がある。一方、半導体式では半導体スイッチで通電電流を開閉するため、高速かつ信頼性の高い遮断が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013-172603号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述のような半導体スイッチは、機械接点よりも定格電流が小さく、短絡電流または突入電流などの大電流に弱く、破損することがある。突入電流に対する対策としては、直流遮断器において一次回路と二次回路とを接続するときは、機械接点で一度接続を行い、時間経過でもって半導体スイッチに切り換えることが行われている。そのため、半導体スイッチには突入電流が流れない。
【0007】
短絡事故が発生していた場合、半導体スイッチに切り換えるタイミングにおいても、突入電流とは異なる大電流が流れているため、半導体スイッチで大電流を流す必要がある。当該大電流は、半導体スイッチの定格電流よりも大きい場合が多く、半導体スイッチを破損させる原因になる。
【0008】
そのため、本発明の一態様は、半導体スイッチをオンにする前に、事前に直流遮断器の二次回路に短絡がないかを確認できる直流遮断器を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る直流遮断器は、直流電源が接続される第一入力端子および第二入力端子と、直流負荷が接続される第一出力端子および第二出力端子と、前記第一入力端子および前記第一出力端子の間に位置する接続点と、前記第一出力端子および前記接続点の間に接続されるスイッチ部と、前記接続点および前記第二出力端子の間に接続される、互いに直列に接続されたコンデンサおよび抵抗と、前記第一入力端子および前記接続点の間に接続される第一開閉器、ならびに前記第二入力端子および前記第二出力端子の間に接続される第二開閉器のうちの少なくとも1つを含む一次側開閉器と、前記第一出力端子と前記第二出力端子との間の電位差を計測する電圧計と、を備え、前記スイッチ部がオフしている状態で、前記一次側開閉器をオンすることで、前記コンデンサを充電し、前記一次側開閉器をオフしている状態で、前記スイッチ部をオンにして前記電位差を計測し、前記電位差に基づき、前記一次側開閉器をオンにする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、直流遮断器において半導体スイッチをオンにする前に、事前に直流遮断器の二次回路に短絡がないかを確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】直流回路の構成を示す回路図である。
図2】直流遮断器の動作を示すフローチャートである。
図3】直流遮断器の各部のタイミングチャートである。
図4】S11およびS12の処理の結果、直流回路の状態を表す回路図である。
図5】S14の処理の結果、直流回路の状態を表す回路図である。
図6】参考例における直流遮断器の構成を示す回路図である。
図7】参考例における直流遮断器の動作を表すタイミングチャートである。
図8】参考例における直流遮断器の別の動作を表すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
〔実施形態1〕
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。
【0013】
(直流回路1の構成)
図1は、直流回路1の構成を示す回路図である。直流回路1は、直流遮断器10と、直流電源PWと、直流負荷LDとを備える。
【0014】
直流遮断器10は、第一入力端子I1および第二入力端子I2に接続された一次回路である直流電源PWによる電気を、第一出力端子O1および第二出力端子O2に接続された二次回路である直流負荷LDに導通させる電気機器である。
【0015】
また、直流遮断器10は、直流負荷LDの状況を判断し、直流遮断器10の定格電流以上の電流を検出した場合には、一次回路の電気を二次回路に導通させずに遮断させる動作をする。
【0016】
直流電源PWは、第一入力端子I1および第二入力端子I2の間に直流の電源電圧Eを出力する。また、直流負荷LDは、第一出力端子O1および第二出力端子O2から供給される直流電力を消費する。
【0017】
(直流遮断器10の構成)
直流遮断器10は、第一開閉器SW1と、第二開閉器SW2と、第三開閉器SW3と、半導体スイッチTRと、スナバ回路SNと、コンデンサC(キャパシタ)と、抵抗Rと、電圧計Vと、電流計Aと、制御部CNと、を備える。
【0018】
直流遮断器10は、入力端子として第一入力端子I1と第二入力端子I2とを備えており、一次回路と接続される。また、直流遮断器10は、出力端子として第一出力端子O1と第二出力端子O2とを備えており、二次回路と接続される。
【0019】
第一入力端子I1に電流計Aが接続されており、第一入力端子I1から入力される電流を電流計Aが計測する。また、電流計Aは、第一開閉器SW1の一次側とも接続されており、第一開閉器SW1の二次側の接続点(ノード)を接続点Jと称する。つまり、接続点Jは第一入力端子および第一出力端子の間に位置する。第二入力端子I2と第二出力端子O2との間に第二開閉器SW2が接続されている。第一開閉器SW1および第二開閉器SW2は、機械接点を有するリレーまたは電磁接触器である。ここでは、電流計Aは第一入力端子I1に接続されている場合に関して説明したが、この構成に限定されず、第二入力端子I2に接続されていてもよい。また、第一開閉器SW1および第二開閉器SW2のうちの少なくとも1つを一次側開閉器と称する。
【0020】
接続点Jと第一出力端子O1との間に、第三開閉器SW3と、スナバ回路SNと、半導体スイッチTRと、ダイオードDと、が互いに並列に接続されている。第三開閉器SW3は、機械接点を有するリレーまたは電磁接触器である。スナバ回路SNは、コンデンサおよび抵抗などから構成されるスナバ回路であり、過渡応答を抑制する効果をもつ。スナバ回路SNは当該構成に限定されず、スナバ回路の機能を有すればどのような回路でも構わない。半導体スイッチTRは、トランジスタ、FET(Field Effect Transistor)、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)、およびIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などのスイッチング素子である。半導体スイッチTRを保護する目的で、ダイオードDは接続されている。また、半導体スイッチTRおよび第三開閉器SW3を併せてスイッチ部と称する。つまり、スイッチ部は第一出力端子および接続点の間に接続される。
【0021】
コンデンサCと抵抗Rとは、接続点Jと第二出力端子O2との間に互いに直列に接続されている。コンデンサCと抵抗Rとは、第一入力端子I1と第二入力端子I2との間のサージ保護回路として機能する。
【0022】
第一出力端子O1と第二出力端子O2との間の電位差Voutを電圧計Vによって計測し、電圧計Vは、制御部CNに電位差Voutを出力する。また、電流計Aで計測した電流Iinを制御部CNに出力する。制御部CNは、電位差Voutおよび電流Iinに基づき、第一開閉器SW1と、第二開閉器SW2と、第三開閉器SW3と、半導体スイッチTRとを制御する。
【0023】
(直流遮断器10の動作)
図2は、直流遮断器10の動作を示すフローチャートである。図3は、直流遮断器10の各部のタイミングチャートである。以降、一次回路と二次回路とを遮断している直流遮断器10で、一次回路と二次回路とを導通させる場合に関して説明する。特に、直流遮断器10が、一次回路と二次回路とを導通させる際に、二次回路の短絡確認を行う処理に関して説明する。
【0024】
S11において、直流遮断器10に対するユーザ操作または自動投入機などによる導通指示を受けて、制御部CNは、第一開閉器SW1を閉(オン)する。また、S12において、制御部CNは、第二開閉器SW2を閉する。S11およびS12は、順番に処理しなくてもよく、同時に処理しても構わない。この時、第三開閉器SW3は開(オフ)しており、半導体スイッチTRはオフしている。
【0025】
図4は、S11およびS12の処理の結果、直流回路1の状態を表す回路図である。図4の点線矢印に示すように、直流電源PWと、第一開閉器SW1と、コンデンサCと、抵抗Rと、第二開閉器SW2とで閉回路が構成される。そのため、直流電源PWによって、コンデンサCは充電される(充電ステップ)。
【0026】
S13において、制御部CNは、時刻t13までコンデンサを充電する。その後、制御部CNは、第一開閉器SW1および第二開閉器SW2を開する。これにより、コンデンサCに充電された電荷はコンデンサCに保持される。
【0027】
S14において、制御部CNは、時刻t14において、第三開閉器SW3を閉する。図5は、S14の処理の結果、直流回路1の状態を表す回路図である。図5の点線矢印に示すように、コンデンサCに充電された電荷が、第三開閉器SW3を経由して、直流負荷LDに流れ、消費される。
【0028】
S15において、時刻t14からtdelay経過した時刻t15において、制御部CNは、電圧計Vによって電位差Voutを計測する(計測ステップ)。電位差Voutが所定の閾値Vset以下の場合(S15においてNo)、S16に進む。対して、電位差Voutが所定の閾値Vsetよりも大きい場合(S15においてYes)、S17に進む。
【0029】
S16において、制御部CNは、電位差Voutが所定の閾値Vset以下であることから、二次回路が短絡している可能性を考慮し、直流遮断器10によって直流電力を遮断する。すなわち、制御部CNは、第三開閉器SW3を開する。この時、制御部CNは、表示器または通信を用いて、外部の装置または管理者に、二次回路の短絡を通知してもよい。また、第一開閉器SW1および第二開閉器SW2も開を維持する。
【0030】
S17において、制御部CNは、電位差Voutが所定の閾値Vsetよりも大きいことから、二次回路が短絡していないと判断する。そのため、直流遮断器10によって、直流電力を一次回路から二次回路へと導通させる。すなわち、制御部CNは、第一開閉器SW1および第二開閉器SW2を閉する(開閉ステップ)。直流電源PWを接続したことにより、直流負荷LDは十分な電力を得たことから、瞬間的に突入電流が第三開閉器SW3を流れる。
【0031】
S18において、制御部CNは、突入電流が治まる十分な時間が経過した時刻t18において、半導体スイッチTRをオンする。また、S19において、制御部CNは、時刻t18以降の時刻t19に、第三開閉器SW3を開する。これ以降、半導体スイッチTRを経由して、一次回路から二次回路へと直流電力が供給される。
【0032】
第三開閉器SW3から半導体スイッチTRに接続を切り換える目的は、過電流への応答性を担保するためである。すなわち、第三開閉器SW3の応答速度が数ミリ秒であり、半導体スイッチTRの応答速度が数マイクロ秒であることから、半導体スイッチTRでは直流遮断器10の定格電流を超過する過電流をより早く遮断できる。ただし、半導体スイッチTRは、一般的に定格電流が第三開閉器SW3よりも小さく、突入電流などの大電流が流れることによって破損する恐れがある。そのため、直流遮断器において、突入電流によって大電流が流れる可能性が高い投入直後は、第三開閉器SW3によって一次回路から二次回路へと接続している。
【0033】
(参考例における直流遮断器100の説明)
ここで、参考例の直流遮断器100に関して説明する。
【0034】
図6は、参考例における直流遮断器100の構成を示す回路図である。参考例における直流遮断器100は、実施形態1に係る直流遮断器10に対し、コンデンサCと、抵抗Rと、電圧計Vとが無い構成である。
【0035】
そのため、二次回路での短絡を検出する手段としては、電流計Aによって検出される電流Iinしかない。
【0036】
以降、一次回路と二次回路とを遮断している直流遮断器100で、一次回路と二次回路とを導通させる場合に関して説明する。特に、二次回路に短絡が発生していた場合における、直流遮断器10と直流遮断器100との動作を比較されたい。
【0037】
図7は、参考例における直流遮断器100の動作を表すタイミングチャートである。直流遮断器100では、第一開閉器SW1と第二開閉器SW2とを閉した後に、第三開閉器SW3を閉する(時刻t21)。これにより、二次回路が短絡していた場合は、一次回路から二次回路へと短絡電流が流れ、大電流である。そのため、電流計Aによって所定の電流以上の電流が流れていることが検出され、直流遮断器100は一次回路と二次回路との接続を遮断する(時刻t22)。時刻t22と同時に第一開閉器SW1と第二開閉器SW2とを開しても構わない。
【0038】
図8は、参考例における直流遮断器100の別の動作を表すタイミングチャートである。図8では、直流遮断器100が一次回路から二次回路への接続を遮断するタイミングが、図7の時よりも遅い。第一開閉器SW1と第二開閉器SW2を閉した後に、第三開閉器SW3を閉した(時刻t21)後に、第三開閉器SW3に加えて半導体スイッチTRもオンする(時刻t32)。その後、第三開閉器SW3は閉した(時刻t33)後に、半導体スイッチTRがオフしている(時刻t34)。そのため、半導体スイッチTRで短絡電流による定格電流以上の大電流を流しており、半導体スイッチTRの破損に繋がる。時刻t34と同時に第一開閉器SW1と第二開閉器SW2とを開しても構わない。
【0039】
(直流遮断器10の作用効果)
直流遮断器10では、一次回路と二次回路とを導通させる動作を行うとき、まず初めに、コンデンサCを充電する。その後、第三開閉器SW3または半導体スイッチTRによるスイッチ部によって、コンデンサCと直流負荷LDの閉回路を構成することにより、充電された電荷でもって、電位差Voutを測定する。電位差Voutが所定の条件を満たすことにより、直流負荷LDの短絡の有無を確認することができる。そのため、一次回路から二次回路へ直流電力を接続する前に、二次回路の短絡の有無を確認することができ、安全性を担保することができる。所定の条件としては、電位差が所定の閾値以上の場合である。
【0040】
スイッチ部による導通確認を第三開閉器SW3で行った後に、第一開閉器SW1および第二開閉器SW2を閉して一次回路を二次回路に接続した場合に生じる、突入電流による大電流を第三開閉器SW3が流す。その後、突入電流が流れた後で、半導体スイッチTRをオンにし、第三開閉器SW3を開にすることで、瞬間的な大電流が半導体スイッチTRに印加されずに、半導体スイッチTRによって高速に一次回路から二次回路への接続を遮断できるようになる。そのため、半導体スイッチTRの寿命と、半導体スイッチTRによる高速応答性を両立した直流遮断器10を実現することができる。したがって、一次回路と二次回路との接続の前に短絡検出を行うことで、半導体スイッチTRに対する破損および信頼性低下を抑えて、直流遮断器10の故障予防・長寿命化を実現している。
【0041】
また、スイッチ部に並列に接続されているスナバ回路によって、突入電流などの大電流に伴う、過渡的な大電流・大電圧を吸収することができる。さらに、コンデンサCおよび抵抗Rは、直流回路1における大電流・大電圧のスナバ回路としても機能することができる。
【0042】
(直流遮断器10の通常動作)
制御部CNは、電流計Aの計測した電流Iinが所定の電流以上になることで、直流遮断器10を遮断、すなわち半導体スイッチTRをオフにすることができる。この時、制御部CNは、半導体スイッチTRに加えて、第一開閉器SW1と、第二開閉器SW2と、(第三開閉器SW3と、)を同時に開してもよい。
【0043】
上述した動作により、直流遮断器10による一次回路と二次回路との接続開始時を除いた通常動作時において、直流遮断器10の定格電流以上における電流を検出した場合に、直流遮断器でもって一次回路と二次回路との接続を遮断する動作を実現できる。
【0044】
(変形例)
直流遮断器10において、第一開閉器SW1または第二開閉器SW2のいずれかを省略しても構わない。この場合、直流遮断器10の構成要素を削減できるため、直流遮断器10を安価にできる。
【0045】
また、第一開閉器SW1および第二開閉器SW2は、機械接点を有するリレーまたは電磁接触器であるため、開閉回数に限界がある。直流遮断器10内部の部品の信頼性を担保し易くなる利点もある。
【0046】
〔ソフトウェアによる実現例〕
直流遮断器10、10a、10b(以下、「装置」と呼ぶ)の機能は、当該装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、当該装置の各制御ブロック(特に制御部CN)としてコンピュータを機能させるためのプログラムにより実現することができる。
【0047】
この場合、上記装置は、上記プログラムを実行するためのハードウェアとして、少なくとも1つの制御装置(例えばプロセッサ)と少なくとも1つの記憶装置(例えばメモリ)を有するコンピュータを備えている。この制御装置と記憶装置により上記プログラムを実行することにより、上記各実施形態で説明した各機能が実現される。
【0048】
上記プログラムは、一時的ではなく、コンピュータ読み取り可能な、1または複数の記録媒体に記録されていてもよい。この記録媒体は、上記装置が備えていてもよいし、備えていなくてもよい。後者の場合、上記プログラムは、有線または無線の任意の伝送媒体を介して上記装置に供給されてもよい。
【0049】
また、上記各制御ブロックの機能の一部または全部は、論理回路により実現することも可能である。例えば、上記各制御ブロックとして機能する論理回路が形成された集積回路も本発明の範疇に含まれる。この他にも、例えば量子コンピュータにより上記各制御ブロックの機能を実現することも可能である。
【0050】
〔まとめ〕
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る直流遮断器は、直流電源が接続される第一入力端子および第二入力端子と、直流負荷が接続される第一出力端子および第二出力端子と、前記第一入力端子および前記第一出力端子の間に位置する接続点と、前記第一出力端子および前記接続点の間に接続されるスイッチ部と、前記接続点および前記第二出力端子の間に接続される、互いに直列に接続されたコンデンサおよび抵抗と、前記第一入力端子および前記接続点の間に接続される第一開閉器、ならびに前記第二入力端子および前記第二出力端子の間に接続される第二開閉器のうちの少なくとも1つを含む一次側開閉器と、前記第一出力端子と前記第二出力端子との間の電位差を計測する電圧計と、を備え、前記スイッチ部がオフしている状態(遮断状態)で、前記一次側開閉器をオンすることで、前記コンデンサを充電し、前記一次側開閉器をオフしている状態で、前記スイッチ部をオン(導通状態)にして前記電位差を計測し、前記電位差に基づき、前記一次側開閉器をオンにする。
【0051】
上記の構成によれば、直流遮断器において、スイッチ部をオンにする前に、第一出力端子および第二出力端子間に短絡が発生していないかを確認することができる。
【0052】
本発明の態様2に係る直流遮断器は、前記電位差が所定の電位差以上の場合に、前記一次側開閉器をオンにしてもよい。
【0053】
上記の構成によれば、出力端子間で短絡していない場合に、一次側開閉器をオンにすることで、出力端子を入力端子に安全に導通させることができる。
【0054】
本発明の態様3に係る直流遮断器は、前記電位差が所定の電位差未満の場合に、前記一次側開閉器および前記スイッチ部をオフにしてもよい。
【0055】
上記の構成によれば、出力端子間で短絡している場合に、一次側開閉器およびスイッチ部をオフにすることで、出力端子を入力端子に導通させないことで、安全を担保することができる。
【0056】
本発明の態様4に係る直流遮断器は、前記スイッチ部は、半導体スイッチおよび第三開閉器が並列に接続されたものであってもよい。
【0057】
上記の構成によれば、スイッチ部を半導体スイッチおよび第三開閉器によって構成することができる。
【0058】
本発明の態様5に係る直流遮断器は、前記一次側開閉器をオフしている状態で、前記第三開閉器をオンにして前記電位差を計測し、前記電位差が所定の電位差以上の場合に、前記第一開閉器および/または前記第二開閉器の全てをオンにし、前記半導体スイッチをオンにした後で、前記第三開閉器をオフにしてもよい。
【0059】
上記の構成によれば、直流遮断器をオンにするに際し、突入電流を第三開閉器に流し、電流が安定してから、高速応答できる半導体スイッチに切り換えることができる。そのため、半導体スイッチよりも応答性が低く耐久性が劣る第三開閉器での定常運用を避けることができる。
【0060】
本発明の態様6に係る直流遮断器は、前記スイッチ部に並列に接続されるスナバ回路をさらに備えてもよい。
【0061】
上記の構成によれば、スイッチ部をオンにした時に発生する過渡応答を抑えることができる。
【0062】
本発明の態様7に係る直流遮断器は、前記一次側開閉器に流れる電流を計測する電流計をさらに備えてもよい。
【0063】
上記の構成によれば、スイッチ部をオンにする時だけではなく、定常運用時にも、電流を計測することで過電流を検出して直流遮断器によって直流電力を遮断することができる。
【0064】
本発明の別の態様における直流遮断器の制御方法は、直流電源が接続される第一入力端子および第二入力端子と、直流負荷が接続される第一出力端子および第二出力端子と、前記第一入力端子および前記第一出力端子の間に位置する接続点と、前記第一出力端子および前記接続点の間に接続されるスイッチ部と、前記第一入力端子および前記接続点の間に接続される第一開閉器、ならびに前記第二入力端子および前記第二出力端子の間に接続される第二開閉器のうちの少なくとも1つを含む一次側開閉器と、を備える直流遮断器の制御方法であって、前記直流遮断器は、前記第一出力端子と前記第二出力端子との間の電位差を計測する電圧計と、前記接続点および前記第二出力端子の間に接続される、互いに直列に接続されたコンデンサおよび抵抗と、をさらに備え、前記スイッチ部がオフしている状態で、前記一次側開閉器をオンすることで、前記コンデンサを充電する充電ステップと、前記一次側開閉器をオフしている状態で、前記スイッチ部をオンにして前記電位差を計測する計測ステップと、前記電位差に基づき、前記一次側開閉器をオンにする開閉ステップと、を含む。
【0065】
〔付記事項〕
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0066】
1 直流回路
10,100 直流遮断器
A 電流計
C コンデンサ
I1 第一入力端子
I2 第二入力端子
Iin 電流
O1 第一出力端子
O2 第二出力端子
R 抵抗
SN スナバ回路
SW1 第一開閉器(一次側開閉器)
SW2 第二開閉器(一次側開閉器)
SW3 第三開閉器(スイッチ部)
TR 半導体スイッチ(スイッチ部)
V 電圧計
Vout 電位差
Vset 閾値
図1
図2
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図8