(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022181354
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】動翼取外装置、及び動翼取外方法
(51)【国際特許分類】
F04D 29/64 20060101AFI20221201BHJP
F01D 25/28 20060101ALI20221201BHJP
F04D 29/38 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
F04D29/64 C
F01D25/28 E
F04D29/38 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021088264
(22)【出願日】2021-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】坂口 忠和
(72)【発明者】
【氏名】上里 陸
【テーマコード(参考)】
3H130
【Fターム(参考)】
3H130AA13
3H130AB27
3H130AB52
3H130AC17
3H130BA95C
3H130BA95Z
3H130BA97C
3H130BA97Z
3H130CB11
3H130DA02Z
3H130DD09Z
3H130DJ08X
3H130EA04C
3H130EA04D
3H130EB01C
3H130EB01D
3H130ED02C
(57)【要約】
【課題】上流側ディスクの後端面と下流側ディスクの前端面との間の距離が、短い場合でも、ディスクから動翼を取り外す。
【解決手段】動翼取外装置は、押出機構と、前記押出機構が取り付けられるフレームと、を備える。前記押出機構は、動翼に接触可能な接触端と、前記接触端を移動方向に移動させる駆動機構と、を有する。前記フレームは、前記移動方向に延びるベースと、前記ベースの第一ベース端部から第一高さ側に延びる反力受け部と、前記ベースの第二ベース端部に設けられている押付受け部と、を有する。前記ベースは、前記第一高さ側を向いて、ディスクの外周面に接触可能な外周接触面を有する。前記反力受け部は、第二移動側を向いて、ディスクの第一端面に接触可能な端接触面を有する。前記押付受け部は、第一移動側を向き、前記駆動機構で前記第二移動側を向く機構端面と接触可能な機構接触面を有する。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスクから動翼を取り外す動翼取外装置であって、
前記ディスクは、
軸線を中心として周方向に広がっている外周面と、前記軸線が延びる軸線方向における両側のうち軸線第一側を向く第一端面と、前記軸線第一側とは反対側の軸線第二側を向く第二端面と、翼根溝と、を有し、
前記第一端面は、前記外周面の前記軸線第一側の縁から前記軸線に対する径方向内側に向かって広がり、
前記第二端面は、前記外周面の前記軸線第二側の縁から前記径方向内側に向かって広がり、
前記翼根溝は、前記外周面から前記径方向内側に向かって凹み、前記第二端面から前記軸線方向に対して捩じれた溝貫通方向に向かって延びて前記第一端面まで貫通し、
前記動翼は、
前記軸線に対する径方向に垂直な断面が翼形を成し、前記径方向に延びる翼体と、前記翼体の前記径方向内側に設けられ、前記翼根溝に嵌まり込んでいる翼根と、有する、
動翼取外装置において、
押出機構と、
前記押出機構が取り付けられるフレームと、
を備え、
前記押出機構は、前記動翼に接触可能な接触端と、前記接触端を移動方向に移動させる駆動機構と、を有し、
前記フレームは、
前記移動方向に延びるベースと、
前記ベースの前記移動方向における両側のうち第一移動側の端部である第一ベース端部から、前記移動方向と異なる高さ方向における両側のうち第一高さ側に延びる反力受け部と、
前記ベースの前記第一移動側とは反対側の第二移動側の端部である第二ベース端部に設けられている押付受け部と、
を有し、
前記ベースは、前記第一高さ側を向いて、前記外周面に接触可能な外周接触面を有し、
前記反力受け部は、前記外周接触面の前記第一移動側の端から前記第一高さ側に延び、前記第二移動側を向いて、前記第一端面に接触可能な端接触面を有し、
前記押付受け部は、前記第一移動側を向き、前記駆動機構で前記第二移動側を向く機構端面と接触可能な機構接触面を有する、
動翼取外装置。
【請求項2】
請求項1に記載の動翼取外装置において、
前記駆動機構は、
前記接触端から前記第二移動側に延びるピストンロッドと、
前記ピストンロッドの前記第二移動側の端に設けられているピストンと、
前記ピストンが前記移動方向に移動可能に、前記ピストンを覆うシリンダケーシングと、
を有する流体圧シリンダであり、
前記機構端面は、前記シリンダケーシングで前記第二移動側を向くケーシング底面である、
動翼取外装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の動翼取外装置において、
前記機構接触面は、前記外周接触面を基準として、前記第一高さ側とは反対側の第二高さ側に位置し、
前記ベースの前記外周接触面を前記外周面に接触させた際、前記接触端は、前記翼体の前記第二移動側の縁に、前記移動方向で対向する、
動翼取外装置。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の動翼取外装置において、
前記機構接触面は、前記外周接触面を基準として、前記第一高さ側に位置し、
前記ベースの前記外周接触面を前記外周面に接触させた際、前記接触端は、前記翼根の前記第二移動側の縁に、前記移動方向で対向する、
動翼取外装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の動翼取外装置において、
前記ベースは、前記移動方向に延びる第一ベース及び第二ベースを有し、
前記反力受け部は、前記第一ベースの前記第一移動側の端部である第一ベース端部から前記第一高さ側に延びる第一反力受け部と、前記第二ベースの前記第一移動側の端部である第一ベース端部から前記第一高さ側に延びる第二反力受け部と、を有し、
前記第一ベース及び前記第二ベースのそれぞれは、前記外周接触面を有し、
前記第一反力受け部及び前記第二反力受け部のそれぞれは、前記端接触面を有し、
前記高さ方向は、前記移動方向に垂直な方向であり、前記高さ方向及び前記移動方向に垂直な方向が幅方向であり、
前記第二ベースは、前記第一ベースから前記幅方向に離れて配置され、
前記押出機構は、前記第一ベースと前記第二ベースとの間に配置され、
前記押付受け部は、前記機構接触面が前記第一ベースと前記第二ベースとの間に位置するよう、前記第一ベースの前記第二移動側の端である第二ベース端部及び前記第二ベースの前記第二移動側の第二ベース端部に設けられている、
動翼取外装置。
【請求項6】
請求項5に記載の動翼取外装置において、
前記フレームは、さらに、前記第一ベース及び前記第二ベースに対する前記第二移動側に配置され、前記第一ベースと前記第二ベースとを連結するベース連結部を有する、
動翼取外装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の動翼取外装置において、
さらに、前記フレームに設けられ、ワイヤを引っ掛けることが可能な引掛け部を有する引掛け具を備える、
動翼取外装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の動翼取外装置において、
さらに、前記移動方向で、前記動翼と前記接触端との間に配置可能な一以上のスペーサを、備える、
動翼取外装置。
【請求項9】
請求項8に記載の動翼取外装置において、
さらに、前記一以上のスペーサに設けられ、ワイヤを引っ掛けることが可能な引掛け部を有する引掛け具を備える、
動翼取外装置。
【請求項10】
ディスクから動翼を取り外す動翼取外方法であって、
前記ディスクは、
軸線を中心として周方向に広がっている外周面と、前記軸線が延びる軸線方向における両側のうち軸線第一側を向く第一端面と、前記軸線第一側とは反対側の軸線第二側を向く第二端面と、翼根溝と、を有し、
前記第一端面は、前記外周面の前記軸線第一側の縁から前記軸線に対する径方向内側に向かって広がり、
前記第二端面は、前記外周面の前記軸線第二側の縁から前記径方向内側に向かって広がり、
前記翼根溝は、前記外周面から前記径方向内側に向かって凹み、前記第二端面から前記軸線方向に対して捩じれた溝貫通方向に向かって延びて前記第一端面まで貫通し、
前記動翼は、
前記軸線に対する径方向に垂直な断面が翼形を成し、前記径方向に延びる翼体と、前記翼体の前記径方向内側に設けられ、前記翼根溝に嵌まり込んでいる翼根と、有する、
動翼取外方法において、
動翼取外装置を準備する準備工程と、
前記動翼取外装置を前記ディスクに配置する装置配置工程と、
前記動翼取外装置を動作させて、前記ディスクに取り付けられている前記動翼を移動させる動翼移動工程と、
を実行し、
前記準備工程で準備する前記動翼取外装置は、
押出機構と、
前記押出機構が取り付けられるフレームと、
を備え、
前記押出機構は、前記動翼に接触可能な接触端と、前記接触端を移動方向に移動させる駆動機構と、を有し、
前記フレームは、
前記移動方向に延びるベースと、
前記ベースの前記移動方向における両側のうち第一移動側の端部である第一ベース端部から、前記移動方向と異なる高さ方向における両側のうち第一高さ側に延びる反力受け部と、
前記ベースの前記第一移動側とは反対側の第二移動側の端部である第二ベース端部に設けられている押付受け部と、
を有し、
前記ベースは、前記第一高さ側を向いて、前記外周面に接触可能な外周接触面を有し、
前記反力受け部は、前記外周接触面の前記第一移動側の端から前記第一高さ側に延び、前記第二移動側を向いて、前記第一端面に接触可能な端接触面を有し、
前記押付受け部は、前記第一移動側を向き、前記駆動機構で前記第二移動側を向く機構端面と接触可能な機構接触面を有し、
前記装置配置工程では、前記溝貫通方向に前記接触端の前記移動方向を合わせ、前記ベースの前記外周接触面を前記外周面に接触させ、前記反力受け部の端接触面を前記第一端面に接触させ、前記接触端を前記動翼の前記第二移動側に配置して、前記接触端と前記動翼とを前記移動方向で対向させ、
前記動翼移動工程では、前記駆動機構を駆動させて、前記接触端を前記第一移動側に移動させて、前記動翼を前記第一移動側に移動させる、
動翼取外方法。
【請求項11】
請求項10に記載の動翼取外方法において、
前記動翼取外装置は、さらに、前記移動方向で、前記動翼と前記接触端との間に配置可能な一以上のスペーサを、備え、
前記動翼移動工程は、
前記駆動機構を駆動させて前記接触端と共に前記動翼を前記第一移動側に移動させる第一移動工程と、
前記第一移動工程での前記動翼の移動の結果、前記動翼の前記翼根が前記翼根溝から抜けたか否かを判断する判断工程と、
前記判断工程で、前記動翼の前記翼根が前記翼根溝から抜けていないと判断された場合には、前記駆動機構を駆動させて前記接触端を第二移動側に移動させる第二移動工程と、
前記第二移動工程後に、前記動翼と前記接触端との間に、前記一以上のスペーサのうち、いずれか一のスペーサを配置するスペーサ配置工程と、
を含み、
前記スペーサ配置工程後に、前記第一移動工程及び前記判断工程を実行し、
前記判断工程で、前記動翼の前記翼根が前記翼根溝から抜けたと判断されるまで、前記第一移動工程、前記判断工程、前記第二移動工程、前記スペーサ配置工程を繰り返して実行する、
動翼取外方法。
【請求項12】
請求項10又は11に記載の動翼取外方法において、
前記装置配置工程前に、前記ディスクを回転させるディスク回転工程を実行し、
前記ディスク回転工程では、前記翼根溝に嵌まり込んでいる前記翼根の表面中で、前記第一移動側を向いている第一翼根端面と前記第二移動側を向いている第二翼根端面とのうち、前記第一翼根端面の少なくとも一部が前記軸線よりも上側に位置し、且つ前記第二翼根端面よりも上側になるよう、前記軸線を中心として前記ディスクを回転させる、
動翼取外方法。
【請求項13】
請求項10から12のいずれか一項に記載の動翼取外方法において、
前記動翼取外装置における前記機構接触面は、前記外周接触面を基準として、前記第一高さ側とは反対側の第二高さ側に位置し、
前記装置配置工程では、前記接触端と前記動翼の前記翼体とを前記移動方向で対向させる、
動翼取外方法。
【請求項14】
請求項10から12のいずれか一項に記載の動翼取外方法において、
前記動翼取外装置における前記機構接触面は、前記外周接触面を基準として、前記第一高さ側に位置し、
前記装置配置工程は、前記接触端と前記動翼の前記翼根とを前記移動方向で対向させる、
動翼取外方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸流回転機械における動翼の取外装置、及び、動翼の取外方法に関する。
【背景技術】
【0002】
軸流回転機械の一種である軸流圧縮機は、軸線を中心として回転するロータと、このロータを覆うケーシングと、を備えている。ロータは、ロータ軸と、このロータ軸に取り付けられている複数の動翼列とを有する。各動翼列は、軸線が延びる軸線方向に並んでいる。各動翼列は、いずれも、軸線に対する周方向に並ぶ複数の動翼を有する。なお、以下の説明の都合上、軸線方向のおける両側のうち、一方側を軸線上流側、他方側を軸線下流側とする。
【0003】
以下の特許文献1には、軸流圧縮機が開示されている。この軸流圧縮機のロータ軸は、複数の動翼列毎のディスクを有する。複数のディスクは、いずれも、軸線を中心として円板状を成している。ロータ軸は、複数のディスクが軸線方向に積層されて構成される。各ディスクは、外周面と、前端面と、後端面と、複数の翼根溝と、を有する。前端面は、外周面の軸線上流側の縁から軸線に対する径方向内側に広がっている。後端面は、外周面の軸線下流側の縁から径方向内側に広がっている。複数の翼根溝は、いずれも、外周面から径方向内側に向かって凹み、後端面から軸線方向に対する捩じれ方向に向かって延びて前端面まで貫通している。複数の動翼は、いずれも、径方向に延びる翼体と、この翼体の径方向内側に設けられ、翼根溝に嵌まり込んでいる翼根と、有する。
【0004】
特許文献1には、さらに、ディスクに取り付けられている動翼の取外装置が開示されている。この取外装置は、複数のブロックで構成される支持部と、この支持部に支持されているパンチと、を有する。作業者は、この取外装置を動翼の軸線下流側に配置した後、この取外装置の支持部を、軸線方向で隣接する二つのディスクの間に配置する。具体的に、二つのディスクのうち、軸線上流側に配置されている上流側ディスクの後端面と、軸線下流側に配置されている下流側ディスクの前端面との間に、支持部を配置する。この結果、支持部は、各ディスクに対して軸線方向に相対移動の不能になる。この状態で、パンチの先端は、上流側ディスクに嵌まり込んでいる翼根の端面に接触可能になる。次に、作業者は、パンチを駆動し、パンチで、翼根を軸線上流側に移動させる。
【0005】
翼根を軸線上流側に移動させる際、パンチ及び支持部には、翼根から軸線下流側の向きの力が作用する。この力に対して、支持部には、下流側ディスクの前端面から反力が作用して、軸線方向への支持部の移動が規制される。よって、支持部中で最も軸線下流側に位置し、軸線下流側を向く面が反力受け面を成す。このように、この取外装置の反力受け面は、取外対象の翼よりも、軸線下流側に位置する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願公開第2015/0218948号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1に記載の動翼の取外装置では、上流側ディスクの後端面と下流側ディスクの前端面との間に支持部を配置する必要性があるため、上流側ディスクの後端面と下流側ディスクの前端面との間の距離が、所定以上長くなければならない。このため、上流側ディスクの後端面と下流側ディスクの前端面との間の距離が所定距離未満の場合には、上記特許文献1に記載の動翼の取外装置を使用できない。
【0008】
そこで、本開示は、上流側ディスクの後端面と下流側ディスクの前端面との間の距離が、短い場合でも、ディスクから動翼を取り外すことができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するための本開示に係る一態様としての動翼取外装置は、ディスクから動翼を取り外す動翼取外装置である。前記ディスクは、軸線を中心として周方向に広がっている外周面と、前記軸線が延びる軸線方向における両側のうち軸線第一側を向く第一端面と、前記軸線第一側とは反対側の軸線第二側を向く第二端面と、翼根溝と、を有する。前記第一端面は、前記外周面の前記軸線第一側の縁から前記軸線に対する径方向内側に向かって広がる。前記第二端面は、前記外周面の前記軸線第二側の縁から前記径方向内側に向かって広がる。前記翼根溝は、前記外周面から前記径方向内側に向かって凹み、前記第二端面から前記軸線方向に対して捩じれた溝貫通方向に向かって延びて前記第一端面まで貫通する。前記動翼は、前記軸線に対する径方向に垂直な断面が翼形を成し、前記径方向に延びる翼体と、前記翼体の前記径方向内側に設けられ、前記翼根溝に嵌まり込んでいる翼根と、有する。
前記動翼取外装置は、押出機構と、前記押出機構が取り付けられるフレームと、を備える。前記押出機構は、前記動翼に接触可能な接触端と、前記接触端を移動方向に移動させる駆動機構と、を有する。前記フレームは、前記移動方向に延びるベースと、前記ベースの前記移動方向における両側のうち第一移動側の端部である第一ベース端部から、前記移動方向と異なる高さ方向における両側のうち第一高さ側に延びる反力受け部と、前記ベースの前記第一移動側とは反対側の第二移動側の端部である第二ベース端部に設けられている押付受け部と、を有する。前記ベースは、前記第一高さ側を向いて、前記外周面に接触可能な外周接触面を有する。前記反力受け部は、前記外周接触面の前記第一移動側の端から前記第一高さ側に延び、前記第二移動側を向いて、前記第一端面に接触可能な端接触面を有する。前記押付受け部は、前記第一移動側を向き、前記駆動機構で前記第二移動側を向く機構端面と接触可能な機構接触面を有する。
【0010】
本態様では、動翼を第一移動側に移動させる際、動翼から第二移動側への力が作用するフレームに対して、ディスクから第一移動側への反力を作用させて、第二移動側へのフレームの移動を防いでいる。この際、フレームの反力受け部は、取外対象の動翼が取り付けられているディスクからの反力を受ける。本態様では、動翼の第二移動側に接触端を配置するものの、取外対象の動翼が取り付けられているディスクからの反力を受ける反力受け部がベースの第一移動側の端部である第一ベース端部に設けられている。このため、本態様では、動翼取外装置の全てを取外対象の動翼を基準として第二移動側に配置する場合よりも、本態様の動翼取外装置中で取外対象の動翼を基準として第二移動側に位置する部分を少なくすることができる。
【0011】
よって、本態様では、取外対象の動翼が取り付けられているディスクの第二端面と、このディスクの軸線第二側に隣接している他のディスクの第一端面との間の距離が短い場合でも、取外対象の動翼が取り付けられているディスクに動翼取外装置を配置することができる。
【0012】
前記目的を達成するための本開示に係る一態様としての動翼取外方法は、ディスクから動翼を取り外す動翼取外方法である。前記ディスクは、軸線を中心として周方向に広がっている外周面と、前記軸線が延びる軸線方向における両側のうち軸線第一側を向く第一端面と、前記軸線第一側とは反対側の軸線第二側を向く第二端面と、翼根溝と、を有する。前記第一端面は、前記外周面の前記軸線第一側の縁から前記軸線に対する径方向内側に向かって広がる。前記第二端面は、前記外周面の前記軸線第二側の縁から前記径方向内側に向かって広がる。前記翼根溝は、前記外周面から前記径方向内側に向かって凹み、前記第二端面から前記軸線方向に対して捩じれた溝貫通方向に向かって延びて前記第一端面まで貫通する。前記動翼は、前記軸線に対する径方向に垂直な断面が翼形を成し、前記径方向に延びる翼体と、前記翼体の前記径方向内側に設けられ、前記翼根溝に嵌まり込んでいる翼根と、有する。
前記動翼取外方法では、動翼取外装置を準備する準備工程と、前記動翼取外装置を前記ディスクに配置する装置配置工程と、前記動翼取外装置を動作させて、前記ディスクに取り付けられている前記動翼を移動させる動翼移動工程と、を実行する。前記準備工程で準備する前記動翼取外装置は、押出機構と、前記押出機構が取り付けられるフレームと、を備える。前記押出機構は、前記動翼に接触可能な接触端と、前記接触端を移動方向に移動させる駆動機構と、を有する。前記フレームは、前記移動方向に延びるベースと、前記ベースの前記移動方向における両側のうち第一移動側の端部である第一ベース端部から、前記移動方向と異なる高さ方向における両側のうち第一高さ側に延びる反力受け部と、前記ベースの前記第一移動側とは反対側の第二移動側の端部である第二ベース端部に設けられている押付受け部と、を有する。前記ベースは、前記第一高さ側を向いて、前記外周面に接触可能な外周接触面を有する。前記反力受け部は、前記外周接触面の前記第一移動側の端から前記第一高さ側に延び、前記第二移動側を向いて、前記第一端面に接触可能な端接触面を有する。前記押付受け部は、前記第一移動側を向き、前記駆動機構で前記第二移動側を向く機構端面と接触可能な機構接触面を有する。前記装置配置工程では、前記溝貫通方向に前記接触端の前記移動方向を合わせ、前記ベースの前記外周接触面を前記外周面に接触させ、前記反力受け部の端接触面を前記第一端面に接触させ、前記接触端を前記動翼の前記第二移動側に配置して、前記接触端と前記動翼とを前記移動方向で対向させる。前記動翼移動工程では、前記駆動機構を駆動させて、前記接触端を前記第一移動側に移動させて、前記動翼を前記第一移動側に移動させる。
【0013】
本態様の動翼取外方法では、第一態様における動翼取外装置と同様に、取外対象の動翼が取り付けられているディスクの第二端面と、このディスクの軸線第二側に隣接している他のディスクの第一端面との間の距離が短い場合でも、取外対象の動翼が取り付けられているディスクに動翼取外装置を配置することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一態様によれば、上流側ディスクの後端面と下流側ディスクの前端面との間の距離が、短い場合でも、ディスクから動翼を取り外すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本開示に係る一実施形態におけるガスタービンの模式的な断面図である。
【
図4】本開示に係る第一実施形態における動翼取外装置の斜視図である。
【
図5】本開示に係る第一実施形態における動翼取外装置の分解斜視図である。
【
図6】本開示に係る一実施形態における動翼取外方法の手順を示すフローチャートである。
【
図7】本開示に係る一実施形態におけるディスク回転工程後のロータの要部斜視図である。
【
図8】本開示に係る第一実施形態における装置配置工程後のロータの要部及び動翼取外装置の斜視図である。
【
図9】本開示に係る第一実施形態における装置配置工程後のロータの要部及び動翼取外装置の断面図である。
【
図10】本開示に係る第一実施形態における動翼移動工程中のロータの要部及び動翼取外装置の平面図である。
【
図11】本開示に係る第一実施形態におけるスペーサ配置工程後のロータの要部及び動翼取外装置の平面図である。
【
図12】本開示に係る第二実施形態における装置配置工程後のロータの要部及び動翼取外装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態及びその変形例について、図面を参照して詳細に説明する。
【0017】
「軸流回転機械の実施形態」
まず、動翼取外装置及び動翼取外方法が適用される軸流回転機械について、
図1~
図3を参照して説明する。
【0018】
動翼取外装置及び動翼取外方法が適用される軸流回転機械は、ガスタービンの圧縮機である。
図1に示すように、ガスタービン1は、空気Aを圧縮する圧縮機30と、圧縮機30で圧縮された空気A中で燃料Fを燃焼させて燃焼ガスGを生成する燃焼器20と、燃焼ガスGにより駆動するタービン10と、を備えている。
【0019】
圧縮機30は、軸線Arを中心として回転する圧縮機ロータ31と、圧縮機ロータ31を覆う圧縮機ケーシング35と、複数の静翼列37と、を有する。タービン10は、軸線Arを中心として回転するタービンロータ11と、タービンロータ11を覆うタービンケーシング15と、複数の静翼列17と、を有する。ここでで、軸線Arが延びる方向を軸線方向Da、この軸線Arを中心とした周方向を単に周方向Dcとし、軸線Arに対して垂直な方向を径方向Drとする。また、軸線方向Daの両側のうち、一方側を軸線上流側Dau、その反対側を軸線下流側Dadとする。さらに、径方向Drで軸線Arに近づく側を径方向内側Dri、その反対側を径方向外側Droとする。
【0020】
圧縮機30は、タービン10の軸線上流側Dauに配置されている。圧縮機ロータ31とタービンロータ11とは、同一軸線Ar上に位置し、互いに接続されてガスタービンロータ2を成す。このガスタービンロータ2には、例えば、発電機GENのロータが接続される。ガスタービン1は、さらに中間ケーシング6を備える。この中間ケーシング6は、軸線方向で、圧縮機ケーシング35とタービンケーシング15との間に配置されている。燃焼器20は、この中間ケーシング6に取り付けられている。圧縮機ケーシング35、中間ケーシング6及びタービンケーシング15は、互いに接続されてガスタービンケーシング5を成す。
【0021】
タービンロータ11は、軸線Arを中心として軸線方向Daに延びるロータ軸12と、このロータ軸12に取り付けられている複数の動翼列13と、を有する。複数の動翼列13は、軸線方向Daに並んでいる。各動翼列13は、いずれも、周方向Dcに並んでいる複数の動翼で構成されている。複数の動翼列13の各軸線上流側Dauには、複数の静翼列17のうちのいずれか一の静翼列17が配置されている。各静翼列17は、タービンケーシング15の内側に設けられている。各静翼列17は、いずれも、周方向Dcに並んでいる複数の静翼で構成されている。
【0022】
圧縮機ロータ31は、軸線Arを中心として軸線方向Daに延びるロータ軸32と、このロータ軸32に取り付けられている複数の動翼列33と、を有する。複数の動翼列33は、軸線方向Daに並んでいる。各動翼列33は、いずれも、周方向Dcに並んでいる複数の動翼で構成されている。複数の動翼列33の各軸線下流側Dadには、複数の静翼列37のうちのいずれか一の静翼列37が配置されている。各静翼列37は、圧縮機ケーシング35の内側に設けられている。各静翼列37は、いずれも、周方向Dcに並んでいる複数の静翼で構成されている。
【0023】
圧縮機30のロータ軸32は、複数の動翼列33毎のディスク40を有する。複数のディスク40は、
図2及び
図3に示すように、いずれも、軸線Arを中心として円板状を成している。ロータ軸32は、複数のディスク40が軸線方向Daに積層されて構成される。動翼列33を構成する複数の動翼50は、いずれも、径方向Drに延び、この径方向Drに対して垂直な断面形状が翼形を成す翼体51と、翼体51の径方向内側Driに設けられている翼根52と、を有する。翼根52は、軸線上流側Dauを向く翼根前端面53fと、軸線下流側Dadを向く翼根後端面53bと、を有する。なお、
図2及び
図3は、複数の動翼列33のうち、最も軸線上流側Dauの初段動翼列33fと、この初段動翼列33fが取り付けられている初段ディスク40fと、初段動翼列33fの軸線下流側Dadに隣接する第二段動翼列33sと、この第二段動翼列33sが取り付けられている第二段ディスク40sとが描かれている。
【0024】
円板状のディスク40には、軸線Arを中心として円板状の胴部41と、胴部41の外周に形成されている動翼取付部43と、を有する。胴部41は、軸線上流側Dauを向く内側前端面42fと、軸線下流側Dadを向く内側後端面42bと、を有する。内側後端面42bは、内側前端面42fと背合わせの関係である。ディスク40の内側後端面42bは、このディスク40の軸線下流側Dadに隣接している他のディスク40の内側前端面42fと接触している。動翼取付部43は、軸線Arを中心として周方向Dcに広がっている外周面44と、軸線上流側Dauを向く外側前端面45fと、軸線下流側Dadを向く外側後端面45bと、翼根溝46と、を有する。外側前端面45fは、外周面44の軸線上流側Dauの縁から径方向内側Driに広がっている。この外側前端面45fは、内側前端面42fよりも、軸線下流側Dadに位置する。外側後端面45bは、外周面44の軸線下流側Dadの縁から径方向内側Driに広がっている。この外側後端面45bは、内側後端面42bよりも、軸線上流側Dauに位置する。よって、軸線方向Daにおける外側前端面45fと外側後端面45bとの間の距離は、軸線方向Daにおける内側前端面42fと内側後端面42bとの間の距離より短い。翼根溝46は、外周面44から径方向内側Driに向かって凹んでいる。この翼根溝46は、軸線方向Daに対して捩じれた溝貫通方向Dpに向かって延び、動翼取付部43を貫通している。このため、この翼根溝46は、外側後端面45bで開口している後端開口47bと、外側前端面45fで開口している前端開口47fと、を有する。動翼50の翼根52は、この翼根溝46に嵌まり込んでいる。
【0025】
「動翼取外装置の第一実施形態」
本実施形態における動翼取外装置について、
図4及び
図5を参照して説明する。
【0026】
図4及び
図5に示すように、本実施形態の動翼取外装置60は、押出機構61と、押出機構61が取り付けられるフレーム70と、複数のスペーサ90と、引掛け具91,95と、を備える。
【0027】
押出機構61は、動翼50に接触可能な接触端62と、接触端62を移動方向Dmに移動させる駆動機構としての油圧シリンダ65と、を有する。ここで、移動方向Dmにおける両側のうち、一方側を第一移動側Dm1、他方側を第二移動側Dm2とする。また、移動方向Dmに垂直な方向を高さ方向Dh、移動方向Dm及び高さ方向Dhに垂直な方向を幅方向Dwとする。さらに、高さ方向Dhの両側のうち、一方側を第一高さ側Dh1とし、他方側を第二高さ側Dh2とする。油圧シリンダ65は、接触端62から第二移動側Dm2に延びるピストンロッド66と、ピストンロッド66の第二移動側Dm2の端に設けられているピストン67と、ピストン67が移動方向Dmに移動可能にピストン67を覆うシリンダケーシング68と、を有する。このシリンダケーシング68は、シリンダケーシング68中で最も第二移動側Dm2に位置し、第二移動側Dm2を向くケーシング底面69を有する。このケーシング底面69は、油圧シリンダ65である駆動機構の機構端面69である。
【0028】
フレーム70は、ベース71と、ベース連結部79と、反力受け部81と、押付受け部85と、を有する。
【0029】
ベース71は、移動方向Dmに延びる第一ベース71f及び第二ベース71sを有する。第二ベース71sは、第一ベース71fから幅方向Dwに離れて配置される。第一ベース71f及び第二ベース71sは、いずれも、第一移動側Dm1の端部である第一ベース端部73と、第二移動側Dm2の端部である第二ベース端部74と、第一ベース端部73と第二ベース端部74との間のベース中間部75と、を有する。ベース中間部75は、第一高さ側Dh1を向いてディスク40の外周面44に接触可能な外周接触面76を有する。
【0030】
ベース連結部79は、幅方向Dwに互いに間隔をあけて配置されている第一ベース71fと第二ベース71sとを連結する。このベース連結部79における幅方向Dwの一方側の端部は、ボルトにより、第一ベース71fの第二ベース端部74に連結されている。また、このベース連結部79における幅方向Dwの他方側の端部は、ボルトにより、第二ベース71sの第二ベース端部74に連結されている。
【0031】
反力受け部81は、第一反力受け部81f及び第二反力受け部81sを有する。第一反力受け部81fは、第一ベース71fの第一ベース端部73から第一高さ側Dh1に延びている。第二反力受け部81sは、第二ベース71sの第一ベース端部73から第一高さ側Dh1に延びている。第一反力受け部81fは、第一ベース71fにおける外周接触面76の第一移動側Dm1の端から第一高さ側Dh1に延び、第二移動側Dm2を向いて、ディスク40の外側前端面45fに接触可能な端接触面82を有する。第二反力受け部81sは、第二ベース71sにおける外周接触面76の第一移動側Dm1の端から第一高さ側Dh1に延び、第二移動側Dm2を向いて、ディスク40の外側前端面45fに接触可能な端接触面82を有する。なお、本実施形態では、第一ベース71fと第一反力受け部81fとは、一体部材であるが、第一ベース71fと第一反力受け部81fとをそれぞれ別部材で形成し、第一ベース71fと第一反力受け部81fとボルト等で連結してもよい。同様に、第二ベース71sと第二反力受け部81sとをそれぞれ別部材で形成し、第二ベース71sと第二反力受け部81sとボルト等で連結してもよい。
【0032】
押付受け部85は、前述のベース連結部79より第一移動側Dm1に、第一ベース71fの第二ベース端部74及び第二ベース71sの第二ベース端部74に跨って設けられている。押付受け部85における幅方向Dwの一方側の端部は、ボルトにより、第一ベース71fの第二ベース端部74に連結されている。また、押付受け部85における幅方向Dwの他方側の端部は、ボルトにより、第二ベース71sの第二ベース端部74に連結されている。この押付受け部85は、第一移動側Dm1を向き、油圧シリンダ65におけるケーシング底面69と接触可能な機構接触面86を有する。この機構接触面86は、幅方向Dwにおける第一ベース71fと第二ベース71sとの間であって、第一ベース71fの外周接触面76及び第二ベース71sの外周接触面76よりも、第二高さ側Dh2に位置する。
【0033】
本実施形態の押付受け部85は、ベース連結部79に対して独立した部材である。しかしながら、押付受け部85にベース連結部としての機能を持たせ、押付受け部85に対して独立したベース連結部79を省略してもよい。また、本実施形態の押付受け部85は、第一ベース71f及び第二ベース71sに対して独立した部材であるが、押付受け部85と第一ベース71fと第二ベース71sとが一体部材であってもよい。
【0034】
複数のスペーサ90は、互に厚さが異なる板である。複数のスペーサ90のうち、第一スペーサ90aの厚さtは、油圧シリンダ65のストローク、言い換えると、接触端62の移動距離より、僅かに短い。複数のスペーサ90のうち、第二スペーサ90bの厚さ2tは、第一スペーサ90aの厚さtの二倍である。複数のスペーサ90のうち、第三スペーサ90cの厚さ3tは、第一スペーサ90aの厚さtの三倍である。各スペーサ90には、引掛け具91が設けられている。この引掛け具91は、ワイヤWを引っ掛けることが可能な引掛け部91hを有する。本実施形態における引掛け具91は、例えば、アイボルトである。これら複数のスペーサ90は、
図11に示すように、移動方向Dmにおける動翼50と接触端62との間に配置される。
【0035】
フレーム70には、引掛け具95が設けられている。この引掛け具95は、ワイヤWを引っ掛けることが可能な引掛け部95hを有する。本実施形態における引掛け具95は、例えば、ボルトである。このボルトがフレーム70の押付受け部85に捩じ込まれている。ボルトは、六角柱状のボルト頭と、このボルト頭に接続されている円柱状のネジ部と、を有する。引掛け具95における引掛け部95hは、ボルトにおけるネジ部のボルト頭部側の部分である。
【0036】
「動翼取外方法の実施形態」
本実施形態における動翼取外方法について、
図6に示すフローチャートに従って説明する。
【0037】
本実施形態における動翼取外方法では、準備工程S1、ディスク回転工程S2、装置配置工程S3、動翼移動工程S4を実行する。ここでは、初段ディスク40fから一の動翼50を取り外す例について、説明する。
【0038】
まず、準備工程S1を実行する。この準備工程S1では、先に説明した動翼取外装置60を準備する。
【0039】
次に、ディスク回転工程S2を実行する。このディスク回転工程S2では、
図7に示すように、軸線Arを中心としてディスク40を回転させる。この際、取外対象の動翼50aにおける翼根前端面53fの少なくとも一部が軸線Arよりも上側に位置し、且つこの翼根前端面53fが翼根後端面53bよりも上側に位置するようにする。なお、既に、取外対象の動翼50aにおける翼根前端面53fの少なくとも一部が軸線Arよりも上側に位置し、且つこの翼根前端面53fが翼根後端面53bよりも上側に位置している場合には、ディスク40を回転させる必要はない。
【0040】
次に、装置配置工程S3を実行する。この装置配置工程S3では、
図8~
図10に示すように、動翼取外装置60を初段ディスク40fに配置する。具体的に、この装置配置工程S3では、以下のa)~d)を実行する。
a)第一ベース71fと第二ベース71sとの間に、取外対象の動翼50aが位置し、この動翼50aが嵌まり込んでいる翼根溝46の溝貫通方向Dpに接触端62の移動方向Dmが合うよう、フレーム70を配置する。
b)第一ベース71fの外周接触面76及び第二ベース71sの外周接触面76を初段ディスク40fの外周面44に接触させる。
c)第一反力受け部81fの端接触面82及び第二反力受け部81sの端接触面82を初段ディスク40fの外側前端面45fに接触させる。
d)押出機構61の接触端62を取外対象の動翼50aの第二移動側Dm2に配置して、接触端62と動翼50aの翼体51とを移動方向Dmで対向させる。
【0041】
また、装置配置工程S3では、必要に応じて、以上のa)~d)を実行する前に、動翼取外装置60の落下防止処理を施す。具体的に、動翼取外装置60のフレーム70に設けられている引掛け具95に、ワイヤWの一端を取り付け、このワイヤWの他端を取外対象の動翼50aより上側に存在する固定部材に取り付ける。
【0042】
なお、前述のディスク回転工程S2で、取外対象の動翼50aにおける翼根前端面53fの少なくとも一部を軸線Arよりも上側に位置させ、且つこの翼根前端面53fを翼根後端面53bよりも上側に位置させるのは、以下の理由a)b)である。
a)取外対象の動翼50aにおける翼根前端面53fの少なくとも一部が軸線Arよりも上側に位置する場合、初段ディスク40fの外周面44中で取外対象の動翼50aに隣接する部分が、鉛直上方向の成分を含む方向を向くことになる。このため、ベース71にかかる重力により、ベース71の外周接触面76と、初段ディスク40fの外周面44中で取外対象の動翼50aに隣接する部分との接触性を確保できる。
b)翼根前端面53fが翼根後端面53bよりも上側に位置する場合、動翼取外装置60を初段ディスク40fに配置した際、動翼取外装置60の第二移動側Dm2の部分が第一移動側Dm1の部分より下側に位置することになる。このため、動翼取外装置60にかかる重力の成分のうち、移動方向Dmの成分は、第二移動側Dm2を向く成分になる。よって、動翼取外装置60は、重力により、第二移動側Dm2に移動してようとする。しかしながら、動翼取外装置60が第二移動側Dm2に移動してようとしても、動翼取外装置60の端接触面82が初段ディスク40fの外側前端面45fに接触している関係で、動翼取外装置60は、第二移動側Dm2に移動できない。
【0043】
次に、動翼移動工程S4を実行する。この動翼移動工程S4は、第一移動工程S5、判断工程S6、第二移動工程S7、スペーサ配置工程S8を含む。
【0044】
第一移動工程S5では、
図10に示すように、油圧シリンダ65を駆動させて、接触端62で動翼50aの翼体51を第一移動方向Dmに押して、接触端62と共に動翼50aを第一移動側Dm1に移動させる。
【0045】
油圧シリンダ65を駆動させて、動翼50aを第一移動側Dm1に移動させる際、この油圧シリンダ65を支持するフレーム70には、動翼50aから第二移動側Dm2の向きの力が作用する。この力に対して、フレーム70の反力受け部81には、初段ディスク40fの外側前端面45fから反力が作用する。このため、本実施形態では、油圧シリンダ65を駆動させて、動翼50aを第一移動側Dm1に移動させている最中であっても、動翼取外装置60は、第二移動側Dm2へ移動しない。
【0046】
判断工程S6では、第一移動工程S5での動翼50aの移動の結果、動翼50aの翼根52が翼根溝46から抜けたか否かを判断する。
【0047】
判断工程S6で、動翼50aの翼根52が翼根溝46から抜けていないと判断された場合には、第二移動工程S7を実行する。この第二移動工程S7では、油圧シリンダ65を駆動させて接触端62を第二移動側Dm2に移動させる。つまり、接触端62を元の位置に戻す。
【0048】
スペーサ配置工程S8では、
図11に示すように、第二移動工程S7の実行で、動翼50aと接触端62との間に形成された隙間に、一以上のスペーサ90のうち、いずれか一のスペーサ90を配置する。このスペーサ配置工程S8では、動翼50aと接触端62との間に形成された隙間にスペーサ90を配置する前に、必要に応じて、このスペーサ90の落下防止処理を施す。具体的に、スペーサ90に設けられている引掛け具91に、ワイヤWの一端を取り付け、このワイヤWの他端を動翼50aより上側に存在する固定部材に取り付ける。
【0049】
スペーサ配置工程S8が終了すると、第一移動工程S5を再度実行する。以下、判断工程S6で、動翼50aの翼根52が翼根溝46から抜けたと判断されるまで、第一移動工程S5、判断工程S6、第二移動工程S7、スペーサ配置工程S8を繰り返して実行する。
【0050】
以上で、初段ディスク40fからの動翼50aの取外が終了する。
【0051】
なお、本実施形態では、スペーサ配置工程S8を六回実行する。第一回目のスペーサ配置工程S8では、複数のスペーサ90のうち、厚さが最も薄い第一スペーサ90aを用いる。第二回目のスペーサ配置工程S8では、第一スペーサ90aを除いてから、第一スペーサ90aよりも厚さが厚い第二スペーサ90bを用いる。第三回目のスペーサ配置工程S8では、第二スペーサ90bを除いてから、第二スペーサ90bよりも厚さが厚い第三スペーサ90cを用いる。第四回目のスペーサ配置工程S8では、第三スペーサ90cと接触端62との間に第一スペーサ90aを配置する。つまり、第四回目のスペーサ配置工程S8では、第三スペーサ90cと第一スペーサ90aとを用いる。第五回目のスペーサ配置工程S8では、第一スペーサ90aのみを除いから、第三スペーサ90cと接触端62との間に、第二スペーサ90bを配置する。つまり、第五回目のスペーサ配置工程S8では、第三スペーサ90cと第二スペーサ90bとを用いる。最後の第六回目のスペーサ配置工程S8では、第三スペーサ90cと第二スペーサ90bと第一スペーサ90aとを用いる。
【0052】
本実施形態では、動翼50aを第一移動側Dm1に移動させる際、前述したように、動翼50aから第二移動側Dm2への力が作用するフレーム70に対して、初段ディスク40fから第一移動側Dm1への反力を作用させて、第二移動側Dm2へのフレーム70の移動を防いでいる。この際、フレーム70の反力受け部81は、取外対象の動翼50aが取り付けられている初段ディスク40fからの反力を受ける。本実施形態では、動翼50aの第二移動側Dm2に接触端62を配置するものの、取外対象の動翼50aが取り付けられている初段ディスク40fからの反力を受ける反力受け部81がベース71の第一移動側Dm1の端部である第一ベース端部73に設けられている。このため、本実施形態では、動翼取外装置の全てを取外対象の動翼50aを基準として第二移動側Dm2に配置する場合よりも、本実施形態の動翼取外装置60中で、取外対象の動翼50aを基準として第二移動側Dm2に位置する部分を少なくすることができる。
【0053】
しかも、本実施形態では、一以上のスペーサ90を用いることで、油圧シリンダ65のストロークを短くしているので、取外対象の動翼50aを基準として、第二移動側Dm2に配置される油圧シリンダ65における移動方向Dmの長さを短くすることができる。
【0054】
よって、本実施形態では、取外対象の動翼50aが取り付けられている初段ディスク40fの外側後端面45bと、この初段ディスク40fの軸線下流側Dadに隣接している第二段ディスク40sの外側前端面45fとの間の距離が短い場合でも、本実施形態の動翼取外装置60を初段ディスク40fに配置することができる。
【0055】
また、本実施形態では、押付受け部85の機構接触面86が、ベース71の外周接触面76より第二高さ側Dh2に位置し、油圧シリンダ65のケーシング底面69がこの機構接触面86に接するよう油圧シリンダ65が配置される。このため、動翼取外装置60をディスク40に配置した際、油圧シリンダ65及び押付受け部85は、ディスク40の外周面44よりも径方向外側Droに位置することになる。よって、本実施形態では、取外対象の動翼50aが取り付けられている初段ディスク40fの外側後端面45bと、この初段ディスク40fの軸線下流側Dadに隣接している第二段ディスク40sの外側前端面45fとの間の距離が実質的にない場合でも、本実施形態の動翼取外装置60を初段ディスク40fに配置することができる。
【0056】
以上のように、本実施形態では、初段ディスク40fに取り付けられている動翼50aを取外対象にしている。しかしながら、ディスク40に取り付けられている動翼50の第一移動側Dm1に、この動翼50の配置スペースがある場合には、他の段のディスク40に取り付けられている動翼50を取外対象にしてもよい。例えば、最終段のディスク40に取り付けられている動翼50を取外対象にしてもよい。
【0057】
本実施形態では、第一移動側Dm1が軸線方向Daにおける軸線上流側Dauに対応し、第二移動側Dm2が軸線方向Daにおける軸線下流側Dadに対応する。しかしながら、最終段のディスク40に取り付けられている動翼50を取外対象にする場合、第一移動側Dm1が軸線方向Daにおける軸線下流側Dadに対応し、第二移動側Dm2が軸線方向Daにおける軸線上流側Dauに対応することになる。よって、本実施形態にように、第一移動側Dm1が軸線方向Daにおける軸線上流側Dauに対応し、第二移動側Dm2が軸線方向Daにおける軸線下流側Dadに対応する必要性はない。
【0058】
また、本実施形態では、軸線上流側Dauが軸線第一側であり、軸線下流側Dadが軸線第二側であるが、軸線上流側Dauが軸線第二側であり、軸線下流側Dadが軸線第一側であってもよい。
【0059】
「動翼取外装置の第二実施形態」
本実施形態における動翼取外装置について、
図12を参照して説明する。第一実施形態における動翼取外装置60は、複数のディスク40相互が連結されているときに、初段ディスク40fに設けられている動翼50を取り外す場合に有効である。本実施形態における動翼取外装置60aは、複数のディスク40相互の連結が解除されたときに、いずれかのディスク40に設けられている動翼50を取り外す場合に有効な装置である。
【0060】
本実施形態における動翼取外装置60aは、第一実施形態における動翼取外装置60と同様、押出機構61と、押出機構61が取り付けられるフレーム70aと、複数のスペーサ90と、引掛け具91,95と、を備える。
【0061】
押出機構61は、第一実施形態の押出機構61と同様、接触端62と、油圧シリンダ65と、を有する。
【0062】
フレーム70aは、第一実施形態のフレーム70と同様、ベースと、ベース連結部79と、反力受け部81と、押付受け部85と、を有する。ベースは、第一実施形態のベース71と同様、第一ベース71fa及び第二ベース71saを有する。第一ベース71fa及び第二ベース71saは、第一移動側Dm1の端部である第一ベース端部73と、第二移動側Dm2の端部である第二ベース端部74と、第一ベース端部73と第二ベース端部74との間のベース中間部75と、を有する。本実施形態の第一ベース71fa及び第二ベース71saは、さらに、ベース中間部75の第二移動側Dm2の端部から第一高さ側Dh1に延びるシフト部77を有する。第二ベース端部74は、このシフト部77の第一高さ側Dh1の端に設けられている。よって、第二ベース端部74に設けられる押付受け部85が有する機構接触面86は、ベースにおける外周接触面76よりも第一高さ側Dh1に位置することになる。この関係で、この機構接触面86に接する油圧シリンダ65のほぼ全て及び接触端62のほぼ全てがベースにおける外周接触面76よりも第一高さ側Dh1に位置することになる。
【0063】
本実施形態でも、
図6のフローチャートに示す手順で、ディスク40から動翼50を取り外す。但し、
図6のフローチャート中の装置配置工程S3では、接触端62と動翼50の翼根52とを移動方向Dmで対向させる。そして、第一移動工程S5では、油圧シリンダ65を駆動させて、接触端62で動翼50の翼根52を第一移動方向Dmに押して、接触端62と共に動翼50を第一移動側Dm1に移動させる。
【0064】
以上のように、本実施形態でも、第一実施形態の動翼取外装置60と同様、動翼取外装置の全てを取外対象の動翼50aを基準として第二移動側Dm2に配置する場合よりも、本実施形態の動翼取外装置60a中で取外対象の動翼50aを基準として第二移動側Dm2に位置する部分を少なくすることができる。
【0065】
但し、本実施形態では、押付受け部85の機構接触面86が、ベースの外周接触面76より第一高さ側Dh1に位置し、油圧シリンダ65のケーシング底面69がこの機構接触面86に接するよう油圧シリンダ65が配置される。このため、動翼取外装置60aをディスク40に配置した際、油圧シリンダ65及び押付受け部85は、ディスク40の外周面44よりも径方向内側Driに位置することになる。よって、本実施形態では、第一実施形態のように、取外対象の動翼50aが取り付けられている初段ディスク40fの外側後端面45bと、この初段ディスク40fの軸線下流側Dadに隣接している第二段ディスク40sの外側前端面45fとの間の距離が実質的にない場合には適用できない。
【0066】
一方、本実施形態では、動翼50と取り外す際、接触端62で動翼50の翼根52を第一移動側Dm1に押すので、動翼50の翼体51の損傷を抑制できる。
【0067】
なお、本実施形態でも、第一実施形態で説明したように、第一移動側Dm1が軸線方向Daにおける軸線上流側Dauに対応し、第二移動側Dm2が軸線方向Daにおける軸線下流側Dadに対応する必要性はない。つまり、動翼50を取り外す際、この動翼50を軸線下流側Dadに移動させてもよい。
【0068】
本実施形態では、軸線上流側Dauが軸線第一側であり、軸線下流側Dadが軸線第二側であるが、第一実施形態で説明したように、軸線上流側Dauが軸線第二側であり、軸線下流側Dadが軸線第一側であってもよい。
【0069】
「変形例」
以上の各実施形態における駆動機構は、油圧シリンダ65である。しかしながら、駆動機構は、油圧シリンダ65でなくてもよく、例えば、空気圧シリンダや、電磁アクチュエータ等、他のアクチュエータであってもよい。
【0070】
以上の各実施形態は、いずれも、ガスタービンの圧縮機30における動翼50を取り外す例である。しかしながら、本発明の取外対象は、ガスタービンの圧縮機30における動翼50に限定されない。他の軸流回転機械の動翼を取外対象にしてよい。
【0071】
「付記」
以上の実施形態における動翼取外装置は、例えば、以下のように把握される。
【0072】
(1)第一態様における動翼取外装置は、ディスク40から動翼50を取り外す動翼取外装置60,60aである。前記ディスク40は、軸線Arを中心として周方向Dcに広がっている外周面44と、前記軸線Arが延びる軸線方向Daにおける両側のうち軸線第一側Dau(or Dad)を向く第一端面45f(or 45b)と、前記軸線第一側Dau(or Dad)とは反対側の軸線第二側Dad(or Dau)を向く第二端面45b(or 45f)と、翼根溝46と、を有する。前記第一端面45f(or 45b)は、前記外周面44の前記軸線第一側Dau(or Dad)の縁から前記軸線Arに対する径方向内側Driに向かって広がる。前記第二端面45b(or 45f)は、前記外周面44の前記軸線第二側Dad(or Dau)の縁から前記径方向内側Driに向かって広がる。前記翼根溝46は、前記外周面44から前記径方向内側Driに向かって凹み、前記第二端面45b(or 45f)から前記軸線方向Daに対して捩じれた溝貫通方向Dpに向かって延びて前記第一端面45f(or 45b)まで貫通する。前記動翼50は、前記軸線Arに対する径方向Drに垂直な断面が翼形を成し、前記径方向Drに延びる翼体51と、前記翼体51の前記径方向内側Driに設けられ、前記翼根溝46に嵌まり込んでいる翼根52と、有する。
前記動翼取外装置60,60aは、押出機構61と、前記押出機構61が取り付けられるフレーム70,70aと、を備える。前記押出機構61は、前記動翼50に接触可能な接触端62と、前記接触端62を移動方向Dmに移動させる駆動機構65と、を有する。前記フレーム70,70aは、前記移動方向Dmに延びるベース71,71aと、前記ベース71,71aの前記移動方向Dmにおける両側のうち第一移動側Dm1の端部である第一ベース端部73から、前記移動方向Dmと異なる高さ方向Dhにおける両側のうち第一高さ側Dh1に延びる反力受け部81と、前記ベース71,71aの前記第一移動側Dm1とは反対側の第二移動側Dm2の端部である第二ベース端部74に設けられている押付受け部85と、を有する。前記ベース71,71aは、前記第一高さ側Dh1を向いて、前記外周面44に接触可能な外周接触面76を有する。前記反力受け部81は、前記外周接触面76の前記第一移動側Dm1の端から前記第一高さ側Dh1に延び、前記第二移動側Dm2を向いて、前記第一端面45f(or 45b)に接触可能な端接触面82を有する。前記押付受け部85は、前記第一移動側Dm1を向き、前記駆動機構65で前記第二移動側Dm2を向く機構端面69と接触可能な機構接触面86を有する。
【0073】
本態様では、動翼50を第一移動側Dm1に移動させる際、動翼50から第二移動側Dm2への力が作用するフレーム70,70aに対して、ディスク40から第一移動側Dm1への反力を作用させて、第二移動側Dm2へのフレーム70,70aの移動を防いでいる。この際、フレーム70,70aの反力受け部81は、取外対象の動翼50が取り付けられているディスク40からの反力を受ける。本態様では、動翼50の第二移動側Dm2に接触端62を配置するものの、取外対象の動翼50が取り付けられているディスク40からの反力を受ける反力受け部81がベース71,71aの第一移動側Dm1の端部である第一ベース端部73に設けられている。このため、本態様では、動翼取外装置の全てを取外対象の動翼50を基準として第二移動側Dm2に配置する場合よりも、本態様の動翼取外装置60,60a中で取外対象の動翼50を基準として第二移動側Dm2に位置する部分を少なくすることができる。
【0074】
よって、本態様では、取外対象の動翼50が取り付けられているディスク40の第二端面45b(or 45f)と、このディスク40の軸線第二側Dad(or Dau)に隣接している他のディスク40の第一端面45f(or 45b)との間の距離が短い場合でも、取外対象の動翼50が取り付けられているディスク40に動翼取外装置60,60aを配置することができる。
【0075】
(2)第二態様における動翼取外装置は、
前記第一態様における動翼取外装置60,60aにおいて、前記駆動機構65は、前記接触端62から前記第二移動側Dm2に延びるピストンロッド66と、前記ピストンロッド66の前記第二移動側Dm2の端に設けられているピストン67と、前記ピストン67が前記移動方向Dmに移動可能に、前記ピストン67を覆うシリンダケーシング68と、を有する流体圧シリンダである。前記機構端面69は、前記シリンダケーシング68で前記第二移動側Dm2を向くケーシング底面69である。
【0076】
(3)第三態様における動翼取外装置は、
前記第一態様又は前記第二態様における動翼取外装置60において、前記機構接触面86は、前記外周接触面76を基準として、前記第一高さ側Dh1とは反対側の第二高さ側Dh2に位置する。前記ベース71の前記外周接触面76を前記外周面44に接触させた際、前記接触端62は、前記翼体51の前記第二移動側Dm2の縁に、前記移動方向Dmで対向する。
【0077】
本態様の機構接触面86は、外周接触面76を基準として、第二高さ側Dh2に位置する。また、本態様では、ベース71の外周接触面76をディスク40の外周面44に接触させた際、接触端62は、翼体51の第二移動側Dm2の縁に、移動方向Dmで対向する。このため、本態様では、動翼取外装置60をディスク40に配置した際、駆動機構65及び押付受け部85が、ディスク40の外周面44よりも径方向外側Droに位置することになる。よって、本態様では、取外対象の動翼50が取り付けられているディスク40の第二端面45b(or 45f)と、このディスク40の軸線第二側Dad(or Dau)に隣接している他のディスク40の第一端面45f(or 45b)との間の距離が実質的にない場合でも、取外対象の動翼50が取り付けられているディスク40に動翼取外装置60を配置することができる。
【0078】
(4)第四態様における動翼取外装置は、
前記第一態様又は前記第二態様における動翼取外装置60aにおいて、前記機構接触面86は、前記外周接触面76を基準として、前記第一高さ側Dh1に位置する。前記ベースの前記外周接触面76を前記外周面44に接触させた際、前記接触端62は、前記翼根52の前記第二移動側Dm2の縁に、前記移動方向Dmで対向する。
【0079】
本態様では、駆動機構65を駆動させることで、接触端62で動翼50の翼根52を第一移動側Dm1に押すことができる。このため、本態様では、動翼50を取り外す際、この動翼50の翼体51の損傷を抑制することができる。
【0080】
(5)第五態様における動翼取外装置は、
前記第一態様から前記第四態様のうちのいずれか一態様における動翼取外装置60,60aにおいて、前記ベース71,71aは、前記移動方向Dmに延びる第一ベース71f,71fa及び第二ベース71s,71saを有する。前記反力受け部81は、前記第一ベース71f,71faの前記第一移動側Dm1の端部である第一ベース端部73から前記第一高さ側Dh1に延びる第一反力受け部81fと、前記第二ベース71s,71saの前記第一移動側Dm1の端部である第一ベース端部73から前記第一高さ側Dh1に延びる第二反力受け部81sと、を有する。前記第一ベース71f,71fa及び前記第二ベース71s,71saのそれぞれは、前記外周接触面76を有する。前記第一反力受け部81f及び前記第二反力受け部81sのそれぞれは、前記端接触面82を有する。前記高さ方向Dhは、前記移動方向Dmに垂直な方向であり、前記高さ方向Dh及び前記移動方向Dmに垂直な方向が幅方向Dwである。前記第二ベース71s,71saは、前記第一ベース71f,71faから前記幅方向Dwに離れて配置されている。前記押出機構61は、前記第一ベース71f,71faと前記第二ベース71s,71saとの間に配置されている。前記押付受け部85は、前記機構接触面86が前記第一ベース71f,71faと前記第二ベース71s,71saとの間に位置するよう、前記第一ベース71f,71faの前記第二移動側Dm2の端である第二ベース端部74及び前記第二ベース71s,71saの前記第二移動側Dm2の第二ベース端部74に設けられている。
【0081】
(6)第六態様における動翼取外装置は、
前記第五態様における動翼取外装置60,60aにおいて、前記フレーム70,70aは、さらに、前記第一ベース71f,71fa及び前記第二ベース71s,71saに対する前記第二移動側Dm2に配置され、前記第一ベース71f,71faと前記第二ベース71s,71saとを連結するベース連結部79を有する。
【0082】
(7)第七態様における動翼取外装置は、
前記第一態様から前記第六態様のうちのいずれか一態様における動翼取外装置60,60aにおいて、さらに、前記フレーム70,70aに設けられ、ワイヤWを引っ掛けることが可能な引掛け部95hを有する引掛け具95を備える。
【0083】
本態様では、ワイヤWの一端を引掛け具95にワイヤWの一端を取り付け、このワイヤWの他端を取外対象の動翼50より上側に存在する固定部材に取り付けることで、フレーム70,70aの落下を防止することができる。
【0084】
(8)第八態様における動翼取外装置は、
前記第一態様から前記第七態様のうちのいずれか一態様における動翼取外装置60,60aにおいて、さらに、前記移動方向Dmで、前記動翼50と前記接触端62との間に配置可能な一以上のスペーサ90を、備える。
【0085】
本態様では、一以上のスペーサ90を用いることで、移動方向Dmにおける駆動機構65のストロークを短くすることができる。このため、本態様では、取外対象の動翼50を基準として、第二移動側Dm2に配置される駆動機構65における移動方向Dmの長さを短くすることができる。
【0086】
(9)第九態様における動翼取外装置は、
前記第八態様における動翼取外装置60,60aにおいて、さらに、前記一以上のスペーサ90に設けられ、ワイヤWを引っ掛けることが可能な引掛け部91hを有する引掛け具91を備える。
【0087】
本態様では、ワイヤWの一端を引掛け具91にワイヤWの一端を取り付け、このワイヤWの他端を取外対象の動翼50より上側に存在する固定部材に取り付けることで、スペーサ90の落下を防止することができる。
【0088】
以上の実施形態における動翼取外方法は、例えば、以下のように把握される。
(10)第十態様における動翼取外方法は、ディスク40から動翼50を取り外す動翼取外方法である。前記ディスク40は、軸線Arを中心として周方向Dcに広がっている外周面44と、前記軸線Arが延びる軸線方向Daにおける両側のうち軸線第一側Dau(or Dad)を向く第一端面45f(or 45b)と、前記軸線第一側Dau(or Dad)とは反対側の軸線第二側Dad(or Dau)を向く第二端面45b(or 45f)と、翼根溝46と、を有する。前記第一端面45f(or 45b)は、前記外周面44の前記軸線第一側Dau(or Dad)の縁から前記軸線Arに対する径方向内側Driに向かって広がる。前記第二端面45b(or 45f)は、前記外周面44の前記軸線第二側Dad(or Dau)の縁から前記径方向内側Driに向かって広がる。前記翼根溝46は、前記外周面44から前記径方向内側Driに向かって凹み、前記第二端面45b(or 45f)から前記軸線方向Daに対して捩じれた溝貫通方向Dpに向かって延びて前記第一端面45f(or 45b)まで貫通する。前記動翼50は、前記軸線Arに対する径方向Drに垂直な断面が翼形を成し、前記径方向Drに延びる翼体51と、前記翼体51の前記径方向内側Driに設けられ、前記翼根溝46に嵌まり込んでいる翼根52と、有する。
前記動翼取外方法では、動翼取外装置60,60aを準備する準備工程S1と、前記動翼取外装置60,60aを前記ディスク40に配置する装置配置工程S3と、前記動翼取外装置60,60aを動作させて、前記ディスク40に取り付けられている前記動翼50を移動させる動翼移動工程S4と、を実行する。前記準備工程S1で準備する前記動翼取外装置60,60aは、押出機構61と、前記押出機構61が取り付けられるフレーム70,70aと、を備える。前記押出機構61は、前記動翼50に接触可能な接触端62と、前記接触端62を移動方向Dmに移動させる駆動機構65と、を有する。前記フレーム70,70aは、前記移動方向Dmに延びるベース71,71aと、前記ベース71,71aの前記移動方向Dmにおける両側のうち第一移動側Dm1の端部である第一ベース端部73から、前記移動方向Dmと異なる高さ方向Dhにおける両側のうち第一高さ側Dh1に延びる反力受け部81と、前記ベース71,71aの前記第一移動側Dm1とは反対側の第二移動側Dm2の端部である第二ベース端部74に設けられている押付受け部85と、を有する。前記ベース71,71aは、前記第一高さ側Dh1を向いて、前記外周面44に接触可能な外周接触面76を有する。前記反力受け部81は、前記外周接触面76の前記第一移動側Dm1の端から前記第一高さ側Dh1に延び、前記第二移動側Dm2を向いて、前記第一端面45f(or 45b)に接触可能な端接触面82を有する。前記押付受け部85は、前記第一移動側Dm1を向き、前記駆動機構65で前記第二移動側Dm2を向く機構端面69と接触可能な機構接触面86を有する。前記装置配置工程S3では、前記溝貫通方向Dpに前記接触端62の前記移動方向Dmを合わせ、前記ベース71,71aの前記外周接触面76を前記外周面44に接触させ、前記反力受け部81の端接触面82を前記第一端面45f(or 45b)に接触させ、前記接触端62を前記動翼50の前記第二移動側Dm2に配置して、前記接触端62と前記動翼50とを前記移動方向Dmで対向させる。前記動翼移動工程S4では、前記駆動機構65を駆動させて、前記接触端62を前記第一移動側Dm1に移動させて、前記動翼50を前記第一移動側Dm1に移動させる。
【0089】
本態様の動翼取外方法では、第一態様における動翼取外装置と同様に、取外対象の動翼50が取り付けられているディスク40の第二端面45b(or 45f)と、このディスク40の軸線第二側Dad(or Dau)に隣接している他のディスク40の第一端面45f(or 45b)との間の距離が短い場合でも、取外対象の動翼50が取り付けられているディスク40に動翼取外装置60,60aを配置することができる。
【0090】
(11)第十一態様における動翼取外方法は、
前記第十態様における動翼取外方法において、前記動翼取外装置60,60aは、さらに、前記移動方向Dmで、前記動翼50と前記接触端62との間に配置可能な一以上のスペーサ90を、備える。前記動翼移動工程S4は、前記駆動機構65を駆動させて前記接触端62と共に前記動翼50を前記第一移動側Dm1に移動させる第一移動工程S5と、前記第一移動工程S5での前記動翼50の移動の結果、前記動翼50の前記翼根52が前記翼根溝46から抜けたか否かを判断する判断工程S6と、前記判断工程S6で、前記動翼50の前記翼根52が前記翼根溝46から抜けていないと判断された場合には、前記駆動機構65を駆動させて前記接触端62を第二移動側Dm2に移動させる第二移動工程S7と、前記第二移動工程S7後に、前記動翼50と前記接触端62との間に、前記一以上のスペーサ90のうち、いずれか一のスペーサ90を配置するスペーサ配置工程S8と、を含む。前記スペーサ配置工程S8後に、前記第一移動工程S5及び前記判断工程S6を実行する。前記判断工程S6で、前記動翼50の前記翼根52が前記翼根溝46から抜けたと判断されるまで、前記第一移動工程S5、前記判断工程S6、前記第二移動工程S7、前記スペーサ配置工程S8を繰り返して実行する。
【0091】
本態様では、動翼移動工程S4中に、一以上のスペーサ90を用いることで、第八態様における動翼取外装置60,60aと同様に、移動方向Dmにおける駆動機構65のストロークを短くすることができる。このため、本態様における動翼取外方法でも、取外対象の動翼50aを基準として、第二移動側Dm2に配置される駆動機構65における移動方向Dmの長さを短くすることができる。
【0092】
(12)第十二態様における動翼取外方法は、
前記第十態様又は前記第十一態様における動翼取外方法において、前記装置配置工程S3前に、前記ディスク40を回転させるディスク回転工程S2を実行する。前記ディスク回転工程S2では、前記翼根溝46に嵌まり込んでいる前記翼根52の表面中で、前記第一移動側Dm1を向いている第一翼根端面53f(or 53b)と前記第二移動側Dm2を向いている第二翼根端面53b(or 53f)とのうち、前記第一翼根端面53f(or 53b)の少なくとも一部が前記軸線Arよりも上側に位置し、且つ前記第二翼根端面53b(or 53f)よりも上側になるよう、前記軸線Arを中心として前記ディスク40を回転させる。
【0093】
取外対象の動翼50における第一翼根端面53f(or 53b)の少なくとも一部を軸線Arよりも上側に位置させた場合、ディスク40の外周面44中でこの動翼50に隣接する部分が、鉛直上方向の成分を含む方向を向くことになる。このため、本態様では、ベース71,71aにかかる重力により、ベース71,71aの外周接触面76と、ディスク40の外周面44中でこの翼根52に隣接する部分との接触性を確保できる。また、第一翼根端面53f(or 53b)が第二翼根端面53b(or 53f)よりも上側に位置させた場合、動翼取外装置60,60aをディスク40に配置した際、動翼取外装置60,60aの第二移動側Dm2の部分が第一移動側Dm1の部分より下側に位置することになる。このため、動翼取外装置60,60aにかかる重力の成分のうち、移動方向Dmの成分は、第二移動側Dm2を向く成分になる。よって、動翼取外装置60,60aは、重力により、第二移動側Dm2に移動してようとする。しかしながら、動翼取外装置60,60aが第二移動側Dm2に移動してようとしても、動翼取外装置60,60aの端接触面82がディスク40の第一端面45f(or 45b)に接触している関係で、動翼取外装置60,60aは、第二移動側Dm2に移動できない。
【0094】
(13)第十三態様における動翼取外方法は、
前記第十態様から前記第十二態様のうちのいずれか一態様における動翼取外方法において、前記動翼取外装置60における前記機構接触面86は、前記外周接触面76を基準として、前記第一高さ側Dh1とは反対側の第二高さ側Dh2に位置する。前記装置配置工程S3では、前記接触端62と前記動翼50の前記翼体51とを前記移動方向Dmで対向させる。
【0095】
本態様では、第三態様における動翼取外装置60と同様、取外対象の動翼50が取り付けられているディスク40の第二端面45b(or 45f)と、このディスク40の軸線第二側Dad(or Dau)に隣接している他のディスク40の第一端面45f(or 45b)との間の距離が実質的にない場合でも、取外対象の動翼50が取り付けられているディスク40に動翼取外装置60を配置することができる。
【0096】
(14)第十四態様における動翼取外方法は、
前記第十態様から前記第十二態様のうちのいずれか一態様における動翼取外方法において、前記動翼取外装置60aにおける前記機構接触面86は、前記外周接触面76を基準として、前記第一高さ側Dh1に位置する。前記装置配置工程S3では、前記接触端62と前記動翼50の前記翼根52とを前記移動方向Dmで対向させる。
【0097】
本態様では、第四態様における動翼取外装置60aと同様、動翼50を取り外す際、この動翼50の翼体51の損傷を抑制することができる。
【符号の説明】
【0098】
1:ガスタービン
2:ガスタービンロータ
5:ガスタービンケーシング
6:中間ケーシング
10:タービン
11:タービンロータ
12:ロータ軸
13:動翼列
15:タービンケーシング
17:静翼列
20:燃焼器
30:圧縮機
31:圧縮機ロータ
32:ロータ軸
33:動翼列
33f:初段動翼列
33s:第二段動翼列
35:圧縮機ケーシング
37:静翼列
40:ディスク
40f:初段ディスク
40s:第二段ディスク
41:胴部
42f:内側前端面
42b:内側後端面
43:動翼取付部
44:外周面
45f:外側前端面
45b:外側後端面
46:翼根溝
47f:前端開口
47b:後端開口
50:動翼
50a:取外対象の動翼
51:翼体
52:翼根
53f:翼根前端面(第一翼根端面)
53b:翼根後端面(第二翼根端面)
60,60a:動翼取外装置
61:押出機構
62:接触端
65:油圧シリンダ(駆動機構)
66:ピストンロッド
67:ピストン
68:シリンダケーシング
69:ケーシング底面(機構端面)
70,70a:フレーム
71,71a:ベース
71f,71fa:第一ベース
71s,71sa:第二ベース
73:第一ベース端部
74:第二ベース端部
75:ベース中間部
76:外周接触面
77:シフト部
79:ベース連結部
81:反力受け部
81f:第一反力受け部
81s:第二反力受け部
82:端接触面
85:押付受け部
86:機構接触面
90:スペーサ
90a:第一スペーサ
90b:第二スペーサ
90c:第三スペーサ
91:引掛け具
91h:引掛け部
95:引掛け具
95h:引掛け部
A:空気
F:燃料
W:ワイヤ
Da:軸線方向
Dau:軸線上流側(軸線第一側)
Dad:軸線下流側(軸線第二側)
Dc:周方向
Dr:径方向
Dri:径方向内側
Dro:径方向外側
Dm:移動方向
Dm1:第一移動側
Dm2:第二移動側
Dh:高さ方向
Dh1:第一高さ側
Dh2:第二高さ側
Dw:幅方向
Dp:溝貫通方向