(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022181358
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 29/78 20060101AFI20221201BHJP
【FI】
H01L29/78 652Q
H01L29/78 652C
H01L29/78 657G
H01L29/78 653A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021088272
(22)【出願日】2021-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000002037
【氏名又は名称】新電元工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002697
【氏名又は名称】めぶき国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100104709
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 誠剛
(72)【発明者】
【氏名】宮腰 宣樹
(57)【要約】 (修正有)
【課題】周辺機器に影響を与える周波数帯における高調波ノイズを低減することが可能な半導体装置を提供する。
【解決手段】半導体装置100の能動素子部CLにおいて、半導体基体110は、低抵抗半導体層と、ドリフト層と、ベース領域と、第1導電型半導体領域とを有する。能動素子部CLは、ゲート電極124と、第1電極層128とを有する。ゲートパッド部GPにおいて、半導体基体110は、低抵抗半導体層と、ドリフト層と、第2導電型半導体領域132とを有する。ゲートパッド部GPは、導電体層136と、ゲートパッド用電極層138とを有する。導電体層136は、平面的に見て導電体層136の中央部に配置された高抵抗領域135と、高抵抗領域135の周辺領域に形成された低抵抗領域137とを有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電型又は第2導電型の低抵抗半導体層と第1導電型のドリフト層とが積層された半導体基体に画定された能動素子部及びゲートパッド部を備える半導体装置であって、
前記能動素子部において、
前記半導体基体は、前記低抵抗半導体層と、前記低抵抗半導体層上に形成された前記ドリフト層と、前記ドリフト層の表面に形成された第2導電型のベース領域と、前記ベース領域の表面における、前記ドリフト層とは離隔した位置に形成された第1導電型の第1導電型半導体領域とを有し、
前記能動素子部は、
前記第1導電型半導体領域と前記ドリフト層とに挟まれた前記ベース領域とゲート絶縁膜を介して対向する位置に形成されたゲート電極と、
前記ゲート電極とは層間絶縁層を介して絶縁された状態で配置され、前記第1導電型半導体領域及び前記ベース領域と電気的に接続されている第1電極層とを有し、
前記ゲートパッド部において、
前記半導体基体は、前記低抵抗半導体層と、前記低抵抗半導体層上に形成された前記ドリフト層と、前記ドリフト層の表面に形成された第2導電型半導体領域とを有し、
前記ゲートパッド部は、
前記ドリフト層及び前記第2導電型半導体領域上に、フィールド絶縁層を介して形成された導電体層と、
前記導電体層上に配置され、前記導電体層と電気的に接続されているゲートパッド用電極層とを有し、
前記導電体層は、平面的に見て前記導電体層の中央部に配置された高抵抗領域と、前記高抵抗領域の周辺領域に形成された低抵抗領域とを有することを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記導電体層は、ポリシリコン層に第1導電型不純物を導入してなり、
前記高抵抗領域は、前記低抵抗領域よりも前記第1導電型不純物の不純物濃度が低いことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第2導電型半導体領域は、
前記ゲートパッド部の外周部に沿って配置され、前記第1電極層と電気的に接続されている第1領域と、
前記第1領域に囲まれた領域において前記第1領域から離隔した位置に、所定の断面で見て所定の間隔で互いに離隔した状態で複数配置され、電位が浮遊電位となる第2領域とを有することを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記高抵抗領域は少なくとも、前記第2領域同士の間の第3領域と重なる領域に形成されていることを特徴とする請求項3に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記高抵抗領域は少なくとも、前記第2領域と重なる領域、及び、前記第2領域同士の間の第3領域と重なる領域に形成されていることを特徴とする請求項3に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記高抵抗領域は少なくとも、前記第2領域と重なる領域、前記第2領域同士の間の第3領域と重なる領域、及び、前記第1領域と前記第2領域との間の第4領域と重なる領域に形成されていることを特徴とする請求項3に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記高抵抗領域は、前記ゲートパッド用電極層と前記ゲート電極とを連結するゲートフィンガーと前記低抵抗領域を介さずに接続されている箇所を有しないことを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項8】
前記能動素子部において、前記ゲート電極は、前記第1導電型半導体領域と前記ドリフト層とに挟まれた前記ベース領域上において前記ゲート絶縁膜を介して形成されていることを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項9】
前記能動素子部は、前記ベース領域を開口し前記ドリフト層に達して形成してなる複数のトレンチをさらに有し、
前記ゲート絶縁膜は、前記トレンチの内周面に形成されており、
前記ゲート電極は、前記ゲート絶縁膜を介して前記トレンチの内部に埋め込まれており、
前記第1導電型半導体領域は、少なくとも一部を前記トレンチの内周面に露出した状態で形成されていることを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体基体に画定された能動素子部(MOSFET部)及びゲートパッド部を備える半導体装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図16は、特許文献1に記載の半導体装置800を説明するために示す図である。特許文献1に記載の半導体装置(以下、従来の半導体装置800という)は、
図16に示すように、n
+ドレイン層51とn
-ドリフト層52とが積層された半導体基体に画定されたMOSFET部CL及びゲートパッド部GPを備える半導体装置である。
【0004】
MOSFET部CLにおいて、半導体基体は、
図16(b)に示すように、n
+ドレイン層51と、n
+ドレイン層51上に形成されたn
-ドリフト層52と、n
-ドリフト層52の表面に形成されたpベース領域53と、pベース領域53の表面における、n
-ドリフト層52とは離隔した位置に形成されたn
+ソース領域54とを有する。
また、MOSFET部CLは、n
+ソース領域54とn
-ドリフト層52とに挟まれたpベース領域53とゲート絶縁膜56を介して対向する位置に形成されたゲート電極57と、ゲート電極57とは層間絶縁層58を介して絶縁された状態で配置され、n
+ソース領域54及びpベース領域53と電気的に接続されているソース電極61とを有する。
【0005】
ゲートパッド部GPにおいて、半導体基体は、n+ドレイン層51と、n+ドレイン層51上に形成されたn-ドリフト層52と、n-ドリフト層52の表面に形成されたp領域71とを有する。p領域71は、ゲートパッド部GPのドリフト層52の表面全体に形成されている。
ゲートパッド部GPは、n-ドリフト層52及びp領域71上に、層間絶縁膜72を介して形成された導電体層73と、導電体層73上に配置され、導電体層73と電気的に接続されているゲートパッド用電極62とを有する。
【0006】
ところで、近年のスイッチング速度の高速化やセルの微細化により、スイッチングにおけるゲート発振現象が問題となってきている。しかしながら、ゲート発振現象を抑止するための構造(例えば、スナバ回路)を設けようとすると、一般に抵抗や容量などを外付けする必要があり、ディスクリート部品が増加してしまう、という問題がある。
【0007】
そこで、本発明の発明者は、ゲート発振現象について鋭意研究を行った結果、ディスクリート部品の増加等を防ぎつつ、スイッチオフ時におけるゲート発振現象を抑止する半導体装置(先願に係る半導体装置900、
図7及び8参照)を発明して特許出願し、既に特許になっている(特許文献2参照)。
【0008】
先願に係る半導体装置900のゲートパッド部GPにおいて、半導体基体910は、
図7(c)に示すように、低抵抗半導体層912と、低抵抗半導体層912上に形成されたドリフト層914と、ドリフト層914の表面に形成されたp型半導体領域932とを有する。p型半導体領域932は、
図7(b)及び
図7(c)に示すように、ゲートパッド部GPの外周部に沿って配置されソース電極層928と電気的に接続されている第1領域932aと、第1領域932aに囲まれた領域において第1領域932aから離隔した位置に、所定の断面(例えば、
図7(a)のA-A断面)で見て所定の間隔で離隔した状態で複数配置され、電位が浮遊電位となる第2領域932bとを有する。
【0009】
先願に係る半導体装置900によれば、ゲートパッド部GPの外周部に沿って配置され、ソース電極層928と電気的に接続されている第1領域932aと、第1領域932aに囲まれた領域において第1領域932aから離隔した位置に、所定の断面で見て所定の間隔で離隔した状態で複数配置され、電位が浮遊電位となる第2領域932bとを有するp型半導体領域932を備えるため、ドリフト層914の表面において隣接する第2領域932bに挟まれた狭い領域が電流経路となり、当該電流経路は、スイッチングの際に、第1領域932a及び第2領域932bからドリフト層側に空乏層が拡がる結果、上述した狭い領域の部分に比較的大きな抵抗値を有する抵抗が形成されることとなる。その結果、先願に係る半導体装置900によれば、ゲート・ドレイン間に大きな容量と抵抗を作り込むことができることから、ゲート・ドレイン間に容量及び抵抗を外付けする必要がなく、ディスクリート部品を増加することなくスイッチオフ時におけるゲート発振現象を抑止することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2005-150348号公報
【特許文献2】特許第5719976号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、電気機器(例えば、DC-DCコンバータ等)に半導体装置を内蔵した場合には、半導体装置をオンしたときに生じるサージリップルに起因して高調波ノイズが発生し、周辺の電子機器(例えば、自動車のDC-DCコンバータ等に半導体装置を内蔵した場合には、自動車のカーステレオ、場合によっては、キーレスエントリ、イモビライザ、GPS等)に干渉する等の影響を与える場合があるという問題がある。
このため、サージリップルを低減することで高調波ノイズを抑制することが考えられるが、サージリップルを完全に消し去ることは現実には難しいことから高調波ノイズを低減することには限界がある。
【0012】
そこで、本発明の発明者は、サージリップルに起因した高調波ノイズについて鋭意研究を重ねた結果、サージリップルの周波数(周期)をずらしてサージリップルの周波数(周期)を周辺機器に影響を与える周波数帯(例えば、規格で制限されている数MHz帯)を避けた周波数(周期)とすることで、周辺機器に影響を与える周波数帯における高調波ノイズを低減することができることを見出した。そして、本発明の発明者は、サージリップルの周波数(周期)をずらして周辺機器に影響を与える周波数帯における高調波ノイズを低減することについてさらなる研究を重ねた結果、ゲートパッド部の導電体層の一部の抵抗値を調整することにより、サージリップルの周期(周波数)を調整することが可能であることを見出した。
【0013】
そこで、本発明は、上記した事情及び知見を鑑みてなされたものであり、周辺機器に影響を与える周波数帯における高調波ノイズを低減することが可能な半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の半導体装置は、第1導電型又は第2導電型の低抵抗半導体層と第1導電型のドリフト層とが積層された半導体基体に画定された能動素子部及びゲートパッド部を備える半導体装置であって、前記能動素子部において、前記半導体基体は、前記低抵抗半導体層と、前記低抵抗半導体層上に形成された前記ドリフト層と、前記ドリフト層の表面に形成された第2導電型のベース領域と、前記ベース領域の表面における、前記ドリフト層とは離隔した位置に形成された第1導電型の第1導電型半導体領域とを有し、前記能動素子部は、前記第1導電型半導体領域と前記ドリフト層とに挟まれた前記ベース領域とゲート絶縁膜を介して対向する位置に形成されたゲート電極と、前記ゲート電極とは層間絶縁層を介して絶縁された状態で配置され、前記第1導電型半導体領域及び前記ベース領域と電気的に接続されている第1電極層とを有し、前記ゲートパッド部において、前記半導体基体は、前記低抵抗半導体層と、前記低抵抗半導体層上に形成された前記ドリフト層と、前記ドリフト層の表面に形成された第2導電型半導体領域とを有し、前記ゲートパッド部は、前記ドリフト層及び前記第2導電型半導体領域上に、フィールド絶縁層を介して形成された導電体層と、前記導電体層上に配置され、前記導電体層と電気的に接続されているゲートパッド用電極層とを有し、前記導電体層は、平面的に見て前記導電体層の中央部に配置された高抵抗領域と、前記高抵抗領域の周辺領域に形成された低抵抗領域とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の半導体装置によれば、導電体層は、平面的に見て導電体層の中央部に配置された高抵抗領域を有するため、
図9に示すように、ソース・ドレイン間電圧におけるサージリップルの周波数(周期)を調整することができる。従って、サージリップルの周波数(周期)を周辺機器に影響を与える高調波ノイズの周波数帯を避けた周波数(周期)とすることができ、周辺機器に影響を与える周波数帯における高調波ノイズを低減することができる。
【0016】
また、本発明の半導体装置によれば、導電体層は、平面的に見て導電体層の中央部に配置された高抵抗領域を有するため、ソース・ドレイン間に比較的大きな抵抗を作り込むことができ、サージ電圧及びサージリップルを低減することができる。また、スイッチオフ時のゲート発振を低減することもできる。
【0017】
また、本発明の半導体装置によれば、能動素子部に影響を与え難いゲートパッド部に高抵抗領域を有するため、高抵抗領域を半導体装置内に形成しても能動素子の動作が遅くなり難く、スイッチング素子としての動作に不具合が生じ難くなる。また、ゲートパッド部は、導電体層を有し、導電体層は高抵抗領域を有するため、外付けで抵抗を設ける必要がなく、電子機器の接地面積が小さくて済み、高調波ノイズ対策機構を内蔵した半導体装置となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】実施形態1に係る半導体装置100の平面図である。
図1(a)は半導体装置100の平面図であり、
図1(b)は半導体装置100の導電体層を示す平面図であり、
図1(c)はp型半導体領域を示す平面図である。
【
図2】実施形態1に係る半導体装置100の断面図である。
図2(a)は
図1(a)のA-A断面図であり、
図2(b)は
図1(b)のB-B断面図であり、
図2(c)は
図1(b)のC-C断面図である。
【
図3】実施形態1に係る半導体装置100の効果を説明するために示す図である。
図3(a)は断面図に寄生抵抗及び寄生容量を追記した図であり、
図3(b)は高抵抗領域135の内部抵抗を示した要部拡大断面図である。
【
図4】実施形態1に係る半導体装置100の等価回路を示す図である。
図4(a)は半導体装置100の等価回路を示す図であり、
図4(b)は高抵抗領域の範囲を変更することを考慮した半導体装置100の等価回路である。
【
図5】比較例1に係る半導体装置800Aを説明するために示す図である。
図5(a)は半導体装置800Aの導電体層を示す平面図であり、
図5(b)は半導体装置800Aの半導体基体810表面のp型半導体領域を示す平面図であり、
図5(c)は
図5(a)のA-A断面図である。
【
図6】比較例1に係る半導体装置800Aを説明するために示す図である。
図6(a)は半導体装置800Aの断面図に寄生抵抗及び寄生容量を追記した図であり、
図6(b)は半導体装置800Aの等価回路を示す図である。
【
図7】比較例2に係る半導体装置900を説明するために示す図である。
図7(a)は半導体装置900の導電体層を示す平面図であり、
図7(b)は半導体装置900の半導体基体910表面のp型半導体領域を示す平面図であり、
図7(c)は
図7(a)のA-A断面図である。
【
図8】比較例2に係る半導体装置900を説明するために示す図である。
図8(a)は半導体装置900の断面図に寄生抵抗及び寄生容量を追記した図であり、
図8(b)は半導体装置900の等価回路を示す図である。
【
図9】実施形態1に係る半導体装置100をスイッチングしたときのドレイン・ソース間電圧VDSの波形を説明するために示す図である。
図9(a)はブリッジ回路に半導体装置を用いたときのドレイン・ソース間電圧VDSの模式的な波形図であり、
図9(b)は比較例2に係る半導体装置900をスイッチングしたときのドレイン・ソース間電圧VDSの波形図を示し、
図9(c)は実施形態1に係る半導体装置100をスイッチングしたときのドレイン・ソース間電圧VDSの波形図を示す。
【
図10】実施形態2に係る半導体装置200を示す図である。
図10(a)は半導体装置200のMOSFET部の断面図であり、
図10(b)は半導体装置200のゲートパッド部の断面図である。
【
図11】変形例1に係る半導体装置100aを示す図である。
【
図12】変形例2~4に係る半導体装置100b~100dを説明するために示す平面図である。
図12(a)は半導体装置100bを説明するために示す平面図であり、
図12(b)は半導体装置100cを説明するために示す平面図であり、
図12(c)は半導体装置100dを説明するために示す平面図である。
【
図13】変形例5に係る半導体装置100e及び変形例6に係る半導体装置100fを説明するために示す平面図である。
図13(a)は半導体装置100eを説明するために示す断面図であり、
図13(b)は半導体装置100fを説明するために示す断面図である。
【
図14】変形例7に係る半導体装置100g及び変形例8に係る半導体装置100hを説明するために示す平面図である。
図14(a)は半導体装置100gを説明するために示す断面図であり、
図14(b)は半導体装置100hを説明するために示す断面図である。
【
図15】変形例9に係る半導体装置100i及び変形例10に係る半導体装置100jを説明するために示す平面図である。
図15(a)は半導体装置100iを説明するために示す断面図であり、
図15(b)は半導体装置100jを説明するために示す断面図である。
【
図16】特許文献1に記載の半導体装置800を説明するために示す図である。
図16(a)は半導体装置800を示す要部拡大平面図であり、
図16(b)は半導体装置800の要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の半導体装置について、図に示す実施形態に基づいて説明する。なお、各図面は模式図であり、必ずしも実際の寸法を厳密に反映したものではない。以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている諸要素及びその組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0020】
[実施形態1]
1.実施形態1に係る半導体装置100の構成
図1は、実施形態1に係る半導体装置100の平面図である。
図2は、実施形態1に係る半導体装置100の断面図である。
実施形態1に係る半導体装置100は、
図1(a)に示すように、2つの長辺X1,X2及び2つの短辺X3,X4で構成される平面視略矩形形状を有する。半導体装置100は、低抵抗半導体層112及びドリフト層114が積層された半導体基体110に画定されたMOSFET部CL(能動素子部)、ゲートパッド部GP及びゲートフィンガー部GFを備える。
【0021】
MOSFET部CLは、半導体基体110の中央部に画定されている。MOSFET部CLは、
図2(a)及び(c)に示すように、半導体基体110、ゲート絶縁膜122、ゲート電極124、層間絶縁膜126、ソース電極層128及びドレイン電極層130を有する。
【0022】
MOSFET部CLにおいて、半導体基体110は、
図2(c)に示すように、低抵抗半導体層112と、低抵抗半導体層112上に形成されたドリフト層114と、ドリフト層114の表面に形成されたp型のベース領域116と、ベース領域116は最底部において深さ方向に突出したp型の張り出し領域118と、ベース領域116の表面における、ドリフト層114とは離隔した位置に形成されたn
+型のソース領域120(第1導電型半導体領域)とを有する。ベース領域116、張り出し領域118及びソース領域120は、半導体基体110の長辺X1側から長辺X2側に向かって所定の間隔でストライプ状に延びている(
図1(c)には、張り出し領域118のみ図示している)。
【0023】
低抵抗半導体層112の厚さは100μm~400μmであり、低抵抗半導体層112不純物濃度は1×1019cm-3~1×1020cm-3である。ドリフト層114の厚さは5μm~50μmであり、ドリフト層114の不純物濃度は1×1014cm-3~1×1016cm-3である。ベース領域116の深さは2μm~2.5μmであり、ベース領域116の不純物濃度は5×1016cm-3~1×1018cm-3である。ソース領域120の深さは0.2μm~0.4μmであり、ソース領域120の不純物濃度は5×1019cm-3~2×1020cm-3である。張り出し領域118、後述するp型半導体領域132及び後述する第2のp型半導体領域162の深さは2.4μm~8.0μmであり、不純物濃度は1×1017cm-3~3×1018cm-3である。張り出し領域118、p型半導体領域132及び第2のp型半導体領域162は一括して形成されている。
【0024】
ゲート電極124は、
図2(c)に示すように、半導体基体110の表面上において、ソース領域120とドリフト層114とに挟まれたベース領域116とゲート絶縁膜122を介して対向する位置に形成されている。ゲート電極124(及びゲート絶縁膜122)も長辺X1側から長辺X2側に向かって所定の間隔でストライプ状に延びている(
図1(b)参照)。
層間絶縁膜126は、ゲート電極124上に形成され、ゲート電極124とソース電極層128とを絶縁している。
ソース電極層128(第1電極層)は、
図2に示すように、ゲート電極124とは層間絶縁膜126を介して絶縁された状態で配置され、層間絶縁膜126に形成されたコンタクトホールを介してソース領域120及びベース領域116と電気的に接続されている。ソース電極層128は、
図1(a)に示すように、半導体基体110のMOSFET部CL全体を覆うように形成されており、平面的に見てゲートパッド部GPを3方から囲むようにコの字状に形成されている。
ドレイン電極層130は、半導体基体110におけるソース電極層128が形成されている面とは反対側の面全体に形成されている(
図2参照)。
【0025】
ゲートパッド部GPは、平面的に見て半導体基体110の短辺X3側から中央に向かって突出するように形成された矩形形状の領域である。ゲートパッド部GPは、
図2(a)に示すように、半導体基体110、フィールド絶縁膜134、導電体層136、層間絶縁膜126及びゲートパッド用電極層138を有する。
【0026】
ゲートパッド部GPにおいて、半導体基体110は、低抵抗半導体層112と、低抵抗半導体層112上に形成されたドリフト層114と、ドリフト層114の表面に形成されたp型半導体領域132とを有する。
【0027】
p型半導体領域132は、
図1(c)及び
図2(a)に示すように、第1領域132aと、第2領域132bとを有する。p型半導体領域132は、p型不純物(例えば、ボロン)をイオン注入した後、熱拡散することによって形成されている。
【0028】
第1領域132aは、ゲートパッド部GPの外周部に沿って配置されており、MOSFET部CLのベース領域116(及び張り出し領域118)及び後述するゲートフィンガー部の第2のp型半導体領域162と繋がっている。従って、第1領域132aは、第2のp型半導体領域162、ベース領域116を介してソース電極層128と電気的に接続されている。
【0029】
第2領域132bは、第1領域132aに囲まれた領域において第1領域132aから離隔した位置に配置されている。第2領域132bは、平面的に見て長辺X1側から長辺X2側に向かうスリットが複数本(実施形態1においては4本)形成された形状をしており、所定の断面(例えば、ゲートパッド部GPの中央を通り、長辺X1と平行な断面)で見ると所定の間隔で互いに離隔した状態で複数配置されている形状を有する。第2領域132bは、第1領域132aと離隔しており、周囲をドリフト層114で覆われているため、第2領域132bの電位は浮遊電位となる。なお、本明細書において、第1領域132aと第2領域132bとの間のp型不純物が導入されていない領域を第3領域133aとし、隣接する第2領域132b同士の間のp型不純物が導入されていない領域(平面的に見て第2領域132bに囲まれたp型不純物が導入されていないスリットの部分)を第4領域133bとする。
【0030】
フィールド絶縁膜134は、ゲートパッド部GP及びゲートフィンガー部GFにおいて半導体基体110の表面上に形成されている。フィールド絶縁膜134はゲート絶縁膜122よりも厚い(
図2(b)参照)。
【0031】
導電体層136は、
図1(b)及び
図2(a)に示すように、ドリフト層114及びp型半導体領域132上に、フィールド絶縁膜134を介してゲートパッド部GP全体に形成されている。導電体層136は、ポリシリコン層にn型不純物を導入してなり、n型不純物の不純物濃度を調整することによって形成された、高抵抗領域135と、低抵抗領域137とを有する。
【0032】
高抵抗領域135は、平面的に見て導電体層136の中央部に配置されている。高抵抗領域135は、低抵抗領域137よりもn型不純物の不純物濃度が低い。高抵抗領域135は、低抵抗領域137を介してゲートパッド用電極層138と接続されている。すなわち、高抵抗領域135は、直接ゲートパッド用電極層138と接続されている箇所を有しない。高抵抗領域135は、第2領域132bと重なる領域、及び、第2領域132b同士の間の第4領域133bと重なる領域に形成されている。
【0033】
低抵抗領域137は、平面的に見て高抵抗領域135の周辺領域に形成されており、ゲートパッド用電極層138と接続されている。低抵抗領域137は、ゲートフィンガー部GFの引き出し配線139を介してMOSFET部CLのゲート電極124と繋がっている(
図1(b)参照)。
【0034】
層間絶縁膜126は、導電体層136上に形成されている。ゲートパッド用電極層138は、導電体層136上に層間絶縁膜126を介して配置され、層間絶縁膜126に形成された開口140を介して導電体層136の低抵抗領域137と電気的に接続されている。ゲートパッド用電極層138は、後述するゲートフィンガー用配線142と接続されている。
【0035】
ゲートフィンガー部GFは、
図1(a)に示すように、ゲートパッド部GPと接続されており、ゲートフィンガー部GF及びゲートパッド部GPは、MOSFET部CLの周囲を囲むように形成されている。ゲートフィンガー部GFは、
図2(b)に示すように、半導体基体110と、フィールド絶縁膜134と、引き出し配線139と、層間絶縁膜126と、ゲートフィンガー用配線142とを有する。
【0036】
ゲートフィンガー部GFにおいて、半導体基体110は、ドリフト層114の表面に形成された第2のp型半導体領域162を有する。第2のp型半導体領域162は、ゲートフィンガー部GF全体に形成されている。
【0037】
引き出し配線139は、半導体基体110の表面上にフィールド絶縁膜134を介して配置されている。引き出し配線139は、ポリシリコン層にn型不純物を導入してなる。引き出し配線139は、
図1(b)に示すように、半導体基体110の外周に沿って形成されており、MOSFET部CLのゲート電極124及びゲートパッド部GPの導電体層136と接続されている。ゲートフィンガー用配線142は、引き出し配線139上に層間絶縁膜126を介して配置されている。ゲートフィンガー用配線142は、ソース電極層128と離隔して配置されており、ゲートパッド用電極層138と接続されている。
【0038】
ゲート電極124、導電体層136及び引き出し配線139は、一括して形成されている。ゲート電極124、導電体層136及び引き出し配線139は、CVD法によって形成されたポリシリコン層にイオン注入法によってn型不純物を導入してなる。具体的には、所定の箇所にポリシリコン層を形成した後、ポリシリコン層全体にn型不純物を導入し、次に、高抵抗領域135となる領域にマスクを形成し、ポリシリコン層における高抵抗領域135となる領域以外の領域にさらにn型不純物(例えば、リン)を導入する。これにより、ゲート電極124、導電体層136及び引き出し配線139を形成することができる。ポリシリコン層全体に導入するn型不純物の不純物濃度は例えば、4×1015cm-3~8×1015cm-3の範囲内にあり、高抵抗領域135をマスクした後にポリシリコン層に導入するn型不純物の不純物濃度は例えば、3×1015cm-3~8×1015cm-3の範囲内にある。ゲート電極124、導電体層136及び引き出し配線139の厚さは、例えば500nmである。
【0039】
ソース電極層128、ゲートパッド用電極層138及びゲートフィンガー用配線142は、Al膜又はAl合金膜(例えばAlSi膜)からなり、ソース電極層128の厚さは1μm~10μm(例えば3μm)である。ソース電極層128、ゲートパッド用電極層138及びゲートフィンガー用配線142は一括して形成されている。ドレイン電極層130は、Ti-Ni-Au(又はAg)などの多層金属膜により形成され、ドレイン電極層130の厚さは0.2μm~1.5μm(例えば1μm)である。
【0040】
2.実施形態1に係る半導体装置100における寄生容量及び寄生抵抗について
次に、実施形態1に係る半導体装置100における寄生容量及び寄生抵抗について説明する。このために、まず、比較例1に係る半導体装置800Aと比較例2に係る半導体装置900の構造、寄生抵抗、寄生容量及び等価回路について説明し、その後、実施形態1に係る半導体装置100の構造、寄生抵抗及び寄生容量、等価回路について説明する。
【0041】
(1)比較例1に係る半導体装置800Aについて
図5及び
図6は、比較例1に係る半導体装置800Aを説明するために示す図である。
比較例1に係る半導体装置800Aは、基本的には従来の半導体装置800と同様の構成を有するが、導電体層836とゲートパッド用電極838との間に層間絶縁膜826を有する点で従来の半導体装置800と異なる。比較例1に係る半導体装置800Aにおいて、導電体層836は、
図5(a)に示すように、全て低抵抗領域で構成されており、半導体基体810の表面には、
図5(b)及び
図5(c)に示すように、ゲートパッド部GP全体にp型半導体領域860が形成されている。
【0042】
次に比較例1に係る半導体装置800Aの寄生容量及び寄生抵抗について説明する。
図6(a)に示すように、比較例1に係る半導体装置800AのMOSFET部CLにおいて、ゲート・ドレイン間には、寄生容量C
0と寄生抵抗R
0とを有する。これに加えて、ゲートパッド部GPには、寄生容量C
1と寄生抵抗R
1とが付加されている。寄生容量C
1は、導電体層836を一方の電極とし、ドリフト層814を他方の電極とし、フィールド絶縁膜834及び第2のp型半導体領域860を誘電体とする容量であり、寄生抵抗R
1はドリフト層814の内部抵抗である。なお、比較例1においては、導電体層836は低抵抗であるため内部抵抗を無視することができる。また、第2のp型半導体領域860は、ほぼ一様な深さであるため、場所に寄らず寄生容量C
1及び寄生抵抗R
1は一定の値となる。
【0043】
上記した構成を有することから、比較例1に係る半導体装置800Aを等価回路で表すと、
図6(b)に示すように、ゲート・ドレイン間に、容量C
0と抵抗R
0とが直列接続された構成と、容量C
1と抵抗R
1とが直列接続された構成とが、並列に接続された構成となる。
【0044】
(2)比較例2に係る半導体装置900について
図7及び
図8は、比較例2に係る半導体装置900を説明するために示す図である。
比較例2に係る半導体装置900は、基本的には先願に係る半導体装置900と同様の構成を有する。比較例2に係る半導体装置900において、導電体層936は、
図7(a)に示すように、全て低抵抗領域で構成されており、半導体基体910の表面には、
図7(b)及び
図7(c)に示すように、p型半導体領域932が形成されている。p型半導体領域932は、ゲートパッド部GPの外周部に沿って配置され、ソース電極層928と電気的に接続されている第1領域932aと、第1領域932aに囲まれた領域において第1領域932aから離隔した位置に、所定の断面で見て所定の間隔で互いに離隔した状態で複数配置され、電位が浮遊電位となる第2領域932bとを有する。
【0045】
次に比較例2に係る半導体装置900の寄生容量及び寄生抵抗を説明する。
図8(a)に示すように、比較例2に係る半導体装置900のMOSFET部CLにおいて、ゲート・ドレイン間には、比較例1に係る半導体装置800Aの場合と同様に、寄生容量C
0と寄生抵抗R
0とを有する。これに加えて、比較例2に係る半導体装置900のゲートパッド部GPには、寄生容量C
2、C
3と寄生抵抗R
2、R
3とが付加されている。寄生容量C
2は、導電体層936を一方の電極とし、ドリフト層914を他方の電極とし、フィールド絶縁膜934及びp型半導体領域932を誘電体とする容量であり、寄生容量C
3は、導電体層936を一方の電極とし、ドリフト層914を他方の電極とし、フィールド絶縁膜934を誘電体とする容量であり、抵抗R
2は、p型半導体領域932の下端位置からドレイン電極層930までの低抵抗半導体層912及びドリフト層914の内部抵抗であり、抵抗R3は、p型半導体領域932の下端位置と同じ深さ位置までのドリフト層914の内部抵抗である。比較例2においては、導電体層936は低抵抗であるため内部抵抗を無視することができる。また、p型半導体領域932が形成されている領域においては、容量C
2と抵抗R
2とが直列接続された構成となり、p型半導体領域932が形成されていない領域においては、容量C
3と抵抗R
3と抵抗R
2が直列接続された構成となる。
【0046】
比較例2に係る半導体装置900を等価回路で表すと、
図8(b)に示すように、ゲート・ドレイン間に、容量C
0と抵抗R
0とが直列接続された構成と、容量C
2と抵抗R
2とが直列接続された構成と、容量C
3と抵抗R
3と抵抗R
2とが直列接続された構成とが、並列に接続された構成となる。
【0047】
上記した構成を有するため、比較例2に係る半導体装置900においては、ドリフト層の表面において隣接する第2領域932bに挟まれた狭い領域が電流経路となり、当該電流経路は、スイッチオフ時において、第1領域932a及び第2領域932bからドリフト層側に空乏層が拡がる結果、上述した狭い領域の部分に比較的大きな抵抗値を有する抵抗が形成されることとなる。その結果、ゲート・ドレイン間に大きな容量と抵抗を作り込むことができることから、ゲート・ドレイン間に容量及び抵抗を外付けする必要がなく、ディスクリート部品を増加することなくスイッチオフ時におけるゲート発振現象を抑止することが可能となる。
【0048】
(3)実施形態1に係る半導体装置100について
図3は、実施形態1に係る半導体装置100の効果を説明するために示す図である。
図4は、実施形態1に係る半導体装置100の等価回路を示す図である。
MOSFET部CLにおいて、ゲート・ドレイン間の寄生抵抗および寄生容量は、
図3(a)に示すように、高抵抗領域135の抵抗成分を除き、比較例2に係る半導体装置900の場合と同様である。すなわち、MOSFET部CLにおいて、ゲート・ドレイン間には、寄生容量C
0と寄生抵抗R
0とを有する。また、ゲートパッド部GPには、寄生容量C
2、C
3と寄生抵抗R
2、R
3とが付加されている。寄生容量C
2は、導電体層136を一方の電極とし、ドリフト層114を他方の電極とし、フィールド絶縁膜134及びp型半導体領域132を誘電体とする容量である。また、寄生容量C
3は、導電体層136を一方の電極とし、ドリフト層114を他方の電極とし、フィールド絶縁膜134を誘電体とする容量である。抵抗R
2は、p型半導体領域132の下端位置からドレイン電極層130までの低抵抗半導体層112及びドリフト層114の内部抵抗である。また、抵抗R
3は、p型半導体領域132の下端位置と同じ深さ位置までのドリフト層114の内部抵抗である。そして、p型半導体領域132が形成されている領域においては、容量C
2と抵抗R
2とが直列接続された構成となり、p型半導体領域132が形成されていない領域においては、容量C
3と抵抗R
3と抵抗R
2が直列接続された構成となる。
【0049】
実施形態1に係る半導体装置100においては、導電体層136に高抵抗領域135と低抵抗領域137とが設けられている。そして、低抵抗領域137は比較例1及び2に係る半導体装置の場合と同様に内部抵抗は無視できる程度に小さいが、高抵抗領域135においては、内部抵抗が存在する。従って、高抵抗領域135と低抵抗領域137との境界からの長さに比例して抵抗値が大きくなる。
例えば、
図3(b)における高抵抗領域135と低抵抗領域137との境界に最も近い第2領域132b―1までの高抵抗領域135の内部抵抗値を抵抗R
4-1とし、当該境界に最も近い第4領域133b―1までの高抵抗領域135の内部抵抗値を抵抗R
4-2とし、当該境界に2番目に近い第2領域132b―2までの高抵抗領域135の内部抵抗値を抵抗R
4-3とし、当該境界に2番目に近い第4領域133b―2までの高抵抗領域135の内部抵抗値を抵抗R
4-4とし、これを繰り返すと、当該境界からの長さに応じて、抵抗R
4-1<抵抗R
4-2<抵抗R
4-3<抵抗R
4-4<・・・<抵抗R
4-nと(n:自然数)<・・・となる。
従って、ゲート・ドレイン間において、高抵抗領域135を通過する電流経路におけるp型半導体領域132(第2領域132b)が形成されている領域においては、容量C
2と、抵抗R
2と、抵抗R
4-n(n:奇数)とが直列接続された構成となり、p型半導体領域132(第2領域132b)が形成されていない領域においては、容量C
3と、抵抗R
3と抵抗R
2と、抵抗R
4-n(n:偶数)が直列接続された構成となる。また、高抵抗領域135を通過しない電流経路におけるp型半導体領域132(第1領域132a)が形成されている領域においては、容量C
2と、抵抗R
2とが直列接続された構成となり、p型半導体領域132(第1領域132a)が形成されていない領域においては、容量C
3と、抵抗R
3と、抵抗R
2とが直列接続された構成となる。
【0050】
上記した構成を有することから、実施形態1に係る半導体装置100を等価回路で表すと、
図4(a)に示すように、ゲート・ドレイン間に、容量C
0と抵抗R
0とが直列接続された構成と、容量C
2と抵抗R
2とが直列接続された構成と、容量C
3と抵抗R
3と抵抗R
2とが直列接続された構成と、抵抗R
4-1、R
4-3,R
4-5・・・と容量C
2と抵抗R
2とが直列接続された構成と、抵抗R
4-2,R
4-4,R
4-6・・・と容量C
3と抵抗R
3と抵抗R
2とが直列接続された構成とが、並列に接続された構成となる。
高抵抗領域135の形成範囲は自由に設計できるため、上記した抵抗R
4-1,R
4-2,R
4-3・・・R
4-n(nは自然数)を自由に変更することができ、
図4(b)に示すように、仮想的な可変抵抗R
4を設けると捉えることもできる。
【0051】
3.試験例について
試験例は、導電体層136に高抵抗領域135を形成することによってサージリップル周期が変化することを確かめる試験である。
図9は、実施形態1に係る半導体装置100をスイッチングしたときのドレイン・ソース間電圧VDSの波形を説明するために示す図である。
【0052】
(1)実施例及び比較例
実施例は、実施形態1に係る半導体装置100である。比較例は、基本的には実施形態1に係る半導体装置100と同様の構成を有するが、導電体層136に高抵抗領域135が形成されていない点(導電体層136がすべて低抵抗領域137で構成されている点)で異なる。すなわち、比較例は、
図7及び8に示す比較例2に係る半導体装置900と同じ構成である。
【0053】
(2)試験方法
実施例に係る半導体装置及び比較例に係る半導体装置をそれぞれ4つずつ準備し、それぞれブリッジ回路を構成する。そして、ブリッジ回路に240Vの電圧を印加し、ハイサイド側の1つの半導体装置をオンする際のソース・ドレイン間の電圧の時間変化をプロットした。
【0054】
(3)試験結果
比較例においては、
図9(b)に示すように、サージ電圧が収まってから発生するサージリップル周期は95nsecであった。これに対して、実施例においては、
図9(c)に示すように、サージ電圧が収まってから発生するサージリップル周期は12nsecであった。このことから、実施例におけるサージリップル周期は、比較例におけるサージリップル周期と大きく異なることが分かった。これにより、導電体層136に高抵抗領域135を形成することによってサージリップル周期(周波数)が変化することが確かめられた。なお、実施例に係る半導体装置及び比較例に係る半導体装置において、サージ電圧は、いずれも23Vであり、どちらもサージ電圧を低減する効果を維持していることがわかった(例えば、比較例2に係る半導体装置800Aで同様の試験を行った場合、サージ電圧は44Vであった)。
【0055】
導電体層136に高抵抗領域135を形成することによってサージリップル周期が変化する理由はまだ解明されていないが、以下のような理由によるものと考えられる。すなわち、高調波ノイズは、様々な周波数のノイズが混ざった状態で構成されている。一方、高抵抗領域135を形成することにより内部抵抗が生じるところ、さらに、高抵抗領域135と低抵抗領域137との境界から、p型半導体領域132の各第2領域132bや、隣接する第2領域同士の間の各第4領域133bまでの長さが異なることから、抵抗値がそれぞれ異なることになる。従って、高調波ノイズを構成する様々な周波数のノイズのうちのいくつかを低減することができ、その結果、高調波ノイズの周波数が変化することになると考えられる。
【0056】
4.実施形態1に係る半導体装置100の効果
実施形態1に係る半導体装置100によれば、導電体層136は、平面的に見て導電体層136の中央部に配置された高抵抗領域135と、高抵抗領域135の周辺領域に形成された低抵抗領域137とを有するため、
図9に示すように、ソース・ドレイン間電圧におけるサージリップルの周波数(周期)を変化させる(調整する)ことができる。従って、サージリップルの周波数(周期)を周辺機器に影響を与える高調波ノイズの周波数帯を避けた周波数(周期)とすることができ、周辺機器に影響を与える周波数帯における高調波ノイズを低減することができる。
【0057】
また、実施形態1に係る半導体装置100によれば、導電体層136は、平面的に見て導電体層136の中央部に配置された高抵抗領域135を有するため、ソース・ドレイン間に比較的大きな抵抗を作り込むことができ、ゲート発振及びサージリップルを低減することができる。
【0058】
また、実施形態1に係る半導体装置100によれば、MOSFET部CLに影響を与え難いゲートパッド部GPに高抵抗領域135を有するため、高抵抗領域135を半導体装置内に形成しても能動素子の動作(MOS動作)が遅くなり難く、スイッチング素子としての動作に不具合が生じ難くなる。また、ゲートパッド部GPは、導電体層136を有し、導電体層136は高抵抗領域135を有するため、外付けで抵抗を設ける必要がなく、電子機器の接地面積が小さくて済み、高調波ノイズ対策機構を内蔵した半導体装置となる。
【0059】
また、実施形態1に係る半導体装置100において、導電体層136は、ポリシリコン層にn型不純物を導入してなり、高抵抗領域135は、低抵抗領域137よりもn型不純物の不純物濃度が低い。このような構成とすることにより、n型不純物の不純物濃度を調整するだけで容易に高抵抗領域135及び低抵抗領域137を形成することができ、さらには、高抵抗領域135の抵抗値も容易に変更することができる。
【0060】
また、実施形態1に係る半導体装置100によれば、p型半導体領域132は、ゲートパッド部GPの外周部に沿って配置され、ソース電極層128と電気的に接続されている第1領域132aと、第1領域132aに囲まれた領域において第1領域132aから離隔した位置に、所定の断面で見て所定の間隔で互いに離隔した状態で複数配置され、電位が浮遊電位となる第2領域132bとを有するため、ドリフト層の表面において隣接する第2領域132bに挟まれた狭い領域が電流経路となり、当該電流経路は、スイッチオフ時において、第1領域132a及び第2領域132bからドリフト層114側に空乏層が拡がる結果、上述した狭い領域の部分に比較的大きな抵抗値を有する抵抗が形成されることとなる。その結果、実施形態1に係る半導体装置100によれば、ゲート・ドレイン間に大きな容量と抵抗を作り込むことができることから、ゲート・ドレイン間に容量及び抵抗を外付けする必要がなく、ディスクリート部品を増加することなくスイッチオフ時におけるゲート発振現象を抑止することが可能となる。
【0061】
なお、第2領域132bはフローティング状態となっているため、逆バイアス時において、当該第2領域132bからドリフト層114側に空乏層が拡がらないと通常は考えられる。しかしながら、実施形態1に係る半導体装置100においては、逆バイアス時においては、ソース電極層128と電気的に接続されている第1領域132aからドリフト層114側に空乏層が拡がる過程で、当該空乏層が第2領域132bに接触することとなる。そうなると、第2領域132bの電位が第1領域132aと同電位となり、第2領域132bからもドリフト層114側に空乏層が拡がることとなる。
【0062】
また、逆バイアス時には互いの空乏層が横方向に伸びて接触しながらゲートパッド部GPの全面において低抵抗半導体層112に向かって伸長することで、従来の半導体装置800の場合と同様に、高耐圧の半導体装置を構成することが可能となる。
【0063】
また、実施形態1に係る半導体装置100によれば、p型半導体領域132は、ゲートパッド部GPの外周部に沿って配置され、ソース電極層128と電気的に接続されている第1領域132aと、第1領域132aに囲まれた領域において第1領域132aから離隔した位置に、所定の断面で見て所定の間隔で互いに離隔した状態で複数配置され、電位が浮遊電位となる第2領域132bとを有するため、pn接合面積が小さく、スイッチオフ時に注入されるキャリア量も小さくなり、逆回復期間trrが短くなるとともに、逆回復ピーク電流IRPが小さくなるという効果も得られる。また、実施形態1に係る半導体装置100によれば、ゲートパッド部GPの第2領域132bがフローティング状態となっていることから、ゲートパッド部GPの第2領域132bがフローティング状態となっていない場合と比べて、ボディダイオードとして働く面積が小さくなり、スイッチオフ時に注入されるキャリア量も小さくなるため、結果として逆回復期間trrがより一層短くなり、di/dt耐量を高くすることが可能となる。
【0064】
また、実施形態1に係る半導体装置100によれば、高抵抗領域135は、第2領域132bと重なる領域、及び、第2領域132b同士の間の第4領域133bと重なる領域に形成されているため、ゲート・ドレイン間に様々な値の抵抗(
図4(a)における抵抗R
4-1,R
4-2、・・・)を付加することができる。その結果、サージリップルを構成する様々な周期のノイズを低減させることができ、サージリップルの周期を変更し易くなる。
【0065】
また、実施形態1に係る半導体装置100によれば、高抵抗領域135は、低抵抗領域137を介さずにゲートフィンガー用配線142又は引き出し配線139と接続されている箇所を有しないため、ゲート電極124からゲートパッド部GPに接続される外部端子までの間に高抵抗の領域がなく、MOS動作が遅くなる、ということがない。
【0066】
[実施形態2]
実施形態2に係る半導体装置200は、基本的には実施形態1に係る半導体装置100と同様の構成を有するが、MOSFET部の構成が実施形態1に係る半導体装置100の場合とは異なる。すなわち、実施形態2に係る半導体装置200においては、実施形態1に係る半導体装置100のようなプレーナーゲート型ではなくトレンチゲート型の半導体装置である(
図10参照)。
【0067】
実施形態2に係る半導体装置200において、MOSFET部CLは、ベース領域216を開口しドリフト層214に達して形成してなる複数のトレンチ217をさらに有し、ゲート絶縁膜222は、トレンチ217の内周面に形成されており、ゲート電極224は、ゲート絶縁膜222を介してトレンチ217の内部に埋め込まれており、ソース領域220は、少なくとも一部をトレンチ217の内周面に露出した状態で形成されている。
【0068】
このように、実施形態2に係る半導体装置200は、MOSFET部の構成が実施形態1に係る半導体装置100の場合とは異なるが、実施形態1に係る半導体装置100の場合と同様に、導電体層236は、平面的に見て導電体層236の中央部に配置された高抵抗領域235と、高抵抗領域235の周辺領域に形成された低抵抗領域237とを有するため、
図9に示すように、ソース・ドレイン間電圧におけるサージリップルの周波数(周期)を調整することができる。従って、サージリップルの周波数(周期)を周辺機器に影響を与える高調波ノイズの周波数帯を避けた周波数(周期)とすることができ、周辺機器に影響を与える周波数帯における高調波ノイズを低減することができる。
【0069】
なお、実施形態2に係る半導体装置200は、MOSFET部の構成以外の点においては実施形態1に係る半導体装置100と同様の構成を有するため、実施形態1に係る半導体装置100が有する効果のうち該当する効果を有する。
【0070】
以上、本発明を上記の実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。その趣旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば、次のような変形も可能である。
【0071】
(1)上記各実施形態において記載した構成要素の数、形状、位置、大きさ等は例示であり、本発明の効果を損なわない範囲において変更することが可能である。また、上記各実施形態において、第1導電型をn型、第2導電型をp型としたが、逆でもよい。
【0072】
(2)上記各実施形態において、p型半導体領域を第1領域と第2領域とに分けた構成としたが、本発明はこれに限定されるものではない。p型半導体領域が1つのp型半導体領域を構成していてもよい(変形例1に係る半導体装置100a。
図11参照)。この場合であってもサージリップルの周期を調整することで周辺機器へのノイズを低減することができる。
【0073】
(3)上記各実施形態において、高抵抗領域135を1つの構成としたが、本発明はこれに限定されるものではない。高抵抗領域を2つ以上の構成としてもよい(
図12参照。)。この場合、高抵抗領域135の形状を2つの矩形形状としてもよいし(変形例2に係る半導体装置100b、
図12(a)参照)、矩形形状とリング形状を組み合わせてもよいし(変形例3に係る半導体装置100c、
図12(b)参照)、複数の線状形状の高抵抗領域135をストライプ状に配置してもよい(変形例4に係る半導体装置100d、
図12(c)参照)。
【0074】
(4)上記各実施形態において、高抵抗領域135を、第2領域132b及び第4領域133bと重なる領域に形成したが、本発明はこれに限定されるものではない。高抵抗領域を第4領域133bと重なる領域に形成してもよいし(変形例5に係る半導体装置100e、
図13(a)においては、最外周の第2領域132bと重なっていない)、第2領域132b、第3領域133a及び第4領域133bと重なる領域に形成してもよい(変形例6に係る半導体装置100f、
図13(b)参照)。
【0075】
(5)上記各実施形態において、p型半導体領域を、アイランド状に形成するとともに、長辺X1から長辺X2に向かって延びる複数の線状のスリットをストライプ状に配置したが、本発明はこれに限定されるものではない。高抵抗領域を、アイランド状に形成するとともに、短辺X3から短辺X4に向かって延びる複数の線状のスリットをストライプ状に配置してもよいし(変形例7に係る半導体装置100g、
図14(a)参照)、p型半導体領域を格子状に配置してもよいし(変形例8に係る半導体装置100h、
図14(b)参照)、第2領域をストライプ状に配置してもよいし(変形例9に係る半導体装置100i、
図15(a)参照)、p型半導体領域を複数のアイランド状に配置してもよいし(変形例10に係る半導体装置100j、
図15(b)参照)。
【0076】
(6)上記各実施形態において、低抵抗半導体層をn型(n+型)の半導体層としたが、本発明はこれに限定されるものではない。低抵抗半導体層をp型(p+型)の半導体層としてもよい。
【符号の説明】
【0077】
100、100a~100j,200…半導体装置、110,210…半導体基体、112,212…低抵抗半導体層、114,214…ドリフト層、116,216…ベース領域、118…張り出し領域、120,220…ソース領域、122,222…ゲート絶縁膜、124,224…ゲート電極、126,226…層間絶縁膜、128,228…ソース電極層、130,230…ドレイン電極層、132,232…p型半導体領域、132a…第1領域、132b…第2領域、133a…第3領域、133b…第4領域、134,234…フィールド絶縁膜、135,235…高抵抗領域、136,236…導電体層、137,237…低抵抗領域、138,238…ゲートパッド用電極層、139…引き出し配線、140,240…開口、142…ゲートフィンガー用配線、160,162…第2のp型半導体領域、CL…MOSFET部、GF…ゲートフィンガー部、GP…ゲートパッド部