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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022181359
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】垂直共振型面発光レーザ
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/183 20060101AFI20221201BHJP
【FI】
H01S5/183
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021088273
(22)【出願日】2021-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100136722
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼木 邦夫
(74)【代理人】
【識別番号】100174399
【弁理士】
【氏名又は名称】寺澤 正太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100140453
【弁理士】
【氏名又は名称】戸津 洋介
(72)【発明者】
【氏名】小山 雄司
【テーマコード(参考)】
5F173
【Fターム(参考)】
5F173AC03
5F173AC13
5F173AC35
5F173AC42
5F173AC46
5F173AC52
5F173AH02
5F173AP54
5F173AP67
5F173AR36
(57)【要約】
【課題】より広い帯域で動作可能な垂直共振型面発光レーザを提供する。
【解決手段】垂直共振型面発光レーザは、第1軸に沿って延びるポストと第1軸を取り囲む電極とを備える。ポストは、第1分布ブラッグ反射器、活性層及び第2分布ブラッグ反射器を備える。第2分布ブラッグ反射器は、半導体領域、第1高抵抗領域及び第2高抵抗領域を含む。第1高抵抗領域及び第2高抵抗領域は、半導体領域を取り囲む。第2高抵抗領域は、第1軸の方向においてポストの上面から第1高抵抗領域よりも遠くに位置する。第1高抵抗領域は、第1軸に直交する方向において、電極の内縁よりも第1軸から遠くに位置する内縁を有する。第2高抵抗領域は、第1軸に直交する方向において、電極の内縁よりも第1軸の近くに位置する内縁を有する。第1高抵抗領域及び第2高抵抗領域は、第1厚み及び第2厚みをそれぞれ有する。第2厚みは第1厚みよりも大きい。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の主面上に設けられ、前記基板の前記主面に交差する第1軸に沿って延びるポストと、
前記ポストの上面上に設けられ、前記第1軸を取り囲む電極と、
を備え、
前記ポストは、第1分布ブラッグ反射器、活性層及び第2分布ブラッグ反射器を備え、
前記基板、前記第1分布ブラッグ反射器、前記活性層及び前記第2分布ブラッグ反射器は、前記第1軸の方向に順に配列され、
前記第2分布ブラッグ反射器は、半導体領域、第1高抵抗領域及び第2高抵抗領域を含み、
前記第1高抵抗領域及び前記第2高抵抗領域は、前記半導体領域の電気抵抗よりも高い電気抵抗を有し、
前記第1軸は前記半導体領域を通り、
前記第1高抵抗領域及び前記第2高抵抗領域は、前記半導体領域を取り囲み、
前記第2高抵抗領域は、前記第1軸の方向において前記ポストの前記上面から前記第1高抵抗領域よりも遠くに位置し、
前記第1高抵抗領域は、前記第1軸に直交する方向において、前記電極の内縁よりも前記第1軸から遠くに位置する内縁を有し、
前記第2高抵抗領域は、前記第1軸に直交する方向において、前記電極の前記内縁よりも前記第1軸の近くに位置する内縁を有し、
前記第1高抵抗領域及び前記第2高抵抗領域は、前記第1軸の方向に沿った第1厚み及び第2厚みをそれぞれ有し、前記第2厚みは前記第1厚みよりも大きい、垂直共振型面発光レーザ。
【請求項2】
前記第1高抵抗領域の前記内縁は、前記第1軸に直交する方向において、前記電極の外縁よりも前記第1軸から遠くに位置する、請求項1に記載の垂直共振型面発光レーザ。
【請求項3】
前記第1高抵抗領域及び前記第2高抵抗領域がそれぞれプロトンを含み、
前記第1高抵抗領域の前記プロトンの濃度のピークが前記第2高抵抗領域の前記プロトンの濃度のピークよりも大きい、請求項1又は請求項2に記載の垂直共振型面発光レーザ。
【請求項4】
前記ポストは、前記活性層と前記第2分布ブラッグ反射器との間に配置された電流狭窄層を含み、
前記電流狭窄層は、アパーチャー部と、前記アパーチャー部を取り囲む酸化部と、を含み、
前記第1軸は前記アパーチャー部を通り、
前記第2高抵抗領域の前記内縁は、前記第1軸に直交する方向において、前記酸化部の内縁よりも前記第1軸から遠くに位置する、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の垂直共振型面発光レーザ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、垂直共振型面発光レーザに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、基板と、基板上に設けられた下部分布ブラッグ反射器と、下部分布ブラッグ反射器上に設けられた活性層と、活性層上に設けられた上部分布ブラッグ反射器とを備える垂直共振型面発光レーザを開示する。垂直共振型面発光レーザは、活性層を含む発光領域と発光領域の周辺に位置する高抵抗領域とを備える。高抵抗領域は、上部分布ブラッグ反射器の上面から活性層に至る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-111051号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
高抵抗領域を内側に広げて発光領域を小さくすると、上部分布ブラッグ反射器の容量は小さくなる。容量が小さくなると、垂直共振型面発光レーザの帯域が広くなる傾向にある。一方、高抵抗領域を内側に広げて発光領域を小さくすると、上部分布ブラッグ反射器の電気抵抗は大きくなる。電気抵抗が大きくなると、垂直共振型面発光レーザの帯域が狭くなる傾向にある。したがって、容量と電気抵抗とはトレードオフの関係にある。そのため、垂直共振型面発光レーザの帯域の向上には限界がある。
【0005】
本開示は、より広い帯域で動作可能な垂直共振型面発光レーザを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一側面に係る垂直共振型面発光レーザは、基板の主面上に設けられ、前記基板の前記主面に交差する第1軸に沿って延びるポストと、前記ポストの上面上に設けられ、前記第1軸を取り囲む電極と、を備え、前記ポストは、第1分布ブラッグ反射器、活性層及び第2分布ブラッグ反射器を備え、前記基板、前記第1分布ブラッグ反射器、前記活性層及び前記第2分布ブラッグ反射器は、前記第1軸の方向に順に配列され、前記第2分布ブラッグ反射器は、半導体領域、第1高抵抗領域及び第2高抵抗領域を含み、前記第1高抵抗領域及び前記第2高抵抗領域は、前記半導体領域の電気抵抗よりも高い電気抵抗を有し、前記第1軸は前記半導体領域を通り、前記第1高抵抗領域及び前記第2高抵抗領域は、前記半導体領域を取り囲み、前記第2高抵抗領域は、前記第1軸の方向において前記ポストの前記上面から前記第1高抵抗領域よりも遠くに位置し、前記第1高抵抗領域は、前記第1軸に直交する方向において、前記電極の内縁よりも前記第1軸から遠くに位置する内縁を有し、前記第2高抵抗領域は、前記第1軸に直交する方向において、前記電極の前記内縁よりも前記第1軸の近くに位置する内縁を有し、前記第1高抵抗領域及び前記第2高抵抗領域は、前記第1軸の方向に沿った第1厚み及び第2厚みをそれぞれ有し、前記第2厚みは前記第1厚みよりも大きい。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、より広い帯域で動作可能な垂直共振型面発光レーザが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、一実施形態に係る垂直共振型面発光レーザを模式的に示す断面図である。
図2図2は、図1の垂直共振型面発光レーザの一部を示す拡大断面図である。
図3図3は、図1の垂直共振型面発光レーザの一部を示す平面図である。
図4図4は、ポストの上面の第1領域におけるポストの上面からの深さとプロトン濃度との関係の一例を示すグラフである。
図5図5は、ポストの上面の第2領域におけるポストの上面からの深さとプロトン濃度との関係の一例を示すグラフである。
図6図6は、一実施形態に係る垂直共振型面発光レーザの製造方法の一工程を示す断面図である。
図7図7は、一実施形態に係る垂直共振型面発光レーザの製造方法の一工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
一実施形態に係る垂直共振型面発光レーザは、基板の主面上に設けられ、前記基板の前記主面に交差する第1軸に沿って延びるポストと、前記ポストの上面上に設けられ、前記第1軸を取り囲む電極と、を備え、前記ポストは、第1分布ブラッグ反射器、活性層及び第2分布ブラッグ反射器を備え、前記基板、前記第1分布ブラッグ反射器、前記活性層及び前記第2分布ブラッグ反射器は、前記第1軸の方向に順に配列され、前記第2分布ブラッグ反射器は、半導体領域、第1高抵抗領域及び第2高抵抗領域を含み、前記第1高抵抗領域及び前記第2高抵抗領域は、前記半導体領域の電気抵抗よりも高い電気抵抗を有し、前記第1軸は前記半導体領域を通り、前記第1高抵抗領域及び前記第2高抵抗領域は、前記半導体領域を取り囲み、前記第2高抵抗領域は、前記第1軸の方向において前記ポストの前記上面から前記第1高抵抗領域よりも遠くに位置し、前記第1高抵抗領域は、前記第1軸に直交する方向において、前記電極の内縁よりも前記第1軸から遠くに位置する内縁を有し、前記第2高抵抗領域は、前記第1軸に直交する方向において、前記電極の前記内縁よりも前記第1軸の近くに位置する内縁を有し、前記第1高抵抗領域及び前記第2高抵抗領域は、前記第1軸の方向に沿った第1厚み及び第2厚みをそれぞれ有し、前記第2厚みは前記第1厚みよりも大きい。
【0010】
上記垂直共振型面発光レーザによれば、第2高抵抗領域の第2厚みを大きくし、第2高抵抗領域の内縁を第1軸に近づけることによって第2分布ブラッグ反射器の容量を小さくできる。一方、電極に近い第1高抵抗領域の内縁を第1軸から遠ざけることによって、第2分布ブラッグ反射器の電気抵抗を低くできる。したがって、上記垂直共振型面発光レーザは、より広い帯域で動作可能である。
【0011】
前記第1高抵抗領域の前記内縁は、前記第1軸に直交する方向において、前記電極の外縁よりも前記第1軸から遠くに位置してもよい。この場合、第2分布ブラッグ反射器の電気抵抗を更に低くできる。
【0012】
前記第1高抵抗領域及び前記第2高抵抗領域がそれぞれプロトンを含み、前記第1高抵抗領域の前記プロトンの濃度のピークが前記第2高抵抗領域の前記プロトンの濃度のピークよりも大きくてもよい。この場合、第1高抵抗領域の電気抵抗をより高くできる。
【0013】
前記ポストは、前記活性層と前記第2分布ブラッグ反射器との間に配置された電流狭窄層を含み、前記電流狭窄層は、アパーチャー部と、前記アパーチャー部を取り囲む酸化部と、を含み、前記第1軸は前記アパーチャー部を通り、前記第2高抵抗領域の前記内縁は、前記第1軸に直交する方向において、前記酸化部の内縁よりも前記第1軸から遠くに位置してもよい。この場合、第2分布ブラッグ反射器の電気抵抗の増大を抑制できる。
【0014】
[本開示の実施形態の詳細]
以下、添付図面を参照しながら本開示の実施形態が詳細に説明される。図面の説明において、同一又は同等の要素には同一符号が用いられ、重複する説明は省略される。図において必要に応じてXYZ座標軸が示される。X軸、Y軸及びZ軸は互いに交差(例えば直交)する。
【0015】
図1は、一実施形態に係る垂直共振型面発光レーザを模式的に示す断面図である。図2は、図1の垂直共振型面発光レーザの一部を示す拡大断面図である。図3は、図1の垂直共振型面発光レーザの一部を示す平面図である。図1に示される垂直共振型面発光レーザ(VCSEL:Vertical Cavity Surface Emitting Laser)10は、基板12の主面12a上に設けられたポストPSと、ポストPSの上面PSa上に設けられた電極30とを備える。ポストPSは、基板12の主面12aに交差する第1軸Ax1に沿って延びる。第1軸Ax1の延在する方向は、Z軸と一致する。電極30は、第1軸Ax1を取り囲む。電極30は、例えばリング状の電極である。
【0016】
基板12は、III-V族化合物半導体を含む主面12aを有する。基板12は、III-V族化合物半導体基板であってもよい。基板12は、III-V族化合物半導体層及びベース基板を備える基板であってもよい。III-V族化合物半導体層は主面12aを有する。ベース基板はIII-V族化合物半導体層を支持する。III-V族化合物半導体は、例えばGaAsを含む。
【0017】
ポストPSは、第1分布ブラッグ反射器18、活性層20及び第2分布ブラッグ反射器22を備える。基板12、第1分布ブラッグ反射器18、活性層20及び第2分布ブラッグ反射器22は、第1軸Axの方向に順に配列される。
【0018】
第1分布ブラッグ反射器18は、第1導電型(例えばn型)の半導体積層構造を有する。半導体積層構造は、第1軸Ax1の方向に交互に配列された半導体層18a及び半導体層18bを含む。半導体層18a及び半導体層18bは、互いに異なる屈折率を有する。半導体層18aは、例えば半導体層18bよりも低い屈折率を有する。半導体層18a及び半導体層18bのそれぞれは、例えばAlGaAs等のIII-V族化合物半導体を含む。n型ドーパントの例はシリコンである。
【0019】
活性層20は例えば多重量子井戸構造を有する。多重量子井戸構造は、第1軸Ax1に沿って交互に配列されたGaAs層(又はAlGaAs層)及びAlGaAs層を含んでもよい。
【0020】
第2分布ブラッグ反射器22は、第2導電型(例えばp型)の半導体積層構造を有する。第2導電型は第1導電型と反対の導電型である。半導体積層構造は、第1軸Ax1の方向に交互に配列された半導体層22a及び半導体層22bを含む。半導体層22a及び半導体層22bは、互いに異なる屈折率を有する。半導体層22aは、例えば半導体層22bよりも低い屈折率を有する。半導体層22a及び半導体層22bのそれぞれは、例えばAlGaAs等のIII-V族化合物半導体を含む。
【0021】
第2分布ブラッグ反射器22上には、第2導電型(例えばp型)のコンタクト層29が設けられてもよい。コンタクト層29は、ポストPSの上面PSaを有する。コンタクト層29は、例えばAlGaAs等のIII-V族化合物半導体を含む。
【0022】
ポストPSは、活性層20と第2分布ブラッグ反射器22との間に配置された電流狭窄層26を含んでもよい。電流狭窄層26は、アパーチャー部26aと、アパーチャー部26aを取り囲む酸化部26bとを含む。第1軸Ax1はアパーチャー部26aを通る。アパーチャー部26aは、第2導電型(例えばp型)の半導体層である。アパーチャー部26aは、III族元素としてアルミニウムを含むIII-V族化合物半導体を含む。アパーチャー部26aは、例えばAlGaAs等のIII-V族化合物半導体を含む。酸化部26bはアルミニウム酸化物を含む。アパーチャー部26aは、酸化部26bの電気抵抗よりも低い電気抵抗を有する。電流狭窄層26と活性層20との間に半導体層22bが設けられてもよい。
【0023】
基板12とポストPSとの間には、第3分布ブラッグ反射器14が設けられてもよい。第3分布ブラッグ反射器14は、例えば第1導電型(例えばn型)の半導体積層構造を有する。半導体積層構造はi型を有してもよい。半導体積層構造は、第1軸Ax1の方向に交互に配列された複数の半導体層を含む。複数の半導体層は、互いに異なる屈折率を有する。各半導体層は、例えばAlGaAs等のIII-V族化合物半導体を含む。
【0024】
第3分布ブラッグ反射器14とポストPSとの間には第1導電型(例えばn型)のコンタクト層16が設けられてもよい。コンタクト層16は、例えばAlGaAs等のIII-V族化合物半導体を含む。
【0025】
垂直共振型面発光レーザ10は、基板12の主面12a上に設けられた半導体積層構造LMを備えてもよい。基板12と半導体積層構造LMとの間には第3分布ブラッグ反射器14及びコンタクト層16が設けられる。半導体積層構造LMは、ポストPSと同じ層構造を有する。半導体積層構造LM及びポストPSは、第1軸Ax1に直交する方向(例えばX軸)に配列される。半導体積層構造LMとポストPSとの間には、ポストPSを取り囲むトレンチTRが形成されてもよい。トレンチTRの底はコンタクト層16まで到達している。
【0026】
半導体積層構造LM、トレンチTR及びポストPS上には絶縁層50が設けられてもよい。ポストPSの上面PSaにおいて、絶縁層50は第1開口50aを有する。第1開口50a内には電極30が設けられる。トレンチTRの底において、絶縁層50は第2開口50bを有する。第2開口50b内には電極40が設けられる。
【0027】
電極30は、ポストPSの上面PSaにオーミック接触される。電極30には、配線32が電気的に接続されてもよい。配線32は、ポストPSの上面PSaからトレンチTRを超えて半導体積層構造LMまで延在する。
【0028】
電極40は、コンタクト層16にオーミック接触される。電極40には、配線42が電気的に接続されてもよい。配線42は、トレンチTRから半導体積層構造LMまで延在する。
【0029】
第2分布ブラッグ反射器22は、半導体領域SC、第1高抵抗領域HR1及び第2高抵抗領域HR2を含む。半導体領域SCは、半導体層22a及び半導体層22bを含む。第1高抵抗領域HR1及び第2高抵抗領域HR2は、半導体領域SCの電気抵抗よりも高い電気抵抗を有する。第1高抵抗領域HR1及び第2高抵抗領域HR2はそれぞれプロトンを含んでもよい。第1軸Ax1は半導体領域SCの中央を通る。半導体領域SCの中央は、第1軸Ax1に直交する半導体領域SCの断面形状の重心であってもよい。第1高抵抗領域HR1及び第2高抵抗領域HR2は、半導体領域SC及び第1軸Ax1を取り囲む。第1高抵抗領域HR1及び第2高抵抗領域HR2は、例えばリング状の領域である。
【0030】
第2高抵抗領域HR2は、第1軸Ax1の方向においてポストPSの上面PSaから第1高抵抗領域HR1よりも遠くに位置する。具体的には、第2高抵抗領域HR2は、上面PSaから、第1高抵抗領域HR1よりも深い位置に形成される。第1高抵抗領域HR1は、第1軸Ax1の方向において、上面PSaと第2高抵抗領域HR2との間に配置されてもよい。第2高抵抗領域HR2の下部は、第1高抵抗領域HR1の上部に接触してもよい。
【0031】
第1高抵抗領域HR1はコンタクト層29に形成されてもよい。第2高抵抗領域HR2は、電流狭窄層26、半導体層22b、活性層20及び第1分布ブラッグ反射器18の一部に形成されてもよい。
【0032】
図2及び図3に示されるように、第1高抵抗領域HR1は、第1軸Ax1の方向から見て、電極30の内縁30E1よりも外側に位置する内縁HR1Eを有する。すなわち、第1高抵抗領域HR1は、第1軸Ax1に直交する方向(例えばX軸)において、電極30の内縁30E1よりも第1軸Ax1の近くに位置する内縁HR1Eを有する。内縁HR1Eは、第1軸Ax1に直交する方向(例えばX軸)において内縁30E1と第1軸Ax1との間に配置される。第1高抵抗領域HR1の内縁HR1Eは、第1軸Ax1の方向から見て、図2及び図3において電極30の外縁30E2よりも外側に位置しているが、電極30の外縁30E2よりも内側に位置してもよい。すなわち、第1高抵抗領域HR1の内縁HR1Eは、第1軸Ax1に直交する方向(例えばX軸)において、電極30の外縁30E2よりも第1軸Ax1から遠くに位置するが、電極30の外縁30E2よりも第1軸Ax1の近くに位置してもよい。第1高抵抗領域HR1の外縁は、ポストPSの側面を構成してもよい。電極30の内径D3は、12μm以上22μm以下であってもよい。電極30の外径D4は、16μm以上26μm以下であってもよい。第1高抵抗領域HR1の内径D5は、20μm以上30μm以下であってもよい。
【0033】
第2高抵抗領域HR2は、第1軸Ax1の方向から見て、電極30の内縁30E1よりも内側に位置する内縁HR2Eを有する。すなわち、第2高抵抗領域HRは、第1軸Ax1に直交する方向(例えばX軸)において、電極30の内縁30E1よりも第1軸Ax1の近くに位置する内縁HR2Eを有する。第2高抵抗領域HR2の内縁HR2Eは、第1軸Ax1の方向から見て、酸化部26bの内縁26bEよりも外側に位置してもよい。すなわち、第2高抵抗領域HR2の内縁HR2Eは、第1軸Ax1に直交する方向(例えばX軸)において、酸化部26bの内縁26bEよりも第1軸Ax1から遠くに位置してもよい。第2高抵抗領域HR2の外縁は、ポストPSの側面を構成してもよい。酸化部26bの内径D1(アパーチャー部26aの外径)は、7μm以上9μm以下であってもよい。第2高抵抗領域HR2の内径D2は、10μm以上15μm以下であってもよい。
【0034】
第1高抵抗領域HR1及び第2高抵抗領域HR2は、第1軸Ax1の方向に沿った第1厚みTH1及び第2厚みTH2をそれぞれ有する。第2厚みTH2は第1厚みTH1よりも大きい。第1厚みTH1は、例えば1μm以上2μm以下である。第2厚みTH2は、例えば3μm以上5μm以下である。
【0035】
図4は、ポストの上面の第1領域におけるポストの上面からの深さとプロトン濃度との関係の一例を示すグラフである。図5は、ポストの上面の第2領域におけるポストの上面からの深さとプロトン濃度との関係の一例を示すグラフである。いずれのグラフにおいても、縦軸はプロトン濃度を示す。図4のグラフの横軸は、ポストPSの上面PSaの第1領域R1におけるポストPSの上面PSaからの深さを示す。図3に示すように、第1領域R1は、第1軸Ax1の方向から見てポストPSの上面PSaの外縁から第1高抵抗領域HR1の内縁HR1Eまでの領域である。図5のグラフの横軸は、ポストPSの上面PSaの第2領域R2におけるポストPSの上面PSaからの深さを示す。図3に示すように、第2領域R2は、第1軸Ax1の方向から見て第1高抵抗領域HR1の内縁HR1Eから第2高抵抗領域HR2の内縁HR2Eまでの領域である。プロトン濃度は、第1軸Ax1を含むポストPSの断面を走査型静電容量顕微鏡(SCM:Scanning Capacitance Microscopy)を用いてスキャンすることにより、測定可能である。図4および図5に示すように、プロトン濃度は、上面PSaからの深さに応じて、連続的に変化する。プロトン濃度の変化は、ある深さにおいてプロトン濃度が極大になる複数のピークを示す。
【0036】
図4のグラフに示されるように、第1領域R1では、ポストPSの上面PSaから第1深さDP1まで第1高抵抗領域HR1が形成されている。第1領域R1では、第1深さDP1から第2深さDP2まで第2高抵抗領域HR2が形成されている。第1深さDP1は第1厚みTH1と一致する。第2深さDP2は第1厚みTH1と第2厚みTH2との合計値と一致する。第1高抵抗領域HR1のプロトン濃度のピークPK1は、第2高抵抗領域HR2のプロトン濃度のピークPK2よりも大きくてもよい。プロトン濃度のピークPK1及びピークPK2は、例えば1×1018cm-3以上又は1×1019cm-3以上である。第1高抵抗領域HR1及び第2高抵抗領域HR2のそれぞれにおいて、プロトン濃度プロファイルは複数のピークを有してもよい。プロトン濃度プロファイルは、イオン注入時のエネルギー及びドーズ量により調整可能である。
【0037】
図5のグラフに示されるように、第2領域R2では、ポストPSの上面PSaから第1深さDP1まで第1高抵抗領域HR1が形成されていない。第2領域R2では、第1深さDP1から第2深さDP2まで第2高抵抗領域HR2が形成されている。
【0038】
垂直共振型面発光レーザ10では、電極30と電極40との間に電圧が印加されると、電流狭窄層26を通って活性層20にバイアス電流が供給される。これにより、レーザ光Lが第1軸Axの方向に出射される。
【0039】
垂直共振型面発光レーザ10によれば、第2高抵抗領域HR2の第2厚みTH2を大きくし、第2高抵抗領域HR2の内縁HR2Eを第1軸Ax1に近づけることによって、第2分布ブラッグ反射器22の容量を小さくできる。一方、第1軸Ax1の方向において電極30に近い第1高抵抗領域HR1の内縁HR1Eを第1軸Ax1から遠ざけることによって、第2分布ブラッグ反射器22を通過するバイアス電流に対する電気抵抗を低くできる。したがって、垂直共振型面発光レーザ10は、より広い帯域で動作可能である。垂直共振型面発光レーザ10によれば、3dB帯域を大きくできる。
【0040】
第1高抵抗領域HR1の内縁HR1Eが電極30の外縁30E2よりも外側に位置する場合、電極30と半導体領域SCの上面との接触面積が増える。これにより、接触抵抗を低くでき、第2分布ブラッグ反射器22の電気抵抗を更に低くできる。
【0041】
第1高抵抗領域HR1のプロトン濃度のピークPK1が第2高抵抗領域HR2のプロトン濃度のピークPK2よりも大きい場合、第1高抵抗領域HR1の電気抵抗をより高くできる。
【0042】
第2高抵抗領域HR2の内縁HR2Eが酸化部26bの内縁26bEよりも外側に位置する場合、第2分布ブラッグ反射器22の電気抵抗の増大を抑制できる。
【0043】
図6及び図7は、一実施形態に係る垂直共振型面発光レーザの製造方法の一工程を示す断面図である。垂直共振型面発光レーザ10は以下のように製造されてもよい。
【0044】
まず、図6に示されるように、基板12の主面12a上に半導体積層体SLを形成してもよい。半導体積層体SLは、第3分布ブラッグ反射器14、コンタクト層16、第1分布ブラッグ反射器18、活性層20、第2分布ブラッグ反射器22及びコンタクト層29を含む。第3分布ブラッグ反射器14、コンタクト層16、第1分布ブラッグ反射器18、活性層20、第2分布ブラッグ反射器22及びコンタクト層29は、基板12上に順に形成される。各層は、例えば有機金属気相成長法(OMVPE:Organometallic Vapor Phase Epitaxy)により形成される。
【0045】
次に、半導体積層体SL上にマスクMK1を形成する。マスクMK1は例えばレジストマスクである。第1軸Ax1はマスクMK1を通る。第1軸Ax1から見てマスクMK1は例えば円形である。第1軸Ax1と直交する方向において、マスクMK1は、第1高抵抗領域HR1の内径D5と同じ径を有する。その後、半導体積層体SL内にイオンを注入する。これにより、第1高抵抗領域HR1が形成される。注入されるイオンは例えばプロトンである。その後、マスクMK1を除去する。
【0046】
次に、図7に示されるように、半導体積層体SL上にマスクMK2を形成する。マスクMK2は例えばレジストマスクである。第1軸Ax1はマスクMK2を通る。第1軸Ax1から見てマスクMK2は例えば円形である。第1軸Ax1と直交する方向において、マスクMK2はマスクMK1の径より小さい径を有する。マスクMK2は、第2高抵抗領域HR2の内径D2と同じ径を有する。その後、半導体積層体SL内にイオンを注入する。これにより、第2高抵抗領域HR2が形成される。注入されるイオンは例えばプロトンである。第2高抵抗領域HR2を形成する時のイオン注入のエネルギーは、第1高抵抗領域HR1を形成する時のイオン注入のエネルギーよりも大きい。これにより、第2高抵抗領域HR2は、第1軸Ax1の方向において第1高抵抗領域HR1よりも半導体積層体SLの表面から深い位置に形成される。
【0047】
次に、例えばフォトリソグラフィー及びエッチングにより、図1に示されるトレンチTRを形成する。これにより、ポストPS及び半導体積層構造LMが形成される。その後、ポストPSの側面を酸化することによって、電流狭窄層26の酸化部26bを形成する。その後、絶縁層50を形成する。その後、電極30及び電極40を形成する。その後、配線32及び配線42を形成する。
【0048】
以上、本開示の好適な実施形態について詳細に説明されたが、本開示は上記実施形態に限定されない。各実施形態の各構成要素は、任意に組み合わされてもよい。
【0049】
例えば、上記実施形態では、第1高抵抗領域HR1を形成した後に第2高抵抗領域HR2を形成しているが、第2高抵抗領域HR2を形成した後に第1高抵抗領域HR1を形成してもよい。この場合、マスクMK2を用いてイオン注入を行った後に、マスクMK1を用いてイオン注入を行う。
【0050】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0051】
10…垂直共振型面発光レーザ
12…基板
12a…主面
14…第3分布ブラッグ反射器
16…コンタクト層
18…第1分布ブラッグ反射器
18a…半導体層
18b…半導体層
20…活性層
22…第2分布ブラッグ反射器
22a…半導体層
22b…半導体層
26…電流狭窄層
26a…アパーチャー部
26b…酸化部
26bE…内縁
29…コンタクト層
30…電極
30E1…内縁
30E2…外縁
32…配線
40…電極
42…配線
50…絶縁層
50a…第1開口
50b…第2開口
Ax…第1軸
Ax1…第1軸
D1…内径(アパーチャー部26aの外径)
D2…内径
D3…内径
D4…外径
D5…内径
HR1…第1高抵抗領域
HR1E…内縁
HR2…第2高抵抗領域
HR2E…内縁
L…レーザ光
LM…半導体積層構造
MK1…マスク
MK2…マスク
PK1…ピーク
PK2…ピーク
PS…ポスト
PSa…上面
R1…第1領域
R2…第2領域
SC…半導体領域
SL…半導体積層体
TR…トレンチ

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7