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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022181397
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】表面波検出装置及び液種特定装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 29/024 20060101AFI20221201BHJP
【FI】
G01N29/024
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021088314
(22)【出願日】2021-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000231512
【氏名又は名称】日本精機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】棚橋 正貴
【テーマコード(参考)】
2G047
【Fターム(参考)】
2G047AA01
2G047BA03
2G047BC02
2G047CA01
2G047CB03
2G047EA05
2G047GG30
2G047GG33
(57)【要約】
【課題】 圧電素子が検出する表面波の信号強度が低下する虞のない表面波検出装置及び液種特定装置を提供する。
【解決手段】 液体4に浸るとともに表面波Wsを伝搬する伝搬面11を有する伝搬体10と、この伝搬体10に振動を与えて表面波Wsを発生させるとともに反射した表面波Wsを検出する圧電素子30と、液体4及び伝搬体10を収納する容器3とを備え、伝搬体10は、伝搬面11が液体4の液面4aと向かい合うように帯状をなした状態で容器3に収納される構成とした。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体に浸るとともに表面波を伝搬する伝搬面を有する伝搬体と、
前記伝搬体に振動を与えて前記表面波を発生させるとともに反射した前記表面波を検出する圧電素子と、
前記液体及び前記伝搬体を収納する収納部材とを備え、
前記伝搬体は、前記伝搬面が前記液体の液面と向かい合うように帯状をなした状態で前記収納部材に収納されることを特徴とする表面波検出装置。
【請求項2】
前記伝搬体は、前記伝搬面の裏に位置する裏面を有し、
前記裏面は、前記伝搬面と向かい合うように帯状をなした状態で設けられることを特徴とする請求項1記載の表面波検出装置。
【請求項3】
前記伝搬体は、前記裏面が向く方向に突起するとともに前記裏面に対応するように設けられる第1突起部及び第2突起部を有し、
前記第1突起部及び前記第2突起部は、前記収納部材の底部と当接していることを特徴とする請求項2記載の表面波検出装置。
【請求項4】
前記第1突起部及び前記第2突起部は、前記裏面の幅方向において前記裏面を挟んで互いに対向することを特徴とする請求項3記載の表面波検出装置。
【請求項5】
前記伝搬体に連なるように設けられるとともに前記圧電素子を収容する素子収容部を備え、
前記収納部材の側部外方に前記素子収容部が位置していることを特徴とする請求項1から請求項4のうち何れか1つに記載の表面波検出装置。
【請求項6】
前記伝搬体は、前記伝搬面が向く方向に突起するとともに前記伝搬面に対応するように設けられる第1リブ及び第2リブを有することを特徴とする請求項1から請求項5のうち何れか1つに記載の表面波検出装置。
【請求項7】
前記第1リブ及び前記第2リブは、前記伝搬面の幅方向において前記伝搬面を挟んで互いに対向することを特徴とする請求項6記載の表面波検出装置。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか1項に記載の表面波検出装置と、
前記圧電素子が検出した前記表面波の伝搬時間に基づいて前記液体の種類を特定する特定部と、を備えることを特徴とする液種特定装置。
【請求項9】
前記液体は、第1の比重を有する第1の液体と、前記第1の比重よりも大きい第2の比重を有する前記第2の液体とで構成され、
前記第2の液体が前記底部に沈降することを特徴とする請求項8記載の液種特定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面波検出装置及び液種特定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、圧電素子によって、液体に浸る伝搬体に振動を与えて表面波を発生させるとともに、反射した表面波を検出する技術が開示されている。この場合、伝搬体は、表面波を伝搬する伝搬面を有し、この伝搬面は、液体の液面と直交するように延在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-139852号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載の技術においては、液体中に存在する気泡が液体の液面と直交するように延在している伝搬面に滞留する場合があり、この気泡の滞留に起因して、圧電素子が検出する表面波の信号強度が低下するという問題がある。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、圧電素子が検出する表面波の信号強度が低下する虞のない表面波検出装置及び液種特定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点に係る表面波検出装置は、液体に浸るとともに表面波を伝搬する伝搬面を有する伝搬体と、前記伝搬体に振動を与えて前記表面波を発生させるとともに反射した前記表面波を検出する圧電素子と、前記液体及び前記伝搬体を収納する収納部材とを備え、前記伝搬体は、前記伝搬面が前記液体の液面と向かい合うように帯状をなした状態で前記収納部材に収納される。
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の第2の観点に係る液種特定装置は、前記表面波検出装置と、前記圧電素子が検出した前記表面波の伝搬時間に基づいて前記液体の種類を特定する特定部と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、所期の目的を達成でき、圧電素子が検出する表面波の信号強度が低下する虞のない表面波検出装置及び液種特定装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態による液種特定装置の概略構成図。
図2図1中、液種特定装置の要部を拡大した図。
図3】同実施形態による伝搬体、素子収容部及び圧電素子の概略断面図。
図4】同実施形態による伝搬体及び素子収容部の正面図。
図5図4のA-A断面図(ハッチングは省略)。
図6】伝搬体に振動を与えたときに圧電素子に入力される波を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0011】
図1において、1は表面波検出装置、2は制御部、3は収納部材としての容器、4は容器3内に入れられた液体、4aは液体4の液面である。また、表面波検出装置1と制御部2とで容器3内に入れられた液体4の種類(以下、液種とも言う)を特定するための液種特定装置Lが構成される。なお、ここでの容器3は、例えば海上を走行する船舶等の移動体に搭載される燃料タンクとする。
【0012】
表面波検出装置1は、図2図4に示すように液体4に浸る伝搬体10と、素子収容部20と、圧電素子30と、フランジ部40と、を有する。
【0013】
以下では、各図に示すように、伝搬体10の長手方向に延びるX軸や、後述の伝搬面11の法線方向に延びるZ軸や、X軸及びZ軸と直交するY軸を用いて、表面波検出装置1の構成を説明する場合がある。また、X、Y、Z軸の各軸に沿う方向をその軸方向とする。さらに、X、Y、Zの各軸の矢印が向く方向を「+」方向とし、その逆方向を「-」方向とする。つまり、X軸に沿う方向はX方向である。矢印の向きも考慮すると、X軸の矢印が向く方向が+X方向であり、その逆方向が-X方向である。Y、Z軸についても同様である。
【0014】
伝搬体10は、後述の表面波Wsを含む超音波が伝搬するものであり、例えばPPS(ポリフェニレンサルファイド)などの合成樹脂から形成される。
【0015】
伝搬体10は、X軸方向に延び、概ね四角柱状に形成されている。伝搬体10は、図5に示すように断面形状が概ねH状をなし、伝搬面11と、裏面12と、側面13、14と、第1リブR1と、第2リブR2と、第1突起部R3と、第2突起部R4と、を有する。また、伝搬体10は、図2図3に示す底面15を有する。
【0016】
伝搬面11は、伝搬体10のうち表面波Wsを伝搬する主要部分であり、図4に示すようにX方向に延びる帯状をなす。伝搬面11の-X方向の端は、表面波Wsが反射する反射部11aとして機能する。裏面12は、図2図3図5に示すように、伝搬体10における伝搬面11の反対側(裏側)に位置し、伝搬面11と向かい合うように設けられる。裏面12もX方向に延びる帯状をなした状態で設けられる。伝搬面11は-Z方向に向き、裏面12は+Z方向に向く。伝搬面11と裏面12は、XY平面と平行である。図2図3に示すように、伝搬体10には、裏面12から伝搬面11に向かって凹む溝12aが形成されている。なお、図2では、伝搬体10及び素子収容部20を-Y方向から見た側面図で表した。また、図3は、伝搬体10、素子収容部20及び圧電素子30をXZ平面と平行な面で切った断面図である。
【0017】
図5に示すように、側面13は-Y方向に向き、側面14は+Y方向に向く。側面13と側面14は、XZ平面と平行である。底面15は、図2図3に示すように、伝搬面11と裏面12とを繋ぐ傾斜面である。底面15は、伝搬面11となす角が鋭角で、裏面12となす角が鈍角の面である。底面15により、伝搬体10の先端部は先細りの形状をなす。底面15の傾斜によって、伝搬面11を-X方向に伝搬する表面波Wsが、裏面12に回り込むことを抑制することができ、伝搬体10の反射部11aで反射して再び伝搬面11を伝搬する表面波Wsを効率良く圧電素子30に向かわせることができる。
【0018】
第1リブR1と第2リブR2は、図5に示すように、伝搬面11が向く方向(-Z方向)に突起(突出)するとともに、図4に示すように、X方向に延びる。第1リブR1及び第2リブR2は、図5に示すように、伝搬面11の幅方向(Y方向)において伝搬面11を挟んで互いに対向する。例えば、第1リブR1及び第2リブR2のそれぞれの主面(-Z方向に向く面)は、伝搬面11と平行である。また、第1リブR1と第2リブR2の伝搬面11からの高さ(Z方向の高さ)は等しく、表面波Wsの波長λ以上に設定されることが好ましい。
【0019】
第1リブR1の基端部には、伝搬面11と繋がる曲面S1が形成されている。具体的には、曲面S1は、第1リブR1の内面(+Y方向に向く面)であって第2リブR2と対向する第1対向面So1と、伝搬面11とを繋ぐ。第2リブR2の基端部には、伝搬面11と繋がる曲面S2が形成されている。具体的には、曲面S2は、第2リブR2の内面(-Y方向に向く面)であって第1リブR1と対向する第2対向面So2と、伝搬面11とを繋ぐ。ここで、実際には、圧電素子30の振動による表面波Wsは、伝搬面11だけでなく伝搬面11の周囲にも発生する。上記のような曲面S1、S2を設けることにより、伝搬体10に発生する表面波Wsを伝搬面11に集めることができ、伝搬面11を伝搬する表面波Wsの指向性を高めることができる。
【0020】
また、図4に示すように、第1リブR1と第2リブR2の間隔Dは、圧電素子30の幅と略等しく設定されている。具体的に、第1リブR1と第2リブR2の間隔Dとは、第1対向面So1と第2対向面So2の間隔である。この構成により、伝搬面11以外の部分に不要な表面波Wsが発生することを抑制することができる。なお、間隔Dが圧電素子30の幅と略等しいとは、間隔Dが圧電素子30の幅と等しいことだけでなく、伝搬面11の幅が圧電素子30の幅と等しいことも含む。つまり、圧電素子30の幅は、間隔D以下であって、伝搬面11の幅以上の範囲であることが好ましい。
【0021】
第1突起部R3と第2突起部R4は、図5に示すように、裏面12が向く方向(+Z方向)に突起(突出)する。また、第1突起部R3と第2突起部R4は、第1リブR1及び第2リブR2と同様にX方向に延びる。第1突起部R3と第2突起部R4は、図5に示すように、裏面12の幅方向(Y方向)において裏面12を挟んで互いに対向する。例えば、第1突起部R3と第2突起部R4のそれぞれの主面(+Z方向に向く面)は、裏面12と平行である。例えば、第1突起部R3の内面(+Y方向に向く面)であって第2突起部R4と対向する第3対向面So3と、裏面12とのなす角は、直角に設定されている。例えば、第2突起部R4の内面(-Y方向に向く面)であって第1突起部R3と対向する第4対向面So4と、裏面12とのなす角も、直角に設定されている。
【0022】
伝搬面11に対応するように設けられる第1リブR1及び第2リブR2に加えて、裏面12に対応するように設けられる第1突起部R3及び第2突起部R4を設けることにより、伝搬体10の断面二次モーメントを向上させ、振動共振に対する耐力を向上させることができる。
【0023】
素子収容部20は、図3に示すように、伝搬体10の+X方向に位置し、圧電素子30を収容する。例えば、素子収容部20は、伝搬体10と同一材料で、一体に形成されている。素子収容部20は、円盤部21と、筒体22とを備え、伝搬体10と連なるように設けられる。
【0024】
円盤部21は、伝搬体10と連結されている。筒体22は、円盤部21の外径よりも小さい外径を有する円筒形状をなし、円盤部21から+X方向に突出する。円盤部21のうち筒体22に囲まれた部分に、圧電素子30が収容される。筒体22の外周面には、筒体22の中心に向かって凹む溝であって、図2に断面で示すシール材5が取り付けられる取付溝22aが形成されている。
【0025】
圧電素子30は、円盤部21を介して伝搬体10に振動を与え、伝搬体10に超音波を発生させる。具体的には、圧電素子30は、超音波として、伝搬体10の伝搬面11に表面波Wsを発生させるとともに、伝搬体10の内部に内部伝搬波Wiを発生させる。また、圧電素子30は、反射部11aで反射した表面波Wsと、溝12aで反射した内部伝搬波Wiとを検出し、検出結果を示す検出信号(電圧信号)を出力する。
【0026】
圧電素子30は、公知の超音波トランスデューサから構成され、直方体状をなす。圧電素子30は、円盤部21を挟んで伝搬体10と対向するとともに、伝搬面11に表面波Wsを発生させるため、その一端部(図3での下端部)が伝搬体10の伝搬面11を跨いで迫り出すように設けられる。例えば、表面波Wsは、液体4中ではシュルツ波である。なお、表面波Wsは、横波型弾性表面波(SH-SAW)等であってもよい。内部伝搬波Wiは、横波等であればよい。また、ここでの詳細図示は省略するが、圧電素子30は、端子を介して制御部2と電気的に接続される。
【0027】
図2に示すフランジ部40は、例えば合成樹脂により形成され、-X方向に開口する円筒形状をなす筒状部41と、筒状部41の外径方向に迫り出したフランジ42と、フランジ42よりも+X方向に位置する中空状のキャップ部43と、を有する。なお、図2では、筒状部41及びシール材5を径方向に沿う断面で示した。
【0028】
筒状部41は、素子収容部20の筒体22を取り囲む。筒状部41の先端は、X方向において、円盤部21の外周端部と対向する。筒状部41と筒体22の間は、シール材5によって密封される。シール材5は、例えば樹脂ゴムからリング状に形成され、パッキンとして機能する。
【0029】
フランジ42は、容器3に、図示しないネジなどの固定手段によって取り付けられる部分である。キャップ部43は、図示しないカプラを有する。カプラの内部には、図示しない出力端子が位置する。外部機器とカプラが連結されると、当該外部機器と出力端子が電気的に接続される。例えば、キャップ部43の内部には、圧電素子30及び出力端子の各々と電気的に接続され、後述の送信回路、受信回路などが形成された図示しないPCB(Printed Circuit Board)が収容される。
【0030】
図1に模式的に示す制御部2は、例えばマイクロコンピュータから構成され、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を備える。
【0031】
容器3は、前記移動体に搭載される燃料タンクを適用することができ、その内部に液体4及び伝搬体10を収納している。容器3は、その最下部に位置する底部3aと、この底部3aの周縁部分から屹立するように設けられる側部3bとを有する。
【0032】
そして、この場合、伝搬体10は、伝搬面11が液体4の液面4aと向かい合うように帯状をなした状態で容器3(容器3の底部3a側)に収納される構成としている(図1図2参照)。より具体的には、伝搬体10は、図5に示すように第1突起部R3及び第2突起部R4が底部3aと当接(面接触)した状態で、底部3aと略平行状態をなすように底部3a上に載置されることになる。このように本例では、伝搬面11と液体4の液面4aとが向かい合うようになっていることで、液体4中に存在する気泡が伝搬面11に付着した場合、伝搬面11に付着した気泡は浮力の作用を受けて伝搬面11から離れて液面4a側に向けて上昇するため、気泡の伝搬面11への滞留を防ぐことが可能となり、圧電素子30が検出する表面波Wsの信号強度が低下する虞はなくなる。
【0033】
なお、側部3bの下方には孔3cが設けられ、当該孔3cを円盤部21が塞いだ状態で、表面波検出装置1は容器3の側部3bに取り付けられる(図2参照)。また、この際、円盤部21(素子収容部20)は容器3の側部3b外方に位置し、伝搬体10は、その全域が液体4に浸ることになる。
【0034】
液体4は、容器3に貯蔵されるガソリン(液体燃料)を適用することができる。ここで、容器3が海上を走行する船舶(移動体)に搭載される燃料タンクである場合、荒天の状況下(あるいはフィラーキャップが何らかの原因で破損しているようか状況下)ではガソリンが貯蔵される容器3内に海水が混入することが考えられる。容器3内に海水が混入した場合、容器3内にはガソリンと海水とでなる液体4が共存することになる。以下の説明では、液体4のうちガソリンを第1の液体C1とし、海水を第2の液体C2として適宜説明する。
【0035】
ここで、ガソリンの比重は約0.74で、海水の比重は約1.03であることから、液体4は、第1の比重を有する第1の液体C1と、当該第1の比重よりも大きい第2の比重を有する第2の液体C2とで構成され、比重の大きい第2の液体C2が重力の作用で容器3の底部3aに沈降する。
【0036】
そして、制御部2は、圧電素子30が検出した表面波Wsの伝搬時間に基づいて液体4の液種を特定する特定部として機能する。PCBの送信回路は、制御部2の制御により、圧電素子30に駆動信号を送信して圧電素子30を駆動する。この結果、伝搬体10には、表面波Ws及び内部伝搬波Wiが発生する。PCBの受信回路は、反射した表面波Ws及び反射した内部伝搬波Wiの各々を示す検出信号を圧電素子30から受信し、制御部2に供給する。そして、前記信号強度が保たれた検出信号を受信した制御部2は、当該検出信号に基づき、液体4の液種を特定する処理を実行する。ここでは、第2の液体C2が容器3内に混入し、第1の液体C1と第2の液体C2との間の界面よりも下側に伝搬面11が位置している(つまり伝搬面11が第2の液体C2に浸っている)ものとする。
【0037】
なお、送信回路及び受信回路は、制御部2に備えられていてもよい。また、制御部2の少なくとも一部の機能を、フランジ部40の内部に設けられたPCBに実装してもよい。
【0038】
ここで、液種の特定方法の一例を説明する。図6は、振動W0を発生させたことによって伝搬体10を伝搬する内部伝搬波Wi及び表面波Wsが反射した後に圧電素子30に入力する様子を示している。
【0039】
時点t0は、圧電素子30の駆動により伝搬体10に振動W0が発生した時点である。振動W0が発生することによって、伝搬体10が表面波Ws及び内部伝搬波Wiを伝搬する。時点t1は、内部伝搬波Wiが溝12aで反射されて圧電素子30に入力した時点である。期間T1は、時点t0から時点t1までの期間である内部伝搬波伝搬期間T1である。時点t2は、表面波Wsが反射部11aで反射されて圧電素子30に入力した時点である。期間T2は、時点t0から時点t2までの期間である表面波伝搬期間T2である。
【0040】
制御部2は、表面波伝搬期間T2に基づいて液体4の液種を特定する。つまり、制御部2は、表面波伝搬期間T2と液体4の液種とが関係付けられたデータテーブルを参照することによって、液体4の液種を特定する。この場合、制御部2は、前記データテーブルを参照し、重力の作用で容器3の底部3aに沈降した液体4の液種が海水(第2の液体C2)であると特定する処理を実行する。なお、制御部2は、検出した液種を図示しない文字表示などの報知部によってユーザに報知する処理を実行してもよい。以下、表面波伝搬期間T2に基づいて液体4の液種を特定することができる原理を説明する。
【0041】
表面波伝搬期間T2は表面波伝搬速度に反比例するため、表面波伝搬速度が速くなるにつれて表面波伝搬期間T2が短くなる一方で、表面波伝搬速度が遅くなるにつれて表面波伝搬期間T2が長くなる。伝搬体10が全体に渡って液体4に浸っているときの表面波伝搬速度は、液体4に固有の液中の音速vl及び密度ρl、並びに、伝搬体10固有の内部伝搬波Wiの伝搬速度vsによって定まる。すなわち、伝搬体10の材質が固定であるときには、伝搬体10が全体に渡って液体4に浸っているときの表面波伝搬速度は、液体4の液種によって変化する。そのため、実測又はシミュレーション等によって、伝搬体10が全体に渡って液体4に浸っているときの表面波伝搬速度と液体4の液種との関係を得ることができる。この関係に基づいて作成された表面波伝搬期間T2と液種とが関係付けられたデータテーブルを制御部2に備えられるROMに記憶することによって、液種特定装置Lは、表面波伝搬期間T2を用いて、液体4の液種(底部3aに沈降した液種が海水であること)を特定することができる。
【0042】
なお、制御部2が、表面波伝搬期間T2に基づいて液体4の液種を特定するという表現には、制御部2が、表面波伝搬期間T2から表面波伝搬速度を算出し、算出した表面波伝搬速度に基づいて液体4の液種を特定することも含まれる。すなわち、制御部2は、表面波伝搬速度と液体4の液種とが関係付けられたデータテーブルを参照することによって、算出した表面波伝搬速度に基づいて液体4の液種を特定してもよい。この場合、制御部2は、表面波伝搬期間T2と液体4の液種とが関係付けられたデータテーブルの代わりに、表面波伝搬速度と液体4の液種とが関係付けられたデータテーブルをROMに記憶していればよい。
【0043】
以上のように、本実施形態によれば、液体4に浸るとともに表面波Wsを伝搬する伝搬面11を有する伝搬体10と、この伝搬体10に振動を与えて表面波Wsを発生させるとともに反射した表面波Wsを検出する圧電素子30と、液体4及び伝搬体10を収納する容器3とを備え、伝搬体10は、伝搬面11が液体4の液面4aと向かい合うように帯状をなした状態で容器3に収納されるものである。従って、液体4中に存在する気泡が伝搬面11に付着した場合、伝搬面11に付着した気泡は浮力の作用を受けて伝搬面11から離れて液面4a側に向けて上昇するため、気泡の伝搬面11への滞留を防ぐことが可能となり、圧電素子30が検出する表面波Wsの信号強度が低下する虞はなくなる。
【0044】
また本実施形態では、第1突起部R3及び第2突起部R4は、容器3の底部3aと当接していることで、伝搬体10が底部3aに安定的に保持される構成となり、表面波検出装置1の固定信頼性が向上するという利点がある。
【0045】
本発明は以上の実施形態及び図面によって限定されるものではない。本発明の要旨を変更しない範囲で、適宜、変更(構成要素の削除も含む)を加えることが可能である。
【0046】
例えば伝搬体10の材質は、表面波Wsを良好に伝搬することができれば任意である。例えば、伝搬体10として使用される樹脂は、PPSに限られず、POM(ポリアセタール)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)等であってもよい。
【0047】
以上の説明では、本発明の理解を容易にするために、公知の技術的事項の説明を適宜省略した。
【符号の説明】
【0048】
1 表面波検出装置
2 制御部
3 容器(収納部材)
3a 底部
3b 側部
4 液体
4a 液面
10 伝搬体
11 伝搬面
12 裏面
12a 溝
13、14 側面
15 底面
20 素子収容部
30 圧電素子
40 フランジ部
C1 第1の液体
C2 第2の液体
R1 第1リブ
R2 第2リブ
R3 第1突起部
R4 第2突起部
Ws 表面波
Wi 内部伝搬波
図1
図2
図3
図4
図5
図6