(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022181400
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】オレフィン類重合用固体触媒成分、オレフィン類重合用触媒、オレフィン類重合体の製造方法、オレフィン類重合体、プロピレン系ブロック共重合体の製造方法及びプロピレン系ブロック共重合体
(51)【国際特許分類】
C08F 4/654 20060101AFI20221201BHJP
C08F 10/06 20060101ALI20221201BHJP
C08F 297/08 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
C08F4/654
C08F10/06
C08F297/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021088319
(22)【出願日】2021-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】390007227
【氏名又は名称】東邦チタニウム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002538
【氏名又は名称】弁理士法人あしたば国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】船橋 英雄
(72)【発明者】
【氏名】田篠 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】小川 速
(72)【発明者】
【氏名】曽我 弘和
【テーマコード(参考)】
4J026
4J100
4J128
【Fターム(参考)】
4J026HA04
4J026HA27
4J026HA35
4J026HA39
4J026HA48
4J026HB03
4J026HB04
4J026HB20
4J026HB35
4J026HB42
4J026HB45
4J026HB48
4J026HE01
4J100AA02Q
4J100AA03P
4J100CA01
4J100CA04
4J100DA04
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4J100DA49
4J100FA09
4J100FA18
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4J128AA02
4J128AB02
4J128AC05
4J128BA00A
4J128BA02B
4J128BB00A
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4J128BC15B
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4J128CB30A
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4J128EB04
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4J128EF01
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4J128FA01
4J128FA08
4J128FA09
4J128GA05
4J128GA06
4J128GA26
(57)【要約】
【課題】分子量分布が狭くても、流動性に優れるとともに剛性の高いオレフィン類重合体を煩雑な重合処理を施すことなく容易に製造し得るオレフィン類重合用固体触媒成分を提供する。
【解決手段】マグネシウム、チタン及びハロゲンを含有するとともに、内部電子供与性化合物として芳香族カルボン酸エステル類及び1,3-ジエーテル化合物を含有するオレフィン類重合用固体触媒成分であって、前記チタンの含有割合が0.5~2.0質量%、前記内部電子供与性化合物の全含有量中に占める芳香族カルボン酸エステル類の含有割合が40~60mol%、前記内部電子供与性化合物の全含有量に占める1,3-ジエーテル化合物の含有割合が40~60mol%であることを特徴とするオレフィン類重合用固体触媒成分である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マグネシウム、チタン及びハロゲンを含有するとともに、内部電子供与性化合物として芳香族カルボン酸エステル類及び1,3-ジエーテル化合物を含有するオレフィン類重合用固体触媒成分であって、
前記チタンの含有割合が0.5~2.0質量%、
前記内部電子供与性化合物の全含有量中に占める芳香族カルボン酸エステル類の含有割合が40~60mol%、
前記内部電子供与性化合物の全含有量に占める1,3-ジエーテル化合物の含有割合が40~60mol%である
ことを特徴とするオレフィン類重合用固体触媒成分。
【請求項2】
前記チタンと、前記芳香族カルボン酸エステル類及び1,3-ジエーテル化合物とを、前記芳香族カルボン酸エステル類及び1,3-ジエーテル化合物の合計含有量/前記チタンの含有量で表される比が質量比で2.0以上となるように含有する請求項1に記載のオレフィン重合用固体触媒成分。
【請求項3】
前記チタンと、前記芳香族カルボン酸エステル類とを、前記芳香族カルボン酸エステル類の含有量/前記チタンの含有量で表される比が質量比で1.5以上となるように含有する請求項1または請求項2に記載のオレフィン重合用固体触媒成分。
【請求項4】
前記チタンと、前記1,3-ジエーテル化合物とを、前記1,3-ジエーテル化合物の含有量/前記チタンの含有量で表される比が質量比で1.5以上となるように含有する請求項1~請求項3のいずれかに記載のオレフィン重合用固体触媒成分。
【請求項5】
請求項1~請求項4の何れかに記載のオレフィン類重合用固体触媒成分と、下記一般式(I)
R1
pAlQ3-p (I)
(式中、R1は、炭素数1~6のアルキル基であり、Qは、水素原子またはハロゲン原子であり、pは、0<p≦3の実数である。)で表される化合物から選ばれる一種以上の有機アルミニウム化合物とを含むことを特徴とするオレフィン類重合用触媒。
【請求項6】
さらに有機ケイ素化合物を含む請求項5に記載のオレフィン類重合用触媒。
【請求項7】
請求項5または請求項6に記載のオレフィン類重合用触媒を用いてオレフィン類を重合することを特徴とするオレフィン類重合体の製造方法。
【請求項8】
前記オレフィン類の重合が、プロピレン単独重合であるか、プロピレン及びプロピレン以外のα-オレフィンの共重合である請求項7に記載のオレフィン類重合体の製造方法。
【請求項9】
溶融流れ性(MFR)が20g/10分間以上、
数平均分子量(Mn)に対する重量平均分子量(Mw)の比である分子量分布(Mw/Mn)が4.0~7.0、重量平均分子量(Mw)に対するZ平均分子量(Mz)の比である分子量分布(Mz/Mw)が2.0~7.0であり、
曲げ弾性率(FM)が1800MPa以上である
ことを特徴とするオレフィン類重合体。
【請求項10】
プロピレンを95~100質量%含むオレフィン類を請求項5~請求項7のいずれかに記載のオレフィン類重合用触媒を用いて重合させ、
溶融流れ性(MFR)が20g/10分間以上、
数平均分子量(Mn)に対する重量平均分子量(Mw)の比である分子量分布(Mw/Mn)が4.0~7.0、重量平均分子量(Mw)に対するZ平均分子量(Mz)の比である分子量分布(Mz/Mw)が2.0~7.0であり、
曲げ弾性率(FM)が1800MPa以上である
プロピレン系重合体を得た後、得られたプロピレン系重合体の存在下、プロピレン及びプロピレン以外のα-オレフィンを重合させる
ことを特徴とするプロピレン系ブロック共重合体の製造方法。
【請求項11】
プロピレンを95~100質量%含むオレフィン類を請求項5または請求項6に記載のオレフィン類重合用触媒を用いて重合させ、
溶融流れ性(MFR)が20g/10分間以上、
数平均分子量(Mn)に対する重量平均分子量(Mw)の比である分子量分布(Mw/Mn)が4.0~7.0、重量平均分子量(Mw)に対するZ平均分子量(Mz)の比である分子量分布(Mz/Mw)が2.0~7.0であり、
曲げ弾性率(FM)が1800MPa以上である
プロピレン系重合体を得た後、得られたプロピレン系重合体の存在下、プロピレン及びプロピレン以外のα-オレフィンを重合させて得られる
ことを特徴とするプロピレン系ブロック共重合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オレフィン類重合用固体触媒成分、オレフィン類重合用触媒、オレフィン類重合体の製造方法、オレフィン類重合体、プロピレン系ブロック共重合体の製造方法及びプロピレン系ブロック共重合体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィンは、自動車部品あるいは家電製品などの成型品の他、容器やフィルム等種々の用途に利用されている。
【0003】
ポリプロピレン系樹脂組成物は、軽量で成形性に優れるとともに、成形体の耐熱性や耐薬品性等の化学的安定性に優れ、コストパフォーマンス上も非常に優秀であることから、最も重要なプラスチック材料の一つとして多くの分野で使用されている。例えば、高い立体規則性を有するポリプロピレンは、優れた機械的強度や熱特性等を有するとして種々の用途への適用が検討されている。
【0004】
さらなる用途拡大を図るため、ポリスチレンやABS樹脂の代替として使用可能な、溶融流れ性(メルトフローレート(MFR))が高く成形性に優れるとともに高剛性なポリプロピレンが望まれるようになっている。
【0005】
このような成形性に優れるとともに高剛性なポリプロピレンを製造する方法として、例えば、特許文献1(米国特許出願公開第2020/0140584号明細書)には、ジエトキシマグネシウムと、四塩化チタンと、ジ-n-プロピルフタレートと、ベンジリデンマロン酸ジアルキル等とを反応させてなる固体触媒成分を用いたポリプロピレンの製造例が開示されており、特許文献1記載の方法によれば、メルトフローレート(MFR)が20g/10分間以上と高く、曲げ弾性率(FM)が1800MPa以上と高いポリプロピレンが得られるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願公開第2020/0140584号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来、曲げ弾性率(FM)が1800MPa以上と高いポリプロピレンを得るためには、プロピレンの重合時に多段重合処理を施す等煩雑な重合処理を施して分子量分布を広げる必要があるとされており、特許文献1においても、プロピレンを複数回供給して重合することにより、数平均分子量(Mn)に対する重量平均分子量(Mw)の比である分子量分布(Mw/Mn)を8.6~13.3、重量平均分子量(Mw)に対するZ平均分子量(Mz)の比である分子量分布(Mz/Mw)を8.6~13.7に広げ、剛性の高いポリプロピレンを製造したことが記載されている。
【0008】
このように、従来、剛性の高いポリプロピレンを得るためには、得られるポリプロピレンの分子量分布を広げる必要があり、特定の固体触媒成分を用い、煩雑な重合処理を施すことが求められていた。
一方、分子量分布の広いポリプロピレンは、ポリプロピレン溶液を押し出す際にスウェル(Swell)を生じ易いことから、例えば紡糸工程において各種グレードの繊維製品を製造し難いという技術課題が存在していた。
【0009】
このような状況下、本発明は、分子量分布が狭くても、流動性に優れるとともに剛性の高いオレフィン類重合体を煩雑な重合処理を施すことなく容易に製造し得るオレフィン類重合用固体触媒成分を提供するとともに、オレフィン類重合用触媒、オレフィン類重合体の製造方法、オレフィン類重合体、プロピレン系ブロック共重合体の製造方法及びプロピレン系ブロック共重合体を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記技術課題を解決するために本発明者等が鋭意検討したところ、マグネシウム、チタン及びハロゲンを含有するとともに、内部電子供与性化合物として芳香族カルボン酸エステル類及び1,3-ジエーテル化合物を含有するオレフィン類重合用固体触媒成分であって、前記チタンの含有割合が0.5~2.0質量%、前記内部電子供与性化合物の全含有量中に占める芳香族カルボン酸エステル類の含有割合が40~60mol%、前記内部電子供与性化合物の全含有量に占める1,3-ジエーテル化合物の含有割合が40~60mol%であるオレフィン類重合用固体触媒成分により、上記技術課題を解決しうることを見出し、本知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、
(1)マグネシウム、チタン及びハロゲンを含有するとともに、内部電子供与性化合物として芳香族カルボン酸エステル類及び1,3-ジエーテル化合物を含有するオレフィン類重合用固体触媒成分であって、
前記チタンの含有割合が0.5~2.0質量%、
前記内部電子供与性化合物の全含有量中に占める芳香族カルボン酸エステル類の含有割合が40~60mol%、
前記内部電子供与性化合物の全含有量に占める1,3-ジエーテル化合物の含有割合が40~60mol%である
ことを特徴とするオレフィン類重合用固体触媒成分、
(2)前記チタンと、前記芳香族カルボン酸エステル類及び1,3-ジエーテル化合物とを、前記芳香族カルボン酸エステル類及び1,3-ジエーテル化合物の合計含有量/前記チタンの含有量で表される比が質量比で2.0以上となるように含有する上記(1)に記載のオレフィン重合用固体触媒成分、
(3)前記チタンと、前記芳香族カルボン酸エステル類とを、前記芳香族カルボン酸エステル類の含有量/前記チタンの含有量で表される比が質量比で1.5以上となるように含有する上記(1)または(2)に記載のオレフィン重合用固体触媒成分、
(4)前記チタンと、前記1,3-ジエーテル化合物とを、前記1,3-ジエーテル化合物の含有量/前記チタンの含有量で表される比が質量比で1.5以上となるように含有する上記(1)~(3)のいずれかに記載のオレフィン重合用固体触媒成分、
(5)上記(1)~(4)の何れかに記載のオレフィン類重合用固体触媒成分と、下記一般式(I)
R1
pAlQ3-p (I)
(式中、R1は、炭素数1~6のアルキル基であり、Qは、水素原子またはハロゲン原子であり、pは、0<p≦3の実数である。)で表される化合物から選ばれる一種以上の有機アルミニウム化合物とを含むことを特徴とするオレフィン類重合用触媒、
(6)さらに有機ケイ素化合物を含む上記(5)に記載のオレフィン類重合用触媒、
(7)上記(5)または(6)に記載のオレフィン類重合用触媒を用いてオレフィン類を重合することを特徴とするオレフィン類重合体の製造方法、
(8)前記オレフィン類の重合が、プロピレン単独重合であるか、プロピレン及びプロピレン以外のα-オレフィンの共重合である上記(7)に記載のオレフィン類重合体の製造方法、
(9)溶融流れ性(MFR)が20g/10分間以上、
数平均分子量(Mn)に対する重量平均分子量(Mw)の比である分子量分布(Mw/Mn)が4.0~7.0、重量平均分子量(Mw)に対するZ平均分子量(Mz)の比である分子量分布(Mz/Mw)が2.0~7.0であり、
曲げ弾性率(FM)が1800MPa以上である
ことを特徴とするオレフィン類重合体、
(10)プロピレンを95~100質量%含むオレフィン類を上記(5)または(6)に記載のオレフィン類重合用触媒を用いて重合させ、
溶融流れ性(MFR)が20g/10分間以上、
数平均分子量(Mn)に対する重量平均分子量(Mw)の比である分子量分布(Mw/Mn)が4.0~7.0、重量平均分子量(Mw)に対するZ平均分子量(Mz)の比である分子量分布(Mz/Mw)が2.0~7.0であり、
曲げ弾性率(FM)が1800MPa以上である
プロピレン系重合体を得た後、得られたプロピレン系重合体の存在下、プロピレン及びプロピレン以外のα-オレフィンを重合させる
ことを特徴とするプロピレン系ブロック共重合体の製造方法、
(11)プロピレンを95~100質量%含むオレフィン類を上記(5)または(6)に記載のオレフィン類重合用触媒を用いて重合させ、
溶融流れ性(MFR)が20g/10分間以上、
数平均分子量(Mn)に対する重量平均分子量(Mw)の比である分子量分布(Mw/Mn)が4.0~7.0、重量平均分子量(Mw)に対するZ平均分子量(Mz)の比である分子量分布(Mz/Mw)が2.0~7.0であり、
曲げ弾性率(FM)が1800MPa以上である
プロピレン系重合体を得た後、得られたプロピレン系重合体の存在下、プロピレン及びプロピレン以外のα-オレフィンを重合させて得られる
ことを特徴とするプロピレン系ブロック共重合体、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、マグネシウム及びハロゲンを含むとともに、チタン、芳香族カルボン酸エステル類及び1,3-ジエーテル化合物を各々所定量含むことにより、分子量分布が狭くても、流動性に優れるとともに剛性の高いオレフィン類重合体を煩雑な重合処理を施すことなく容易に製造し得るオレフィン類重合用固体触媒成分を提供することができるとともに、オレフィン類重合用触媒、オレフィン類重合体の製造方法、オレフィン類重合体、プロピレン系ブロック共重合体の製造方法及びプロピレン系ブロック共重合体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<オレフィン類重合用固体触媒成分>
先ず、本発明に係るオレフィン類重合用固体触媒成分について説明する。
本発明に係るオレフィン類重合用固体触媒成分は、
マグネシウム、チタン及びハロゲンを含有するとともに、内部電子供与性化合物として芳香族カルボン酸エステル類及び1,3-ジエーテル化合物を含有するオレフィン類重合用固体触媒成分であって、
前記チタンの含有割合が0.5~2.0質量%、
前記内部電子供与性化合物の全含有量中に占める芳香族カルボン酸エステル類の含有割合が40~60mol%、
前記内部電子供与性化合物の全含有量に占める1,3-ジエーテル化合物の含有割合が40~60mol%である
ことを特徴とするものである。
【0014】
本発明に係るオレフィン類重合用固体触媒成分は、マグネシウム、チタン及びハロゲンを含有するとともに、内部電子供与性化合物として芳香族カルボン酸エステル類及び1,3-ジエーテル化合物を含有するものである。
【0015】
本発明に係るオレフィン類重合用固体触媒成分としては、マグネシウム、チタン及びハロゲンの供給源となる原料成分と内部電子供与性化合物である芳香族カルボン酸エステル類及び1,3-ジエーテル化合物とを有機溶媒中で相互に接触させ、反応させてなる接触反応物を挙げることができ、具体的には、マグネシウム、チタン及びハロゲンの供給源となる原料成分として、マグネシウム化合物及び四価のチタンハロゲン化合物を用い、これ等の原料と芳香族カルボン酸エステル類及び1,3-ジエーテル化合物を含む内部電子供与性化合物とを相互に接触させてなる接触反応物を挙げることができる。
【0016】
上記マグネシウム化合物としては、ジアルコキシマグネシウム、ジハロゲン化マグネシウム及びアルコキシマグネシウムハライド等から選ばれる一種以上を挙げることができる。
上記マグネシウム化合物の内、ジアルコキシマグネシウムまたはマグネシウムジハライドが好ましく、具体的には、ジメトキシマグネシウム、ジエトキシマグネシウム、ジプロポキシマグネシウム、ジブトキシマグネシウム、エトキシメトキシマグネシウム、エトキシプロポキシマグネシウム、ブトキシエトキシマグネシウム、マグネシウムジクロライド、マグネシウムジブロマイド、マグネシウムジイオダイド等が挙げられ、ジエトキシマグネシウム及びマグネシウムジクロライドが特に好ましい。
【0017】
上記マグネシウム化合物のうち、ジアルコキシマグネシウムは、金属マグネシウムを、ハロゲンあるいはハロゲン含有金属化合物等の存在下に、アルコールと反応させて得たものでもよい。
【0018】
上記ジアルコキシマグネシウムは、顆粒状または粉末状であるものが好ましく、その形状は不定形状あるいは球状のものを使用し得る。
【0019】
ジアルコキシマグネシウムとして球状のものを使用した場合、より良好な粒子形状を有し(より球状で)狭い粒度分布を有する重合体粉末が得られ、重合操作時に生成した重合体粉末の取扱い操作性が向上し、生成した重合体粉末に含まれる微粉に起因する閉塞等の発生を抑制することができる。
【0020】
上記球状のジアルコキシマグネシウムは、必ずしも真球状である必要はなく、楕円形状あるいは馬鈴薯形状のものを用いることもできる。
【0021】
また、上記ジアルコキシマグネシウムの平均粒子径(平均粒子径D50)は、1.0~200.0μmであることが好ましく、5.0~150.0μmであることがより好ましい。ここで、平均粒子径D50は、レーザー光散乱回折法粒度測定機を用いて測定したときの、体積積算粒度分布における積算粒度で50%の粒径を意味するものである。
ジアルコキシマグネシウムが球状である場合、上記平均粒子径D50は1.0~100.0μmであることが好ましく、5.0~80.0μmであることがより好ましく、10.0~70.0μmであることがさらに好ましい。
【0022】
また、ジアルコキシマグネシウムの粒度分布については、微粉及び粗粉の少ない、粒度分布の狭いものであることが好ましい。
具体的には、ジアルコキシマグネシウムは、レーザー光散乱回折法粒度測定機を用いて測定したときに、粒子径5.0μm以下の粒子が20%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましい。一方、レーザー光散乱回折法粒度測定機を用いて測定したときに、粒子径100.0μm以上の粒子が20%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましい。
更にその粒度分布をln(D90/D10)で表すと3以下であることが好ましく、2以下であることがより好ましい。ここで、D90は、レーザー光散乱回折法粒度測定機を用いて測定したときの、体積積算粒度分布における積算粒度で90%の粒径を意味するものである。また、D10は、レーザー光散乱回折法粒度測定機を用いて測定したときの、体積積算粒度分布における積算粒度で10%の粒径を意味するものである。
【0023】
上記球状のジアルコキシマグネシウムの製造方法は、例えば特開昭58-41832号公報、特開昭62-51633号公報、特開平3-74341号公報、特開平4-368391号公報、特開平8-73388号公報等に例示されている。
【0024】
本発明に係るオレフィン類重合用固体触媒成分において、マグネシウムの供給源となる原料成分であるマグネシウム化合物としては、比表面積が、5m2/g以上であるものが好ましく、5~50m2/gであるものがより好ましく、10~40m2/gであるものがさらに好ましい。
マグネシム化合物として比表面積が上記範囲内にあるものを使用することにより、所望の比表面積を有するオレフィン類重合用固体触媒成分を容易に調製することができる。
【0025】
なお、本出願書類において、マグネシウム化合物の比表面積は、BET法により測定した値を意味し、具体的には、マグネシウム化合物の比表面積は、予め測定試料を50℃で2時間真空乾燥した上で、Mountech社製Automatic Surface Area Analyzer HM model-1230を用い、窒素とヘリウムとの混合ガスの存在下において、BET法(自動測定)により測定した値を意味する。
【0026】
上記マグネシウム化合物は、反応時に溶液状または懸濁液状であることが好ましく、溶液状または懸濁液状であることにより、反応を好適に進行させることができる。
【0027】
上記マグネシウム化合物が固体である場合には、マグネシウム化合物の可溶化能を有する溶媒に溶解することにより溶液状のマグネシウム化合物とすることができ、またはマグネシウム化合物の可溶化能を有さない溶媒に懸濁することによりマグネシウム化合物懸濁液とすることができる。
なお、マグネシウム化合物が液体である場合には、そのまま溶液状のマグネシウム化合物として用いてもよいし、マグネシウム化合物の可溶化能を有する溶媒にさらに溶解して溶液状のマグネシウム化合物として用いてもよい。
【0028】
固体のマグネシウム化合物を可溶化しうる化合物としては、アルコール、エーテル及びエステルからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物が挙げられ、エタノール、プロパノール、ブタノール、2-エチルヘキサノールなどのアルコールが好ましく、2-エチルヘキサノールが特に好ましい。
一方、固体状のマグネシウム化合物に対して可溶化能を有さない媒体としては、マグネシウム化合物を溶解することがない、飽和炭化水素溶媒または不飽和炭化水素溶媒から選ばれる一種以上が挙げられる。
【0029】
本発明に係るオレフィン類重合用固体触媒成分において、チタン及びハロゲンの供給源となる原料成分である四価のチタンハロゲン化合物としては、特に制限されないが、下記一般式(II)
Ti(OR2)rX4-r (II)
(式中、R2は、炭素数1~4のアルキル基を示し、Xは、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子を示し、rは、0≦r≦3の整数である。)で表されるチタンハライドまたはアルコキシチタンハライド群から選択される化合物の一種以上であることが好適である。
【0030】
上記一般式(II)で表されるチタンハライドとしては、チタンテトラクロライド、チタンテトラブロマイド、チタンテトラアイオダイド等から選ばれる一種以上のチタンテトラハライドが挙げられる。
また、上記一般式(II)で表されるアルコキシチタンハライドとしては、メトキシチタントリクロライド、エトキシチタントリクロライド、プロポキシチタントリクロライド、n-ブトキシチタントリクロライド、ジメトキシチタンジクロライド、ジエトキシチタンジクロライド、ジプロポキシチタンジクロライド、ジ-n-ブトキシチタンジクロライド、トリメトキシチタンクロライド、トリエトキシチタンクロライド、トリプロポキシチタンクロライド、トリ-n-ブトキシチタンクロライド等から選ばれる一種以上が挙げられる。
四価のチタンハロゲン化合物としては、チタンテトラハライドが好ましく、チタンテトラクロライドがより好ましい。
これらのチタン化合物は単独で用いられてもよいし、2種以上併用することもできる。
【0031】
本発明に係るオレフィン類重合用固体触媒成分は、内部電子供与性化合物として、芳香族カルボン酸エステル類を含有する。
【0032】
芳香族カルボン酸エステル類としては、芳香族ポリカルボン酸エステル類であることが好ましい。
芳香族ポリカルボン酸エステル類としては、芳香族ジカルボン酸ジエステルを挙げることができる。
【0033】
芳香族ジカルボン酸ジエステルとして、具体例には、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジ-n-プロピル、フタル酸ジイソプロピル、フタル酸ジ-n-ブチル、フタル酸ジイソブチル、フタル酸ジ-n-ペンチル、フタル酸ジイソペンチル、フタル酸ジネオペンチル、フタル酸ジ-n-ヘキシル、フタル酸ジテキシル、フタル酸メチルエチル、フタル酸(エチル)n-プロピル、フタル酸エチルイソプロピル、フタル酸(エチル)n-ブチル、フタル酸エチルイソブチル、フタル酸(エチル)n-ペンチル、フタル酸エチルイソペンチル、フタル酸エチルネオペンチル、フタル酸(エチル)n-ヘキシル等のフタル酸ジエステル、4-クロロフタル酸ジエチル、4-クロロフタル酸ジ-n-プロピル、4-クロロフタル酸ジイソプロピル、4-クロロフタル酸ジ-n-ブチル、4-クロロフタル酸ジイソブチル、4-ブロモフタル酸ジエチル、4-ブロモフタル酸ジ-n-プロピル、4-ブロモフタル酸ジイソプロピル、4-ブロモフタル酸ジ-n-ブチル、4-ブロモフタル酸ジイソブチル等のハロゲン置換フタル酸ジエステル、4-メチルフタル酸ジエチル、4-メチルフタル酸ジ-n-プロピル、4-メチルフタル酸ジイソプロピル、4-メチルフタル酸ジ-n-ブチル、4-メチルフタル酸ジイソブチル等のアルキル置換フタル酸ジエステル等が挙げられる。
【0034】
上記芳香族ジカルボン酸ジエステルの中でも、フタル酸ジエチル、フタル酸ジ-n-プロピル、フタル酸ジ-n-ブチル、フタル酸ジイソブチル、フタル酸ジ-n-ペンチル、フタル酸ジイソペンチル、フタル酸ジネオペンチル、フタル酸ジ-n-ヘキシル、フタル酸(エチル)n-プロピル、フタル酸エチルイソプロピル、フタル酸(エチル)n-ブチル、フタル酸エチルイソブチル、4-メチルフタル酸ジエチル、4-メチルフタル酸ジ-n-プロピル、4-メチルフタル酸ジイソブチル、4-ブロモフタル酸ジイソブチル、4-ブロモフタル酸ジイソペンチルおよび4-ブロモフタル酸ジネオペンチル等が好ましく、フタル酸ジエチル、フタル酸ジ-n-プロピル、フタル酸ジ-n-ブチル、フタル酸ジイソブチル、フタル酸(エチル)n-プロピル、フタル酸エチルイソプロピル、フタル酸(エチル)n-ブチル、フタル酸エチルイソブチル、4-メチルフタル酸ジエチル、4-メチルフタル酸ジ-n-プロピル、4-メチルフタル酸ジイソブチル、4-ブロモフタル酸ジイソブチル、4-ブロモフタル酸ジイソペンチルおよび4-ブロモフタル酸ジネオペンチルがより好ましい。
これらの芳香族ジカルボン酸ジエステルは単独で用いられてもよいし、2種以上併用することもできる。
【0035】
本発明に係るオレフィン類重合用固体触媒成分は、内部電子供与性化合物として、1,3-ジエーテル化合物を含有する。
【0036】
本出願書類において、1,3-ジエーテル化合物とは、プロパンを基本骨格とし、その1,3位にエーテル基が結合した構造(1,3-ジアルコキシプロパン構造)を有し、さらに所望の置換基を含んでよい化合物群を意味する。
【0037】
1,3-ジエーテル化合物としては、下記一般式(III);
R3OCH2CR4R5CH2OR6 (III)
(式中、R4及びR5は、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~12のアルキル基、ビニル基、炭素数3~12のアルケニル基、炭素数3~12のシクロアルキル基もしくはシクロアルケニル基、炭素数6~12の芳香族炭化水素基もしくはハロゲン置換芳香族炭化水素基、置換基を有する炭素数7~12の芳香族炭化水素基、炭素数1~12のアルキルアミノ基または炭素数2~12のジアルキルアミノ基を示す。R4及びR5は、互いに同一であってもよいし異なっていてもよい。R4及びR5は、互いに結合して環を形成してもよい。R3及びR6は、炭素数1~12のアルキル基、ビニル基、炭素数3~12のアルケニル基、炭素数3~6のシクロアルキル基、炭素数6~12の芳香族炭化水素基もしくはハロゲン置換芳香族炭化水素基または置換基を有する炭素数7~12の芳香族炭化水素基を示す。R3及びR6は、互いに同一であってもよいし異なっていてもよい。)で表される化合物から選ばれる一種以上を挙げることができる。
【0038】
具体的には、2-イソプロピル-2-イソブチル-1,3-ジメトキシプロパン、2,2-ジイソブチル-1,3-ジメトキシプロパン、2-イソプロピル-2-イソペンチル-1,3-ジメトキシプロパン、2,2-ジシクロヘキシル-1,3-ジメトキシプロパン、2,2-ビス(シクロヘキシルメチル)1,3-ジメトキシプロパン及び9,9-ビス(メトキシメチル)フルオレン等から選ばれる一種以上が挙げられ、中でも、2-イソプロピル-2-イソブチル-1,3-ジメトキシプロパン、2-イソプロピル-2-イソペンチル-1,3-ジメトキシプロパン及び9,9-ビス(メトキシメチル)フルオレンから選ばれる一種以上が好ましい。
【0039】
本発明に係るオレフィン類重合用固体触媒成分は、内部電子供与性化合物として、芳香族カルボン酸エステル類及び1,3-ジエーテル化合物とともに、本発明の効果を奏する限度においてその他の内部電子供与性化合物(以下、「他の内部電子供与性化合物」と称する)を用いてなるものであってもよい。
他の内部電子供与性化合物としては、特に制限されないが、芳香族カルボン酸エステル類及び1,3-ジエーテル化合物以外の有機化合物であって、酸素原子あるいは窒素原子を含有する有機化合物であることが好ましく、例えば、アルコール類、フェノール類、エーテル類、エステル類、ケトン類、酸ハライド類、アルデヒト類、アミン類、アミド類、ニトリル類、イソシアネート類、Si-O-C結合またはSi-N-C結合を含む有機ケイ素化合物等から選ばれる一種以上を挙げることができる。
【0040】
他の内部電子供与性化合物としては、モノエーテル類、ジエーテル類、エーテルカーボネート類等のエーテル化合物や、モノカルボン酸エステル類、ポリカルボン酸エステル類などのエステル類から選ばれる一種以上がより好ましく、脂肪族ポリカルボン酸エステル類、脂環式ポリカルボン酸エステル類、ジエーテル類及びエーテルカーボネート類から選ばれる一種以上がさらに好ましい。
【0041】
他の内部電子供与性化合物としては、特に、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル、ジメチルマレイン酸ジブチル、ジエチルマレイン酸ジブチル、ジイソブチルマレイン酸ジエチル、コハク酸ジエチル、メチルコハク酸ジエチル、2,3-ジイソプロピルコハク酸ジエチル、マロン酸ジ-n-ブチル、マロン酸ジエチル、ジイソブチルマロン酸ジメチル、ジイソブチルマロン酸ジエチル、ベンジリデンマロン酸ジメチル、ベンジリデンマロン酸ジエチル及びベンジリデンマロン酸ジブチル等の脂肪族ポリカルボン酸エステル;シクロヘキサンジカルボン酸ジエチル、シクロヘキサンジカルボン酸ジ-n-プロピル、シクロヘキサンジカルボン酸ジブチル、シクロヘキサンジカルボン酸ジイソブチル、1-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸ジエチル、1-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸ジ-n-プロピル、1-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸ジブチル、1-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸ジイソブチル、4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸ジエチル、4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸ジ-n-プロピル、4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸ジブチル、4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸ジイソブチル等の脂環式ポリカルボン酸エステル;(2-エトキシエチル)エチルカーボネート、(2-エトキシエチル)フェニルカーボネート等のエーテルカーボネート類から選ばれる一種以上が好ましい。
【0042】
本発明に係るオレフィン類重合用固体触媒成分において、マグネシウム(マグネシウム原子)の含有割合は、10~30質量%が好ましく、15~25質量%がより好ましく、16~22質量%がさらに好ましい。
【0043】
本発明に係るオレフィン類重合用固体触媒成分において、チタン(チタン原子)の含有割合は、0.5~2.0質量%であり、0.7~1.8質量%が好ましく、0.9~1.8質量%がさらに好ましい。
本発明に係るオレフィン類重合用固体触媒成分においては、チタンの含有割合が上記範囲内にあることにより、後述するように、内部電子供与性化合物の全含有量中に占める芳香族カルボン酸エステル類の含有割合及び1,3-ジエーテル化合物の含有割合が各々所定範囲内にあることとあわせ、オレフィン類の重合に供したときに、分子量分布が狭くても、流動性に優れるとともに剛性の高いオレフィン類重合体を煩雑な重合処理を施すことなく容易に製造することができる。
【0044】
本発明に係るオレフィン類重合用固体触媒成分中において、ハロゲン(ハロゲン原子)の含有割合は、50~75質量%が好ましく、55~70質量%がより好ましく、58~65質量%がさらに好ましい。
【0045】
本出願書類において、オレフィン類重合用固体触媒成分中のマグネシウムの含有割合は、固体触媒成分を塩酸溶液で溶解し、EDTA溶液で滴定するEDTA滴定方法により測定した値を意味するものとする。
本出願書類において、オレフィン類重合用固体触媒成分中のチタンの含有割合は、JIS 8311-1997「チタン鉱石中のチタン定量方法」に記載の方法(酸化還元滴定)に準じて測定した値を意味するものとする。
本出願書類において、オレフィン類重合用固体触媒成分中のハロゲンの含有量は、固体触媒成分を硫酸と純水の混合溶液で処理して水溶液とした後、所定量を分取し、硝酸銀標準溶液でハロゲン原子を滴定する硝酸銀滴定法により測定した値を意味するものとする。
【0046】
本発明に係るオレフィン類重合用固体触媒成分において、芳香族カルボン酸エステル類の含有割合は、3~25質量%であることが好ましく、5~23質量%であることがより好ましく、7~20質量%であることがさらに好ましい。
【0047】
本発明に係るオレフィン類重合用固体触媒成分において、1,3-ジエーテル化合物の含有割合は、1~25質量%であることが好ましく、3~20質量%であることがより好ましく、5~18質量%であることがさらに好ましい。
【0048】
本発明に係るオレフィン類重合用固体触媒成分が他の内部電子供与性化合物を含む場合、本発明に係るオレフィン類重合用固体触媒成分中における他の内部電子供与性化合物の含有割合は、0.0~10.0質量%であってもよい。
【0049】
本発明に係るオレフィン類重合用固体触媒成分において、内部電子供与性化合物の全含有量中に占める芳香族カルボン酸エステル類の含有割合は、40~60mol%であり、42~58mol%であることが好ましく、44~56mol%であることがより好ましい。
【0050】
本発明に係るオレフィン類重合用固体触媒成分において、内部電子供与性化合物の全含有量中に占める1,3-ジエーテル化合物の含有割合は、40~60mol%であり、42~58mol%であることが好ましく、44~56mol%であることがより好ましい。
【0051】
本発明に係るオレフィン類重合用固体触媒成分において、内部電子供与性化合物の全含有量中に占める芳香族カルボン酸エステル類及び1,3-ジエーテルの含有割合が各々上記範囲内にあることにより、上述したチタンの含有割合が上記範囲内にあることとあわせ、オレフィン類の重合に供したときに分子量分布が狭くても、流動性に優れるとともに剛性の高いオレフィン類重合体を煩雑な重合処理を施すことなく容易に製造することができる。
【0052】
本発明に係るオレフィン類重合用固体触媒成分は、チタンと、芳香族カルボン酸エステル類及び1,3-ジエーテル化合物とを、芳香族カルボン酸エステル類及び1,3-ジエーテル化合物の合計含有量/チタンの含有量で表される比が、質量比で2.0以上となるように含有することが好ましく、質量比で3.0~20.0となるように含有することがより好ましく、質量比で4.0~15.0となるように含有することがさらに好ましい。
【0053】
本発明に係るオレフィン類重合用固体触媒成分において、芳香族カルボン酸エステル類及び1,3-ジエーテル化合物の合計含有量/チタンの含有量で表される質量比が2.0以上であることにより、オレフィン類の重合に供したときに、分子量分布が狭くても、流動性に優れるとともに剛性の高いオレフィン類重合体を煩雑な重合処理を施すことなく一層容易に製造することができる。
【0054】
本発明に係るオレフィン類重合用固体触媒成分は、チタンと、芳香族カルボン酸エステル類とを、芳香族カルボン酸エステル類の含有量/チタンの含有量で表される比が質量比で1.5以上となるように含有することが好ましく、質量比で3.0~20.0となるように含有することがより好ましく、質量比で4.0~15.0となるように含有することがさらに好ましい。
【0055】
本発明に係るオレフィン類重合用固体触媒成分は、チタンと、1,3-ジエーテル化合物とを、1,3-ジエーテル化合物の含有量/チタンの含有量で表される比が質量比で1.5以上となるように含有することが好ましく、質量比で3.0~20.0となるように含有することがより好ましく、質量比で4.0~15.0となるように含有することがさらに好ましい。
【0056】
本発明に係るオレフィン類重合用固体触媒成分において、芳香族カルボン酸エステル類の含有量/チタンの含有量で表される質量比が1.5以上であったり、1,3-ジエーテル化合物の含有量/チタンの含有量で表される比が1.5以上であることにより、オレフィン類の重合に供したときに、分子量分布が狭くても、流動性に優れるとともに剛性の高いオレフィン類重合体を煩雑な重合処理を施すことなくより一層容易に製造することができる。
【0057】
本出願書類において、オレフィン類重合用固体触媒成分中の芳香族カルボン酸エステル類、1,3-ジエーテル化合物及び他の内部電子供与性化合物の各含有量は、ガスクロマトグラフィーにより標準溶液を用いて予め作成した検量線により各々測定される値を意味する。
具体的には、芳香族カルボン酸エステル類、1,3-ジエーテル化合物及び他の内部電子供与性化合物の各含有量は、ガスクロマトグラフィー((株)島津製作所製、GC-14B)を用いて下記の条件で測定したときに、測定する化合物の標準溶液に基づいて測定した検量線を用いて求めた値を意味する。
<測定条件>
カラム:パックドカラム(φ2.6×2.1m, Silicone SE-30 10%,Chromosorb WAWDMCS 80/100、ジーエルサイエンス(株)社製)
検出器:FID(Flame IonizationDetector,水素炎イオン化型検出器)
キャリアガス:ヘリウム、流量40ml/分
測定温度:気化室280℃、カラム225℃、検出器280℃、または気化室265℃、カラム180℃、検出器265℃
【0058】
本発明に係るオレフィン類重合用固体触媒成分の平均粒子径(平均粒子径D50)は、特に限定されないが5.0~100.0μmであることが好ましく、10.0~80.0μmであることがより好ましく、15.0~70.0μmであることがさらに好ましい。ここで、平均粒子径D50は、レーザー光散乱回折法粒度測定機を用いて測定したときの、体積積算粒度分布における積算粒度で50%の粒径を意味するものである。
【0059】
次に、本発明に係るオレフィン類重合用固体触媒成分を製造する方法について説明する。
本発明に係るオレフィン類重合用固体触媒成分は、例えば、マグネシウム化合物と、四価のチタンハロゲン化合物と、内部電子供与性化合物として芳香族カルボン酸エステル類及び1,3-ジエーテル化合物とを、上記チタンの含有割合が0.5~2.0質量%、上記内部電子供与性化合物の全含有量中に占める芳香族カルボン酸エステル類の含有割合が40~60mol%、上記内部電子供与性化合物の全含有量に占める1,3-ジエーテル化合物の含有割合が40~60mol%となるように相互に接触して反応させることにより製造することができる。
【0060】
上記マグネシウム化合物、四価のチタンハロゲン化合物、芳香族カルボン酸エステル類及び1,3-ジエーテル化合物の詳細は上述したとおりである。
本発明に係るオレフィン類重合用固体触媒成分を製造する方法においては、内部電子供与性化合物として、芳香族カルボン酸エステル類及び1,3-ジエーテル化合物とともに、必要に応じ、上述した他の内部電子供与性化合物を用いてもよい。
他の内部電子供与性化合物の詳細は上述したとおりである。また、他の内部電子供与性化合物の使用量も、上記他の内部電子供与性化合物の含有量を満たすように適宜配合することが好ましい。
【0061】
上記マグネシウム化合物、四価のチタンハロゲン化合物、芳香族カルボン酸エステル類及び1、3-ジエーテル化合物と、必要に応じ他の内部電子供与性化合物を相互に接触させる際は、第三成分であるポリシロキサンの存在下に行ってもよい。
【0062】
ポリシロキサンとは、主鎖にシロキサン結合(-Si-O-結合)を有する重合体であるが、シリコーンオイルとも総称され、25℃における粘度が0.02~100.00cm2/s(2~10000センチストークス)、より好ましくは0.03~5.00cm2/s(3~500センチストークス)を有する、常温で液状あるいは粘稠状の鎖状、部分水素化、環状あるいは変性ポリシロキサンを意味する。
【0063】
鎖状ポリシロキサンとしては、ジシロキサンとしてヘキサメチルジシロキサン、ヘキサエチルジシロキサン、ヘキサプロピルジシロキサン、ヘキサフェニルジシロキサン1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサン、1、3-ジクロロテトラメチルジシロキサン、1、3-ジブロモテトラメチルジシロキサン、クロロメチルペンタメチルジシロキサン、1,3-ビス(クロロメチル)テトラメチルジシロキサン等が例示され、ジシロキサン以外のポリシロキサンとしては、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等が例示され、部分水素化ポリシロキサンとしては、水素化率10~80%のメチルハイドロジェンポリシロキサン等が例示され、環状ポリシロキサンとしては、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、2,4,6-トリメチルシクロトリシロキサン、2,4,6,8-テトラメチルシクロテトラシロキサン等が例示され、変性ポリシロキサンとしては、高級脂肪酸基置換ジメチルシロキサン、エポキシ基置換ジメチルシロキサン、ポリオキシアルキレン基置換ジメチルシロキサン等が例示される。これらの中では、デカメチルシクロペンタシロキサン、及びジメチルポリシロキサンが好ましく、デカメチルシクロペンタシロキサンが特に好ましい。
【0064】
マグネシウム化合物、四価のチタンハロゲン化合物、芳香族カルボン酸エステル類及び1,3-ジエーテル化合物を相互に接触させる処理(接触処理)は有機溶媒中で行われることが好ましい。また、当該有機溶媒としては、不活性有機溶媒が好ましい。
【0065】
上記不活性有機溶媒としては、常温(20℃)下において液体で、かつ沸点50~150℃であるものが好ましく、常温下において液体で、かつ沸点50~150℃である芳香族炭化水素化合物または飽和炭化水素化合物がより好ましい。
【0066】
上記不活性有機溶媒として、具体的には、ヘキサン、ヘプタン、デカン等の直鎖脂肪族炭化水素化合物、メチルヘプタン等の分岐状脂肪族炭化水素化合物、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素化合物、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素化合物等から選ばれる一種以上が挙げられる。
上記不活性有機溶媒のうち、常温下において液体で、沸点が50~150℃である芳香族炭化水素化合物が、得られる固体触媒成分の活性を向上させ、得られる重合体の立体規則性を向上させることができるため、好適である。
【0067】
上記各成分を接触させ、反応させる際の温度は、0~130℃が好ましく、40~130℃がより好ましく、30~120℃がさらに好ましく、80~120℃が一層好ましい。また、反応時間は、1分間以上が好ましく、10分間以上がより好ましく、30分間~6時間がさらに好ましく、30分間~5時間が一層好ましく、1~4時間がより一層好ましい。
【0068】
上記反応に先だって低温熟成を施してもよい。ここで、低温熟成とは、上記反応時の温度よりも低温で各成分を相互に接触させる予備反応を意味する。
【0069】
低温熟成時の温度は、-20~70℃が好ましく、-10~60℃がより好ましく、-10~30℃がさらに好ましい。また、低温熟成時間は、1分間~6時間が好ましく、5分間~4時間がより好ましく、30分間~3時間がさらに好ましい。
【0070】
マグネシウム、チタン及びハロゲンの供給源となる原料成分としてマグネシウム化合物及び四価のチタンハロゲン化合物を用い、これ等を1,3-ジエーテル化合物を含む内部電子供与性化合物類と、不活性有機溶媒を用いて相互に接触させる場合、各成分の使用量は、得ようとするオレフィン類重合用固体触媒成分を構成する各成分の含有割合に応じて適宜決定すればよい。
【0071】
上記各成分の接触処理においては、不活性ガス雰囲気下、水分等を除去した状況下で、撹拌機を具備した容器中で、撹拌しながら反応を行うことが好ましい。
上記接触処理における反応終了後、得られた反応液は、静置し、適宜、上澄み液を除去してウェット状(スラリー状)とすることにより固体触媒成分を得ることができる。さらに、ウェット状の反応液を、熱風乾燥等により乾燥することにより固体触媒成分を得ることもできる。
【0072】
上記反応液は、洗浄処理を施してもよく、当該洗浄処理は、通常洗浄液を用いて行われる。
洗浄液としては、上記不活性有機溶媒と同様のものを挙げることができ、ヘキサン、ヘプタン、デカン等の常温下で液体、かつ、沸点が50~150℃の直鎖脂肪族炭化水素化合物や、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の常温下で液体、かつ、沸点が50~150℃の環式脂肪族炭化水素化合物、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、オルトジクロロベンゼン等の常温下で液体、かつ、沸点が50~150℃の芳香族炭化水素化合物等から選ばれる一種以上が好ましい。
上記洗浄液を使用することにより、反応液中から、副生成物や不純物を容易に溶解し、除去して洗浄後反応液を得ることができる。さらに、洗浄後反応液を、熱風乾燥等により乾燥することにより固体触媒成分を得ることもできる。
【0073】
上記洗浄処理は、0~120℃の温度下で行うことが好ましく、0~110℃の温度下で行うことがより好ましく、30~110℃の温度下で行うことがさらに好ましく、50~110℃の温度下で行うことが一層好ましく、50~100℃の温度下で行うことがより一層好ましい。
【0074】
洗浄処理は、反応液に対して所望量の洗浄液を加えて攪拌した後、フィルトレーション法(濾過法)もしくはデカンテーション法により、液相を除去することにより行うことが好ましい。
また、洗浄回数は複数回(2回以上)であってもよい。
【0075】
上記各成分を相互に接触させた後、洗浄処理することにより、洗浄後反応液中に残留する未反応原料成分や反応副生成物(アルコキシチタンハライドや四塩化チタン-カルボン酸錯体等)の不純物を除去することができる。
【0076】
上記接触処理後や洗浄処理後に適宜後処理を施してもよい。
上記後処理を施す場合、例えば、上記反応終了後に得られた反応液や、上記洗浄処理後に得られた洗浄後反応液に対し、四価のチタンハロゲン化合物をさらに接触させる態様や、四価のチタンハロゲン化合物をさらに接触させた後に洗浄する態様を挙げることができる。上記後処理後における洗浄は、上述した反応液の洗浄と同様に行うことができる。
【0077】
上記後処理後に得られた反応生成物や、該後処理後の洗浄により得られた反応生成物は、通常、懸濁液状であり、当該懸濁液状の各反応生成物は、静置し、上澄み液を除去してウェット状(スラリー状)にして固体触媒成分を得ることができる。さらに該ウェット状の固体触媒成分を、熱風乾燥等により乾燥することにより固体触媒成分を得ることができる。
【0078】
本発明によれば、マグネシウム及びハロゲンを含むとともに、チタン、芳香族カルボン酸エステル類及び1,3-ジエーテル化合物を各々所定量含むことにより、分子量分布が狭くても、流動性に優れるとともに剛性の高いオレフィン類重合体を煩雑な重合処理を施すことなく容易に製造し得るオレフィン類重合用固体触媒成分を提供することができる。
【0079】
<オレフィン類重合用触媒及びその製造方法>
次に、本発明に係るオレフィン類重合用触媒について説明する。
本発明に係るオレフィン類重合用触媒は、本発明に係るオレフィン類重合用固体触媒成分と、下記一般式(I)
R1
pAlQ3-p (I)
(式中、R1は、炭素数1~6のアルキル基であり、Qは、水素原子またはハロゲン原子であり、pは、0<p≦3の実数である。)で表される化合物から選ばれる一種以上の有機アルミニウム化合物とを含むことを特徴とするものである。
【0080】
本発明に係るオレフィン類重合用触媒に含まれるオレフィン類重合用固体触媒成分の詳細は、本発明に係るオレフィン類重合用固体触媒成分の説明で述べたとおりである。
【0081】
本発明に係るオレフィン類重合用触媒は、上記特定のオレフィン類重合用固体触媒成分と一般式(I)で表される化合物から選ばれる一種以上の有機アルミニウム化合物とを含むものである。
【0082】
一般式(I)で表わされる有機アルミニウム化合物において、R1は、炭素数1~6のアルキル基であり、具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基等を挙げることができる。
【0083】
上記一般式(I)で表わされる有機アルミニウム化合物において、Qは、水素原子またはハロゲン原子を示し、Qがハロゲン原子である場合、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子を挙げることができる。
【0084】
上記一般式(I)で表わされる有機アルミニウム化合物として、具体的には、トリエチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロライド、トリイソブチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムブロマイド、ジエチルアルミニウムハイドライドから選ばれる一種以上を挙げることができ、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムが好適である。
【0085】
本発明に係るオレフィン類重合用触媒は、オレフィン類重合用固体触媒成分を構成するチタン原子1モルあたり、一般式(I)で表される有機アルミニウム化合物を、1~2000モル含むことが好ましく、50~1000モル含むことがより好ましい。
【0086】
本発明に係るオレフィン類重合用触媒は、さらに有機ケイ素化合物を含むものであってもよい。
【0087】
本発明に係るオレフィン類重合用触媒を構成する有機ケイ素化合物は、外部電子供与性化合物として機能するものであり、例えば、下記一般式(IV)
R7
rSi(NR8R9)s(OR10)4-(t+s) (IV)
(式中、tは0または1~2の整数、sは0または1~2の整数、t+sは0または1~4の整数、R7、R8又はR9は水素原子または炭素数1~12の直鎖状または分岐状アルキル基、置換又は未置換のシクロアルキル基、フェニル基、アリル基及びアラルキル基から選ばれるいずれかの基であって、ヘテロ原子を含有していてもよく、互いに同一であっても異なっていてもよい。R8とR9は結合して環形状を形成していてもよく、R7、R8及びR9は、同一であっても異なっていてもよい。また、R10は炭素数1~4のアルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、ビニル基、アリル基及びアラルキル基から選ばれるいずれかの基であって、ヘテロ原子を含有してもよい。)で表される化合物から選ばれる一種以上が挙げられる。
【0088】
一般式(IV)で表される化合物において、R7は、水素原子または炭素数1~12の直鎖状または分岐鎖状アルキル基、置換又は未置換のシクロアルキル基、フェニル基、アリル基及びアラルキル基から選ばれるいずれかの基であって、ヘテロ原子を含有していてもよい。
R7としては、炭素数1~10の直鎖状又は分岐状のアルキル基または炭素数5~8のシクロアルキル基が好ましく、特に炭素数1~8の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基、炭素数5~8のシクロアルキル基が好ましい。
【0089】
一般式(IV)で表される化合物において、R8またはR9は、水素原子または炭素数1~12の直鎖状または分岐鎖状アルキル基、置換又は未置換のシクロアルキル基、フェニル基、アリル基及びアラルキル基から選ばれるいずれかの基であって、ヘテロ原子を含有していてもよい。
R8またはR9としては、炭素数1~10の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基、炭素数5~8のシクロアルキル基が好ましく、特に炭素数1~8の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基、炭素数5~8のシクロアルキル基が好ましい。
また、R8とR9が結合して環形状を形成していてもよく、この場合、環形状を形成する(NR8R9)は、パーヒドロキノリノ基、パーヒドロイソキノリノ基が好ましい。
【0090】
一般式(IV)で表される化合物において、R7、R8及びR9は、同一であっても異なっていてもよい。
【0091】
一般式(IV)で表される化合物において、R10は、炭素数1~4のアルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、アリル基及びアラルキル基から選ばれるいずれかの基であって、ヘテロ原子を含有してもよい。
R10としては、炭素数1~4の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が好ましい。
【0092】
このような一般式(IV)で表される化合物として、具体的には、フェニルアルコキシシラン、アルキルアルコキシシラン、フェニルアルキルアルコキシシラン、シクロアルキルアルコキシシラン、シクロアルキルアルキルアルコキシシラン、(アルキルアミノ)アルコキシシラン、アルキル(アルキルアミノ)アルコキシシラン、アルキル(アルキルアミノ)シラン、アルキルアミノシラン等から選ばれる一種以上の有機ケイ素化合物を挙げることができる。
【0093】
一般式(IV)におけるsが0の化合物として、特に好ましくは、ジ-n-プロピルジメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、ジ-n-ブチルジメトキシシラン、ジイソブチルジメトキシシラン、ジ-t-ブチルジメトキシシラン、t-ブチルメチルジメトキシシラン、t-ブチルエチルジメトキシシラン、ジ-n-ブチルジエトキシシラン、t-ブチルトリメトキシシラン、t-ブチルトリエトキシシラン、ジシクロヘキシルジメトキシシラン、ジシクロヘキシルジエトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジエトキシシラン、シクロヘキシルエチルジメトキシシラン、シクロヘキシルエチルジエトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジエトキシシラン、シクロペンチルメチルジメトキシシラン、シクロペンチルメチルジエトキシシラン、シクロペンチルエチルジエトキシシラン、シクロヘキシルシクロペンチルジメトキシシラン、シクロヘキシルシクロペンチルジエトキシシラン、3-メチルシクロヘキシルシクロペンチルジメトキシシラン、4-メチルシクロヘキシルシクロペンチルジメトキシシラン、3,5-ジメチルシクロヘキシルシクロペンチルジメトキシシランから選ばれる一種以上の有機ケイ素化合物が挙げられる。
【0094】
一般式(IV)におけるsが1または2の化合物としては、ジ(アルキルアミノ)ジアルコキシシラン、(アルキルアミノ)(シクロアルキルアミノ)ジアルコキシシラン、(アルキルアミノ)(アルキル)ジアルコキシシラン、ジ(シクロアルキルアミノ)ジアルコキシシラン、ビニル(アルキルアミノ)ジアルコキシシラン、アリル(アルキルアミノ)ジアルコキシシラン、(アルコキシアミノ)トリアルコキシシラン、(アルキルアミノ)トリアルコキシシラン、(シクロアルキルアミノ)トリアルコキシシラン等から選ばれる一種以上の有機ケイ素化合物を挙げることができ、特に好ましくは、エチル(t-ブチルアミノ)ジメトキシシラン、シクロヘキシル(シクロヘキシルアミノ)ジメトキシシラン、エチル(t-ブチルアミノ)ジメトキシシラン、ビス(シクロヘキシルアミノ)ジメトキシシラン、ビス(パーヒドロイソキノリノ)ジメトキシシラン、ビス(パーヒドロキノリノ)ジメトキシシラン、エチル(イソキノリノ)ジメトキシシラン、ジエチルアミノトリメトキシシラン、ジエチルアミノトリエトキシシラン等が挙げられ、中でも、ビス(パーヒドロイソキノリノ)ジメトキシシラン、ジエチルアミノトリメトキシシラン、またはジエチルアミノトリエトキシシランから選ばれる一種以上の有機ケイ素化合物である。
【0095】
なお、上記一般式(IV)で表される化合物は、二種以上組み合わせて用いてもよい。
【0096】
本発明に係るオレフィン類重合用触媒は、上記一般式(I)で表される有機アルミニウム化合物1モル当たり、有機ケイ素化合物を、0.002~10モル含むものであることが好ましく、0.01~2モル含むものであることがより好ましく、0.01~0.5モル含むものであることがさらに好ましい。
【0097】
本発明に係るオレフィン類重合用触媒が、以下に述べるように重合対象となるオレフィン類の一部と予め接触され予備的な重合を施してなるものである場合、本発明に係るオレフィン類重合用触媒は、オレフィン類重合用触媒を構成するオレフィン類重合用固体触媒成分100質量部に対し、オレフィン類重合体0.1~1000質量部を含むものが適当である。
【0098】
本発明に係るオレフィン類重合用触媒は、本発明に係るオレフィン類重合用固体触媒成分、一般式(I)で表わされる有機アルミニウム化合物及び必要に応じてさらに有機ケイ素化合物を含むもの、すなわちこれ等の接触物である。
本発明に係るオレフィン類重合用触媒は、本発明に係るオレフィン類重合用固体触媒成分、一般式(I)で表わされる有機アルミニウム化合物及び必要に応じてさらに有機ケイ素化合物をオレフィン類不存在下で接触させることにより調製してもよいし、オレフィン類存在下で(重合系内で)接触させて調製してもよい。
【0099】
上記オレフィン類重合用固体触媒成分及び一般式(I)で表わされる有機アルミニウム化合物の接触は、オレフィン類重合用固体触媒成分や得られるオレフィン類重合用触媒の劣化を防止するため、アルゴンや窒素等の不活性ガス雰囲気下、或いはプロピレン等のモノマー雰囲気下で行うことが好ましい。
また、操作の容易性を考慮すると、不活性溶媒等、分散媒の存在下において行うことも好ましく、不活性溶媒としては、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素化合物、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素化合物等が用いられ、脂肪族炭化水素がより好ましく、中でもヘキサン、ヘプタン及びシクロヘキサンがより好ましい。
【0100】
上記オレフィン類重合用固体触媒成分及び一般式(I)で表わされる有機アルミニウム化合物及び必要に応じてさらに有機ケイ素化合物を接触させる際の温度は、15℃未満が好ましく、-15℃~10℃がより好ましく、0℃~10℃がさらに好ましい。
【0101】
上記オレフィン類重合用固体触媒成分及び一般式(I)で表わされる有機アルミニウム化合物及び必要に応じてさらに有機ケイ素化合物を接触させる際の接触時間は、30分間以下が好ましく、5秒間~20分間がより好ましく、30秒間~15分間がさらに好ましく、1分間~10分間が一層好ましい。
【0102】
通常、オレフィン類重合用固体触媒成分に助触媒である有機アルミニウム化合物を接触させると急減に反応が進行し、固体触媒成分を構成する芳香族カルボン酸エステル類または1,3-ジエーテル化合物の脱離や、助触媒である有機アルミニウム化合物による固体触媒成分の活性化が生じ、特に不活性ガス雰囲気下においては、過剰な反応により触媒活性点(チタン活性点)の失活が生じ易くなる。
一方、上記接触温度及び接触時間で接触処理することにより、有機アルミニウム化合物による固体触媒成分中のチタン活性点への過剰な反応を抑制して触媒活性点の失活を効果的に抑制することができる。
【0103】
本発明に係るオレフィン類重合用触媒を製造する方法において、各成分の使用割合は、得られるオレフィン類重合用触媒を構成する、各成分の含有割合に応じて適宜決定すればよい。
【0104】
本発明によれば、分子量分布が狭くても、流動性に優れるとともに剛性の高いオレフィン類重合体を煩雑な重合処理を施すことなく容易に製造し得るオレフィン類重合用触媒を提供することができる。
【0105】
<オレフィン類重合体の製造方法>
次に、本発明に係るオレフィン類重合体の製造方法について説明する。
本発明に係るオレフィン類重合体の製造方法は、本発明に係るオレフィン類重合用触媒を用いてオレフィン類を重合することを特徴とするものである。
【0106】
本発明に係るオレフィン類重合体の製造方法においては、上記オレフィン類の重合が、プロピレン単独重合であるか、プロピレン及びプロピレン以外のα-オレフィンの共重合であることが好ましい。
【0107】
プロピレン以外のα-オレフィンとしては、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、ビニルシクロヘキサン等から選ばれる一種以上を挙げることができ、エチレンまたは1-ブテンが好適である。
【0108】
本発明に係るオレフィン類重合体の製造方法においては、プロピレンの単独重合を行ってもよいし、プロピレン及び他のα-オレフィン類の共重合を行ってもよく、プロピレンと他のオレフィン類との共重合を行う場合、プロピレンと少量の(エチレン等の)プロピレン以外のα-オレフィン単量体をコモノマーとして、1段で重合するランダム共重合と、第一段階(第一重合槽)でオレフィン類として専らプロピレンを含むモノマーの重合を行い、第二段階(第二重合槽)あるいはそれ以上の多段階(多段重合槽)でプロピレンとエチレン等の他のα-オレフィンとの共重合を行うブロック共重合が代表的であり、プロピレンと他のα―オレフィンとのブロック共重合が好ましい。
【0109】
本発明に係るオレフィン類重合体の製造方法において、オレフィン類の重合は、有機溶媒の存在下でも不存在下でも行うことができる。
また、重合対象となるオレフィン類は、気体及び液体のいずれの状態でも用いることができる。
【0110】
オレフィン類の重合は、例えば、オートクレーブ等の反応炉内において、本発明に係るオレフィン類重合用触媒の存在下、オレフィン類を導入し、加熱、加圧状態下に行うことができる。
【0111】
本発明に係るオレフィン類重合体の製造方法において、オレフィン類を重合(以下、適宜、本重合と称する。)するにあたり、重合対象となるオレフィン類に対して本発明に係る製造方法で得られるオレフィン類重合用触媒の構成成分の一部または全部を接触させることにより、予備的な重合(以下、適宜、予備重合と称する。)を行ってもよい。
【0112】
予備重合を行うに際して、本発明に係る製造方法で得られるオレフィン類重合用触媒の構成成分及びオレフィン類の接触順序は任意であるが、不活性ガス雰囲気あるいはオレフィンガス雰囲気に設定した予備重合系内に先ず有機アルミニウム化合物を装入し、次いでオレフィン類重合用固体触媒成分を接触させた後、プロピレン等のオレフィン類を一種以上接触させることが好ましい。
予備重合の際には、本重合と同様のオレフィン類、あるいはスチレン等のモノマーを用いることができ、予備重合条件も、上記重合条件と同様である。
【0113】
上記予備重合を行うことにより、触媒活性を向上させ、得られる重合体の立体規則性及び粒子性状等を一層改善し易くなる。
【0114】
本発明に係るオレフィン類重合体の製造方法により得られる重合体としては、以下に述べる本発明に係るオレフィン類重合体や、本発明に係るプロピレン系ブロック共重合体を挙げることができる。
【0115】
本発明によれば、分子量分布が狭くても、流動性に優れるとともに剛性の高いオレフィン類重合体を煩雑な重合処理を施すことなく容易に製造可能なオレフィン類重合体の製造方法を提供することができる。
【0116】
次に、本発明に係るオレフィン類重合体について説明する。
本発明に係るオレフィン類重合体は、
溶融流れ性(MFR)が20g/10分間以上、
数平均分子量(Mn)に対する重量平均分子量(Mw)の比である分子量分布(Mw/Mn)が4.0~7.0、重量平均分子量(Mw)に対するZ平均分子量(Mz)の比である分子量分布(Mz/Mw)が2.0~7.0であり、
曲げ弾性率(FM)が1800MPa以上である
ことを特徴とするものである。
【0117】
本発明に係るオレフィン類重合体において、溶融流れ性(MFR)は、20g/10分間以上であり、30g/10分間以上であることが好ましく、50g/10分間以上であることがより好ましい。
本発明に係るオレフィン類重合体において、溶融流れ性(MFR)の上限は特に制限されないが、本発明に係るオレフィン類重合体の溶融流れ性(MFR)は、通常、1000g/10分間以下である。
【0118】
本発明に係るオレフィン類重合体において、溶融流れ性(MFR)が20g/10分間以上であることにより、優れた成形性を容易に発揮することができる。
【0119】
なお、本出願書類において、溶融流れ性(MFR)(g/10分間)は、ASTM D 1238、JIS K 7210により測定した値を意味する。
【0120】
本発明に係るオレフィン類重合体において、数平均分子量(Mn)に対する重量平均分子量(Mw)の比である分子量分布(Mw/Mn)は、4.0~7.0であり、4.0~6.0であることが好ましく、4.0~5.5であることがより好ましい。
【0121】
本発明に係るオレフィン類重合体において、重量平均分子量(Mw)に対するZ平均分子量(Mz)の比である分子量分布(Mz/Mw)は、2.0~7.0であり、2.0~6.0であることが好ましく、2.0~5.0であることがより好ましい。
【0122】
本発明に係るオレフィン類重合体は、Mw/Mn及びMz/Mwが上記範囲内にある、分子量分布が比較的狭いものであることにより、ポリオレフィン溶液を押し出す際にスウェル(Swell)を生じ難く、例えば紡糸工程において各種グレードの繊維製品を容易に製造することができる。
【0123】
なお、本出願書類において、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)及びZ平均分子量(Mz)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(Waters社製GPCV2000)にて以下の条件で測定して求めた値を意味する。
溶媒 :o-ジクロロベンゼン(ODCB)
温度 :140℃(SEC)
カラム:Shodex GPC UT-806M
サンプル濃度:1g/liter-ODCB(50mg/50ml-ODCB)
注入量:0.5ml
流量 :1.0ml/min
【0124】
本発明に係るオレフィン類重合体は、曲げ弾性率(FM)が、1800MPa以上であり、1850MPa以上であることが好ましく、1900MPa以上であることがより好ましい。
本発明に係るオレフィン類重合体の曲げ弾性率(FM)の上限は特に制限されないが、本発明に係るオレフィン類重合体において、曲げ弾性率(FM)は、通常2100MPa以下である。
【0125】
本発明に係るオレフィン類重合体は、Mw/Mn及びMz/Mwが上記範囲内にある、分子量分布が比較的狭いものであるにも拘わらず、曲げ弾性率(FM)が1800MPa以上と高いことから、優れた剛性を容易に発揮することができる。
【0126】
なお、本出願書類において、曲げ弾性率(FM)は、JIS K 7171に従い、測定対象となるオレフィン類重合体を用いて物性測定用の試験片を射出成形し、23℃に調節された恒温室内で、状態調節を144時間以上行なった後、表面に液体や粉体の滲出が認められなかったものを試験片として用いて測定した値を意味する。
【0127】
本発明に係るオレフィン類重合体は、本発明に係るオレフィン類重合体の製造方法により容易に製造することができる。
【0128】
本発明によれば、分子量分布が狭くても、流動性に優れるとともに剛性の高いオレフィン類重合体を提供することができる。
【0129】
次に、本発明に係るプロピレン系ブロック共重合体の製造方法について説明する。
本発明に係るプロピレン系ブロック共重合体の製造方法は、
プロピレンを95~100質量%含むオレフィン類を本発明に係るオレフィン類重合用触媒を用いて重合させ、
溶融流れ性(MFR)が20g/10分間以上、
数平均分子量(Mn)に対する重量平均分子量(Mw)の比である分子量分布(Mw/Mn)が4.0~7.0、重量平均分子量(Mw)に対するZ平均分子量(Mz)の比である分子量分布(Mz/Mw)が2.0~7.0であり、
曲げ弾性率(FM)が1800MPa以上である
プロピレン系重合体を得た後、得られたプロピレン系重合体の存在下、プロピレン及びプロピレン以外のα-オレフィンを重合させる
ことを特徴とするものである。
【0130】
本発明に係るプロピレン系ブロック共重合体の製造方法は、上述した本発明に係るオレフィン類重合体の製造方法の一実施態様に相当するものであって、出発原料としてプロピレンを95~100質量%含むオレフィン類を用い、中間生成物であるオレフィン類重合体として上記特性を有するプロピレン系重合体を得た後、得られたプロピレン系重合体の存在下、プロピレン及びプロピレン以外のα-オレフィンを重合させる点が特定されている点を除けば、その内容は上述した本発明に係るオレフィン類重合体の製造方法の内容と共通する。
【0131】
本発明に係るプロピレン系ブロック共重合体の製造方法においては、前段工程において、プロピレンを95~100質量%含むオレフィン類を用い、プロピレンを97~100質量%含むオレフィン類を用いることが好ましく、プロピレンを99~100質量%含むオレフィン類を用いることがより好ましい。
【0132】
本発明に係るプロピレン系ブロック共重合体の製造方法においては、前段工程として、プロピレンを95~100質量%含むオレフィン類を用い、中間生成物として、溶融流れ性(MFR)が20g/10分間以上、数平均分子量(Mn)に対する重量平均分子量(Mw)の比である分子量分布(Mw/Mn)が4.0~7.0、重量平均分子量(Mw)に対するZ平均分子量(Mz)の比である分子量分布(Mz/Mw)が2.0~7.0であり、曲げ弾性率(FM)が1800MPa以上であるプロピレン系重合体を得る。
【0133】
本発明に係るプロピレン系ブロック共重合体の製造方法において、中間生成物として得られるプロピレン系重合体の詳細は、プロピレンを95~100質量%含むオレフィン類の重合体からなることが特定されている点を除けば、本発明に係るオレフィン類重合体の説明で述べたとおりである。
【0134】
本発明に係るプロピレン系ブロック共重合体の製造方法においては、後段工程として、中間生成物として得られたプロピレン系重合体の存在下、プロピレン及びプロピレン以外のα-オレフィンを重合させる。
【0135】
プロピレン以外のα-オレフィンとしては、プロピレン以外のα-オレフィンから選ばれる一種以上であれば特に制限されないが、エチレンや、エチレン及び1-ブテンを挙げることができる。
【0136】
本発明に係るプロピレン系ブロック共重合体の製造方法においては、プロピレンを95~100質量%含むオレフィン類を用いて中間生成物であるプロピレン系重合体を得る前段工程と、得られたプロピレン系重合体の存在下にプロピレン及びプロピレン以外のα-オレフィンを重合させる後段工程の少なくともいずれか一方の工程において複数回重合処理を施してもよい。
【0137】
本発明に係るプロピレン系ブロック共重合体の製造方法において、プロピレン等のオレフィンモノマーは、気体及び液体のいずれの状態でも用いることができ、上記前段工程及び後段工程における処理は、有機溶媒の存在下でも不存在下でも行なうことができる。
【0138】
具体的には、前段工程において、重合温度及び重合時間を調整することにより、得ようとするプロピレン系ブロック共重合体全体の20~90質量%に相当する量のモノマーの重合を行い、次いで後段工程において、プロピレン及びエチレンあるいは他のα-オレフィンを導入し、エチレン-プロピレンゴム(EPR)、エチレン-プロピレン-1-ブテン3元共重合体などのゴム部を、その割合が得ようとするプロピレン系ブロック共重合体全体の10~80質量%になるように反応条件を調整しつつ重合する。
【0139】
上記後段工程における処理は、一般的にはポリプロピレン粒子からEPR等のゴム部が溶出することを抑制するために気相重合反応により反応することが好ましい。
また、上記前段工程及び後段工程における処理は、連続重合法、バッチ式重合法のいずれで実施してもよい。
さらに、重合反応は、前段及び後段の処理のいずれも1段階でも多段階でもよく、各工程を多段階に実施する場合は、各々同一条件、あるいは異なる条件で実施することができる。
【0140】
上記前段工程及び後段工程における重合温度は、いずれも、200℃以下であることが好ましく、100℃以下であることがより好ましい。
また、上記前段工程及び後段工程における重合圧力は、10MPa以下が好ましく、5MPa以下がより好ましい。
さらに、重合時間(反応原料の滞留時間)は、各重合段階での重合時間の合計が1分間~5時間であることが適当である。
【0141】
本発明に係るプロピレン系ブロック共重合体の製造方法において、得られるプロピレン系ブロック共重合体としては、後述する本発明に係るプロピレン系ブロック共重合体を挙げることができる。
【0142】
本発明によれば、分子量分布が狭くても、流動性に優れるとともに剛性の高いプロピレン系ブロック共重合体を煩雑な重合処理を施すことなく容易に製造することができる。
【0143】
次に、本発明に係るプロピレン系ブロック共重合体について説明する。
本発明に係るプロピレン系ブロック共重合体は、
プロピレンを95~100質量%含むオレフィン類を本発明に係るオレフィン類重合用触媒を用いて重合させ、
溶融流れ性(MFR)が20g/10分間以上、
数平均分子量(Mn)に対する重量平均分子量(Mw)の比である分子量分布(Mw/Mn)が4.0~7.0、重量平均分子量(Mw)に対するZ平均分子量(Mz)の比である分子量分布(Mz/Mw)が2.0~7.0であり、
曲げ弾性率(FM)が1800MPa以上である
プロピレン系重合体を得た後、得られたプロピレン系重合体の存在下、プロピレン及びプロピレン以外のα-オレフィンを重合させて得られる
ことを特徴とするものである。
【0144】
本発明に係るプロピレン系ブロック共重合体は、上述した本発明に係るオレフィン類重合体一実施態様に相当するものである。
また、本発明に係るプロピレン系ブロック共重合体は、本発明に係るブロック共重合体の製造方法に係る表現により規定されるものであり、係る製造方法の詳細は上述したとおりである。
【0145】
そして、本発明に係るプロピレン系ブロック共重合体は、本発明に係るオレフィン類重合体の一実施態様に相当するものであることから、その物性等も本発明に係るオレフィン類重合体と共通し、その詳細は本発明に係るオレフィン類重合体の説明で述べたとおりである。
【0146】
本発明によれば、分子量分布が狭くても、流動性に優れるとともに剛性の高いプロピレン系ブロック共重合体を提供することができる。
【実施例0147】
次に、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、これは単に例示であって、本発明を制限するものではない。
【0148】
(実施例1)
<オレフィン類重合用固体触媒成分の調製>
内部電子供与性化合物として、芳香族カルボン酸エステル類であるフタル酸ジn-ブチルを採用し、1,3-ジエーテル化合物である2-イソプロピル-2-イソペンチル-1,3-ジメトキシプロパンを採用し、以下の方法によりオレフィン類重合用固体触媒成分を調製した。
(i)攪拌装置を備え、窒素ガスで置換された内容積500mLのフラスコに、ジエトキシマグネシウム10g(87ミリモル)、トルエン64mL、フタル酸ジn-ブチル3.8ミリモル(1.1g)、2-イソプロピル-2-イソペンチル-1,3-ジメトキシプロパン3.8ミリモル(0.8g)を加えてスラリー懸濁液を調整し、5℃まで冷却した。このスラリー懸濁液に四塩化チタン40mLを加え第一の接触生成物を得た。
(ii)上記第一の接触生成物を昇温し、昇温途中の60℃でフタル酸ジn-ブチル1.9ミリモル(0.5g)、2-イソプロピル-2-イソペンチル-1,3-ジメトキシプロパン1.9ミリモル(0.4g)を加え、さらに昇温して108℃とし同温度を保持した状態で60分間反応させた。反応終了後、反応生成物である第二の接触生成物を105℃のトルエン125mLで4回洗浄した。
(iii)次に、上記洗浄後の第二の接触生成物に対し、新たに四塩化チタン48mLを加えて、昇温途中の80℃でフタル酸ジn-ブチル2.5ミリモル(0.7g)を加え、さらに108℃に昇温し60分間攪拌して反応させ、得られた接触生成物を105℃のトルエン125mLで7回洗浄し、次いで60℃のn-ヘプタン125mLで3回洗浄し、固液を分離してオレフィン類重合用固体触媒成分を得た。
得られたオレフィン類重合用固体触媒成分の成分分析を行った結果を表1に示す。
なお、表1において、芳香族カルボン酸エステル類を「(A)」で表すとともに、1,3-ジエーテル化合物を「(B)」で表している。
【0149】
<オレフィン類重合用触媒の形成及びプロピレンホモ重合体の形成>
窒素ガスで置換された内容積2.0リットルの攪拌機付オートクレーブに、トリエチルアルミニウム1.32ミリモル、ジシクロペンチルジメトキシシラン(DCPDMS)0.13ミリモル及び上記固体触媒成分を6.0ミリグラム装入して、オレフィン類重合用触媒を形成した。
その後、水素ガス9.0リットル、液化プロピレン1.4リットルを装入し、20℃で5分間予備重合を行なった後に昇温し、70℃で1時間重合反応を行って、プロピレンホモ重合体を得た。
得られたプロピレンホモ重合体の評価を行った。結果を表2に示す。
【0150】
(実施例2)
実施例1で得られた固体触媒成分6.0ミリグラムを用い、ジシクロペンチルジメトキシシラン(DCPDMS)0.13ミリモルの代わりにジシクロペンチルビス(エチルアミノ)シラン(DCPEAS)0.13ミリモルを用い、水素ガス装入量を6.0リットルに変更した以外は、実施例1と同様にして、重合用触媒の形成およびプロピレン重合を行い、得られた重合体の評価を実施した。結果を表2に示す。
【0151】
(実施例3)
<オレフィン類重合用固体触媒成分の調製>
(i)攪拌装置を備え、窒素ガスで置換された内容積500mLのフラスコに、ジエトキシマグネシウム15g(131ミリモル)、トルエン64mL、フタル酸ジn-ブチル5.7ミリモル(1.6g)、2-イソプロピル-2-イソペンチル-1,3-ジメトキシプロパン5.7ミリモル(1.2g)を加えてスラリー懸濁液を調整し、5℃まで冷却した。このスラリー懸濁液に四塩化チタン40mLを加え第一の接触生成物を得た。
(ii)上記第一の接触生成物を昇温し、昇温途中の60℃でフタル酸ジn-ブチル2.9ミリモル(0.8g)および2-イソプロピル-2-イソペンチル-1,3-ジメトキシプロパン2.9ミリモル(0.6g)を加え、さらに昇温して108℃とし同温度を保持した状態で90分間反応させた。反応終了後、反応生成物である第二の接触生成物を105℃のトルエン125mLで4回洗浄した。
(iii)次に、上記洗浄後の第二の接触生成物に対し、新たに四塩化チタン48mLを加えて、昇温途中の80℃でフタル酸ジn-ブチル3.8ミリモル(1.0g)を加え、さらに108℃に昇温して60分間攪拌して反応させた後、得られた接触生成物を105℃のトルエン125mLで7回洗浄し、次いで60℃のn-ヘプタン125mLで3回洗浄し、固液を分離してオレフィン類重合用固体触媒成分を得た。
得られたオレフィン類重合用固体触媒成分の成分分析を行った結果を表1に示す。
【0152】
<オレフィン類重合用触媒の形成及びプロピレンホモ重合体の形成>
窒素ガスで置換された内容積2.0リットルの攪拌機付オートクレーブに、トリエチルアルミニウム1.32ミリモル、ジシクロペンチルジメトキシシラン(DCPDMS)0.13ミリモル及び上記固体触媒成分を6.0ミリグラム装入して、オレフィン類重合用触媒を形成した。
その後、水素ガス9.0リットル、液化プロピレン1.4リットルを装入し、20℃で5分間予備重合を行なった後に昇温し、70℃で1時間重合反応を行って、プロピレンホモ重合体を得た。
得られたプロピレンホモ重合体の評価を行った。結果を表2に示す。
【0153】
(実施例4)
実施例3で得られた固体触媒成分6.0ミリグラムを用い、ジシクロペンチルジメトキシシラン(DCPDMS)0.13ミリモルの代わりにジエチルアミノトリエトキシシラン(DEATES)0.13ミリモルを用いた以外は、実施例3と同様にして、重合用触媒の形成およびプロピレン重合を行い、得られた重合体の評価を実施した。結果を表2に示す。
【0154】
(実施例5)
<オレフィン類重合用固体触媒成分の調製>
(i)攪拌装置を備え、窒素ガスで置換された内容積500mLのフラスコに、ジエトキシマグネシウム10g(87ミリモル)、トルエン84mL、フタル酸ジn-ブチル4.6ミリモル(1.3g)、2-イソプロピル-2-イソペンチル-1,3-ジメトキシプロパン4.6ミリモル(1.0g)を加えてスラリー懸濁液を調整し、5℃まで冷却した。このスラリー懸濁液に四塩化チタン20mLを加え第一の接触生成物を得た。
(ii)上記第一の接触生成物を昇温し、昇温途中の60℃でフタル酸ジn-ブチル2.3ミリモル(0.6g)、2-イソプロピル-2-イソペンチル-1,3-ジメトキシプロパン2.3ミリモル(0.5g)を加え、さらに昇温して108℃とし同温度を保持した状態で90分間反応させた。反応終了後、反応生成物である第二の接触生成物を105℃のトルエン125mLで4回洗浄した。
(iii)次に、上記洗浄後の第二の接触生成物に対し、新たに四塩化チタン48mLを加えて108℃まで昇温し、60分間攪拌して反応させた後、得られた接触生成物を100℃のトルエン125mLで8回洗浄し、次いで60℃のn-ヘプタン125mLで3回洗浄し、固液を分離してオレフィン類重合用固体触媒成分を得た。
得られたオレフィン類重合用固体触媒成分の成分分析を行った結果を表1に示す。
【0155】
<オレフィン類重合用触媒の形成及びプロピレンホモ重合体の形成>
窒素ガスで置換された内容積2.0リットルの攪拌機付オートクレーブに、トリエチルアルミニウム1.32ミリモル、ジシクロペンチルジメトキシシラン(DCPDMS)0.13ミリモル及び上記固体触媒成分を6.0ミリグラム装入して、オレフィン類重合用触媒を形成した。
その後、水素ガス9.0リットル、液化プロピレン1.4リットルを装入し、20℃で5分間予備重合を行なった後に昇温し、70℃で1時間重合反応を行って、プロピレンホモ重合体を得た。
得られたプロピレンホモ重合体の評価を行った。結果を表2に示す。
【0156】
(実施例6)
実施例5で得られた固体触媒成分4.0ミリグラムを用い、ジシクロペンチルジメトキシシラン(DCPDMS)0.13ミリモルの代わりにジエチルアミノトリエトキシシラン(DEATES)0.13ミリモルを用い、さらに水素ガス装入量を6.0リットルに変更した以外は、実施例5と同様にして、重合用触媒の形成およびプロピレン重合を行い、得られた重合体の評価を実施した。結果を表2に示す。
【0157】
(実施例7)
実施例5で得られた固体触媒成分4.0ミリグラムを用い、ジシクロペンチルジメトキシシラン(DCPDMS)0.13ミリモルの代わりにジシクロペンチルビス(エチルアミノ)シラン(DCPEAS)0.26ミリモルを用い、さらに水素ガス装入量を6.0リットルに変更した以外は、実施例5と同様にして、重合用触媒の形成およびプロピレン重合を行い、得られた重合体の評価を実施した。結果を表2に示す。
【0158】
(比較例1)
<オレフィン類重合用固体触媒成分の調製>
(i)攪拌装置を備え、窒素ガスで置換された内容積500mLのフラスコに、ジエトキシマグネシウム10g(87ミリモル)、トルエン84mL、フタル酸ジn-ブチル9.0ミリモル(2.5g)を加え、スラリー懸濁液を調整し、5℃まで冷却した。このスラリー懸濁液に四塩化チタン20mLを加え第一の接触生成物を得た。
(ii)上記第一の接触生成物を昇温し、昇温途中の60℃でフタル酸ジn-ブチル4.5ミリモル(1.3g)を加え、さらに昇温して108℃とし同温度を保持した状態で90分間反応させた。反応終了後、反応生成物である第二の接触生成物を105℃のトルエン125mLで4回洗浄した。
(iii)次に、上記洗浄後の第二の接触生成物に対し、トルエン76mLと、新たに四塩化チタン16mLを加えて108℃まで昇温し60分間攪拌して反応させた後、得られた接触生成物を105℃のトルエン125mLで2回洗浄した。
(iv)次いでトルエン75mLを加えて昇温し60℃でフタル酸ジn-ブチル5.0ミリモル(1.4g)、四塩化チタン25mLを加えて90℃まで昇温、60分間攪拌して反応させた。
(v)上澄液を抜き出した後、更にトルエン75mL、四塩化チタン25mLを加えて90℃まで昇温、60分間攪拌して反応させた。
(vi)次いで105℃のトルエン125mLで7回洗浄した後、60℃のn-ヘプタン125mLで3回洗浄し、固液を分離してオレフィン類重合用固体触媒成分を得た。
得られたオレフィン類重合用固体触媒成分の成分分析を行った結果を表1に示す。
【0159】
<オレフィン類重合用触媒の形成及びプロピレンホモ重合体の形成>
窒素ガスで置換された内容積2.0リットルの攪拌機付オートクレーブに、トリエチルアルミニウム1.32ミリモル、ジエチルアミノトリエトキシシラン(DEATES)0.13ミリモル及び上記固体触媒成分を4.0ミリグラム装入して、オレフィン類重合用触媒を形成した。
その後、水素ガス1.5リットル、液化プロピレン1.4リットルを装入し、20℃で5分間予備重合を行なった後に昇温し、70℃で1時間重合反応を行って、プロピレンホモ重合体を得た。
得られたプロピレンホモ重合体の評価を行った。結果を表2に示す。
【0160】
(比較例2)
比較例1において、水素ガス装入量を4.0リットルに変更した以外は、比較例1と同様にして、重合用触媒の形成およびプロピレン重合を行い、得られた重合体の評価を実施した。結果を表2に示す。
【0161】
(比較例3)
<オレフィン類重合用固体触媒成分の調製>
(i)攪拌装置を備え、窒素ガスで置換された内容積500mLのフラスコに、ジエトキシマグネシウム10g(87ミリモル)、トルエン84mL、フタル酸ジn-ブチル6.8ミリモル(1.9g)、2-イソプロピル-2-イソペンチル-1,3-ジメトキシプロパン0.8ミリモル(0.2g)を加え、スラリー懸濁液を調整し、5℃まで冷却した。このスラリー懸濁液に四塩化チタン20mLを加え第一の接触生成物を得た。
(ii)上記第一の接触生成物を昇温し、昇温途中の60℃でフタル酸ジn-ブチル3.4ミリモル(0.9g)、2-イソプロピル-2-イソペンチル-1,3-ジメトキシプロパン0.4ミリモル(0.1g)を加え、さらに昇温して108℃とし同温度を保持した状態で90分間反応させた。反応終了後、反応生成物である第二の接触生成物を105℃のトルエン125mLで4回洗浄した。
(iii)次に、上記洗浄後の第二の接触生成物に対し、新たに四塩化チタン48mLを加えて108℃まで昇温し、60分間攪拌して反応させた後、得られた接触生成物を105℃のトルエン125mLで7回洗浄し、次いで60℃のn-ヘプタン125mLで3回洗浄し、固液を分離してオレフィン類重合用固体触媒成分を得た。
得られたオレフィン類重合用固体触媒成分の成分分析を行った結果を表1に示す。
【0162】
<オレフィン類重合用触媒の形成及びプロピレンホモ重合体の形成>
上記オレフィン類重合用固体触媒成分4.0ミリグラムを用いた以外は比較例2と同様にして、重合用触媒の形成およびプロピレン重合を行い、得られた重合体の評価を実施した。結果を表2に示す。
【0163】
(比較例4)
<オレフィン類重合用固体触媒成分の調製>
(i)攪拌装置を備え、窒素ガスで置換された内容積500mLのフラスコに、ジエトキシマグネシウム10g(87ミリモル)、トルエン84mL、フタル酸ジn-ブチル5.3ミリモル(1.5g)、2-イソプロピル-2-イソペンチル-1,3-ジメトキシプロパン2.3ミリモル(0.5g)を加え、スラリー懸濁液を調整し、5℃まで冷却した。このスラリー懸濁液に四塩化チタン20mLを加え第一の接触生成物を得た。
(ii)上記第一の接触生成物を昇温し、昇温途中の60℃でフタル酸ジn-ブチル2.6ミリモル(0.7g)、2-イソプロピル-2-イソペンチル-1,3-ジメトキシプロパン1.1ミリモル(0.2g)を加え、さらに昇温して108℃とし同温度を保持した状態で90分間反応させた。反応終了後、反応生成物である第二の接触生成物を105℃のトルエン125mLで4回洗浄した。
(iii)次に、上記洗浄後の第二の接触生成物に対し、新たに四塩化チタン48mLを加えて108℃まで昇温し、60分間攪拌して反応させた後、得られた接触生成物を105℃のトルエン125mLで7回洗浄し、次いで60℃のn-ヘプタン125mLで3回洗浄し、固液を分離してオレフィン類重合用固体触媒成分を得た。
得られたオレフィン類重合用固体触媒成分の成分分析を行った結果を表1に示す。
【0164】
<オレフィン類重合用触媒の形成及びプロピレンホモ重合体の形成>
上記オレフィン類重合用固体触媒成分4.0ミリグラムを用いた以外は比較例2と同様にして、重合用触媒の形成およびプロピレン重合を行い、得られた重合体の評価を実施した。結果を表2に示す。
【0165】
(比較例5)
<オレフィン類重合用固体触媒成分の調製>
(i)攪拌装置を備え、窒素ガスで置換された内容積500mLのフラスコに、ジエトキシマグネシウム10g(87ミリモル)、トルエン84mL、フタル酸ジn-ブチル2.7ミリモル(0.8g)、2-イソプロピル-2-イソペンチル-1,3-ジメトキシプロパン6.4ミリモル(1.4g)を加え、スラリー懸濁液を調整し、5℃まで冷却した。このスラリー懸濁液に四塩化チタン20mLを加え第一の接触生成物を得た。
(ii)上記第一の接触生成物を昇温し、昇温途中の60℃でフタル酸ジn-ブチル1.4ミリモル(0.4g)、2-イソプロピル-2-イソペンチル-1,3-ジメトキシプロパン3.2ミリモル(0.7g)を加え、さらに昇温して108℃とし同温度を保持した状態で90分間反応させた。反応終了後、反応生成物である第二の接触生成物を105℃のトルエン125mLで4回洗浄した。
(iii)次に、上記洗浄後の第二の接触生成物に対し、新たに四塩化チタン48mLを加えて108℃まで昇温し、60分間攪拌して反応させた後、得られた接触生成物を105℃のトルエン125mLで8回洗浄し、次いで60℃のn-ヘプタン125mLで3回洗浄し、固液を分離してオレフィン類重合用固体触媒成分を得た。
得られたオレフィン類重合用固体触媒成分の成分分析を行った結果を表1に示す。
【0166】
<オレフィン類重合用触媒の形成及びプロピレンホモ重合体の形成>
上記固体触媒成分を6.0ミリグラム用いた以外は、実施例1と同様の条件で重合用触媒の形成およびプロピレン重合を行い、得られた重合体の評価を実施した。結果を表2に示す。
【0167】
(比較例6)
<オレフィン類重合用固体触媒成分の調製>
(i)攪拌装置を備え、窒素ガスで置換された内容積500mLのフラスコに、ジエトキシマグネシウム15g(131ミリモル)、トルエン64mL、フタル酸ジn-ブチル1.1ミリモル(0.3g)、2-イソプロピル-2-イソペンチル-1,3-ジメトキシプロパン10.2ミリモル(2.2g)を加え、スラリー懸濁液を調整し、5℃まで冷却した。このスラリー懸濁液に四塩化チタン40mLを加え第一の接触生成物を得た。
(ii)上記第一の接触生成物を昇温し、昇温途中の60℃でフタル酸ジn-ブチル0.6ミリモル(0.2g)、2-イソプロピル-2-イソペンチル-1,3-ジメトキシプロパン5.1ミリモル(1.1g)を加え、さらに昇温して108℃とし同温度を保持した状態で90分間反応させた。反応終了後、反応生成物である第二の接触生成物を105℃のトルエン125mLで4回洗浄した。
(iii)次に、上記洗浄後の第二の接触生成物に対し、新たに四塩化チタン48mLを加えて108℃まで昇温し、60分間攪拌して反応させた後、得られた接触生成物を105℃のトルエン125mLで7回洗浄し、次いで60℃のn-ヘプタン125mLで3回洗浄し、固液を分離してオレフィン類重合用固体触媒成分を得た。
得られたオレフィン類重合用固体触媒成分の成分分析を行った結果を表1に示す。
【0168】
<オレフィン類重合用触媒の形成及びプロピレンホモ重合体の形成>
上記固体触媒成分4.0ミリグラムを用い、水素ガス装入量を4.0リットルに変更した以外は、実施例1と同様の条件で重合を実施、得られたプロピレンホモ重合体の評価を行った。結果を表2に示す。
【0169】
(比較例7)
<オレフィン類重合用固体触媒成分の調製>
(i)攪拌装置を備え、窒素ガスで置換された内容積500mLのフラスコに、ジエトキシマグネシウム10g(87ミリモル)、トルエン84mL、2-イソプロピル-2-イソペンチル-1,3-ジメトキシプロパン7.6ミリモル(1.6g)を加え、スラリー懸濁液を調整し、5℃まで冷却した。このスラリー懸濁液に四塩化チタン20mLを加え第一の接触生成物を得た。
(ii)上記第一の接触生成物を昇温し、昇温途中の60℃で、2-イソプロピル-2-イソペンチル-1,3-ジメトキシプロパン3.8ミリモル(0.8g)を加え、さらに昇温して108℃とし同温度を保持した状態で90分間反応させた。反応終了後、反応生成物である第二の接触生成物を105℃のトルエン125mLで4回洗浄した。
(iii)次に、上記洗浄後の第二の接触生成物に対し、新たに四塩化チタン48mLを加えて108℃まで昇温し、60分間攪拌して反応させた後、得られた接触生成物を105℃のトルエン125mLで7回洗浄し、次いで60℃のn-ヘプタン125mLで3回洗浄し、固液を分離してオレフィン類重合用固体触媒成分を得た。
得られたオレフィン類重合用固体触媒成分の成分分析を行った結果を表1に示す。
【0170】
<オレフィン類重合用触媒の形成及びプロピレンホモ重合体の形成>
上記固体触媒成分6.0ミリグラム用い、水素ガス装入量を4.0リットルに変更した以外は、実施例1と同様の条件で重合用触媒の形成およびプロピレン重合を行い、得られた重合体の評価を実施した。結果を表2に示す。
【0171】
【0172】
【0173】
表1および表2より、実施例1~実施例7で得られたオレフィン類重合用固体触媒成分は、マグネシウム及びハロゲンを含むとともに、チタン、芳香族カルボン酸エステル類及び1,3-ジエーテル化合物を各々所定量含むことにより、分子量分布が狭くても、流動性に優れるとともに剛性の高いオレフィン類重合体を煩雑な重合処理を施すことなく容易に製造し得ることが分かる。
【0174】
一方、表1および表2より、比較例1~比較例7で得られたオレフィン類重合用固体触媒成分は、芳香族カルボン酸エステル類または1,3-ジエーテル化合物の含有量が所定範囲外であることにより、剛性の低いオレフィン類重合体しか得られないことが分かる。
本発明によれば、分子量分布が狭くても、流動性に優れるとともに剛性の高いオレフィン類重合体を煩雑な重合処理を施すことなく容易に製造し得るオレフィン類重合用固体触媒成分を提供することができるとともに、オレフィン類重合用触媒、オレフィン類重合体の製造方法、オレフィン類重合体、プロピレン系ブロック共重合体の製造方法及びプロピレン系ブロック共重合体を提供することができる。