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特開2022-181404航空機用コーティング膜及び航空機用コーティング膜の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022181404
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】航空機用コーティング膜及び航空機用コーティング膜の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/18 20060101AFI20221201BHJP
   B64C 1/00 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
C09K3/18
B64C1/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021088329
(22)【出願日】2021-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】503361400
【氏名又は名称】国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構
(71)【出願人】
【識別番号】515037575
【氏名又は名称】株式会社オプティマス
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100196575
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 満
(74)【代理人】
【識別番号】100168181
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲平
(74)【代理人】
【識別番号】100160989
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 正好
(74)【代理人】
【識別番号】100117330
【弁理士】
【氏名又は名称】折居 章
(74)【代理人】
【識別番号】100168745
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 彩子
(74)【代理人】
【識別番号】100176131
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100197398
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 絢子
(74)【代理人】
【識別番号】100197619
【弁理士】
【氏名又は名称】白鹿 智久
(72)【発明者】
【氏名】飯島 秀俊
(72)【発明者】
【氏名】飯島 由美
(72)【発明者】
【氏名】徳川 直子
(72)【発明者】
【氏名】高尾 一美
(72)【発明者】
【氏名】南 英彦
(72)【発明者】
【氏名】須賀 健雄
【テーマコード(参考)】
4H020
【Fターム(参考)】
4H020AA03
4H020BA02
(57)【要約】
【課題】航空機の機体に付着した虫等の汚れを効率的及び効果的に、且つ、環境負荷を低く洗浄する。
【解決手段】航空機用コーティング膜は、母材に積層される光触媒層と、光触媒層に設けられ相互に離間する複数のポリマーブラシと、複数のポリマーブラシ及び光触媒層により区画された複数の溝とを有し、大気に露出するポリマーブラシ層とを有する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
母材に積層される光触媒層と、
前記光触媒層に設けられ相互に離間する複数のポリマーブラシと、前記複数のポリマーブラシ及び前記光触媒層により区画された複数の溝とを有し、大気に露出するポリマーブラシ層と
を具備する航空機用コーティング膜。
【請求項2】
請求項1に記載の航空機用コーティング膜であって、
前記光触媒層は親水性であり、
前記複数の溝の少なくとも一部は相互に流通可能である
航空機用コーティング膜。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の航空機用コーティング膜であって、
隣り合う前記複数のポリマーブラシはミリオーダーで離間する
航空機用コーティング膜。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか一項に記載の航空機用コーティング膜であって、
前記複数のポリマーブラシ各々のサイズはミリオーダーである
航空機用コーティング膜。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか一項に記載の航空機用コーティング膜であって、
前記複数のポリマーブラシ各々は、前記大気に露出し、ナノオーダーの構造を有するポリマーブラシ面を有する
航空機用コーティング膜。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか一項に記載の航空機用コーティング膜であって、
前記光触媒層は、前記複数の溝を介して前記大気に露出し、マイクロオーダーの構造を有する光触媒面を有する
航空機用コーティング膜。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか一項に記載の航空機用コーティング膜であって、
前記光触媒層は、前記複数の溝を介して前記大気に露出し、光触媒を付着させたマイクロオーダーの樹脂キャプセルを含む
航空機用コーティング膜。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか一項に記載の航空機用コーティング膜であって、
前記母材は、主翼の前縁を含む、航空機の機体の少なくとも一部である
航空機用コーティング膜。
【請求項9】
請求項1乃至7の何れか一項に記載の航空機用コーティング膜であって、
前記母材は、航空機の機体の少なくとも一部に接着可能なシート材である
航空機用コーティング膜。
【請求項10】
母材に光触媒層を積層し、
前記光触媒層から剥離可能であり、シート本体及び相互に離間する複数の貫通孔を有するパターニングシートを、前記光触媒層に積層し、
前記複数の貫通孔内に重合開始剤層を付着させ、
所定時間経過後に、前記パターニングシートを剥離し、
前記光触媒層及びパターニングされた前記重合開始剤層の上に成膜層を付着させ、
前記成膜層の上に剥離シートを密着して積層することで前記成膜層を真空状態にして、積層体を作成し、
複数のポリマーブラシを前記重合開始剤層上に各々成長させ、
所定時間経過後に、前記積層体から前記剥離シートを剥離し、
前記積層体から、前記剥離シートに覆われていた前記成膜層を除去することにより、
前記光触媒層と、前記光触媒層に設けられ相互に離間する前記複数のポリマーブラシと、前記複数のポリマーブラシ及び前記光触媒層により区画された複数の溝とを有し、大気に露出するポリマーブラシ層とを有する航空機用コーティング膜を製造する
航空機用コーティング膜の製造方法。
【請求項11】
請求項10に記載の航空機用コーティング膜の製造方法であって、
前記複数のポリマーブラシを前記重合開始剤層上に各々成長させるステップは、
前記積層体を所定時間放置することにより、前記重合開始剤層と前記重合開始剤層を起点として重合反応により成長したブラシ層とを各々含む前記複数のポリマーブラシを作成するプロセスを含む
航空機用コーティング膜の製造方法。
【請求項12】
請求項10又は11に記載の航空機用コーティング膜の製造方法であって、
前記光触媒層は親水性であり、
前記パターニングシートは、前記複数の溝の少なくとも一部が相互に流通可能となる形状を有する
航空機用コーティング膜の製造方法。
【請求項13】
請求項10乃至12の何れか一項に記載の航空機用コーティング膜の製造方法であって、
前記パターニングシートは、隣り合う前記複数のポリマーブラシがミリオーダーで離間する形状を有する
航空機用コーティング膜の製造方法。
【請求項14】
請求項10乃至13の何れか一項に記載の航空機用コーティング膜の製造方法であって、
前記パターニングシートは、前記複数のポリマーブラシ各々のサイズがミリオーダーとなる形状を有する
航空機用コーティング膜の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機用コーティング膜及び航空機用コーティング膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
航空機の飛行中には、機体の表面に汚れ(埃、油、虫等)が付着する。特に、飛行中に主翼の前縁に虫が衝突して付着しやすい。航空機の機体に虫が付着すると、付着した虫により飛行中の摩擦抵抗が増加し、燃費が悪くなるおそれがある。そこで、燃費向上のために、さらには腐食防止や美観維持のために、機体を定期的に洗浄し、表面に付着する汚れを除去する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-236459号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】近藤五郎・中井貞康、「航空機機体洗浄の問題点」、環境技術、環境技術学会、1986年4月、第15巻、第4号、p.343-348
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
典型的には、1~2か月毎に、1機当たり10~20人程度が数時間掛けて、デッキブラシ等を用いて手作業で航空機の機体を洗浄する。この方法では時間と人手が掛かる上、多量の洗浄剤(弱アルカリ水ベースの洗浄剤に、汚染度に応じてケロシンを混合希釈する)及び多量の水(20トン程度)を使用するため、洗浄廃水の環境負荷が高い。
【0006】
ドライウォッシュ法も知られている。ドライウォッシュ法によれば、粘り気のある水溶性洗剤を手作業で機体表面に塗布することで、機体表面に付着した油や汚れを溶かし、手作業でマイクロファイバー製の布で拭き取る。ドライウォッシュ法は、年間3回程度、1機当たり10~20人程度が9~12時間掛けて行うため、時間と人手が掛かる。
【0007】
これらの方法に代わり航空機の機体を洗浄する方法として、例えば、自動移動ブラッシ法、オクトパスクリーニング法及び泡沫洗浄法などが提案されている(非特許文献1)。自動移動ブラッシ法によれば、コンピュータに記憶した機体形状に従って洗浄ユニットを機体表面に摺動させて機体を洗浄する。オクトパスクリーニング法によれば、洗剤を機体表面に吹き付け、その後、高圧空気と水滴の混合物を機体表面に噴射して洗浄する。泡沫洗浄法によれば、増粘剤を添加して泡沫状にした洗剤を機体に付着させ、その後、機体を水洗いする。
【0008】
しかしながら、自動移動ブラッシ法は、機体毎に機体形状を記憶する初期費用が大きく、細かい箇所まで洗浄することが難しく、機体(主に主翼)が熱変形(膨張収縮)した場合に機体形状を更新しなければ洗浄位置を補正できない。泡沫洗浄法は、洗浄廃水の環境負荷が高い。このため、これらの方法は実用化されていない。
【0009】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、航空機の機体に付着した虫等の汚れを効率的及び効果的に、且つ、環境負荷を低く洗浄することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る航空機用コーティング膜は、母材に積層される光触媒層と、光触媒層に設けられ相互に離間する複数のポリマーブラシと、複数のポリマーブラシ及び光触媒層により区画された複数の溝とを有し、大気に露出するポリマーブラシ層とを有する。本発明によれば、付着した汚れが剥離しやすく、飛行中の摩擦抵抗の増加を抑制し、燃費の低下を抑制することを図れる。
【0011】
光触媒層は親水性であり、複数の溝の少なくとも一部は相互に流通可能である。本発明によれば、航空機の機体を水で洗浄すればよいので、環境負荷が低い。
【0012】
隣り合う複数のポリマーブラシはミリオーダーで離間する。この様なポリマーブラシは、隣り合う複数のポリマーブラシがミリオーダーで離間する形状を有するパターニングシートを用いて作製する。本発明によれば、ニーズに応じて様々なミリオーダーのパターニングシートを作製することで、様々なミリオーダーのポリマーブラシを作製することができる。
【0013】
複数のポリマーブラシ各々のサイズはミリオーダーである。この様なポリマーブラシは、複数のポリマーブラシ各々のサイズがミリオーダーとなる形状を有するパターニングシートを用いて作製する。本発明によれば、ニーズに応じて様々なミリオーダーのパターニングシートを作製することで、様々なミリオーダーのポリマーブラシを作製することができる。
【0014】
複数のポリマーブラシ各々は、大気に露出し、ナノオーダーの構造を有するポリマーブラシ面を有する。本発明によれば、ポリマーブラシ面がナノオーダーの構造を有するため、汚れを効果的に剥離することを図れる。
【0015】
光触媒層は、複数の溝を介して大気に露出し、マイクロオーダーの構造を有する光触媒面を有する。本発明によれば、光触媒面がマイクロオーダーの構造を有するため、汚れを効果的に剥離することを図れる。
【0016】
光触媒層は、複数の溝を介して大気に露出し、光触媒を付着させたマイクロオーダーの樹脂キャプセルを含む。本発明によれば、光触媒層が、光触媒を付着させた樹脂キャプセルを含むことで、光触媒面から多数の光触媒が露出し、光触媒効果が向上する。
【0017】
母材は、主翼の前縁を含む、航空機の機体の少なくとも一部である。本発明によれば、主翼の前縁に付着した汚れが剥離しやすいため飛行中の摩擦抵抗の増加を抑制し、燃費の低下を抑制することを図れる。
【0018】
母材は、航空機の機体の少なくとも一部に接着可能なシート材である。本発明によれば、ニーズに応じて、航空機の機体の様々な部位に航空機用コーティング膜をコーティングすることができる。
【0019】
本発明に係る航空機用コーティング膜の製造方法は、
母材に光触媒層を積層し、
前記光触媒層から剥離可能であり、シート本体及び相互に離間する複数の貫通孔を有するパターニングシートを、前記光触媒層に積層し、
前記複数の貫通孔内に重合開始剤層を付着させ、
所定時間経過後に、前記パターニングシートを剥離し、
前記光触媒層及びパターニングされた前記重合開始剤層の上に成膜層を付着させ、
前記成膜層の上に剥離シートを密着して積層することで前記成膜層を真空状態にして、積層体を作成し、
複数のポリマーブラシを前記重合開始剤層上に各々成長させ、
所定時間経過後に、前記積層体から前記剥離シートを剥離し、
前記積層体から、前記剥離シートに覆われていた前記成膜層を除去することにより、
前記光触媒層と、前記光触媒層に設けられ相互に離間する前記複数のポリマーブラシと、前記複数のポリマーブラシ及び前記光触媒層により区画された複数の溝とを有し、大気に露出するポリマーブラシ層とを有する航空機用コーティング膜を製造する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、航空機の機体に付着した虫等の汚れを効率的及び効果的に、且つ、環境負荷を低く洗浄することを図れる。
【0021】
なお、ここに記載された効果は必ずしも限定されるものではなく、本発明中に記載されたいずれかの効果であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施形態に係る航空機の機体を概略的に示す斜視図である。
図2】航空機用コーティング膜を模式的に示す斜視図である。
図3】光触媒層の構造を模式的に示す。
図4】航空機用コーティング膜の構造を模式的に示す。
図5】航空機用コーティング膜の製造方法を模式的に示す。
図6】パターニングシートを模式的に示す。
図7】評価試験結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【0024】
1.航空機の概要
【0025】
図1は、本発明の一実施形態に係る航空機の機体を概略的に示す斜視図である。
【0026】
航空機1の機体は、胴体2と、尾翼3と、一対の主翼4等を有する。航空機1の飛行中には、機体の表面に汚れ(埃、油、虫等)が付着する。特に、飛行中に主翼4の前縁5に虫が衝突して付着しやすい。航空機の機体に虫が付着すると、付着した虫により航空機1の飛行中の摩擦抵抗が増加し、燃費が悪くなるおそれがある。
【0027】
以上のような事情に鑑み、本実施形態に係る航空機1は、一対の主翼4の少なくとも前縁5を含む、航空機1の機体の少なくとも一部に被膜された航空機用コーティング膜を有する。言い換えれば、航空機1の機体の全面に航空機用コーティング膜が被膜されてもよく、一対の主翼4の少なくとも前縁5のみに航空機用コーティング膜がコーティングされてもよく、あるいは、一対の主翼4の少なくとも前縁5及び航空機1の機体の別の表面に航空機用コーティング膜がコーティングされてもよい。航空機用コーティング膜は、付着した汚れ(埃、油、虫等)を取り除きやすい性質を有する。
【0028】
本実施形態で「主翼4の前縁5」は、前縁5を含む主翼4の任意の領域を意味し、例えば、クルーガーフラップを含んでもよい。
【0029】
2.航空機用コーティング膜の構造
【0030】
図2は、航空機用コーティング膜を模式的に示す斜視図である。
【0031】
航空機用コーティング膜100は、母材10に積層される光触媒層20と、光触媒層20に積層されるポリマーブラシ層30とを有する。
【0032】
母材10は、典型的には、一対の主翼4の少なくとも前縁5を含む、航空機1の機体の少なくとも一部である。言い換えれば、母材10は、航空機1の機体の全面でもよく、一対の主翼4の少なくとも前縁5のみでもよく、あるいは、一対の主翼4の少なくとも前縁5及び航空機1の機体の別の表面でもよい。あるいは、母材10は、航空機1の機体の少なくとも一部(より具体的には、一対の主翼4の少なくとも前縁5)に接着可能なシート材でもよい。
【0033】
2-1.光触媒層の構造
【0034】
図3は、光触媒層の構造を模式的に示す。
【0035】
光触媒層20は、複数の溝(後述の溝32)を介して大気に露出し、マイクロオーダーの構造を有する光触媒面25を有し、親水性である。光触媒層20は、塗料21に配合されたマイクロキャプセル22を含む。マイクロキャプセル22は、光触媒23を付着させたマイクロオーダーの樹脂キャプセル24である。光触媒23は、樹脂キャプセル24の表面を覆うように隙間なく付着している。光触媒層20の厚さは、80~100μmである。
【0036】
塗料21は、高耐久性及び親水性材料(例えば、コロイダルシリカ)を含む。
【0037】
樹脂キャプセル24は、例えば、直径約30~50μmの球体の樹脂である。樹脂キャプセル24は、球体表面及び球体内部を同一の樹脂材料で構成しても、互いに異なる樹脂材料で構成してもよい。また球体表面を樹脂材料、球体内部を気体または真空で構成した中空構造であってもよい。
【0038】
光触媒23は、例えば、ナノメートルサイズの酸化チタンである。ここでナノメートルサイズとは、直径が1nm以上、1000nm以下であることを指し、直径は、例えば2nm以上、3nm以上、4nm以上、5nm以上、7nm以上、10nm以上、15nm以上、20nm以上であり、9nm以下、10nm以下、15nm以下、20nm以下、30nm以下、50nm以下、70nm以下、100nm以下、300nm以下、500nm以下、700nm以下である。典型的には、直径1~20nmの酸化チタンである。光触媒23は、太陽光に当たると、表面に酸素ラジカルと呼ばれる強力な活性酸素を発生させる。
【0039】
仮に、光触媒23を直接(樹脂キャプセル24に付着させずに)塗料21に配合すると、塗料21に光触媒23が均一に配合するため、塗料21の表面に露出する光触媒23の数が限定的となる(図示せず)。これに対して、樹脂キャプセル24に光触媒23を付着させたマイクロキャプセル22を塗料21に配合することで、塗料21の表面である光触媒面25から、マイクロキャプセル22が不均一に露出する(図中の楕円Aで囲んだ領域)。露出したマイクロキャプセル22の表面は光触媒23に覆われているため、多数の光触媒23が大気に露出することから、光触媒効果が向上する。汚れ(埃、油等)が付着した光触媒面25に太陽光が当たることで光触媒23が作用し、有機物を分解する。
【0040】
2-2.ポリマーブラシ層の構造
【0041】
図4は、航空機用コーティング膜の構造を模式的に示す。
【0042】
ポリマーブラシ層30は、複数のポリマーブラシ31と、複数の溝32とを有し、大気に露出する。複数のポリマーブラシ31各々は、ポリマーブラシ面35を有する。ポリマーブラシ面35は、大気に露出し、ナノオーダーの構造を有する。ポリマーブラシ面35は、複数のポリマーブラシ31の立体構造による多彩な表面特性(撥液性、低摩擦性、低生体分子付着性、刺激応答性、ナノ材料同士の凝集防止性、接着性等)を持つ。ポリマーブラシ層30の厚さは、20~100nmである。
【0043】
複数のポリマーブラシ31は、光触媒層20の光触媒面25に設けられ、相互に離間する。隣り合う複数のポリマーブラシ31はミリオーダーで離間する。例えば、隣り合うポリマーブラシ31の間隔は1mm~5mmである。複数のポリマーブラシ31各々のサイズはミリオーダーである。例えば、1個のポリマーブラシ31各々のサイズは5mm×5mmの四角形である。
【0044】
複数の溝32は、複数のポリマーブラシ31及び光触媒層20により区画された空間である。複数の溝32の少なくとも一部は相互に流通可能である。図2の例では、複数の溝32は格子状(2方向)に相互に流通可能である。あるいは、複数の溝32は別の形状で(例えば、縞状(1方向)に)相互に流通可能でもよい(図示せず)。
【0045】
複数のポリマーブラシ31は、各々、重合開始剤層33と、ブラシ層34とを含む。
【0046】
重合開始剤層33は、重合反応(繰り返し単位の低分子(モノマー)が結合によって多数連なり、高分子が生成する反応)の起点となる薄膜層である。重合開始剤層33は、重合開始基(重合反応の起点となる官能基)を持つ有機シラン(トリアルコキシシラン)と、テトラアルコキシシランとを含む。重合開始剤層33は、例えば、化学式(1)で表される反応により生成される。CMPTMS(p-chloromethylphenyl trimethoxysilane)はトリアルコキシシランの一例であり、TEOS(tetraethoxysilane)はテトラアルコキシシランの一例である。
【0047】
【化1】
【0048】
ブラシ層34は、重合開始剤層33を起点として重合反応により成長することにより生成される。このように、重合開始剤層33から高分子が伸長したブラシ層34は、高分子(ブラシ層34)と重合開始剤層33とが直接結合するため、耐久性及び安定性に優れる。ブラシ層34は、例えば、化学式(2)で表される反応により、重合開始剤層33と直接結合するように生成される。化学式(2)において、PMDETAはN,N,N',N'',N''-Pentamethyldiethylenetriamineを、SPMKは3-sulfopropyl methacrylate potassium saltを指す。ブラシ層34は、SPMKに代えて、AMPSNa(2-acrylamido-2-methyl-1-propanesulfonic acid sodium salt), PEGMA(poly(ethylene glycol) methacrylate) を用いてもよい。
【0049】
【化2】
【0050】
3.航空機用コーティング膜の製造方法
【0051】
図5は、航空機用コーティング膜の製造方法を模式的に示す。
【0052】
ステップS1:母材10を準備する。母材10は、典型的には、一対の主翼4の少なくとも前縁5を含む、航空機1の機体の少なくとも一部である。言い換えれば、母材10は、航空機1の機体の全面でもよく、一対の主翼4の少なくとも前縁5のみでもよく、あるいは、一対の主翼4の少なくとも前縁5及び航空機1の機体の別の表面でもよい。あるいは、母材10は、航空機1の機体の少なくとも一部(より具体的には、一対の主翼4の少なくとも前縁5)に接着可能なシート材でもよい。
【0053】
ステップS2:母材10に光触媒層20を積層する。具体的には、予め、光触媒23を樹脂キャプセル24に付着させてマイクロキャプセル22を製造し、マイクロキャプセル22を塗料21に配合しておく。マイクロキャプセル22を配合した塗料21を母材に塗布し、乾燥させることで固化させる。これにより、光触媒層20が作製される。
【0054】
ステップS3:光触媒層20にパターニングシート40を積層した後、重合開始剤層33を付着させる。具体的には、予め、重合開始基(重合反応の起点となる官能基)を持つ有機シラン(トリアルコキシシラン)と、テトラアルコキシシランとを、触媒、水及びアルコールと混合することにより、重合開始剤を製造しておく。光触媒層20に重合開始剤(固化すると重合開始剤層33となる)を塗布する。重合開始剤層33の厚さ(高さ)は、数十nmである。
【0055】
ステップS4:パターニングシート40を剥離する。これにより、光触媒層20上にパターニングされた重合開始剤層33を作成する。パターニングシート40は、光触媒層20から剥離可能である。
【0056】
図6は、パターニングシートを模式的に示す。
【0057】
パターニングシート40は、シート本体42と、相互に離間する複数の貫通孔41とを有する。複数の貫通孔41内にそれぞれ複数の重合開始剤層33が作製される。パターニングシート40のシート本体42(貫通孔41でない部分)に溝32が形成される。従って、パターニングシート40は、ポリマーブラシ層30の形状に相当する形状を有する。すなわち、パターニングシート40は、複数の溝32の少なくとも一部が相互に流通可能となる形状を有する(言い換えれば、シート本体42(貫通孔41でない部分)は格子状に相互に連結した形状を有する)。パターニングシート40は、隣り合う複数のポリマーブラシ31がミリオーダーで離間する形状を有する(言い換えれば、隣り合う複数の貫通孔41はミリオーダーで離間する)。パターニングシート40は、複数のポリマーブラシ31各々のサイズがミリオーダーとなる形状を有する(言い換えれば、複数の貫通孔41各々のサイズがミリオーダーである)。例えば、貫通孔41のサイズは5mm×5mm、間隔は1mm~5mmである。パターニングシート40の厚さ(高さ)は、例えば、50μmである。
【0058】
ステップS5:SPMK 2.1g、CuCl2.8mg、PMEDTA 10μLに水 8mLとAscorbic acid 10mgを加え撹拌した溶液を、光触媒層20及び重合開始剤層33に塗布し、室温で2時間反応する。これにより、光触媒層20及びパターニングされた重合開始剤層33の表面に、成膜層36を作製する。なお、反応のスケールは塗布面積で変わるので、上記反応時間は一例である。
【0059】
ステップS6:成膜層36に剥離シート50を密着して積層することにより積層体60を作製する。剥離シート50は、例えば、PET(ポリエチレンテレフタラート)シートである。これにより、成膜層36と剥離シート50との間が真空となる。真空下では、成膜層36への酸素の透過が抑制され、成膜層36の重合反応が活発になる。
【0060】
ステップS7:積層体60を所定時間(2時間程度)放置することにより、重合開始剤層33を起点として重合反応によりブラシ層34が成長する。これにより、重合開始剤層33とブラシ層34とを各々含む複数のポリマーブラシ31が、各々作製される。
【0061】
ステップS8:所定時間(2時間程度)経過後に、剥離シート50を積層体60から剥離する。
【0062】
ステップS9:剥離シート50が除去された積層体60を水で洗浄する。これにより、積層体60から、剥離シート50に覆われていた成膜層36、即ち、重合開始剤層33が形成されていない部分を除去する。これにより、ポリマーブラシ層30が作製される。ポリマーブラシ層30は、光触媒層20に設けられ相互に離間する複数のポリマーブラシ31と、複数のポリマーブラシ31及び光触媒層20により区画された複数の溝32とを有し、大気に露出する。これにより、光触媒層20と、ポリマーブラシ層30とを有する航空機用コーティング膜100が製造される。
【0063】
上記の製造方法に代えて、スクリーン印刷技術を用いて航空機用コーティング膜を製造することも可能である。具体的には以下の通りである。母材10を準備し、母材10に光触媒層20を積層した後、スクリーンシート(図示せず)を密着させる。スクリーンシートは、スクリーン印刷により、複数の貫通孔(例えば1mm×1mm角)が形成されている。光触媒層20に重合開始剤層33を付着させる(ステップS1乃至S3)。シランカップリング剤1%を溶かしたヘキサンまたは基油Durasyn(登録商標)を光触媒層20に擦り付けることで重合開始剤層33を形成する。スクリーンシートを取り除き、パターニングされた重合開始剤層33を作成する。SPMK、CuCl、PMEDTAに水とAscorbic acidを加え撹拌した溶液を光触媒層20及び重合開始剤層33に成膜し、成膜層36に剥離シート50を密着させ、所定時間(2時間程度)放置することにより、成膜層36の重合反応によりブラシ層34が成長する。これにより、重合開始剤層33とブラシ層34とを各々含む複数のポリマーブラシ31が、各々作製される。重合開始剤層33とブラシ層34を水で洗浄する。これによりポリマーブラシ31が形成されていない部分を除去する。ポリマーブラシ層30が作製される。スクリーン印刷技術を用いることにより、より細かいメッシュを作成することができる。
【0064】
4.第1の実験例
【0065】
航空機用コーティング膜100をコーティングしたクルーガーフラップの模型を製作した。比較対象として、既存のコーティング膜をコーティングしたクルーガーフラップの模型を製作した。それぞれの模型を車両の屋根に搭載した。それぞれの車両を虫のいる環境のテストサーキットで走行させた。
【0066】
走行後、それぞれの模型に付着した虫の数(全虫数)をカウントした。それぞれの模型にシャワーで水をかけて20秒間洗浄した。洗浄後、それぞれの模型から離脱した虫の数(洗浄虫数)をカウントした。洗浄率(洗浄虫数/全虫数)(%)を算出した。以上の評価試験を3回実施した。
【0067】
図7は、評価試験結果を示す。
【0068】
既存のコーティング膜に比較して航空機用コーティング膜100の洗浄率が10%程度向上したことが分かる。
【0069】
5.第2の実験例
【0070】
3種類の試験片を準備した。3種類の試験片は、(1)既存コーティング膜、(2)光触媒塗料の全面にポリマーブラシ31を成長させた試験片(光触媒塗料+全面ポリマーブラシ)及び(3)光触媒塗料の一部(メッシュ状)にポリマーブラシ31を成長させた試験片(光触媒塗料+メッシュ状ポリマーブラシ)である。3種類の試験片の大きさは、10cm×10cmである。3種類の試験片に対し、20匹の虫(大きさ1~2mm)を手動で付着させ、一定流量、一定時間の水で洗浄した。洗浄条件は、流量11.8L/min、洗浄時間30sec、試験片とシャワーヘッドの距離200mmである。洗浄後、それぞれの試験片から離脱した虫の数(洗浄虫数)をカウントした。洗浄率(洗浄虫数/全付着虫数[%])を算出した。以上の評価試験をそれぞれ10回実施した。
【0071】
(1)既存コーティング膜の洗浄率は58.7%、(2)光触媒塗料+全面ポリマーブラシの洗浄率は76.5%、(3)光触媒塗料+メッシュ状ポリマーブラシの洗浄率は79%であった。(3)光触媒塗料+メッシュ状ポリマーブラシは、(1)既存コーティング膜に比べ、20%程度洗浄性が向上した。(3)光触媒塗料+メッシュ状ポリマーブラシは、(2)光触媒塗料+全面ポリマーブラシに比べ、2.5%洗浄性が向上した。(3)光触媒塗料+メッシュ状ポリマーブラシは表面に凹凸があるが、(2)光触媒塗料+全面ポリマーブラシは表面に凹凸が無い。このため、表面の凹凸が洗浄性の向上に効果的だと考えられる。
【0072】
6.結語
【0073】
本実施形態に係る航空機用コーティング膜100は、母材10に積層される光触媒層20と、光触媒層20に設けられ相互に離間する複数のポリマーブラシ31と、複数のポリマーブラシ31及び光触媒層20により区画された複数の溝32とを有し、大気に露出するポリマーブラシ層30とを有する。
【0074】
このように、ポリマーブラシ層30は、相互に離間する複数のポリマーブラシ31を有する。隣り合うポリマーブラシ31の間に溝32が存在することで、航空機1の機体に衝突した虫が面的に貼り付くのではなく、複数のポリマーブラシ31に溝32を介して跨るように付着する。このため、虫が面的に貼り付く場合に比べて、虫がポリマーブラシ31から剥離しやすい。さらに、溝32を介して光触媒層20に汚れ(油、塵等)が付着すると、光触媒面25に太陽光が当たることで光触媒23が作用し、汚れに含まれる有機物を分解する。このように、溝32に入り込んだ小さな汚れ(油、塵等)は光触媒23の作用により分解されるとともに、大きな汚れ(虫等)は複数のポリマーブラシ31に跨るように付着することで剥離しやすい。従って、航空機用コーティング膜100によれば、小さな汚れ(油、塵等)と大きな汚れ(虫等)とをそれぞれ効果的に剥離することを図れる。小さな汚れ(油、塵等)は光触媒23により既に分解しているため、光触媒面25から剥離しやすい。航空機1の機体(特に、主翼の前縁)の表面に汚れ(埃、油、虫等)が付着すると、付着した汚れにより飛行中の摩擦抵抗が増加し、燃費が悪くなるおそれがある。これに対して、本実施形態によれば、付着した汚れが剥離しやすいため飛行中の摩擦抵抗の増加を抑制し、燃費の低下を抑制することを図れる。
【0075】
本実施形態によれば、光触媒層20は親水性であり、複数の溝32の少なくとも一部は相互に流通可能である。
【0076】
この様に、複数の溝32は親水性の光触媒層20により区画されており、複数の溝32の少なくとも一部は相互に流通可能である。このため、航空機1の機体から汚れを取り除く際には、洗剤を使用せずに水で機体を洗浄すればよい。複数の溝32を区画する光触媒層20が親水性であるため、航空機1の機体に水をかければ、水が複数の溝32の間を流通する。その結果、溝32を区画する親水性の光触媒面25と、光触媒面25に付着した小さな汚れ(油、塵等)(光触媒23により既に分解されている)との間に、水が入り込み、小さな汚れ(油、塵等)が光触媒面25から剥離する。同時に、水が複数の溝32の間を流通するために、複数のポリマーブラシ31に溝32を介して跨るように付着した大きな汚れ(虫)が剥離する。これにより、小さな汚れ(油、塵等)と大きな汚れ(虫等)とをそれぞれ効果的に剥離することを図れる。さらに、航空機1の機体を水で洗浄すればよいので、環境負荷が低い。
【0077】
本実施形態によれば、隣り合う複数のポリマーブラシ31はミリオーダーで離間する。この様なポリマーブラシ31は、隣り合う複数のポリマーブラシ31がミリオーダーで離間する形状を有するパターニングシート40を用いて作製する。
【0078】
ニーズに応じて様々なミリオーダーのパターニングシート40を作製することで、様々なミリオーダーのポリマーブラシ31を作製することができる。例えば、巨大な虫が多く発生する地域で多く運航する航空機1に用いられる航空機用コーティング膜100は、隣り合う複数のポリマーブラシ31の離間する間隔を広くする。これにより、隣り合う複数のポリマーブラシ31の離間する間隔が狭いために巨大な虫が複数のポリマーブラシ31に面的に貼り付くことを抑制し、巨大な虫が複数のポリマーブラシ31に溝32を介して跨るように付着する。逆に、小さな虫が多く発生する地域で多く運航する航空機1に用いられる航空機用コーティング膜100は、隣り合う複数のポリマーブラシ31の離間する間隔を狭くする。これにより、隣り合う複数のポリマーブラシ31の離間する間隔が広いために小さな虫が溝32内に入り込むことを抑制し、小さな虫が複数のポリマーブラシ31に溝32を介して跨るように付着する。
【0079】
本実施形態によれば、複数のポリマーブラシ31各々のサイズはミリオーダーである。この様なポリマーブラシ31は、複数のポリマーブラシ31各々のサイズがミリオーダーとなる形状を有するパターニングシート40を用いて作製する。
【0080】
ニーズに応じて様々なミリオーダーのパターニングシート40を作製することで、様々なミリオーダーのポリマーブラシ31を作製することができる。例えば、小さな虫が多く発生する地域で多く運航する航空機1に用いられる航空機用コーティング膜100は、ポリマーブラシ31のサイズを小さくする。これにより、大きなポリマーブラシ31に小さな虫が面的に付着することを抑制し、小さな虫が複数のポリマーブラシ31に溝32を介して跨るように付着する。
【0081】
本実施形態によれば、複数のポリマーブラシ31各々は、大気に露出し、ナノオーダーの構造を有するポリマーブラシ面35を有する。
【0082】
ポリマーブラシ面35がナノオーダーの構造を有するため、仮にポリマーブラシ面がよりフラットな表面を有し大きな汚れ(虫等)が面的に貼り付く場合に比べて、大きな汚れ(虫等)がポリマーブラシ面35から剥離しやすく、大きな汚れ(虫等)を効果的に剥離することを図れる。
【0083】
本実施形態によれば、光触媒層20は、複数の溝32を介して大気に露出し、マイクロオーダーの構造を有する光触媒面25を有する。
【0084】
光触媒面25がマイクロオーダーの構造を有するため、仮に光触媒面がよりフラットな表面を有し小さな汚れ(油、塵等)が面的に貼り付く場合に比べて、小さな汚れ(油、塵等)が光触媒面25から剥離しやすく、小さな汚れ(油、塵等)を効果的に剥離することを図れる。
【0085】
本実施形態によれば、光触媒層20は、複数の溝32を介して大気に露出し、光触媒23を付着させたマイクロオーダーの樹脂キャプセル24を含む。
【0086】
仮に、光触媒23を直接(樹脂キャプセル24に付着させずに)塗料21に配合すると、塗料21に光触媒23が均一に配合するため塗料21の表面に露出する光触媒23の数が限定的となる。これに対して、光触媒層20が、光触媒23を付着させた樹脂キャプセル24を含むことで、光触媒面25から、光触媒23が不均一に露出する。露出した多数の光触媒23が大気に露出することから、光触媒効果が向上する。
【0087】
本実施形態によれば、母材10は、主翼4の前縁5を含む、航空機1の機体の少なくとも一部である。
【0088】
飛行中に航空機1の主翼4の前縁5に虫が衝突して付着すると、付着した虫により飛行中の摩擦抵抗が増加し、燃費が悪くなるおそれがある。これに対して、本実施形態によれば、主翼4の前縁5に付着した汚れが剥離しやすいため飛行中の摩擦抵抗の増加を抑制し、燃費の低下を抑制することを図れる。
【0089】
本実施形態によれば、母材10は、航空機1の機体の少なくとも一部に接着可能なシート材である。
【0090】
これにより、ニーズに応じて、航空機1の機体の様々な部位に航空機用コーティング膜100をコーティングすることができる。また、特定期間毎(例えば、1年毎)に航空機用コーティング膜100を貼り替えることも可能である。また、所謂ラッピング航空機のラッピング(広告ラッピング)に使用されることも期待される。
【0091】
本発明の各実施形態及び各変形例について上に説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0092】
1 :航空機
4 :主翼
5 :前縁
10 :母材
20 :光触媒層
23 :光触媒
24 :樹脂キャプセル
25 :光触媒面
30 :ポリマーブラシ層
31 :ポリマーブラシ
32 :溝
33 :重合開始剤層
34 :ブラシ層
35 :ポリマーブラシ面
36 :成膜層
40 :パターニングシート
41 :貫通孔
50 :剥離シート
60 :積層体
100 :航空機用コーティング膜
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7