(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022181408
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】オゾン水除菌加湿器
(51)【国際特許分類】
F24F 6/06 20060101AFI20221201BHJP
F24F 8/26 20210101ALI20221201BHJP
F24F 8/80 20210101ALI20221201BHJP
A61L 9/015 20060101ALI20221201BHJP
A61L 9/12 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
F24F6/06
F24F8/26
F24F8/80 400
A61L9/015
A61L9/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021088338
(22)【出願日】2021-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】521228765
【氏名又は名称】喜内 一彰
(74)【代理人】
【識別番号】100166589
【弁理士】
【氏名又は名称】植村 貴昭
(72)【発明者】
【氏名】喜内 一彰
(72)【発明者】
【氏名】村田 浩貴
【テーマコード(参考)】
3L055
4C180
【Fターム(参考)】
3L055AA07
3L055BA02
3L055DA11
4C180AA02
4C180AA07
4C180AA16
4C180CA06
4C180CA10
4C180EA17X
4C180GG17
4C180GG19
4C180HH01
4C180HH05
4C180HH14
4C180HH19
4C180JJ05
4C180KK03
4C180KK05
(57)【要約】
【課題】オゾン水技術で安全な空間除菌と1シーズンお手入れ不要を実現し、安心と利便性の向上を図ることができるオゾン水除菌加湿器を提供する。
【解決手段】系外の空気をケーシング1内に吸い込み、系外に吹き出すことを可能とするファン2と、水からオゾン水を生成する電極であるオゾン水生成電極41と、オゾン水生成電極41により生成されたオゾン水を溜めることができるフィルタトレイ6と、ケーシング1内の風路上に設けられ、ファン2により生じる風によりフィルタトレイ6内のオゾン水を気化させる加湿フィルタ7とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
系外の空気をケーシング内に吸い込み、系外に吹き出すことを可能とするファンと、
水からオゾン水を生成する電極であるオゾン水生成電極と、
前記オゾン水生成電極により生成されたオゾン水を溜めることができるフィルタトレイと、
前記ケーシング内の風路上に設けられ、前記ファンにより生じる風により前記フィルタトレイ内のオゾン水を気化させる加湿フィルタとを備える
ことを特徴とするオゾン水除菌加湿器。
【請求項2】
内部に前記オゾン水生成電極が配置され、前記オゾン水生成電極により生成されたオゾン水を溜めることができるオゾン水生成トレイと、
前記オゾン水生成トレイに溜められたオゾン水を前記フィルタトレイに供給制御する供給機構とを備える
ことを特徴とする請求項1に記載のオゾン水除菌加湿器。
【請求項3】
前記加湿フィルタは、径方向内側に中空部分を形成するようにして円環状に配されたプリーツ状のシート材を備え、
前記加湿フィルタは、その軸心を回転軸として前記フィルタトレイ内において回転することで、前記シートにオゾン水を行き渡らせる
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のオゾン水除菌加湿器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加湿器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
室内を加湿する加湿器として、水の自然気化やファンによる水の強制気化を行う気化式の加湿器が種々提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の加湿器は、本体内部の菌の繁殖によって不衛生になり、また臭いが発生してしまうので、頻繁に手入れを行う必要があった。
【0005】
本発明では、このような課題に鑑み、オゾン水により安全な空間除菌を行うとともに、手入れの頻度を低減することを実現し、安心と利便性の向上を図ることができるオゾン水除菌加湿器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の観点におけるオゾン水除菌加湿器は、
系外の空気をケーシング内に吸い込み、系外に吹き出すことを可能とするファンと、
水からオゾン水を生成する電極であるオゾン水生成電極と、
前記オゾン水生成電極により生成されたオゾン水を溜めることができるフィルタトレイと、
前記ケーシング内の風路上に設けられ、前記ファンにより生じる風により前記フィルタトレイ内のオゾン水を気化させる加湿フィルタとを備える
ことを特徴とする。
【0007】
より好適には、
内部に前記オゾン水生成電極が配置され、前記オゾン水生成電極により生成されたオゾン水を溜めることができるオゾン水生成トレイと、
前記オゾン水生成トレイに溜められたオゾン水を前記フィルタトレイに供給制御する供給機構とを備える
ことを特徴とする。
【0008】
より好適には、
前記加湿フィルタは、径方向内側に中空部分を形成するようにして円環状に配されたプリーツ状のシート材を備え、
前記加湿フィルタは、その軸心を回転軸として前記フィルタトレイ内において回転することで、前記シートにオゾン水を行き渡らせる
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るオゾン水除菌加湿器によれば、オゾン水により安全な空間除菌を行うとともに、手入れの頻度を低減することを実現し、安心と利便性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施例に係るオゾン水除菌加湿器の概略断面図である。
【
図2】本発明の実施例における、オゾン水生成トレイ周辺の斜視図である。
【
図3】本発明の実施例に係るオゾン水除菌加湿器のキャップ周辺の断面図である。
【
図4】本発明の実施例におけるオゾン水生成トレイ周辺の断面図である。
【
図5】本発明の実施例におけるオゾン水生成電極の配置を説明する模式図である。
【
図6】本発明の実施例における第1伝達機構を下方から見た斜視図である。
【
図7】本発明の実施例における第1伝達機構の断面図である。
【
図8】本発明の実施例における供給機構周辺の正面図である。
【
図9】本発明の実施例におけるハウジング周辺の断面図である。
【
図10】本発明の実施例における加湿フィルタの回転方向を表わす斜視図である。
【
図11】本発明の実施例における加湿フィルタの風路を表わす斜視図である。
【
図12】本発明の実施例における吸込口周辺の断面斜視図である。
【
図13】本発明の実施例に係るオゾン水除菌加湿器の風路を表わす概略断面図である。
【
図14】本発明の実施例におけるフィルタトレイ、加湿フィルタ、加湿フィルタ回転用ギア、コロの正面図である。
【
図15】本発明の実施例におけるフィルタトレイ周辺の断面図である。
【
図16】本発明の実施例における天面パネル周辺の断面図である。
【
図17】本発明の実施例における天面パネル周辺の断面図である。
【
図18】本発明の実施例における前方円盤部及び加湿フィルタ回転用ギアの歯の斜視図である。
【
図19】本発明の実施例に係るオゾン水除菌加湿器の動作を説明するフローチャートである。
【
図20】本発明の実施例に係るオゾン水除菌加湿器の前方側の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係るオゾン水除菌加湿器について、実施例にて図面を用いて説明する。なお、本発明に係るオゾン水除菌加湿器は、加湿のみを目的とした加湿器のみならず、加湿空気清浄機、スポットクーラ、冷風扇等、加湿機能を有する装置全般に適用できるものである。
【実施例0012】
本実施例に係るオゾン水除菌加湿器は、
図1に示すように、主たる構成として、ケーシング1、及び、ケーシング1内に配置された、ファン2、タンク3、オゾン水生成トレイ4、供給機構5、フィルタトレイ6、加湿フィルタ7、制御部8等を備えている。また、図示していないが、ケーシング1には、従来の加湿器同様に、各種スイッチ(運転/停止スイッチ、風量調整スイッチ等)、各種状態を表示するLEDランプ、及び、電源コード等も配置されている。
【0013】
吸込口11はケーシング1の背面下方に形成されており、吹出口12はケーシング1の上面に形成されている。そしてケーシング1内には、吸込口11から吹出口12に至る風路が形成されている。当該風路上には、風の方向を基準として上流側から順に、吸込口11、加湿フィルタ7、ファン2、吹出口12が配置されている。
【0014】
ファン2は、タンク3の後方かつ吹出口12の下方に配置されており、系外の空気を吸込口11から吸い込み、吹出口12から系外に吹き出すことを可能とするものである。
【0015】
図2にも示すタンク3は、詳しくは後述するがケーシング1に対し着脱自在な容器である(ただし
図2ではケーシング1を省略している)。また
図4,20にも示すように、タンク3は、底部にキャップ31を取り付け可能な開口部32を有しており、ケーシング1から取り外した状態において上下を反転させキャップ31を取り外すことで、内部に水道水等の水を溜めることができるものである。
【0016】
図3,4に示すように、ケーシング1の前面側には支持部14が形成されている。支持部14は、上面14bの中心がキャップ31を挿入可能な開口部14aとなっており、当該開口部14aにタンク3に取り付けられた状態のキャップ31が挿入されることで、タンク3を支持することが可能である。
【0017】
すなわちタンク3は、開口部32にキャップ31が取り付けられた状態において、支持部14に対し装着及び取り外し可能となっている。そして、支持部14に装着されたタンク3内の水は、後述するバルブ開閉駆動部52によって例えば100cc程度の一定量ずつ後述するオゾン水生成トレイ4に滴下するようになっている。
【0018】
なおキャップ31については、中心部分に設けられたバルブ31a(その中心に略円柱部材が挿入されているバルブ)が外部から押圧されることで開状態となり、これによりタンク3内部の水が外部に流出(下方に滴下)するといった、加湿器のキャップとして一般的な従来の構造(例えば上記特許文献1等)であるものとする。
【0019】
また、図示していないが、ケーシング1の前面側の外面を為す前面パネル15は、下端15aを回転中心として上端15bが(所定の角度範囲で)回転し開放されることで、ユーザが手前に開くことが可能な構造とする。これにより、ユーザが水を汲むためにタンクを取り外す際の作業が簡単になる。
【0020】
ちなみに、従来はタンク3が背面側又は側面側に装着される形状のものが多かったが、本実施例ではタンク3の装着部分を前面側にすることで、ユーザによるタンク3の装着及び取り外しを容易行うことができるようにしている。
【0021】
オゾン水生成トレイ4は、支持部14の直下かつフィルタトレイ6の前面側に配置されており、支持部14に装着されたタンク3のキャップ31から滴下する水を受けることができるよう、上部が開口したトレイである。また、
図4に示すように、オゾン水生成トレイ4の内側にはオゾン水生成電極41が配置されており、このオゾン水生成電極41によって、タンク3より供給された水からオゾン水を生成し、溜めることができる(
図4ではオゾン水生成トレイ4の内部にオゾン水が溜められた状態を示している)。
【0022】
仮にタンク3を直接オゾン水生成トレイ4にて支持しようとすると、オゾン水生成トレイ4及び後述する供給機構5に高負荷がかかってしまうが、これらの構成要素はその構造上高強度に設計することが難しい。したがって本実施例では、オゾン水生成トレイ4の上部付近にケーシング1の支持部14が形成されるようにし、タンク3はこのケーシング1の支持部14により支持するものとする。
【0023】
これにより、簡単な構造でタンク3を支持する強度を確保することができるとともに、ユーザによるオゾン水生成トレイ4の取り外しが容易になるので、メンテナンス性が向上する。
【0024】
またオゾン水生成トレイ4は、オゾン水生成電極41が完全に水没する水位を確保しつつ、水量を100cc程度の少量に抑えるため、
図4に示すように、オゾン水生成電極41を左右方向いずれか一端側(
図4中では右側端部)に配置し、他端側から中心付近までの底部42を一端側の底部43よりも高くすることで、トレイ容積を減少させるようにしている。
【0025】
さらに、電気分解で生成されるガスによりオゾン水生成電極41の表面の有効面積が下がりオゾン生成濃度が落ちるので、本実施例では、
図5に示すようにオゾン水生成電極41をその短手が鉛直方向となる向きに設置し、ガスが効率よく逃げる配置にした。
【0026】
なお、オゾン水生成トレイ4の一端側の底部43(低い側の底部43)には、バルブ43aが設けられており、これはタンク3のキャップ31のバルブ31aと同様の構造となっている。
【0027】
また、高い側の底部42は、水平ではなく、低い側の底部43に向けて傾斜している。これにより、オゾン水は底部42上に残らずバルブ43aから流路51に流れるようにすることができ、排水性を高めることができる。
【0028】
さらに、オゾン水生成トレイ4の底部の中心位置(高い側の底部42のうち、低い側の底部43との段差部分44近傍)から上方に向くようにして設けられた第1伝達機構45は、後述する第1昇降ラック58による上方向の押圧力をタンク3のキャップ31のバルブ31aに伝達することでバルブ31を開状態とすることが可能となっている。
【0029】
さらに、オゾン水生成トレイ4の底部42における第1伝達機構45の取り付けは、
図6,7に示すように、4箇所のネジ45aによる結束と防水部品による凸凹構造45bにて防水をすることで、製造時のバラつきが限りなく少なく安定した防水構造の組立を行える仕様とした。
【0030】
供給機構5は、
図1,2に示すように、オゾン水生成トレイ4の下方に取り付けられており、オゾン水生成トレイ4内にて生成されたオゾン水を後述するフィルタトレイ6に流通させる略L字型の流路51を有する機構である。
【0031】
また供給機構5は、各伝達機構45,60を介して、タンク3のキャップ31のバルブ31a及びオゾン水生成トレイ4の底部43のバルブ43aをそれぞれ開閉駆動するバルブ開閉駆動部52を有し、フィルタトレイ6へのオゾン水の供給を制御することが可能である。
【0032】
なお、流路51の上端はオゾン水生成トレイ4の底部43(バルブ43aを含む範囲)に接続しており、下端はフィルタトレイ6に対し前方側から接続している。
【0033】
さらに、流路51の底部51aから上方に向くようにして設けられた第2伝達機構60は、後述する第2昇降ラック59による上方向の押圧力をオゾン水生成トレイ4の底部43のバルブ43aに伝達することでバルブ43aを開状態とすることが可能となっている(バルブ31a及び第1伝達機構45と同様の構成)。
【0034】
さらに、流路51の底部51aにおける第2伝達機構60の取り付けは、
図1伝達機構45同様に、4箇所のネジによる結束と防水部品による凸凹構造にて防水をすることで、製造時のバラつきが限りなく少なく安定した防水構造の組立を行える仕様とした。
【0035】
バルブ開閉駆動部52は、
図8,9,20に示すように、ハウジング53、及び、ハウジング53に内包された、ステッピングモータ54(第1ステッピングモータ)、第1ギア55、第2ギア56、第3ギア57、第1昇降ラック58、第2昇降ラック59を備えている。
【0036】
ステッピングモータ54は、断続的に一定の回転角度ずつ回転するモータである。そして
図9に示す第1ギア55は、ステッピングモータ54の回転部分の後面に、ステッピングモータ54の回転部分と回転軸が同一となるようにして固定されている。
【0037】
第1昇降ラック58は、第2ギア56と反対側から第1ギア55に噛合して上下方向に延伸する略直線状のものであり、第1昇降ラック58の上端58aは、ハウジング53に形成された第1孔53aから突出して、オゾン水生成トレイ4の底部42に設けられた第1伝達機構45を、上方向に押圧可能に設けられている。
【0038】
そして、ステッピングモータ54の一方向への回転(
図9においては時計回り)により、第1ギア55を介して第1昇降ラック58が第1伝達機構45を上方向に押圧し、これにより第1伝達機構45がタンク3のキャップ31のバルブ31aを開状態とすることができる。なお、第1昇降ラック58が上方向に移動しない状態においては、バルブ31aは閉状態となっている。
【0039】
また、第2ギア56は第1ギア55と噛合しており、第3ギア57は第2ギア56に噛合している。
【0040】
第2昇降ラック59は、第2ギア56と反対側から第3ギア57に噛合して上下方向に延伸する略直線状のものであり、第2昇降ラック59の上端59aは、ハウジング53に形成された第2孔53bから突出して、流路51の底部51aに設けられた第2伝達機構60を、上方向に押圧可能に設けられている。
【0041】
そして、ステッピングモータの他方向への回転(
図9においては反時計回り)により、第2ギア56及び第3ギア57を介して第2昇降ラック59が上方向に移動すると、オゾン水生成トレイ4の底面43に設けられたバルブ43aを押圧し、これによりバルブ43aを開状態とすることができる。なお、第2昇降ラック59が上方向に移動しない状態においては、バルブ43aは閉状態となっている。
【0042】
すなわち、バルブ開閉駆動部52は、ステッピングモータ54の回転を各昇降ラック58,59の鉛直方向の動作に変換するが、第1昇降ラック58と第2昇降ラック59は、各ギアとの噛み合い上、互いに反対方向に移動するために、オゾン水生成トレイ4のバルブ43aを開状態としてオゾン水生成トレイ4から(流路51を介して)フィルタトレイ6にオゾン水を供給するときは、タンク3のバルブ31aが閉状態となり、タンク3のバルブ31aを開状態としてタンク3からオゾン水生成トレイ4に水を供給するときは、オゾン水生成トレイ4のバルブ43aを閉状態となる。これにより、滴下制御を高精度で行うことができる。
【0043】
なお、ハウジング53の一部は各昇降ラック58,59の鉛直方向への移動をガイドする形状となっている。これにより、各昇降ラック58,59が上述した移動を行うことができる。
【0044】
また、ハウジング53の内側において、第1昇降ラック58の形状の一部が凸形状の係止部58bとなっている。係止部58bは孔53aを通ることができない形状及び大きさとなっている。
【0045】
これにより、仮に第1昇降ラック58をユーザが物理的に動かしてしまった場合でも、ハウジング53から抜き取ることはできず、ステッピングモータ54の位置範囲が想定の挙動範囲内となるため、ステッピングモータ54の制御時の位置決め動作を必要最低限の短い時間で済ませることが可能となる。
【0046】
フィルタトレイ6は、上部が開口した容器であり、
図1に示すようにケーシング1内の底部のうちファン2の下方位置に配置されている。フィルタトレイ6は供給機構5の流路51と連通しており、流路51を介してオゾン水生成トレイ4から供給されたオゾン水を溜めることが可能である。
【0047】
また
図1に示すように、ファン2の下方において、フィルタトレイ6内には加湿フィルタ7が設置されている。ただし、フィルタトレイ6の高さは加湿フィルタ7よりも低く設計し、加湿フィルタ7はフィルタトレイ6に対して下方側が内包され上方側がフィルタトレイ6から露出するようにして載置されている。これにより、加湿フィルタ7はケーシング1内の風路上に位置し、ファン2により生じる風によりフィルタトレイ6内のオゾン水を気化させることができる。
【0048】
図10,11を用いて詳述すると、加湿フィルタ7は、径方向内側に中空部分71aを形成するようにして円環状に配されたプリーツ状のシート材71(不織布から成る)と、シート材71を前後方向(軸心方向)両端側から挟むようにして固定する前方円盤部72及び後方円盤部73とを有する(ただし、
図10では前方円盤部72を省略している)。なお、プリーツ状のシート材71における山と山との間を隙間71bと呼称するものとする。
【0049】
また、後方円盤部73は中空部分71aに対応する位置及び大きさに形成された開口部73aを有するものとする。また、開口部73a及び中空部分71aは、背面側(吸込口11側)を向いている。
【0050】
加湿フィルタ7の前方側にはタンク3、オゾン水生成トレイ4、供給機構5が配置されているため、加湿フィルタ7に形成される風路としては、
図11中に矢印で示すように、ファン2の駆動時において、系外の空気を後方円盤部73の開口部73a側から吸い込み、中空部分71aを通りシート材71を透過するようにして径方向外側(ただし、主にファン2が配置されている方向(上方向))に吹き出すようにする。つまり、中空部分71aが風路の一部となる。なお、前方円盤部72には開口部は形成されていない。
【0051】
さらに、
図1,3に示すように、ケーシング1の吸込口11は、前後方向(軸方向)に延伸した中空円筒形状に形成され、加湿フィルタ7の後方円盤部73の開口部73aに挿入されている(中空部分71aの軸心方向中央部付近まで挿入されている)。
【0052】
さらに、
図12に示すように、吸込口11の周面11aに複数の通風穴11bが形成されるようにしてもよい。通風穴11bを設けることで、ファン2駆動時において、吸込口11の先からの風の曲がりを抑制し風の均一性を確保することにより、加湿性能効率を上げることができる。
【0053】
従来は加湿フィルタ7を稠密(中空部分71aがない状態)としており、その外周を風路の一部として設計せざるを得なかったため、
図13の破線矢印のように、加湿フィルタ7を通らない無駄な風が生じ、性能(加湿性能及び低騒音)の効率が悪かったが、本実施例では、加湿フィルタ7の内部が風路となっているので、吸込口11を上述のように設計することで、
図13の矢印に示すように、吸い込み空気は加湿フィルタ7の外側には向かわず、全て加湿フィルタ7の中空部分71aに向かい、そこから径方向外側に向かうようになるので、無駄な風が生じず、性能効率が向上する。
【0054】
また、従来の加湿フィルタのシート材には親水処理を行うものが多いが、本実施例のようにオゾン水を用いた場合、親水処理を行うとオゾンが消費されてしまい有効に活用できないばかりか、親水処理材が分解され親水性がなくなってしまう。
【0055】
したがって本実施例においては、シート材71に親水処理を施さず、
図10中に矢印で示すように、略円筒形状の加湿フィルタ7の軸心を回転軸としてフィルタトレイ6内にて周方向に回転させることで、シート材71をフィルタトレイ6内に溜められたオゾン水に潜らせて、各隙間71bにてオゾン水をすくい上げることで、シート材71にオゾン水を行き渡らせるようにする。
【0056】
仮にシート材が従来のように毛細管現象等の親水処理により水を吸い上げるものであるとすると、シート材にスケールが溜まることで毛細管現象による吸い上げが妨げられるため、頻繁に手入れを行う必要がある。一方本実施例では、シート材71をオゾン水に潜らせてオゾン水をすくい上げるものであるため、スケールが堆積しても加湿性能の低下が少なく、それにより手入れの頻度を低減することができる。
【0057】
さらに、シート材71の保持水量が多いと、オゾン水を供給した際に濃度が薄まってしまい、効果が低くなるため、シート材71は密度(目付量)を90g/m2以下の不織布でプリーツのピッチを4mm以上とした。
【0058】
また、加湿フィルタ7は稠密円柱状ではなく中空部分71aが風路になっているため、中心に回転軸を配置しづらく回転が不安定になる可能性があるので、本実施例では、
図14に示すように、フィルタトレイ6における前方円盤部72の下方位置2箇所に、前方円盤部72を水平方向に固定するとともに鉛直方向に支持するようにコロ61を配置し、また、図示していないが、フィルタトレイ6における後方円盤部73の下方位置2箇所に、後方円盤部を水平方向に固定するとともに鉛直方向に支持するようにコロ61を配置する。
【0059】
さらに、前方円盤部72の外周面には歯72aが形成されており、前方円盤部72がギアの役割を担うようにする。そして本実施例では、前方円盤部72の歯72aに噛合する加湿フィルタ回転用ギア74、及び、加湿フィルタ回転用ギア74を回転制御する加湿フィルタ回転用モータ75(第2ステッピングモータ)を備えている。これにより、加湿フィルタ7を周方向に回転制御することができる。
【0060】
なお、
図14の一点鎖線で示すように、加湿フィルタ回転用ギア74は、前方円盤部72を支持するコロ61のうち一方の鉛直方向上方位置に配置される。このように配置することで、加湿フィルタ回転用ギア74の回転により加湿フィルタ7がコロ61に乗り上げ斜めに回転してしまうことを防ぐことができる。
【0061】
また、既に述べたとおり、本実施例ではオゾン水をオゾン水生成トレイ4内にて生成してから供給機構5を介してフィルタトレイ6に供給する。これにより、オゾン水が一方向に流れることになり、不揮発分の濃縮を防ぐことができ、オゾン水生成トレイ4内に配置されたオゾン水生成電極41の長寿命化を図ることができる。
【0062】
つまり、仮に、加湿フィルタ7を設置したフィルタトレイ6にオゾン水を溜め、そのオゾン水を加湿フィルタ7に供給するものとした場合、気化と共に不揮発分が濃縮されフィルタトレイ7内のTDS値が上昇してしまう。この状況下にオゾン水生成電極41を配置すると、電極の電流値が上昇し寿命が著しく低下してしまう。これを防ぐため、本実施例においては、オゾン水をオゾン水生成トレイ4内にて生成してからフィルタトレイ6に供給している。
【0063】
さらに、供給したオゾン水は全て加湿フィルタ7に吸わせてフィルタトレイ6には水が残らないようにすることで、固形分汚れは加湿フィルタ7に集約され、加湿フィルタ7以外(フィルタトレイ6等)に付着する汚れを軽減することができ、洗浄が簡単になる。
【0064】
また本実施例では、10分~2時間の間に2分間オゾン水生成電極41に通電しオゾンを生成(平均ONduty3%程度)し加湿フィルタ7へ供給する機構及び制御とした。加湿フィルタ7へ供給されたオゾン水の半減期が約30分、供給濃度0.4mg/L、12.5分以下でほとんどの菌が99.9%抑制可能となる。
【0065】
さらに本実施例では、
図15に示すように、フィルタトレイ6の底部62が、略円筒形状であるフィルタトレイ6の外周面に沿った形状(ラウンド型)となっており、底部62の最下部(中心位置)に形成された凹部62aには、静電容量の変化を検知する水検知センサ63が配置されている。ただし、水検知センサ63は静電容量型近接(レベル)センサであるものとする。
【0066】
従来はフィルタトレイ内の水位をフロートにより検知していたが、本実施例では、
図15に示すようにフィルタトレイ6内には少量(100cc程度)のオゾン水しか溜まらないように制御しているため、従来のようにフロートで検知するのが難しい。したがって、ラウンド型とした底部62に水検知センサ63を配置することで、フィルタトレイ6内の少量のオゾン水の有無を検知することができる。
【0067】
図1に示す制御部8は、各種センサからの検出値が入力されるとともに、これに基づき各種制御を行うものである。例えば、手入れ、点検、交換の必要ありを知らせる表示も制御する。なお、当該表示はLEDの点灯等によって行われる(スピーカを用いて音によって知らせるものとしてもよい)。
【0068】
図4に示すように、オゾン水生成電極41には電流値を測定する電流センサ81を設置する。制御部8は、電流値の閾値テーブルが設けられており、電流センサ81によって測定された電流値に基づき、手入れ、点検、交換の必要の有無を判定し、表示制御を行う。例えば、電流値が20mA以下である場合は、手入れの必要ありを知らせる表示(LED点灯)となるように制御し、電流値が1mA以下である場合は、点検あるいは交換の必要ありを知らせる表示(LED点滅)となるように制御する。
【0069】
これにより、運転時間の積算で手入れの必要ありを知らせる従来の技術に比べ、高精度で手入れ、点検、交換の必要ありをユーザに知らせることができる。
【0070】
また、
図1に示すように、系外の湿度を測定する湿度センサ82をケーシング1の任意の位置に設置する。制御部8は、系外の湿度と水検知センサ63のON(フィルタトレイ6内にオゾン水あり)からOFF(フィルタトレイ6内にオゾン水なし)までの時間との関係の適正値テーブルが設けられており、湿度センサ82によって測定された湿度、及び、水検知センサ63のONからOFFまでの時間に基づき、加湿異常による手入れの必要の有無を判定し、表示制御を行う。
【0071】
また、本実施例では、既に説明したように、オゾン水を100cc程度の小刻みに生成及び供給する必要がある。そのために約100cc毎に水をオゾン水トレイに貯める必要があるが、従来の安価に2つのバルブの開閉が制御されるような構造のタンクでは、タンクを設置した時に、タンクの壁面が圧力差で変形する分必ず水がでてしまい、供給水量が多くなってしまう。これにより、オゾン水生成トレイ4に水がある状態からタンク3を設置すると水があふれてしまうことがあり得る。
【0072】
したがって本実施例では、既に説明したように、タンク3のキャップ31のバルブ31aの開閉をバルブ開閉駆動部53により電動で行い、オゾン水を生成するとき以外はバルブ31aを閉状態とする。また、タンク3の壁面33(
図3)を扇状にすることで壁面33の面強度を上げる。これらにより、タンク3の着脱ではオゾン水生成トレイ4から水が落ちないようになる。
【0073】
さらに、本実施例では、ケーシング1の天面の一部を回転可能な天面パネル16とし、吹出口12(ルーバ)は天面パネル16に形成されるものとしてもよい(
図16,17)。これにより天面パネル16を回転させることで風向きを変更することができる。
【0074】
また、フィルタトレイ6とタンク3を同じ方向から取り出すものとすると、ケーシング1の前方側におけるフレーム形状がコの字とする(フィルタトレイ6及びタンク3を取り出すことができる大きな穴が形成されているようにする)必要があるが、それによりケーシング1の前方側のフレーム強度が低下してしまう。
【0075】
そこで本実施例では、吸込口11、及び、吸込口11が固定されルーバを有するケーシング1の背面の背面パネル17を取り外し可能とし、フィルタトレイ6及び加湿フィルタ7をケーシング1の背面側から取り出せるようにする。これにより、ケーシング1の前方側を大きな穴のフレーム形状とする必要がなくなるため、ケーシング1の前方側のフレーム強度を向上させることができ、当該フレーム部分に形成されている支持部14を強度部品とすることができる。
【0076】
また本実施例では、既に説明したように、タンク3を支持部14に保持させ、支持部14の中央に形成された開口部14aにタンク3のキャップ31部分を差し込む構造としている。
【0077】
上述のような構造とすると、タンク3のキャップ31の脇から水滴が垂れて支持部14の上面14bに垂れることが有り得る。したがって、
図4に示すように、水垂が発生するタンク3を保持する支持部14の上面14bにおいては、端縁部分から中央の開口部14aに向けて勾配を設けることで、上面14bの水滴が自動的にオゾン水生成トレイ4へ落ちるようになり、支持部14の上面14bに水が溜まらず清潔さを保つことができるようにしている。
【0078】
また本実施例では、一度フィルタトレイ6及び加湿フィルタ7をケーシング1から取り外した後、再度取り付ける際に、加湿フィルタ7の前方円盤部72の歯72aと加湿フィルタ回転用ギア74の歯74aとを回転軸方向から噛み合せる必要があるが、この噛み合いが悪い場合が起こり得る。
【0079】
したがって、
図18に示すように、フィルタトレイ6の挿入時に向かい合う前方円盤部72の歯72aと加湿フィルタ回転用ギア74の歯74aそれぞれの相対向する面76,77を、三角形状に尖らせることで、どっつきを防止し、噛み合わせやすい形状とした。また、フィルタトレイ6の挿入(歯の噛み合い)が不十分でも背面パネル17を取り付ける際に挿入出来るように押し込むガイドを設けてもよい。
【0080】
さらに、歯車同士が完全に噛み合っていない状態においては、フィルタトレイ6がケーシング1の背面側から若干突出するため、ユーザが気づかずに背面パネル17を閉めようとしても閉まらずに、異常に気づきやすくなっており、安全性を確保することができる。
【0081】
さらに、ユーザが数日間運転停止したままの状態が続くと水が残る機器内(加湿フィルタ7及びフィルタトレイ6)で菌が繁殖してしまうため、運転停止時間をカウントし、48時間以上止まった場合は、機器内を強力に除菌を行う。
本実施例では、
図19のフローチャートのとおり、オゾン水濃度を高めた強力除菌動作を設けた。
【0082】
なお、
図19のフローチャートは制御部8による処理を中心に記載している。
図19における単語は、下記のとおり定義される。
【0083】
O3M:ステッピングモータ54
【0084】
O3M時計回り動作:O3M(ステッピングモータ54)を時計回りに670パルス、200ppmで動作させる。これにより、タンク3のバルブ31aを閉状態とし、オゾン水生成トレイ4のバルブ43aを開状態とし、オゾン水生成トレイ4内のオゾン水をフィルタトレイ6に供給する。
【0085】
O3M時計反回り動作:O3M(ステッピングモータ54)を反時計回りに670パルス、200ppmで動作させる。これにより、タンク3のバルブ31aを開状態とし、オゾン水生成トレイ4のバルブ43aを閉状態とする。
【0086】
湿度風量制御:環境湿度に応じて自動モードの風量ノッチを決定する。好ましくは、40%RH以下なら「強」、41~54%RHなら「中」、55%RH以上なら「弱」とする。風量切換後、5分間は再切換を行わない(短時間に頻繁に切換えない)。
【0087】
加湿フィルタ回転動作:加湿フィルタ回転用モータ75を反時計回りに100ppsで間欠動作させる。好ましくは、間欠サイクルは5分回転の後10分停止を1サイクルとし、回転動作からスタートする。
【0088】
水検知:水検知センサ63からオゾン水の有/無をHi/Lo信号で受ける。
【0089】
加湿判定動作:加湿量の極度低下を検出し、手入れをユーザに伝える。これにより、加湿フィルタ7に多量のスケール堆積時、及び、加湿フィルタの付け忘れ時を検出することができる。
【0090】
スイッチON後の最終滴下:電源スイッチON後の滴下を0hとして時間カウントを開始する。なお、滴下する度に時間カウントを0hに戻す。さらに、カウントが一定値を超えたら加湿量の極度低下と判定し、手入れをユーザに伝える
【0091】
最終滴下:電源スイッチOFF中も時間カウントを行い、長時間停止(雑菌繁殖リスク)を検出し、強力除菌動作を行う。滴下する度に時間カウントを0hに戻す。
【0092】
手入れ表示:ユーザに加湿フィルタ、オゾン水生成トレイのクエン酸洗浄を促すため、メンテナンス(手入れ)の必要有りを知らせるLEDを点灯させる。なお、メンテナンスをしても表示が消えず、取説Q&Aに該当がない場合は、オゾン水生成トレイを交換する。
【0093】
点検表示:オゾン水生成電極の通電異常(「電流流れず」or「電流流れ過ぎ」)。ただし、「電流流れ過ぎ」は、水道水以外の超硬水やジュースなどが使用されたときに電極保護のために止めるものとし、「電流流れず」は、オゾン水生成トレイの取り付け不良、オゾン水電極寿命を検出するものとする。
【0094】
除菌加湿動作停止:異常判定時に除菌加湿関連動作を停止する。すなわち、O3M時計回り動作、及び、加湿フィルタの回転動作を停止する。除菌加湿動作停止中は、自動モードの風量は「弱」に固定する。
【0095】
素子通電時間2倍指令:オゾン水生成電極へのスケール堆積によりオゾン水濃度が下がり過ぎることを防ぐため、素子通電時間2倍指令がONされた後は、全てのO3素子通電時間を2倍に変更する。
【0096】
マイクロスイッチ前脱着検出:前面パネル15の開閉動作が行われたことを検出する。検出すると、タンクに給水されたと推定し、除菌加湿動作を再開させる。
【0097】
このようにして本実施例では、オゾン水技術で安全な空間除菌と1シーズンお手入れ不要を実現し、安心と利便性の向上を図ることができる。