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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022181421
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】ワイパアームの連結構造
(51)【国際特許分類】
   B60S 1/40 20060101AFI20221201BHJP
【FI】
B60S1/40 300B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021088356
(22)【出願日】2021-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000144027
【氏名又は名称】株式会社ミツバ
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柏原 啓希
(72)【発明者】
【氏名】西川 智哉
【テーマコード(参考)】
3D225
【Fターム(参考)】
3D225AA01
3D225AB01
3D225AC01
3D225AD03
3D225AD09
3D225AE25
(57)【要約】
【課題】ワイパアームの連結構造において、ワイパブレードの着脱の作業性の向上を図る。
【解決手段】ワイパアームに設けられた連結軸部と、ワイパブレードに設けられたスナップフィット部12aとを備えたワイパアームの連結構造である。スナップフィット部12aは、上記連結軸部と係合可能な溝部12dを構成する一対の爪部12b,12cを備え、ワイパブレードの長手方向Lにおいて、一対の爪部12b,12cの両側に、互いに対向する内壁12h,12iによって構成されたスリット部12e,12fが設けられている。そして、内壁12hにスリット部内に向けて突出する突起部12jが設けられ、かつ内壁12iにスリット部内に向けて突出する突起部12kが設けられ、突起部12j,12kは、上記連結軸部の軸方向Nに沿った方向において互いにずれて配置されている。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイパアームと、
前記ワイパアームに連結されるワイパブレードと、
前記ワイパアームに設けられた第1連結部と、
前記ワイパブレードに設けられ、前記第1連結部と連結される第2連結部と、
を備えたワイパアームの連結構造であって、
前記第1連結部または前記第2連結部の何れか一方は、前記ワイパアームの幅方向に沿って延在する連結軸部であり、
前記第1連結部または前記第2連結部の何れか他方は、前記連結軸部と係合可能な溝部を構成する一対の爪部を備え、
前記一対の爪部は、前記溝部の開口幅を広げる方向に撓む可撓性を有し、
前記ワイパブレードの長手方向に沿った方向において、前記一対の爪部の両側に、互いに対向する内壁によって構成されたスリット部が設けられ、
前記対向する内壁の何れか一方に、前記スリット部内に向けて突出する第1突起部が設けられ、かつ、前記対向する内壁の何れか他方に、前記スリット部内に向けて突出する第2突起部が設けられ、
前記第1突起部および前記第2突起部は、前記連結軸部の軸方向に沿った方向において、互いにずれて配置されていることを特徴とするワイパアームの連結構造。
【請求項2】
前記第1突起部および前記第2突起部は、前記スリット部の開口端に位置するように前記対向する内壁に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のワイパアームの連結構造。
【請求項3】
前記第1突起部および前記第2突起部は、前記連結軸部の軸方向と直交する方向において、互いの一部が重なっていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のワイパアームの連結構造。
【請求項4】
前記対向する内壁は、前記スリット部の開口端に向かうにつれて前記スリット部の開口幅が徐々に広がるように形成されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のワイパアームの連結構造。
【請求項5】
前記第1連結部は、前記連結軸部であり、かつ、前記第2連結部は、前記一対の爪部であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のワイパアームの連結構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイパアームの連結構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両にはワイパ装置が搭載されている。ワイパ装置は、駆動源であるワイパモータと、ワイパモータの駆動により揺動されるワイパアームと、ワイパアームの先端側に装着されるワイパブレードとを備えている。ワイパアームとワイパブレードとは、例えば特許文献1に記載されている連結構造によって連結される。上記特許文献1に記載されている連結構造では、ワイパアームに設けられた取付け用の溝部と、ワイパブレードに設けられた連結軸部とを係合させることによってワイパアームとワイパブレードとが連結される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-44501号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載されたワイパアームとワイパブレードの連結構造においては、ワイパブレードを、着脱を行う姿勢(着脱姿勢)にした時と、着脱を行わない姿勢(回動姿勢)にした時とで、連結軸部と取付け用の溝部(溝入口部)の幅寸法の大小関係を変えることにより、ワイパブレードのワイパアームに対する着脱および固定を可能としている。
【0005】
しかしながら、ワイパアームの払拭動作中にワイパブレードが多少回転してもワイパアームからワイパブレードが外れてしまわないように、回動姿勢と着脱姿勢とでワイパブレードの位置が大きく変わるように設定する必要がある。すなわち、回動姿勢の際には、取付け用の溝部の幅寸法が連結軸部の直径より小さくなるように設定し、着脱姿勢の際には、取付け用の溝部の幅寸法が連結軸部の直径より大きくなるように取付け用の溝部の幅寸法と連結軸部の直径を設定する必要がある。このとき、取付け用の溝部の幅寸法が連結軸部の直径より大きくなるようにするワイパブレードの回転角度の範囲が狭い。つまり、ワイパブレードを着脱姿勢にするためのワイパブレードの回転角度の範囲が狭い。したがって、ワイパブレードの着脱作業の際にはワイパブレードを大きく回転させなくてはならず、広いスペースが必要となり、ワイパブレードの着脱の作業性が悪かった。
【0006】
本発明の目的は、ワイパブレードの着脱の作業性の向上が図られたワイパアームの連結構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、ワイパアームと、前記ワイパアームに連結されるワイパブレードと、前記ワイパアームに設けられた第1連結部と、前記ワイパブレードに設けられ、前記第1連結部と連結される第2連結部と、を備えたワイパアームの連結構造であって、前記第1連結部または前記第2連結部の何れか一方は、前記ワイパアームの幅方向に沿って延在する連結軸部であり、前記第1連結部または前記第2連結部の何れか他方は、前記連結軸部と係合可能な溝部を構成する一対の爪部を備え、前記一対の爪部は、前記溝部の開口幅を広げる方向に撓む可撓性を有し、前記ワイパブレードの長手方向に沿った方向において、前記一対の爪部の両側に、互いに対向する内壁によって構成されたスリット部が設けられ、前記対向する内壁の何れか一方に、前記スリット部内に向けて突出する第1突起部が設けられ、かつ、前記対向する内壁の何れか他方に、前記スリット部内に向けて突出する第2突起部が設けられ、前記第1突起部および前記第2突起部は、前記連結軸部の軸方向に沿った方向において、互いにずれて配置されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ワイパアームの連結構造において、ワイパブレードの着脱の作業性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明のワイパアームの連結構造を示す斜視図である。
図2図1に示すワイパアームの連結構造における連結部の詳細構造を示す部分拡大断面図である。
図3図2に示す連結軸部の軸方向に沿って切断した断面図である。
図4図2に示すワイパアーム側の連結部の構造を示す部分拡大断面図である。
図5図2に示すワイパブレード側の連結部の構造を示す拡大斜視図である。
図6図5に示す連結部をワイパブレードに組付けた構造を示す部分拡大図である。
図7図5に示す連結部における突起部の突起方向を説明する図であり、(a)は比較例の突起部の模式図、(b)は本実施の形態の突起部の模式図である。
図8図5に示す連結部における突起部の隙間の関係を示す模式図である。
図9】本発明のワイパアームの連結構造におけるワイパブレードの誤組防止状態を示す部分断面図である。
図10】本発明の連結部における第1変形例の突起部の構造を示す模式図である。
図11】本発明の連結部における第2変形例の突起部の構造を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。
【0011】
図1に示すワイパアーム10の連結構造は、例えば、自動車等の車両に設けられたリヤガラスを払拭するリヤワイパ装置(図示せず)を形成する。ワイパアーム10の連結構造は、細長いワイパアーム10と、ワイパアーム10に連結されるワイパブレード12と、ワイパアーム10に設けられた第1連結部と、ワイパブレード12に設けられ、かつ、上記第1連結部と連結される第2連結部と、を有している。なお、ワイパアーム10は、アームヘッド11によって回動自在に支持されている。
【0012】
また、ワイパブレード12は、該ワイパブレード12の長手方向Lにおいて、ワイパアーム10の先端部付近の箇所に回動自在に連結されている。一方、ワイパアーム10の基端側には、上記ワイパ装置を形成するワイパモータの出力軸(図示せず)が固定されている。
【0013】
そして、車室内等に設けたワイパスイッチをオン操作することで、上記ワイパモータの出力軸が正逆方向に回転してワイパアーム10が揺動する。これにより、ワイパブレード12が備えるブレードラバー13が上記リヤガラス上の所定の範囲を往復払拭動作し、その結果、上記リヤガラスの払拭面に付着した雨水等が払拭される。
【0014】
ワイパアーム10は、プラスチック等の樹脂材料を射出成形することで棒状に形成され、ワイパアーム10の先端側の太さは、基端側の太さよりも細く形成されている。より具体的には、ワイパアーム10は、その基端側から先端側に向かうにつれて徐々に細くなる先細り形状に形成されている。これにより、ワイパアーム10のデザイン性の向上が図られている。
【0015】
ワイパアーム10とワイパブレード12とは、上記第1連結部と上記第2連結部とからなる連結部を介して連結されている。具体的には、上記連結部を構成する上記第2連結部を支持する取付け部12gは、ワイパブレード12の長手方向Lの所定の位置に固定され、かつ、ワイパアーム10とワイパブレード12との間に位置している。また、取付け部12gは、ブレードラバー13が設けられたワイパブレード12を把持するように取付けられている。そして、上記第2連結部は、上記第1連結部に回動自在かつ着脱自在に係合している。
【0016】
なお、ワイパアーム10には、上記リヤガラスに向けてワイパアーム10を倒す方向に押圧力が作用しており、したがって、ワイパブレード12の往復払拭動作時において、ワイパアーム10からワイパブレード12が脱落するようなことは無い。そして、上記押圧力は、ワイパアーム10の基端側に設けられた引っ張り用のスプリング14のバネ力により発生する。
【0017】
ここで、ワイパアーム10は、図3に示すように、互いに対向する一対の側壁10a,10bを備えている。そして、上記第1連結部または上記第2連結部の何れか一方は、図1に示すワイパブレード12の長手方向Lに交差する図3に示すワイパアーム10の幅方向Mに沿って延在し、ワイパアーム10の一対の側壁10a,10bに接合された連結軸部10cである。また、上記第1連結部または上記第2連結部の何れか他方は、連結軸部10cと係合可能な図2に示す溝部12dを構成する一対の爪部12b,12cを備えたスナップフィット部12aである。本実施の形態では、図4に示すように、ワイパアーム10に設けられた上記第1連結部が連結軸部10cであり、図2に示すように、ワイパブレード12に設けられた上記第2連結部がスナップフィット部12aである場合について説明する。
【0018】
なお、スナップフィット部12aが備える一対の爪部12b,12cは、ワイパブレード12の長手方向Lに沿って並んで設けられるとともに、互いに可撓性を有している。
【0019】
そして、図2に示すように、ワイパアーム10側の連結軸部10cと、ワイパブレード12側の溝部12dと、が係合している。具体的には、スナップフィット部12aに溝部12dが形成されており、ワイパアーム10に設けられた連結軸部10cと、ワイパブレード12に取付けられたスナップフィット部12aの溝部12dと、が係合している。つまり、ワイパアーム10に設けられた連結軸部10cと、ワイパブレード12に取付けられたスナップフィット部12aと、がスナップフィット結合している。この時、スナップフィット部12aが連結軸部10cに対して所望の角度回動可能となるように、連結軸部10cと溝部12dとが係合している。
【0020】
また、図3に示す連結軸部10cは、円筒形であり、この連結軸部10cの軸方向N(軸部の延在方向)に直交する方向の連結軸部10cの図4に示す切断面の外周形状は、円形である。一方、スナップフィット部12aには、略円筒形の溝部12dが形成されている。そして、略円筒形の溝部12dに円筒形の連結軸部10cが回動可能となるように嵌め込まれている。
【0021】
具体的には、図2に示すように、ワイパブレード12に取付けられたスナップフィット部12aにおいて、一対の爪部12b,12cによって構成される溝部12dは、該溝部12dの内周面の断面形状が円形に形成されている。そして、溝部12dの内周面の円の直径は、連結軸部10cの円の直径よりも僅かに大きい。これにより、スナップフィット部12aは、連結軸部10cに対して所望の角度回動可能に係合される。
【0022】
なお、図6に示すように、スナップフィット部12aの一対の爪部12b,12cの互いに対向する部分の距離Sは、図4に示す円形の連結軸部10cの直径Rより小さい。すなわち、一対の爪部12b,12cの互いに対向する部分の距離Sは、溝部12dの開口幅でもあるため、R>Sであることが好ましい。これにより、ワイパアーム10の動作により、車両のリヤガラス等の払拭面を払拭している時に、連結軸部10cからスナップフィット部12aが外れることを防止できる。
【0023】
そして、本実施の形態のワイパアーム10の連結構造では、ワイパアーム10とワイパブレード12の連結に、スナップフィット部12aによる連結を採用したことで、連結軸部10cを溝部12dに挿入する際に爪部12b,12cが撓み、一時的にS>Rとなるため、連結軸部10cを溝部12dに挿入することができる。
【0024】
また、図2に示すように、ワイパブレード12の長手方向Lに沿った方向において、一対の爪部12b,12cの両側には切り込み部であるスリット部12e,12fが設けられている。具体的には、爪部12bの外側(爪部12bの溝部12dと反対側)にスリット部12eが設けられ、爪部12cの外側(爪部12cの溝部12dと反対側)にスリット部12fが設けられている。言い換えると、爪部12bの両側および爪部12cの両側は、それぞれ空間部である。
【0025】
したがって、一対の爪部12b,12cのそれぞれは、ワイパブレード12の長手方向Lに沿った方向において、溝部12dから遠ざかる方向に撓むことが可能である。つまり、一対の爪部12b,12cのそれぞれは、ワイパブレード12の長手方向Lにおいて溝部12dから遠ざかる方向に撓む可撓性を有している。言い換えると、一対の爪部12b,12cは、図6に示す溝部12dの開口幅Sを広げる方向に撓む可撓性を有している。
【0026】
以上により、本実施の形態のワイパアーム10の連結構造では、スナップフィット部12aによる連結を採用したことで、ワイパアーム10とワイパブレード12の組付けにおいて、図1に示すような組付けやすい挿入力Qで、かつ、抜けにくい抜去力Pを実現することが可能になる。
【0027】
ここで、一対の爪部12b,12cのそれぞれが、溝部12dから遠ざかる方向に撓むことにより得られる効果について説明する。例えば、爪部12b,12cのそれぞれをワイパブレード12の幅方向M(図3参照)に沿って撓ませようとする場合、ワイパブレード12がその幅方向Mに大型化する。ワイパブレード12による払拭動作中に、車両の運転手の視界の妨げになってはならないため、ワイパブレード12の幅方向Mが大きくなることは避けなければならない。
【0028】
一方、爪部12b,12cのそれぞれをワイパブレード12の長手方向L(図2参照)に撓ませようとする場合、長手方向Lに対してはスペースの確保が容易であることから、長手方向Lに撓み易くすることが可能であるとともに、爪部12b,12cの撓み量等を増やすことも容易である。
【0029】
なお、ワイパブレード12がリヤガラスの曲面に沿うように、ワイパブレード12をワイパアーム10に対して回動可能に連結させるため、図3に示す連結軸部10cの軸方向Nはワイパブレード12の幅方向Mに平行となるように配置することが好ましい。したがって、爪部12b,12cを長手方向Lに撓ませる場合、スナップフィット部12aに必要なスペースは、爪部12b,12cのそれぞれの幅+撓み量+連結軸部10cの直径となる。
【0030】
これに対して、爪部12b,12cを幅方向Mに撓ませる場合、スナップフィット部12aに必要なスペースは、爪部12b,12cのそれぞれの幅+撓み量+連結軸部10cの軸長となる。したがって、スナップフィット部12aにおいて、爪部12b,12cのそれぞれをワイパブレード12の長手方向Lにおける溝部12dから遠ざかる方向に撓ませた方が、ワイパブレード12の小型化を図ることができる。
【0031】
なお、ワイパアーム10とワイパブレード12の連結にスナップフィット部12aによる連結を採用していない場合には、ワイパブレード12の着脱を行わない回動姿勢の際にワイパブレード12が外れないように、ワイパブレード12の着脱を行う着脱姿勢と上記回動姿勢とでワイパブレード12とワイパアーム10の位置関係を大きく変える必要があった。すなわち、ワイパアーム10とワイパブレード12の組付けの際には、ワイパブレード12を大きく回転させて組付ける必要があり、作業スペースが広く必要になる。さらに、ワイパアーム10とワイパブレード12の連結部以外の部分が接触しないようにワイパブレード12の回転方向が制限されていた。また、ワイパアーム10の先端がワイパブレード12に干渉しないように、ワイパブレード12に凹部等の避け部を設ける必要があった。さらに、ワイパアーム10の押圧力をワイパブレード12に均等に伝達するためには、ワイパアーム10とワイパブレード12の連結部をワイパブレード12の中央部に設けることが好ましいが、スナップフィット部12aによる連結を採用していない場合、ワイパブレード12とワイパアーム10の先端が干渉してしまうため、連結部をワイパアーム10の先端に配置する必要があった。そのため、ワイパブレード12の長手方向の約半分はワイパアーム10でカバーすることが出来ないという意匠性の制限があった。
【0032】
これに対して、本実施の形態のワイパアーム10の連結構造においては、ワイパアーム10とワイパブレード12の連結にスナップフィット部12aによる連結を採用したことにより、スナップフィット部12aの溝部12dの開口幅Sを、円筒形の連結軸部10cの直径Rより小さく設定することが可能になり、ワイパブレード12を外れにくくすることができる。したがって、ワイパブレード12の上記着脱姿勢と上記回動姿勢とで、ワイパブレード12とワイパアーム10の位置関係を大きく変える必要がないため、作業スペースやワイパブレード12の組付け方向の制限を少なくすることが可能になる。すなわち、ワイパアーム10の連結構造において、ワイパブレード12の着脱の作業性の向上を図ることができる。
【0033】
また、ワイパブレード12の着脱において、ワイパアーム10の先端とワイパブレード12が干渉する角度までワイパブレード12を回転させる必要がないため、ワイパブレード12にワイパアーム10の避け部を設ける必要がなくなり、ワイパブレード12の高さを低くすることができる。さらに、ワイパブレード12の長手方向Lにおける連結軸部10cの設置位置の制限も少なくなるため、例えば、ワイパアーム10の先端をワイパブレード12の先端まで伸ばすことができ、ワイパアーム10の意匠性の自由度を高めることができる。
【0034】
また、ワイパアーム10とワイパブレード12とでは、ワイパブレード12に消耗品であるブレードラバーが装着されているため、ワイパブレード12の方が交換の頻度がワイパアーム10に比べて遥かに高い。したがって、本実施の形態のように爪部12b,12cを備えたスナップフィット部12aがワイパブレード12に取り付けられていることにより、万が一爪部12b,12cが破損・劣化した際に、ワイパブレード12ごと容易に交換することが可能である。
【0035】
次に、図5および図6を用いて、スリット部12e,12fに配置される突起部12j,12kについて説明する。ここで、スリット部12e,12fは、それぞれ互いに対向する内壁12h,12iによって構成されている。つまり、スリット部12eは、互いに対向する内壁12h,12iによって構成され、一方、スリット部12fも、互いに対向する内壁12h,12iによって構成されている。
【0036】
そして、スリット部12e,12fをそれぞれ構成している上記対向する内壁12h,12iの何れか一方に、上記スリット部内に向けて突出する第1突起部が設けられ、かつ、前記対向する内壁の何れか他方に、上記スリット部内に向けて突出する第2突起部が設けられている。本実施の形態では、内壁12hに上記スリット部内に向けて突出する突起部(第1突起部)12jが設けられ、かつ、内壁12iに上記スリット部内に向けて突出する突起部(第2突起部)12kが設けられている。具体的には、スリット部12eにおいては、スリット部12e内に向けて突出する突起部12jが内壁12hに設けられており、また、スリット部12e内に向けて突出する突起部12kが、爪部12bと対向する壁部12pの内壁12iに設けられている。一方、スリット部12fにおいては、スリット部12f内に向けて突出する突起部12jが内壁12hに設けられており、また、スリット部12f内に向けて突出する突起部12kが、爪部12cと対向する壁部12nの内壁12iに設けられている。
【0037】
なお、図5に示すように、突起部12j,12kは、図3に示す連結軸部10cの軸方向Nに沿った方向において、互いにずれて配置されている。すなわち、内壁12hに設けられた突起部12jと、内壁12iに設けられた突起部12kとは、軸方向Nに沿った方向において、互いが重なることなくずれて配置されている。言い換えると、突起部12jと突起部12kとは、軸方向Nに沿った方向において、対向する内壁12h,12iから互い違いとなるように突出している。
【0038】
また、突起部12j,12kは、図6に示すように、それぞれのスリット部12e,12fの開口端12m付近に位置するように対向する内壁12h,12iに設けられている。具体的には、突起部12j,12kは、スリット部12e,12fの底部側と反対側の開口端12m側に位置するように内壁12h,12iに設けられている。
【0039】
また、それぞれのスリット部12e,12fを構成するために対向して配置された内壁12h,12iは、スリット部12e,12fの底部から開口端12mに向かうにつれて、スリット部12e,12fの開口幅Tが徐々に広がるように形成されている。つまり、対向する内壁12h,12iは、スリット部12e,12fの底部から開口端12mに向けてスリット部12e,12fの開口幅Tが徐々に広がるように互いに斜めに設けられている。別の表現で述べると、それぞれのスリット部12e,12fにおいて、突起部12kに対向する内壁12hは、スリット部12e,12fの開口幅Tが底部に向けて徐々に狭くなるように斜めに設けられており、一方、突起部12jに対向する内壁12iも、スリット部12e,12fの開口幅Tが底部に向けて徐々に狭くなるように斜めに設けられている。つまり、突起部12kに対向する内壁12hと、突起部12jに対向する内壁12iとの両方が、スリット部12e,12fの開口幅Tが底部に向けて徐々に狭くなるように斜めに設けられている。
【0040】
本実施の形態のスナップフィット部12aでは、それぞれのスリット部12e,12fにおいて、突起部12jと突起部12kとが互い違いに配置されているため、図9に示すように、ワイパアーム10とワイパブレード12とを組付ける際に、ワイパアーム10の連結軸部10cがワイパブレード12のスリット部12e,12fに挿入されることを防止できる。つまり、スリット部12e,12fの開口端12mが、突起部12j,12kが互い違いに配置されて狭くなったことで、ワイパアーム10の連結軸部10cがスリット部12e,12fに挿入されることはない。すなわち、ワイパアーム10とワイパブレード12の誤組みを防止することが可能になる。その結果、ワイパアーム10の連結構造において、ワイパブレード12の誤組みを防止してワイパブレード12の組付け時の作業性の向上を図ることができる。
【0041】
また、突起部12j,12kは、それぞれのスリット部12e,12fにおいて、開口端12m付近に位置するように設けられており、スナップフィット部12aにおける爪部12b,12cの根元の太さは大きくなっていない。したがって、一対の爪部12b,12cにおいて、溝部12dの開口幅Sを広げる方向に撓む可撓性は変わらずに維持されている。これにより、それぞれのスリット部12e,12fに突起部12j,12kが設けられた構造のスナップフィット部12aであっても、ワイパアーム10とワイパブレード12の組付けにおいて、図1に示すような組付けやすい挿入力Qで、かつ、抜けにくい抜去力Pを実現することが維持されている。
【0042】
ここで、図7を用いて、突起部12j,12qが同じ向きに突出している構造(図7(a))と、突起部12j,12kが互い違いに突出している構造(図7(b))とで、得られる効果の違いについて説明する。
【0043】
まず、図7(a)に示す突起部12j,12qが同じ向きに突出している構造において、a=爪部12cが撓むのに必要な幅(固定値)であり、b1=連結軸部10cが嵌まる可能性がある隙間の幅とすると、b1=aとなる。数値aは、スナップフィット部12aと連結軸部10cとの組付けのしやすさ、または外れ難さ等から所定の大きさに設定することができる。
【0044】
一方、図7(b)に示す突起部12j,12kが互い違いに突出している構造において、a=爪部12cが撓むのに必要な幅(固定値)であり、b2=連結軸部10cが嵌まる可能性がある隙間の幅とすると、b2=a-(突起部12jの突起量)に設定可能であり、b2<b1となる。つまり、図7(b)に示す突起部12j,12kが互い違いに突出している構造の方が、連結軸部10cが嵌まる可能性がある隙間を狭くすることができる。すなわち、スリット部12e,12fにおいて、突起部12j,12kを互い違いに配置することにより、連結軸部10cが嵌まる可能性がある隙間を狭くすることができ、ワイパアーム10とワイパブレード12の誤組みを防止することができる。
【0045】
なお、図8に示す突起部12jと突起部12kとの間隔Cについては、突起部12jと突起部12kとが干渉しない程度に小さくしてもよい。言い換えれば、突起部12jと突起部12kの幅は、突起部12jと突起部12kとが干渉しない程度に大きく設定してもよい。
【0046】
次に、本実施の形態の変形例について説明する。
【0047】
図10に示す第1変形例は、突起部12jや突起部12kの幅を大きく設定するものであり、図10に示す構造では、突起部12kの幅Dを突起部12jより大きく設定している。上述のように、突起部12jと突起部12kとが干渉しない程度であれば、突起部12jや突起部12kの幅を大きく設定してもよい。その際、爪部12c側に設けられた突起部12jと、壁部12n側に設けられた突起部12kとでは、壁部12n側に設けられた突起部12kの幅を大きくすることが好ましい。つまり、爪部12c側に設けられた突起部12jの幅を大きくすると、爪部12cの撓みや強度への影響が大きくなるため、好ましくない。したがって、壁部12n側に設けられた突起部12kの幅を大きくすることで、爪部12cへの撓みや強度の影響を最小限に抑えることができる。このことについては、図6に示す爪部12bと壁部12pにおいても同様である。
【0048】
図11に示す第2変形例は、突起部12j,12kが、図3に示す連結軸部10cの軸方向Nと直交する方向L(図6参照)において、互いの一部が重なって配置されているものである。図11に示すスナップフィット部12aの構造においては、突起部12j,12kは、連結軸部10cの軸方向Nと直交する方向Lにおいて、互いの先端部12r,12sが重なるように配置されている。
【0049】
具体的には、突起部12jの先端部12rと、突起部12kの先端部12sとが、連結軸部10cの軸方向Nと直交する方向Lにおいて、重複部Eとして重なっている。つまり、突起部12j,12kそれぞれの突起長さFのうちの重複部Eの部分が重なるように突起部12j,12kが設けられている。
【0050】
このように突起部12j,12kが、連結軸部10cの軸方向Nと直交する方向Lにおいて、互いの先端部12r,12sが重なるように配置されることにより、突起部12jと突起部12kとの方向Lにおける隙間が無くなる。その結果、ワイパアーム10の連結軸部10cがワイパブレード12のスリット部12e,12fに挿入されることをさらに抑制することができ、ワイパアーム10とワイパブレード12の誤組み防止効果をさらに高めることができる。
【0051】
本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。例えば、上記実施の形態においては、ワイパアーム10の連結構造を、自動車等の車両のリヤガラスを払拭するリヤワイパ装置に適用したものを示したが、本発明はこれに限らず、自動車等の車両のフロント側に搭載されるワイパ装置や、船舶、航空機、鉄道車両等に搭載されるワイパ装置にも適用することが可能である。また、上記実施の形態においては、ワイパアーム10を樹脂材料により成形するとしたが、本発明はこれに限らず、金属材料により成形してもよい。
【符号の説明】
【0052】
10:ワイパアーム,10a,10b:側壁,10c:連結軸部(第1連結部),11:アームヘッド,12:ワイパブレード,12a:スナップフィット部(第2連結部),12b,12c:爪部,12d:溝部,12e,12f:スリット部,12g:取付け部,12h,12i:内壁,12j:突起部(第1突起部),12k:突起部(第2突起部),12m:開口端,12n,12p:壁部,12q:突起部,12r,12s:先端部,13:ブレードラバー,14:スプリング
図1
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図6
図7
図8
図9
図10
図11