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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022181445
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】エンジンの吸気装置
(51)【国際特許分類】
   F02M 35/12 20060101AFI20221201BHJP
   F02M 35/10 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
F02M35/12 Z
F02M35/12 L
F02M35/10 101H
F02M35/10 101E
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021088388
(22)【出願日】2021-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100176304
【弁理士】
【氏名又は名称】福成 勉
(72)【発明者】
【氏名】児玉 臣
(72)【発明者】
【氏名】菅崎 健二
(72)【発明者】
【氏名】鷹村 優太
(57)【要約】
【課題】エンジンルームの温度変化に伴い発生する結露水の影響を受け難く、所定周波数の吸気音を音量の低下を抑制しながら車室に伝搬することができるエンジンの吸気装置を提供する。
【解決手段】第2通路を構成する導入通路部118と導出通路部119との間には、吸気音増大装置120が介挿されている。吸気音増大装置120は、蛇腹部123と振動膜124とからなる振動体122と、蛇腹部123の外周を囲むように配された外周ケース121とを有する。導出通路部119は、外周ケース121の後方側部分に接続されており、車室に向けて延びるように形成されている。導出通路部119は、吸気音増大装置120から離間するのに従って鉛直下方に向けて下がって行くように傾斜姿勢で配設されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンルームに設けられた、エンジンに新気を導くための第1通路と、
前記第1通路の途中から分岐し、車室に向けて延びる第2通路と、
前記第2通路中に設けられた、吸気脈動を受けて吸気圧を増大させる吸気音増大装置と、
を備え、
前記吸気音増大装置は、筒状であって筒軸方向に伸縮可能な蛇腹部と、前記蛇腹部の一方の開口を塞ぐように前記蛇腹部と一体に形成された振動膜と、前記蛇腹部の外周を覆うように設けられた、内方における前記蛇腹部の伸縮を許す外周ケースと、を有し、
前記第2通路は、前記外周ケースにおける、前記蛇腹部の前記一方の開口側の部分に接続された、前記車室に向けて延びる導出通路部を有し、
前記導出通路部は、前記吸気音増大装置から離間するのに従って鉛直下方に向けて下がって行くように配設されている、
エンジンの吸気装置。
【請求項2】
請求項1に記載のエンジンの吸気装置において、
前記振動膜に対して直交し、且つ、前記振動膜の膜中心を通る中心軸を第1中心軸とし、
前記導出通路部の中心軸を第2中心軸とする場合に、
前記第1中心軸と前記第2中心軸との交点は、前記導出通路部における前記外周ケースとの接続側の開口の開口面上に配置されている、
エンジンの吸気装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のエンジンの吸気装置において、
前記第2通路は、前記蛇腹部における前記振動膜で塞がれた開口とは反対側の他方の開口に接続された、前記分岐部に向けて延びる導入通路部をさらに有し、
前記振動膜に対して直交し、且つ、前記振動膜の膜中心を通る中心軸を第1中心軸とし、
前記導入通路部の中心軸を第3中心軸とする場合に、
前記第1中心軸と前記第3中心軸との交点は、前記他方の開口の開口面上に配置されている、
エンジンの吸気装置。
【請求項4】
請求項3に記載のエンジンの吸気装置において、
前記導入通路部は、前記蛇腹部から離間するのに従って鉛直下方に向けて下がって行くように配設されている、
エンジンの吸気装置。
【請求項5】
請求項2から請求項4の何れかに記載のエンジンの吸気装置において、
前記振動膜は、前記第1中心軸が車両の前後方向に沿って配されるように設けられている、
エンジンの吸気装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5の何れかに記載のエンジンの吸気装置において、
前記導出通路部は、前記外周ケースとの接続部分において、当該導出通路部の下面が前記外周ケースにおける前記導出通路部との接続部分の下面に対して鉛直方向で同じ高さまたは低く配設されている、
エンジンの吸気装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの吸気装置に関し、特に、車室に対して伝搬させる吸気音を増大するための吸気音増大装置を備えた吸気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両には、エンジンルームに搭載されたエンジンの吸気音を意図的に増大させて、車室内に伝搬するための吸気音増大装置を備えるものがある。このような吸気音増大装置を備える車両を運転する運転者は、アクセル操作に応じた効果音により、車両を操縦していることの満足感を聴覚の側面から得ることができる。
【0003】
特許文献1には、吸気音増大装置を備えた車両が開示されている。特許文献1に開示の吸気音増大装置は、筒状であって筒軸方向に伸縮可能な蛇腹部と、蛇腹部の一方の開口を塞ぐように蛇腹部と一体に形成された振動膜とを有する。そして、吸気音増大装置における蛇腹部のもう一方の開口には、エンジンへの新気の通路である吸気通路から分岐された導入通路部が接続され、吸気音増大装置における振動膜が形成された側には、車室に向けて解放された導出通路部が接続されている。
【0004】
特許文献1に開示の技術では、振動膜の主面に沿った方向において、振動膜の中心に対して、導入通路部および導出通路部のそれぞれの管中心をオフセットさせることで、車室に伝搬される吸気音の広帯域化を図ろうとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012-7502号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、吸気音増大装置は、エンジンルームに搭載されているので、エンジン始動時とエンジン停止時とのエンジンルームの温度変化に伴って結露することがある。吸気音増大装置で結露が生じた場合には、結露水が振動膜に付着することがある。振動膜に結露水が付着した場合には、当該結露水の質量の影響により振動膜が振動し難い状態となってしまい、車室に対して伝搬される吸気音の周波数が設計に係る所定周波数から外れ、また、音量が低くなってしまうことになる。
【0007】
本発明は、上記のような問題の解決を図ろうとなされたものであって、エンジンルームの温度変化に伴い発生する結露水の影響を受け難く、所定周波数の吸気音を音量の低下を抑制しながら車室に伝搬することができるエンジンの吸気装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係るエンジンの吸気装置は、第1通路と、第2通路と、吸気音増大装置とを備える。前記第1通路は、エンジンルームに設けられた、エンジンに新気を導くための通路である。前記第2通路は、前記第1通路の途中から分岐し、車室に向けて延びる通路である。前記吸気音増大装置は、前記第2通路中に設けられた、吸気脈動を受けて吸気圧を増大させる装置である。
【0009】
前記吸気音増大装置は、蛇腹部と、振動膜と、外周ケースとを有する。前記蛇腹部は、筒状であって筒軸方向に伸縮可能な部位である。前記振動膜は、前記蛇腹部の一方の開口を塞ぐように前記蛇腹部と一体に形成された部位である。前記外周ケースは、前記蛇腹部の外周を覆うように設けられた、内方における前記蛇腹部の伸縮を許す部位である。
【0010】
前記第2通路は、前記外周ケースにおける、前記蛇腹部の前記一方の開口側の部分に接続された、前記車室に向けて延びる導出通路部を有する。
【0011】
本態様に係るエンジンの吸気装置において、前記導出通路部は、前記吸気音増大装置から離間するのに従って鉛直下方に向けて下がって行くように配設されている。
【0012】
上記態様に係るエンジンの吸気装置では、導出通路部が、吸気音増大装置から離間するのに従って鉛直下方に向けて下がって行くように配設されているので、エンジンルームの温度変化に伴って外周ケース内で結露が生じた場合でも、結露水が外周ケースから導出通路部に向けて排出され易い。よって、上記態様に係るエンジンの吸気装置では、振動膜の表面(導出通路部側の外表面)への結露水の付着による周波数変化を生じ難く、また、音量の低下も生じ難い。
【0013】
上記態様に係るエンジンの吸気装置において、前記振動膜に対して直交し、且つ、前記振動膜の膜中心を通る中心軸を第1中心軸とし、前記導出通路部の中心軸を第2中心軸とする場合に、前記第1中心軸と前記第2中心軸との交点は、前記導出通路部における前記外周ケースとの接続側の開口の開口面上に配置されている、としてもよい。
【0014】
上記態様に係るエンジンの吸気装置では、第1中心軸と第2中心軸との交点が、導出通路部における外周ケースとの接続側の開口の開口面上に配置されているので、振動膜の振動により増大された吸気音を導出通路部へと少ないロスで伝搬させることが可能となる。よって、上記態様に係るエンジンの吸気装置では、吸気音増大装置で増大された吸気音を車室へと確実に伝搬させることができる。
【0015】
上記態様に係るエンジンの吸気装置において、前記第2通路は、前記蛇腹部における前記振動膜で塞がれた開口とは反対側の他方の開口に接続された、前記分岐部に向けて延びる導入通路部をさらに有し、前記振動膜に対して直交し、且つ、前記振動膜の膜中心を通る中心軸を第1中心軸とし、前記導入通路部の中心軸を第3中心軸とする場合に、前記第1中心軸と前記第3中心軸との交点は、前記他方の開口の開口面上に配置されている、としてもよい。
【0016】
上記態様に係るエンジンの吸気装置では、第1中心軸と第3中心軸との交点が、上記他方の開口の開口面上に配置されているので、導入通路部を伝搬されてきた吸気圧力波が振動膜に伝搬され易い。よって、上記態様に係るエンジンの吸気装置では、効果的に振動膜を振動させることができ、車室に対して設計に係る所定周波数で吸気音を音量の低下を抑制しながら伝搬させることができる。
【0017】
上記態様に係るエンジンの吸気装置において、前記導入通路部は、前記蛇腹部から離間するのに従って鉛直下方に向けて下がって行くように配設されている、としてもよい。
【0018】
上記態様に係るエンジンの吸気装置では、導入通路部が、蛇腹部から離間するのに従って鉛直下方に向けて下がって行くように配設されているので、エンジンルームの温度変化に伴って蛇腹部の内方で結露した場合でも、結露水が蛇腹部から導入通路部に向けて排出され易い。よって、上記態様に係るエンジンの吸気装置では、振動膜等の内表面への結露水の付着による周波数変化を生じ難く、また、音量の低下を生じ難い。
【0019】
上記態様に係るエンジンの吸気装置において、前記振動膜は、前記第1中心軸が車両の前後方向に沿って配されるように設けられている、としてもよい。
【0020】
上記態様に係るエンジンの吸気装置では、第1中心軸が車両の前後方向に沿って配されているので、吸気圧力波を受けて車両の前後方向に振動膜が振動する。よって、上記態様に係るエンジンの吸気装置では、振動膜の振動により生成される増大圧力波が後方の車室に向けて伝搬され、車室への吸気音の伝搬が効果的になされる。
【0021】
上記態様に係るエンジンの吸気装置において、前記導出通路部は、前記外周ケースとの接続部分において、当該導出通路部の下面が前記外周ケースにおける前記導出通路部との接続部分の下面に対して鉛直方向で同じ高さまたは低く配設されている、としてもよい。
【0022】
上記態様に係るエンジンの吸気装置では、導出通路部と外周ケースとの接続部分において、導出通路部の下面が外周ケースの下面と同じ高さまたは低く配設されているので、外周ケースの内方で生じた結露水が導出通路部へと良好に排出される。よって、上記態様に係るエンジンの吸気装置では、外周ケースの内方に残留する結露水を低減することができ、振動膜の振動に対する結露水の影響を抑制するのに効果的である。
【発明の効果】
【0023】
上記の各態様に係るエンジンの吸気装置では、エンジンルームの温度変化に伴い発生する結露水の影響を受け難く、所定周波数の吸気音を音量の低下を抑制しながら車室に伝搬することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の実施形態に係るエンジンの吸気装置が適用されたエンジンルームを示す模式図である。
図2】吸気音増大装置およびその周辺の構成を示す断面図である。
図3】変形例に係るエンジンの吸気装置の一部構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下では、本発明の実施形態について、図面を参酌しながら説明する。なお、以下で説明の形態は、本発明の一例であって、本発明は、その本質的な構成を除き何ら以下の形態に限定を受けるものではない。
【0026】
以下の説明で用いる図において、「Fr」は車両前方、「Re」は車両後方、「Le」は車両左方、「Ri」は車両右方、「Up」は車両上方(鉛直方向上方)、「Lo」は車両下方(鉛直方向下方)をそれぞれ示す。
【0027】
1.エンジンルーム1aの構成
本発明の実施形態に係るエンジン10の吸気装置11が適用されたエンジンルーム1aの構成について、図1を用いて説明する。
【0028】
図1に示すように、車両1の前部には、エンジンルーム1aが設けられている。エンジンルーム1aには、エンジン10が搭載されている。車両1において、エンジンルーム1aの後方には、ダッシュパネル1cを介して車室1bが設けられている。
【0029】
エンジンルーム1aに搭載されたエンジン10には、吸気装置11が付帯されている。吸気装置11は、第1通路111と、第2通路112と、吸気音増大装置120とを備える。第1通路111は、新気を各気筒に供給するための吸気路である。第1通路111の一端にはフレッシュエアダクト115が設けられ、新気の流れ方向の後方側には、エアクリーナー116およびスロットルバルブ117が介挿されている。第1通路111の内、新気の流れ方向におけるエアクリーナー116よりも上流側の部分を上流通路部113、下流側の部分を下流通路部114と呼称する。
【0030】
第2通路112は、下流通路部114に対して、当該下流通路部114の分岐部114aで分岐するように設けられた通路である。吸気音増大装置120は、第2通路112の長手方向の途中部分に介挿されている。第2通路112の内、吸気音増大装置120よりも分岐部114aの側の部分を導入通路部118、導入通路部118に対して吸気音増大装置120を挟んだ反対側の部分を導出通路部119と呼称する。導出通路部119における後方側の管端部119aは、ダッシュパネル1cの近傍で開口されている。
【0031】
なお、導出通路部119については、後方側の部分がダッシュパネル1cを挿通して、車室1b内に管端部119aが配されるように設けられてもよい。
【0032】
2.吸気音増大装置120およびその周辺の構成
吸気装置11の構成の内、吸気音増大装置120およびその周辺の構成について、図2を用いて説明する。
【0033】
図2に示すように、吸気音増大装置120は、筒形状の外周ケース121と、外周ケース121内に収容された振動体122とを有する。振動体122は、周壁が蛇腹形状で構成された蛇腹部123と、蛇腹部123の後方側の開口を塞ぐように設けられた振動膜124とを有する。蛇腹部123は、車両1の前後方向に伸縮可能であり、振動膜124は、矢印Aで示すように、車両1の前後方向に振動可能である。なお、蛇腹部123と振動膜124とは、一体に形成されている。
【0034】
外周ケース121は、蛇腹部123の伸縮および振動膜124の振動を阻害しないように、蛇腹部123の周壁および振動膜124に接触しない状態で配設されている。
【0035】
吸気音増大装置120に対しては、導入通路部118および導出通路部119が接続されている。この内、導入通路部118は、蛇腹部123における振動膜124が設けられたのとは反対側の開口Op123に接続されている。導入通路部118を伝搬されてきた吸気圧力波は、蛇腹部123の開口Op123を通り蛇腹部123の内方へと導入される。
【0036】
導出通路部119は、外周ケース121に対して当該外周ケース121の後方側部分に接続されている。具体的には、外周ケース121は、蛇腹部123の一方の開口を塞ぐように設けられた振動膜124よりも蛇腹部123から離間する向きに延出された状態で形成されている。そして、導出通路部119は、外周ケース121における上記延出された部分に外嵌されて接続されている。
【0037】
図2に示すように、本実施形態では、振動膜124は略鉛直方向に沿って配されている。そして、振動膜124に直交し、且つ、振動膜124の膜中心を通る中心軸Ax124を仮定する。また、導入通路部118を構成する管体の中心軸を中心軸Ax118とし、導出通路部119を構成する管体の中心軸を中心軸Ax119と仮定する。
【0038】
導入通路部118は、中心軸Ax118と中心軸Ax124との交点P1が蛇腹部123の開口Op123の開口面上に位置するように、吸気音増大装置120に接続されている。また、導入通路部118は、蛇腹部123の開口Op123から離間するのに従って高さレベルが漸次低くなるよう傾斜姿勢をもって配設されている。
【0039】
また、図2に示すように、導入通路部118と蛇腹部123との接続部分では、導入通路部118の下面118aが蛇腹部123の下面123aと同じ高さまたは低く配設されている。そして、導入通路部118の下面118aと蛇腹部123の下面123aとの間に凹部や溝部などが生じないように、導入通路部118と蛇腹部123とが接続されている。
【0040】
なお、導入通路部118の姿勢については、図2に示す姿勢に限定を受けるものではなく、水平方向に延びる姿勢でもよいし、蛇腹部123の開口Op123から離間するのに従って高さレベルが漸次高くなるように傾斜姿勢とすることも可能である。
【0041】
導出通路部119は、中心軸Ax119と中心軸Ax124との交点P2が当該導出通路部119の開口Op119の開口面上に位置するように、吸気音増大装置120に接続されている。導出通路部119も、振動膜124から離間するのに従って高さレベルが漸次低くなるように傾斜姿勢をもって配設されている。
【0042】
3.効果
本実施形態に係る吸気装置11では、導出通路部119が、吸気音増大装置120から離間するのに従って鉛直下方に向けて下がって行くように配設されているので、エンジンルーム1aの温度変化に伴って外周ケース121内で結露が生じた場合でも、結露水が外周ケース121から導出通路部119に向けて排出され易い。よって、本実施形態に係る吸気装置11では、振動膜124の表面(導出通路部119側の外表面)への結露水の付着による周波数変化を生じ難く、また、音量の低下も生じ難い。
【0043】
本実施形態に係る吸気装置11では、中心軸Ax124と中心軸Ax119との交点P2が、導出通路部119における外周ケース121との接続側の開口Op119の開口面上に配置されているので、振動膜124の振動により増大された吸気音を導出通路部119へと少ないロスで伝搬させることが可能となる。よって、本実施形態に係る吸気装置11では、吸気音増大装置120で増大された吸気音を車室1bへと確実に伝搬させることができる。
【0044】
本実施形態に係る吸気装置11では、中心軸Ax124と中心軸Ax118との交点P1が、蛇腹部123における導入通路部118との接続側の開口Op123の開口面上に配置されているので、導入通路部118を伝搬されてきた吸気圧力波が振動膜124に伝搬され易い。よって、本実施形態に係る吸気装置11では、効果的に振動膜124を振動させることができ、車室1bに対して設計に係る所定周波数で吸気音を伝搬させることができる。
【0045】
本実施形態に係る吸気装置11では、導入通路部118が、蛇腹部123から離間するのに従って鉛直下方に向けて下がって行くように配設されているので、エンジンルーム1aの温度変化に伴って蛇腹部123の内方で結露した場合でも、結露水が蛇腹部123から導入通路部118に向けて排出され易い。よって、本実施形態に係る吸気装置11では、振動膜124等の内表面への結露水の付着による周波数変化を生じ難く、また、音量の低下も生じ難い。
【0046】
本実施形態に係る吸気装置11では、振動膜124の中心軸Ax124が車両1の前後方向に沿って略水平に配されているので、吸気圧力波を受けて車両1の前後方向に振動膜124が振動する。よって、本実施形態に係る吸気装置11では、振動膜124の振動により生成される増大圧力波が後方の車室1bに向けて伝搬され、車室1bへの吸気音の伝搬が効果的になされる。
【0047】
本実施形態に係る吸気装置11では、導入通路部118と蛇腹部123との接続部分において、導入通路部118の下面118aが蛇腹部123の下面123aと同じ高さまたは低く配設されているので、蛇腹部123の内方で生じた結露水が導入通路部118へと良好に排出される。よって、本実施形態に係る吸気装置11では、蛇腹部123の内方に残留する結露水を低減することができ、振動膜124の振動に対する結露水の影響を抑制するのに効果的である。
【0048】
以上のように、本実施形態に係る吸気装置11では、エンジンルーム1aの温度変化に伴い発生する結露水の影響を受け難く、所定周波数の吸気音を音量の低下を抑制しながら車室1bに伝搬することができる。
【0049】
[変形例]
変形例に係るエンジンの吸気装置21の構成について、図3を用いて説明する。なお、本変形例に係るエンジンの吸気装置21は、上記実施形態に係る吸気装置11に対して、吸気音増大装置220における外周ケース221および導出通路部219の構成が異なり、他の部分の構成については、上記実施形態に係る吸気装置11と同じである。
【0050】
図3に示すように、本変形例に係る吸気装置21において、吸気音増大装置220が有する外周ケース221は、下面221aが縮径されていない。即ち、外周ケース221の下面221aは、前方から後方に向けて段差のない滑らかな面で構成されている。
【0051】
本変形例に係る吸気装置21においても、外周ケース221に対して、当該外周ケース221の後方側部分に導出通路部219が外嵌されている。導出通路部219は、上記実施形態に係る吸気装置11の導出通路部119と同様に、吸気音増大装置220から離間するのに従って鉛直下方に向けて下がって行くように傾斜姿勢で配設されている。
【0052】
また、導出通路部219は、外周ケース221との接続部分において、導出通路部219の下面219aが外周ケース221の下面221aに対して鉛直方向で同じ高さまたは低く配設されているとともに、段差なく滑らかな状態で接続されている。
【0053】
本変形例に係る吸気装置21でも、上記実施形態に係る吸気装置11と同じ効果を奏することができる。さらに、本変形例に係る吸気装置21では、導出通路部219と外周ケース221との接続部分において、導出通路部219の下面219aが外周ケース221の下面221aと同じ高さまたは低く配設されているので、外周ケース221の内方で生じた結露水が導出通路部219へと良好に排出される。よって、本変形例に係る吸気装置21では、外周ケース221の内方に残留する結露水を低減することができ、振動膜124の振動に対する結露水の影響を抑制するのに効果的である。
【0054】
[その他の変形例]
上記実施形態および上記変形例では、車両1の前部にエンジンルーム1aが設けられてなる構成を採用したが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、車室の後方にエンジンルームが設けられてなる構成などを採用することもできる。
【0055】
上記実施形態および上記変形例では、スロットルバルブ117がエンジン10の後方に配置された構成を採用したが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、エンジンの側方や前方にスロットルバルブが配置された構成を採用することもできる。
【0056】
上記実施形態および上記変形例では、導出通路部119,219の管端部119aがエンジンルーム1a内におけるダッシュパネル1c近傍に位置する形態としたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、導出通路部を構成する管体がダッシュパネルを挿通して、管端部が車室内に位置する形態を採用することもできる。
【0057】
上記実施形態および上記変形例では、エンジン10の種類について特に言及しなかったが、種々のエンジンを適用することができる。例えば、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンを適用することもできる。また、レシプロエンジンやロータリーピストンエンジンを採用することもできる。
【0058】
上記実施形態および上記変形例では、導入通路部118が、蛇腹部123から離間するのに従って鉛直下方に向けて下がって行く形態を採用したが、本発明では、導入通路部の配設形態について、これに限定を受けるものではない。例えば、水平方向に沿って配設された形態や、蛇腹部から離間するのに従って鉛直上方に向けて上がって行く配設形態などを採用することもできる。
【0059】
上記実施形態および上記変形例では、振動膜124の中心軸Ax124が略水平方向に沿って配された形態を採用したが、本発明では、振動膜の配設形態について、これに限定を受けるものではない。例えば、振動膜の中心軸が鉛直方向に沿って配設された形態や、振動膜の中心軸が水平方向および鉛直方向の双方向に対して斜めに配設された形態などを採用することもできる。
【0060】
上記実施形態および上記変形例では、導入通路部118が第1通路111における下流通路部114の分岐部114aまで延設されてなる形態を採用したが、本発明では、導入通路部の配設形態について、これに限定を受けるものではない。例えば、下流通路部の分岐部と導入通路部との間に、別の通路部が介挿された形態などを採用することもできる。
【0061】
上記実施形態および上記変形例では、導出通路部119,219がダッシュパネル1cの近傍まで延設されてなる形態を採用したが、本発明では、導出通路部の配設形態について、これに限定を受けるものでではない。例えば、ダッシュパネルの近傍の部分と導出通路部とを接続する別の通路部が配設された形態などを採用することもできる。
【0062】
上記実施形態および上記変形例では、エンジンルーム1aに1つの吸気音増大装置120,220を備える形態を採用したが、本発明では、吸気音増大装置の搭載個数について、これに限定を受けるものではない。例えば、互いにサイズの異なる複数の吸気音増大装置を設けて、異なる周波数の吸気音を車室に伝搬できるようにすることもできる。なお、この場合には、各吸気音増大装置に接続される導入通路部および導出通路部の断面径や通路長さを得ようとする周波数に応じて調整することが望ましい。
【符号の説明】
【0063】
1 車両
1a エンジンルーム
10 エンジン
11,21 吸気装置
111 第1通路
112 第2通路
118 導入通路部
119,219 導出通路部
120,220 吸気音増大装置
121,221 外周ケース
122 振動体
123 蛇腹部
124 振動膜
図1
図2
図3