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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022181456
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】レンズ装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 15/20 20060101AFI20221201BHJP
   G02B 13/18 20060101ALI20221201BHJP
   G03B 21/14 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
G02B15/20
G02B13/18
G03B21/14 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021088404
(22)【出願日】2021-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】391044915
【氏名又は名称】株式会社コシナ
(74)【代理人】
【識別番号】100088579
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 茂
(72)【発明者】
【氏名】山浦 義樹
【テーマコード(参考)】
2H087
2K203
【Fターム(参考)】
2H087KA06
2H087LA01
2H087MA12
2H087MA14
2H087NA01
2H087PA12
2H087PA14
2H087PA16
2H087PB16
2H087PB18
2H087QA02
2H087QA03
2H087QA07
2H087QA17
2H087QA19
2H087QA22
2H087QA26
2H087QA34
2H087QA41
2H087QA45
2H087RA04
2H087RA05
2H087RA12
2H087RA13
2H087RA41
2H087RA45
2H087SA44
2H087SA47
2H087SA49
2H087SA52
2H087SA55
2H087SA57
2H087SA62
2H087SA64
2H087SA65
2H087SA66
2H087SA73
2H087SA76
2H087SB02
2H087SB13
2H087SB15
2H087SB25
2H087SB32
2H087SB33
2H087SB41
2H087SB43
2K203FA02
2K203FA22
2K203FA32
2K203FA62
2K203GC03
2K203HA67
2K203HA68
2K203HA73
2K203MA07
2K203MA32
2K203MA35
(57)【要約】
【課題】 フォーカシング調整時に十分な像面補正を行い、画像全体の品質向上を図るとともに、全体の小型コンパクト化及び低コスト化を実現する。
【解決手段】 最も物体OBJ側に配するとともに、非球面レンズLsにより構成し、かつ光軸Dc方向に移動することにより像面補正を行う像面補正レンズLf1,及びこの像面補正レンズLf1の像IMG側に配し、かつ不動のレンズ群Gfsにより構成するとともに、全体を負のパワーにより構成した前レンズ群Gfと、ズーミング調整時及びフォーカシング調整時に光軸Dc方向へ移動する少なくとも一つのレンズLm1…を含むことにより、全体を正のパワーにより構成した中間レンズ群Gmと、ズーミング調整時に光軸Dc方向へ移動する正のパワーを有する少なくとも一つのレンズLr1及び正のパワーを有する不動となる少なくとも一つのレンズLreを含む後レンズ群Grとを備える。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体側から像側へ順に、前レンズ群,中間レンズ群,後レンズ群を備えるレンズ装置において、最も物体側に配するとともに、非球面レンズにより構成し、かつ光軸方向に移動することにより像面補正を行う像面補正レンズ,及びこの像面補正レンズの像側に配し、かつ不動のレンズ群により構成するとともに、全体を負のパワーにより構成した前レンズ群と、ズーミング調整時及びフォーカシング調整時に光軸方向へ移動する全体を正のパワーにより構成した中間レンズ群と、ズーミング調整時に光軸方向へ移動する正のパワーを有する少なくとも一つのレンズ又はレンズ群,及び正のパワーを有する不動となる少なくとも一つのレンズ又はレンズ群を含む後レンズ群とを備え、faを前記非球面レンズの近軸焦点距離とし、ftを全系焦点距離としたとき、以下の(条件1)を満たす光学系を備えることを特徴とするレンズ装置。
-100≦〔fa/ft〕≦-10 …(条件1)
【請求項2】
前記光学系は、Pcを前記非球面レンズの光軸上のパワー、Pfを前記非球面レンズの最周辺のパワーとしたとき、以下の(条件2)を満たすことを特徴とする請求項1記載のレンズ装置。
-0.7≦〔Pc/Pf〕≦-0.1 …(条件2)
【請求項3】
前記光学系は、ffをフォーカス群合成焦点距離としたとき、以下の(条件3)を満たすことを特徴とする請求項1又は2記載のレンズ装置。
-20≦〔fa/ff〕≦-1 …(条件3)
【請求項4】
前記後レンズ群は、最も物体側に、ズーミング調整時に光軸方向へ移動する一つの正レンズ又は接合レンズを備えることを特徴とする請求項1,2又は3記載のレンズ装置。
【請求項5】
前記光学系は、投射光学系に適用することを特徴とする請求項1-4のいずれかに記載のレンズ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロジェクタ等に備える投射光学系に用いて好適なレンズ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プロジェクタからスクリーン等に投射する際に発生する像面湾曲を補正することを目的としたレンズ装置は知られており、この種のレンズ装置は、投射光学系として、特許文献1に記載されている。
【0003】
特許文献1に記載される投射光学系は、簡易な構成で、適切な像面湾曲を調整可能な投射光学系の提供を目的としたものであり、具体的には、投射光学系を構成するに際し、光軸上のパワーと最周辺部の子午断面のパワーとが互いに異なる第1レンズと、第1レンズに隣接する第2レンズと、軸外主光線と光軸とが交わる位置に配置された絞りとを有し、第1レンズと第2レンズとの光軸方向における間隔の変化により、投射像の像面湾曲を調整することが可能に構成するとともに、さらに、所定の条件式を満たすように構成したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-126036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述した特許文献1に開示される従来のレンズ装置は、次のような課題も存在した。
【0006】
即ち、光学系における前レンズ群に、非球面レンズにより構成した光軸方向に移動することにより像面補正を行う像面補正レンズを配設するとともに、フォーカシング調整機構、即ち、光軸方向へ移動させるフォーカスレンズ又はフォーカスレンズ群を配設して構成するため、レンズ間の干渉により、像面補正が悪影響を受ける問題が発生する。具体的には、フォーカシング調整時に、像面湾曲が変動し、像面補正レンズの移動によっては像面湾曲に対する補正を十分に行うことができず、結果的に、投射画像全体の画像品質の低下を招く難点があった。
【0007】
加えて、光学系の配設スペースが限られる場合、フォーカシング調整機構と像面補正機構がより近接した位置に配設されることになり、レンズ装置における機構上の煩雑化を招くとともに、レンズ装置全体の小型化、更には低コスト化を図る上でのネックになるなど、更なる解決すべき課題も存在した。
【0008】
本発明は、このような背景技術に存在する課題を解決したレンズ装置の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上述した課題を解決するため、物体OBJ側から像IMG側へ順に、前レンズ群Gf,中間レンズ群Gm,後レンズ群Grを備えるレンズ装置100を構成するに際して、最も物体OBJ側に配するとともに、非球面レンズLsにより構成し、かつ光軸Dc方向に移動することにより像面補正を行う像面補正レンズLf1,及びこの像面補正レンズLf1の像IMG側に配し、かつ不動のレンズ群Gfsにより構成するとともに、全体を負のパワーにより構成した前レンズ群Gfと、ズーミング調整時及びフォーカシング調整時に光軸Dc方向へ移動する少なくとも一つのレンズLm1…を含むことにより、全体を正のパワーにより構成した中間レンズ群Gmと、ズーミング調整時に光軸Dc方向へ移動する正のパワーを有する少なくとも一つのレンズLr1又はレンズ群及び正のパワーを有する不動となる少なくとも一つのレンズLre又はレンズ群を含む後レンズ群Grとを備え、faを非球面レンズLsの近軸焦点距離とし、ftを全系焦点距離としたとき、-100≦〔fa/ft〕≦-10(条件1)を満たす光学系CSを備えることを特徴とする。
【0010】
この場合、発明の好適な態様により、光学系CSは、Pcを非球面レンズLsの光軸Dc上のパワー、Pfを非球面レンズLsの最周辺のパワーとしたとき、-0.7≦〔Pc/Pf〕≦-0.1(条件2)を満たすことが望ましい。また、光学系CSは、ffをフォーカス群合成焦点距離としたとき、-20≦〔fa/ff〕≦-1(条件3)を満たすことが望ましい。一方、後レンズ群Grには、最も物体OBJ側に、ズーミング調整時に光軸Dc方向へ移動する一つの正レンズLr1又は接合レンズJr1を設けることができる。なお、光学系CSは、投射光学系に適用して最適である。
【発明の効果】
【0011】
このような構成を有する本発明に係るレンズ装置100によれば、次のような顕著な効果を奏する。
【0012】
(1) フォーカシング調整時に移動する中間レンズ群Gmと像面補正レンズLf1は、光学的及び機構的に干渉が抑制されるため、特に、フォーカシング調整時に発生する像面湾曲を有効に解消できるなど、十分な像面補正を行うことができ、画像全体の品質向上を図ることができる。加えて、フォーカシング調整機構と像面補正機構の設計自由度を高めることができるため、レンズ装置100における機構上の簡略化、レンズ装置100全体の小型コンパクト化、更には低コスト化を実現することができる。
【0013】
(2) 好適な態様により、光学系CSを構成するに際し、Pcを非球面レンズLsの光軸Dc上のパワー、Pfを非球面レンズLsの最周辺のパワーとしたとき、-0.7≦〔Pc/Pf〕≦-0.1(条件2)を満たすように構成すれば、非球面レンズLsにおける光軸Dc上のパワーPcと最周辺のパワーPfのパワー比率を良好な範囲に確保できるため、非球面レンズLsにおけるパワー比率の設定により像面湾曲を解消する観点から最適な形態として実施することができる。
【0014】
(3) 好適な態様により、光学系CSを構成するに際し、ffをフォーカス群合成焦点距離としたとき、-20≦〔fa/ff〕≦-1(条件3)を満たすように構成すれば、非球面レンズLsの近軸焦点距離faとフォーカス群(中間レンズ群Gm)合成焦点距離ffの焦点距離比率を良好な範囲に確保できるため、これらの焦点距離比率の設定により像面湾曲を解消する観点から最適な形態として実施することができる。
【0015】
(4) 好適な態様により、後レンズ群Grを、最も物体OBJ側に、ズーミング調整時に光軸Dc方向へ移動する一つの正レンズLr1又は接合レンズJr1を設けて構成すれば、最適な光学特性を得る観点から、後レンズ群Grを含む光学系CS全体のレンズ構成を構築することができる。
【0016】
(5) 好適な態様により、光学系CSとして、投射光学系に適用すれば、特に、スクリーンに投射するプロジェクタ等のフォーカシングにより発生する像面湾曲を有効に解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の好適実施形態に係る実施例1のレンズ装置のレンズ構成図、
図2】同実施例1のレンズ装置のレンズ構成における機能説明図、
図3】同実施例1のレンズ装置の光路図、
図4】同実施例1のレンズ装置のワイド側における基準距離時の縦収差図、
図5】同実施例1のレンズ装置のテレ側における基準距離時の縦収差図、
図6】同実施例1のレンズ装置のワイド側における近距離時の縦収差図、
図7】同実施例1のレンズ装置のテレ側における近距離時の縦収差図、
図8】同実施例1のレンズ装置のワイド側における遠距離時の縦収差図、
図9】同実施例1のレンズ装置のテレ側における遠距離時の縦収差図、
図10】本発明の好適実施形態に係る実施例2のレンズ装置のレンズ構成及び機能説明図、
図11】同実施例2のレンズ装置の光路図、
図12】同実施例2のレンズ装置のワイド側における基準距離時の縦収差図、
図13】同実施例2のレンズ装置のテレ側における基準距離時の縦収差図、
図14】同実施例2のレンズ装置のワイド側における近距離時の縦収差図、
図15】同実施例2のレンズ装置のテレ側における近距離時の縦収差図、
図16】同実施例2のレンズ装置のワイド側における遠距離時の縦収差図、
図17】同実施例2のレンズ装置のテレ側における遠距離時の縦収差図、
図18】同レンズ装置における各条件の一覧表、
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明に係る好適実施形態である実施例1,2を挙げ、図面に基づき詳細に説明する。
【実施例0019】
まず、本実施形態に係る実施例1のレンズ装置100について、図1図9及び図18(a)を参照して具体的に説明する。
【0020】
最初に、図1を参照して、本実施形態(実施例1)に係るレンズ装置100について説明する。なお、このレンズ装置100は、プロジェクタPに用いる投射レンズ(ズームレンズ)、即ち、光学系CSとして、投射光学系、特に、投射ズーム光学系に適用することを想定している。このように、光学系CSとして、投射光学系(投射ズーム光学系)に適用すれば、特に、スクリーンに投射するプロジェクタ等のフォーカシングにより発生する像面湾曲を有効に解消することができる。図1中、OBJはスクリーン等の物体を示し、IMGは液晶パネル等の画像表示素子となる像を示している。したがって、物体OBJ側が光軸Dc方向の前方となり、像IMG側が光軸Dc方向の後方となる。なお、図1中、200は模式的に描いたレンズ鏡筒、300は模式的に描いたプリズムをそれぞれ示す。
【0021】
実施例1に係るレンズ装置100は、基本的な構成として、図1に示すように、物体OBJ側から像IMG側へ順に、前レンズ群Gf,中間レンズ群Gm,後レンズ群Grを備える。
【0022】
この場合、前レンズ群Gfは、全体が負のパワーとなるように構成する。最も物体OBJ側に、光軸Dc方向に移動することにより像面補正を行う像面補正レンズLf1を配する。この像面補正レンズLf1は、非球面レンズLsにより構成するとともに、物体OBJ側に凸面を有するメニスカスレンズを使用する。また、この像面補正レンズLf1に対して像IMG側には、四枚の単レンズにより構成した不動のレンズ群Gfsを配する。このレンズ群Gfsは、物体OBJ側から順に、物体OBJ側に凸面を有する負メニスカスレンズLf2,物体OBJ側に凸面を有する負メニスカスレンズLf3,物体OBJ側に凸面を有する負メニスカスレンズLf4,両凹レンズLf5を配して構成する。
【0023】
一方、中間レンズ群Gmは、全体を正のパワーにより構成し、ズーミング調整時及びフォーカシング調整時に光軸Dc方向へ移動する少なくとも一つのレンズLm1…が含むまれる。実施例1の場合、物体OBJ側から、両凸レンズLm1と像IMG側に凸面を有する負メニスカスレンズLm2を接合した接合レンズJm1と、両凹レンズLm3と両凸レンズLm4を接合した接合レンズJm2の、二つの接合レンズにより構成した。
【0024】
さらに、後レンズ群Grは、物体OBJ側の先頭に配し、かつズーミング調整時に光軸Dc方向へ移動する正のパワーを有する単レンズにより構成した両凸レンズLr1と、この両凸レンズLr1に対して、像IMG側に、全体で正のパワーを有する不動となるレンズ群Greを配して構成する。このレンズ群Greは、物体OBJ側から、像IMG側に凸面を有する負メニスカスレンズLr2,像IMG側に凸面を有する正メニスカスレンズLr3と像IMG側に凸面を有する負メニスカスレンズLr4の接合レンズJr1,像IMG側に凸面を有する正メニスカスレンズLr5,両凹レンズLr6と両凸レンズLr7の接合レンズJr2,両凸レンズLr8及び両凸レンズLre(図2参照)を備える。したがって、後レンズ群Grには、ズーミング調整時に光軸Dc方向へ移動する正のパワーを有する少なくとも一つのレンズLr1及び正のパワーを有する不動となる少なくとも一つのレンズLreが含まれる。
【0025】
このように、後レンズ群Grを、最も物体OBJ側に、ズーミング調整時に光軸Dc方向へ移動する一つの正レンズLr1を設けて構成すれば、最適な光学特性を得る観点から、後レンズ群Grを含む光学系CS全体のレンズ構成を構築することができる。
【0026】
そして、以上の光学系CSにおいて、光学条件を以下に示す(条件1)-(条件3)を満たすように設定する。
【0027】
まず、非球面レンズLsにおける近軸焦点距離をfaとし、全系の焦点距離をftとしたとき、
-100≦〔fa/ft〕≦-10 …(条件1)
を満たすように設定する。これにより、非球面レンズLsにおける近軸焦点距離faと全系の焦点距離ftの焦点距離比率を良好な範囲に確保できるため、これらの焦点距離比率の設定により像面湾曲を解消する観点から最適な形態として実施することができる。
【0028】
また、非球面レンズLsにおける光軸Dc上のパワーをPcとし、非球面レンズLsにおける最周辺のパワーをPfとしたとき、
-0.7≦〔Pc/Pf〕≦-0.1 …(条件2)
を満たすように設定する。これにより、非球面レンズLsにおける光軸Dc上のパワーPcと最周辺のパワーPfのパワー比率を良好な範囲に確保できるため、非球面レンズLsにおけるパワー比率の設定により像面湾曲を解消する観点から最適な形態として実施することができる。
【0029】
さらに、非球面レンズLsにおける近軸焦点距離はfaであるため、フォーカス群合成焦点距離をffとしたとき、
-20≦〔fa/ff〕≦-1 …(条件3)
を満たすように設定する。これにより、非球面レンズLsの近軸焦点距離faとフォーカス群(中間レンズ群Gm)合成焦点距離ffの焦点距離比率を良好な範囲に確保できるため、これらの焦点距離比率の設定により像面湾曲を解消する観点から最適な形態として実施することができる。
【0030】
一方、図2は、光学系CSのズーミング調整時及びフォーカシング調整時に光軸Dc方向へ移動するレンズ及びレンズ群を説明するための機能説明図を示す。実施例1の光学系CSにおいては、図2に示すように、前レンズ群Gfにおける四枚の単レンズにより構成したレンズ群Gfsは、不動になるとともに、後レンズ群Grにおける物体OBJ側の先頭に配した両凸レンズLr1を除いて、後レンズ群Grにおける他のレンズの全ては不動となる。
【0031】
他方、前レンズ群Gfにおける最も物体OBJ側に配した像面補正レンズLf1は、レンズ鏡筒200に配した不図示の像面補正リングを回し操作することにより光軸Dc方向へ移動させることができる。これにより、像面補正レンズLf1の光軸Dc方向の位置が変更され、像面補正を行うことができる。また、フォーカシング調整時には、レンズ鏡筒200に配した不図示のフォーカス調整リングを回し操作することにより、中間レンズ群Gmを光軸Dc方向へ移動させることができる。さらに、ズーミング調整時には、レンズ鏡筒200に配した不図示のズーム調整リングを回し操作することにより、中間レンズ群Gm,及び後レンズ群Grにおける先頭に配した両凸レンズLr1を光軸Dc方向へ移動させることができる。なお、図3には、実施例1におけるレンズ装置100の光線図を示す。
【0032】
また、表1a,表1bは実施例1のレンズ装置100におけるレンズ全系のレンズデータを示し、表1aは面データ、表1bはフォーカスと像面補正の間隔,非球面係数をそれぞれ示す。無限物点時のレンズ全系は、Fナンバー:F1.7,像高:10.00〔mm〕である。
【0033】
【表1a】
【0034】
【表1b】
【0035】
表1aの面データは、物体OBJ側から数えたレンズ面の面番号をiで示し、この面番号iは、図1に示した符号(数字)に一致する。これに対応して、レンズ面の曲率半径R(i)、軸上面間隔D(i)、レンズの屈折率nd(i)、レンズのアッベ数νd(i)、レンズ面の有効半径Re(i)をそれぞれ示す。nd(i)及びνd(i)はd線(550〔nm〕)に対する数値である。軸上面間隔D(i)は相対向する面と面間のレンズ厚或いは空気空間を示す。なお、曲率半径R(i)と面間隔D(i)の単位は〔mm〕である。面番号のOBJは物体、IMGは像の位置を示す。曲率半径R(i)のInfinityは平面である。屈折率nd(i)とアッベ数νd(i)の空欄は空気であることを示す。
【0036】
表1bは、フォーカスと像面補正の空気間隔(THI)を示す。また、非球面係数は、面の中心を原点とし、光軸Dc方向をZとした直交座標系(X,Y,Z)において、S2…を非球面の面番号としたとき、Zは数1により表される。数1において、Rは中心曲率半径、A4,A6,A8,A10,A12,A14は、それぞれ4次,6次,8次,10次,12次,14次の非球面係数、Hは光軸上の原点からの距離である。なお、表1bにおいて、「E」は「×10」を意味する。
【0037】
【数1】
【0038】
図18(a)に示すように、実施例1のレンズ装置100において、非球面レンズLsにおける近軸焦点距離faは-784.6〔mm〕,WIDE側における全系の焦点距離ftは10.8〔mm〕であるため、fa/ftは「-72.6」になるとともに、TELE側における全系の焦点距離ftは11.1〔mm〕であるため、fa/ftは、「-70.7」になり、WIDE側及びTELE側のいずれも(条件1)「-100≦〔fa/ft〕≦-10」を満たしている。
【0039】
また、非球面レンズLsにおける光軸Dc上のパワーPcは0.0013,同レンズLsにおける最周辺のパワーPfは-0.0051であるため、Pc/Pfは、「-0.25」になり、(条件2)「-0.7≦〔Pc/Pf〕≦-0.1」を満たしている。さらに、非球面レンズLsにおける近軸焦点距離はfaは-784.6〔mm〕,フォーカス群合成焦点距離ffは57.6〔mm〕であるため、fa/ffは「-13.6」になり、(条件3)「-20≦〔fa/ff〕≦-1」を満たしている。
【0040】
図4図9に、実施例1のレンズ装置100における像面補正後の縦収差図を示す。図4及び図5は基準準距離(OBJ=1650mm)のWIDE側とTELE側における縦収差図、図6及び図7は近距離(OBJ=840mm)のWIDE側とTELE側における縦収差図、図8及び図9は遠距離(OBJ=4200mm)のWIDE側とTELE側における縦収差図をそれぞれ示す。各縦収差図は、左側から、球面収差(610nm,550nm,470nm),非点収差(550nm),歪曲収差(550nm)を示す。各スケールは、±0.10mm,±0.10mm,±1.0%である。
【0041】
実施例1のレンズ装置100は、図4図9に示すように、いずれの縦収差も、大きな乱れがなく良好な収差特性、即ち、像面補正が行われた撮像性能(光学性能)が得られていることを確認できる。
【実施例0042】
次に、本実施形態に係る実施例2のレンズ装置100について、図10図17及び図18(b)を参照して説明する。
【0043】
実施例2に係るレンズ装置100は、基本的な構成として、図10に示すように、物体OBJ側から像IMG側へ順に、実施例1と同様に、前レンズ群Gf,中間レンズ群Gm,後レンズ群Grを備える。
【0044】
この場合、前レンズ群Gfは、全体が負のパワーとなるように構成する。最も物体OBJ側には、光軸Dc方向に移動することにより像面補正を行う像面補正レンズLf1を配する。この像面補正レンズLf1は、非球面レンズLsにより構成するとともに、物体OBJ側に凸面を有するメニスカスレンズを使用する。また、この像面補正レンズLf1に対して像IMG側には、実施例2の場合、二枚の単レンズにより構成した不動のレンズ群Gfsを配する。このレンズ群Gfsは、物体OBJ側から順に、物体OBJ側に凸面を有する負メニスカスレンズLf2,両凹レンズLf3を配して構成する。
【0045】
一方、中間レンズ群Gmは、全体を正のパワーにより構成し、ズーミング調整時及びフォーカシング調整時に光軸Dc方向へ移動する少なくとも一つのレンズLm1…が含むまれる。例示の場合、物体OBJ側から、両凸レンズLm1と両凹レンズLm2を接合した接合レンズJm1と、両凸レンズLm3と像IMG側に凸面を有する負メニスカスレンズLm4を接合した接合レンズJm2の、二つの接合レンズにより構成する。
【0046】
さらに、後レンズ群Grは、物体OBJ側の先頭に配し、かつズーミング調整時に光軸Dc方向へ移動する正のパワーを有する両凸レンズLr1と像IMG側に凸面を有する負メニスカスレンズLr2を接合した接合レンズJr1を配する。また、この接合レンズJr1に対して像IMG側に、ズーミング調整時に光軸Dc方向へ移動する両凹レンズLr3及び両凸レンズLr4を配し、この両凸レンズLr4の像IMG側に、両凸レンズLr5と両凹レンズLr6を接合した接合レンズJr2(図11参照)を配するとともに、この接合レンズJr2の像IMG側に、両凸レンズLr7,像IMG側に凸面を有する正メニスカスレンズLr8を配する。そして、この正メニスカスレンズLr8の像IMG側に、正のパワーを有する不動となる両凸レンズLr9を配して構成する。したがって、後レンズ群Grにおける接合レンズJr1、両凹レンズLr3及び両凸レンズLr4、接合レンズJr2,両凸レンズLr7及び正メニスカスレンズLr8は、ズーミング調整時に光軸Dc方向へ移動する。このように、後レンズ群Grには、ズーミング調整時に光軸Dc方向へ移動する正のパワーを有する少なくとも一つのレンズLr1及び正のパワーを有する不動となる少なくとも一つのレンズLreが含まれる。
【0047】
そして、以上の光学系CSにおいて、光学条件を以下に示す(条件1)-(条件3)を満たすように設定する点は、前述した実施例1の場合と同じである。
【0048】
一方、実施例2の光学系CSにおいては、図10に示すように、前レンズ群Gfにおける二枚の単レンズにより構成したレンズ群Gfsと、後レンズ群Grにおける最も像IMG側に配した両凸レンズLreは不動となる。他方、前レンズ群Gfにおける最も物体OBJ側に配した像面補正レンズLf1は、レンズ鏡筒200に配した不図示の像面補正リングを回し操作することにより光軸Dc方向へ移動させることができる。これにより、像面補正レンズLf1の光軸Dc方向の位置が変更され、像面補正を行うことができる。また、フォーカシング調整時には、レンズ鏡筒200に配した不図示のフォーカス調整リングを回し操作することにより、中間レンズ群Gmを光軸Dc方向へ移動させることができる。さらに、ズーミング調整時には、レンズ鏡筒200に配した不図示のズーム調整リングを回し操作することにより、中間レンズ群Gm,及び後レンズ群Grにおける接合レンズLr1、両凹レンズLr3及び両凸レンズLr4、接合レンズJr2,両凸レンズLr7及び正メニスカスレンズLr8を、それぞれ光軸Dc方向へ移動させることができる。なお、図11には、実施例2におけるレンズ装置100の光線図を示す。
【0049】
また、表2a,2bは実施例2のレンズ装置100におけるレンズ全系のレンズデータを示し、表2aは面データ、表2bはフォーカスと像面補正の間隔,非球面係数をそれぞれ示す。無限物点時のレンズ全系は、Fナンバー:F1.9,像高:12.25〔mm〕である。
【0050】
【表2a】
【0051】
【表2b】
【0052】
表2a及び表2bのレンズデータの形式は、基本的に実施例1の場合と同じである。図18(b)に示すように、実施例2のレンズ装置100において、非球面レンズLsにおける近軸焦点距離faは-221.5〔mm〕,WIDE側における全系の焦点距離ftは14.7〔mm〕であるため、fa/ftは「-15.1」になるとともに、TELE側における全系の焦点距離ftは19.7〔mm〕であるため、fa/ftは、「-11.2」になり、WIDE側及びTELE側のいずれも(条件1)「-100≦〔fa/ft〕≦-10」を満たしている。
【0053】
また、非球面レンズLsにおける光軸Dc上のパワーPcは0.0045,同レンズLsにおける最周辺のパワーPfは-0.0101であるため、Pc/Pfは、「-0.45」になり、(条件2)「-0.7≦〔Pc/Pf〕≦-0.1」を満たしている。さらに、非球面レンズLsにおける近軸焦点距離はfaは-221.5〔mm〕,フォーカス群合成焦点距離ffは79.4〔mm〕であるため、fa/ffは「-2.79」になり、(条件3)「-20≦〔fa/ff〕≦-1」を満たしている。
【0054】
図12図17に、実施例1のレンズ装置100における像面補正後の縦収差図を示す。図12及び図13は基準準距離(OBJ=1650mm)のWIDE側とTELE側における縦収差図、図14及び図15は近距離(OBJ=840mm)のWIDE側とTELE側における縦収差図、図16及び図17は遠距離(OBJ=4200mm)のWIDE側とTELE側における縦収差図をそれぞれ示す。各縦収差図は、左側から、球面収差(610nm,550nm,470nm),非点収差(550nm),歪曲収差(550nm)を示す。各スケールは、±0.10mm,±0.10mm,±1.0%である。
【0055】
実施例2のレンズ装置100も実施例1と同様に、図12図17に示すように、いずれの縦収差も、大きな乱れがなく良好な収差特性、即ち、像面補正が行われた撮像性能(光学性能)が得られていることを確認できる。
【0056】
よって、このような本実施形態(実施例1,2)に係るレンズ装置1によれば、基本構成として、最も物体OBJ側に配するとともに、非球面レンズLsにより構成し、かつ光軸Dc方向に移動することにより像面補正を行う像面補正レンズLf1,及びこの像面補正レンズLf1の像IMG側に配し、かつ不動のレンズ群Gfsにより構成するとともに、全体を負のパワーにより構成した前レンズ群Gfと、ズーミング調整時及びフォーカシング調整時に光軸Dc方向へ移動する少なくとも一つのレンズLm1…を含むことにより、全体を正のパワーにより構成した中間レンズ群Gmと、ズーミング調整時に光軸Dc方向へ移動する正のパワーを有する少なくとも一つのレンズLr1又はレンズ群及び正のパワーを有する不動となる少なくとも一つのレンズLre又はレンズ群を含む後レンズ群Grとを備え、faを非球面レンズLsの近軸焦点距離とし、ftを全系焦点距離としたとき、-100≦〔fa/ft〕≦-10(条件1)を満たす光学系CSを備えてなるため、フォーカシング調整時に移動する中間レンズ群Gmと像面補正レンズLf1における光学的及び機構的に干渉が抑制される。これにより、特に、フォーカシング調整時に発生する像面湾曲を有効に解消できるなど、十分な像面補正を行うことができ、画像全体の品質向上を図ることができる。加えて、フォーカシング調整機構と像面補正機構の設計自由度を高めることができるため、レンズ装置100における機構上の簡略化、レンズ装置100全体の小型コンパクト化、更には低コスト化を実現することができる。
【0057】
以上、実施例1,2を含む好適実施形態について詳細に説明したが、本発明は、このような実施形態に限定されるものではなく、細部の構成,形状,素材,数量,数値等において、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更,追加,削除することができる。
【0058】
例えば、少なくとも一つのレンズLm1…を含むとは、単レンズ,接合レンズ,レンズ群を含むとともに、レンズ枚数は任意である。同様に、少なくとも一つのレンズLr1,少なくとも一つのレンズLreには、それぞれ単レンズ,接合レンズ,レンズ群を含むとともに、レンズ枚数は任意である。一方、光学系CSにおいて、-0.7≦〔Pc/Pf〕≦-0.1(条件2)を満たすことが望ましいが必須の構成要件となるものではない。さらに、光学系CSにおいて、-20≦〔fa/ff〕≦-1(条件3)を満たすことが望ましいが必須の構成要件となるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明に係るレンズ装置は、プロジェクタ等の各種光学機器における専用レンズ或いは交換レンズを含む投射レンズ(投射ズームレンズ)として利用できる。
【符号の説明】
【0060】
100:レンズ装置,OBJ:物体,IMG:像,Gf:前レンズ群,Gfs:レンズ群,Gm:中間レンズ群,Gr:後レンズ群,Dc:光軸,CS:光学系,Ls:非球面レンズ,Lf1:像面補正レンズ,Lm1:レンズ,Lr1:レンズ,Lre:レンズ,fa:非球面レンズの近軸焦点距離,ft:全系焦点距離,Pc:非球面レンズの光軸上のパワー,Pf:非球面レンズの最周辺のパワー,ff:フォーカス群合成焦点距離,Jr1:接合レンズ
図1
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