(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022181468
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】溶液の膜処理方法および装置
(51)【国際特許分類】
B01D 61/12 20060101AFI20221201BHJP
B01D 61/02 20060101ALI20221201BHJP
B01D 61/58 20060101ALI20221201BHJP
C02F 1/44 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
B01D61/12
B01D61/02 510
B01D61/58
C02F1/44 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021088427
(22)【出願日】2021-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000143972
【氏名又は名称】株式会社ササクラ
(74)【代理人】
【識別番号】110001597
【氏名又は名称】特許業務法人アローレインターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】早水 基頼
【テーマコード(参考)】
4D006
【Fターム(参考)】
4D006GA03
4D006GA14
4D006HA01
4D006HA41
4D006JA25Z
4D006JA53A
4D006JA58B
4D006JA59C
4D006JA63
4D006JA65Z
4D006JA66Z
4D006KA52
4D006KA53
4D006KA54
4D006KA55
4D006KA57
4D006KE04Q
4D006KE07Q
4D006KE16Q
4D006MA01
4D006MA03
4D006PA01
4D006PB03
(57)【要約】
【課題】 溶液の高濃縮を効率良く行うことができる溶液の膜処理装置を提供する。
【解決手段】 第1溶液を、第1溶液よりも低圧の第2溶液に半透膜21を介して接触させて濃縮する膜濃縮装置20を備える溶液の膜処理装置1-1であって、第2溶液を加熱する第2溶液加熱装置30を更に備え、膜濃縮装置20による濃縮前または濃縮後の第1溶液の少なくとも一部を第2溶液として使用し、第2溶液加熱装置30により第2溶液の温度を第1溶液の温度よりも高温にして膜濃縮装置20による膜濃縮を行う溶液の膜処理装置1-1である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1溶液を、前記第1溶液よりも低圧の第2溶液に半透膜を介して接触させて濃縮する膜濃縮工程を備える溶液の膜処理方法であって、
前記第2溶液を加熱する第2溶液加熱工程を更に備え、
前記膜濃縮工程による濃縮前または濃縮後の前記第1溶液の少なくとも一部を前記第2溶液として使用し、前記第2溶液加熱工程により前記第2溶液の温度を前記第1溶液の温度よりも高温にして前記膜濃縮工程を行う溶液の膜処理方法。
【請求項2】
前記第1溶液を昇圧して逆浸透膜に通水することにより濃縮するRО膜通水工程を更に備え、
前記膜濃縮工程は、前記RО膜通水工程により濃縮された第1溶液を更に濃縮する請求項1に記載の溶液の膜処理方法。
【請求項3】
前記膜濃縮工程は、前記膜濃縮工程による濃縮後の前記第1溶液の少なくとも一部を前記第2溶液として、前記第2溶液加熱工程により加熱する請求項2に記載の溶液の膜処理方法。
【請求項4】
前記第1溶液をナノろ過膜に通水するNF膜通水工程を更に備え、
前記RО膜通水工程は、前記NF膜通水工程で前記ナノろ過膜を透過した前記第1溶液の少なくとも一部を濃縮する請求項3に記載の溶液の膜処理方法。
【請求項5】
前記膜濃縮工程は、前記RО膜通水工程を行う前の前記第1溶液の少なくとも一部を前記第2溶液として、前記第2溶液加熱工程により加熱する請求項2に記載の溶液の膜処理方法。
【請求項6】
前記膜濃縮工程は、前記半透膜を備える膜濃縮装置を複数配置して、前記各膜濃縮装置に対して第1溶液を直列に供給すると共に前記第2溶液を直列または並列に供給し、
前記第2溶液加熱工程は、少なくともいずれかの前記膜濃縮装置に供給される前記第2溶液を加熱する請求項1から5のいずれかに記載の溶液の膜処理方法。
【請求項7】
前記第1溶液をナノろ過膜に通水するNF膜通水工程を更に備え、
前記NF膜通水工程で前記ナノろ過膜を透過した前記第1溶液の少なくとも一部を前記第2溶液として、前記第2溶液加熱工程により加熱する請求項1から6のいずれかに記載の溶液の膜処理方法。
【請求項8】
前記膜濃縮工程は、濃縮前に前記第2溶液が分岐した後の前記第1溶液を冷却して、前記第2溶液に半透膜を介して接触させる請求項1から7のいずれかに記載の溶液の膜処理方法。
【請求項9】
第1溶液を、前記第1溶液よりも低圧の第2溶液に半透膜を介して接触させて濃縮する膜濃縮装置を備える溶液の膜処理装置であって、
前記第2溶液を加熱する第2溶液加熱装置を更に備え、
前記膜濃縮装置による濃縮前または濃縮後の前記第1溶液の少なくとも一部を前記第2溶液として使用し、前記第2溶液加熱装置により前記第2溶液の温度を前記第1溶液の温度よりも高温にして前記膜濃縮装置による膜濃縮を行う溶液の膜処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶液の膜処理方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
海水等の溶液を膜処理する装置として、特許文献1には、海水を第1逆浸透膜モジュールに供給することにより淡水を分離して濃縮塩水を排出する一方、低浸透圧水を第2逆浸透膜モジュールに供給することにより淡水を分離して濃縮低浸透圧水を排出し、排出された濃縮塩水および濃縮低浸透圧水を正浸透膜モジュールに供給して、正浸透膜を介して濃縮低浸透圧水から供給される水により濃縮塩水を希釈する造水システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の造水システムは、造水量の増加を主な目的としており、第1逆浸透膜モジュールで生成された濃縮海水を正浸透膜モジュールにおいて希釈させるように構成されているため、溶液を濃縮する際の濃縮率を高める上で検討の余地があった。
【0005】
そこで、本発明は、溶液の高濃縮を効率良く行うことができる溶液の膜処理方法および装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の前記目的は、第1溶液を、前記第1溶液よりも低圧の第2溶液に半透膜を介して接触させて濃縮する膜濃縮工程を備える溶液の膜処理方法であって、前記第2溶液を加熱する第2溶液加熱工程を更に備え、前記膜濃縮工程による濃縮前または濃縮後の前記第1溶液の少なくとも一部を前記第2溶液として使用し、前記第2溶液加熱工程により前記第2溶液の温度を前記第1溶液の温度よりも高温にして前記膜濃縮工程を行う溶液の膜処理方法により達成される。
【0007】
この溶液の膜処理方法は、前記第1溶液を昇圧して逆浸透膜に通水することにより濃縮するRО膜通水工程を更に備えることが好ましく、前記膜濃縮工程は、前記RО膜通水工程により濃縮された第1溶液を更に濃縮することが好ましい。
【0008】
前記RО膜通水工程を備える溶液の膜処理方法において、前記膜濃縮工程は、前記膜濃縮工程による濃縮後の前記第1溶液の少なくとも一部を前記第2溶液として、前記第2溶液加熱工程により加熱することができる。この場合、前記第1溶液をナノろ過膜に通水するNF膜通水工程を更に備えることが可能であり、前記RО膜通水工程は、前記NF膜通水工程で前記ナノろ過膜を透過した前記第1溶液の少なくとも一部を濃縮することができる。あるいは、前記膜濃縮工程は、前記RО膜通水工程を行う前の前記第1溶液の少なくとも一部を前記第2溶液として、前記第2溶液加熱工程により加熱することができる。
【0009】
また、前記膜濃縮工程は、前記半透膜を備える膜濃縮装置を複数配置して、前記各膜濃縮装置に対して第1溶液を直列に供給すると共に前記第2溶液を直列または並列に供給することが可能であり、前記第2溶液加熱工程は、少なくともいずれかの前記膜濃縮装置に供給される前記第2溶液を加熱することができる。
【0010】
また、前記第1溶液をナノろ過膜に通水するNF膜通水工程を更に備えることが可能であり、前記NF膜通水工程で前記ナノろ過膜を透過した前記第1溶液の少なくとも一部を前記第2溶液として、前記第2溶液加熱工程により加熱することができる。
【0011】
前記膜濃縮工程は、濃縮前に前記第2溶液が分岐した後の前記第1溶液を冷却して、前記第2溶液に半透膜を介して接触させることができる。
【0012】
また、本発明の前記目的は、第1溶液を、前記第1溶液よりも低圧の第2溶液に半透膜を介して接触させて濃縮する膜濃縮装置を備える溶液の膜処理装置であって、前記第2溶液を加熱する第2溶液加熱装置を更に備え、前記膜濃縮装置による濃縮前または濃縮後の前記第1溶液の少なくとも一部を前記第2溶液として使用し、前記第2溶液加熱装置により前記第2溶液の温度を前記第1溶液の温度よりも高温にして前記膜濃縮装置による膜濃縮を行う溶液の膜処理装置により達成される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、溶液の高濃縮を効率良く行うことができる溶液の膜処理方法および装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係る溶液の膜処理装置の原理図である。
【
図2】本発明に係る溶液の膜処理装置の他の原理図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る溶液の膜処理装置の概略構成図である。
【
図4】本発明の他の実施形態に係る溶液の膜処理装置の概略構成図である。
【
図5】本発明の更に他の実施形態に係る溶液の膜処理装置の概略構成図である。
【
図6】本発明の更に他の実施形態に係る溶液の膜処理装置の概略構成図である。
【
図7】本発明の更に他の実施形態に係る溶液の膜処理装置の概略構成図である。
【
図8】本発明の更に他の実施形態に係る溶液の膜処理装置の概略構成図である。
【
図9】本発明の更に他の実施形態に係る溶液の膜処理装置の概略構成図である。
【
図10】本発明の更に他の実施形態に係る溶液の膜処理装置の概略構成図である。
【
図11】本発明の更に他の実施形態に係る溶液の膜処理装置の概略構成図である。
【
図12】本発明の更に他の実施形態に係る溶液の膜処理装置の概略構成図である。
【
図13】本発明の更に他の実施形態に係る溶液の膜処理装置の概略構成図である。
【
図14】本発明の更に他の実施形態に係る溶液の膜処理装置の概略構成図である。
【
図15】本発明の更に他の実施形態に係る溶液の膜処理装置の概略構成図である。
【
図16】本発明の更に他の実施形態に係る溶液の膜処理装置の概略構成図である。
【
図17】本発明の更に他の実施形態に係る溶液の膜処理装置の概略構成図である。
【
図18】本発明の更に他の実施形態に係る溶液の膜処理装置の概略構成図である。
【
図19】本発明の更に他の実施形態に係る溶液の膜処理装置の概略構成図である。
【
図20】本発明の更に他の実施形態に係る溶液の膜処理装置の概略構成図である。
【
図21】本発明の更に他の実施形態に係る溶液の膜処理装置の概略構成図である。
【
図22】本発明の更に他の実施形態に係る溶液の膜処理装置の概略構成図である。
【
図23】本発明の更に他の実施形態に係る溶液の膜処理装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本発明に係る溶液の膜処理装置(以下、単に「膜処理装置」という)の原理図である。
図1に示す膜処理装置1-1は、膜濃縮装置20と、第2溶液加熱装置30とを備えている。
【0016】
膜濃縮装置20は、室内が半透膜21で仕切られることにより高圧室22および低圧室23が形成されている。高圧室22には、第1溶液が導入される一方、低圧室23には、第1溶液よりも低圧の第2溶液が導入される。高圧室22および低圧室23にそれぞれ導入された第1溶液および第2溶液は、半透膜21を介して接触した後に外部に排出される。膜濃縮装置20を通過した第1溶液の少なくとも一部は、第2溶液として使用される。第2溶液加熱装置30は、第2溶液を加熱する。加熱された第2溶液は、高圧室22に供給される第1溶液よりも高温の状態で低圧室23に供給される。
【0017】
膜濃縮装置20においては、高圧室22の圧力を低圧室23の圧力よりも高くすることで、高圧室22から半透膜21を介して低圧室23に水を移動させ、高圧室22を通過する第1溶液を濃縮する膜濃縮工程が行われる。この膜濃縮工程においては、高圧室22に供給される第1溶液が高濃度になると、濃度分極が増加して、水フラックスが低下するおそれがある。
【0018】
本発明の溶液の膜処理方法(以下、単に「膜処理方法」という)は、低圧室23に供給される第2溶液を加熱する第2溶液加熱工程を備えることにより、上記の膜濃縮工程において、第2溶液の温度を第1溶液の温度よりも高温にすることができるので、第2溶液の浸透圧が増加することにより半透膜21の膜透過フラックスが改善される。更に、第2溶液の温度上昇により第2溶液の密度が低下すると、半透膜21の膜面での流速が上昇するため、濃度分極の低下を図ることができ、これによっても膜フラックスが改善される。これらの理由から、半透膜21の耐久性に悪影響を与えない範囲で第2溶液の温度を高めることで、高圧室22から低圧室23に向けた半透膜21の透水性を向上させて、高圧室22を通過する第1溶液の高濃縮を効率良く行うことができる。
【0019】
図1に示す膜処理装置1-1は、膜濃縮工程による濃縮後の第1溶液の一部を第2溶液として使用しているが、
図2に示す膜処理装置1-2のように、高圧室22に導入される前(すなわち、膜濃縮工程による濃縮前)の第1溶液の一部を第2溶液として使用し、この第2溶液を第2溶液加熱装置30で加熱して、高圧室22に導入される第1溶液よりも高温にしてもよい。この場合も、第1溶液を高圧ポンプ2a等の昇圧手段で昇圧し、低圧室23を高圧室22よりも低圧に維持することで、第1溶液の高濃縮を効率良く行うことができる。また、第1溶液の温度が高い場合等においては、第2溶液が分岐した後の第1溶液を冷却水との熱交換等により冷却する冷却手段を設けてもよく、膜濃縮工程における第1溶液と第2溶液との温度差をより容易に確保することができる。
【0020】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。
図3は、本発明の一実施形態に係る膜処理装置の概略構成図である。
図3に示すように、膜処理装置1-3は、RО膜ユニット10、膜濃縮装置20および回収液加熱装置30を備えている。以下の各実施形態においては、
図1および
図2に示す第1溶液を、被処理液とし、第2溶液を、被処理液から水を回収する回収液として説明する。但し、本発明は、このような具体例に限定されるものではない。被処理液としては、海水等の無機塩の溶液を好ましく例示することができるが、有機溶液等であってもよい。
【0021】
RO膜ユニット10は、ケーシング内にRO膜(逆浸透膜)11を備えるRO膜モジュールからなり、被処理液をRO膜11に通水することにより製造水(淡水)を生成する。RO膜11の形状は、平膜や中空糸膜等を例示することができる。RO膜ユニット10のRO膜11を透過せずに濃縮された被処理液は、膜濃縮装置20に供給される。
図3に示すRO膜ユニット10は、1段の構成としているが、複数段の構成にすることもできる。
【0022】
膜濃縮装置20は、ケーシング内が半透膜21で仕切られることにより高圧室22および低圧室23が形成されている。高圧室22には、RO膜ユニット10においてRO膜11を透過せずに濃縮された被処理液が導入される一方、低圧室23には、後述する回収液が導入される。高圧室22および低圧室23にそれぞれ導入された被処理液および回収液は、半透膜21を介して接触した後に外部に排出される。半透膜21は、平膜以外に中空糸膜であってもよい。半透膜21は、RO膜(逆浸透膜)を好適に使用することができるが、FO膜(正浸透膜)などの他の半透膜であってもよい。
【0023】
回収液加熱装置30は、回収液を排熱との熱交換により加熱する熱交換器からなり、
図1および
図2の第2溶液加熱装置に対応する。回収液加熱装置30の熱源は、特に限定されるものではなく、排熱以外に、太陽光等の自然エネルギーや、その他の熱源を利用してもよい。
【0024】
次に、上記の構成を備える膜処理装置1-3による膜処理方法を説明する。まず、海水等の被処理液を高圧ポンプ2aにより昇圧してRO膜ユニット10に供給することにより、被処理液をRO膜11に通水して濃縮するRO膜通水工程を行う。高圧ポンプ2aは、例えばインバータ制御が可能なポンプとすることで、省エネルギー化を図ることができる。
【0025】
RO膜通水工程により濃縮された被処理液は、膜濃縮装置20の高圧室22に供給されて濃縮された後、膜濃縮装置20から排出される。膜濃縮装置20から排出された被処理液は、一部が分岐されて回収液として使用される。回収液は、回収液加熱装置30により加熱する回収液加熱工程により昇温された後、膜濃縮装置20の低圧室23に供給される。低圧室23に供給される回収液は、膜濃縮装置20の通過により減圧されるため、高圧室22に供給される被処理液よりも低圧であると共に、被処理液よりも高温である。したがって、半透膜21を介した高圧室22から低圧室23への水の移動を促すことができ、高圧室22を通過する被処理液を高濃度で濃縮することができる。
【0026】
膜濃縮装置20で濃縮された被処理液のうち、回収液として使用されない残部は、濃縮液として使用することができ、例えば、正浸透発電、製塩蒸発濃縮による淡水化などの他のプロセスで利用することができる。膜濃縮装置20で水を回収した回収液は、高圧ポンプ2aの上流側で被処理液に合流されて、RO膜ユニット10に再び供給される。これにより、RO膜ユニット10における製造水の製造効率を高めることができると共に、被処理液が希釈されて浸透圧が低下することにより、RO膜ユニット10に低圧で供給することができ、高圧ポンプ2aの省エネルギー化を図ることができる。更に、被処理液に合流する回収液は回収液加熱装置30により加熱されているため、膜濃縮装置20の高圧室22に供給される被処理液を、低圧室23に供給される回収液の温度を超えない範囲で昇温することができる。これにより、高圧室22における被処理液の粘度が低下するので、被処理液を低圧力で濃縮することができる。
【0027】
図4に示す膜処理装置1-4は、
図3に示す膜処理装置1-3において、低圧室23に導入される全ての回収液を回収液加熱装置30により加熱するのではなく、一部の回収液を、バイパス流路3により回収液加熱装置30に供給せずにバイパスさせるものである。バイパス流路3によりバイパスされる回収液の流量は、流量制御弁4の開度調節により制御することができる。この構成によれば、回収液の昇温が必要最小限となるように容易に制御できるため、省エネルギー化を図ることができる。なお、
図4において
図3と同様の構成部分には同一の符号を付している(以下の図面においても同様)。
【0028】
図5に示す膜処理装置1-5は、
図3に示す膜処理装置1-3において、NF膜ユニット40を追加したものである。NF膜ユニット40は、ケーシング内にNF膜(ナノろ過膜)41を備えるNF膜モジュールからなり、被処理液をNF膜41に通水することにより透過液を生成する。NF膜の形状としては、平膜や中空糸膜等を例示することができる。NF膜ユニット40は、1段に構成する代わりに複数段に構成してもよい。
【0029】
図5に示す膜処理装置1-5によれば、海水等の被処理液を中圧ポンプ2bによりNF膜ユニット40に供給することにより、被処理液をNF膜41に通水するNF膜通水工程を行う。NF膜41を透過した被処理液は、一部が高圧ポンプ2aにより昇圧されて、RO膜ユニット10に供給される。この後の工程は、
図4に示す膜処理装置1-4による膜処理方法と同様である。
【0030】
図6に示す膜処理装置1-6は、
図3に示す膜処理装置1-3において、膜濃縮装置20による濃縮後の被処理液を回収液として使用する代わりに、膜濃縮装置20による濃縮前の被処理液の一部を分岐させて、回収液として使用するものである。回収液は、供給ポンプ2cにより回収液加熱装置30に供給されて加熱された後、膜濃縮装置20の低圧室23に供給される。低圧室23から排出された回収液は、被処理液に合流されて被処理液として使用され、高圧ポンプ2aによりRO膜ユニット10に供給される。
【0031】
図7に示す膜処理装置1-7は、
図5に示す膜処理装置1-5において、膜濃縮工程が行われる前後の被処理液間で圧力交換を行うエネルギー回収装置60を備えると共に、膜濃縮装置20が、3段の膜濃縮装置20-1,20-2,20-3により構成されたものである。各膜濃縮装置20-1,20-2,20-3の構成は、
図5に示す膜濃縮装置20と同様であり、それぞれの高圧室22には、RO膜ユニット10で濃縮された被処理液が直列に供給される。NF膜ユニット40のNF膜41を透過せずに濃縮された被処理液は、回収液として使用され、供給ポンプ2cの作動により回収液加熱装置30を経て、各膜濃縮装置20-1,20-2,20-3の低圧室23に並列に供給される。NF膜41を透過しない被処理液は、溶質の濃度上昇により浸透圧が高くなるため、これを回収液とすることで、膜濃縮装置20-1,20-2,20-3において被処理液との浸透圧差を小さく維持することができる。
【0032】
図7に示す膜処理装置1-7は、低圧の回収液の圧力損失を軽減して、各膜濃縮装置20-1,20-2,20-3に確実に供給することができると共に、回収液を被処理液よりも高温にして、被処理液の濃縮率を高めることができる。各膜濃縮装置20-1,20-2,20-3の低圧室23に供給される回収液の流量は、流量制御弁4-1,4-2,4-3の開度調節により個別に制御することができ、これによって膜濃縮装置20-1,20-2,20-3ごとに回収液を適切な流量で供給することができる。各膜濃縮装置20-1,20-2,20-3の段数は、特に限定されない。回収液加熱装置30は、複数段の膜濃縮装置20-1,20-2,20-3の少なくともいずれかに供給される回収液を加熱すればよく、例えば、最前段の膜濃縮装置20-1、あるいは、最後段の膜濃縮装置20-3に供給される回収液のみを加熱する構成にしてもよい。
【0033】
図7に示す膜濃縮装置20-1,20-2,20-3において、被処理液から水を回収した回収液は、合流された後に一部が循環ポンプ2eにより各膜濃縮装置20-1,20-2,20-3に個別に循環される。これにより、系外に排出される回収液をより希釈することができる。各膜濃縮装置20-1,20-2,20-3への循環流量は、流量制御弁4-4,4-5,4-6の開度調節により個別に制御することができる。循環ポンプ2eにより回収液を循環させる構成は、各段の少なくともいずれかの膜濃縮装置20-1,20-2,20-3から排出される回収液を、各段の少なくともいずれかの膜濃縮装置20-1,20-2,20-3に供給される回収液に合流させる構成であればよい。
【0034】
図7に示す膜処理装置1-7において、エネルギー回収装置60は、ターボチャージャからなり、再後段の膜濃縮装置20-3から排出された濃縮液によりタービンを回転させ、この動力を利用して、最前段の膜濃縮装置20-1に供給される被処理液を昇圧する。エネルギー回収装置60の構成は、濃縮液のエネルギーを回収して被処理液を昇圧可能であれば特に限定されるものではなく、例えば、タービン型以外にロータ型やピストン型などの他のエネルギー回収装置であってもよい。膜濃縮装置20-1,20-2,20-3で濃縮された被処理液は、エネルギー回収装置60の通過により、自身が減圧されると共に、膜濃縮装置20-1,20-2,20-3に供給される被処理液を昇圧するため、高圧室22と低圧室23との圧力差をより大きくして高濃縮を行うことができる。
【0035】
図8に示す膜処理装置1-8は、
図7に示す膜処理装置1-7において、膜濃縮装置20-1,20-2,20-3により被処理液が濃縮されて系外に排出される濃縮液の一部を、NF膜ユニット40のNF膜41を透過せずに濃縮された被処理液に合流させて、回収液として使用するものであり、その他の構成は、
図7に示す膜処理装置1-7と同様である。このように、膜濃縮装置20-1,20-2,20-3で濃縮された濃縮液の少なくとも一部を回収液として使用する膜処理装置の具体例を、
図9から
図12に示す。
【0036】
図9に示す膜処理装置1-9は、
図7に示す膜処理装置1-7において、NF膜ユニット40を備えない構成にしたものである。RO膜ユニット10で濃縮された被処理液は、昇圧ポンプ2dおよびエネルギー回収装置60により昇圧されて、2段の膜濃縮装置20-1,20-2に供給される。一方、2段の膜濃縮装置20-1,20-2を並列に通過した回収液は、一部が高圧ポンプ2aの上流側で被処理液に合流される一方、残部が循環ポンプ2eにより循環される。
【0037】
図10に示す膜処理装置1-10は、3段の膜濃縮装置20-1,20-2,20-3を備える構成において、後段側の2つの膜濃縮装置20-2,20-3に並列に供給した回収液を合流した後、昇圧ポンプ2dの作動によって昇圧し、前段側の膜濃縮装置20-1に供給するように構成されている。膜濃縮装置20-2,20-3を通過後に合流された回収液の圧力が十分な場合には、昇圧ポンプ2dを備えない構成であってもよい。
【0038】
図11に示す膜処理装置1-11は、3段の膜処理装置20-1,20-2,20-3を備える構成において、後段側の膜処理装置20-3に供給した回収液を、昇圧ポンプ2dの作動により前段側の2つの膜処理装置20-1,20-2に並列に供給するものである。
【0039】
図12に示す膜処理装置1-12は、4段の膜処理装置20-1,20-2,20-3,20-4を備える構成において、後段側の2つの膜処理装置20-3,20-4に並列に供給した回収液を合流して、昇圧ポンプ2dの作動により前段側の2つの膜処理装置20-1,20-2に並列に供給するものである。
【0040】
図9から
図12に示す膜処理装置1-9~1-12のように、各段の膜処理装置に対する回収液の供給について、並列的な供給をベースとして直列的な供給を適宜組み合わせることにより、各膜処理装置に供給される回収液の濃度および流量を容易に調整することができる。この結果、必要となるポンプの台数を低減して大容量化によるポンプ効率の向上を図ることが可能になり、各膜処理装置における膜フラックスの均等化を図ることもできる。
図9から
図12に示す構成においても、回収液加熱装置30は、複数段の膜濃縮装置の少なくともいずれかに供給される回収液を加熱する構成であればよい。
【0041】
図13から
図19に示す膜処理装置1-13~1-19は、複数段の膜処理装置を備える構成であり、NF膜ユニット40を設けて、NF膜41を透過した被処理液の少なくとも一部を回収液として使用し、回収液加熱装置30により加熱する。
【0042】
図13に示す膜処理装置1-13は、
図9に示す膜処理装置1-9において、膜濃縮装置20-1,20-2を通過した被処理液を、減圧弁5により減圧した後にNF膜ユニット40に供給し、NF膜41を透過した被処理液を回収液として使用するものである。
【0043】
図14に示す膜処理装置1-14は、2段の膜濃縮装置20-1,20-2およびNF膜ユニット40を備える構成において、NF膜ユニット40に供給されてNF膜41を透過した被処理液を回収液として使用し、回収液加熱装置30-1で加熱した後に、2段の膜濃縮装置20-1,20-2の間を通過する回収液に合流させるものである。NF膜41を透過せずに濃縮された被処理液は、昇圧ポンプ2dで昇圧されて、膜濃縮装置20-1,20-2において濃縮され、濃縮後の被処理液の一部が回収液として回収液加熱装置30-2により加熱される。
【0044】
図15に示す膜処理装置1-15は、
図13に示す膜処理装置1-13において、単一のNF膜ユニット40とする代わりに、複数のNF膜ユニット40-1,40-2を備えるものである。膜濃縮装置20-1,20-2で濃縮された被処理液は、減圧弁5-1を経てNF膜ユニット40-1に供給されて濃縮された後、膜濃縮装置20-3およびNF膜ユニット40-2に供給されて更に濃縮され、NF膜ユニット40-2で濃縮された被処理液の一部が、減圧弁5-2を経て回収液として使用される。NF膜ユニット40-1を透過した被処理液は、回収液として回収液加熱装置30-1により加熱された後、流量制御弁4-1の制御により一部が膜濃縮装置20-1に供給される。また、NF膜ユニット40-2を透過した被処理液は、回収液として回収液加熱装置30-2により加熱された後、流量制御弁4-2の制御により膜濃縮装置20-2,20-3に供給される。
【0045】
図15に示す膜処理装置1-15は、NF膜ユニット40-1を透過した被処理液を、膜濃縮装置20-1,20-2に回収液として供給し、NF膜ユニット40-2を透過した被処理液を、膜濃縮装置20-3に回収液として供給してもよい。あるいは、NF膜ユニット40-2を透過した被処理液を、膜濃縮装置20-1,20-2,膜濃縮装置20-3にそれぞれ回収液として供給してもよい。回収液加熱装置30は、少なくともいずれかの膜濃縮装置20-1,20-2,20-3の回収液を加熱する構成であればよい。
【0046】
図16に示す膜処理装置1-16は、2つのNF膜ユニット40-1,40-2、および、2つの膜濃縮装置20-1,20-2を備えている。NF膜ユニット40-1で濃縮された被処理液は、昇圧ポンプ2d-1で昇圧されて膜濃縮装置20-1で濃縮された後、減圧弁5を経てNF膜ユニット40-2で更に濃縮され、昇圧ポンプ2d-2を経て膜濃縮装置20-2で更に濃縮されて、濃縮液として回収される。回収される濃縮液は高圧になることから、例えば、浸透圧発電等の用途に好適に利用することができる。NF膜ユニット40-1,40-2を透過した被処理液は、回収液として一部が回収液加熱装置30-1,30-2により加熱されて、膜濃縮装置20-1,20-2に供給される。
【0047】
図17に示す膜処理装置1-17は、
図16に示す膜処理装置1-16において、減圧弁5および昇圧ポンプ2d-2に代えて、両者の間で圧力交換を行うエネルギー回収装置60を備えるものである。
【0048】
図18に示す膜処理装置1-18は、
図13に示す膜処理装置1-13において、減圧弁5に代えて、エネルギー回収装置60により減圧するものである。膜濃縮装置20-1,20-2の高圧室22に供給される被処理液は、エネルギー回収装置60により昇圧される。
【0049】
図19に示す膜処理装置1-19は、
図16に示す膜処理装置1-16において、2つの昇圧ポンプ部2d-1,2d-2に代えて、エネルギー回収装置60-1,60-2により昇圧するものである。膜濃縮装置20-1,20-2で濃縮された被処理液は、エネルギー回収装置60-1,60-2により減圧される。
【0050】
図20に示す膜処理装置1-20は、膜濃縮装置20およびNF膜ユニット40を備える構成において、NF膜ユニット40のNF膜41を透過した被処理液を、回収液として回収液加熱装置30により加熱して膜濃縮装置20の低圧室23に供給する一方、NF膜ユニット40のNF膜41を透過せずに濃縮された被処理液を、昇圧ポンプ2dにより昇圧して、膜濃縮装置20の高圧室22に供給するものである。NF膜41は、海水等の被処理液に含まれる2価以上のイオンの透過を抑制する一方で、1価イオンは透過し易い性質を有するため、NF膜41を透過した被処理液からなる回収液は、特に1価イオンの濃度低下が抑制される。したがって、膜濃縮装置20の高圧室22および低圧室23にそれぞれ供給される被処理液および回収液の浸透圧差を小さくすることができるので、高圧室22の圧力を過度に高めることなく被処理液の濃縮を確実に行うことができる。
図20に示す膜処理装置1-20において、膜濃縮装置20は、
図13等に示す膜処理装置1-13と同様に、複数段に配置してもよい。
【0051】
図20に示す膜処理装置1-20において、NF膜ユニット40を透過した被処理液を回収液加熱装置30に供給する流路の途中には、バイパス流路3が分岐接続されており、流量制御弁4の開度変化によりバイパス流路3にバイパスさせる透過液の流量を制御することができる。流量制御弁4を全閉にした状態でも高圧室22と低圧室23との間で所望の圧力差が生じる場合には、バイパス流路3を設けずに、NF膜ユニット40を透過した被処理液の全量を膜濃縮装置20に供給してもよい。
【0052】
図21に示す膜処理装置1-21は、
図6に示す膜処理装置1-6において、膜濃縮装置20による濃縮前の被処理液から一部を分岐させた回収液を加熱する回収液加熱装置30に加えて、回収液を分岐する前の被処理液を加熱する被処理液加熱装置70を備えるものである。被処理液加熱装置70を備えることにより、膜濃縮装置20の高圧室22および低圧室23にそれぞれ供給される被処理液および回収液がいずれも加熱されるため、膜濃縮装置20における両者の温度差を確保しつつ、高圧室22における被処理液の粘度低下により、被処理液を低圧力で濃縮することができる。
【0053】
図22に示す膜処理装置1-22は、
図21に示す膜処理装置1-21において、被処理液加熱装置70に代えて、回収液を分岐した後の被処理液を冷却水または冷媒との熱交換により冷却する被処理液冷却装置80を備えるものである。被処理液冷却装置80を備えることにより、膜濃縮装置20の高圧室22に供給される被処理液の温度を低下させて、低圧室23に供給される回収液との温度差を容易に確保することができ、例えば、被処理液の温度が想定よりも高い場合や、RO膜ユニット10における脱塩率を上げたい場合等において、有効である。低圧室23に供給される回収液は、一部または全量を回収液加熱装置30で加熱せずに、バイパス流路3によりバイパスさせてもよい。
図22に示す被処理液冷却装置80は、
図23に示すように、分岐した回収液が再び合流した後の被処理液を冷却するように配置してもよく、この場合も、被処理液の温度が想定よりも高い場合や、RO膜ユニット10における脱塩率を上げたい場合等に有効である。
【符号の説明】
【0054】
1 膜処理装置
2a 高圧ポンプ
2b 中圧ポンプ
2c 供給ポンプ
2d 昇圧ポンプ
2e 循環ポンプ
3 バイパス流路
4 流量制御弁
5 減圧弁
10 RO膜ユニット
20 膜濃縮装置
21 半透膜
22 高圧室
23 低圧室
30 回収液加熱装置(第2溶液加熱装置)
40 NF膜ユニット
60 エネルギー回収装置