(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022181485
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】情報処理装置、モデル生成装置、情報処理方法、モデル生成方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G01N 33/44 20060101AFI20221201BHJP
【FI】
G01N33/44
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021088469
(22)【出願日】2021-05-26
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、未来社会創造事業、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】504145342
【氏名又は名称】国立大学法人九州大学
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】谷口 茂
(72)【発明者】
【氏名】久池井 茂
(57)【要約】
【課題】組成物の物性を高精度に予測可能なモデルに関する技術を提供する。
【解決手段】モデル生成装置10は、訓練データ取得部120およびモデル生成部140を備える。訓練データ取得部120は訓練データを取得する。訓練データは樹脂組成物の組成を示す組成情報と、複数の物性値とが関連付けられたデータである。モデル生成部140は、訓練データを用いた機械学習を行うことにより、組成情報を入力とし複数の物性値を出力とするモデルを生成する。そして、複数の物性値は、同種の物性を互いに異なる測定条件で測定した結果である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂組成物の組成を示す組成情報を取得する入力データ取得部と、
モデル記憶部が記憶しているモデルを取得し、前記モデルに前記組成情報を入力することにより、複数の物性値を生成する出力データ生成部とを備え、
前記複数の物性値は、同種の物性を互いに異なる条件で測定した結果である、
情報処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の情報処理装置において、
前記複数の物性値は弾性率である
情報処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の情報処理装置において、
前記複数の物性値は、引張弾性率および曲げ弾性率の少なくとも一方を含む
情報処理装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載の情報処理装置において、
前記複数の物性値は、互いに異なる変形速度で測定された値を含む
情報処理装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の情報処理装置において、
前記組成情報は、複数の材料の混合比を示す情報である
情報処理装置。
【請求項6】
請求項5に記載の情報処理装置において、
前記複数の材料は、ナイロン系樹脂およびポリエステル系樹脂の少なくとも一方を含む
情報処理装置。
【請求項7】
樹脂組成物の組成を示す組成情報と、複数の物性値とが関連付けられた訓練データを取得する訓練データ取得部と、
前記訓練データを用いた機械学習を行うことにより、前記組成情報を入力とし前記複数の物性値を出力とするモデルを生成するモデル生成部とを備え、
前記複数の物性値は、同種の物性を互いに異なる測定条件で測定した結果である、
モデル生成装置。
【請求項8】
コンピュータによって実行される情報処理方法であって、
樹脂組成物の組成を示す組成情報を取得する入力データ取得ステップと、
モデル記憶部が記憶しているモデルを取得し、前記モデルに前記組成情報を入力することにより、複数の物性値を生成する出力データ生成ステップとを含み、
前記複数の物性値は、同種の物性を互いに異なる条件で測定した結果である、
情報処理方法。
【請求項9】
コンピュータによって実行されるモデル生成方法であって、
樹脂組成物の組成を示す組成情報と、複数の物性値とが関連付けられた訓練データを取得する訓練データ取得ステップと、
前記訓練データを用いた機械学習を行うことにより、前記組成情報を入力とし前記複数の物性値を出力とするモデルを生成するモデル生成ステップとを含み、
前記複数の物性値は、同種の物性を互いに異なる測定条件で測定した結果である、
モデル生成方法。
【請求項10】
請求項8に記載の情報処理方法の各ステップを、コンピュータに実行させるプログラム。
【請求項11】
請求項9に記載のモデル生成方法の各ステップを、コンピュータに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は情報処理装置、モデル生成装置、情報処理方法、モデル生成方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
所望の特性を有する組成物を得ようとする際に、候補となる組成物を実際に多数準備して特性の測定を行うことは、多大な労力を要する。
【0003】
特許文献1には、所定の熱伝導率を有する高分子を製造する際、任意の分子構造に対して、ニューラルネットワークモデルを用いた熱伝導率の予測を行うことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特性の予測を行う際には、モデルの予測精度を向上させることが重要である。
【0006】
本発明は、組成物の物性を高精度に予測可能なモデルに関する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、
樹脂組成物の組成を示す組成情報を取得する入力データ取得部と、
モデル記憶部が記憶しているモデルを取得し、前記モデルに前記組成情報を入力することにより、複数の物性値を生成する出力データ生成部とを備え、
前記複数の物性値は、同種の物性を互いに異なる条件で測定した結果である、
情報処理装置
が提供される。
【0008】
本発明によれば、
樹脂組成物の組成を示す組成情報と、複数の物性値とが関連付けられた訓練データを取得する訓練データ取得部と、
前記訓練データを用いた機械学習を行うことにより、前記組成情報を入力とし前記複数の物性値を出力とするモデルを生成するモデル生成部とを備え、
前記複数の物性値は、同種の物性を互いに異なる測定条件で測定した結果である、
モデル生成装置
が提供される。
【0009】
本発明によれば、
コンピュータによって実行される情報処理方法であって、
樹脂組成物の組成を示す組成情報を取得する入力データ取得ステップと、
モデル記憶部が記憶しているモデルを取得し、前記モデルに前記組成情報を入力することにより、複数の物性値を生成する出力データ生成ステップとを含み、
前記複数の物性値は、同種の物性を互いに異なる条件で測定した結果である、
情報処理方法
が提供される。
【0010】
本発明によれば、
コンピュータによって実行されるモデル生成方法であって、
樹脂組成物の組成を示す組成情報と、複数の物性値とが関連付けられた訓練データを取得する訓練データ取得ステップと、
前記訓練データを用いた機械学習を行うことにより、前記組成情報を入力とし前記複数の物性値を出力とするモデルを生成するモデル生成ステップとを含み、
前記複数の物性値は、同種の物性を互いに異なる測定条件で測定した結果である、
モデル生成方法
が提供される。
【0011】
本発明によれば、
上記の情報処理方法の各ステップを、コンピュータに実行させるプログラム
が提供される。
【0012】
本発明によれば、
上記のモデル生成方法の各ステップを、コンピュータに実行させるプログラム
が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、組成物の物性を高精度に予測可能なモデルに関する技術を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1の実施形態に係るモデル生成装置の構成を例示するブロック図である。
【
図2】第1の実施形態に係るモデルを例示する図である。
【
図3】モデル生成装置を実現するための計算機を例示する図である。
【
図4】第1の実施形態に係るモデル生成装置が行うモデル生成方法を例示するフローチャートである。
【
図5】第2の実施形態に係る情報処理装置の構成を例示するブロック図である。
【
図6】第2の実施形態に係る情報処理装置が行う情報処理方法を例示するフローチャートである。
【
図7】各実施例および比較例で生成されたモデルを、訓練データを用いて評価した結果を示すグラフである。
【
図8】各実施例および比較例で生成されたモデルを、テストデータを用いて評価した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0016】
なお、以下に示す説明において、特に説明する場合を除き、各装置の各構成要素は、ハードウエア単位の構成ではなく、機能単位のブロックを示している。各装置の各構成要素は、任意のコンピュータのCPU、メモリ、メモリにロードされた本図の構成要素を実現するプログラム、そのプログラムを格納するハードディスクなどの記憶メディア、ネットワーク接続用インタフェースを中心にハードウエアとソフトウエアの任意の組合せによって実現される。そして、その実現方法、装置には様々な変形例がある。
【0017】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係るモデル生成装置10の構成を例示するブロック図である。本実施形態に係るモデル生成装置10は、訓練データ取得部120およびモデル生成部140を備える。訓練データ取得部120は訓練データを取得する。訓練データは樹脂組成物の組成を示す組成情報と、複数の物性値とが関連付けられたデータである。モデル生成部140は、訓練データを用いた機械学習を行うことにより、組成情報を入力とし複数の物性値を出力とするモデルを生成する。そして、複数の物性値は、同種の物性を互いに異なる測定条件で測定した結果である。以下に詳しく説明する。
【0018】
図2は、本実施形態に係るモデル40を例示する図である。モデル40の入力は組成情報である。組成情報の例について以下に説明する。組成情報は、たとえば複数の材料の混合比を示す情報である。モデル40が対象とする複数の材料は予め定められており、組成情報は各材料の含有比率を示す情報を含む。たとえば組成情報は各材料の含有比率を要素として含むベクトルである。組成情報が[x
1,x
2,x
3,・・・,x
n]というベクトルで表されるとする。ここで、x
kは、対象とする樹脂組成物における材料kの含有比率を表し、組成情報は全体としてn種類の材料の混合比を示す。x
kは0以上1以下であり、x
1+x
2+・・・+x
n=1が成り立つ。材料kの含有比率は重量比率でもよいし、体積比率でも良い。ベクトルの一つの要素に対応する材料kを、以下では材料要素とも呼ぶ。材料要素の数nは、特に限定されないが、たとえば10以上20以下である。本例において組成情報は複数の材料要素の混合比を示す情報である。ただし、組成情報は本例に限定されず、任意の表現形式をとることができる。
【0019】
複数の材料は、たとえば、樹脂、溶剤、および添加剤を含む。樹脂組成物はたとえば成形材料または接着剤である。樹脂は特に限定されないが、たとえばナイロン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、オレフィン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、シリコーン系樹脂、フェノール系樹脂、およびこれらのモノマーからなる群から選択される一以上を含む。一例として複数の材料は、樹脂としてナイロン系樹脂およびポリエステル系樹脂の少なくとも一方を含む。添加剤としてはたとえば連結剤、離型剤、良流動化剤、充填剤、硬化剤が挙げられる。
【0020】
一以上の材料要素は複数の材料(樹脂、溶剤、および添加剤等)の混合物であっても良い。たとえば一以上の材料要素は複数の樹脂の混合物、複数の添加剤の混合物、または混合物と添加剤との混合物であっても良い。一例として、材料要素Aをナイロン樹脂とし、材料要素Bをポリエステル樹脂とし、材料要素Cをナイロン樹脂とポリエステル樹脂とを9:1で混合した混合物としてもよい。
【0021】
モデル40の出力は、複数の物性値である。複数の物性値の例について以下に説明する。複数の物性値は、互いに相関を有する物性値であり、同種の物性を互いに異なる測定条件で測定した結果である。モデル40が対象とする複数の物性値は予め定められている。本図の例において、複数の物性値は各物性値yjを要素として含むベクトル[y1,y2,・・・,ym]として表されている。ただし、複数の物性値は本例に限定されず、任意の表現形式をとることができる。複数の物性値の数mは特に限定されないが、モデルの予測精度向上の観点から、3以上であることが好ましい。複数の物性値の数はたとえば5以下である。また、複数の物性値は予め定められたルールで規格化されていても良い。
【0022】
複数の物性値は特に限定されないが、たとえば弾性率、粘性、流動性、硬化速度、固化速度、硬さ、耐熱温度、絶縁破壊電圧、熱膨張率、および耐熱性のいずれかである。すなわち、「同種の物性」における物性とは、たとえば弾性率、粘性、流動性、硬化速度、固化速度、硬さ、耐熱温度、絶縁破壊電圧、熱膨張率、および耐熱性のいずれかである。モデル40から出力される複数の物性値はいずれも、ある一つの物性に関する値である。ただし、複数の物性値は互いに異なる測定条件で測定した結果であり、たとえば、測定温度、測定手法、測定パラメータ、試料形態、および測定試料を準備する際の条件の少なくともいずれかが互いに異なる。測定試料を準備する際の条件としては、たとえば硬化温度、固化温度が挙げられる。試料形態の例としては、試料形状および試料寸法が挙げられる。
【0023】
一例として複数の物性値が弾性率である場合、複数の物性値は、引張弾性率および曲げ弾性率の少なくとも一方を含む。複数の物性値が引張弾性率と曲げ弾性率とを含む場合、引張弾性率と曲げ弾性率とは、測定手法が互いに異なる例に相当する。また、複数の物性値が弾性率である場合、複数の物性値は、互いに異なる変形速度で測定された値を含むことができる。
【0024】
このように、同種の物性を互いに異なる測定条件で測定した結果である複数の物性値は、いずれも同一の組成物の特性として互いに相関があると言える。このような複数の物性値を出力とする事により、一つの物性値のみを出力とするよりも、高精度な予測が可能なモデルを生成する事ができる。組成物の特性をより多面的に捉えた情報によって機械学習が行われるためと考えられる。
【0025】
モデル40はニューラルネットワーク410を含む。ニューラルネットワーク410はたとえば以下のような構成を有する。ニューラルネットワーク410は入力層、複数の中間層、および出力層を有する。平均二乗誤差を評価関数とし、ユニット数、エポック数、活性化関数および最適化手法の種類などのハイパーパラメータは、ベイズ最適化を用いたチューニングを通して決定することができる。ただし、ニューラルネットワーク410の構成は本例に限定されない。
【0026】
図1に戻り、モデル生成装置10の各構成要素の機能について以下に詳しく説明する。訓練データ取得部120は訓練データを、たとえば訓練データ取得部120からアクセス可能な訓練データ記憶部22から取得する。訓練データ記憶部22には予め複数の訓練データが保持されている。本図では、訓練データ記憶部22はモデル生成装置10の外部に設けられている例を示しているが、訓練データ記憶部22はモデル生成装置10の内部に設けられていても良い。また、訓練データ取得部120は訓練データを訓練データ記憶部22から取得する代わりに、他の装置等から取得しても良いし、ユーザがモデル生成装置10に対して行う入力を受け付けることにより訓練データを取得しても良い。訓練データ取得部120は取得したデータをモデル40の入力として適した形式とするよう、取得したデータに対して前処理を行ってもよい。
【0027】
訓練データ取得部120は複数の訓練データを取得する。各訓練データは上述した組成情報と、複数の物性値とが関連付けられたデータである。各訓練データにおいて、組成情報に関連付けられた複数の物性値のそれぞれは、その組成情報で表される樹脂組成物、その組成情報で表される樹脂組成物の硬化物、その組成情報で表される樹脂組成物の半硬化物、およびその組成情報で表される樹脂組成物の固化物の少なくともいずれかを測定した結果である。
【0028】
モデル生成部140は、訓練データ取得部120で取得された複数の訓練データを用いた機械学習を行うことにより、訓練済みのモデル40を生成する。モデル生成部140は、生成された訓練済みのモデル40を、モデル記憶部20に保持させる。本図では、モデル記憶部20はモデル生成装置10の外部に設けられている例を示しているが、モデル記憶部20はモデル生成装置10の内部に設けられていても良い。また、モデル生成部140はモデル40をモデル記憶部20に保持させる代わりに、他の装置等に対して出力してもよい。なお、モデル記憶部20と訓練データ記憶部22は同一の記憶装置により実現されていても良い。
【0029】
モデル生成装置10のハードウエア構成について以下に説明する。モデル生成装置10の各機能構成部は、各機能構成部を実現するハードウエア(例:ハードワイヤードされた電子回路など)で実現されてもよいし、ハードウエアとソフトウエアとの組み合わせ(例:電子回路とそれを制御するプログラムの組み合わせなど)で実現されてもよい。以下、モデル生成装置10の各機能構成部がハードウエアとソフトウエアとの組み合わせで実現される場合について、さらに説明する。
【0030】
図3は、モデル生成装置10を実現するための計算機1000を例示する図である。計算機1000は任意の計算機である。例えば計算機1000は、SoC(System On Chip)、Personal Computer(PC)、サーバマシン、タブレット端末、又はスマートフォンなどである。計算機1000は、モデル生成装置10を実現するために設計された専用の計算機であってもよいし、汎用の計算機であってもよい。
【0031】
計算機1000は、バス1020、プロセッサ1040、メモリ1060、ストレージデバイス1080、入出力インタフェース1100、及びネットワークインタフェース1120を有する。バス1020は、プロセッサ1040、メモリ1060、ストレージデバイス1080、入出力インタフェース1100、及びネットワークインタフェース1120が、相互にデータを送受信するためのデータ伝送路である。ただし、プロセッサ1040などを互いに接続する方法は、バス接続に限定されない。プロセッサ1040は、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、又は FPGA(Field-Programmable Gate Array)などの種々のプロセッサである。メモリ1060は、RAM(Random Access Memory)などを用いて実現される主記憶装置である。ストレージデバイス1080は、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)、メモリカード、又は ROM(Read Only Memory)などを用いて実現される補助記憶装置である。
【0032】
入出力インタフェース1100は、計算機1000と入出力デバイスとを接続するためのインタフェースである。例えば入出力インタフェース1100には、キーボードなどの入力装置や、ディスプレイ装置などの出力装置が接続される。
【0033】
ネットワークインタフェース1120は、計算機1000をネットワークに接続するためのインタフェースである。この通信網は、例えば LAN(Local Area Network)や WAN(Wide Area Network)である。ネットワークインタフェース1120がネットワークに接続する方法は、無線接続であってもよいし、有線接続であってもよい。
【0034】
ストレージデバイス1080は、モデル生成装置10の各機能構成部を実現するプログラムモジュールを記憶している。プロセッサ1040は、これら各プログラムモジュールをメモリ1060に読み出して実行することで、各プログラムモジュールに対応する機能を実現する。
【0035】
また、モデル記憶部20および訓練データ記憶部22がモデル生成装置10の内部に設けられる場合、例えばモデル記憶部20および訓練データ記憶部22は、ストレージデバイス1080を用いて実現される。
【0036】
図4は、本実施形態に係るモデル生成装置10が行うモデル生成方法を例示するフローチャートである。本実施形態に係るモデル生成方法は、コンピュータによって実行される。本実施形態に係るモデル生成方法は訓練データ取得ステップS120およびモデル生成ステップS140を含む。訓練データ取得ステップS120では、樹脂組成物の組成を示す組成情報と、複数の物性値とが関連付けられた訓練データが取得される。次いで、モデル生成ステップS140では、訓練データを用いた機械学習を行うことにより、組成情報を入力とし複数の物性値を出力とするモデル40が生成される。複数の物性値は、同種の物性を互いに異なる測定条件で測定した結果である。
【0037】
次に、本実施形態の作用および効果について説明する。本実施形態によれば、互いに相関がある複数の物性値を出力とすることにより、一つの物性値のみを出力とするよりも、高精度な予測が可能なモデルを生成することができる。
【0038】
(第2の実施形態)
図5は、第2の実施形態に係る情報処理装置30の構成を例示するブロック図である。本実施形態に係る情報処理装置30は、入力データ取得部320、および出力データ生成部340を備える。入力データ取得部320は、樹脂組成物の組成を示す組成情報を取得する。出力データ生成部340は、モデル記憶部20が記憶しているモデル40を取得し、モデル40に組成情報を入力することにより、複数の物性値を生成する。そして、複数の物性値は、同種の物性を互いに異なる条件で測定した結果である。以下に詳しく説明する。
【0039】
本実施形態において、組成情報、複数の物性値、およびモデル40は、それぞれ第1の実施形態で説明した組成情報、複数の物性値、およびモデル40と同様である。本実施形態において、モデル40としては、第1の実施形態に係るモデル生成装置10で生成された訓練済みのモデル40を用いる事ができる。
【0040】
入力データ取得部320は、組成情報を、たとえば情報処理装置30のユーザが情報処理装置30に対して行う入力を受け付けることにより取得する。または、入力データ取得部320は、入力データ取得部320からアクセス可能な記憶部に保持された組成情報を読み出すことにより、取得しても良い。また、入力データ取得部320は取得したデータをモデル40の入力として適した形式とするよう、取得したデータに対して前処理を行ってもよい。
【0041】
出力データ生成部340は、モデル40をモデル記憶部20から読み出すことにより取得する。そして、出力データ生成部340は、入力データ取得部320で取得された組成情報をモデル40に入力することにより、モデル40の出力データを生成する。モデル40の出力データは複数の物性値である。出力データ生成部340は生成した出力データをたとえば表示装置に表示させることでユーザに提示する。または、出力データ生成部340は生成した出力データを出力データ生成部340からアクセス可能な記憶部に保持させても良い。
【0042】
本実施形態においてモデル40は、互いに相関がある複数の物性値を出力とすることにより、一つの物性値のみを出力とするよりも、高精度な予測が可能である。本実施形態に係る情報処理装置30では、このようなモデル40を用いて、所望の組成物の物性を高精度に予測することが可能である。
【0043】
本実施形態に係る情報処理装置30は、
図3に示したのと同様の計算機1000を用いて実現可能である。 ストレージデバイス1080は、情報処理装置30の各機能構成部を実現するプログラムモジュールを記憶している。プロセッサ1040は、これら各プログラムモジュールをメモリ1060に読み出して実行することで、各プログラムモジュールに対応する機能を実現する。
【0044】
図6は、本実施形態に係る情報処理装置30が行う情報処理方法を例示するフローチャートである。本実施形態に係る情報処理方法は、コンピュータによって実行される。本実施形態に係る情報処理方法は、入力データ取得ステップS320および出力データ生成ステップS340を含む。入力データ取得ステップS320では、樹脂組成物の組成を示す組成情報が取得される。出力データ生成ステップS340では、モデル記憶部に記憶されているモデル40が取得され、モデル40に組成情報が入力されることにより、複数の物性値が生成される。そして、複数の物性値は、同種の物性を互いに異なる条件で測定した結果である。
【0045】
次に、本実施形態の作用および効果について説明する。本実施形態よれば、互いに相関がある複数の物性値を出力とするモデルを用いて、組成物の物性を高精度に予測することが可能である。
【実施例0046】
以下、本実施形態を、実施例を参照して詳細に説明する。なお、本実施形態は、これらの実施例の記載に何ら限定されるものではない。
【0047】
(実施例1)
第1の実施形態で説明したのと同様のモデル生成装置を用いて訓練済みモデルを生成した。組成情報における組成要素は以下の表1に示す13種とした。また、モデルの出力は、弾性率A、弾性率B、および弾性率Cの3つとした。各弾性率については以下の表2に示す。機械学習に用いた訓練データの数は20個であった。
【0048】
【0049】
(実施例2)
モデルの出力を、弾性率Aおよび弾性率Cの2つとし、機械学習に用いた訓練データの数を38個とした以外は実施例1と同様にして訓練済みモデルを生成した。
【0050】
(比較例)
モデルの出力を弾性率Aのみとし、機械学習に用いた訓練データの数を38個とした以外は実施例1と同様にして訓練済みモデルを生成した。
【0051】
図7は、各実施例および比較例で生成されたモデルを、訓練データを用いて評価した結果を示すグラフである。生成された各モデルに対して、各訓練データの組成情報を入力した結果を本図にまとめて示す。本図において、縦軸は各組成情報に対するモデルの出力として得られた各物性値の予測値を示す。本図において、横軸は訓練データにおいて各組成情報に関連付けられた各物性値を示す。実施例1については、弾性率A、弾性率Bおよび弾性率Cがまとめてプロットされている。実施例2については、弾性率Aおよび弾性率Cがまとめてプロットされている。なお、各弾性率は規格化されている。
【0052】
図8は、各実施例および比較例で生成されたモデルに対して、テストデータを用いて評価した結果を示すグラフである。訓練データとしては用いられなかった組成情報を各モデルに入力した結果を本図にまとめて示す。本図において、縦軸は各組成情報に対するモデルの出力として得られた各物性値の予測値を示す。本図において、横軸は各組成情報で示される組成物について実際に測定された各物性値を示す。実施例1については、弾性率A、弾性率Bおよび弾性率Cがまとめてプロットされている。実施例2については、弾性率Aおよび弾性率Cがまとめてプロットされている。なお、各弾性率は規格化されている。
【0053】
図7および
図8に示す結果から、複数の物性値を出力とする実施例1および2のモデルは、一つの物性値のみを出力とする比較例のモデルよりも予測精度が高いことが確認された。特に、実施例1のモデルは、訓練データの数が実施例2や比較例よりも少なかったにも関わらず、高い予測精度を示した。
【0054】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。たとえば、上述の説明で用いたシーケンス図やフローチャートでは、複数の工程(処理)が順番に記載されているが、各実施形態で実行される工程の実行順序は、その記載の順番に制限されない。各実施形態では、図示される工程の順番を内容的に支障のない範囲で変更することができる。また、上述の各実施形態は、内容が相反しない範囲で組み合わせることができる。
【0055】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。