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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022181498
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 12/79 20110101AFI20221201BHJP
   H01R 12/88 20110101ALI20221201BHJP
【FI】
H01R12/79
H01R12/88
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021088487
(22)【出願日】2021-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000231822
【氏名又は名称】日本端子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】特許業務法人 大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 武
【テーマコード(参考)】
5E223
【Fターム(参考)】
5E223AB21
5E223AB35
5E223AB38
5E223AC38
5E223BA04
5E223BA07
5E223BA08
5E223BB01
5E223BB12
5E223CA15
5E223CB39
5E223CB84
5E223CD01
5E223CD02
5E223DA05
5E223DB09
5E223DB11
5E223DB23
5E223DB25
5E223DB36
5E223EA02
5E223EA13
5E223EC12
5E223EC22
5E223EC32
5E223EC34
5E223EC42
5E223EC47
5E223EC63
(57)【要約】
【課題】回路基板が適切に挿入されているかどうかが視認し易いコネクタを提供する。
【解決手段】回路基板2の端部に接続するコネクタ1であって、回路基板の端部を支持する支持面34を備えたハウジング4と、上側片48、及び、支持面の下側から突出し、接点56を備えた下側片50を含み、ハウジングに支持された端子部材5と、回転軸Xの周りに回動可能に支持され、挿入方向に対して後傾した後傾位置、挿入方向に対して直立する起立位置、及び、挿入方向に対して前傾し、回路基板を支持面に係止する前傾位置に変位可能なアクチュエータ6、を有し、アクチュエータは、回路基板が挿入されたときに、後傾位置から起立位置に変位し、アクチュエータが起立位置にあるときに、アクチュエータとハウジングとの間に、左右方向に延在する間隙Pが形成され、間隙を介して、挿入された回路基板の挿入方向前端が視認可能となる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板状の回路基板の端部が挿入されることにより、前記回路基板に電気的に接続するコネクタであって、
前記回路基板の前記端部を支持する支持面を備えたハウジングと、
前記支持面の上方に位置する上側片、及び、前記支持面から上方に突出し、突端に前記回路基板に当接する接点を備えた下側片を含み、前記ハウジングに支持された端子部材と、
前記回路基板の挿入方向に直交する回転軸の周りに回動可能に前記上側片に支持され、前記挿入方向に対して後傾した後傾位置、前記後傾位置よりも起立する起立位置、及び、前記挿入方向に対して前傾し、前記回路基板を前記支持面との間に挟持する前傾位置に変位可能なアクチュエータと、を有し、
前記アクチュエータは、前記回路基板が挿入されたときに、前記後傾位置から前記起立位置に変位し、
前記アクチュエータが前記起立位置にあるときに、前記アクチュエータと前記ハウジングとの間に、左右方向に延在する間隙が形成され、
前記間隙を介して、挿入された前記回路基板の挿入方向前端が視認可能となるコネクタ。
【請求項2】
前記回転軸は前記支持面の上方に位置し、
前記後傾位置において、前記アクチュエータは前記回路基板の挿入経路内に侵入し、
前記アクチュエータには、前記回路基板が挿入されたときに、前記アクチュエータの前記挿入経路内の部分が前記回路基板に当接し、前記アクチュエータを前記後傾位置から前記起立位置に回転させるカム機構が構成されている請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記ハウジングは、略水平方向に延在し、上面に前記支持面を備えた底壁と、前記底壁の挿入方向遠位側に設けられた直立壁とを有し、
前記底壁には前記支持面において開口する下側端子孔が設けられ、
前記直立壁には前記支持面の上方において開口する上側端子孔が設けられ、
前記下側片は前記下側端子孔を、前記上側片は前記上側端子孔をそれぞれ通過している請求項1又は請求項2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記端子部材は、前記直立壁に支持された基部を含み、前記上側片、及び、前記下側片はそれぞれ片持ち梁状をなし、
前記下側片は、前記上側片に比べて、前記支持面から離反する方向に変形容易であり、
前記前傾位置にあるときに、前記回路基板が前記上側片によって下方に付勢されて前記支持面に当接している請求項3に記載のコネクタ。
【請求項5】
前記支持面の挿入方向遠位端側は、遠位側に向かって上方に傾斜している請求項1~請求項4のいずれか1項に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラットケーブル等の回路基板に接続するコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
フラットケーブル等のシート状導電路を接続するシート状導電路用コネクタが公知である(例えば、特許文献1)。特許文献1に記載のコネクタは、端子金具を備えたコネクタハウジングと、ハウジングに設けられた保持部材とを備えている。保持部材は、シート状導電路を挿入可能にする挿入位置と、挿入されたシート状導電路を端子金具に押さえ付けて接触状態に保持する保持位置との間で変位可能にハウジングに結合されている。
【0003】
特許文献1に記載されているようなフラットケーブルに接続するコネクタにおいては、電子機器の小型化及び高密度化に伴い、外形寸法の縮小化が要求されている。しかしながら、コネクタが小型化すると、接続対象物の挿入動作に手間がかかり、また、接続対象物が完全に挿入されたか否かを確認する確認作業が必要となる。
【0004】
そこで、接続対象物の挿入確認及び接触状態の保持を容易に行うことのできるコネクタが開発されている(例えば、特許文献2)。特許文献2のコネクタは、第1実施形態と同様に、ハウジングと、接続対象物を保持するアクチュエータとを備えている。
【0005】
ハウジングは、接続対象物の接続端部を挿入するための、上方が開放された挿入部を有している。アクチュエータは、ハウジングの挿入部の上方を開放する開位置と挿入部の上方を覆う閉位置との間で回転可能に、ハウジングに取り付けられている。
【0006】
ハウジングには、開位置にあるときに、接続対象物の挿入を確認するため、挿入部に連通する確認溝が設けられている。確認溝は、挿入部の奥部左右両端に整合する位置に設けられ、アクチュエータにもまた開位置にあるときに確認溝に整合する部分に切欠が設けられている。これにより、アクチュエータが開位置にあるときに、作業者は、切欠及び確認溝を介して、挿入部に挿入された接続対象物の挿入方向両端を目視することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10-214656号公報
【特許文献2】特許第5905776号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献2に記載されているコネクタでは、作業者は接続対象物が適切に挿入されているかを切欠及び確認溝を介して目視する必要がある。特に、小型化されたコネクタでは、確認溝が小さくなるため、接続対象物を視認することが容易ではない。
【0009】
本発明は、以上の背景に鑑み、平型の回路基板が適切に挿入されているかどうかが視認し易いコネクタを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために本発明のある態様は、平板状の回路基板(2)の端部が挿入されることにより、前記回路基板に電気的に接続するコネクタ(1)であって、前記回路基板の前記端部を支持する支持面(34)を備えたハウジング(4)と、前記支持面の上方に位置する上側片(48)、及び、前記支持面から上方に突出し、突端に前記回路基板に当接する接点(56)を備えた下側片(50)を含み、前記ハウジングに支持された端子部材(5)と、前記回路基板の挿入方向に直交する回転軸(X)の周りに回動可能に前記上側片に支持され、前記挿入方向に対して後傾した後傾位置、前記後傾位置よりも起立する起立位置、及び、前記挿入方向に対して前傾し、前記回路基板を前記支持面との間に挟持する前傾位置に変位可能なアクチュエータ(6)を有し、前記アクチュエータは、前記回路基板が挿入されたときに、前記後傾位置から前記起立位置に変位し、前記アクチュエータが前記起立位置にあるときに、前記アクチュエータと前記ハウジングとの間に、左右方向に延在する間隙(P)が形成され、前記間隙を介して、挿入された前記回路基板の挿入方向前端が視認可能となる。
【0011】
この態様によれば、回路基板が挿入されると、アクチュエータが起立する起立位置となる。このとき、アクチュエータとハウジングとの間に左右方向に延在する隙間が形成されて、作業者は回路基板の挿入方向前端を視認することができる。これにより、作業者は回路基板が偏って挿入されていることや、斜めに挿入されていることを認識することができるため、作業者は平型の回路基板が適切に挿入されているかどうかを容易に確認することができる。
【0012】
上記の態様において、前記回転軸は前記支持面の上方に位置し、前記後傾位置において、前記アクチュエータは前記回路基板の挿入経路(Y)内に侵入し、前記アクチュエータには、前記回路基板が挿入されたときに、前記アクチュエータの前記挿入経路内の部分が前記回路基板に当接し、前記アクチュエータを前記後傾位置から前記起立位置に回転させるカム機構(90)が構成されているとよい。
【0013】
この態様によれば、回路基板が挿入されたときに、回路基板の挿入方向の運動がカム機構によってアクチュエータの回転に変換される。よって、回路基板の挿入により、アクチュエータを自動的に起立させることができる。
【0014】
上記の態様において、前記回路基板が挿入されたときに、前記回路基板の前記端部と協働して、前記アクチュエータを前記後傾位置から前記起立位置に変位させるカム部を備えるとよい。
【0015】
この態様によれば、回路基板が挿入されたときに、アクチュエータを回転させて後傾位置から起立位置に変位させることができる。
【0016】
上記の態様において、前記ハウジングは、略水平方向に延在し、上面に前記支持面を備えた底壁と、前記底壁の挿入方向遠位側に設けられた直立壁とを有し、前記底壁には前記支持面において開口する下側端子孔(30)が設けられ、前記直立壁には前記支持面の上方において開口する上側端子孔(28)が設けられ、前記下側片は前記下側端子孔を、前記上側片は前記上側端子孔をそれぞれ通過しているとよい。
【0017】
この態様によれば、アクチュエータを回路基板の上側に設けることができ、また、接点を回路基板の下側に設けることができる。これにより、アクチュエータによって回路基板を下方に押し出し、接点を回路基板に接触させることができる。
【0018】
上記の態様において、前記端子部材は、前記直立壁に支持された基部(26)を含み、前記上側片、及び、前記下側片はそれぞれ片持ち梁状をなし、前記下側片は、前記上側片に比べて、前記支持面から離反する方向に変形容易であり、前記前傾位置にあるときに、前記回路基板が前記上側片によって下方に付勢されて、隣接する前記支持面に当接しているとよい。
【0019】
この態様によれば、下側片の回路基板への接触圧が回路基板の厚さに依り難くなる。
【0020】
上記の態様において、前記支持面は挿入方向遠位端に向かって上方に傾斜しているとよい。
【0021】
この態様によれば、回路基板が挿入方向遠位端において屈曲するため、回路基板がコネクタから抜け難くなる。
【発明の効果】
【0022】
以上の態様によれば、平型の回路基板が適切に挿入されているかどうかが視認し易いコネクタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明に係るコネクタ及び回路基板の斜視図
図2】本発明に係るコネクタの分解斜視図
図3】(A)図1におけるIII(A)-III(A)線斜視片側断面図、及び、(B)図1のIII(A)-III(A)断面図
図4】アクチュエータが(A)後傾位置、(B)起立位置、及び(C)前傾位置にあるときの図1のIV-IV断面図
図5】アクチュエータが(A)後傾位置、(B)起立位置、及び(C)前傾位置にあるときの図1のV-V断面図
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明によるコネクタの実施形態を、図面を参照して説明する。
【0025】
本実施形態に係るコネクタ1は、FPC(フレキシブルプリント回路基板)や、FFC(フレキシブルフラットケーブル)等の平板状の回路基板2の端部2Aが挿入され、その端部2Aに電気的に接続するコネクタである。コネクタ1は、図1に示すように、PCB3(プリント回路基板)に固定され、回路基板2が適切な位置(以下、正規位置)にまで差し込まれると、回路基板2の端子とPCB3に設けられた端子とを電気的に接続する。
【0026】
コネクタ1に接続される回路基板2の厚みは予め設定されている。但し、回路基板2の厚みには製造工程によって生じる誤差があり、その厚みにはばらつきがある。回路基板2の厚みの誤差は規定の製造公差内に収まるように設定されている。
【0027】
以下の説明では、簡略化のため、回路基板2の差込方向を後方向とするとともに、図1の矢印に示すように、上下、左右を定義して説明を行う。但し、この方向の定義は説明の便宜上のことであり、これに限定されることはない。
【0028】
コネクタ1は、図2に示すように、ハウジング4と、複数の端子部材5と、アクチュエータ6とを備える。
【0029】
ハウジング4は、電気絶縁性を備えた材料によって構成された樹脂成形品であり、左右方向に長い扁平な略直方体状をなしている。
【0030】
ハウジング4は、左右方向に延びる略直方体状の底壁8と、底壁8の後側に結合された略直方体状の直立壁9と、直立壁9に設けられた左右一対の側部10を有している。
【0031】
底壁8の上面には、回路基板2を受容するための受容部12が設けられている。受容部12は底壁8の上面に設けられた下方に凹む凹部であり、その上部及び前部が開放されている。受容部12は底壁8上面の略中央部を構成する略水平な底面と、底面の左右両縁から上方に延びる左右側面と、底面後縁から上方に延びる後面とを有し、収容空間14(図3(A)及び(B)を参照)を画定している。回路基板2が正規位置まで差し込まれるときには、回路基板2の端部2Aが収容空間14に収容される。
【0032】
図2に示すように、直立壁9は底壁8の後面に接続され、底壁8の上面よりも上方に突出している。直立壁9の左右方向の幅は底壁8よりも大きく、直立壁9の左右両端はそれぞれ底壁8の左右両端よりも左右外方に位置している。
【0033】
側部10はそれぞれ直立壁9の前面左右両端から前方に延びている。側部10は底壁8の左右両縁よりも外側に位置している。直立壁9には、側部10と底壁8の隙間の後方において、後方に凹む差込凹部16が設けられている。
【0034】
側部10の左右方向内側の面には庇部18及び突条20が設けられている。庇部18は左右側面の上縁に沿って延びている。突条20は庇部18の前後方向略中央から下方に延びている。庇部18及び突条20はそれぞれ底壁8の上方に位置している。
【0035】
本実施形態では、側部10の後縁にはそれぞれ水平な面を有して左右内方に延びる平板状の平板部22が設けられている。平板部22は側部10と前部上縁とを接続している。
【0036】
ハウジング4には複数の端子孔24が設けられている。端子孔24はそれぞれ略平行をなし、ハウジング4の後面から前方に凹んでいる。端子孔24は、図3(A)及び(B)に示すように、ハウジング4の後面において前方に凹む端子孔基部26と、端子孔基部26にそれぞれ接続された上側端子孔28及び下側端子孔30とを有している。
【0037】
上側端子孔28は端子孔基部26の上半部から前方に延びて、直立壁9の前面に達し、その前面において開口している。
【0038】
下側端子孔30は端子孔基部26の下半部から前方に延びている。上側端子孔28と下側端子孔30の後部とはそれぞれ前後に延びる隔離壁によって上下に隔離されている。
【0039】
下側端子孔30は底壁8の前面にまで延びている。下側端子孔30の前部は上方に開放されて、受容部12とは上下に連通している。下側端子孔30の前面は開放されている。
【0040】
底壁8には段部32が形成されている。段部32は下側端子孔30の底面及び側面と、受容部12の底面のうち下側端子孔30が設けられていない部分を構成する面とによって画定されている。受容部12の底面のうち下側端子孔30が設けられていない部分を構成する面は、収容空間14に収容された回路基板2を下方から支持する支持面34を構成し、下側端子孔30は支持面34において開口している。
【0041】
すなわち、底壁8は左右方向(すなわち、略水平方向)に延在し、上面に支持面34を備えた壁体であって、直立壁9は底壁8の挿入方向遠位側に設けられた壁体に対応する。図2に示すように、支持面34の後端部(回路基板2に対して挿入方向遠位側の部分)には、後側(遠位側)に向かって上方に傾斜する傾斜面36が設けられている。
【0042】
ハウジング4の左右両端にはそれぞれ、図2に示すように、金属製の板材を折り曲げ加工することによって形成された補強金具38(ホールドダウン)が取り付けられている。
【0043】
補強金具38は、底壁8の左右端部に配置され、差込凹部16に差し込まれた本体部39と、本体部39の上縁から左右内側に延びる水平部40とを備えている。水平部40は底壁8の上面上方であり、且つ、庇部18の下方に位置している。また、水平部40は突条20の後方、且つ、平板部22の前方に位置している。
【0044】
端子部材5は、折曲加工された導電性の金属板材である。端子部材5は、図2に示すように、端子孔基部26に圧入される端子部材基部42(基部)と、端子部材基部42の前側に接続された端子部材前部44と、端子部材基部42の後側に接続された端子部材後部46とを有している。図3(B)に示すように、端子部材基部42が端子孔基部26に挿入されている。
【0045】
端子部材前部44は端子部材基部42の前側上半部から前方に延びる上側分岐片48(上側片、上梁部ともいう)と、端子部材基部42の前側下半部から前方に延びる下側分岐片50(下側片、下梁部ともいう)とを有している。これにより、端子部材5は左右方向視でU字形状(音叉状)をなしている。
【0046】
上側分岐片48は後端において端子部材基部42の前側上半部に結合して、端子部材基部42に支持された片持ち梁状をなしている。上側分岐片48は支持面34の上方に位置する部分を含む。すなわち、上側分岐片48は支持面34の上方に位置している。上側分岐片48は端子孔基部26から前方に延び、上側端子孔28を通過して支持面34の上方まで延出している。上側分岐片48の前端には上方に向かって凹む受容凹部49(ノッチ)が設けられている。
【0047】
下側分岐片50は後端において端子部材基部42の前側下半部に結合して、端子部材基部42に支持された片持ち梁状をなしている。下側分岐片50は端子孔基部26から前方に延び、下側端子孔30を通過して受容部12の下方にまで延びている。下側分岐片50は前部において支持面34の下側から支持面34の上方に突出し、その突端において回路基板2の下面に接触する接点56を構成している。下側分岐片50の基端部分には、係止爪50Aが設けられ、係止爪50Aが下側端子孔30を画定する壁に係止されることによって、端子部材5がハウジング4に係止されている。
【0048】
本実施形態では、下側分岐片50は延出方向側(すなわち前部)において、第1下側分岐片52及び第2下側分岐片54の二つに分岐している。第1下側分岐片52は及び第2下側分岐片54はそれぞれ前端に上方に突出する突部55を備えている。突部55はそれぞれその上端において回路基板2の下面に接触する接点56を構成している。以下、第1下側分岐片52の前端の突部55を第1突部55A、第1下側分岐片52の接点56を第1接点56Aと記載する。以下、第2下側分岐片54の前端の突部55を第2突部55B、第2下側分岐片54の接点56を第2接点56Bと記載する。
【0049】
第2下側分岐片54は第1下側分岐片52の下側に位置し、第1下側分岐片52よりも前方に突出している。第2突部55Bは第1突部55Aの前方に位置し、第2接点56B及び第1接点56Aは前後に並ぶように配置されている。
【0050】
第1下側分岐片52及び第2下側分岐片54はそれぞれ左右方向の幅が上側分岐片48と等しく、且つ、上下方向の幅が上側分岐片48よりも小さい。そのため、第1下側分岐片52及び第2下側分岐片54は上側分岐片48よりも支持面34から離反する方向に変形容易であり、上下方向の荷重によって撓み易くなっている。
【0051】
端子部材後部46は端子部材基部42の後側下端から後方に延びている。コネクタ1は、端子部材後部46がPCB3の上面に設けられた端子に接触するよう配置され、それぞれ半田付けされることによって、PCB3に組付けられる。このとき、端子部材5は電気的にPCB3の上面に設けられた端子に電気的に接続している。
【0052】
アクチュエータ6は電気絶縁性を備えた材料によって構成された樹脂成形品である。アクチュエータ6は、図2に示すように、左右方向に延びる平板状のアクチュエータ本体部60と、アクチュエータ本体部60の左右端面に設けられた突出部62と、アクチュエータ本体部60の左右側面に設けられた係止部64とを備えている。
【0053】
アクチュエータ本体部60は左右方向に延びる平板状をなしている。アクチュエータ本体部60の主面の一方側(図1における上側)には、押圧部66が設けられている。押圧部66は、主面の一端側の縁部(図1における下端部)に沿って延在し、アクチュエータ本体部60から突出する筋状をなしている。
【0054】
アクチュエータ本体部60には、その一端側の縁部に沿って、複数のスリット80が設けられている。スリット80はそれぞれアクチュエータ本体部60の一端側縁部が方形に切り欠かれることによって形成されている。スリット80はそれぞれ側面視(左右方向視)で突出部62に重なり、且つ、端子孔24に整合する位置に設けられている。
【0055】
図3(A)及び(B)に示すように、スリット80の内部にはそれぞれ左右方向に延在する棒状の軸部82が設けられている。スリット80に設けられる軸部82はそれぞれ同形をなし、左右方向に延びる軸線Xに沿って配置されている。軸部82はそれぞれ、対応する端子部材5の上側分岐片48に形成された受容凹部49に収容されている。これにより、アクチュエータ6は、上側分岐片48に挿入方向(後方向)に直交する軸線X(回転軸)の周りに回転可能に支持されている。
【0056】
上側分岐片48が支持面34の上方に設けられているため、アクチュエータ6は回路基板2の上側に配置されている。また、下側分岐片50を支持面34の下側から上向きに突出するように構成されている。これにより、アクチュエータ6によって回路基板2が下方に押し出しされると、例えば、図5(C)に示すように、接点56が回路基板2の下面に接触する。
【0057】
図2に示すように、突出部62はアクチュエータ本体部60の左右端面にそれぞれ設けられている。突出部62はそれぞれ、アクチュエータ本体部60の端面から左右方向外方に突出している。突出部62は左右端面の一端側(図1の下側)に位置している。図3(A)に示すように、突出部62は軸線Xに沿って突出し、左右方向視で軸部82に整合するように配置されている。
【0058】
突出部62は側面視で、庇部18、本体部39、突条20、及び、直立壁9の前面との間の空間に配置されている。突出部62は、庇部18、本体部39、突条20、及び、直立壁9の前面によって上下、前後の移動が規制されている。これにより、アクチュエータ6はハウジング4から離脱不能となっている。
【0059】
図4(A)~(C)に示すように、突出部62は略六角柱状をなしている。突出部62の側面の一つ(以下、突出部基端面62A)はアクチュエータ本体部60の一端側端面(図1の下端面)に平行をなしている。本実施形態では、突出部基端面62Aはアクチュエータ本体部60の一端側端面に連続している。
【0060】
突出部基端面62Aには突出部保持面62Bが接続されている。突出部基端面62Aと突出部保持面62Bとはそれぞれ突出部62の外周面を構成する。突出部保持面62Bと突出部基端面62Aとのなす角は180度未満であり、且つ、90度よりも大きく、本実施形態では、135度に設定されている。
【0061】
図2に示すように、係止部64はアクチュエータ本体部60の左右端面にそれぞれ設けられている。係止部64はそれぞれ、突出部62の上方に位置している。
【0062】
次に、作業者が回路基板2を挿入するときのアクチュエータ6の位置、及び、動作について図面を参照して説明する。
【0063】
図4(A)及び図5(A)に示すように、作業者は回路基板2をコネクタ1に挿入する前に、アクチュエータ6を回転させ、アクチュエータ6は前後方向(挿入方向)に対して後傾する(すなわち、挿入方向遠位側、すなわち、後側に倒れる)ように配置する。このときのアクチュエータ6の位置を後傾位置と記載する。
【0064】
図4(A)に示すように、アクチュエータ6が後傾位置にあるときには、突出部62の突出部保持面62Bが本体部39の上面39Aに接触している。これにより、アクチュエータ6は補強金具38に下側から支持されている。更に、アクチュエータ本体部60は、その後面中央部において直立壁9に当接し、アクチュエータ本体部60は後方に向かって上方に傾斜した状態で、ハウジング4に支持されている。このとき、図5(A)に示すように、アクチュエータ本体部60の下端後側の角部分が収容空間14内に、すなわち挿入経路Y内に位置している。
【0065】
作業者が受容部12の前側から回路基板2を後方に向けて挿入すると、回路基板2の端部2Aがアクチュエータ本体部60の下端後側の角部分に当接し、アクチュエータ本体部60の下端後側の角部分が後方に押し出される。これにより、図5(B)の矢印に示すように、アクチュエータ6は回転し、後傾位置よりも起立した起立位置となる。すなわち、アクチュエータ6には、回路基板2の挿入方向側の端部2Aと協働して、回路基板2の挿入方向の並進運動をアクチュエータ6の回転運動に変換するカム機構90が構成されている。このとき、図4(B)に示すように、突出部基端面62Aが本体部39の上面39Aに当接している。
【0066】
アクチュエータ6が起立位置にあるとき、アクチュエータ6と接点56との間に、隙間Sが形成されている。この隙間Sの上下方向の幅は回路基板2の厚み(上下方向の幅)よりも若干狭くなるように設定されているとよい。これにより、アクチュエータ6の起立位置から前傾位置への変位が完了するまでの間に、挿入された回路基板2が摩擦力によってズレたり抜けたりすることが防止できる。
【0067】
アクチュエータ6が起立位置にあるとき、アクチュエータ本体部60と、直立壁9との間には前後方向に間隙Pが形成されて、上下方向に通じる経路Z(図5(B)参照)が構成される。そのため、作業者は経路Zを通じて、上方から収容空間14の内部を視認することができる。間隙Pは左右方向に延在している。そのため、アクチュエータ6が起立位置にあるときに、間隙Pを介して、挿入された回路基板2の挿入方向前端が視認可能となる。これにより、作業者は回路基板2が偏って挿入されることや、斜めに挿入されていることを認識することができ、回路基板2が適切に挿入されているか否かを確認することができる。
【0068】
ここでいう回路基板2の挿入方向前端は、回路基板2の挿入方向前端全体には限定されない。回路基板2の挿入方向前端は挿入方向前端全体のうち、回路基板2が偏って挿入されていることや、斜めに挿入されていることを認識することのできる程度に左右方向の幅を有する部分を意味する。アクチュエータ6が起立位置にあるときに、作業者が回路基板2の挿入方向前端を視認することによって、回路基板2が偏って挿入されていることや、斜めに挿入されていることを認識できれば、挿入方向前端全体のうち一部が、ハウジング4やアクチュエータ6等によって遮られて視認できなくなっていてもよい。
【0069】
但し、間隙Pの左右方向の幅が回路基板2の左右方向の幅と等しいか、又は回路基板2の左右方向の幅よりも広くなるように設定されて、回路基板2の挿入方向前端全体が視認できることがより好ましい。
【0070】
本実施形態では、アクチュエータ6が起立位置にあるとき、アクチュエータ本体部60が上下方向に延び、その面が前後方向を向くようになる。すなわち、アクチュエータ6が上方向に(すなわち、挿入方向に直交する方向)に直立する。これにより、アクチュエータ6が前傾又は後傾しているときに比べて、間隙Pがより大きくなる。更に、収容空間14の内部への視認方向が下方となるため、作業者はその視認方向を容易に理解することができる。
【0071】
回路基板2を正規位置まで挿入した後、作業者は、図5(C)に示すように、アクチュエータ6を起立位置から前側に倒し、係止部64を庇部18の下側に移動するまでアクチュエータ6を回転させる。これにより、アクチュエータ6は前後方向に対して前傾した前傾位置となる。このとき、アクチュエータ6は、係止部64及び庇部18の係合により、その回転が規制され、ロックされた状態となっている。
【0072】
図5(C)から理解できるように、前傾位置にあるときのアクチュエータ6の下方への突出量は、アクチュエータ6には押圧部66が設けられているため、起立位置よりも大きい。そのため、アクチュエータ6が起立位置から前傾位置に回転すると、上側分岐片48は下側分岐片50の付勢力に抗し、押圧部66を介して回路基板2を下方に押し出し、回路基板2を支持面34に当接させる。アクチュエータ6がロック状態となると、上側分岐片48には回路基板2から上方に向く反力が加わり、上側分岐片48はその前端は上方に反るように変形する。これにより、回路基板2には上側分岐片48から反力が加わり、回路基板2が下方に付勢されて支持面34に当接する。これにより、回路基板2は押圧部66の端面と支持面34によって挟持されて、支持面34に係止される。
【0073】
アクチュエータ6が起立位置から前傾位置に回転すると、下側分岐片50の接点56は回路基板2の下面に当接したまま、支持面34と面一となるまで下方に移動する。これにより、下側分岐片50は下方に反るように変形し、下側分岐片50は接点56において所定の接触圧で回路基板2の端子に接触する。
【0074】
次に、このように構成したコネクタ1の効果について説明する。
【0075】
作業者が回路基板2を受容部12に挿入すると、図5(B)に示すように、アクチュエータ6が回転して起立し、起立位置となる。そのため、作業者はアクチュエータ6の起立によって、回路基板2が適切に挿入されているか否かを容易に判定することができる。
【0076】
起立位置にあるときには、アクチュエータ6が直立し、アクチュエータ6が直立壁9から離れた位置にある。そのため、作業者はアクチュエータ6によって阻害されることなく、受容部12の内部を視認することができる。これにより、回路基板2が正規位置まで挿入されたかどうかを確認することができる。
【0077】
回路基板2の厚みの誤差が製造公差内にある場合には、図5(C)に示すようにアクチュエータ6が前傾位置にあるときに、回路基板2は押圧部66の端面と支持面34によって挟持されて、支持面34に係止される。すなわち、回路基板2の厚みが製造公差内の下限値にある(すなわち、設定値よりも薄い)場合であっても、回路基板2の厚みが製造公差内の上限値にある(すなわち、設定値よりも厚い)場合であっても、回路基板2は押圧部66の端面と支持面34によって挟持されて、支持面34に係止される。
【0078】
これにより、回路基板2の厚みに依らず、下側分岐片50の接点56は支持面34と上下方向に揃う位置まで下側に押し込まれることになる。そのため、回路基板2の厚みがばらついて上限値となっても下限値となっても接点56の移動距離は同じになり、下側分岐片50からの回路基板2に加わる反力は一定となる。よって、回路基板2の厚みのばらつきに依らず、安定した接触荷重が得られる。
【0079】
第2突部55Bは第1突部55Aの前方に位置し、第2接点56B及び第1接点56Aは前後に並ぶように配置されている。これにより、いずれか一方の接点56が汚れている場合や回路基板2との間にゴミが挟み込まれている場合でも、他方の接点56が回路基板2に接触するため、接触信頼性が高められる。
【0080】
本実施形態では、支持面34の挿入方向遠位側に傾斜面36が設けられている。よって、アクチュエータ6が前傾位置にあるときに回路基板2が傾斜面36上に達している場合には、回路基板2の挿入方向遠位側の端部2Aが傾斜面36に沿うように屈曲する。これにより、支持面34に傾斜面36が設けられておらず、回路基板2の端部2Aが屈曲しない場合に比べて、回路基板2がコネクタ1から抜け難くなる。
【0081】
また、アクチュエータ6を前傾位置から後方に向けて回転させたときには、回路基板2は下側分岐片50によって上方に押し上げられる。これにより、回路基板2の下側分岐片50の上側に位置する部分と、傾斜面36上に位置する部分とが上下方向に揃う。これにより、回路基板2の挿入方向の端の部分が水平となるため、回路基板2のコネクタ1からの抜き差しが容易になる。
【0082】
また、図1に示すように、受容部12の底部左右両端に上方に突出する突起部92が設けられ、回路基板2にはその突起部92に整合する位置に、切欠94が設けられているとよい。アクチュエータ6を前傾位置にすると突起部92が切欠94に嵌め込まれることにより、回路基板2をコネクタ1により強固に結合させることができる。
【0083】
以上で具体的な実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態や変形例に限定されることなく、幅広く変形実施することができる。
【符号の説明】
【0084】
1 :コネクタ
2 :回路基板
2A :端部
3 :PCB
4 :ハウジング
5 :端子部材
6 :アクチュエータ
8 :底壁
9 :直立壁
10 :側部
12 :受容部
14 :収容空間
16 :差込凹部
18 :庇部
20 :突条
22 :平板部
24 :端子孔
26 :端子孔基部
28 :上側端子孔
30 :下側端子孔
32 :段部
34 :支持面
36 :傾斜面
38 :補強金具
39 :本体部
39A :上面
40 :水平部
42 :端子部材基部
44 :端子部材前部
46 :端子部材後部
48 :上側分岐片(上側片)
49 :受容凹部
50 :下側分岐片(下側片)
52 :第1下側分岐片
54 :第2下側分岐片
55 :突部
55A :第1突部
55B :第2突部
56 :接点
56A :第1接点
56B :第2接点
60 :アクチュエータ本体部
62 :突出部
62A :突出部基端面
62B :突出部保持面
64 :係止部
66 :押圧部
80 :スリット
82 :軸部
90 :カム機構
92 :突起部
94 :切欠
P :間隙
S :隙間
X :軸線(回転軸)
Y :挿入経路
Z :経路
図1
図2
図3
図4
図5