(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022181508
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】プレート、ソール及び靴
(51)【国際特許分類】
A43B 13/12 20060101AFI20221201BHJP
【FI】
A43B13/12 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021088499
(22)【出願日】2021-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000000310
【氏名又は名称】株式会社アシックス
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】立野 謙太
(72)【発明者】
【氏名】平田 憲司
(72)【発明者】
【氏名】西村 裕彰
(72)【発明者】
【氏名】木暮 孝行
【テーマコード(参考)】
4F050
【Fターム(参考)】
4F050BA02
4F050BA56
4F050HA56
4F050HA60
4F050HA71
4F050JA09
(57)【要約】
【課題】着地時から蹴り出し時に至る間におけるアーチ部及び踵の沈み込みを抑制することが可能なプレート、ソール及び靴を提供すること。
【解決手段】プレート300は、靴の一部を構成するソールに用いられる。プレート300は、前記ソールの厚み方向に前記靴の着用者の中足骨の後端部1と重なる位置から前記着用者の踵骨と重なる位置に至るように延びる形状を有し、前記着用者の中足部及び後足部を支持する中後足支持部310を備える。前記中後足支持部310は、足幅方向の断面において、上向きに凸となる形状を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
靴の一部を構成するソールに用いられるプレートであって、
前記ソールの厚み方向に前記靴の着用者の中足骨の後端部と重なる位置から前記着用者の踵骨と重なる位置に至るように延びる形状を有し、前記着用者の中足部及び後足部を支持する中後足支持部を備え、
前記中後足支持部は、足幅方向の断面において、上向きに凸となる形状を有する、プレート。
【請求項2】
前記中後足支持部は、前記厚み方向における最も高い位置に位置する天部を有し、
前記天部は、前記着用者のヒールセンター上に位置している、請求項1に記載のプレート。
【請求項3】
前記中後足支持部は、前記厚み方向における最も高い位置に位置する天部を有し、
前記天部は、前記着用者のヒールセンターよりも足幅方向における内側に位置している、請求項1に記載のプレート。
【請求項4】
前記中後足支持部は、前記厚み方向における最も高い位置に位置する天部を有し、
前記天部は、前記着用者のヒールセンターよりも足幅方向における外側に位置している、請求項1に記載のプレート。
【請求項5】
前記中後足支持部から前方に向かって延びる形状を有し、前記着用者の前足部を支持する前足支持部をさらに備え、
前記前足支持部は、足幅方向の断面において、上向きに凸となる形状を有する、請求項1から4のいずれかに記載のプレート。
【請求項6】
前記前足支持部は、頂部を有し、
前記頂部は、前記前足支持部の前端部とシューズセンターとの交点と、前記中後足支持部の前端部と、を結ぶ直線上に位置している、請求項5に記載のプレート。
【請求項7】
前記前足支持部は、頂部を有し、
前記頂部は、前記前足支持部の前端部とシューズセンターとの交点と、前記中後足支持部の前端部と、を結ぶ直線よりも足幅方向における内側に位置している、請求項5に記載のプレート。
【請求項8】
前記前足支持部は、頂部を有し、
前記頂部は、前記前足支持部の前端部とシューズセンターとの交点と、前記中後足支持部の前端部と、を結ぶ直線よりも足幅方向における外側に位置している、請求項5に記載のプレート。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載のプレートと、
前記ソールの一部を構成するミッドソールと、を備え、
前記ミッドソールは、
下側ミッドソールと、
前記下側ミッドソール上に接続された上側ミッドソールと、を有し、
前記中後足支持部は、前記下側ミッドソールと前記上側ミッドソールとの間に配置されており、
前記下側ミッドソールは、前記厚み方向に前記着用者の踵部と重なる下側踵領域を含み、
前記上側ミッドソールは、前記厚み方向に前記着用者の踵部と重なる上側踵領域を含み、
前記下側踵領域の厚みは、前記上側踵領域の厚みよりも大きい、ソール。
【請求項10】
請求項5から8のいずれかに記載のプレートと、
前記ソールの一部を構成するミッドソールと、を備え、
前記ミッドソールは、前記プレートを収容する空間を規定する収容部を有する、ソール。
【請求項11】
前記収容部は、
前記前足支持部に接着された接着部と、
足幅方向に前記接着部と隣接する位置に形成されており、前記前足支持部と接着されていない非接着部と、を有する、請求項10に記載のソール。
【請求項12】
前記収容部は、足幅方向に前記前足支持部と対向する対向部を有し、
前記対向部は、前記前足支持部に荷重が作用していない状態において足幅方向に前記前足支持部から離間している、請求項10又は11に記載のソール。
【請求項13】
前記収容部は、
前記前足支持部と接触する接触部と、
前記厚み方向に前記前足支持部から離間する方向に向かって前記接触部から窪む形状を有する凹部と、を有する、請求項10から12のいずれかに記載のソール。
【請求項14】
請求項9から13のいずれかに記載のソールと、
前記ソールに接続されており、前記ソールの上方に位置するアッパーと、を備える、靴。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この開示は、プレート、ソール及び靴に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ミッドソール内に設けられたプレートを有する靴が知られている。例えば、特許第6598384号公報には、上側ソール部と、下側ソール部と、上側ソール部及び下側ソール部間に配置されたプレート部材と、を備えるフットウェアのソール構造が開示されている。プレート部材は、使用者の後足部と対向する後足部分を含んでいる。後足部分における足幅方向の断面は、下方向に凸になるように形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許第6598384号公報に記載されるような靴では、着地時における衝撃緩衝性を高めるために、ミッドソールを形成する素材の軽量化や低硬度化を行うことが考えられる。この場合、着用者の怪我の防止やパフォーマンスの維持の観点から、靴に対して一層の安定性が求められる。この課題は、例えば、着地時から蹴り出し時に至る間におけるアーチ部及び踵の沈み込みを抑制することにより達成可能である。
【0005】
本開示の目的は、着地時から蹴り出し時に至る間におけるアーチ部及び踵の沈み込みを抑制することが可能なプレート、ソール及び靴を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この開示の一局面に従ったプレートは、靴の一部を構成するソールに用いられるプレートであって、前記ソールの厚み方向に前記靴の着用者の中足骨の後端部と重なる位置から前記着用者の踵骨と重なる位置に至るように延びる形状を有し、前記着用者の中足部及び後足部を支持する中後足支持部を備え、前記中後足支持部は、足幅方向の断面において、上向きに凸となる形状を有する。
【0007】
また、この開示の一局面に従ったソールは、前記プレートと、前記ソールの一部を構成するミッドソールと、を備え、前記ミッドソールは、下側ミッドソールと、前記下側ミッドソール上に接続された上側ミッドソールと、を有し、前記中後足支持部は、前記下側ミッドソールと前記上側ミッドソールとの間に配置されており、前記下側ミッドソールは、前記厚み方向に前記着用者の踵部と重なる下側踵領域を含み、前記上側ミッドソールは、前記厚み方向に前記着用者の踵部と重なる上側踵領域を含み、前記下側踵領域の厚みは、前記上側踵領域の厚みよりも大きい。
【0008】
また、この開示の他の局面に従ったソールは、前記プレートと、前記ソールの一部を構成するミッドソールと、を備え、前記ミッドソールは、前記プレートを収容する空間を規定する収容部を有する。
【0009】
また、この開示の一局面に従った靴は、前記ソールと、前記ソールに接続されており、前記ソールの上方に位置するアッパーと、を備える。
【発明の効果】
【0010】
この開示によれば、着地時から蹴り出し時に至る間におけるアーチ部及び踵の沈み込みを抑制することが可能なプレート、ソール及び靴を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本開示の第1実施形態の靴に用いられるプレートを概略的に示す斜視図である。
【
図2】プレートと靴の着用者の足の骨との関係を示す平面図である。
【
図3】
図2におけるIII-III線での断面図である。
【
図4】
図2におけるIV-IV線での断面図である。
【
図6】
図2におけるVI-VI線での断面図である。
【
図7】
図2及び
図3におけるVII-VII線での断面図である。
【
図8】ミッドソールとプレートとの配置関係の変形例を示す図である。
【
図9】ミッドソールとプレートとの配置関係の変形例を示す図である。
【
図13】本開示の第2実施形態の靴に用いられるプレートの斜視図である。
【
図14】
図2に示されるIII-III線と同じ位置での第2実施形態の靴の断面図である。
【
図15】下側ミッドソールとプレートとの関係を示す平面図である。
【
図17】
図16において実線XVII線で囲まれる範囲の拡大図である。
【
図18】荷重の作用時におけるミッドソールと前足支持部との関係を示す断面図である。
【
図21】天部及び頂部の位置の変形例を示す平面図である。
【
図22】
図21におけるXXII-XXII線での断面図である。
【
図23】天部及び頂部の位置の変形例を示す平面図である。
【
図24】
図23におけるXXIV-XXIV線での断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
この開示の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下で参照する図面では、同一またはそれに相当する部材には、同じ番号が付されている。以下の説明では、足長方向、足幅方向、前方、後方等の用語が用いられる。これら方向を示す用語は、地面等の平らな面に置かれた靴1を着用した着用者の視点から見た方向を示す。例えば、前方は、つま先側を指し、後方は、踵側を指す。また、内側は、足幅方向における足の内側(足の第1趾側)を指し、外側は、足幅方向における足の外側を指す。
【0013】
(第1実施形態)
図1は、本開示の第1実施形態の靴に用いられるプレートを概略的に示す斜視図である。
図2は、プレートと靴の着用者の足の骨との関係を示す平面図である。
図3は、
図2におけるIII-III線での断面図である。
【0014】
なお、
図1には、左足用のプレート300が示されており、
図2には、右足用のプレート300が示されている。これらは左右対称な形状を有している。このことは、プレート300を含むソール10及び靴1についても同様である。本実施形態の靴1は、例えば、ランニングなどのスポーツシューズやウォーキングシューズとして適用可能であり、靴1の用途は問わない。
【0015】
図3に示されるように、靴1は、ソール10と、アッパー20と、を備えている。
【0016】
アッパー20は、ソール10に接続されており、ソール10とともに着用者の足を収容する空間を形成する。
【0017】
図3に示されるように、ソール10は、アウターソール100と、ミッドソール200と、プレート300と、を有している。
【0018】
アウターソール100は、接地部を構成している。アウターソール100は、ゴムや熱可塑性樹脂等からなる。
【0019】
ミッドソール200は、アウターソール100上に設けられている。ミッドソール200は、樹脂製のフォーム材等により形成されている。このミッドソール200上にアッパー20が配置されている。つまり、ミッドソール200は、アッパー20とアウターソール100との間に設けられている。
図3に示されるように、ミッドソール200は、前足領域R1と、中足領域R2と、後足領域R3と、を有している。
【0020】
前足領域R1は、ソール10の厚み方向に靴1の着用者の前足部と重なる領域である。前足部は、着用者の足のうち靴1の長手方向、すなわち、足長方向(
図2における上下方向)における前部に位置する部位である。前足領域R1は、靴1の全長に対して靴1の前端部から後端部に向かって0%~30%程度の範囲に位置する領域である。
【0021】
足長方向は、シューズセンターSC(
図2を参照)と平行な方向である。なお、シューズセンターSCは、靴1の中心線に限らず、靴1の標準的な着用者の踵骨の中心と第1趾及び第2趾間とを結ぶ直線に対応する線としてもよい。
【0022】
中足領域R2は、ソール10の厚み方向に靴1の着用者の中足部と重なる領域である。中足部は、着用者の足のうち前記長手方向における中央部に位置する部位である。中足領域R2は、靴1の全長に対して靴1の先端部から後端部に向かって30%~80%程度の範囲に位置する領域である。
【0023】
後足領域R3は、ソール10の厚み方向に靴1の着用者の後足部と重なる領域である。後足部は、着用者の足のうち前記長手方向における後部に位置する部位である。後足領域R3は、靴1の全長に対して靴1の前端部から後端部に向かって80%~100%の範囲に位置する領域である。
【0024】
図3に示されるように、ミッドソール200は、下側ミッドソール210と、上側ミッドソール220と、を有している。
【0025】
下側ミッドソール210は、アウターソール100上に設けられている。つまり、下側ミッドソール210の下面は、アウターソール100により被覆されている。なお、下側ミッドソール210の下面は、その全域ではなく一部のみがアウターソール100により被覆されていてもよい。
【0026】
下側ミッドソール210は、例えば、ポリオレフィン樹脂や、EVAや、ポリアミド系熱可塑性エラストマー(TPA、TPAE)の発泡体からなる。下側ミッドソール210の圧縮弾性率は、0.35MPa以上2.5MPa以下に設定されることが好ましい。
【0027】
下側ミッドソール210は、ソール10の厚み方向に着用者の踵部と重なる下側踵領域211と、ソール10の厚み方向に着用者の中足骨B10と重なる下側中部領域212と、を含んでいる。下側踵領域211は、中足領域R2の後部ないし後足領域R3に設けられている。下側中部領域212は、前足領域R1の後部ないし中足領域R2に設けられている。下側踵領域211の厚みt11は、下側中部領域212の厚みt12よりも大きい。
【0028】
上側ミッドソール220は、下側ミッドソール210上に接続されている。上側ミッドソール220は、前記厚み方向に着用者の踵部と重なる上側踵領域221と、ソール10の厚み方向に着用者の中足骨B10と重なる上側中部領域222と、を含んでいる。上側踵領域221は、下側踵領域211の直上に形成されている。上側中部領域222は、下側中部領域212の直上に形成されている。上側踵領域221の厚みt21は、上側中部領域222の厚みt22よりも小さい。
【0029】
下側踵領域211の厚みt11は、上側踵領域221の厚みt21よりも大きい。下側中部領域の厚みt12は、上側中部領域222の厚みt22よりも小さい。
【0030】
上側ミッドソール220は、例えば、ポリオレフィン樹脂や、EVAや、ポリアミド系熱可塑性エラストマー(TPA、TPAE)の発泡体からなる。上側ミッドソール220は、下側ミッドソール210の圧縮弾性率よりも大きな圧縮弾性率を有していてもよい。上側ミッドソール220の圧縮弾性率は、0.35MPa以上2.5MPa以下に設定されることが好ましく、1MPa以下に設定されることがより好ましい。ただし、上側ミッドソール220は、下側ミッドソール210の圧縮弾性率と同じ圧縮弾性率を有していてもよいし、下側ミッドソール210の圧縮弾性率よりも小さな圧縮弾性率を有していてもよい。上側ミッドソール220と下側ミッドソール210とは、同じ材料により形成されているが、求められる特性に合わせて異なる材料で構成してもよい。
【0031】
プレート300は、ソール10の一部を構成している。プレート300は、ミッドソール200の剛性よりも高い剛性を有している。プレート300は、繊維強化樹脂や非繊維強化樹脂からなる。繊維強化樹脂に用いられる繊維としては、カーボン繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、ダイニーマ繊維、ザイロン繊維、ボロン繊維等が挙げられる。非繊維強化樹脂としては、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー(TPU)やアミド系熱可塑性エラストマー(TPA)等のポリマー樹脂が挙げられる。
【0032】
プレート300は、ミッドソール200に設けられている。
図3に示されるように、本実施形態では、プレート300は、ミッドソール200内に配置されている。具体的に、プレート300は、下側ミッドソール210と上側ミッドソール220との間に配置されている。プレート300は、下側ミッドソール210及び上側ミッドソール220の少なくとも一方に接着されている。ミッドソール200は、プレート300を収容する空間を規定する収容部を有している。収容部は、プレート300の形状に対応する形状を有している。
【0033】
プレート300は、中後足支持部310と、前足支持部320と、を有している。
【0034】
中後足支持部310は、着用者の中足部及び後足部を支持する部位である。中後足支持部310は、少なくとも、厚み方向に着用者の中足骨B10の後端部B11と重なる位置から着用者の踵骨B20の後端部B21と重なる位置に至るように延びる形状を有している。本実施形態では、中後足支持部310は、プレート300のうち足長方向における中足骨B10の中間部と厚み方向に重なる部位からプレート300の後端部に至るように延びる形状を有している。
【0035】
図4~
図6に示されるように、中後足支持部310は、足幅方向の断面において、上向きに凸となる形状(全体として上向きに凸の一つの大きな弧状となる形状)を有している。中後足支持部310は、足幅方向における端部に形成された縁部311を有している。
図3では、縁部311が破線で示されている。
【0036】
中後足支持部310は、厚み方向における最も高い位置に位置する天部312を有している。天部312は、着用者のヒールセンターHC上に位置している。本実施形態では、天部312は、平坦に形成されている。このため、着地時における踵部の足当たりが良好となる。ただし、天部312は、中後足支持部310のうち天部312以外の部位の曲率よりも小さな曲率を有するように湾曲する形状に形成されてもよいし、中後足支持部310のうち天部312以外の部位の曲率と同じ曲率を有するように湾曲する形状(足幅方向の断面において中後足支持部310の全域が一律の曲率を有するように湾曲する形状)に形成されてもよい。
図2では、天部312が斜線で示されており、天部312の外形が細線で示されている。
【0037】
なお、ヒールセンターHCは、靴1の標準的な着用者の踵骨の中心と第3趾及び第4趾間とを結ぶ直線を意味する。
【0038】
図3は、半直線AB(
図2を参照)と半直線AC(
図2を参照)とに沿った靴1の断面である。半直線ABは、第4中足骨の後端部Aから、ヒールセンターHCとプレート300の後端部との交点Bに向かって延びる半直線である。半直線ACは、前記後端部Aから、プレート300の前端部とシューズセンターSCとの交点Cに向かって延びる半直線である。
【0039】
例えば、着用者の踵部と重なる位置での足幅方向における中後足支持部310の断面(
図6に示される断面)では、足幅方向における天部312の長さW12は、足幅方向における縁部311間の長さW11の0.3倍以上0.8倍以下であることが好ましく、0.45倍以上0.65倍以下であることがより好ましい。
【0040】
前足支持部320は、着用者の前足部を支持する部位である。前足支持部320は、着地時ないし蹴り出し時に主として足長方向に変形する。前足支持部320は、中後足支持部310の前方に形成されている。
図7は、前足支持部320を通る位置での足幅方向における靴1の断面を示している。
図7に示されるように、前足支持部320の足幅方向における断面は、平坦に形成されている。本実施形態では、プレート300のうち中後足支持部310よりも前方の全域において、足幅方向における断面が平坦に形成されている。なお、
図7における「out」は、足幅方向における外側を意味し、「in」は、足幅方向における内側を意味する。このことは、他の図においても同様である。
【0041】
図7に示されるように、前足支持部320を通る位置での足幅方向における下側ミッドソール210の下面は、平坦に形成されている。
【0042】
以上に説明した本実施形態のプレート300は、足幅方向の断面において、上向きに凸となる形状を有する中後足支持部310を有するため、着地時から蹴り出し時に至る間、着用者の中足部及び後足部が有効に支持される。よって、着地時から蹴り出し時に至る間におけるアーチ部及び踵の沈み込みが抑制される。
【0043】
以下、上記実施形態における変形例について説明する。
【0044】
(第1変形例)
図8に示されるように、下側中部領域212の厚みt12は、上側中部領域222の厚みt22よりも大きくてもよい。ただし、この場合においても、上記実施形態と同様に、下側踵領域211の厚みt11が上側踵領域221の厚みt21よりも大きいことが好ましい。
【0045】
(第2変形例)
図9に示されるように、プレート300の前部は、ミッドソール200の下面とアウターソール100との間に配置されていてもよい。この態様では、前足部における安定性が高まる。
【0046】
(第3変形例)
図10に示されるように、プレート300の前部の縁部に切欠き302が設けられてもよい。
図10に示される例では、プレート300の前部のうち足幅方向における外側の縁部及び内側の縁部の双方に、足長方向に間隔を置いて並ぶように複数の切欠き302が設けられている。この態様では、プレート300が変形しやすくなるため、衝撃緩衝性が高まる。
【0047】
(第4変形例)
図11に示されるように、プレート300の前部のうち足幅方向における外側の縁部及び内側の縁部の双方に、足長方向に間隔を置いて並ぶように複数のスリットSが設けられてもよい。
【0048】
(第5変形例)
図12に示されるように、プレート300には、貫通孔300hが設けられてもよい。この態様では、プレート300の剛性が維持されつつプレート300が軽量化される。
【0049】
(第2実施形態)
次に、
図13~
図20を参照しながら、本開示の第2実施形態の靴1について説明する。第2実施形態では、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明を行い、第1実施形態と同じ構造、作用及び効果の説明は繰り返さない。
【0050】
本実施形態では、前足支持部320は、足幅方向の断面において、上向きに凸となる形状を有している。
図16に示されるように、前足支持部320は、上向きに凸となるように湾曲する形状を有している。本実施形態では、中後足支持部310の天部312も、上向きに凸となるように湾曲する形状を有している。中後足支持部310及び前足支持部320は、上向きに凸となるように湾曲するとともに、足長方向に連続的につながる形状を有している。この態様では、中後足支持部310と前足支持部320との境界部における変形度合が抑制される。ただし、天部312は、第1実施形態のように平坦に形成されていてもよい。
【0051】
なお、
図14では、足幅方向における中後足支持部310の縁部311及び前足支持部320の縁部321が破線で示されている。
【0052】
図16に示されるように、下側ミッドソール210のうち前足支持部320の下方に位置する部位は、上向きに凸となるように湾曲する形状を有している。これにより、下側ミッドソール210のうち前足支持部320の下方の部位が変形しやすくなる。したがって、プレート300の前足支持部320も変形しやすくなる。ただし、下側ミッドソール210のうち前足支持部320の下方に位置する部位の形状は、上記に限られず、例えば、平坦に形成されてもよい。
【0053】
前足支持部320は、頂部322を有している。
図19及び
図20に示されるように、頂部322は、半直線AC上に位置している。
【0054】
図16に示されるように、ミッドソール200の収容部230は、接触部234と、凹部236と、対向部238と、を有している。
【0055】
接触部234は、前足支持部320と接触する部位である。接触部234は、接着部材(図示略)を介して前足支持部320に接着されている。すなわち、接触部234は、前足支持部320に接着された「接着部」を構成している。
図17に示されるように、接触部234は、下側接触部214と、上側接触部224と、を有している。下側接触部214は、下側ミッドソール210のうち足長方向における前部でかつ足幅方向における中央部に形成されている。下側接触部214は、足長方向に延びる形状を有している。
【0056】
上側接触部224は、下側接触部214の直上に形成されている。上側接触部224は、足長方向に延びる形状を有している。
【0057】
凹部236は、厚み方向に前足支持部320から離間する方向に向かって接触部234から窪む形状を有している。凹部236は、足幅方向に接触部234と隣接する位置に形成されている。凹部236は、前足支持部320と接着されていない。すなわち、凹部236は、「非接着部」を構成している。凹部236は、下側凹部216と、上側凹部226と、を有している。
【0058】
下側凹部216は、下側ミッドソール210のうち足幅方向に下側接触部214と隣接する位置に形成されている。
図17に示されるように、下側凹部216は、下側接触部214から下方に窪む形状を有している。下側凹部216は、前足支持部320の縁部321よりも足幅方向における外側に延びている。
【0059】
上側凹部226は、上側ミッドソール220のうち厚み方向に下側凹部216と対向する位置に形成されている。
図17に示されるように、上側凹部226は、上側接触部224から上方に窪む形状を有している。上側凹部226は、前足支持部320の縁部321よりも足幅方向における外側に延びている。
【0060】
対向部238は、足幅方向に前足支持部320と対向する部位である。対向部238は、前足支持部320の縁部321と対向している。
図15~
図17に示されるように、対向部238は、前足支持部320に荷重が作用していない状態において足幅方向に前足支持部320の縁部321から離間している。対向部238は、足幅方向における下側凹部216の外側の端部と足幅方向における上側凹部226の外側の端部とを連結している。
【0061】
図18に示されるように、前足支持部320に荷重が作用すると、前足支持部320は、足幅方向における外側に広がるように変形する。本実施形態では、ソール10に荷重が作用していない状態において、前足支持部320と対向部238との間に隙間が形成されているため、前足支持部320に荷重が作用した際における足幅方向への前足支持部320の変形が阻害されることが抑制される。
【0062】
また、本実施形態では、蹴り出し時に前足支持部320の変形が前足部に作用するため、安定性を有した衝撃緩衝性が期待される。
【0063】
以下、第2実施形態における変形例について説明する。
【0064】
(第6変形例)
図21及び
図22に示されるように、頂部322は、半直線AC上よりも足幅方向における内側に位置してもよい。
【0065】
また、天部312は、半直線ABよりも足幅方向における内側に位置していてもよい。このことは、第1実施形態においても同様である。
【0066】
なお、
図21では、
図19と同じ位置に示される半直線AB及び半直線ACが二点鎖線で示されている。
【0067】
(第7変形例)
図23及び
図24に示されるように、頂部322は、半直線AC上よりも足幅方向における外側に位置してもよい。
【0068】
また、天部312は、半直線ABよりも足幅方向における外側に位置していてもよい。このことは、第1実施形態においても同様である。
【0069】
なお、
図23では、
図19と同じ位置に示される半直線AB及び半直線ACが二点鎖線で示されている。
【0070】
(第8変形例)
図25に示されるように、頂部322は、半直線AC上に位置するとともに、前足支持部320のうち足幅方向における頂部322の外側の部位の厚みが頂部322の内側の部位の厚みよりも小さく形成されてもよい。この態様においても、第6変形例と同様の効果が得られる。この場合において、前足支持部320のうち足幅方向における頂部322の外側の部位の厚みは、足幅方向における外側に向かうにしたがって次第に小さくなるように形成され、前足支持部320のうち足幅方向における頂部322の内側の部位の厚みは、足幅方向における外側に向かうにしたがって次第に大きくなるように形成されることが好ましい。
【0071】
また、前足支持部320の形状は第2実施形態のそれと同じに形成されるともに、前足支持部320のうち頂部322の外側の部位が頂部322の内側の部位よりも低剛性の材料で形成された場合においても第6変形例と同様の効果が得られる。
【0072】
(第9変形例)
図26に示されるように、頂部322は、半直線AC上に位置するとともに、前足支持部320のうち足幅方向における頂部322の外側の部位の厚みが頂部322の内側の部位の厚みよりも大きく形成されてもよい。この態様においても、第7変形例と同様の効果が得られる。この場合において、前足支持部320のうち足幅方向における頂部322の外側の部位の厚みは、足幅方向における外側に向かうにしたがって次第に大きくなるように形成され、前足支持部320のうち足幅方向における頂部322の内側の部位の厚みは、足幅方向における外側に向かうにしたがって次第に小さくなるように形成されることが好ましい。
【0073】
また、前足支持部320の形状は第2実施形態のそれと同じに形成されるともに、前足支持部320のうち頂部322の内側の部位が頂部322の外側の部位よりも低剛性の材料で形成された場合においても第7変形例と同様の効果が得られる。
【0074】
(第10変形例)
第2実施形態では、下側接触部214及び上側接触部224の双方が前足支持部320に接着されている例を説明したが、前足支持部320は、下側ミッドソール210及び上側ミッドソール220の少なくとも一方と接着されていればよい。例えば、下側ミッドソール210の剛性の方が上側ミッドソール220の剛性よりも低い場合、ソール10への荷重の作用時、上側ミッドソール220の変形量よりも下側ミッドソール210の変形量の方が大きくなる。このため、前足支持部320の上面が上側接触部224に接着され、前足支持部320の下面は下側接触部214に接着されなくてもよい。
【0075】
また、凹部236が省略され、前足支持部320の下面の全域が下側ミッドソール210に接触し、前足支持部320の上面の全域が上側ミッドソール220に接触していてもよい。この場合においても、上記と同様に、下側ミッドソール210の剛性の方が上側ミッドソール220の剛性よりも低い場合、前足支持部320の上面のみが上側ミッドソール220に接着され、前足支持部320の下面は、下側ミッドソール210に接着されなくてもよい。
【0076】
なお、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく請求の範囲によって示され、さらに請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0077】
[態様]
上述した複数の例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0078】
この開示の一局面に従ったプレートは、靴の一部を構成するソールに用いられるプレートであって、前記ソールの厚み方向に前記靴の着用者の中足骨の後端部と重なる位置から前記着用者の踵骨と重なる位置に至るように延びる形状を有し、前記着用者の中足部及び後足部を支持する中後足支持部を備え、前記中後足支持部は、足幅方向の断面において、上向きに凸となる形状を有する。
【0079】
このプレートは、足幅方向の断面において、上向きに凸となる形状を有する中後足支持部を有するため、着地時から蹴り出し時に至る間、着用者の中足部及び後足部が有効に支持される。よって、着地時から蹴り出し時に至る間におけるアーチ部及び踵の沈み込みが抑制される。
【0080】
また、前記中後足支持部は、前記厚み方向における最も高い位置に位置する天部を有していることが好ましい。
【0081】
この場合において、前記天部は、前記着用者のヒールセンター上に位置していてもよい。
【0082】
この態様では、中足部及び後足部から中後足支持部に鉛直下向きに荷重が作用した際、中後足支持部が足幅方向に実質的に均等に変形するため、前記荷重が取り除かれた際、中足部及び後足部に鉛直上向きの復元力が生じる。なお、ヒールセンターは、靴の標準的な着用者の踵骨の中心と第3趾及び第4趾間とを結ぶ直線を意味する。
【0083】
あるいは、前記天部は、前記着用者のヒールセンターよりも足幅方向における内側に位置していてもよい。
【0084】
この態様では、中後足支持部のうち相対的に曲げ剛性の低い部位が足幅方向における外側に位置し、中後足支持部のうち相対的に曲げ剛性の高い部位が幅方向における内側に位置する。このため、着地時に中後足支持部のうちヒールセンターより外側の部位に荷重が作用した場合、中後足支持部の変形が促進されるため、緩衝性が高まる。さらに、中後足支持部のうちヒールセンターより内側の部位の曲げ剛性が高まるため、着地時における回内(プロネーション)の発生が抑制される。
【0085】
あるいは、前記天部は、前記着用者のヒールセンターよりも足幅方向における外側に位置していてもよい。
【0086】
この態様では、中後足支持部のうち相対的に曲げ剛性の高い部位が足幅方向における外側に位置し、中後足支持部のうち相対的に曲げ剛性の低い部位が幅方向における内側に位置する。このため、着地時に中後足支持部のうちヒールセンターより外側の部位に荷重が作用した場合における安定性が高まる。
【0087】
また、前記プレートは、前記中後足支持部から前方に向かって延びる形状を有し、前記着用者の前足部に前足支持部をさらに備え、前記前足支持部は、足幅方向の断面において、上向きに凸となる形状を有することが好ましい。
【0088】
このようにすれば、蹴り出し時に前足支持部の変形が前足部に作用するため、安定性を有した衝撃緩衝性が期待される。
【0089】
また、前記前足支持部は、頂部を有していることが好ましい。
【0090】
この場合において、前記頂部は、前記前足支持部の前端部とシューズセンターとの交点と、前記中後足支持部の前端部と、を結ぶ直線上に位置していてもよい。
【0091】
この態様では、蹴り出し時に、足幅方向における前足部の略中央部に前足支持部から反力が作用する。なお、シューズセンターは、ソールの中心線、あるいは、靴の標準的な着用者の踵骨の中心と第1趾及び第2趾間とを結ぶ直線を意味する。
【0092】
あるいは、前記頂部は、前記前足支持部の前端部とシューズセンターとの交点と、前記中後足支持部の前端部と、を結ぶ直線よりも足幅方向における内側に位置していてもよい。
【0093】
あるいは、前記頂部は、前記前足支持部の前端部とシューズセンターとの交点と、前記中後足支持部の前端部と、を結ぶ直線よりも足幅方向における外側に位置していてもよい。
【0094】
また、この開示の一局面に従ったソールは、前記プレートと、前記ソールの一部を構成するミッドソールと、を備え、前記ミッドソールは、下側ミッドソールと、前記下側ミッドソール上に接続された上側ミッドソールと、を有し、前記中後足支持部は、前記下側ミッドソールと前記上側ミッドソールとの間に配置されており、前記下側ミッドソールは、前記厚み方向に前記着用者の踵部と重なる下側踵領域を含み、前記上側ミッドソールは、前記厚み方向に前記着用者の踵部と重なる上側踵領域を含み、前記下側踵領域の厚みは、前記上側踵領域の厚みよりも大きい。
【0095】
このソールでは、踵からミッドソールに荷重が入力された際、上側踵領域には、踵から直接荷重が入力され、下側踵領域には、中後足支持部を介して荷重が伝達される。換言すれば、上側踵領域には、比較的小さな面積を有する踵の一部から大きな圧力が作用し、下側踵領域には、踵の一部よりも大きな面積を有する中後足支持部から小さな圧力が作用する。このため、下側踵領域の厚みが上側踵領域の厚みよりも大きいことにより、着地時から蹴り出し時における後足部の沈み込みが有効に抑制される。
【0096】
また、この開示の他の局面に従ったソールは、前記プレートと、前記ソールの一部を構成するミッドソールと、を備え、前記ミッドソールは、前記プレートを収容する空間を規定する収容部を有する。
【0097】
この場合において、前記収容部は、前記前足支持部に接着された接着部と、足幅方向に前記接着部と隣接する位置に形成されており、前記前足支持部と接着されていない非接着部と、を有していてもよい。
【0098】
この態様では、接着部が前足支持部と接着されているため、収容部内でのプレートの相対移動が抑制され、かつ、非接着部が前足支持部と接着されていないため、前足支持部に荷重が作用した際における足幅方向への前足支持部の変形が阻害されることが抑制される。
【0099】
また、前記収容部は、足幅方向に前記前足支持部と対向する対向部を有し、前記対向部は、前記前足支持部に荷重が作用していない状態において足幅方向に前記前足支持部から離間していることが好ましい。
【0100】
このようにすれば、前足支持部に荷重が作用した際における足幅方向への前足支持部の変形が阻害されることが抑制される。
【0101】
また、前記収容部は、前記前足支持部と接触する接触部と、前記厚み方向に前記前足支持部から離間する方向に向かって前記接触部から窪む形状を有する凹部と、を有していてもよい。
【0102】
このようにすれば、前足支持部に荷重が作用した際における足幅方向への前足支持部の変形が阻害されることが抑制される。
【0103】
また、この開示の一局面に従った靴は、前記ソールと、前記ソールに接続されており、前記ソールの上方に位置するアッパーと、を備える。
【符号の説明】
【0104】
1 靴、10 ソール、20 アッパー、100 アウターソール、200 ミッドソール、210 下側ミッドソール、211 下側踵領域、212 下側中部領域、214 下側接触部、216 下側凹部、220 上側ミッドソール、221 上側踵領域、222 上側中部領域、224 上側接触部、226 上側凹部、230 収容部、234 接触部、236 凹部、238 対向部、300 プレート、310 中後足支持部、312 天部、320 前足支持部、322 頂部、B10 中足骨、B20 踵骨、HC ヒールセンター、R1 前足領域、R2 中足領域、R3 後足領域、SC シューズセンター。