(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022181510
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】害獣威嚇装置
(51)【国際特許分類】
A01M 29/10 20110101AFI20221201BHJP
A01M 29/16 20110101ALI20221201BHJP
【FI】
A01M29/10
A01M29/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021088501
(22)【出願日】2021-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100160691
【弁理士】
【氏名又は名称】田邊 淳也
(72)【発明者】
【氏名】市毛 敬介
(72)【発明者】
【氏名】河上 充佳
【テーマコード(参考)】
2B121
【Fターム(参考)】
2B121AA01
2B121DA17
2B121DA33
2B121DA58
2B121DA62
2B121DA63
2B121FA13
(57)【要約】
【課題】 害獣威嚇装置において、害獣に対する威嚇効果を長時間にわたって維持することができる技術を提供する。
【解決手段】 害獣威嚇装置は、地上を自律的に移動可能な移動体として構成されており、光と音を含む、害獣を威嚇するための複数種類の威嚇手段を発生させる発生部と、害獣威嚇装置から害獣までの距離を測定する測定部と、害獣威嚇装置から害獣までの距離に応じて発生部から発生させる威嚇手段を変更する制御部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
害獣を威嚇する害獣威嚇装置であって、
地上を自律的に移動可能な移動体として構成されており、
光と音を含む、害獣を威嚇するための複数種類の威嚇手段を発生させる発生部と、
前記害獣威嚇装置から害獣までの距離を測定する測定部と、
前記害獣威嚇装置から害獣までの距離に応じて前記発生部から発生させる威嚇手段を変更する制御部と、を備える害獣威嚇装置。
【請求項2】
請求項1に記載の害獣威嚇装置は、さらに、
外部の装置と通信するための通信部と、
前記通信部を介して前記外部の装置から取得された音情報を記憶する記憶部と、を備え、
前記制御部は、前記記憶部に記憶された音情報と、前記外部の装置からリアルタイムに取得した音情報のうち、威嚇手段として、前記発生部から発生させる音として利用する音情報を選択する、
害獣威嚇装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の害獣威嚇装置であって、
前記制御部は、
前記害獣威嚇装置から害獣までの距離が第1閾値以上の場合、前記発生部から威嚇手段として光を発生させ、
前記害獣威嚇装置から害獣までの距離が前記第1閾値より小さい場合、前記発生部から威嚇手段として音を発生させる、
害獣威嚇装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の害獣威嚇装置であって、
前記制御部は、前記害獣威嚇装置から害獣までの距離が小さくなるにつれて、前記発生部から発生させる音の音量を大きくする、
害獣威嚇装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の害獣威嚇装置であって、
前記制御部は、前記発生部から威嚇手段として点滅した光を発生させる、
害獣威嚇装置。
【請求項6】
請求項3に記載の害獣威嚇装置であって、
前記発生部は、さらに、
前記害獣威嚇装置の外表面の温度を上昇させる熱を威嚇手段として発生させ、
前記害獣威嚇装置の外側に威嚇手段としての電界を発生させ、
前記制御部は、
前記害獣威嚇装置から害獣までの距離が前記第1閾値より小さい第2閾値以上の場合、前記発生部から威嚇手段として音を発生させ、
前記害獣威嚇装置から害獣までの距離が前記第2閾値より小さい場合、前記発生部から威嚇手段として熱と電界を発生させる、
害獣威嚇装置。
【請求項7】
請求項6に記載の害獣威嚇装置であって、
前記制御部は、前記害獣威嚇装置から害獣までの距離が小さくなるにつれて、前記発生部から発生させる熱の熱量を大きくする、
害獣威嚇装置。
【請求項8】
請求項6または請求項7に記載の害獣威嚇装置は、さらに、
前記害獣威嚇装置を動作させる駆動部であって、前記制御部によって制御される駆動部を備え、
前記制御部は、前記害獣威嚇装置から害獣までの距離が前記第2閾値より小さい場合、前記駆動部を制御して、前記害獣威嚇装置を動作させる、
害獣威嚇装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、害獣威嚇装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、農地や住宅地などに侵入する害獣を追い払うために、害獣を威嚇する害獣威嚇装置が知られている(例えば、特許文献1~4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-74720号公報
【特許文献2】特開2010-161999号公報
【特許文献3】特開2009-178140号公報
【特許文献4】特開2018-50503号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
害獣威嚇装置は、威嚇手段として、例えば、音と光を組み合わせて害獣を威嚇する。しかしながら、音と光との組み合わせ方が一定であったり、音の大きさや光の明るさが一定であったりするため、害獣がこれらの威嚇手段に慣れてしまい、害獣に対する威嚇効果が長続きしない。
【0005】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、害獣威嚇装置において、害獣に対する威嚇効果を長時間にわたって維持することができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
【0007】
(1)本発明の一形態によれば害獣威嚇装置が提供される。この害獣威嚇装置は、地上を自律的に移動可能な移動体として構成されており、光と音を含む、害獣を威嚇するための複数種類の威嚇手段を発生させる発生部と、前記害獣威嚇装置から害獣までの距離を測定する測定部と、前記害獣威嚇装置から害獣までの距離に応じて前記発生部から発生させる威嚇手段を変更する制御部と、を備える。
【0008】
この構成によれば、害獣を威嚇するための威嚇手段を発生させる発生部は、複数種類の威嚇手段を発生させる。制御部は、測定部によって測定される害獣威嚇装置から害獣までの距離に応じて、発生部から発生させる威嚇手段を変更する。このように、害獣威嚇装置は、害獣威嚇装置から害獣までの距離に応じて、複数種類の威嚇手段を使い分けることで、害獣の威嚇手段に対する慣れを抑制することができる。また、害獣威嚇装置は、地上を自律的に移動可能な移動体として構成されており、例えば、飛行する移動体に比べ、比較的長時間移動することができる。これにより、害獣威嚇装置は、比較的長時間にわたって連続して害獣への威嚇を続けることができる。したがって、害獣に対する威嚇効果を長時間にわたって維持することができる。
【0009】
(2)上記形態の害獣威嚇装置は、さらに、外部の装置と通信するための通信部と、前記通信部を介して前記外部の装置から取得された音情報を記憶する記憶部と、を備え、前記制御部は、前記記憶部に記憶された音情報と、前記外部の装置からリアルタイムに取得した音情報のうち、威嚇手段として、前記発生部から発生させる音として利用する音情報を選択してもよい。この構成によれば、害獣威嚇装置は、外部の装置と通信するための通信部を備えており、威嚇手段としての音として利用する音情報、例えば、インターネットからダウンロードされる音源や、電話による害獣威嚇装置の使用者のリアルタイムの声などを取得する。制御部は、害獣を威嚇するとき、威嚇手段としての音として利用する音情報を、記憶部に記憶された音情報と、外部の装置からリアルタイムに取得した音情報とのいずれかから選択することができる。これにより、制御部は、威嚇手段としての音の種類を増やすことができるため、害獣の威嚇手段に対する慣れをさらに抑制することができる。したがって、害獣に対する威嚇効果をさらに長時間にわたって維持することができる。
【0010】
(3)上記形態の害獣威嚇装置において、前記制御部は、前記害獣威嚇装置から害獣までの距離が第1閾値以上の場合、前記発生部から威嚇手段として光を発生させ、前記害獣威嚇装置から害獣までの距離が前記第1閾値より小さい場合、前記発生部から威嚇手段として音を発生させてもよい。この構成によれば、害獣威嚇装置は、害獣威嚇装置から害獣までの距離が第1閾値以上の場合、遠方まで届きやすい光を威嚇手段として用いて、害獣を威嚇する。害獣威嚇装置は、害獣威嚇装置から害獣までの距離が第1閾値より小さい場合、害獣が自身の後方から発せられても気づきやすい音を威嚇手段として用いて、害獣を威嚇する。このように、複数種類の威嚇手段としての光と音とを、それぞれの特性に合わせて使い分けることで、比較的遠方の害獣に対しても、害獣威嚇装置の方向を向いていない害獣に対しても、威嚇することができる。これにより、害獣への威嚇を、広範囲でかつ効率的に行うことができる。
【0011】
(4)上記形態の害獣威嚇装置において、前記制御部は、前記害獣威嚇装置から害獣までの距離が小さくなるにつれて、前記発生部から発生させる音の音量を大きくしてもよい。この構成によれば、制御部は、害獣威嚇装置から害獣までの距離が小さくなるにつれて、音の音量を大きくする。これにより、害獣は、発生部から発生させる音に気付きやすくなる。さらに、害獣は、音を発生させるなにかが近づいてくるように感じるため、害獣の警戒心を高めさせることができる。これにより、害獣に対する威嚇効果を大きくすることができる。
【0012】
(5)上記形態の害獣威嚇装置において、前記制御部は、前記発生部から威嚇手段として点滅した光を発生させてもよい。この構成によれば、発生部から発生させた光は点滅しているため、害獣威嚇装置の方向を向いていない害獣が光に気づきやすくなる。これにより、害獣への威嚇を効率的に行うことができる。
【0013】
(6)上記形態の害獣威嚇装置において、前記発生部は、前記害獣威嚇装置の外表面の温度を上昇させる熱を威嚇手段として発生させ、前記害獣威嚇装置の外側に威嚇手段としての電界を発生させ、前記制御部は、前記害獣威嚇装置から害獣までの距離が前記第1閾値より小さい第2閾値以上の場合、前記発生部から威嚇手段として音を発生させ、前記害獣威嚇装置から害獣までの距離が前記第2閾値より小さい場合、前記発生部から威嚇手段として熱と電界を発生させてもよい。この構成によれば、害獣威嚇装置が威嚇手段としての音によって害獣を威嚇しても、害獣が害獣威嚇装置にさらに接近し、距離が第2閾値より小さい場合、発生部は、威嚇手段としての熱と電界を発生させる。これにより、害獣威嚇装置は、光や音とは異なる別の威嚇手段によって害獣を威嚇することができるため、害獣に対する威嚇効果をさらに大きくすることができる。したがって、害獣の威嚇手段に対する慣れをさらに抑制することができるため、害獣に対する威嚇効果をさらに長時間にわたって維持することができる。
【0014】
(7)上記形態の害獣威嚇装置において、前記制御部は、前記害獣威嚇装置から害獣までの距離が小さくなるにつれて、前記発生部から発生させる熱の熱量を大きくしてもよい。この構成によれば、制御部は、害獣威嚇装置から害獣までの距離が小さくなるにつれて、熱の熱量を大きくする。これにより、害獣は、発生部から発生させる熱に気付きやすくなる。さらに、害獣は、熱を発生させるなにかが近づいてくるように感じるため、害獣の警戒心を高めさせることができる。これにより、害獣に対する威嚇効果を大きくすることができる。
【0015】
(8)上記形態の害獣威嚇装置は、さらに、前記害獣威嚇装置を動作させる駆動部であって、前記制御部によって制御される駆動部を備え、前記制御部は、前記害獣威嚇装置から害獣までの距離が前記第2閾値より小さい場合、前記駆動部を制御して、前記害獣威嚇装置を動作させてもよい。この構成によれば、制御部は、害獣威嚇装置から害獣までの距離が第2閾値より小さい場合、駆動部によって害獣威嚇装置を動作させる。これにより、熱と電界とを発生する移動体が動作することとなり、害獣は、害獣威嚇装置を生物として認識しやすくなるため、害獣の警戒心を高めさせることができる。したがって、害獣に対する威嚇効果をさらに大きくすることができる。
【0016】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、害獣威嚇装置を含むシステム、害獣威嚇装置の製造方法、害獣を威嚇する方法、害獣威嚇装置に害獣の威嚇を実行させるコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを配布するためのサーバ装置、そのコンピュータプログラムを記憶した一時的でない記憶媒体等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】第1実施形態の害獣威嚇システムの概略構成を示す模式図である。
【
図2】害獣威嚇システムの作用を説明する模式図である。
【
図3】害獣威嚇装置に記憶されている音情報の一例である。
【
図4】害獣威嚇処理の第1のフローチャートである。
【
図5】害獣威嚇処理の第2のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態の害獣威嚇システムの概略構成を示す模式図である。
図2は、害獣威嚇システムの作用を説明する模式図である。本実施形態の害獣威嚇システム1は、光と音を含む複数種類の威嚇手段を発生させて、農地や住宅地などに侵入している害獣100(
図2参照)を威嚇する。威嚇対象の害獣は、例えば、イノシシ、シカ、サルなどの獣類であるが、カラス、コウモリなどの鳥類を含んでいてもよい。本実施形態の害獣威嚇システム1は、害獣威嚇装置3と、給電ステーション5と、を備える。
【0019】
害獣威嚇装置3は、発生部10と、測定部20と、制御部30と、通信部40と、記憶部50と、駆動部60と、バッテリ70と、を備える。害獣威嚇装置3は、例えば、バッテリ70の電力によって駆動する多足歩行ロボットであって、地上を自律的に移動可能である。
【0020】
発生部10は、発光部11と、音発生部12と、発熱部13と、電界生成部14と、を備える。発生部10は、制御部30と電気的に接続されており、制御部30からの指令に応じて、複数種類の威嚇手段のいずれかを発生させる。ここで、「威嚇手段」とは、発生させることで害獣100の警戒心を高めさせることができるものであり、主に、害獣100に対する物理的作用を指している。本実施形態では、発生部10は、威嚇手段として、光、音、熱、および、電界を発生させるが、威嚇手段は、これらに限定されない。威嚇手段は、においや、放電、物体の射出などであってもよい。
【0021】
発光部11は、例えば、害獣威嚇装置3の外部に向けて光を照射するフラッシュライトであって、威嚇手段として、点滅する可視光を発生させる。なお、発光部11が発生させる光は、可視光に限定されず、例えば、特定の害獣に対して威嚇を行う場合には、該害獣が認識可能な赤外光や紫外光であってもよい。また、発光部11は、可視光を点灯させるだけでもよいし、光の光量を段階的に変化させてもよい。
【0022】
音発生部12は、例えば、スピーカであって、威嚇手段として、音を発生させる。本実施形態では、音発生部12は、制御部30によって選択された音を発する。音発生部12が発生させる音の詳細については、後述する。
【0023】
発熱部13は、例えば、ヒータであって、威嚇手段として、熱を発生させる。発熱部13は、後述するバッテリ70によって電力が供給されることで、害獣威嚇装置3の外表面の温度を上昇させる。本実施形態では、発熱部13は、害獣威嚇装置3の外表面の温度を、哺乳類の体温、例えば、36~38℃程度に保つことができる。
【0024】
電界生成部14は、例えば、電気伝導材料から形成されたコイルであって、威嚇手段として、電界を発生させる。電界生成部14は、バッテリ70によって電力が供給されることで、害獣威嚇装置3の外側に、害獣威嚇装置3を中心とした電界を生成する。
【0025】
測定部20は、制御部30と電気的に接続されており、いずれも図示しない、赤外線センサと、デプスセンサと、ステレオカメラと、を備える。赤外線センサは、例えば、遠赤外線領域の光を検知する撮像装置であって、害獣威嚇装置3の上部に取り付けられている。赤外線センサは、害獣威嚇装置3の周辺において、生物の体温相当の温度となっている物体を検知する。赤外線センサによって検知された物体(以下、「検知物体」という)は、制御部30によって解析され、該検知物体が害獣であるか否かの判定がなされる。デプスセンサは、害獣威嚇装置3から、制御部30によって害獣であると判定された検知物体までの距離(離間距離D)を測定する。ステレオカメラは、害獣威嚇装置3の周辺を撮像し、害獣威嚇装置3が自律的に移動するときに必要な情報を取得する。
【0026】
制御部30は、CPUであって、ROMに格納されているコンピュータプログラムをRAMに展開して実行することにより、害獣威嚇装置3の各部を制御する。本実施形態では、制御部30は、測定部20によって測定された離間距離Dに応じて、複数種類の威嚇手段を発生部10に発生させる。制御部30の作用の詳細は、後述する。
【0027】
通信部40は、外部の装置101と通信し、外部の装置101から、音発生部12が発する音として利用する音情報を取得する。本実施形態では、通信部40は、インターネットに接続可能な構成と、電話回線に接続可能な構成とを含んでいる。通信部40は、インターネットに接続されることで、インターネット上の音源を、音発生部12から発生させる音として利用する音情報としてダウンロードする。ダウンロードされた音情報は、通信部40と電気的に接続されている記憶部50に記憶される。また、通信部40は、電話回線に接続されることで、害獣威嚇システム1の使用者に電話をかけることができる。これにより、音発生部12は、通信部40と制御部30を介して、使用者の肉声を、威嚇手段として発生させることができる。
【0028】
記憶部50は、ハードディスク、フラッシュメモリ、メモリカードなどで構成される。記憶部50は、音発生部12から発生させる音として利用する音情報を記憶する。本実施形態では、記憶部50には、害獣威嚇システム1が設置される前の初期状態においてあらかじめ記憶されている音情報の他に、上述した通信部40を介してダウンロードされた音源が記憶される。記憶部50は、制御部30からの指令に応じて、記憶している複数の音情報のうちから、音発生部12から発生させる音として利用する音情報を選択し、制御部30に出力する。
【0029】
駆動部60は、害獣威嚇装置3を動作させる駆動力を発生する。本実施形態では、駆動部60は、いずれも図示しない、モータと、慣性センサなどを備える。モータは、脚部3aや胴体部3bなどを駆動させる回転トルクを発生可能であり、電気的に接続されている制御部30からの指令に応じて、これらの部位を動作させる。慣性センサは、動作中の害獣威嚇装置3の姿勢を制御するために用いられる。
【0030】
バッテリ70は、害獣威嚇装置3の各部において消費される電力を供給する。バッテリ70は、害獣威嚇装置3の外部に設けられる給電ステーション5と電気的に接続可能に形成されている。
【0031】
給電ステーション5は、害獣威嚇システム1によって、害獣100の侵入を抑制する領域内に設置される(
図2参照)。給電ステーション5は、害獣威嚇装置3のバッテリ70と電気的に接続されることで、バッテリ70を充電可能である。
【0032】
次に、本実施形態の害獣威嚇システム1の動作について説明する。本実施形態の害獣威嚇システム1では、害獣100の侵入を抑制する領域A0が設定されており、給電ステーション5は、領域A0の中央C0に設置されている。領域A0は、例えば、
図2に示すように、中央C0を中心とする円形形状の領域となっている。害獣威嚇システム1では、領域A0において、4つの範囲R0、R1、R2、R3が設定されている。範囲R0は、中央C0からの距離d0の範囲内を含んでおり、領域A0と同じ大きさの範囲となっている。範囲R1は、中央C0からの距離が距離d0より小さい距離d1の範囲内を含んでいる。範囲R2は、中央C0からの距離が距離d1より小さい距離d2の範囲内を含んでいる。範囲R3は、中央C0からの距離が距離d2より小さい距離d3の範囲内を含んでいる。距離d1は、特許請求の範囲の「第1閾値」に相当し、距離d2は、特許請求の範囲の「第2閾値」に相当する。
【0033】
害獣威嚇装置3は、測定部20と制御部30によって、領域A0内に侵入している害獣100を検知する。害獣威嚇装置3は、範囲R0の内側であって範囲R1の外側に、害獣100がいると検知すると、発光部11に点滅する可視光を発生させる。害獣威嚇装置3は、範囲R1の内側であって範囲R2の外側に、害獣100がいると検知すると、音発生部12に音を発生させる。音発生部12は、上述したように、記憶部50に記憶されている音情報を利用した音の他に、通信部40の電話回線を介して取得したリアルタイムの音情報を利用した音も発生させる。これにより、害獣威嚇装置3は、光とは異なる威嚇手段によって害獣を威嚇することができるため、害獣の威嚇手段に対する慣れを抑制することができる。
【0034】
図3は、害獣威嚇装置に記憶されている音情報の一例である。記憶部50は、害獣威嚇システム1が設置される前の初期状態において、複数種類の音を記憶している。具体的には、
図3に示すように、人間の感情の高ぶり方に沿って、「人間の叱り声」と「人間の怒鳴り声」と「人間の叫び声」とのそれぞれに該当する人の声が記憶されている。さらに、害獣が警戒心を高める可能性が高い「犬の鳴き声」や「銃声音」が記憶されている。制御部30は、害獣100が害獣威嚇装置3から発生する音に慣れないように、例えば、「人間の叱り声」、「人間の怒鳴り声」、「人間の叫び声」、「犬の鳴き声」、「銃声音」の順に、音発生部12から発生させるように、音発生部12を制御する。本実施形態では、制御部30は、
図3に示すような音を発するとき、害獣威嚇装置3と害獣100との離間距離Dが小さくなるにつれて、音の音量を大きくする。これにより、害獣100は、音発生部12から発生される音に気付きやすくなる。
【0035】
また、記憶部50は、
図3に示した初期状態で記憶されている音の他に、通信部40を介してインターネットからダウンロードされたインターネット上の音源を記憶する。制御部30は、初期状態で記憶されている音と、ダウンロードされたインターネット上の音源のうちから音を選択し、音発生部12から発生させる。これにより、音発生部12は、発生させる音の種類を増やすことができるため、害獣威嚇装置3が発する音に対する害獣100の慣れが抑制され、害獣100に対する威嚇効果を長時間にわたって維持することができる。
【0036】
本実施形態では、制御部30は、記憶部50に記憶されている音情報のそれぞれについて、害獣100への威嚇効果を記憶する。制御部30は、記憶した威嚇効果の大きさに応じて選択されやすいように優先順位をつけることで、次回以降の音による威嚇時に選択されやすいようにする。これにより、害獣100に対する威嚇効果を大きくすることができる。
【0037】
さらに、害獣威嚇装置3では、通信部40を介して接続された害獣威嚇システム1の使用者の電話を通じて、使用者のリアルタイムの声を音発生部12から発生させることができる。具体的には、制御部30は、音発生部12から音を発生させるとき、通信部40を介して害獣威嚇システム1の使用者に電話をかける。制御部30による使用者への電話において、使用者が電話に出られる場合には、使用者が電話に向かって発生した声を、そのまま音発生部12から発生させる。これにより、記憶部50に記憶されている音情報を利用した音を発生する場合に比べ、害獣威嚇装置3から発生する音に対する害獣100の慣れがさらに抑制される。したがって、害獣100に対する威嚇効果を長時間にわたって維持することができる。
【0038】
本実施形態では、制御部30は、測定部20のステレオカメラで撮像した害獣100の姿を使用者に配信することができる。これにより、使用者の害獣100への怒りが増すため、通信部40を介した使用者のリアルタイムの声に、使用者の感情がさらに含まれることとなり、害獣に対する威嚇効果をさらに大きくすることができる。
【0039】
害獣威嚇装置3は、範囲R2の内側に、害獣100がいると検知すると、発熱部13によって熱を発生させるとともに、電界生成部14によって電界を生成する。これにより、害獣威嚇装置3の外表面の温度が36~38℃程度になるとともに、害獣威嚇装置3の外側に電界が生成されるため、光と音とは異なる威嚇手段によって害獣を威嚇することができる。したがって、害獣の威嚇手段に対する慣れをさらに抑制することができる。
【0040】
本実施形態では、制御部30は、発熱部13によって熱を発生させるとき、害獣威嚇装置3と害獣100との離間距離Dが小さくなるにつれて、発熱量を大きくする。これにより、害獣100は、害獣威嚇装置3の熱に気づきやすくなるとともに、熱を発生させるなにかが近づいてくるように感じるため、害獣100の警戒心を高めさせることができる。これにより、害獣100に対する威嚇効果を大きくすることができる。
【0041】
害獣威嚇装置3は、範囲R2の内側に、害獣100がいると検知すると、熱と電界を生成するとともに、駆動部60を駆動させて、害獣威嚇装置3を作動させる。これにより、害獣威嚇装置3は、周囲に電界を生成しつつ、外表面の温度が生物の体温程度となった状態で移動するため、害獣100は、なにかしらの生物がいると認識する可能性がある。したがって、害獣100の警戒心をさらに高めさせることができるため、害獣100に対する威嚇効果をさらに大きくすることができる。
【0042】
害獣威嚇装置3は、範囲R3の内側に、害獣100がいると検知すると、最終手段として、駆動部60を駆動させて、例えば、害獣100への体当たりや、逃走、死んだふりや、脚部3aを折りたたんで小さくなるなどの動作を行う。これにより、害獣100は、なにかしらの生物がいると認識する可能性があるため、害獣100の警戒心をさらに高めさせることができ、害獣100に対する威嚇効果をさらに大きくすることができる。
【0043】
図4は、本実施形態の害獣威嚇処理の第1のフローチャートである。ここで、本実施形態の害獣威嚇処理の一例を説明する。この害獣威嚇処理は、害獣威嚇システム1が領域A0の中央C0に設置されることで常時実行する。害獣威嚇処理を実行する前の害獣威嚇システムでは、害獣威嚇装置3は、給電ステーション5に電気的に接続される位置に待機しており、害獣威嚇装置3のバッテリ70と給電ステーション5とが電気的に接続されることで、充電されている。
【0044】
本実施形態の害獣威嚇処理では、最初に、害獣威嚇装置3において、赤外線センサによって生物を検知したか否かを判定する(ステップS11)。害獣威嚇装置3では、給電ステーション5において充電されている状態において、赤外線センサによって、監視可能な範囲内に検知物体がないか監視している。制御部30は、赤外線センサによる監視において、検知物体を検知していると判定すると、処理をステップS12に遷移させる(ステップS11:YES)。制御部30は、検知物体を検知していないと判定すると、赤外線センサによる検知があるまで、監視可能な範囲内を引き続き監視する(ステップS11:NO)。
【0045】
ステップS11からステップS12に遷移すると、検知した生物を識別する(ステップS12)。制御部30は、赤外線センサによって検知された検知物体に対応する生物の生物を識別する。具体的には、制御部30は、例えば、深層学習モデルを用いて、検知物体の画像から、生物の有無の確認と、生物の種類を識別する。
【0046】
次に、害獣を検知したか否かを判定する(ステップS13)。制御部30は、ステップS12における、生物の有無の確認結果と、生物の種類の識別結果から、赤外線センサによって検知された検知物体が害獣であるか否かを判定する。制御部30は、害獣を検知したと判定すると、処理をステップS14に遷移させる(ステップS13:YES)。制御部30は、害獣を検知していないと判定すると、処理をステップS12に遷移させる(ステップS13:NO)。ステップS14において、制御部30は、監視可能な範囲内での別の検知物体に対応する生物を識別する。以下、ステップS13において、害獣であると判定された検知物体を害獣100とする。
【0047】
ステップS13からステップS14に遷移すると、害獣威嚇装置3と害獣100との間の離間距離Dを計測する(ステップS14)。制御部30は、測定部20のデプスセンサを用いて、害獣威嚇装置3と、ステップS13で検知した害獣100までの離間距離Dを測定する。
【0048】
ステップS14からステップS15に遷移すると、害獣100が害獣威嚇装置3に接近しているか否かを判定する(ステップS15)。制御部30は、デプスセンサによって測定される、害獣威嚇装置3と害獣100との間の離間距離Dが所定の距離より小さいか否かによって、害獣100が接近しているか否かを判定する。本実施形態では、制御部30は、離間距離Dが領域A0を設定する距離d0より小さいか否かを判定する。制御部30は、離間距離Dが距離d0より小さく、害獣100が害獣威嚇装置3に接近していると判定すると、処理をステップS16に遷移させる(ステップS15:YES)。制御部30は、離間距離Dが距離d0以上であり、害獣100が害獣威嚇装置3に接近していないと判定すると、処理をステップS14に遷移させる(ステップS15:NO)。ステップS14では、制御部30は、離間距離Dを再度計測し、ステップS15での判定に用いる。
【0049】
次に、害獣威嚇装置3の周辺に電界を生成する(ステップS16)。制御部30は、電界生成部14のコイルへの電力の供給を開始する。これにより、害獣威嚇装置3の周辺に、電界が徐々に形成される。
【0050】
次に、害獣威嚇装置3を昇温させる(ステップS17)。制御部30は、発熱部13のヒータへの電力の供給を開始する。これにより、害獣威嚇装置3の外表面の温度が徐々に上昇する。
【0051】
図5は、害獣威嚇処理の第2のフローチャートである。次に、離間距離Dが距離d1より大きいか否かを判定する(ステップS18)。制御部30は、測定部20によって測定される離間距離Dが、距離d1より大きいか否かを判定する。制御部30は、離間距離Dが距離d1より大きいと判定すると、処理をステップS181に遷移させる(ステップS18:YES)。制御部30は、ステップS181において、発光部11によって点滅する可視光を発生させて害獣100を威嚇したのち、処理をステップS24に遷移させる。制御部30は、離間距離Dが距離d1以下であると判定すると、処理をステップS19に遷移させる(ステップS18:NO)。ステップS19では、制御部30は、害獣威嚇装置3をさらに昇温させる(ステップS19)。
【0052】
ステップS19からステップS20に遷移すると、離間距離Dが距離d1以下でありかつ距離d2より大きいか否かを判定する(ステップS20)。制御部30は、離間距離Dが距離d1以下でありかつ距離d2より大きいと判定すると、処理をステップS201に遷移させる(ステップS20:YES)。制御部30は、離間距離Dが距離d2以下であると判定すると、処理をステップS21に遷移させる(ステップS20:NO)。ステップS121は、制御部30は、害獣威嚇装置3をさらに昇温させる(ステップS21)。
【0053】
ステップS20からステップS201に遷移すると、制御部30は、通信部40を介して、害獣威嚇システムの使用者に電話をかけて連絡を行う(ステップS201)。次に、制御部30は、ステップS201での電話連絡において、システムの使用者と通話可能であるか否かを判定する(ステップS202)。具体的には、制御部30は、ステップS201での電話連絡において、使用者の電話とつながったか否かを判定する。制御部30には、例えば、害獣威嚇装置から使用者の電話へのコール回数が設定されており、所定のコール回数で使用者が出た場合には、通話可能であると判定する。制御部30は、使用者が設定されているコール回数で電話に出た場合、使用者が通話可能であると判定し、処理をステップS203に遷移させる(ステップS202:YES)。制御部30は、ステップS203において、通信部40を介して、使用者の実際の音声を音発生部12から発生させて害獣100を威嚇したのち、処理をステップS24に遷移させる。制御部30は、使用者が設定されているコール回数で電話に出なかった場合、使用者が通話不可能であると判定し、処理をステップS204に遷移させる(ステップS202:NO)。制御部30は、ステップS204において、記憶部50に記憶されている音を音発生部12から発生させて害獣100を威嚇したのち、処理をステップS24に遷移させる。
【0054】
ステップS21の次に、離間距離Dが距離d2以下でありかつ距離d3より大きいか否かを判定する(ステップS22)。制御部30は、離間距離Dが距離d2以下でありかつ距離d3より大きいと判定すると、処理をステップS221に遷移させる(ステップS22:YES)。制御部30は、離間距離Dが距離d3以下であると判定すると、処理をステップS23に遷移させる(ステップS22:NO)。
【0055】
ステップS22からステップS221に遷移すると、制御部30は、駆動部60を制御し、害獣威嚇装置3を立ち上がらせる(ステップS221)。制御部30は、害獣威嚇装置3を立ち上がらせてから、脚部3aによる足踏みや、胴体部3bのひねりなどの動作をその場で繰り返させる。さらに、ステップS221からステップS222に遷移すると、制御部30は、駆動部60を制御して、例えば、害獣100に向かうように歩行したり、後ずさりしたりするような動作をさせて、害獣威嚇装置3を移動させる。これらの害獣威嚇装置3の動作によって、害獣100は、熱と電界とを発生して立ち上がった害獣威嚇装置3を何らかの生物とみなして可能性があり、害獣100の警戒心を高めさせることができる。これにより、害獣100に対する強い威嚇効果を発揮することができる。制御部30は、処理をステップS24に遷移させる。
【0056】
ステップS22からステップS23に遷移すると、制御部30は、最終手段を発動する(ステップS23)。離間距離Dが距離d3以下である場合、害獣100は、害獣威嚇装置3に非常に接近している。そこで、制御部30は、駆動部60を制御して、害獣威嚇装置3を動作させることで、例えば、害獣100への体当たりなどの動作を行わせる。
【0057】
次に、害獣100が逃げたか否かを判定する(ステップS24)。制御部30は、測定部20によって害獣威嚇装置3と害獣100との間の離間距離Dを計測し、例えば、離間距離Dが測定不能であることで、害獣100が逃げたと判定する。制御部30は、害獣100が逃げたと判定すると、処理をステップS25に遷移させる(ステップS24:YES)。制御部30は、離間距離Dが計測可能であり、害獣100が逃げていないと判定すると、処理をステップS15に遷移させる(ステップS24:NO)。ステップS15に遷移すると、制御部30は、威嚇対象の害獣100が害獣威嚇装置3に接近しているか否かを再度判定する(ステップS15)。
【0058】
ステップS24からステップS25に遷移すると、制御部30は、害獣威嚇装置3を給電ステーション5に帰投させる(ステップS25)。これにより、害獣威嚇装置3が給電ステーション5から離れて移動していた場合、給電ステーション5に戻り、バッテリ70の充電を行う。その後、害獣威嚇処理は、ステップS11に戻って待機状態となり、赤外線センサによって生物を検知したか否かを判定する(ステップS11)。
【0059】
以上説明した、本実施形態の害獣威嚇装置3によれば、害獣100を威嚇するための威嚇手段を発生させる発生部10は、複数種類の威嚇手段を発生させる。制御部30は、測定部20によって測定される害獣威嚇装置3から害獣100までの離間距離Dに応じて、発生部10から発生させる威嚇手段を変更する。このように、害獣威嚇装置3は、害獣威嚇装置3から害獣100までの離間距離に応じて、複数種類の威嚇手段を使い分けることで、害獣100の威嚇手段に対する慣れを抑制することができる。また、害獣威嚇装置3は、地上を自律的に移動可能な移動体として構成されており、例えば、飛行する移動体に比べ、比較的長時間移動することができる。これにより、害獣威嚇装置3は、比較的長時間にわたって連続して害獣100への威嚇を続けることができる。したがって、害獣100に対する威嚇効果を長時間にわたって維持することができる。
【0060】
また、本実施形態の害獣威嚇装置3によれば、害獣威嚇装置3は、外部の装置101と通信するための通信部40を備えており、インターネット上の音源や、害獣威嚇システム1の使用者のリアルタイムの声などを取得する。制御部30は、害獣100を威嚇するとき、威嚇手段としての音として利用する音情報を、記憶部50に記憶された音情報と、外部の装置101からリアルタイムに取得した音情報とのいずれかから選択することができる。これにより、制御部30は、威嚇手段としての音の種類を増やすことができるため、害獣100の威嚇手段に対する慣れをさらに抑制することができる。したがって、害獣100に対する威嚇効果をさらに長時間にわたって維持することができる。
【0061】
また、本実施形態の害獣威嚇装置3によれば、害獣威嚇装置3は、離間距離Dが距離d1以上の場合、遠方まで届きやすい光を威嚇手段として用いて、害獣100を威嚇する。害獣威嚇装置3は、離間距離Dが距離d1より小さい場合、害獣100が自身の後方から発せられても気づきやすい音を威嚇手段として用いて、害獣100を威嚇する。このように、光と音とをそれぞれの特性に合わせて使い分けることで、比較的遠方の害獣100に対しても、害獣威嚇装置3の方向を向いていない害獣100に対しても、威嚇することができる。これにより、害獣100に対する威嚇を、広範囲でかつ効率的に行うことができる。
【0062】
また、本実施形態の害獣威嚇装置3によれば、制御部30は、離間距離Dが小さくなるにつれて、音の音量を大きくする。これにより、害獣100は、発生部10から発生させる音に気付きやすくなる。さらに、害獣100は、音を発生させるなにかが近づいてくるように感じるため、害獣100の警戒心を高めさせることができる。これにより、害獣100に対する威嚇効果を大きくすることができる。
【0063】
また、本実施形態の害獣威嚇装置3によれば、発生部10から発生させた光は点滅しているため、害獣威嚇装置3の方向を向いていない害獣が光に気づきやすくなる。これにより、害獣100に対する威嚇を効率的に行うことができる。
【0064】
また、本実施形態の害獣威嚇装置3によれば、離間距離Dが距離d2より小さい場合、発生部10は、威嚇手段としての熱と電界を発生させる。これにより、害獣威嚇装置3は、光や音とは異なる別の威嚇手段によって害獣100を威嚇することができるため、害獣100に対する威嚇効果をさらに大きくすることができる。したがって、害獣100の威嚇手段に対する慣れをさらに抑制することができるため、害獣に対する威嚇効果をさらに長時間にわたって維持することができる。
【0065】
また、本実施形態の害獣威嚇装置3によれば、制御部30は、離間距離Dが小さくなるにつれて、熱の熱量を大きくする。これにより、害獣100は、発生部10から発生させる熱に気付きやすくなる。さらに、害獣100は、熱を発生させるなにかが近づいてくるように感じるため、害獣100の警戒心を高めさせることができる。これにより、害獣100に対する威嚇効果を大きくすることができる。
【0066】
また、本実施形態の害獣威嚇装置3によれば、制御部30は、離間距離Dが距離d2より小さい場合、駆動部60によって害獣威嚇装置3を動作させる。これにより、熱と電界とを発生する移動体が動作することとなり、害獣100は、害獣威嚇装置3を生物として認識しやすくなるため、害獣100の警戒心を高めさせることができる。したがって、害獣100に対する威嚇効果をさらに大きくすることができる。
【0067】
<本実施形態の変形例>
本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0068】
[変形例1]
上述の実施形態では、害獣威嚇装置3は、多足歩行ロボットであるとしたが、これに限定されない。害獣威嚇装置3は、長時間駆動可能とするために地上を移動可能な移動体、例えば、無限軌道や車輪を利用した車両形式の移動体であってもよい。多足歩行ロボットとすることで、威嚇対象の害獣が得体のしれない生物と錯覚する可能があり、害獣の警戒心を高めさせることができるため、威嚇効果を大きくすることができる。
【0069】
[変形例2]
上述の実施形態では、害獣威嚇装置3は、赤外線センサで識別し、デプスセンサによって害獣威嚇装置3と威嚇対象の害獣100との間の離間距離Dを測定するとした。害獣の識別方法と離間距離Dの測定方法は、これらに限定されない。ステレオカメラによって、害獣威嚇装置3の周囲を撮像し、撮像によって得られた画像より、威嚇対象の害獣を識別し、該害獣までの離間距離Dを測定してもよい。
【0070】
[変形例3]
上述の実施形態では、発生部10が発生させる威嚇手段は、光、音、熱、および、電界であるとした。威嚇手段は、これらに限定されず、においや、放電、物体の射出などであってもよい。また、害獣威嚇装置3は、これらの威嚇手段のうち、複数の威嚇手段を組み合わせて害獣を威嚇してもよい。例えば、距離d1と距離d2との間の範囲において、光と音を併用してもよい。
【0071】
[変形例4]
上述の実施形態では、害獣威嚇装置3は、害獣威嚇装置3の周辺に電界を生成する電界生成部14を備えるとした。しかしながら、バッテリ70で駆動する害獣威嚇装置3は、電気回路に電気が流れることで電界を生成されるため、電界生成部14は、なくてもよい。
【0072】
[変形例5]
上述の実施形態では、害獣威嚇装置3と害獣100との間の離間距離Dが小さくなるにつれて、音発生部12から発生させる音の音量を大きくするとした。音量は一定であってもよい。また、害獣威嚇装置3と害獣100との間の離間距離Dに応じて、音の周波数を変化させてもよい。
【0073】
[変形例6]
上述の実施形態では、害獣威嚇装置3と害獣100との間の離間距離Dが小さくなるにつれて、発熱部13から発生させる熱の熱量を大きくするとした。これらは、一定であってもよい。また、害獣威嚇装置3と害獣100との間の離間距離Dが小さくなるにつれて、発光部11から発生させる光の光量を大きくしてもよいし、電界の強さを強くしてもよい。
【0074】
[変形例7]
上述の実施形態では、害獣威嚇装置3は、威嚇手段としての光や音を発生させるとき、移動しないとした。しかしながら、害獣威嚇装置3は、移動しながら、音や光を発生させてもよい。この場合、害獣威嚇装置3は、有線ケーブルによって給電ステーション5と電気的に接続することで給電ステーション5から常時給電される状態で移動してもよいし、バッテリ70の電力によって移動してもよい。
【0075】
[変形例8]
上述の実施形態では、制御部30や記憶部50などは、害獣威嚇装置3に搭載されるとした。これらの構成は、害獣威嚇装置3とは別に設けられてもよい。例えば、制御部30と記憶部50は、害獣威嚇システム1の使用者の手元に別の装置として設置し、通信部40を用いて、害獣威嚇装置3の制御内容や、音発生部12に発生させる音として利用する音情報を、害獣威嚇装置3に送信してもよい。
【0076】
以上、実施形態、変形例に基づき本態様について説明してきたが、上記した態様の実施の形態は、本態様の理解を容易にするためのものであり、本態様を限定するものではない。本態様は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本態様にはその等価物が含まれる。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することができる。
【符号の説明】
【0077】
1…害獣威嚇システム
3…害獣威嚇装置
10…発生部
11…発光部
12…音発生部
13…発熱部
14…電界生成部
20…測定部
30…制御部
40…通信部
50…記憶部
60…駆動部
70…バッテリ
100…害獣
101…外部装置
d1…距離
d2…距離