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特開2022-181514車両の運転制御装置、車両の運転制御方法、車両の運転システム、および車両
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022181514
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】車両の運転制御装置、車両の運転制御方法、車両の運転システム、および車両
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/18 20120101AFI20221201BHJP
   G08G 1/00 20060101ALI20221201BHJP
   B60W 60/00 20200101ALI20221201BHJP
   B60P 7/06 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
B60W30/18
G08G1/00 X
B60W60/00
B60P7/06 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021088506
(22)【出願日】2021-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】金島 義治
(72)【発明者】
【氏名】関谷 眞
(72)【発明者】
【氏名】曽根原 光治
(72)【発明者】
【氏名】神谷 陽介
(72)【発明者】
【氏名】森 幹洋
(72)【発明者】
【氏名】野村 光一
(72)【発明者】
【氏名】大石 典生
【テーマコード(参考)】
3D241
5H181
【Fターム(参考)】
3D241BA10
3D241CA15
3D241CA18
3D241CC01
3D241CC08
3D241CD12
3D241CD15
3D241DB02Z
3D241DB05Z
3D241DB46Z
3D241DB48Z
5H181AA07
5H181AA27
5H181CC03
5H181CC14
5H181FF27
5H181LL09
(57)【要約】
【課題】車両への荷物の積載状態を精度よく監視することで、荷崩れを防止して安全に搬送するための運転制御を行うことが可能な、車両の運転制御装置、車両の運転制御方法、車両の運転システム、および車両を提供する。
【解決手段】車両の重量の重心位置情報を記憶する車両情報記憶部212と、車両に積載された複数の積載物それぞれについて、積載位置情報を取得する積載物毎位置取得部222と、複数の積載物それぞれについて、所定の基準位置からのずれ量を積載物毎ずれ量として算出する積載物毎ずれ量算出部223と、複数の積載物および車両全体の重心位置と、車両の重心位置との距離を全体ずれ量として算出する全体ずれ量算出部224と、積載物毎ずれ量算出部で算出された積載物毎ずれ量および全体ずれ量算出部で算出された全体ずれ量に基づいて、車両の運転を制御する運転制御部31とを備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の重量の重心位置情報を記憶する車両情報記憶部と、
前記車両に積載された複数の積載物それぞれについて、積載位置情報を取得する積載物毎位置取得部と、
前記積載物毎位置取得部で取得された情報に基づいて、前記複数の積載物それぞれについて、所定の基準位置からのずれ量を積載物毎ずれ量として算出する積載物毎ずれ量算出部と、
前記複数の積載物および前記車両全体の重心位置と、前記車両の重心位置との距離を全体ずれ量として算出する全体ずれ量算出部と、
前記積載物毎ずれ量算出部で算出された積載物毎ずれ量および前記全体ずれ量算出部で算出された全体ずれ量に基づいて、前記車両の運転を制御する運転制御部と、を備えた車両の運転制御装置。
【請求項2】
前記積載物毎ずれ量算出部は、前記積載物毎ずれ量の算出に用いる基準位置として、予め設定された前記車両における積載物の積載基準位置または隣接する積載物の積載物位置情報を用いる、請求項1に記載の車両の運転制御装置。
【請求項3】
前記積載物毎ずれ量算出部は、前記積載物毎ずれ量の算出に用いる基準位置として、予め設定された複数の積載基準位置のうちの1つを用いる、請求項1または2に記載の車両の運転制御装置。
【請求項4】
前記運転制御部は、前記積載物毎ずれ量として、前記積載物毎ずれ量算出部で算出された各積載物の積載物毎ずれ量の積算値または最大値を用いる、請求項1~3いずれか1項に記載の車両の運転制御装置。
【請求項5】
前記積載物毎位置取得部は、前記車両の所定位置に設置された測距センサで計測された積載物までの距離情報に基づいて算出された各積載物の積載位置情報を取得する、請求項1~4いずれか1項に記載の車両の運転制御装置。
【請求項6】
前記運転制御部は、前記積載物毎ずれ量に関して設定された第1許容値および当該第1許容値よりも大きい第2許容値と、前記全体ずれ量に関して設定された第1許容値および当該第1許容値よりも大きい第2許容値とを保持し、前記積載物毎ずれ量と全体ずれ量との少なくともいずれかが、該当する第1許容値以上であり該当する第2許容値未満であれば、前記車両の最大加減速度設定値を低減させて運転を継続し、積載物毎ずれ量と全体ずれ量との少なくともいずれかが、該当する第2許容値以上であれば、前記車両の運転を停止させる、請求項1~5いずれか1項に記載の車両の運転制御装置。
【請求項7】
前記積載物毎ずれ量に関して設定された第1許容値、および前記全体ずれ量に関して設定された第1許容値は、異なる値でそれぞれ複数個設定され、
前記運転制御部は、前記積載物毎ずれ量または前記全体ずれ量の大きさによって、前記車両の運転を段階的に変更するように制御する、請求項6に記載の車両の運転制御装置。
【請求項8】
前記車両は、運転室が設けられた牽引車両により牽引される分離型搬送車両の被牽引車両、または、運転室と一体に構成された搬送車両で構成される、請求項1~7いずれか1項に記載の車両の運転制御装置。
【請求項9】
前記車両は自動運転機構を有し、
前記運転制御部は、前記自動運転機構を制御することで前記車両の運転を制御する、請求項1~8いずれか1項に記載の車両の運転制御装置。
【請求項10】
前記運転制御部は、人間の運転操作に基づいて前記車両の運転を制御する、請求項1~8いずれか1項に記載の車両の運転制御装置。
【請求項11】
車両の重量の重心位置情報を記憶する車両情報記憶ステップと、
前記車両に積載された複数の積載物それぞれについて、積載位置情報を取得する搬送物毎位置取得ステップと、
前記搬送物毎位置取得ステップで取得された情報に基づいて、前記複数の積載物それぞれについて、所定の基準位置からのずれ量を積載物毎ずれ量として算出する積載物毎ずれ量算出ステップと、
前記複数の積載物および前記車両全体の重心位置と、前記車両の重心位置との距離を全体ずれ量として算出する全体ずれ量算出ステップと、
前記積載物毎ずれ量算出ステップで算出された積載物毎ずれ量および前記全体ずれ量算出ステップで算出された全体ずれ量に基づいて、前記車両の運転を制御する運転制御ステップと、を有する車両の運転制御方法。
【請求項12】
請求項1~10いずれか1項に記載の車両の運転制御装置と、
前記車両に設置され、前記積載物毎位置取得部に前記積載位置情報を提供する積載物毎位置検知手段と、を備えた車両の運転システム。
【請求項13】
請求項1~10いずれか1項に記載の運転制御装置を備え、前記運転制御装置により運転が制御される車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両の運転制御装置、車両の運転制御方法、車両の運転システム、および車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、製鉄所内で板状の鉄鋼素材や製品等を搬送する際には、これらの搬送物を分離型搬送車両に積載して実施している。分離型搬送車両とは、運転室が設けられている牽引車両(トレーラヘッドまたはトラクタと称される)と、この牽引車両により牽引される被牽引車両(台車と称される)とが、連結機構によって連結された搬送車両(トレーラと称される)である。鉄鋼素材や製品は高比重且つ高重量であり搬送作業には注意が必要であるが、搬送車両で搬送する際には速度制約を設けることで、これらの板状の搬送物を無固縛の状態で搬送車両に平積みで積載している。
【0003】
搬送車両は、操舵(および駆動)輪が牽引車両に設けられ、車両内で最も後方の追従輪は被牽引車両に設けられているため、操舵輪と追従輪との距離が一般車両よりも長く、内輪差が大きい。また、被牽引車両は多くの荷物を積載可能に構成されることが多いが、積載物の重量が大きくなると、加減速時や制動時における運転への影響も大きくなる。特に、被牽引車両に高比重且つ高重量の荷物が積載された場合、積載物に小さな偏心やばらつきが生じても、車両の加減速時や制動時における追従精度への影響が大きくなり、所定の道路幅での走行が困難になる場合もある。
【0004】
牽引車両の操舵および駆動においては、通常、運転手が長年の経験により積載物の小さな偏心量やばらつきを吸収または狭小化させるように操作しているが、時としてその操作を見誤る場合もある。操舵および駆動の操作を誤った場合、積載物同士がずれる荷ずれが発生する場合がある。
【0005】
積載物の荷ずれを防止するために搬送車両の加減速度を制限して走行しても、操舵および駆動の誤差、路面の傾斜や凹凸の有無、降雨状態、車両の振動、鋼材の個体差の影響等から、積載物である鋼材間に発生する摩擦力を超えて荷ずれが発生する可能性がある。これに対応するために摩擦力に対して車両の加減速度の制限値を常に十分に低い値に設定すると、加減速時間が増加し、所定設備の構内などの比較的短い道路が多い箇所では十分な運用速度を確保できず、結果として搬送時間が増加するというデメリットが発生する。
【0006】
また、積載物の荷ずれの防止策として、特許文献1に記載されているように積載物をロープで固縛する方法があるが、平積みされた板状の鋼材を搬送する牽引車両は、台車が高床で直接固縛作業ができない形状である場合がある。その場合には、安全対策として固縛作業床を設置する必要があり、作業性が劣ってしまう。また、積載物が高温でありロープ等の固縛治具の耐熱温度を超過している場合、治具が破損する可能性があるとともに、作業員が熱傷を負う危険性がある。これらの要因により、鋼材を搬送する場合には無固縛で台車に積載することが多い。
【0007】
また、特許文献1には、超音波センサを用いて積載物の形状を検出することで荷崩れを監視し、荷崩れを検知すると警報する技術が記載されている。また、特許文献2には、車両の運転中に、車両に設置された重量センサによる計測結果に基づいて積載物の重量の偏りを監視し、監視結果に基づいて運転を制御する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10-315843号公報
【特許文献2】特開2019-171971号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述した特許文献1に開示された技術を用いて積載物の荷崩れを監視する場合、積載物が高温であると当該積載物周囲の空気にゆらぎが生じ、超音波センサにより正確な情報を取得することができない場合がある。
【0010】
また、特許文献2に開示された技術は、大きな単一の積載物の偏りを監視する場合には有効であるが、複数の搬送物を平積み状態で積載した場合には、その積載物の偏りを精度良く検出することが困難になる。例えば、複数の板状の鋼材のうち一部の鋼材が車両の前方にずれ、他の鋼材が車両の後方にずれた場合、これらのずれにより荷崩れが起こる可能性が高いにも関わらず、積載物全体としては前後でバランスがとれて偏りが検出されない場合がある。また、車両に設置された重量センサによる計測においては、外乱として路面の傾斜や凹凸などの影響が加味され、計測精度が低下する場合がある。
【0011】
本開示は上記事情に鑑みてなされたものであり、車両への荷物の積載状態を精度よく監視することで、荷崩れを防止して安全に搬送するための運転制御を行うことが可能な、車両の運転制御装置、車両の運転制御方法、車両の運転システム、および車両の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本開示に係る車両の運転制御装置は、車両の重量の重心位置情報を記憶する車両情報記憶部と、前記車両に積載された複数の積載物それぞれについて、積載位置情報を取得する積載物毎位置取得部と、前記積載物毎位置取得部で取得された情報に基づいて、前記複数の積載物それぞれについて、所定の基準位置からのずれ量を積載物毎ずれ量として算出する積載物毎ずれ量算出部と、前記複数の積載物および前記車両全体の重心位置と、前記車両の重心位置との距離を全体ずれ量として算出する全体ずれ量算出部と、前記積載物毎ずれ量算出部で算出された積載物毎ずれ量および前記全体ずれ量算出部で算出された全体ずれ量に基づいて、前記車両の運転を制御する運転制御部とを備える。
【0013】
前記積載物毎ずれ量算出部は、前記積載物毎ずれ量の算出に用いる基準位置として、予め設定された前記車両における積載物の積載基準位置または隣接する積載物の積載物位置情報を用いてもよい。
【0014】
また前記積載物毎ずれ量算出部は、前記積載物毎ずれ量の算出に用いる基準位置として、予め設定された複数の積載基準位置のうちの1つを用いてもよい。
【0015】
また前記運転制御部は、前記積載物毎ずれ量として、前記積載物毎ずれ量算出部で算出された各積載物の積載物毎ずれ量の積算値または最大値を用いてもよい。
【0016】
また前記積載物毎位置取得部は、前記車両の所定位置に設置された測距センサで計測された積載物までの距離情報に基づいて算出された各積載物の積載位置情報を取得するようにしてもよい。
【0017】
また前記運転制御部は、前記積載物毎ずれ量に関して設定された第1許容値および当該第1許容値よりも大きい第2許容値と、前記全体ずれ量に関して設定された第1許容値および当該第1許容値よりも大きい第2許容値とを保持し、前記積載物毎ずれ量と全体ずれ量との少なくともいずれかが、該当する第1許容値以上であり該当する第2許容値未満であれば、前記車両の最大加減速度設定値を低減させて運転を継続し、積載物毎ずれ量と全体ずれ量との少なくともいずれかが、該当する第2許容値以上であれば、前記車両の運転を停止させるようにしてもよい。
【0018】
前記積載物毎ずれ量に関して設定された第1許容値、および前記全体ずれ量に関して設定された第1許容値は、異なる値でそれぞれ複数個設定され、前記運転制御部は、前記積載物毎ずれ量または前記全体ずれ量の大きさによって、前記車両の運転を段階的に変更するように制御するようにしてもよい。
【0019】
前記車両は、運転室が設けられた牽引車両により牽引される分離型搬送車両の被牽引車両、または、運転室と一体に構成された搬送車両で構成されてもよい。
【0020】
また前記車両は自動運転機構を有し、前記運転制御部は、前記自動運転機構を制御することで前記車両の運転を制御してもよい。
【0021】
また運転制御部は、人間の運転操作に基づいて前記車両の運転を制御してもよい。
【0022】
また本開示に係る車両の運転制御方法は、車両の重量の重心位置情報を記憶する車両情報記憶ステップと、前記車両に積載された複数の積載物それぞれについて、積載位置情報を取得する搬送物毎位置取得ステップと、前記搬送物毎位置取得ステップで取得された情報に基づいて、前記複数の積載物それぞれについて、所定の基準位置からのずれ量を積載物毎ずれ量として算出する積載物毎ずれ量算出ステップと、前記複数の積載物および前記車両全体の重心位置と、前記車両の重心位置との距離を全体ずれ量として算出する全体ずれ量算出ステップと、前記積載物毎ずれ量算出ステップで算出された積載物毎ずれ量および前記全体ずれ量算出ステップで算出された全体ずれ量に基づいて、前記車両の運転を制御する運転制御ステップとを有する。
【0023】
また本開示に係る車両の運転システムは、上記いずれかの車両の運転制御装置と、前記車両に設置され、前記積載物毎位置取得部に前記積載位置情報を提供する積載物毎位置検知手段とを備える。
【0024】
また本開示に係る車両は、上記いずれかの車両の運転制御装置を備え、前記運転制御装置により運転が制御される。
【発明の効果】
【0025】
本開示の車両の運転制御装置、車両の運転制御方法、車両の運転システム、および車両によれば、車両への荷物の積載状態を精度よく監視することで、荷崩れを防止して安全に搬送するための運転制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】(a)は、第1実施形態に係る運転制御装置を用いた運転システムを搭載した搬送車両を上から見た図であり、(b)は、当該搬送車両を左側から見た側面図である。
図2】第1実施形態に係る運転システムの構成を示すブロック図である。
図3】第1実施形態に係る運転制御装置の動作を示すフローチャートである。
図4】(a)は、第1実施形態に係る運転制御装置で実行される各鋼材の積載位置情報および鋼材毎ずれ量の算出処理例(1)で用いる搬送車両の台車に検知センサが設置された状態を上から見た図であり、(b)は、当該搬送車両1を左側から見た側面図である。
図5】(a)は、第1実施形態に係る運転制御装置で実行される各鋼材の積載位置情報および鋼材毎ずれ量の算出処理例(1)で用いる搬送車両に設置された検知センサ(2次元レーザスキャナ)から各鋼材にレーザ光を照射した状態を横から見た図であり、(b)は、2次元レーザスキャナで計測された情報に基づいて算出した鋼材の積載位置情報を示す図である。
図6】第1実施形態に係る運転制御装置で実行される各鋼材の積載位置情報および鋼材毎ずれ量の算出処理例(1)で用いる搬送車両に設置された検知センサ(1次元レーザ変位センサアレイ)から各鋼材にレーザ光を照射した状態を横から見た図である。
図7】第1実施形態に係る運転制御装置で実行される各鋼材の積載位置情報および鋼材毎ずれ量の算出処理例(2)で用いる検知センサで計測された情報に基づいて算出した鋼材の積載位置情報を示す図である。
図8】(a)は、第1実施形態に係る運転制御装置で実行される各鋼材の積載位置情報および鋼材毎ずれ量の算出処理例(3)で用いる搬送車両の台車に検知センサ(3次元光学式測距センサ)が設置された状態を上から見た図であり、(b)は、当該搬送車両1を左側から見た側面図である。
図9】第1実施形態に係る運転制御装置で実行される各鋼材の積載位置情報および鋼材毎ずれ量の算出処理例(3)で用いる検知センサで計測された情報に基づいて算出した鋼材の積載位置情報を示す図である。
図10】第2実施形態に係る運転制御装置および検知センサ(2次元レーザスキャナ)を用いた運転システムを搭載した搬送車両を上から見た図であり、(b)は、当該搬送車両を左側から見た側面図である。
図11】第2実施形態に係る運転制御装置および検知センサ(3次元光学式測距センサ)を用いた運転システムを搭載した搬送車両を上から見た図であり、(b)は、当該搬送車両を左側から見た側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、製鉄所等の構内で、自動運転機能を有するエンジン車両または電動車両の搬送車両が、板状の複数の鋼材を積載物として積載して搬送する際に、当該搬送車両の運転制御を行う運転制御装置の例示的な実施形態について、図面を参照して説明する。
【0028】
《第1実施形態》
〈第1実施形態による搬送車両の運転制御装置を用いた運転システムの構成〉
第1実施形態による搬送車両の運転制御装置を用いた運転システム100の構成について、図1および図2を参照して説明する。図1(a)は、運転システム100を搭載した搬送車両1を上から見た図であり、(b)は当該搬送車両1を左側面から見た図である。図2は、運転システム100の構成を示すブロック図である。
【0029】
本実施形態において、搬送車両1は分離型搬送車両で構成されている。搬送車両1は、運転室が設けられている牽引車両2(トレーラヘッドまたはトラクタと称される)と、この牽引車両2により牽引される被牽引車両3(台車と称される)とが、連結機構によって連結された牽引車両(トレーラーと称される)である。搬送対象の複数の鋼材A1、A2、A3、A4は、台車3に平積みで積載される。
【0030】
本実施形態による運転システム100は、搬送車両1の台車3に設置されたn個の検知センサ10-1~10-n(図1では図示せず、ここでnは1以上の整数)と、運転制御装置としてのずれ量算出装置20および車両制御装置30とを備える。車両制御装置30は、搬送車両1の自動運転機構40に通信接続されている。検知センサ10-1~10-nの数は、1または複数から積載物の形状、積載物の大きさ、積載物の配置等から適宜決めることができる。また、検知センサ10-1~10-nの位置も同様に積載物の形状、積載物の大きさ、積載物の配置等から適宜決めることができる。検知センサ10-1~10-nの数および設置位置の例については、後述する。
【0031】
積載物毎位置検知手段としての検知センサ10-1~10-nは、例えば2次元測距センサや3次元測距センサで構成され、それぞれ自検知センサに対する各鋼材A1、A2、A3、A4の相対的な位置を検知する。検知センサ10-1~10-nは例えば、無線通信機能を有し、検知した情報をずれ量算出装置20に無線送信することで提供する。このとき、検知センサ10-1~10-nは、無線通信に限らず、有線通信で検知した情報をずれ量算出装置20に送信し提供しても良い。
【0032】
ずれ量算出装置20は、記憶部21と、制御部22とを有する。記憶部21は、センサ情報記憶部211と、車両情報記憶部212と、積載物情報記憶部213とを有する。センサ情報記憶部211は、検知センサ10-1~10-nの設置位置情報および計測方向情報を予め記憶する。車両情報記憶部212は、搬送車両1内の積載物を積載する台車3の重量情報、台車3の重量の重心位置情報、および台車3上における積載物の積載位置の基準とする積載基準位置の情報を予め記憶する。積載物情報記憶部213は、積載物である各鋼材の重量情報および、必要に応じて形状情報を予め記憶する。
【0033】
制御部22は、検知情報取得部221と、積載物毎位置取得部としての鋼材毎位置算出部222と、積載物毎ずれ量算出部としての鋼材毎ずれ量算出部223と、全体ずれ量算出部224とを有する。検知情報取得部221は、検知センサ10-1~10-nで検知された情報を例えば、無線通信により取得する。検知情報取得部221は、検知センサ10-1~10-nで検知された情報を有線通信により取得しても良い。鋼材毎位置算出部222は、検知情報取得部221で取得された情報と、センサ情報記憶部211に記憶された情報とに基づいて、各鋼材の積載位置情報を算出する。
【0034】
鋼材毎ずれ量算出部223は、鋼材毎位置算出部222で取得された情報と、車両情報記憶部212に記憶された情報とに基づいて、積載物毎ずれ量として、各鋼材の重心位置のずれ量および積載角度のずれ量を算出する。
【0035】
全体ずれ量算出部224は、鋼材毎ずれ量算出部223で算出された情報に基づいて、各鋼材の重心位置のずれ量を積算した重心ずれ量積算値、および各鋼材の積載角度のずれ量を積算した角度ずれ量積算値を算出する。また全体ずれ量算出部224は、鋼材毎ずれ量算出部223で算出された情報と、車両情報記憶部212に記憶された情報と、積載物情報記憶部213に記憶された情報とに基づいて、全鋼材および台車3全体の重量の重心位置を算出する。そして全体ずれ量算出部224は、算出した全鋼材および台車3を合わせた重量の重心位置と、予め設定された台車3の重心位置との距離(ずれ量)を、全体ずれ量として算出する。本実施形態のように搬送車両1が分離型搬送車両である場合には、全体ずれ量を算出する際の基準を、鋼材が積載されている台車3の重心位置とすることで、鋼材が全体として安定して車両に積載されているか否かを適切に判断することができる。
【0036】
車両制御装置30は、運転制御部31を有する。運転制御部31は、搬送車両1の最大加減速度設定値の初期値および最大速度設定値の初期値を予め保持し、これに基づいて自動運転機構40を制御する。また運転制御部31は、全体ずれ量算出部224で算出された重心ずれ量積算値、角度ずれ量積算値、および全体ずれ量に基づいて、搬送車両1の最大加減速度設定値および最大速度設定値を変更する。自動運転機構40は、搬送車両1を自動運転するための機構である。
【0037】
〈第1実施形態による搬送車両の運転制御装置を用いた運転システムの動作〉
本実施形態による運転システム100の動作として、図1(a)、(b)に示すように台車3上の1箇所に、長方形の4枚の鋼材A1、A2、A3、A4を平積み且つ無固縛で積載して搬送車両1が搬送する場合に実行される処理について説明する。鋼材A1、A2、A3、A4の形状や大きさは、同一であっても異なっていてもよい。本実施形態においては、鋼材A1、A2、A3、A4はすべて板状の長方形であり、大きさが若干異なる。図1(a)では、平積みされた鋼材A1、A2、A3、A4のうち、最上部の鋼材A1のみを示している。
【0038】
本実施形態において、ずれ量算出装置20の記憶部21の車両情報記憶部212には、図1(a)に示す台車3の重量の重心位置である台車重心Bを示す情報、および位置合わせ基準点Cを示す情報が予め記憶されている。位置合わせ基準点Cは、台車3上に当該積載物を安定した状態で積載するための指標として予め設定された情報である。
【0039】
これらの台車重心Bおよび位置合わせ基準点Cは例えば、台車3の上面の所定位置、例えば図1(a)に示すように上から見た搬送車両1において左前角を基準点P0とし、台車3の前後方向をx軸とし、左右方向をy軸としたときの座標値で示される。本実施形態では台車3上における積載物の積載箇所が1箇所である場合を想定し、位置合わせ基準点Cは、台車重心Bと同じ座標位置の1箇所が設定されている。
【0040】
積載物の所定位置(例えば重量の重心位置)を位置合わせ基準点Cに合わせ、長軸方向をx軸方向に合わせ、短軸方向をy軸方向に合わせた位置(積載基準位置)に積載することで、当該積載物を台車3上に安定した状態で積載することができる。各鋼材A1、A2、A3、A4の積載基準位置をそれぞれ、D1、D2、D3、D4とする。図1(a)では、平積みされた鋼材の積載基準位置D1、D2、D3、D4のうち、最上部の鋼材A1に対する積載基準位置D1のみを示している。
【0041】
まず、鋼材A1、A2、A3、A4を、図1(a)、(b)に示すように、それぞれの積載基準位置D1、D2、D3、D4になるべく合わせて台車3上に積載する。具体的には、鋼材A1、A2、A3、A4それぞれの重量の重心位置を位置合わせ基準点Cになるべく合わせ、長軸方向の2辺をx軸方向になるべく合わせ、短軸方向の2辺をy軸方向になるべく合わせて、台車3に積載する。鋼材A1、A2、A3、A4は密度が均一(均質)な板状で形成されているため、表面面積の重心が重量の重心として用いられる。
【0042】
鋼材A1、A2、A3、A4が台車3に積載されると、運転制御部31が自動運転機構40を制御し、搬送車両1の自動運転を開始する。搬送車両1の自動運転が開始されると、検知センサ10-1~10-nそれぞれが、自検知センサに対する各鋼材A1、A2、A3、A4端部の相対的な位置を所定時間間隔で検知する。搬送車両1の自動運転が開始されたときに、ずれ量算出装置20および車両制御装置30が実行する処理について、図3のフローチャートを参照して説明する。
【0043】
まず、ずれ量算出装置20の検知情報取得部221が、所定時間間隔で検知センサ10-1~10-nから最新の検知情報を取得する(S1)。そして、取得した検知情報に基づいて鋼材毎位置算出部222が、台車3上における各鋼材A1、A2、A3、A4の積載位置情報E1、E2、E3、E4を算出する(S2)。
【0044】
そして、算出した積載位置情報E1、E2、E3、E4に基づいて、鋼材毎ずれ量算出部223が、各鋼材A1、A2、A3、A4について、積載基準位置D1、D2、D3、D4からのずれ量を積載物毎ずれ量として算出する(S3)。各鋼材A1、A2、A3、A4の積載物毎ずれ量は、具体的には、重心位置のずれ量および積載角度のずれ量である。
【0045】
検知センサ10-1~10-nで検知された情報に基づいて、鋼材毎位置算出部222が各鋼材の積載位置情報を算出し、鋼材毎ずれ量算出部223が各鋼材の積載物毎ずれ量を算出する際の算出処理例(1)~(3)について、以下に説明する。
【0046】
[各鋼材A1、A2、A3、A4の積載位置情報および鋼材毎ずれ量の算出処理例(1)]
算出処理例(1)について、図4~6を参照して説明する。図4(a)は、搬送車両1の台車3に検知センサ10-1~10-5が設置された状態を上から見た図であり、図4(b)は、搬送車両1の左側から見た側面図である。本算出処理例(1)では、ずれ量算出装置20は、図4(a)、(b)に示すように台車3に設置された5個の検知センサ10-1~10-5から、各鋼材A1、A2、A3、A4に関する検知情報を取得する。
【0047】
検知センサ10-1と10-2は、台車3の左端部の異なる位置に設置され、検知センサ10-3は、台車3の前方に設置され、検知センサ10-4は台車3の右端部に設置され、検知センサ10-5は、台車3の後方に設置されている。本算出処理例(1)においては、検知センサ10-1~10-5は2次元測距センサとして例えば、それぞれ2次元レーザスキャナ(2次元LiDAR)で構成され、図5(a)に一点鎖線F1~F2で示すように、各設置位置G1~G5から鋼材A1、A2、A3、A4の方向にレーザ光を照射する。
【0048】
検知センサ10-1~10-5はそれぞれ、各鋼材の端部H1、H2、H3、H4を検出し、台車3の上面(xy平面)と水平な平面における、自検知センサの設置位置G1~G5から各端部H1、H2、H3、H4までの距離データを取得する。このように2次元レーザスキャナで構成された検知センサ10-1~10-5によれば、台車3に積載されている複数の鋼材の板厚がそれぞれ異なる場合であっても、各検知センサの設置位置G1~G5から各鋼材までの距離データを精度良く取得することができる。
【0049】
そして、検知センサ10-1~10-5は、取得した距離データを、検知情報としてずれ量算出装置20に送信する。
【0050】
ずれ量算出装置20は、検知センサ10-1~10-5から送信された検知情報を検知情報取得部221が取得し、鋼材毎位置算出部222に送出する。鋼材毎位置算出部222は、取得した検知情報に基づいて、各検知センサの設置位置G1~G5から各鋼材までの水平距離J1、J2、J3、J4を算出する。鋼材毎位置算出部222は、算出した水平距離J1、J2、J3、J4を、各検知センサ10-1~10-5に対する各鋼材A1、A2、A3、A4の相対的な位置情報として取得する。鋼材毎位置算出部222は、取得した水平距離J1、J2、J3、J4と、センサ情報記憶部211に記憶された情報とに基づいて、各鋼材A1、A2、A3、A4の積載位置情報E1、E2、E3、E4を算出する。
【0051】
鋼材毎位置算出部222が各鋼材A1の積載位置情報E1を算出する処理について、図5(b)を参照して説明する。まず鋼材毎位置算出部222は、検知センサ10-1で検知された水平距離J1と、検知センサ10-1の設置位置情報および計測方向情報とに基づいて、鋼材A1の端部の一点である点K1の位置情報として、xy平面上の座標値を算出する。同様にして、鋼材毎位置算出部222は、検知センサ10-2で検知された水平距離J1と、検知センサ10-2の設置位置情報および計測方向情報とに基づいて、鋼材A1の端部の一点である点K2の座標値を算出する。同様にして、鋼材毎位置算出部222は、検知センサ10-3で検知された水平距離J1と、検知センサ10-3の設置位置情報および計測方向情報とに基づいて、鋼材A1の端部の一点である点K3の座標値を算出する。同様にして、鋼材毎位置算出部222は、検知センサ10-4で検知された水平距離J1と、検知センサ10-4の設置位置情報および計測方向情報とに基づいて、鋼材A1の端部の一点である点K4の座標値を算出する。同様にして、鋼材毎位置算出部222は、検知センサ10-5で検知された水平距離J1と、検知センサ10-5の設置位置情報および計測方向情報とに基づいて、鋼材A1の端部の一点である点K5の座標値を算出する。
【0052】
次に、鋼材毎位置算出部222は、点K1の座標値と点K2の座標値とを通過する直線L1の位置情報を算出する。次に、鋼材毎位置算出部222は、鋼材A1が長方形であり各角が直角であることから、直線L1と直交し、且つ点K3を通過する直線L2の位置情報を算出する。次に、鋼材毎位置算出部222は、直線L1と平行であり、且つ点K4を通過する直線L3の位置情報を算出する。次に、鋼材毎位置算出部222は、直線L2と平行であり、且つ点K5を通過する直線L4の位置情報を算出する。そして、鋼材毎位置算出部222は、直線L1、L2、L3、およびL4で囲まれる長方形状の範囲を、鋼材A1の積載位置情報E1として算出する。鋼材毎位置算出部222は、算出した積載位置情報E1を、鋼材毎ずれ量算出部223に送出する。
【0053】
鋼材毎ずれ量算出部223は、積載位置情報E1を取得すると、取得した情報に基づいて積載位置情報E1の重心位置M1を算出する。このとき鋼材毎ずれ量算出部223は、鋼材A1の密度が均一であることを利用して、積載位置情報E1の重心位置M1を算出する。そして、鋼材毎ずれ量算出部223は、算出した各重心位置M1と、位置合わせ基準点Cとの距離を、鋼材A1の重心位置のずれ量P1として算出する。
【0054】
また鋼材毎ずれ量算出部223は、x軸方向と直線L1もしくはL3との成す角度、または、y軸方向と直線L2もしくはL4との成す角度を、鋼材A1の積載角度のずれ量θ1として算出する。
【0055】
鋼材毎位置算出部222は、同様にして、鋼材A2、A3、A4の積載位置情報E2、E3、E4も算出し、算出した情報に基づいて鋼材毎ずれ量算出部223が各鋼材A2、A3、A4の重心位置のずれ量P2、P3、P4および積載角度のずれ量θ2、θ3、θ4を算出する。
【0056】
上述した算出処理例(1)において、積載する鋼板の厚さがほぼ一定の場合には、検知センサ10-1~10-5を2次元測距センサとして、例えば積載する鋼板の枚数に応じた、1次元レーザ変位センサアレイで構成してもよい。この場合、検知センサ10-1~10-5はそれぞれ、図6に示すように、台車3に積載される鋼材の板厚に対応して設置された複数のレーザ変位センサ部Q1、Q2、Q3、Q4を有している。そして、レーザ変位センサ部Q1、Q2、Q3、Q4はそれぞれ、自レーザ変位センサ部を含む台車3の上面と水平な方向に、それぞれ対応する鋼材A1、A2、A3、A4に対してレーザ光を照射する。
【0057】
そして各レーザ変位センサ部Q1、Q2、Q3、Q4は、各鋼材A1、A2、A3、A4の端部H1、H2、H3、H4を検出し、各端部H1、H2、H3、H4までの距離データを取得する。そして、検知センサ10-1~10-5は、取得した距離データを、検知情報としてずれ量算出装置20に送信して提供する。ずれ量算出装置20では、検知情報取得部221から取得した検知情報に基づいて鋼材毎位置算出部222が水平距離R1、R2、R3、R4と対応付けし、対応付けした情報に基づいて上述した処理と同様に各鋼材の積載位置情報E1、E2、E3、E4を算出する。そして、算出した情報に基づいて鋼材毎ずれ量算出部223が各鋼材A2、A3、A4の重心位置のずれ量P2、P3、P4および積載角度のずれ量θ2、θ3、θ4を算出する。
【0058】
[各鋼材A1、A2、A3、A4の積載位置情報および鋼材毎ずれ量の算出処理例(2)]
算出処理例(2)では、ずれ量算出装置20の積載物情報記憶部213が、予め各鋼材A1、A2、A3、A4の形状情報を記憶している。各鋼材の形状情報には、長方形の長軸方向の長さTおよび短軸方向の長さSの情報が含まれる。また、ずれ量算出装置20の検知情報取得部221は、算出処理例(1)の場合と同様の位置に設置された3個の検知センサ10-1~10-3から、各鋼材A1、A2、A3、A4に関する検知情報を取得する。そして鋼材毎位置算出部222が、検知センサ10-1~10-3から送信された検知情報と、センサ情報記憶部211に記憶された情報と、積載物情報記憶部213に記憶された各鋼材の形状情報とに基づいて、積載位置情報E1、E2、E3、E4を算出する。
【0059】
具体的には、鋼材毎位置算出部222は鋼材A1の積載位置情報E1を算出する場合、図7に示すように、まず検知センサ10-1、10-2でそれぞれ検知された情報に基づいて算出した点K1、点K2の座標値に基づいて、直線L1の位置情報を算出する。次に、鋼材毎位置算出部222は、直線L1の位置情報と、検知センサ10-3で検知された情報に基づいて算出した点K3の座標値とに基づいて、直線L2の位置情報を算出する。
【0060】
次に、鋼材毎位置算出部222は、積載物情報記憶部213に記憶された鋼材A1の形状情報の中から鋼材A1の短軸方向の長さSの情報を取得し、直線L1に平行で直線L1から長さS分、オフセットした位置の直線L3の位置情報を算出する。さらに鋼材毎位置算出部222は、積載物情報記憶部213に記憶された鋼材A1の形状情報の中から鋼材A1の長軸方向の長さTの情報を取得し、直線L2に平行で直線L2から長さT分、オフセットした位置の直線L4の位置情報を算出する。
【0061】
そして、鋼材毎位置算出部222は、直線L1、L2、L3、およびL4で囲まれる長方形状の範囲を、鋼材A1の積載位置情報E1として算出する。鋼材毎位置算出部222は、同様にして、鋼材A2、A3、A4の積載位置情報E2、E3、E4も算出する。以降、算出した積載位置情報に基づいて鋼材毎ずれ量算出部223が各鋼材の重心位置のずれ量および積載角度のずれ量を算出する処理は、算出処理例(1)の場合と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0062】
上述したように、算出処理例(2)により積載位置情報E1、E2、E3、E4を算出する場合には、図7に示すように長方形の鋼材に対して3個の検知センサを設置することで積載位置情報を算出可能である。そのため、算出処理例(1)の場合よりも検知センサの数を削減して運転システム100を構成することができる。
【0063】
[各鋼材A1、A2、A3、A4の積載位置情報および鋼材毎ずれ量の算出処理例(3)]
算出処理例(3)では、ずれ量算出装置20は、図8に示すように台車3に設置された2個の検知センサ10-6および10-7から、各鋼材A1、A2、A3、A4に関する検知情報を取得する。検知センサ10-6は台車3の左前方に設置され、検知センサ10-7は台車3の右後方に設置されている。
【0064】
本算出処理例(3)においては、検知センサ10-6および10-7は3次元測距センサで構成されている。3次元測距センサとしては例えば、3次元レーザスキャナ(3次元LiDAR)、ToF-3Dカメラが用いられる。または、所定方向へのスライド機構を有する2次元レーザスキャナ、例えば、台車3の上面に水平な平面を2次元で測距しつつ当該平面に垂直な上下方向にスライドする機構を有するレーザスキャナ等を3次元測距センサとして用いてもよい。
【0065】
検知センサ10-6および10-7は、各設置位置から鋼材A1、A2、A3、A4の方向にレーザ光を照射する。そして検知センサ10-6は、図9に示すように、鋼材A1の左前側の角を構成する2辺を示す直線(直線L1およびL2)までの距離データを取得し、検知センサ10-7は、鋼材A1の右後方の角を構成する2辺を示す直線(直線L3およびL4)までの距離データを取得する。検知センサ10-6、10-7は、取得した距離データを、検知情報としてずれ量算出装置20に送信する。そしてずれ量算出装置20の鋼材毎位置算出部222は、検知センサ10-6および10-7から送信された検知情報に基づいて、直線L1、L2、L3、およびL4で囲まれる長方形状の範囲を、鋼材A1の積載位置情報E1として算出する。
【0066】
鋼材毎位置算出部222は、同様にして、鋼材A2、A3、A4の積載位置情報E2、E3、E4も算出する。鋼材毎位置算出部222は、算出した積載位置情報E1、E2、E3、E4を、鋼材毎ずれ量算出部223に送出する。以降、算出した積載位置情報に基づいて鋼材毎ずれ量算出部223が各鋼材の重心位置のずれ量P1、P2、P3、P4および積載角度のずれ量θ1、θ2、θ3、θ4を算出する処理は、算出処理例(1)の場合と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0067】
上述したように算出処理例(3)により積載位置情報E1、E2、E3、E4を算出する場合には、図8(a)、(b)、図9に示すように長方形の鋼材に対して2個の検知センサを設置することで積載位置情報を算出可能である。そのため、算出処理例(1)、(2)の場合よりも検知センサの数を削減して運転システム100を構成することができる。以上で、算出処理例(1)~(3)の説明を終了する。
【0068】
図3のフローチャートに戻り、ずれ量算出装置20の全体ずれ量算出部224が、鋼材毎ずれ量算出部223で算出された各鋼材A1、A2、A3、A4の重心位置のずれ量を積算した、重心ずれ量積算値を算出する。また全体ずれ量算出部224は、鋼材毎ずれ量算出部223で算出された各鋼材A1、A2、A3、A4の積載角度のずれ量を積算した、角度ずれ量積算値を算出する。
【0069】
また全体ずれ量算出部224は、鋼材毎ずれ量算出部223で算出された情報と、車両情報記憶部212に記憶された情報と、積載物情報記憶部213に記憶された情報とに基づいて、全鋼材および鋼材が積載された台車3全体の重量の重心位置を算出する。そして全体ずれ量算出部224は、全鋼材および台車3を合わせた重量の重心位置と、台車重心Bの位置との距離を、全体ずれ量として算出する(S4)。全体ずれ量算出部224は、算出した重心ずれ量積算値、角度ずれ量積算値、および全体ずれ量を、車両制御装置30に送信する。
【0070】
車両制御装置30の運転制御部31は、搬送車両1の最大加減速度設定値の初期値および最大速度設定値の初期値を保持し、これに基づいて自動運転機構40を制御する。搬送車両1の最大加減速度の初期値は、基本的には、積載する鋼材間に発生する摩擦力を超えない程度の走行可能な値で設定される。
【0071】
ただし、このように考慮して制限された最大加減速度内で走行しても、走行の安全性が低い場合、例えば走行している路面に斜面や凹凸がある場合、降雨時に走行する場合、振動の大きい車体である場合、積載する鋼材が摩擦力の小さい材質である場合等は、鋼材間にずれが発生する場合がある。このような場合に対応するため、最大加減速度をさらに低い値で設定すると加減速時間が増加する。加減速度時間が増加すると、構内などの比較的短い道路が多い箇所では走行の安全性が高い場合であっても走行速度が常に低くなり、結果として搬送時間が長くなるというデメリットが発生してしまう。
【0072】
上述したデメリットの発生を抑えるため、本実施形態では運転制御部31は、ずれ量算出装置20から取得した重心ずれ量積算値、角度ずれ量積算値、および全体ずれ量に基づいて、運転内容を変更する。具体的には、最大加減速度設定値および最大速度設定値を低減させるかまたは、運転を停止させる。
【0073】
また運転制御部31は、搬送車両1の最大加減速度設定値および最大速度設定値の低減指示を出力するか否かを判断するための閾値として、重心ずれ量積算値の第1許容値、角度ずれ量積算値の第1許容値、および全体ずれ量の第1許容値を保持している。また運転制御部31は、搬送車両1の運転停止指示を出力するか否かを判断するための閾値として、重心ずれ量積算値の第2許容値、角度ずれ量積算値の第2許容値、および全体ずれ量の第2許容値を保持している。それぞれの第2許容値は、対応する第1許容値よりも大きい値である。
【0074】
運転制御部31が実行する処理の詳細について、説明する。運転制御部31は、ずれ量算出装置20から重心ずれ量積算値、角度ずれ量積算値、および全体ずれ量を取得すると、これらの値がすべて、該当する第1許容値未満であるか否かを判定する(S5)。ここで、すべての値が第1許容値未満であるときには(S5の「NO」)、運転制御部31は現在の運転を継続する。つまり、鋼材間に発生する摩擦力を超えない程度の振動で走行可能に設定された最大加減速度内で、所定の搬送時間内で目的地に到着するように運転を継続する。その場合、ずれ量算出装置20および車両制御装置30において、S1~S5の処理が繰り返される。
【0075】
また、取得した重心ずれ量積算値、角度ずれ量積算値、および全体ずれ量のうち、少なくとも1つの値が該当する第1許容値以上であれば(S5の「YES」)、運転制御部31は現在の運転を継続すると鋼材の荷ずれが進行する可能性があると判断する。そして運転制御部31は、鋼材の荷ずれの進行を防ぐため、最大加減速度設定値および最大速度設定値の低減指示を出力する(S6)。
【0076】
自動運転機構40は、運転制御部31から出力された指示に従って最大加減速度設定値および最大速度設定値を、初期値よりも低く安全性が高い安全値に低減させて、自動運転を継続する。最大加減速度設定値および最大速度設定値を低減させることで、目的地までの走行時間は長くなるが、台車3上の鋼材のずれ量が大きくなり崩れることを回避することができる。
【0077】
運転制御部31は、最大加減速度設定値および最大速度設定値の低減指示を出力するとさらに、ずれ量算出装置20から取得した重心ずれ量積算値、角度ずれ量積算値、および全体ずれ量がすべて、該当する第2許容値未満であるか否かを判定する(S7)。ここで、すべての値が第2許容値未満であるときには(S7の「NO」)、運転制御部31は最大加減速度設定値および最大速度設定値を安全値に低減した状態で運転を継続する。その場合、ずれ量算出装置20および車両制御装置30において、S1~S7の処理が繰り返される。
【0078】
また、取得した重心ずれ量積算値、角度ずれ量積算値、および全体ずれ量のうち、少なくとも1つの値が、該当する第2許容値以上であれば(S7の「YES」)、運転制御部31は、台車3上の鋼材が崩れる、鋼材が台車3上からはみ出して周辺の物体とぶつかりやすくなる、または荷ずれが大きく運転自体が困難となるなどの可能性が大きく運転継続が困難であると判断する。そして運転制御部31は、鋼材が崩れること等を回避するため、運転停止指示を出力する(S8)。自動運転機構40は、運転制御部31から出力された指示に従って搬送車両1の運転を停止させる。
【0079】
以上の第1実施形態によれば、搬送車両1の台車3に積載した複数の鋼材のずれ量を、鋼材ごとおよび搬送車両1全体の双方で監視し、ずれ量の大きさに基づいて運転内容を変更することで、鋼材が崩れないように安全に搬送することができる。ずれ量の大きさに基づいて運転内容を変更する際には、最大加減速度設定値および最大速度設定値の低減→運転停止と段階的に変更することで、なるべく搬送時間が長くならないようにしつつ搬送することができる。
【0080】
《第2実施形態》
〈第2実施形態による搬送車両の運転制御装置を用いた運転システムの構成〉
第2実施形態による搬送車両の運転制御装置を用いた運転システム200の構成について、図10(a)、(b)を参照して説明する。本実施形態による運転システム200では、台車3上における積載物の積載箇所が2箇所である場合を想定して、ずれ量算出装置20の車両情報記憶部212に、台車重心Bを示す情報と、2箇所の位置合わせ基準点C1、C2を示す情報が予め記憶されている。位置合わせ基準点C1は台車重心Bよりも前方に設定された点であり、位置合わせ基準点C2は台車重心Bよりも後方に設定された点である。その他の構成は、第1実施形態で説明した運転システム100の構成と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0081】
〈第2実施形態による搬送車両の運転制御装置を用いた運転システムの動作〉
本実施形態による運転システム200の動作として、台車3上の2箇所にそれぞれ、長方形の4枚の鋼材を平積み且つ無固縛で積載して搬送車両1が搬送する場合に、運転システム200内の各装置で実行される処理について説明する。
【0082】
本実施形態において、検知センサが2次元レーザスキャナまたは1次元レーザ変位センサレイで構成される場合には、図10(a)、(b)に示すように、台車3上の鋼材の積載箇所ごとにそれぞれ5個の検知センサを設置する。具体的には、位置合わせ基準点C1に対する積載箇所に対しては、検知センサ10-8~10-12を設置し、位置合わせ基準点C2に対する積載箇所に対しては、検知センサ10-13~10-17を設置する。
【0083】
また、検知センサが3次元光学式測距センサで構成される場合には、図11(a)、(b)に示すように、台車3上の鋼材の積載箇所ごとにそれぞれ2個の検知センサを設置する。具体的には、位置合わせ基準点C1に対する積載箇所に対しては、検知センサ10-18および10-19を設置し、位置合わせ基準点C2に対する積載箇所に対しては、検知センサ10-20および10-21を設置する。
【0084】
このように検知センサが設置された台車3上に、鋼材A5、A6,、A7、A8をそれぞれ、前方の位置合わせ基準点C1に重量の重心位置を合わせ、長軸方向をx軸方向に合わせ、短軸方向をy軸方向に合わせた積載基準位置に、平積み且つ無固縛で積載する。また、鋼材A9、A10,、A11、A12をそれぞれ、後方の位置合わせ基準点C2に重量の重心位置を合わせ、長軸方向をx軸方向に合わせ、短軸方向をy軸方向に合わせた積載基準位置に、平積み且つ無固縛で積載する。
【0085】
鋼材A5、A6、A7、A8および鋼材A9、A10、A11、A12が台車3に積載されると、運転制御部31が自動運転機構40を制御し、搬送車両1の自動運転を開始する。搬送車両1の運転が開始されると、第1実施形態の場合と同様に、各検知センサで各鋼材の端部が検知され、この検知情報に基づいて各鋼材の積載位置情報が算出され(S1、S2)、さらに各鋼材の重心位置のずれ量および積載角度のずれ量が算出される(S3)。これらの値を算出する際、2つの位置合わせ基準点C1、C2のうち、それぞれの鋼材に近い方が、対応する位置合わせ基準点として用いられる。
【0086】
各検知センサで検知された情報に基づいて、ずれ量算出装置20が各鋼材の積載位置情報を算出し、さらに各鋼材の重心位置のずれ量および積載角度のずれ量を算出する処理は、第1実施形態で説明した算出処理例(1)~(3)のいずれかと同様に実行される。
【0087】
鋼材毎ずれ量算出部223で各鋼材の重心位置のずれ量および積載角度のずれ量が算出されると、全体ずれ量算出部224が、積載箇所ごとに、平積みされた鋼材の重心ずれ量積算値を算出する。具体的には、全体ずれ量算出部224は、位置合わせ基準点C1に対応した鋼材A5、A6、A7、A8の重心ずれ量積算値を算出するとともに、位置合わせ基準点C2に対応した鋼材A9、A10、A11、A12の重心ずれ量積算値を算出する。
【0088】
また全体ずれ量算出部224は、積載箇所ごとに、平積みされた鋼材の角度ずれ量積算値を算出する。具体的には、全体ずれ量算出部224は、位置合わせ基準点C1に対応した鋼材A5、A6、A7、A8の角度ずれ量積算値を算出するとともに、位置合わせ基準点C2に対応した鋼材A9、A10、A11、A12の角度ずれ量積算値を算出する。
【0089】
また全体ずれ量算出部224は、鋼材毎ずれ量算出部223で算出された情報と、車両情報記憶部212に記憶された情報と、積載物情報記憶部213に記憶された情報とに基づいて、台車3上の全鋼材および台車3の重量の重心位置を算出する。そして全体ずれ量算出部224は、全鋼材および台車3の重量の重心位置と、台車重心Bの位置との距離を、全体ずれ量として算出する(S4)。全体ずれ量算出部224は、算出した重心ずれ量積算値、角度ずれ量積算値、および全体ずれ量を、車両制御装置30に送信する。
【0090】
車両制御装置30の運転制御部31は、ずれ量算出装置20から取得した積載箇所ごとの重心ずれ量積算値、角度ずれ量積算値、および全体ずれ量がすべて、該当する第1許容値未満であるか否かを判定する(S5)。ここで、すべての値が第1許容値未満であるときには(S5の「NO」)、運転制御部31は通常運転を継続する。その場合、ずれ量算出装置20および車両制御装置30において、S1~S5の処理が繰り返される。
【0091】
また、取得した積載箇所ごとの重心ずれ量積算値、角度ずれ量積算値、および全体ずれ量のうち、少なくとも1つの値が該当する第1許容値以上であれば(S5の「YES」)、運転制御部31は現在の運転を継続すると鋼材の荷ずれが進行する可能性があると判断する。そして運転制御部31は、鋼材の荷ずれの進行を防ぐため、最大加減速度設定値および最大速度設定値の低減指示を出力する(S6)。
【0092】
運転制御部31は、上述した低減指示を出力するとさらに、ずれ量算出装置20から取得した積載箇所ごとの重心ずれ量積算値、角度ずれ量積算値、および全体ずれ量がすべて、該当する第2許容値未満であるか否かを判定する(S7)。ここで、すべての値が第2許容値未満であるときには(S7の「NO」)、運転制御部31は最大加減速度設定値および最大速度設定値を安全値に低減した状態で運転を継続する。その場合、ずれ量算出装置20および車両制御装置30において、S1~S7の処理が繰り返される。
【0093】
また、取得した積載箇所ごとの重心ずれ量積算値、角度ずれ量積算値、および全体ずれ量のうち、少なくとも1つの値が該当する第2許容値以上であれば(S7の「YES」)、運転制御部31は、台車3上の鋼材が崩れる、鋼材が台車3上からはみ出して周辺の物体とぶつかりやすくなる、または荷ずれが大きく運転自体が困難となるなどの可能性が大きく運転継続が困難であると判断する。そして運転制御部31は、鋼材が崩れることなどを回避するため、運転停止指示を出力する(S8)。自動運転機構40は、運転制御部31から出力された指示に従って搬送車両1の運転を停止させる。
【0094】
以上の第2実施形態によれば、搬送車両1の台車3の複数箇所に鋼材を積載した場合にも、鋼材ごと、積載箇所ごと、および搬送車両1全体のずれ量の大きさに基づいて運転内容を変更することができる。これにより、複数箇所に積載した鋼材のうち、一部箇所の鋼材のみが荷崩れしそうなときにもこれを精度良く検知して運転内容を変更し、積載したすべての鋼材を安全に搬送することができる。
【0095】
上述した第2実施形態において、重心ずれ量積算値に関する第1許容値および第2許容値と、角度ずれ量積算値に関する第1許容値および第2許容値は、対応する積載箇所ごとに異なっていてもよいし、同じでもよい。
【0096】
また上述した第2実施形態においては、積載箇所が2箇所である場合について説明したがこれには限定されず、3箇所以上であってもよい。
【0097】
また上述した第1および第2実施形態では、運転制御部31が各鋼材のずれ量として、各鋼材の重心位置のずれ量を積算した重心ずれ量積算値、および各鋼材の積載角度のずれ量を積算した角度ずれ量積算値を用いる場合について説明した。しかしこれには限定されず、運転制御部31は、各鋼材の重心位置のずれ量の最大値および各鋼材の積載角度のずれ量の最大値を、各鋼材のずれ量として用いるようにしてもよい。
【0098】
この場合、運転制御部31は、搬送車両1の運転制御内容を判断するための閾値として、重心位置のずれ量に関する第1許容値および第2許容値と、角度ずれ積載角度のずれ量に関する第1許容値および第2許容値とを保持する。そして運転制御部31は、鋼材の重心位置のずれ量の最大値、鋼材の積載角度のずれ量の最大値、および全体ずれ量のうち少なくとも1つの値が該当する第1許容値以上であれば、最大加減速度設定値および最大速度設定値の低減指示を出力する。また、運転制御部31は、鋼材の重心位置のずれ量の最大値、鋼材の積載角度のずれ量の最大値、および全体ずれ量のうち少なくとも1つの値が該当する第2許容値以上であれば、運転停止指示を出力する。
【0099】
このように各ずれ量の最大値を用いて運転内容を制御することにより、例えば積載する鋼材の中で1つだけ大きくずれた場合にもこれを精度よく検出して荷崩れを防止することができる。積載した鋼材のうち1つだけ大きくずれた場合は、この箇所を起点に荷崩れが発生する可能性があるため、この箇所を検出することは荷崩れの防止をするために有効である。
【0100】
また上述した第1および第2実施形態では、最大加減速度設定値等の低減指示を出力するか否かを判断するための閾値として、重心ずれ量積算値、角度ずれ量積算値、および全体ずれ量それぞれについて1つの値(第1許容値)が設定された場合について説明した。しかしこれには限定されず、重心ずれ量積算値、角度ずれ量積算値、および全体ずれ量それぞれについて2つ以上の第1許容値を設定してもよい。この場合、運転制御部31は、重心ずれ量積算値、角度ずれ量積算値、または全体ずれ量の大きさによって、段階的に最大加減速度設定値等を変更する。
【0101】
また上述した第1および第2実施形態では、鋼材毎ずれ量算出部223が、各鋼材の積載位置情報の重心位置と位置合わせ基準点との距離を、各鋼材の重心位置のずれ量として算出する場合について説明した。つまり、重心位置のずれ量の算出に用いる基準位置として、予め設定された位置合わせ基準点を用いる場合について説明した。しかしこれには限定されず、鋼材毎ずれ量算出部223が、各鋼材の重心位置と、当該鋼材に隣接する鋼材、例えば1つ下段の鋼材の重心位置との相対的なずれ量を、当該鋼材の重心位置のずれ量として算出してもよい。つまり、重心位置のずれ量の算出に用いる基準位置として、隣接する鋼材の積載物位置情報を用いてもよい。
【0102】
また、上述した第1および第2実施形態では、鋼材毎ずれ量算出部223が、台車3の前後方向(x軸)と鋼材の長辺とのなす角度、または左右方向(y軸)と鋼材の短辺とのなす角度を、各鋼材の積載角度のずれ量として算出する場合について説明した。しかしこれには限定されず、鋼材毎ずれ量算出部223が、各鋼材の長辺と隣接する鋼材、例えば一つ下段の鋼材の長辺とのなす角度、または各鋼材の短辺と一つ下段の鋼材の短辺とのなす角度を、当該鋼材の積載角度のずれ量として算出してもよい。
【0103】
この場合、鋼材毎ずれ量算出部223は、積載した複数の鋼材のうち、最下の鋼材については、上述した実施形態で説明したように、各鋼材の積載位置情報の重心位置と位置合わせ基準点との距離を、各鋼材の重心位置のずれ量として算出する。また、台車3の前後方向(x軸)と鋼材の長辺とのなす角度、または左右方向(y軸)と鋼材の短辺とのなす角度を、各鋼材の積載角度のずれ量として算出する。
【0104】
そして、鋼材毎ずれ量算出部223は、下から2番目の鋼材については、当該下から2番目の鋼材の重心位置と、最下の鋼材の重心位置との相対的なずれ量を、当該下から2番目の鋼材の重心位置のずれ量として算出する。また、鋼材毎ずれ量算出部223は、当該下から2番目の鋼材の長辺と最下の鋼材の長辺とのなす角度、または当該下から2番目の鋼材の短辺と最下の鋼材の短辺とのなす角度を、当該下から2番目の鋼材の積載角度のずれ量として算出する。同様にして鋼材毎ずれ量算出部223は、下から3番目以降の鋼材についても、一つ下段の鋼材との相対的な重心位置のずれ量を当該鋼材の重心位置のずれ量として算出し、また一つ下段の鋼材との相対的な積載角度のずれ量を当該鋼材の積載角度のずれ量として算出する。
【0105】
また、全体ずれ量算出部224は、鋼材毎ずれ量算出部223で算出された情報に基づいて、第1または第2実施形態と同様に全鋼材および台車3の重量の重心位置と、台車重心Bの位置との距離を、全体ずれ量として算出する。
【0106】
そして運転制御部31は、各鋼材の重心位置のずれ量の積算値または最大値、積載角度のずれ量の積算値または最大値、および全体ずれ量のうち少なくとも1つの値が該当する第1許容値以上であれば最大加減速度設定値および最大速度設定値の低減指示を出力する。また運転制御部31は、これらの値が該当する第2許容値以上であれば、運転停止指示を出力する。
【0107】
このように、各鋼材に関して算出された、隣接する鋼材との相対的な重心位置のずれ量および積載角度のずれ量に基づいて運転を制御することで、荷崩れの発生のしやすさをより精度良く検出して荷崩れを防止することができる。
【0108】
また上述した第1および第2実施形態では、搬送車両1が自動運転で動作する場合について説明した。しかしこれには限定されず、搬送車両1を人間が運転する場合に適用してもよい。この場合も、すれ量算出装置20から取得したずれ量が第1許容値以上である場合には、車両制御装置30の運転制御部31は最大加減速設定値を低くする。そして、運転制御部31は、アクセルペダルまたはブレーキペダルの操作量が所定値よりも大きくなっても、搬送車両1の加減速値が最大加減速設定値を超えないように制御する。また、ずれ量算出装置20から取得したずれ量が第2許容値以上である場合には、運転制御部31は、アクセルペダルおよびブレーキペダルの操作の有無に関わらず、最大加減速設定値よりも小さい減速値で減速させて搬送車両1を停止させる。このように制御することで、搬送車両1を人間が運転する場合にも、積載した鋼材が荷崩れしないように安全に搬送することができる。
【0109】
また上述した第1および第2実施形態では、搬送車両1が、運転室が設けられている牽引車両2と、鋼材が積載されて牽引車両2により牽引される台車3とが連結機構によって連結された分離型搬送車両で構成された場合について説明した。しかしこれには限定されず、搬送車両1が、鋼材が積載される車両と運転室とが一体に構成された一体型搬送車両であってもよい。搬送を行う際の搬送物の形状等によって、適宜いずれか好適な搬送車両を用いることができる。
【0110】
搬送車両1が一体型搬送車両で構成された場合には、全体ずれ量を算出する際の基準を、当該一体型搬送車両の重心位置とすることで、鋼材が全体として安定して車両に積載されているか否かを適切に判断することができる。
【0111】
いくつかの実施形態を説明したが、上記開示内容に基づいて実施形態の修正または変形をすることが可能である。上記実施形態のすべての構成要素、及び請求の範囲に記載されたすべての特徴は、それらが互いに矛盾しない限り、個々に抜き出して組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0112】
1 搬送車両
2 牽引車両
3 被牽引車両(台車)
10、10-1~10-n 検知センサ
20 ずれ量算出装置
21 記憶部
22 制御部
30 車両制御装置
31 運転制御部
40 自動運転機構
100、200 運転システム
211 センサ情報記憶部
212 車両情報記憶部
213 積載物情報記憶部
221 検知情報取得部
222 鋼材毎位置算出部
223 鋼材毎ずれ量算出部
224 全体ずれ量算出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図10
図11