(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022181521
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】目地幅調整用治具及びこれを用いた目地幅調整方法
(51)【国際特許分類】
E04G 21/18 20060101AFI20221201BHJP
E04B 2/56 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
E04G21/18 C
E04B2/56 642B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021088514
(22)【出願日】2021-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000207436
【氏名又は名称】日鉄鋼板株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504082025
【氏名又は名称】株式会社イング
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】特許業務法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】原田 清一
(72)【発明者】
【氏名】古河 春樹
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 極
(72)【発明者】
【氏名】永木 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】田中 悦二
【テーマコード(参考)】
2E002
2E174
【Fターム(参考)】
2E002EA01
2E002FB08
2E002MA03
2E174AA01
2E174BA01
2E174DA14
2E174DA34
(57)【要約】
【課題】取り扱いがしやすく、パネル間の目地幅の調整がより簡単に行える目地幅調整用治具及びこれを用いた目地幅調整方法を提案すること。
【解決手段】目地幅調整用治具1は、一方向に長尺な治具本体2、第一引っ掛け部3、可動部4、第二引っ掛け部5、操作部6、及び目地形成部17を備える。第一引っ掛け部3は、治具本体2と一体に設けられ、第一パネルP1のうち第二パネルP2に隣接する側の端部に引っ掛かるように構成されている。可動部4は、治具本体2に取り付けられ、治具本体2の長手方向に沿って移動自在である。第二引っ掛け部5は、可動部4と一体に設けられ、第二パネルP2のうち第一パネルP1に隣接する側の端部に引っ掛かるように構成されている。操作部6は、治具本体2に取り付けられ、可動部4を移動させることができる。目地形成部17は、治具本体2に取り付けられ、第一パネルP1と第二パネルP2の間に挟むことができる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一パネルと第二パネルの間の目地幅を調整するための目地幅調整用治具であって、
一方向に長尺な治具本体と、
前記治具本体と一体に設けられ、前記第一パネルのうち前記第二パネルに隣接する側の端部に引っ掛かるように構成された第一引っ掛け部と、
前記治具本体に取り付けられ、前記治具本体の長手方向に沿って移動自在な可動部と、
前記可動部と一体に設けられ、前記第二パネルのうち前記第一パネルに隣接する側の端部に引っ掛かるように構成された第二引っ掛け部と、
前記治具本体に取り付けられ、前記可動部を移動させることのできる操作部と、
前記治具本体に取り付けられ、前記第一パネルと前記第二パネルの間に挟むことができる目地形成部と、
を備える、
ことを特徴とする目地幅調整用治具。
【請求項2】
前記目地形成部は、前記治具本体に対して、前記治具本体の長手方向に移動可能に取り付けられている、
ことを特徴とする請求項1に記載の目地幅調整用治具。
【請求項3】
前記目地形成部は、前記治具本体に対して、前記治具本体の中心軸周りに回転可能に取り付けられている、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の目地幅調整用治具。
【請求項4】
前記目地形成部は、前記治具本体に長手方向の一端部が回転可能に取り付けられたアーム部と、前記アーム部の長手方向の他端部から互いに反対方向に延びた第一目地形成部及び第二目地形成部と、を有する、
ことを特徴とする請求項3に記載の目地幅調整用治具。
【請求項5】
前記目地形成部は、合成樹脂製である、
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の目地幅調整用治具。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の目地幅調整用治具を用いて、前記第一パネルと前記第二パネルの間の前記目地幅を調整する目地幅調整方法であって、
前記第一引っ掛け部を、前記第一パネルのうち前記第二パネルに隣接する側の端部に引っ掛け、
前記第二引っ掛け部を、前記第二パネルのうち前記第一パネルに隣接する側の端部に引っ掛け、
その後、前記操作部を操作して、前記可動部及び前記第二引っ掛け部を移動させて、前記第一パネルと前記第二パネルの間に前記目地形成部を挟んで、前記第一パネルと前記第二パネルの間の前記目地幅を所定幅とする、
ことを特徴とする目地幅調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、パネル間の目地幅を調整する目地幅調整用治具及びこれを用いた目地幅調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、横並びに配置した二枚のパネル間の目地幅を調整する目地幅調整治具が記載されている。
【0003】
目地幅調整治具は、一方のパネルの外側端部に係止させるための係止片と、他方のパネルの外側端部に押し当てるための押し当て片と、押し当て片を移動させるための操作部と、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載の目地幅調整用治具は、二枚のパネルの外側の端から端までわたる長尺のものであるため、取り扱い性の面で改善の余地がある。また、この目地幅調整用治具は、二枚のパネル間の目地から操作部が離れているため、施工者が一人で目地幅を調整するためには、目地と操作部の間での移動が何度も必要であった。
【0006】
また、二枚のパネル間の目地幅を所定の寸法とするためには、移動の度に目地幅を定規で計測する必要があり、目地幅の調整に手間がかかった。特に、パネルの表面と側面とが直角ではなく円弧状のコーナーを形成して連続する場合には、二枚のパネルの側面間の距離(つまり目地幅)の計測が行い難いため、目地幅の調整に手間がかかりやすい。
【0007】
上記事情に鑑みて、本開示は、取り扱いがしやすく、パネル間の目地幅の調整がより簡単に行える目地幅調整用治具及びこれを用いた目地幅調整方法を提案することを、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様に係る目地幅調整用治具は、第一パネルと第二パネルの間の目地幅を調整するための目地幅調整用治具である。この目地幅調整用治具は、一方向に長尺な治具本体、第一引っ掛け部、可動部、第二引っ掛け部、操作部、及び目地形成部を備える。前記第一引っ掛け部は、前記治具本体と一体に設けられ、前記第一パネルのうち前記第二パネルに隣接する側の端部に引っ掛かるように構成されている。前記可動部は、前記治具本体に取り付けられ、前記治具本体の長手方向に沿って移動自在である。前記第二引っ掛け部は、前記可動部と一体に設けられ、前記第二パネルのうち前記第一パネルに隣接する側の端部に引っ掛かるように構成されている。前記操作部は、前記治具本体に取り付けられ、前記可動部を移動させることができる。前記目地形成部は、前記治具本体に取り付けられ、前記第一パネルと前記第二パネルの間に挟むことができる。
【0009】
また、本開示の一態様に係る目地幅調整方法は、前記の目地幅調整用治具を用いて、前記第一パネルと前記第二パネルの間の前記目地幅を調整する目地幅調整方法である。この目地幅調整方法では、前記第一引っ掛け部を、前記第一パネルのうち前記第二パネルに隣接する側の端部に引っ掛け、前記第二引っ掛け部を、前記第二パネルのうち前記第一パネルに隣接する側の端部に引っ掛ける。この目地幅調整方法では、その後、前記操作部を操作して、前記可動部及び前記第二引っ掛け部を移動させて、前記第一パネルと前記第二パネルの間に前記目地形成部を挟んで、前記第一パネルと前記第二パネルの間の前記目地幅を所定幅とする。
【発明の効果】
【0010】
本開示の一態様に係る目地幅調整用治具及びこれを用いた目地幅調整方法では、目地幅調整用治具の取り扱いがしやすく、パネル間の目地幅の調整がより簡単に行える。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、一実施形態の目地幅調整用治具を用いてパネル間の目地幅を調整する様子を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、同上の目地幅調整用治具を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、同上の目地幅調整用治具を示す正面図である。
【
図5】
図5は、同上の目地幅調整用治具の使用方法の一例を概略的に示す正面図である。
【
図6】
図6は、同上のパネルの一例を示す斜視図である。
【
図8】
図8は、同上のパネルを示す側断面図である。
【
図9】
図9は、同上のパネルを吊り具を用いて吊り上げる様子を示す斜視図である。
【
図10】
図10は、同上のパネルを躯体に複数枚取り付けて形成される壁構造の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
1.概要
図1及び
図2に示す一実施形態の目地幅調整用治具1は、第一パネルP1と第二パネルP2の間の目地幅を調整するための目地幅調整用治具1である。
図2に示すように、目地幅調整用治具1は、一方向に長尺な治具本体2、第一引っ掛け部3、可動部4、第二引っ掛け部5、操作部6、及び目地形成部17を備える。第一引っ掛け部3は、治具本体2と一体に設けられ、第一パネルP1のうち第二パネルP2に隣接する側の端部に引っ掛かるように構成されている。可動部4は、治具本体2に取り付けられ、治具本体2の長手方向に沿って移動自在である。第二引っ掛け部5は、可動部4と一体に設けられ、第二パネルP2のうち第一パネルP1に隣接する側の端部に引っ掛かるように構成されている。操作部6は、治具本体2に取り付けられ、可動部4を移動させることができる。目地形成部17は、第一パネルP1と第二パネルP2の間に挟むことができる。
【0013】
上記構成を備える一実施形態の目地幅調整用治具1では、目地幅調整用治具1自体を、パネルP1,P2の隣接する端部間にわたる短い長さに形成できるため、取り扱いがしやすい。また、一実施形態の目地幅調整用治具1では、引っ掛け部3,5をパネルP1,P2の隣接する端部に引っ掛け、パネルP1,P2の間の目地に近い位置で操作部6を操作できるため、操作部6の操作位置と目地幅の確認位置の間での移動を抑制できる。また、一実施形態の目地幅調整用治具1では、治具本体2に取り付けられた目地形成部17をパネルP1,P2の間に挟むことで、パネルP1,P2の間の目地幅を所定幅とすることができ、定規で目地幅を計測する必要がない。これにより、一実施形態の目地幅調整用治具1では、パネルP1,P2の間の目地幅の調整がより簡単に行える。
【0014】
また、本開示の一態様に係る目地幅調整方法は、前記の目地幅調整用治具1を用いて、第一パネルP1と第二パネルP2の間の目地幅を調整する目地幅調整方法である。この目地幅調整方法では、第一引っ掛け部3を、第一パネルP1のうち第二パネルP2に隣接する側の端部に引っ掛け、第二引っ掛け部5を、第二パネルP2のうち第一パネルP1に隣接する側の端部に引っ掛ける。その後、この目地幅調整方法では、操作部6を操作して、可動部4及び第二引っ掛け部5を移動させて、第一パネルP1と第二パネルP2の間に目地形成部17を挟んで、第一パネルP1と第二パネルP2の間の目地幅を所定幅とする。
【0015】
上記構成を備える一実施形態の目地幅調整方法では、パネルP1,P2の間の目地に近い位置で操作部6を操作でき、操作部6の操作位置と目地幅の確認位置の間での移動を抑制でき、目地形成部17を挟むだけでパネルP1,P2の間に所定幅の目地を形成することができる。そのため、一実施形態の目地幅調整方法では、パネルP1,P2の間の目地幅の調整がより簡単に行える。
【0016】
2.詳細
続いて、
図1及び
図2に示す一実施形態の目地幅調整用治具1及びこれを用いた目地幅調整方法について更に詳しく説明する。
【0017】
本明細書では、パネルP1,P2が並ぶ方向を左右方向とし、パネルP1,P2の厚み方向を前後方向とし、この左右方向及び前後方向に対して直交する方向を上下方向として、各構成について詳しく説明する。
【0018】
2-1.目地幅調整用治具
目地幅調整用治具1は、
図3及び
図4に示すように、治具本体2、第一引っ掛け部3、可動部4、第二引っ掛け部5、操作部6、把持部7、及び目地形成部17を備える。
【0019】
2-1-1.治具本体
治具本体2は、左右方向(つまり一方向)に長尺な棒状の部材である。本実施形態では、治具本体2は、長手方向に直交する断面形状が円形であり、丸棒状である。治具本体2は、例えば、ステンレス鋼で形成される。
【0020】
治具本体2の長手方向の一部の外周には、ねじ溝20が形成されている。本実施形態では、ねじ溝20は、治具本体2の左右方向の中央部よりも左側の部分の全体に、形成されている。ねじ溝20は、ねじ山の形状が台形である。そのため、治具本体2の長手方向の一部は、台形ねじとなっている。これにより、ねじ山がつぶれ難く、耐久性が向上しやすい。また、治具1を落としても、ねじ山が破損し難い。なお、ねじ山の形状は、台形に限らず、その他の形状であってもよい。
【0021】
図1及び
図2に示すように、治具本体2の左右方向の長さは、パネルP1の左端部(パネルP2側の端部)からパネルP2の右端部(パネルP1側の端部)へわたる長さを有する。治具本体2の左右方向の長さは、例えば、350mm程度である。
【0022】
2-1-2.第一引っ掛け部
第一引っ掛け部3は、治具本体2と一体に設けられ、第一パネルP1のうち第二パネルP2に隣接する側の端部(本実施形態では第一パネルP1に固定されている上板110bの取付孔112の孔縁)に引っ掛かるように構成されている。
図3及び
図4に示すように、本実施形態では、第一引っ掛け部3は、治具本体2の右端部に設けられている。第一引っ掛け部3は、治具本体2の右端部から治具本体2に対して直角に突出している。第一引っ掛け部3は、治具本体2の右端部から下方に突出している。
【0023】
第一引っ掛け部3は、棒状の部材である。本実施形態では、第一引っ掛け部3は、長手方向に直交する断面形状が円形であり、丸棒状である。第一引っ掛け部3は、例えば、ステンレス鋼で形成される。治具本体2と第一引っ掛け部3は、例えば、一本の丸棒状の部材を折り曲げ加工することで、形成される。
【0024】
第一引っ掛け部3は、径が互いに異なる基部30、先端部31、及び中間部32を有する。第一引っ掛け部3の上部が、基部30であり、第一引っ掛け部3の下端部が、先端部31であり、第一引っ掛け部3の基部30と先端部31の間の部分が、中間部32である。基部30は、中間部32及び先端部31よりも径が大きく、先端部31は、中間部32よりも径が大きい。
【0025】
基部30と治具本体2とでなされる内角部分には、板状の補強部材33が溶接等によって取り付けられている。先端部31の外周面の先端側には、テーパ310が設けられており、先端部31は先端側(下端側)ほど径が小さい。
【0026】
2-1-3.可動部
可動部4は、治具本体2に取り付けられ、治具本体2の長手方向に沿って移動自在である。本実施形態では、可動部4は、治具本体2が貫通した筒状の部材である。可動部4は、例えば、ステンレス鋼で形成される。
【0027】
可動部4は、円筒状であり、内径が治具本体2の外径よりも若干大きい。可動部4には、治具本体2のうち、把持部7よりも左側の部分が通される。可動部4は、治具本体2のうち把持部7よりも左側の部分において、左右方向に移動自在である。なお、可動部4は、治具本体2に対して、治具本体2の軸周りに回転自在である。
【0028】
2-1-4.第二引っ掛け部
図2に示すように、第二引っ掛け部5は、可動部4と一体に設けられ、第二パネルP2のうち第一パネルP1に隣接する側の端部(本実施形態では第二パネルP2に固定されている上板110bの取付孔112の孔縁)に引っ掛かるように構成されている。
【0029】
図3及び
図4に示すように、第二引っ掛け部5は、棒状の部材である。本実施形態では、第二引っ掛け部5は、長手方向に直交する断面形状が円形であり、丸棒状である。第二引っ掛け部5は、例えば、ステンレス鋼で形成される。
【0030】
第二引っ掛け部5は、可動部4の左右方向の中央部から、可動部4の軸方向(つまり左右方向)に対して直交する方向に突出している。本実施形態では、第二引っ掛け部5は、可動部4から下方に突出している。
【0031】
第二引っ掛け部5は、第一引っ掛け部3と構造が共通している。詳しくは、第二引っ掛け部5は、径が互いに異なる基部50、先端部51、及び中間部52を有する。第二引っ掛け部5の上部が、基部50であり、第二引っ掛け部5の下端部が、先端部51であり、第二引っ掛け部5の基部50と先端部51の間の部分が、中間部52である。基部50は、中間部52及び先端部51よりも径が大きく、先端部51は、中間部52よりも径が大きい。先端部51の外周面の先端側には、テーパ510が設けられており、先端部51は先端側(下端側)ほど径が小さい。
【0032】
第二引っ掛け部5は、第一引っ掛け部3に対して平行である。第二引っ掛け部5の基部50の下面と、第一引っ掛け部3の基部30の下面とは、上下方向における位置が互いに同じである。第二引っ掛け部5の中間部52と、第一引っ掛け部3の中間部32とは、上下長さが互いに同じである。第二引っ掛け部5の先端部51の上面と、第一引っ掛け部3の先端部31の上面とは、上下方向における位置が互いに同じである。
【0033】
2-1-5.操作部
操作部6は、治具本体2に取り付けられ、可動部4を移動させることができる。操作部6は、本実施形態では、治具本体2のねじ溝20に回転可能に取り付けられたナットである。詳しくは、操作部6は、六角ナットであり、その内周面には、ねじ溝20に係合するめねじが形成されている。
【0034】
操作部6は、
図5に示すように、レンチ等の工具8を用いて、手動又は電動にて回転操作することができる。
【0035】
2-1-6.把持部
図3及び
図4に示すように、把持部7は、治具本体2と一体に設けられ、治具本体2に対して第一引っ掛け部3とは異なる側に位置する。把持部7は、施工者が片手で掴むことができる部分である。
【0036】
本実施形態では、把持部7は、L字状の部材である。把持部7は、治具本体2のうち、右側の端部と一体であり、左右方向において、第一引っ掛け部3の左側に隣接して位置する。
【0037】
把持部7は、本実施形態では、治具本体2に対して第一引っ掛け部3とは反対側に位置している。つまり、把持部7は、治具本体2から上方に突出している。
【0038】
把持部7は、治具本体2と平行であり、治具本体2から離れて位置する本体部70と、本体部70の長手方向(つまり左右方向)の一端部(本実施形態では右端部)から直角に延びた連結部71と、を有する。本体部70と連結部71のそれぞれは、丸棒状である。連結部71の先端部(下端部)が、治具本体2に固定されている。
【0039】
把持部7は、例えば、丸棒状の部材を折り曲げ加工することで形成され、溶接によって治具本体2に固定される。把持部7は、例えば、ステンレス鋼で形成される。
【0040】
2-1-7.目地形成部
図2に示すように、目地形成部17は、治具本体2に取り付けられ、第一パネルP1と第二パネルP2の間に挟むことができる部材である。
【0041】
図3及び
図4に示すように、目地形成部17は、治具本体2に対して、治具本体2の長手方向に移動可能に取り付けられている。また、目地形成部17は、治具本体2に対して、治具本体2を中心に回転可能に取り付けられている。目地形成部17は、例えば合成樹脂製である。なお、目地形成部17は、合成樹脂製に限らず、アルミニウム製であってもよく、パネルP1,P2の間に挟まったときに潰れない程度の硬さを有する材料で形成されればよい。
【0042】
目地形成部17は、治具本体2に長手方向の一端部が回転可能に取り付けられたアーム部170と、アーム部170の長手方向の他端部から互いに反対方向に延びた第一目地形成部171及び第二目地形成部172と、を有する。
【0043】
本実施形態では、目地形成部17は、T字状の部材である。アーム部170は、一方向に延びた棒状(詳しくは角棒状)である。アーム部170の長手方向の一端部には、治具本体2が貫通する取付孔173が設けられている。アーム部170の長手方向の他端部から、第一目地形成部171と第二目地形成部172が互いに反対方向に延びている。
【0044】
第一目地形成部171と第二目地形成部172のそれぞれは、一方向に延びた棒状(詳しくは角棒状)である。第一目地形成部171と第二目地形成部172のそれぞれの長手方向は、アーム部170の長手方向に対して交差しており、本実施形態では、直交している。アーム部170と第一目地形成部171と第二目地形成部172は、T字状につながっている。
【0045】
図5に示すように、第一目地形成部171と第二目地形成部172のそれぞれは、治具本体2の長手方向(つまり左右方向)における長さL1,L2が、互いに同じである。長さL1,L2は、例えば、20mmである。長さL1,L2は、パネルP1,P2の間に形成する目地の幅(左右方向の長さ)と同じ長さに設定されている。
【0046】
図3及び
図4に示すように、目地形成部17は、アーム部170の取付孔173に治具本体2を通すことで、治具本体2に移動可能かつ回転可能に取り付けられる。目地形成部17は、治具本体2のうち、把持部7の連結部71と可動部4との間の部分に、取り付けられている。目地形成部17は、治具本体2のうち、連結部71と可動部4との間の部分において、治具本体2の長手方向にスライド移動可能である。目地形成部17は、治具本体2の中心軸周りに回転可能である。
【0047】
目地形成部17は、可動部4及び操作部6(ナット)によって、治具本体2の長手方向の一端部(左端部)から外れ落ちることが防止されている。
【0048】
目地形成部17は、治具本体2の長手方向に移動させ、治具本体2の中心軸周りに回転させることで、治具1の使用時の向きに合わせて、第一目地形成部171と第二目地形成部172のうちいずれか一方を、パネルP1,P2の間に挟むことができる。これにより、パネルP1,P2の間には、目地形成部171,172の長さL1,L2と同じ長さの所定幅の目地が形成される。
【0049】
ここで、本実施形態では、目地形成部17は、合成樹脂製であるため、パネルP1,P2の間から抜き出す際に、パネルP1,P2の表面を疵付けにくい。
【0050】
2-2.第一パネルと第二パネル
図1に示す第一パネルP1と第二パネルP2は、建物の躯体10に固定されて建物の壁を形成するパネルである。本実施形態では、第一パネルP1と第二パネルP2は、構造が共通しており、
図6に示すサンドイッチパネル9で構成されている。
【0051】
サンドイッチパネル9は、
図6、
図7A、
図7B及び
図8に示すように、一対の金属外皮90,91と、一対の金属外皮90,91の間に位置する芯材92と、を有する。
【0052】
サンドイッチパネル9は、矩形板状である。サンドイッチパネル9は、上下方向と平行な長手方向と、左右方向と平行な短手方向と、前後方向と平行な厚み方向とを有する。サンドイッチパネル9は、例えば、上下方向の長さが、0.5~6.0mであり、左右方向の長さ(幅)が、0.2~1.5mであり、前後方向の長さ(厚み)が、50~150mmである。
【0053】
芯材92は、断熱性を有する。芯材92は、例えば、ロックウールやグラスウールなどの繊維状無機材をバインダー等で固めた複数のブロック体を1枚の矩形板状に並べたものである。なお、芯材92は、ウレタンフォーム、フェノールフォーム等の発泡系の有機材で形成されてもよいし、スチレンボード、ウレタンボード等であってもよい。芯材92の左右の端面には、凹部920が設けられている。左右の凹部920のうちの一方(本実施形態では左側の凹部920)には、耐火材95が配置される。耐火材95は、芯材92よりも耐火性が高い。耐火材95は、例えば、石膏ボード又は珪酸カルシウムボードと、ロックウールフェルト等の耐火性を有するフェルトとで構成される。
【0054】
一対の金属外皮90,91のそれぞれは、金属板をロール加工やプレス加工などにより所望の形状に成形することによって得られる。金属板は、例えば、厚みが0.23~6.0mmである。金属板は、塗装鋼板、亜鉛めっき鋼板、アルミニウム-亜鉛合金めっき鋼板、ガルバリウム鋼板(登録商標)、エスジーエル(登録商標)鋼板等であるが、これらに限定されない。
【0055】
一対の金属外皮90,91のうち、前側に位置する金属外皮90は、後側に向けて開口した矩形の箱状である。金属外皮90は、芯材92の前面を覆う矩形板状の本体部900と、芯材92の上面の前側の部分を覆う上壁部901と、芯材92の下面の前側の部分を覆う下壁部902と、芯材92の左右の側面の凹部920よりも前側の部分を覆う左右の側壁部903と、を有する。本体部900と左右の側壁部903とは、直角ではなく円弧状のコーナーを形成して連続している。そのため、本体部900の表面(前面)と左右の側壁部903の表面(側面)とは、円弧状のコーナーを形成して連続している。
【0056】
一対の金属外皮90,91のうち、後側に位置する金属外皮91は、芯材92の後面を覆う矩形板状の本体部910と、芯材92の左右の側面の後側の部分を覆う左右の側壁部911と、を有する。なお、金属外皮91は、芯材92の上面や下面を覆う部分を有さない。
【0057】
金属外皮90,91のそれぞれは、本体部900,910が芯材92の前後の面に接着されて、芯材92と一体化している。
【0058】
図6及び
図8に示すように、サンドイッチパネル9は、躯体10への固定に用いられる固定部材11と第二固定部材12が取り付けられたパネルである。
【0059】
固定部材11は、サンドイッチパネル9に固定された固定板110と、固定板110に結合され、サンドイッチパネル9よりも一部が上方に突出する取付板111と、を備える。本実施形態では、取付板111は、固定板110にボルト接合されている。
【0060】
固定板110は、側面視L字状の部材である。固定板110は、例えば、金属外皮90,91よりも厚みの大きい鋼板を折り曲げて形成される。固定板110は、サンドイッチパネル9の後面に沿う後板110aと、後板110aの上端部から前方に延長され、サンドイッチパネル9の上面に沿う上板110bと、を有する。後板110aと上板110bのそれぞれは、矩形板状である。後板110aは、サンドイッチパネル9の金属外皮91の本体部910の上端部にビス等の固定具(図示せず)で固定されている。上板110bは、その前端部がサンドイッチパネル9の金属外皮90の上壁部901にビス等の固定具(図示せず)で固定されている。
【0061】
後板110aには、取付板111を固定板110に対してボルト結合するためのボルト93が結合される固定孔が設けられている。ボルト93は、本実施形態では、片面側から締結することができ、緩み止め機能を有するボルトである。上板110bには、取付孔112が設けられている。取付孔112は、上板110bを上下方向(厚み方向)に貫通している。
【0062】
取付孔112は、第一引っ掛け部3又は第二引っ掛け部5を挿入することが可能な孔である。取付孔112は、引っ掛け部3,5の基部30,50よりも径が小さく、かつ、引っ掛け部3,5の先端部31,51及び中間部32,52よりも径が大きい。上板110bの厚みは、引っ掛け部3,5の中間部32,52の上下長さと同じか、それよりも若干小さい。
【0063】
本実施形態では、取付孔112は、
図9に示すように、パネルP1,P2をクレーン等の吊り上げ装置で吊り上げるときに用いる吊り具13が着脱可能な孔である。
【0064】
取付板111は、矩形板状である。取付板111は、例えば、金属外皮90,91よりも厚みの大きい鋼板で形成される。取付板111は、その下部にボルト93が挿入される挿入孔が設けられている。取付板111は、取付板111の下部が固定板110の後板110aにボルト93で固定され、取付板111の上部がサンドイッチパネル9の上面よりも上方に突出している。取付板111は、固定板110の上板110bよりも上方に位置する部分が、躯体10に固定される部分である。ボルト93は、サンドイッチパネル9の金属外皮91の本体部910を貫通して、その先端部が芯材92に埋め込まれる。
【0065】
本実施形態では、固定部材11は、サンドイッチパネル9の上端部の左右の端部にそれぞれ取り付けられた固定板110と、左右の固定板110にボルト93で固定された取付板111と、を備える。左側の固定板110からサンドイッチパネル9の左端までの距離と、右側の固定板110からサンドイッチパネル9の右端までの距離とは、同じである。左右の固定板110は、サンドイッチパネル9の幅寸法の大小に関わらず、サンドイッチパネル9の左右の端からの距離が略同じ長さとなるように、サンドイッチパネル9に取り付けられる。そのため、左右に隣接する二枚のサンドイッチパネル9の隣接する固定板110の取付孔112間の距離は、サンドイッチパネル9の幅寸法に関わらず、略一定である。
【0066】
第二固定部材12は、サンドイッチパネル9の下端部に固定された固定板120と、固定板120にボルト93で取り付けられた取付板121と、を有する。ボルト93は、本実施形態では、片面側から締結することができ、緩み止め機能を有するボルトである。本実施形態では、第二固定部材12は、左右方向に距離をおいて位置する三つの固定板120と、三つの固定板120のうち左右両端に位置する二つの固定板120にボルト接合された二つの取付板121と、を有する。三つの固定板120のうち、左右両端に位置する二つの固定板120は、左右方向における位置が、左右の固定板110と同じである。三つの固定板120のうち、左右方向の中央に位置する固定板120は、サンドイッチパネル9の左右方向の中央に位置している。
【0067】
固定板120は、側面視L字状の部材である。固定板120は、例えば、金属外皮90,91よりも厚みの大きい鋼板を折り曲げて形成される。固定板120は、サンドイッチパネル9の後面に沿う後板120aと、後板120aの下端部から前方に延長され、サンドイッチパネル9の下面に沿う下板120bと、を有する。後板120aと下板120bのそれぞれは、矩形板状である。後板120aは、サンドイッチパネル9の金属外皮91の本体部910の下端部にビス等の固定具(図示せず)で固定されている。下板120bは、その前端部がサンドイッチパネル9の金属外皮90の下壁部902にビス等の固定具(図示せず)で固定されている。左右両端に位置する二つの固定板120では、後板120aに、ボルト93が結合される固定孔(図示せず)が設けられている。
【0068】
取付板121は、側面視Z字状の部材である。取付板121は、例えば、金属外皮90,91よりも厚みの大きい鋼板を折り曲げて形成される。取付板121の上部には、ボルト93が挿入される挿入孔が設けられている。
【0069】
ボルト93によって取付板121の上部を固定板120の後板120aに固定した状態で、取付板121の下部は、固定板120の後板120aから後方に離れて位置する。固定板120の後板120aと取付板121の下部とは、下方に向けて開口した挿入溝122を囲んで形成する。
【0070】
サンドイッチパネル9は、金属外皮90の上壁部901、下壁部902、及び左右の側壁部903に取り付けられるパッキン94を更に備える。なお、
図6では、パッキン94の図示は省略している。
図7A,
図7B及び
図8に示すように、パッキン94は、上壁部901の上面の前後方向の中央部と、下壁部902の下面の前後方向の中央部と、左右の側壁部903の後端部のそれぞれに、取り付けられる。パッキン94は、長手方向に直交する断面が、中空の半円形状である。パッキン94は、サンドイッチパネル9を全周にわたって囲むように正面視にて矩形枠状に設けられる。パッキン94は、例えば合成ゴム製である。
【0071】
2-3.その他
図1に示す躯体10は、上下に並ぶ複数の横架材14を備える。複数の横架材14のそれぞれは、建物の床や天井を構成する土台15に取り付けられている。なお、複数の横架材14のそれぞれは、梁に固定されてもよいし、複数の柱に架け渡して固定されてもよい。
【0072】
上下に隣接する二つの横架材14は、サンドイッチパネル9に取り付けられた上下の固定部材11,12の間隔と同程度、上下方向に離れて位置する。上側に位置する横架材14には、サンドイッチパネル9の固定部材11が取り付けられ、下側に位置する横架材14には、サンドイッチパネル9の第二固定部材12が取り付けられる。
【0073】
横架材14は、躯体10の一部を構成するものであり、本実施形態では、側面視L字状のアングル材である。横架材14は、鋼製である。横架材14は、縦板部140と、縦板部140の下端部から後側に延びた横板部141と、を有する。
【0074】
各横架材14の縦板部140のうち、サンドイッチパネル9の第二固定部材12の左右方向の中央に位置する固定板120に対応する部分の前面には、この固定板120を下から支持する側面視L字状の受け部材142が溶接等で固定されている。
【0075】
目地幅調整用治具1は、例えば、
図1に示す他の治具16と共に用いられる。治具16は、第二パネルP2の下端部の側面を押圧して第二パネルP2を第一パネルP1側へとスライド移動させることができ、パネルP1,P2の間の目地幅を調整することができる。なお、治具16は、
図1に示す構造のものに限らず、第二パネルP2を移動させることができるものであればよい。
【0076】
3.目地幅調整方法
続いて、上述した目地幅調整用治具1を用いて、第一パネルP1と第二パネルP2の間の目地幅を調整する方法について説明する。
【0077】
まず、
図1に示すように、躯体10の横架材14に対して位置が固定された第一パネルP1の側方(左方)に、第二パネルP2を配置する。このとき、第二パネルP2の下端部の第二固定部材12の二つの取付板121を、横架材14の縦板部140に引っ掛ける(
図10参照)。取付板121は、ボルト93によって固定板120に対して仮止めしておき、第二パネルP2を横架材14の長手方向に沿ってスライド移動可能としておく。第二パネルP2は、第二パネルP2の右の側面のパッキン94が第一パネルP1の左の側面のパッキン94に当たるように配置する。このとき、第二パネルP2の右側の耐火材の右端部が、第一パネルP1の芯材92の左の側面の凹部920に収まる。
【0078】
次いで、把持部7を把持して目地幅調整用治具1をパネルP1,P2の目地の上方に配する。次いで、
図2に示すように、第一引っ掛け部3を第一パネルP1の固定部材11の取付孔112に上方から挿入し、第二引っ掛け部5を第二パネルP2の固定部材11の取付孔112に上方から挿入する。このとき、引っ掛け部3,5の基部30,50の下面が、固定部材11の上板110bの上面に当たることで、目地幅調整用治具1はパネルP1,P2に対して取り付けられる。
【0079】
次いで、操作部6をレンチ等の工具8(
図5参照)で回転操作して、可動部4及び第二引っ掛け部5を第一引っ掛け部3に近づく方向に移動させ、パネルP1,P2の間に、目地形成部17の第二目地形成部172を挟む。より詳しくは、パネルP1,P2の互いに対向する側壁部903の平板部(前後方向に延びる部分)の間に、第二目地形成部172を挟む。これにより、パネルP1,P2の互いに対向する側壁部903の平板部の間には、第二目地形成部172の長さL2と同じ長さの所定幅の目地が形成される。なお、上記作業は、土台15の上から行えるため、パネルP1,P2の外側に仮設足場が無くても作業可能である。
【0080】
治具16は、
図1に示すように、第二パネルP2の側方(左方)から第二パネルP2を押圧して第二パネルP2をスライド移動させ、パネルP1,P2の間の目地幅を所定幅とする。パネルP1,P2の間の目地幅を所定幅とすることで、パネルP1,P2の間に位置するパッキン94が圧縮され、これにより、パネルP1,P2の間の止水性が高められる。また、パネルP1,P2の凹部920にわたるように耐火材95が配置されることで、パネルP1,P2の間の耐火性が高められる。
【0081】
以上のように施工することで、治具1によって、パネルP1,P2の間の目地幅を所定幅に調整することができる。
【0082】
続いて、第二パネルP2を横架材14に対して固定する方法の一例について説明する。
【0083】
まず、第二パネルP2の固定部材11の二つの取付板111を上側の横架材14の縦板部140に対して、溶接等の適宜手段で固定する(
図10参照)。
【0084】
次いで、第二パネルP2の第二固定部材12の二つのボルト93を最後までねじ締めして、二つの取付板121を横架材14の縦板部140に押し当てる。このとき、第二パネルP2の下端部の左右方向の中央部に位置する固定板120は、横架材14の受け部材142の上に載置され、第二パネルP2の自重は受け部材142によって支持される。なお、受け部材142に対して固定板120は、溶接等で固定しない。
【0085】
第二パネルP2の下側に他のサンドイッチパネル9が既に設置されている場合には、第二パネルP2の二つの取付板121とこれに対向する固定板120の間に、横架材14の縦板部140と他のサンドイッチパネル9の取付板111とを挟み込む。
【0086】
以上のように施工することで、第二パネルP2は、第一パネルP1との間に所定の目地幅を形成した状態で、横架材14に固定される。第二パネルP2の上下二つの横架材14への固定が終わったら、治具1,16を取り外す。このとき、目地幅調整用治具1の目地形成部17の第二目地形成部172をパネルP1,P2の間から抜き出しても、目地形成部17は治具本体2に取り付けられたままであるため、目地形成部17の落下を防止できる。
【0087】
上述の施工方法により複数のサンドイッチパネル9を横架材14に対して固定することで、例えば、
図10に示す壁構造を形成することができる。上下に隣接する二枚のサンドイッチパネル9の間には、他の耐火材が挟み込まれる。この耐火材は、例えば、アルカリアースシリケートブランケット(生体溶解性繊維)などの繊維状無機材料で形成された帯状のものである。この耐火材は、圧縮した場合に復元しにくい部材である。
【0088】
4.変形例
以上説明した本実施形態の目地幅調整用治具1及びこれを用いた目地幅調整方法の変形例について説明する。
【0089】
目地幅調整用治具1は、
図3及び
図4に示す形状(構造)に限らず、その他の形状に設けてもよい。例えば、治具本体2、第一引っ掛け部3、及び第二引っ掛け部5のそれぞれは、棒状に限らない。また、可動部4は、治具本体2に取り付けられ、治具本体2の長手方向に沿って移動自在であればよく、筒状に限らない。また、操作部6は、治具本体2に取り付けられ、可動部4を移動させることができるものであればよく、ナットに限らない。
【0090】
目地幅調整用治具1は、治具本体2と一体に設けられる把持部7を備えなくてもよく、治具本体2自体が把持される部分であってもよい。また、把持部7の形状は、
図3及び
図4に示すL字状に限らず、治具本体2に対して環状に連続するコ字状等、その他の形状であってもよい。
【0091】
パネルP1,P2は、固定部材11が取り付けられたものに限らず、パネルP1,P2の金属外皮90自体に、取付孔112を形成してもよい。
【0092】
また、パネルP1,P2に取り付けられた固定部材11は、躯体10への固定に用いられるものでなく、目地幅調整専用のものであってもよい。また、固定部材11が有する取付孔112は、吊り具13が着脱される孔とは別の孔であってもよい。
【0093】
第一引っ掛け部3が引っ掛かる部分は、第一パネルP1のうち第二パネルP2に隣接する側の端部であればよく、上板110bの取付孔112の孔縁に限定されず、上板110bの左右の端面であってもよいし、第一パネルP1の金属外皮90,91であってもよいし、第一パネルP1に固定された他の部材であってもよい。また、第二引っ掛け部5が引っ掛かる部分についても同様である。
【0094】
また、目地幅調整用治具1は、
図2に示す向きに限らず、左右逆にして用いてもよい。この場合、左側のサンドイッチパネル9が第一パネルP1であり、右側のサンドイッチパネル9が第二パネルP2である。
【0095】
固定部材11は、パネルP1,P2の上面に沿う上板110bを有さなくてもよい。取付孔112は、後板110aに形成されてもよい。
【0096】
目地幅調整用治具1は、パネルP1,P2の目地の上方に位置するように配置して用いることに限定されず、目地の前方、後方、又は下方に位置するように配置して用いてもよい。
【0097】
目地幅調整用治具1は、左右方向に隣接するパネルP1,P2の間の目地の調整に限らず、上下方向に隣接するパネルP1,P2の間の目地の調整に用いてもよい。
【0098】
第一パネルP1と第二パネルP2とは、異なる形状及び大きさのパネルであってもよい。
【0099】
また、パネルP1,P2は、サンドイッチパネル9に限らず、ALC(autoclaved lightweight concrete)パネル、窯業系のパネル、金属サイディング材、木製のパネル等であってもよい。
【0100】
また、パネルP1,P2は、固定部材11のみが取り付けられ、第二固定部材12が取り付けられていないものであってもよい。
【0101】
また、目地形成部17は、上述した構造に限定されない。目地形成部17は、治具本体2に対して、治具本体2の長手方向に移動不可に取り付けられてもよいし、回転不可に取り付けられてもよい。
【0102】
目地形成部17は、第一目地形成部171と第二目地形成部172のうち一方のみを備えてもよく、例えば、L字状であってもよい。
【0103】
また、目地形成部17は、合成樹脂製に限らず、金属製であってもよいし、合成樹脂製の部分と金属製の部分とを組み合わせて形成してもよい。
【0104】
また、目地形成部17は、治具本体2に取り付けられ、パネルP1,P2の間に挟むことができるものであればよく、
図3に示す構造に限定されない。
【0105】
アーム部170と第一目地形成部171及び第二目地形成部172とは、それぞれの長手方向が90度以外の角度で交差するように設けてもよい。
【0106】
第一目地形成部171と第二目地形成部172の長さL1,L2(幅)は、同一に限らず、互いに異なってもよい。
【0107】
また、目地形成部17は、1部材で構成されなくてもよい。例えば、目地形成部17は、治具本体2に一端が取り付けられたワイヤー等の索状体と、索状体の他端に取り付けられた所定幅(パネルP1,P2の間の目地に対応した幅)のブロック状の部材とで、構成されてもよい。
【0108】
5.まとめ
以上説明した一実施形態及びその変形例のように、第一態様の目地幅調整用治具(1)は、下記の構成を備える。
【0109】
すなわち、第一態様の目地幅調整用治具(1)は、第一パネル(P1)と第二パネル(P2)の間の目地幅を調整するための目地幅調整用治具(1)である。目地幅調整用治具(1)は、一方向に長尺な治具本体(2)、第一引っ掛け部(3)、可動部(4)、第二引っ掛け部(5)、操作部(6)、及び目地形成部(17)を備える。第一引っ掛け部(3)は、治具本体(2)と一体に設けられ、第一パネル(P1)のうち第二パネル(P2)に隣接する側の端部に引っ掛かるように構成されている。可動部(4)は、治具本体(2)に取り付けられ、治具本体(2)の長手方向に沿って移動自在である。第二引っ掛け部(5)は、可動部(4)と一体に設けられ、第二パネル(P2)のうち第一パネル(P1)に隣接する側の端部に引っ掛かるように構成されている。操作部(6)は、治具本体(2)に取り付けられ、可動部(4)を移動させることができる。目地形成部(17)は、治具本体(2)に取り付けられ、第一パネル(P1)と第二パネル(P2)の間に挟むことができる。
【0110】
上記構成を備える第一態様の目地幅調整用治具(1)では、目地幅調整用治具(1)自体を、パネル(P1,P2)の隣接する端部間にわたる短い長さに形成できるため、取り扱いがしやすい。また、第一態様の目地幅調整用治具(1)では、引っ掛け部(3,5)をパネル(P1,P2)の隣接する端部に引っ掛け、パネル(P1,P2)間の目地に近い位置で操作部(6)を操作できるため、操作部(6)の操作位置と目地幅の確認位置の間での施工者の移動を抑制できる。また、第一態様の目地幅調整用治具(1)では、治具本体(2)に取り付けられた目地形成部(17)をパネル(P1,P2)間に挟むことで、パネル(P1,P2)間の目地幅を所定幅とすることができ、定規で目地幅を計測する必要がない。これにより、第一態様の目地幅調整用治具(1)では、パネル(P1,P2)間の目地幅の調整がより簡単に行える。また、第一態様の目地幅調整用治具(1)では、パネル(P1,P2)の寸法に関わらず、同じ目地幅調整用治具(1)を用いることができて、汎用性に優れる。
【0111】
また、上述した一実施形態及びその変形例のように、第二態様の目地幅調整用治具(1)は、第一態様の目地幅調整用治具(1)の構成に加えて、下記の構成を付加的に備える。
【0112】
すなわち、第二態様の目地幅調整用治具(1)では、目地形成部(17)は、治具本体(2)に対して、治具本体(2)の長手方向に移動可能に取り付けられている。
【0113】
上記構成を備える第二態様の目地幅調整用治具(1)では、治具本体(2)の長手方向における目地形成部(17)の位置を適宜調整することができるため、パネル(P1,P2)に製造誤差等があっても、パネル(P1,P2)間に目地形成部(17)を挟みやすい。
【0114】
また、上述した一実施形態及びその変形例のように、第三態様の目地幅調整用治具(1)は、第一又は第二態様の目地幅調整用治具(1)の構成に加えて、下記の構成を付加的に備える。
【0115】
すなわち、第三態様の目地幅調整用治具(1)では、目地形成部(17)は、治具本体(2)に対して、治具本体(2)の中心軸周りに回転可能に取り付けられている。
【0116】
上記構成を備える第三態様の目地幅調整用治具(1)では、目地形成部(17)を治具本体(2)の中心軸周りに回転させることができるため、パネル(P1,P2)間への目地形成部(17)の出し入れがしやすい。
【0117】
また、上述した一実施形態及びその変形例のように、第四態様の目地幅調整用治具(1)は、第三態様の目地幅調整用治具(1)の構成に加えて、下記の構成を付加的に備える。
【0118】
すなわち、第四態様の目地幅調整用治具(1)では、目地形成部(17)は、治具本体(2)に長手方向の一端部が回転可能に取り付けられたアーム部(170)と、アーム部(170)の長手方向の他端部から互いに反対方向に延びた第一目地形成部(171)及び第二目地形成部(172)と、を有する。
【0119】
上記構成を備える第四態様の目地幅調整用治具(1)では、施工状況に合わせて、パネル(P1,P2)間に挿入する部分を、第一目地形成部(171)と第二目地形成部(172)から選択できて、汎用性に優れる。
【0120】
また、上述した一実施形態及びその変形例のように、第五態様の目地幅調整用治具(1)は、第一から第四のいずれか一つの態様の目地幅調整用治具(1)の構成に加えて、下記の構成を付加的に備える。
【0121】
すなわち、第五態様の目地幅調整用治具(1)では、目地形成部(17)は、合成樹脂製である。
【0122】
上記構成を備えることで、第五態様の目地幅調整用治具(1)では、パネル(P1,P2)間に目地形成部(17)を出し入れする際に、パネル(P1,P2)の表面に疵が付くことを抑制できる。また、第五態様の目地幅調整用治具(1)では、目地形成部(17)が金属製である場合に比べて、目地幅調整用治具(1)の重量を抑えやすくて、取り扱いがしやすい。
【0123】
また、上述した一実施形態及びその変形例のように、第六態様の目地幅調整方法は、第一から第五のいずれか一つの態様の目地幅調整用治具(1)を用いて、第一パネル(P1)と第二パネル(P2)の間の目地幅を調整する目地幅調整方法である。第六態様の目地幅調整方法では、第一引っ掛け部(3)を、第一パネル(P1)のうち第二パネル(P2)に隣接する側の端部に引っ掛け、第二引っ掛け部(5)を、第二パネル(P2)のうち第一パネル(P1)に隣接する側の端部に引っ掛ける。その後、第五態様の目地幅調整方法では、操作部(6)を操作して、可動部(4)及び第二引っ掛け部(5)を移動させて、第一パネル(P1)と第二パネル(P2)の間に目地形成部(17)を挟んで、第一パネル(P1)と第二パネル(P2)の間の目地幅を所定幅とする。
【0124】
上記構成を備える第五態様の目地幅調整方法では、パネル(P1,P2)間の目地に近い位置で操作部(6)を操作でき、操作部(6)の操作位置と目地幅の確認位置の間での移動を抑制でき、目地形成部(17)を挟むだけでパネル(P1,P2)間に所定幅の目地を形成することができる。そのため、第五態様の目地幅調整方法では、パネル(P1,P2)間の目地幅の調整がより簡単に行える。
【0125】
以上、本開示を添付図面に示す実施形態に基づいて説明したが、本開示は上記の各実施形態に限定されるものではなく、本開示の意図する範囲内であれば、適宜の設計変更が可能である。
【符号の説明】
【0126】
1 目地幅調整用治具
2 治具本体
3 第一引っ掛け部
4 可動部
5 第二引っ掛け部
6 操作部
17 目地形成部
170 アーム部
171 第一目地形成部
172 第二目地形成部
P1 第一パネル
P2 第二パネル