(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022181534
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】プレス機器
(51)【国際特許分類】
B30B 15/06 20060101AFI20221201BHJP
【FI】
B30B15/06 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021088532
(22)【出願日】2021-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】390014672
【氏名又は名称】株式会社アマダ
(71)【出願人】
【識別番号】000128876
【氏名又は名称】株式会社アマダプレスシステム
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】野尻 洋平
【テーマコード(参考)】
4E088
【Fターム(参考)】
4E088AA01
4E088DA12
(57)【要約】
【課題】スライドのダイハイト調整を行う下死点でも、バランスシリンダの内部の圧力をスライドの上死点と同じバランス圧に維持する。
【解決手段】プレス機器10では、調圧ユニット70の排気付きレギュレータ72が、スライド20を吊り下げ支持するバランスシリンダ50に、スライド20及び上型30の重量に応じたバランス圧の調圧空気を供給する。上死点から下死点へのスライド20の移動でシリンダ51の容積が減ると、バランスシリンダ50のシリンダ51の内部で調圧空気がバランス圧から増圧する。排気付きレギュレータ72は、増圧分の空気だけを、オープンされたソレノイドバルブ76を介してリリーフ穴75から大気に放出する。増圧分の空気を放出している間も、排気付きレギュレータ72は、バランスシリンダ50に対するバランス圧の調圧空気の供給を維持する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型の上型が取り付けられ、上死点と下死点との間で昇降するスライドと、
前記上型が取り付けられた前記スライドを、シリンダの内部に供給されるバランス圧の空気により、前記上死点においてバランス状態で吊り下げ支持するバランスシリンダと、
前記シリンダの内部に前記バランス圧の空気を供給するレギュレータと、
前記シリンダの内部の空気が前記バランス圧を超えて増圧した場合に、前記レギュレータを経て前記シリンダの外部に増圧分の空気を放出させる減圧回路と、
を備えるプレス機器。
【請求項2】
前記スライドに連結され、前記スライドを昇降させる動力を前記スライドに伝達するコネクティングロッドと、前記コネクティングロッドに設けられ、前記コネクティングロッドの前記動力側の要素に対する前記スライド側の要素の相対移動により、前記動力の伝達方向をベクトル成分として含む伸縮方向に前記コネクティングロッドを伸縮させるアジャスト機構と、前記アジャスト機構による前記コネクティングロッドの伸縮動作をロックするロック機構とをさらに備えており、前記減圧回路は、前記ロック機構のロック中に、前記増圧分の空気の放出を停止させる請求項1に記載のプレス機器。
【請求項3】
前記レギュレータ及び前記減圧回路は1つの排気付きレギュレータを構成している請求項1又は2に記載のプレス機器。
【請求項4】
前記バランス圧に応じた設定圧の空気を前記排気付きレギュレータに供給するパイロットレギュレータをさらに備えており、前記パイロットレギュレータにおける前記設定圧の調整により前記バランス圧の値が増減される請求項3に記載のプレス機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレス機器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、プレス機器の上型が取り付けられるスライドを、スライドに接続したバランスシリンダでバランス支持して、スライドの昇降を完全バランス支持状態で行う技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
バランスシリンダの内圧をバランス圧とするための調整は、スライドの上死点において、スライドに上型を取り付けた状態で行われる。
【0005】
スライドの上死点において、バランスシリンダの内圧をバランス圧に調整した場合、スライドの下死点では上死点よりもシリンダ室の容積が減るので、バランスシリンダの内圧が上がり、バランス圧よりも高いオーバーバランス状態となる。
【0006】
スライドの下死点では、上型を取り付けたスライドのダイハイトを調整するために、スライドの位置を昇降方向に調整するアジャスト調整が行われる。スライドのアジャスト調整をオーバーバランス状態で行うと、アジャスト調整時に動作する部分にかかる負荷が増加する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の1つの態様によるプレス機器は、
金型の上型が取り付けられ、上死点と下死点との間で昇降するスライドと、
前記上型が取り付けられた前記スライドを、シリンダの内部に供給されるバランス圧の空気により、前記上死点においてバランス状態で吊り下げ支持するバランスシリンダと、
前記シリンダの内部に前記バランス圧の空気を供給するレギュレータと、
前記シリンダの内部の空気が前記バランス圧を超えて増圧した場合に、前記レギュレータを経て前記シリンダの外部に増圧分の空気を放出させる減圧回路と、
を備える。
【0008】
本発明の1つの態様では、バランスシリンダのシリンダの内部にレギュレータからのバランス圧の空気が供給される。バランス圧の空気が供給されたバランスシリンダは、スライドの上死点において、スライド及びスライドに取り付けた上型をバランス状態で吊り下げ支持する。バランスシリンダのバランス状態では、スライド及び上型の合計重量による荷重とバランスシリンダからスライドに加わる吊り上げ方向の荷重とがバランスする。
【0009】
スライドの下死点では、スライドのアジャスト調整が行われる。アジャスト調整では、下型が固定されるボルスタに対するスライドの位置が、スライドの昇降方向において調整される。アジャスト調整の際には、アジャスト調整に伴い動作する部分に荷重がかかる。
【0010】
スライドの下死点では、バランスシリンダのシリンダの容積が、スライドの上死点よりも減少する。スライドの下死点では、シリンダの内部の圧力が、スライドの上死点におけるバランス圧を超えて増圧する。シリンダの内部の圧力が増圧したままだと、アジャスト調整に伴い動作する部分にかかる荷重が増加したままとなる。アジャスト調整に伴い動作する部分にかかる荷重が増加すると、この部分の消耗が促進される。
【0011】
本発明の1つの態様では、シリンダの内部の空気がバランス圧を超えて増圧すると、増圧分の空気が減圧回路によりシリンダの外部に放出される。増圧分の空気の放出により、シリンダの内部の圧力はバランス圧に戻る。シリンダの内部の圧力がバランス圧に戻ったバランスシリンダは、下死点において、上型を取り付けたスライドをバランス状態で吊り下げ支持する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の1つの態様に係るプレス機器によれば、スライドのダイハイト調整を行う下死点にスライドを移動させても、バランスシリンダの内部の圧力をスライドの上死点と同じバランス圧に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係るプレス機器のスライドの昇降に関与する部分の構成を模式的に示す説明図である。
【
図2】
図2は、
図1のスライドの昇降に関与する部分の構成として考えられる比較例の構成を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。各図面を通じて同一あるいは同等の部位、又は構成要素には、同一の符号を付している。
【0015】
以下に示す実施形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置等を例示するものである。この発明の技術的思想は、各構成要素の材質、形状、構造、配置、機能等を下記のものに特定するものでない。
【0016】
図1を参照して、本発明の実施形態に係るプレス機器を説明する。
図1では、プレス機器の要部の構成を示している。
図1のプレス機器10は、スライド20、上型30、下型が取り付けられるボルスタ(いずれも図示せず)、コネクティングロッド40、バランスシリンダ50を有している。プレス機器10は、コネクティングロッド40のロック機構44及びアジャスト機構60、バランスシリンダ50の調圧ユニット70、圧縮空気の供給源80をさらに有している。
【0017】
スライド20は、上死点と下死点との間で昇降する。スライド20の下面21には、金型の上型30が取り付けられる。スライド20の上部には、コネクティングロッド40及びバランスシリンダ50が連結されている。
【0018】
コネクティングロッド40は、不図示の動力源からのスライド20を昇降させる動力をスライド20に伝達するもので、動力側(動力源側)の要素である上部ロッド41とスライド側(スライド20側)の要素である下部ロッド42を有している。
【0019】
上部ロッド41は、例えば、不図示のクランク軸の偏心部に回転自在に連結されている。クランク軸は、サーボモータ等の動力源により回転させることができる。下部ロッド42は、スライド20の上部に揺動自在に連結されている。下部ロッド42は、例えば、下部ロッド42の下端のボールジョイント部43を介してスライド20に揺動自在に連結することができる。
【0020】
上部ロッド41及び下部ロッド42は、コネクティングロッド40のアジャスト機構60を介して連結されている。アジャスト機構60は、雄ねじ部61及び雌ねじ部62を用いて構成することができる。本実施形態では、下部ロッド42に雄ねじ部61を設け、上部ロッド41に雌ねじ部62を設けている。
【0021】
上部ロッド41と下部ロッド42とは、雄ねじ部61の雌ねじ部62に対する螺合により、動力源からスライド20への動力の伝達方向Xに連結することができる。雄ねじ部61の雌ねじ部62に対する螺合量は、上部ロッド41に対する下部ロッド42の回転による相対移動で調整することができる。
【0022】
アジャスト機構60では、雄ねじ部61の雌ねじ部62に対する螺合量の調整により、コネクティングロッド40を伸縮させることができる。コネクティングロッド40を伸縮させると、金型の下型が固定される不図示のボルスタに対するスライド20の高さ(ダイハイト)を調整することができる。
【0023】
コネクティングロッド40の伸縮方向は、コネクティングロッド40における動力の伝達方向Xをベクトル成分として含む方向とすることができる。本実施形態では、コネクティングロッド40の伸縮方向を、動力の伝達方向Xと一致させている。
【0024】
下部ロッド42は、例えば、不図示のサーボモータからウォームギアを介して下部ロッド42に伝達される動力により、上部ロッド41に対して回転させることができる。本実施形態では、上部ロッド41に対する下部ロッド42の回転によるコネクティングロッド40の伸縮動作を、ロック機構44によってロックできる構成としている。
【0025】
ロック機構44には、例えば、エアシリンダ45を用いることができる。エアシリンダ45は、例えば、押し出し型の単動式エアシリンダで構成することができる。エアシリンダ45のヘッド側には、ロック機構44のノーマルクローズのソレノイドバルブ46を介して、圧縮空気の供給源80が接続されている。
【0026】
ソレノイドバルブ46は、アジャスト機構60によるコネクティングロッド40の伸縮動作をロック機構44によってロックする際に、不図示のロック信号の入力によるソレノイドオンでオープンされる。ソレノイドバルブ46がオープンされると、供給源80からの圧縮空気がエアシリンダ45に供給され、エアシリンダ45のピストンロッド47がシリンダから押し出される。
【0027】
押し出されたピストンロッド47は、例えば、上述したウォームギアのウォーム又はウォームホイールと干渉し、下部ロッド42を回転できない状態にして、コネクティングロッド40の伸縮動作をロックする。
【0028】
ソレノイドバルブ46は、ロック機構44によるコネクティングロッド40の伸縮動作のロックを解除する際に、不図示のロック信号の入力終了によるソレノイドオフでクローズされる。ソレノイドバルブ46がクローズされると、エアシリンダ45が供給源80から遮断され、エアシリンダ45の圧縮空気がクローズされたソレノイドバルブ46を介して大気に放出される。エアシリンダ45の圧縮空気が大気に放出されると、ピストンロッド47が戻しばね48のバネ力によりシリンダに引き込まれる。
【0029】
引き込まれたピストンロッド47は、ウォームギアのウォーム又はウォームホイールと干渉しない位置に退避し、下部ロッド42を回転できる状態にして、コネクティングロッド40の伸縮動作のロックを解除する。このロック解除により、プレス機器10は、コネクティングロッド40の伸縮動作によりスライド20のダイハイト調整を行える状態になる。
【0030】
バランスシリンダ50は、スライド20を吊り下げ支持する。バランスシリンダ50は、1つのシリンダで構成してもよく、2つ以上の複数のシリンダで構成してもよい。本実施形態では、2つのバランスシリンダ50,50を、スライド20の上方に左右一対で配置している。各バランスシリンダ50は、例えば、引き込み型の単動式エアシリンダで構成することができる。
【0031】
各バランスシリンダ50は、シリンダ51の内部を移動するピストン52と、ピストン52に取り付けられたピストンロッド53とを有している。シリンダ51の外部に延出したピストンロッド53の下端は、スライド20の上部に連結されている。
【0032】
各バランスシリンダ50は、シリンダ51のロッド側に設けた不図示のポートからシリンダ51の内部に供給した圧縮空気からピストン52のスライド20側の受圧面が受ける圧力により、ピストンロッド53を介してスライド20を吊り下げ支持する。上型30を取り付けた上死点のスライド20は、各バランスシリンダ50のピストン52が受ける空気の圧力を合計した圧力がバランス圧である場合に、一対のバランスシリンダ50,50によりバランス状態で吊り下げ支持される。
【0033】
バランス圧とは、上型30を取り付けた上死点のスライド20に、上型30とスライド20とを合計した重量とつり合う吊り上げ方向の荷重が加わるときの、各シリンダ51のピストン52の受圧面が受ける圧力を合計した圧力値である。バランス圧は、スライド20に取り付けた上型30に応じた値となる。
【0034】
各バランスシリンダ50のシリンダ51のポートには、共通の調圧ユニット70が接続されている。調圧ユニット70では、供給源80からの圧縮空気を、フィルタ71の通過後に排気付きレギュレータ72で調圧し、空気タンク73を介して各バランスシリンダ50のシリンダ51のポートにそれぞれ供給する。排気付きレギュレータ72は、供給源80からの圧縮空気を、調圧ユニット70のパイロットレギュレータ74から出力される設定圧に応じた圧力に調圧する。
【0035】
排気付きレギュレータ72は、供給源80から入力された1次側の圧縮空気を、パイロットレギュレータ74からの設定圧に応じた圧力に調圧し、調圧空気として2次側から空気タンク73に出力する。
【0036】
排気付きレギュレータ72は、例えば、ハイリリーフレギュレータを用いて構成することができる。排気付きレギュレータ72は、不図示のチェック弁を有している。チェック弁は、2次側の調圧空気の圧力がパイロットレギュレータ74からの設定圧に応じた圧力を超えて増圧すると開き、増圧分の空気を排気付きレギュレータ72のハウジングの内部に受け入れる。受け入れた増圧分の空気は、例えば、ハウジングのリリーフ穴75から排気付きレギュレータ72の外部に放出することができる。1次側の圧縮空気がチェック弁を通って2次側に流入することはない。排気付きレギュレータ72のリリーフ穴75は、調圧ユニット70のノーマルオープンのソレノイドバルブ76を介して大気に接続されている。
【0037】
ソレノイドバルブ76は、ロック機構44によるコネクティングロッド40のロック及びロック解除と同期して動作する。ソレノイドバルブ76は、ロック機構44のソレノイドバルブ46と同じく、ロック信号の入力によりソレノイドオンし、ロック信号の入力終了によりソレノイドオフする。ソレノイドバルブ76は、ソレノイドオンによりクローズされると、排気付きレギュレータ72のリリーフ穴75を大気から遮断する。ソレノイドバルブ76は、ソレノイドオフによりオープンされると、リリーフ穴75を大気に連通させる。
【0038】
排気付きレギュレータ72の2次側の調圧空気が、設定圧に応じた圧力を超えて増圧した場合、ソレノイドバルブ76は、コネクティングロッド40のロック解除中に、増圧分の空気をリリーフ穴75から大気に放出させることができる。コネクティングロッド40のロック中は、ソレノイドバルブ76は、増圧分の空気の放出を停止させる。排気付きレギュレータ72のチェック弁、リリーフ穴75及びソレノイドバルブ76は、減圧回路を構成することができる。
【0039】
パイロットレギュレータ74は、2次側から排気付きレギュレータ72に出力する調圧空気の圧力(設定圧)を、例えば、不図示の調圧ネジの操作により、任意の圧力に設定することができる。パイロットレギュレータ74の設定圧の調整により、排気付きレギュレータ72から各バランスシリンダ50に供給する調圧空気のバランス圧を、スライド20とスライド20に取り付けた上型30との重量に応じた値に増減させることができる。
【0040】
空気タンク73内の空気の異常な圧力上昇は、空気タンク73に接続した調圧ユニット70のリリーフ弁77の開放により防止することができる。リリーフ弁77が開放されるときの空気の圧力は、例えば、排気付きレギュレータ72のチェック弁が開くときの調圧空気の圧力よりも高い圧力とすることができる。
【0041】
本実施形態のプレス機器10では、コネクティングロッド40の伸縮動作のロック中に、上型30を取り付けたスライド20を上死点に配置した状態で、一対のバランスシリンダ50,50に供給される調圧空気の圧力がバランス圧に調整される。バランス圧への調整後、スライド20及び上型30は、一対のバランスシリンダ50,50によってバランス状態で吊り下げ支持される。
【0042】
バランス圧への調整後、コネクティングロッド40の伸縮動作のロックが解除される。ロック解除後には、上型30を取り付けたスライド20が上死点から下死点に移動され、下死点においてスライド20のダイハイト調整が行われる。
【0043】
上死点から下死点へのスライド20の移動中に、バランスシリンダ50のシリンダ51の容積が減って、シリンダ51の内部の調圧空気がバランス圧から増圧すると、増圧分の空気が、排気付きレギュレータ72のチェック弁を通ってハウジングの内部に流入する。流入した増圧分の空気は、コネクティングロッド40のロック解除によりオープンされているソレノイドバルブ76を介して、排気付きレギュレータ72のリリーフ穴75から大気に放出される。
【0044】
排気付きレギュレータ72は、増圧分の空気を放出している間も、バランスシリンダ50に対するバランス圧の調圧空気の供給を維持する。スライド20及び上型30は、スライド20の上死点から下死点への移動中も、一対のバランスシリンダ50,50によりバランス状態で吊り下げ支持される。
【0045】
スライド20のダイハイト調整後には、コネクティングロッド40の伸縮動作がロックされて、プレス運転が開始される。コネクティングロッド40のロック中は、ソレノイドバルブ76がクローズされるので、シリンダ51の内部の調圧空気がバランス圧から増圧しても、増圧分の空気の大気への放出は停止される。
【0046】
本実施形態では、バランスシリンダ50にバランス圧の調圧空気を供給するのに、排気付きレギュレータ72を用いた。バランスシリンダ50に対するバランス圧の調圧空気の供給は、例えば、
図2に示す比較例の調圧ユニット170のように、調整圧可変のレギュレータ172を用いて行うこともできる。レギュレータ172は、フィルタ71を介して供給源80から供給される圧縮空気を、例えば、調圧ネジの操作によってバランス圧に調圧し、空気タンク73及びバランスシリンダ50のシリンダ51に供給することができる。
【0047】
レギュレータ172を用いると、シリンダ51の内部で調圧空気がバランス圧から増えた場合、異常圧力まで増圧してリリーフ弁77が開放されること以外に、シリンダ51の調圧空気を元のバランス圧に戻す術がなくなる。
【0048】
レギュレータ172を用いた場合、バランス圧への調整後にスライド20を上死点から下死点に移動させると、シリンダ51の調圧空気がバランス圧を超えて増圧する。シリンダ51の調圧空気が増圧すると、一対のバランスシリンダ50,50がスライド20に加える吊り上げ方向の荷重が過剰となってオーバーバランス状態となる。
【0049】
下死点への移動後に、スライド20のダイハイト調整をオーバーバランス状態で行うと、バランス状態よりも大きな荷重がアジャスト機構60の雄ねじ部61及び雌ねじ部62に加わる。アジャスト機構60と同じく、ダイハイト調整時に動作する、不図示のウォームギアのウォーム及びウォームホイール、サーボモータ等の部分にも、バランス状態よりも大きな荷重が加わる。バランス状態よりも大きな荷重が加わった部分では、消耗が促進されてしまう。
【0050】
本実施形態のプレス機器10では、
図1の排気付きレギュレータ72を用いることで、ダイハイトの調整時にもシリンダ51の調圧空気をバランス圧に保ち、調整時に動作する部分に過剰な荷重が加わり消耗が促進されるのを抑制することができる。
【0051】
排気付きレギュレータ72に入力される設定圧は、排気付きレギュレータ72で直接変更できるようにしてもよい。例えば、排気付きレギュレータ72の設定圧の入力部分に、調圧ネジ等の圧力を変更する構成を持たせると、排気付きレギュレータ72において設定圧を変更することができる。排気付きレギュレータ72で設定圧を変更する場合は、本実施形態において設定圧の変更に用いたパイロットレギュレータ74が不要となる。
【0052】
本実施形態のように、排気付きレギュレータ72の設定圧の変更にパイロットレギュレータ74を用いる利点は、設定圧を目標の圧力に変更する際の変更精度を高い精度に維持できることにある。
【0053】
例えば、設定圧の変更操作を排気付きレギュレータ72で直接行うと、排気付きレギュレータ72に入力される設定圧の空気の一部が排気付きレギュレータ72の内部でリリーフ穴75側に漏れる可能性がある。設定圧の空気がリリーフ穴75側に漏れると、リリーフ穴75から排気付きレギュレータ72の外に空気が漏出し、変更操作を正しく行っても設定圧を目標の圧力に正しく変更されない可能性がある。変更後の設定圧が正確でないと、排気付きレギュレータ72の2次側から出力される調圧空気の圧力を正しい圧力に変更することができない。
【0054】
リリーフ穴を持たないパイロットレギュレータ74では、排気付きレギュレータ72のような、設定圧の空気がリリーフ穴から漏出することを危惧する必要がない。パイロットレギュレータ74で排気付きレギュレータ72の設定圧の変更操作を行えば、変更操作に応じて設定圧を目標の圧力に正しく変更し、各バランスシリンダ50に供給する空気の圧力の調整精度を高く維持することができる。
【0055】
本実施形態では、コネクティングロッド40の伸縮動作をロックさせるロック信号の入力終了に同期して、ソレノイドバルブ76をオープンさせ、ロック信号の入力再開に同期して、ソレノイドバルブ76をクローズさせた。ソレノイドバルブ76の動作をロック信号に同期させることで、排気付きレギュレータ72のリリーフ穴75から大気に増圧分の空気を放出できない状態と放出できる状態とを、ロック機構44のロック及びロック解除に同期して切り替えることができる。この切り替えにより、上死点から下死点へのスライド20の移動中に増圧したバランスシリンダ50の増圧分の空気を、確実に大気に放出させることができる。
【0056】
スライド20の上死点から下死点への移動中にソレノイドバルブ76をオープンさせるために、ロック信号以外の信号又は動作にソレノイドバルブ76の動作を同期させてもよい。
【0057】
減圧回路の構成要素である排気付きレギュレータ72のチェック弁及びリリーフ穴75は、ソレノイドバルブ76と同じく、排気付きレギュレータ72から分離した要素で構成してもよい。例えば、ハイリリーフレギュレータ等の、チェック弁及びリリーフ穴75を一体化したレギュレータを用いれば、減圧回路の要部をレギュレータが有する要素で容易に構成することができる。
【符号の説明】
【0058】
10 プレス機器
20 スライド
30 上型
40 コネクティングロッド
41 上部ロッド(動力側の要素)
42 下部ロッド(スライド側の要素)
60 アジャスト機構
44 ロック機構
72 排気付きレギュレータ(レギュレータ、減圧回路)
74 パイロットレギュレータ
75 リリーフ穴(減圧回路)
76 ソレノイドバルブ(減圧回路)
X 伝達方向