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特開2022-181536ころの保持方法およびローラサポート
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022181536
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】ころの保持方法およびローラサポート
(51)【国際特許分類】
   B24B 5/18 20060101AFI20221201BHJP
   B24B 41/06 20120101ALI20221201BHJP
   B24B 5/24 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
B24B5/18 D
B24B41/06 J
B24B5/24
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021088536
(22)【出願日】2021-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】596066024
【氏名又は名称】西部自動機器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003041
【氏名又は名称】特許業務法人安田岡本特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】越智 研二
【テーマコード(参考)】
3C034
3C043
【Fターム(参考)】
3C034AA01
3C034BB79
3C034DD20
3C043AA08
3C043AA14
3C043CC03
3C043DD01
3C043DD03
3C043DD05
(57)【要約】
【課題】センターレス(心なし)研磨装置等により断面円形のワーク表面を研磨等する装置におけるころの保持方法およびころ保持装置(ローラサポート)を提供する。
【解決手段】 断面が円形のころの保持方法は、回転可能な一対の円柱状のローラ51a,51bを用いる。円すいころを保持するときは、一対のローラを、上から見たときに水平方向に並び各軸心AXa,AXbの延長が交わるように、且つ各ローラが並ぶ方向から見たときに軸心が交わる側を他方の側より高くなるように位置させる。円すいころは、径小底面側を軸心が交わる側に位置させてローラの上に保持される。円筒ころを保持するときは、一対のローラを、上から見たときに水平方向に並び軸心が平行になるように、且つローラが並ぶ方向から見たときに各軸心がいずれも水平となるように位置させる。円筒ころは一対のローラの上に保持される。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の円柱状のローラで円すいころを保持する方法であって、
回転可能な一対の円柱状のローラを、
上から見たときに水平方向に並んでその軸心の延長が交わるように、
且つ2つの前記ローラが並ぶ方向から見たときに2つの前記軸心が交わる側を他方の側に対して高くなるように位置させ、
前記円すいころの径小底面側を前記軸心が交わる側に位置させて一対の前記ローラの上に保持する
ことを特徴とする円すいころの保持方法。
【請求項2】
センターレス研磨装置において研磨対象を保持するローラサポートであって、
その上に前記研磨対象を保持可能に並び回転可能な外観が円柱状の一対のローラと、
前記一対のローラを上から見たときにそれぞれにおける軸心の一方の側の延長が交差しまたは前記軸心が平行となるように、前記一対のローラそれぞれを互いに逆方向に回動させる回動装置と、
前記一対のローラの並び方向から見たとき、前記軸心の延長が交差する側を他方の側より高くしまたはいずれも水平となるように前記ローラの傾きを変更させる傾斜装置と、を有する
ことを特徴とするローラサポート。
【請求項3】
前記一対のローラの間隔を変更する間隔変更装置を備えた
請求項2に記載のローラサポート。
【請求項4】
前記傾斜装置は、前記一対のローラが常に同じ傾きになるように構成された
請求項2または請求項3に記載のローラサポート。
【請求項5】
前記一対のローラの径が同じであり、
前記回動装置は、前記一対のローラそれぞれの逆方向への回動角度の絶対値が同じになるように、構成された
請求項4に記載のローラサポート。
【請求項6】
前記間隔変更装置は、前記一対のローラのそれぞれを互いに逆方向に移動させ且つその移動距離が同じとなるように構成された
請求項5に記載のローラサポート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センターレス(心なし)研磨装置等を用いて断面円形のワーク表面を研磨等する場合における円すいころの保持方法およびころ保持装置(ローラサポート)に関する。
【背景技術】
【0002】
製造業での生産用機械および自動車等の運搬用機械等における回転機器の動力伝達部分には、回転軸を支持する種々の形態の軸受(ベアリング)が使用される。軸受のうち円筒ころ軸受および円すいころ軸受は、玉軸受に比べてより大きな荷重を支える部分に用いられる。
円筒ころ軸受は主にラジアル荷重を受け、円すいころ軸受はラジアル荷重およびアキシアル荷重の両方を受ける。しかし、いずれのころ軸受も、断面円形のころが回転することで軸の滑らかな回転を可能にし、軸受における動力ロスを軽減する。
【0003】
また、円筒ころ軸受に使用される円筒ころおよび円すいころ軸受に使用される円すいころは、その表面が平滑であるほど回転時の静寂性が高まり、且つこれらが使用された軸受の耐久性が高まる。この表面の平滑化について、センタレス研削装置を用いて円筒ころおよび円すいころの周面の研磨(超仕上)を行う技術が特許文献1に紹介されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6842703号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に紹介された技術(センタレス研削装置)は、円筒ころの周面を研削等するときには外観が円柱の一対のローラが使用され、円すいころの周面を研削等するときには外観が円錐台の一対のローラが使用される。これは、例えば研削処理が超仕上である場合、ころの軸心を含む仮想鉛直面内で超仕上砥石を水平に振動させるので、一対のローラに支持されるころ周面の最も高い位置にある母線(稜線)を水平にする必要が有るからである(特許文献1の図7(c),(d)および図9(e),(f))。
【0006】
特許文献1に記載された一対のローラは、円柱形状および円錐台形状のいずれも、それぞれ円筒ころのみにまたは円すいころのみに使用可能である。特に円錐台形状のローラは、円すいころであってもその周面の傾斜の程度(円錐の一部とした時の円錐の頂角)が異なれば、稜線を水平にするためにローラを取り替えなければならない。特許文献1に記載された一対のローラは、円柱形状では円筒ころのみに、および円錐台形状では円すいころのみにその使用が制限される。
【0007】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたもので、円柱状のローラにより円すいコロを保持する方法、および円筒ころおよび円すいころのいずれにも使用できるローラサポート(ころ保持装置)を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る円すいころの保持方法は、回転可能な一対の円柱状のローラを用いる。一対の円柱状のローラは、上から見たときに水平方向に並んでその軸心の延長が交わるように、且つ2つのローラが並ぶ方向から見たときに2つの軸心が交わる側を他方の側に対して高くなるように位置させる。円すいころは、その径小底面側を軸心が交わる側に位置させて一対のローラの上に保持される。
【0009】
ここで「上から見たときに水平方向に並んで」とは、ローラの軸心までもが所謂「水平」であることを意味せず、「鉛直方向」に直交する方向に並んでいる意である。
本発明に係るローラサポートは、センターレス研磨装置において研磨対象を保持する装置である。ローラサポートは、その上に研磨対象を保持可能に並び回転可能な円柱状の一対のローラ、一対のローラを上から見たときにそれぞれにおける軸心の一方の側の延長が交差しまたは軸心が平行となるように一対のローラそれぞれを互いに逆方向に回動させる
回動装置、および一対のローラの並び方向から見たとき軸心の延長が交差する側を他方の側より高くしまたはいずれも水平となるようにローラの傾きを変更させる傾斜装置、を有する。
【0010】
好ましくは、ローラサポートは、一対のローラの間隔を変更する間隔変更装置を備える。
好ましくは、傾斜装置は、一対のローラが常に同じ傾きになるように構成される。
好ましくは、ローラサポートにおける一対のローラの径が同じであり、且つ回動装置は一対のローラそれぞれの逆方向への回動角度の絶対値が同じになるように構成される。
【0011】
好ましくは、ローラサポートは、間隔変更装置が一対のローラのそれぞれを互いに逆方向に移動させ且つその移動距離が同じになるように構成される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、円筒ころおよび円すいころのいずれにも使用できるローラサポート(ころ保持装置)を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1はローラサポートの斜視図である。
図2図2はローラサポートの正面図である。
図3図3はローラサポートの平面図である。
図4図4はローラサポートにおける一体となって移動等する各部分を説明する正面図である。
図5図5はローラサポートが円筒ころを保持する様子を示す図である。
図6図6は円筒ころを保持するためのローラサポートの動作を示す図である。
図7図7は径が異なる円筒ころをローラサポートが保持する様子を示す図である。
図8図8は大きさが異なる円すいころをローラサポートが保持する様子を示す図である。
図9図9は他の形態のローラを示す図である。
図10図10は他の形態のローラを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1はローラサポート1の斜視図、図2はローラサポート1の正面図、図3はローラサポート1の平面図、図4はローラサポート1における一体となって移動等する各部分を説明する正面図である。
図3における、一点鎖線で囲まれた部分Bは図2のAA矢視における間隔変更装置29の断面であり、一点鎖線で囲まれた部分Bは回動装置41bの回動用ピニオン44bおよび回動用ラック45bの関係を示す。
【0015】
なお、図4(a),(b),(c),(d)における各網掛け部分は、以下に説明するステージ本体2、傾斜テーブル3、回転軸角変更装置4aおよびころ保持部5aを表すものではなく、一体化され相互の位置関係が不変の部分を示すものである。
ローラサポート1は、ステージ本体2、傾斜テーブル3、いずれも一対の回転軸角変更装置4a,4bおよびころ保持部5a,5b等を有する。
【0016】
ステージ本体2は、2つのステージ11、基部12、傾斜装置13および複数の揺動阻止クランプ14,14等からなる。
ステージ11は、断面が円弧であって円弧の曲率中心(以下「円弧中心C」という)Cが外方にある凹状曲面15(以下「ステージ摺動面15」という)を備える、湾曲する厚板状部分である。ステージ11は、「ゴニオステージ」における「ステージ本体」に該当する。ステージ11は、ステージ本体2における、ステージ摺動面15の母線方向(図3の上下方向)の両端に、それぞれ一つが設けられる。つまり、2つのステージ11は、ローラサポート1における2つのローラ51a,51bが並ぶ方向(図3の上下方向)の両端にそれぞれ配される。
【0017】
基部12は、その上部にステージ11を支持し、それ自体はローラサポート1が組み入れられるころの周面を超仕上等する装置に一体化するためのものである。
傾斜装置13は、傾斜用モータ21、傾斜用ピニオン22および傾斜用ラック23等からなる。傾斜用モータ21はサーボモータである。傾斜用ピニオン22は、傾斜用モータ21の水平に配された出力シャフトに取り付けられている。傾斜用ラック23は歯が円弧状に並ぶ円弧ラックである。傾斜用ラック23は、歯幅方向(一つの歯の歯先が伸びた方向)を水平にして傾斜テーブル3に固定され、その歯が傾斜用ピニオン22に噛み合わされている。
【0018】
揺動阻止クランプ14は、例えばローラサポート1が保持するころの研磨処理を行うとき、ステージ本体2に傾斜テーブル3を固定する役割をする。揺動阻止クランプ14における傾斜テーブル3の固定方法については、傾斜テーブル3の記載にて説明する。
ステージ11は、2つの誘導輪16,16を有する。誘導輪16,16についても、傾斜テーブル3の記載において説明する。
【0019】
傾斜テーブル3は、2つの摺動部26、アリガタ27、2つのアリミゾ28a,28bおよび間隔変更装置29等を備える。
摺動部26は、湾曲する厚板状であり、その両側の表面(図2における上下の表面)は、いずれも上方が凹状の円弧である。ローラサポート1において、両表面における円弧の曲率中心は円弧中心Cに一致する。また、摺動部26の下方の円弧状表面の曲率半径は、湾曲するステージ摺動面15の曲率半径に略等しい。
【0020】
摺動部26の少なくとも一方には、その端面近傍に、その上下の表面間を貫通しその円弧の周方向に長い開口を有する貫通孔30が設けられている。
摺動部26は、揺動可能にステージ11のステージ摺動面15上に載せられている。
アリガタ27は、矩形板状の厚板部、および厚板部の上面から突出し断面が逆台形の帯状に伸びた突出部分31を有する。突出部分31は、2つの摺動部26が並ぶ方向(図3の上下方向)に伸びる。
【0021】
アリガタ27の突出部分31には、突出部分31が伸びた方向に並ぶ2つの細長い矩形の溝38,38(以下「移動用溝38」という)が設けられ、これらの間をより幅が狭い溝が繋いでいる。
アリガタ27は、正面視(図2)においてその突出部分31を上にしてその厚板部が摺動部26の上に固定されている。
【0022】
アリミゾ28a,28bは、いずれもアリガタ27の突出部分31と嵌合する溝を有し、この溝に突出部分31が嵌め入れられて突出部分31が伸びた方向(以下「移動方向」という)に個別に移動可能である。アリガタ27とアリミゾ28a,28bとは、所謂「アリガタアリミゾ」の関係である。2つのアリミゾ28a,28bは、略同一の形状である。アリミゾ28a,28bは、平面視(図3)においてその溝に直交する方向が長い矩形である。
【0023】
間隔変更装置29は、間隔変更用モータ34、ギアボックス35、両ネジ36および2つの雌ネジ部材37a,37b等で構成される。
間隔変更用モータ34は、サーボモータが用いられる。間隔変更用モータ34の回転軸は、ギアボックス35により回転軸が90度変更されて両ネジ36の一端に連結される。
両ネジ36は、丸棒の一方の側に正ネジが、他方の側に逆ネジが設けられている。両ネジ36は、移動用溝38,38のそれぞれの内部において正ネジ用の雌ネジを有する雌ネジ部材37aおよび逆ネジ用の雌ネジを有する雌ネジ部材37bに螺合されている。
【0024】
雌ネジ部材37aおよび雌ネジ部材37bは、それぞれが互いに異なる一方のアリミゾ28a,28bに固定されている。
間隔変更装置29は、間隔変更用モータ34により両ネジ36が回転して雌ネジ部材37aと雌ネジ部材37bとを近づけまたは遠ざける。雌ネジ部材37aはアリミゾ28aにおよび雌ネジ部材37bはアリミゾ28bに固定されているので、間隔変更用モータ34を回転させることにより、2つのアリミゾ28a,28bの間隔を変更することができる。
【0025】
2つのアリミゾ28a,28bは、それぞれ固定ノブ39,…,39によりアリガタ27に対する摺動が制限される。
なお、前述した傾斜装置13における揺動阻止クランプ14は、そのロッドが摺動部26の貫通孔30を貫き、ステージ11の下面と摺動部26の上面とが接近する方向にこれらを押圧することで、ステージ本体2に傾斜テーブル3を固定する。
【0026】
また、傾斜装置13における誘導輪16,16は、摺動部26における湾曲する上面に接し、傾斜テーブル3を揺動(傾斜)させる際の湾曲する上面の移動に伴い回転する。2つの誘導輪16,16は、その回転軸がステージ11に一体化されており、傾斜テーブル3の揺動が円滑に行われるように摺動部26を誘導する役割をする。
一対の回転軸角変更装置4a,4bは、それぞれが回動装置41a,41b、回動台42a,42b等を有する。
【0027】
2つの回転軸角変更装置4a,4bはその構造が略同一なので、一方の回転軸角変更装置4aについて説明する。
回動装置41aは、回動用モータ43a、回動用ピニオン44aおよび回動用ラック45a等からなる。回動用モータ43aは、サーボモータでありその出力シャフトを上にして本体が一方のアリミゾ28aの側面に一体化されている。回動用ピニオン44aは、回動用モータ43aの出力シャフトに取り付けられている。
【0028】
回動用ラック45aは歯が円弧状に並ぶ円弧ラックである。回動用ラック45aは、その歯が回動用ピニオン44aに噛み合わされた状態で回動台42aに固定されている。
回動台42aは矩形の板状部材であり、回動用ラック45aはその長手方向の端部に固定される。回動台42aは、その長手方向をアリミゾ28aの長手方向に略一致させて、アリミゾ28aに対して回動軸46a回りに回動可能にアリミゾ28aの上に一体化されている。
【0029】
回動装置41aは、アリミゾ28aに一体化された回動用モータ43aが回動用ピニオン44aを回転させ、これに噛み合う回動用ラック45aを有する回動台42aを回動軸46a回りに回動させる。
他方の回転軸角変更装置4bにおける回動装置41bおよび回動台42bの構造および機能等は、回転軸角変更装置4aにおけるこれらと同じである。
【0030】
他方の回転軸角変更装置4bにおける回動台42bは、回動軸46bによりもう一方のアリミゾ28bの上に回動可能に一体化されている。したがって、一対の回転軸角変更装置4a,4bは、アリガタ27の突出部分31が伸びた方向に間隔をあけて並ぶ。
それぞれの回動軸46a,46bは、いずれも回動台42a,42bの長手方向における回動用ラック45a,45bとは反対側の端近傍の、それぞれにとって他方の回動台42b,42aに近い側に配されている。つまり、回転軸角変更装置4aの回動軸46aは、回動台42aの長手方向の端近傍における他方の回転軸角変更装置4bに近い側に配される。
【0031】
回転軸角変更装置4aと回転軸角変更装置4bとは、その構成各部の配置等が鉛直面に対して面対称である。
2つの回転軸角変更装置4a,4bにおける回動装置41a,41bは、それぞれの回動台42a,42bの回動方向が正反対となるように動作する。例えば、図3において回動装置41aが横方向に対して回動台42aを-θ度回動させると、回動装置41bは横方向に対して回動台42bをθ度回動させる。
【0032】
回動台42a,42bは、例えばその上にころを保持して研磨処理する等のときには、回動クランプ47により不要な回動が阻止される。
一対のころ保持部5a,5bは、それぞれがローラ51a,51bおよびローラ回転装置52a,52b等からなる。ローラ51a,51bはいずれも外観が円柱の形状であってその形状、大きさは全く同じである。
【0033】
ころ保持部5aにおけるローラ51aは、その回転軸を回動台42aの長手方向に一致させて、その回転軸の両側が回動台42aに固定された軸受により支持されている。ローラ回転装置52aは、回動用ラック45aに近い軸受に固定されている。ローラ回転装置52aはサーボモータであり、その出力シャフトはローラ51aの回転軸に連結されている。ローラ回転装置52aはローラ51aを任意の回転数で回転させることができる。
【0034】
ころ保持部5bもころ保持部5aにおけるものと全く同じ構成(軸受53b等)を有する。
一対のころ保持部5a,5bは、アリミゾ28a,28bの移動方向(正面視、図2)から見たとき、それぞれのローラ51a,51bが重なる。
次にローラサポート1が円筒ころおよび円すいころを保持するための動作を説明する。
【0035】
図5はローラサポート1が円筒ころW1を保持する様子を示す図、図6は円筒ころW1を保持するためのローラサポート1の動作を示す図である。
例えば、ころの周面を超仕上する超仕上装置では、砥石はコロの周面の母線方向にオシレーション(高速微振動)する。また、オシレーションの方向は略水平である。このことから、超仕上装置に用いられるローラサポート1は、ころの稜線が水平になるようにころを保持するのが好ましい。ここで「稜線」とは、ローラサポート1に保持されたころをその軸心に直交する水平方向から見たときのころの最上部の輪郭線をいう。例えば図5(b)においては、円筒ころW1における「E」を付した線である。
【0036】
さて、保持する円筒ころW1の稜線を水平にするには、ローラサポート1における一対のローラ51a,51bの回転軸を水平に且つこれらを平行にする必要がある(図5)。
図6(a)を参照して、ローラサポート1では、傾斜装置13における傾斜用モータ21を動作させ、図2におけるローラ51a,51bの回転軸が傾く状態から回転軸が水平になるまで、傾斜テーブル3を揺動させる。ローラ51a,51bの回転軸が水平になると傾斜用モータ21を停止させ、揺動阻止クランプ14,14により傾斜テーブル3がステージ11(ステージ本体2)に固定される。
【0037】
図6(b)を参照して、続いてそれぞれの回転軸角変更装置4a,4b(回動装置41a,41b)における回動用モータ43a,43bを動作させ、図3における2つのローラ51a,51bの回転軸の延長が交わる状態から2つの回転軸が平行になるまで、(ころ保持部5a,5bを支持する)回動台42a,42bを回動軸46a,46b回りに回動させる。2つのローラ51a,51bの回転軸が平行になったら、回動クランプ47により回動台42a,42bがアリミゾ28a,28bに固定される。
【0038】
図7は径が異なる円筒ころW1a,W1bをローラサポート1が保持する様子を示す図である。図7において、(a)は径小の円筒ころW1aを保持するローラサポート1の平面図、(b)は(a)の正面図、(c)は(a)のローラ51a,51bおよび円筒ころW1aの右側面図、(d)は(b)のローラ51a,51bおよび円筒ころW1aの右側面図、(e)は(d)において径大の円筒ころW1bを保持したときの右側面図である。
【0039】
ローラサポート1は、異なる大きさの径D1,D2を有する円筒ころW1a,W1bに対して、2つのローラ51a,51bの回転軸の間隔を変更(S1をS2に)することにより、その稜線Eの高さ(H1+H,H2+H)を一定に保つことができる。
2つのローラ51a,51bの間隔の変更は、間隔変更装置29における間隔変更用モータ34が両ネジ36を回転させ、アリミゾ28a,28bを互いに近づけまたは互いに遠ざけることにより行う。
【0040】
ローラサポート1は、円柱状の一対のローラ51a,51bの回転軸を水平にした状態では、径が異なる種々の円筒ころに対して、ローラ51a,51bの間隔を変更することにより、その稜線の高さを変えることなく保持することができる。
図8は大きさが異なる円すいころW2a,W2bをローラサポート1が保持する様子を示す図である。図8において、(a)は大きな円すいころW2aを保持するローラサポート1を上から斜め下((b)の矢印AR方向)方向に見た図、(b)は(a)の正面図、(c)は(a)のローラ51a,51bおよび円すいころW2aの右側面図、(d)は(b)のローラ51a,51bおよび円すいころW2aの右側面図、(e)は(d)において小さな円すいころW2bを保持したときの右側面図である。
【0041】
ローラサポート1は、例えば超仕上において、直前まで処理した円すいころW2aに代えてこれよりも大きさが小さな円すいころW2bを超仕上する場合、砥石の高さを変えないで、つまりローラサポート1が保持する円すいころW2bの稜線の高さを直前の円すいころW2aの稜線Eの高さと同じ(図8、H2=H1)とするために、以下の変更を行う
【0042】
すなわち、間隔変更装置29により2つのアリミゾ28a,28bを近づけてころ保持部5a,5bの間隔を狭める(図8、S1>S2)。続いて回動装置41a,41bを動作させ、平面視(図8(a))において2つのローラ51a,51bの回転軸(軸心)の(延長が)なす角度を小さくする。
図8(e)において、α1およびα2は平面視でローラ51a,51bの回転軸がなす角度を示すものではないが、この図のα2<α1から、2つの回転軸がなす角度を小さくすれば、円すいころW2bの稜線Eの高さが直前の大きな円すいころW2aと同じになることが理解できる。
【0043】
ローラサポート1は、一対のローラ51a,51bがいずれも円柱状でありながら、これらの回転軸の延長を交差させ、且つローラ51a,51bを、回転軸の延長が交差する側が高くなるように位置させることで、その稜線Eが水平になるように円すいころW2a,W2bを保持することができる。
ローラサポート1は、形状および大きさが異なる円すいころに対して、2つのローラ51a,51bの間隔、これらの回転軸の水平面に対する傾斜の程度、およびこれらの回転軸(軸心)の(延長が)がなす角度を適宜選択することにより、その稜線Eの高さを一定に保つことができる。
【0044】
図9および図10は他の形態のローラ51Ba,51Bbおよびローラ51Ca,51Cbが円すいころW2を保持する様子を示す図である。図9および図10のいずれにおいても、(a)はこの様子の正面図、(b)は平面図、(c)は右側面図である。
図9および図10に示されるローラ51Ba,51Bb(図9)、51Ca,51Cb(図10)は、いずれも互いの径が異なる円柱形状である。
【0045】
なお、以下の説明においてローラ51Ba,51Bbまたはローラ51Ca,51Cbを有するローラサポートにおけるローラサポート1と同一のまたは類似の構成については、ローラサポート1と同じ符合を付す。
図9に示される一対のローラ51Ba,51Bbを有するローラサポートは、アリミゾ28a,28bそれぞれに別々のアリガタを組み合わせて一対のころ保持部5a,5bを個別に移動可能とし、またアリミゾ28a,28bに対する保持部5a,5b(回動台42a,42b)の回動も相互に独立して行うよう構成される。
【0046】
一対のローラ51Ba,51Bbを有するローラサポートでは、保持部5a,5bの回動が、保持する円すいころW2の軸心AXr(正面視(a)における稜線E)をアリミゾ28a,28bの移動方向に直交させるために円すい形状の頂角に応じて互いに異なる(回動)角度で行われる(α3≠α4)。
また、一対のローラ51Ba,51Bbは、円すいころW2の稜線Eの(平面視(b)における)位置が例えば超仕上用砥石の直下となるように、間隔変更装置によりアリミゾ28a,28bの移動がそれぞれ独立して行われる。
【0047】
図10に示される一対のローラ51Ca,51Cbを有するローラサポートは、図9に示されるローラ51Ba,51Bbにおけるアリミゾ28a,28bそれぞれが独立して移動可能なこと、およびアリミゾ28a,28bに対する保持部5a,5bの回動が相互に独立して行えること、に加えて、ローラサポート1で傾斜装置13が行う水平に対する傾斜を2つのローラ51Ca,51Cbそれぞれについて別個に行うことが可能である。
【0048】
ローラ51Ca,51Cbの水平に対する傾斜動作を別々に行わせるには、それぞれにローラサポート1におけるような「ゴニオステージ」を配する。ローラ51Ca,51Cbは、それぞれが別個の傾斜装置、間隔変更用移動装置および回動装置によりその姿勢が変更される。
ローラ51Ca,51Cbは、図9に示されるローラ51Ba,51Bbと同じ姿勢とすることができる点で、保持できる円すいころの範囲がローラ51Ba,51Bbに比べてより広い。
【0049】
それぞれの一対のローラ51a,51b、51Ba,51Bb、51Ca,51Cbは、円すいころを保持するときはいずれも上から見たときにその回転軸(軸心)の延長が交
わる。また、一対のローラ51a,51b、51Ba,51Bb、51Ca,51Cbの回転軸の延長が交わるときは、いずれも2つの回転軸の延長が交わる側が他方の側に対して高い。
【0050】
上述の実施形態において、ローラサポート、およびローラサポートの各構成または全体の構造、形状、寸法、個数、材質などは、本発明の趣旨に沿って適宜変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、センターレス(心なし)研磨装置等により断面円形のワーク表面を研磨等するときのころの保持に利用することができる。
【符号の説明】
【0052】
1 ローラサポート
13 傾斜装置
29 間隔変更装置
41a,41b 回動装置
51a,51b,51Ba,51Bb,51Ca,51Cb ローラ
AXa,AXb ローラの軸心
W2,W2a,W2b 円すいころ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【手続補正書】
【提出日】2022-01-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センターレス(心なし)研磨装置等を用いて断面円形のワーク表面を研磨等する場合における円すいころおよび円筒ころの保持方法およびころ保持装置(ローラサポート)に関する。
【背景技術】
【0002】
製造業での生産用機械および自動車等の運搬用機械等における回転機器の動力伝達部分には、回転軸を支持する種々の形態の軸受(ベアリング)が使用される。軸受のうち円筒ころ軸受および円すいころ軸受は、玉軸受に比べてより大きな荷重を支える部分に用いられる。
円筒ころ軸受は主にラジアル荷重を受け、円すいころ軸受はラジアル荷重およびアキシアル荷重の両方を受ける。しかし、いずれのころ軸受も、断面円形のころが回転することで軸の滑らかな回転を可能にし、軸受における動力ロスを軽減する。
【0003】
また、円筒ころ軸受に使用される円筒ころおよび円すいころ軸受に使用される円すいころは、その表面が平滑であるほど回転時の静寂性が高まり、且つこれらが使用された軸受の耐久性が高まる。この表面の平滑化について、センタレス研削装置を用いて円筒ころおよび円すいころの周面の研磨(超仕上)を行う技術が特許文献1に紹介されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6842703号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に紹介された技術(センタレス研削装置)は、円筒ころの周面を研削等するときには外観が円柱の一対のローラが使用され、円すいころの周面を研削等するときには外観が円錐台の一対のローラが使用される。これは、例えば研削処理が超仕上である場合、ころの軸心を含む仮想鉛直面内で超仕上砥石を水平に振動させるので、一対のローラに
支持されるころ周面の最も高い位置にある母線(稜線)を水平にする必要が有るからである(特許文献1の図7(c),(d)および図9(e),(f))。
【0006】
特許文献1に記載された一対のローラは、円柱形状および円錐台形状のいずれも、それぞれ円筒ころのみにまたは円すいころのみに使用可能である。特に円錐台形状のローラは、円すいころであってもその周面の傾斜の程度(円錐の一部とした時の円錐の頂角)が異なれば、稜線を水平にするためにローラを取り替えなければならない。特許文献1に記載された一対のローラは、円柱形状では円筒ころのみに、および円錐台形状では円すいころのみにその使用が制限される。
【0007】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたもので、円柱状のローラにより円すいコロを保持する方法、および円筒ころおよび円すいころのいずれにも使用できるローラサポート(ころ保持装置)を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る断面が円形のころの保持方法は、回転可能な一対の円柱状のローラを用いる。
円すいころを保持するときは、一対のローラを、上から見たときに水平方向に並んでその軸心の延長が交わるように、且つ2つのローラが並ぶ方向から見たときに2つの軸心が交わる側を他方の側に対して高くなるように位置させる。円すいころは、その径小底面側を軸心が交わる側に位置させて一対のローラの上に保持される。
また、円筒ころを保持するときは、一対のローラを、上から見たときに水平方向に並んでそれぞれの軸心が平行になるように、且つ2つのローラが並ぶ方向から見たときにそれぞれの軸心がいずれも水平となるように位置させる。円筒ころは一対のローラの上に保持される。
【0009】
ここで「上から見たときに水平方向に並んで」とは、ローラの軸心までもが所謂「水平」であることを意味せず、「鉛直方向」に直交する方向に並んでいる意である。
本発明に係るローラサポートは、センターレス研磨装置において研磨対象を保持する装置である。ローラサポートは、その上に研磨対象を保持可能に並び回転可能な円柱状の一対のローラ、一対のローラを上から見たときにそれぞれにおける軸心の一方の側の延長が交差しまたは軸心が平行となるように一対のローラそれぞれを互いに逆方向に回動させる回動装置、および一対のローラの並び方向から見たとき軸心の延長が交差する側を他方の側より高くしまたはいずれも水平となるようにローラの傾きを変更させる傾斜装置、を有する。
【0010】
好ましくは、ローラサポートは、一対のローラの間隔を変更する間隔変更装置を備える。
好ましくは、傾斜装置は、一対のローラが常に同じ傾きになるように構成される。
好ましくは、ローラサポートにおける一対のローラの径が同じであり、且つ回動装置は一対のローラそれぞれの逆方向への回動角度の絶対値が同じになるように構成される。
【0011】
好ましくは、ローラサポートは、間隔変更装置が一対のローラのそれぞれを互いに逆方向に移動させ且つその移動距離が同じになるように構成される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、円筒ころおよび円すいころのいずれにも使用できるローラサポート(ころ保持装置)を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1はローラサポートの斜視図である。
図2図2はローラサポートの正面図である。
図3図3はローラサポートの平面図である。
図4図4はローラサポートにおける一体となって移動等する各部分を説明する正面図である。
図5図5はローラサポートが円筒ころを保持する様子を示す図である。
図6図6は円筒ころを保持するためのローラサポートの動作を示す図である。
図7図7は径が異なる円筒ころをローラサポートが保持する様子を示す図である。
図8図8は大きさが異なる円すいころをローラサポートが保持する様子を示す図である。
図9図9は他の形態のローラを示す図である。
図10図10は他の形態のローラを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1はローラサポート1の斜視図、図2はローラサポート1の正面図、図3はローラサポート1の平面図、図4はローラサポート1における一体となって移動等する各部分を説明する正面図である。
図3における、一点鎖線で囲まれた部分Bは図2のAA矢視における間隔変更装置29の断面であり、一点鎖線で囲まれた部分Bは回動装置41bの回動用ピニオン44bおよび回動用ラック45bの関係を示す。
【0015】
なお、図4(a),(b),(c),(d)における各網掛け部分は、以下に説明するステージ本体2、傾斜テーブル3、回転軸角変更装置4aおよびころ保持部5aを表すものではなく、一体化され相互の位置関係が不変の部分を示すものである。
ローラサポート1は、ステージ本体2、傾斜テーブル3、いずれも一対の回転軸角変更装置4a,4bおよびころ保持部5a,5b等を有する。
【0016】
ステージ本体2は、2つのステージ11、基部12、傾斜装置13および複数の揺動阻止クランプ14,14等からなる。
ステージ11は、断面が円弧であって円弧の曲率中心(以下「円弧中心C」という)Cが外方にある凹状曲面15(以下「ステージ摺動面15」という)を備える、湾曲する厚板状部分である。ステージ11は、「ゴニオステージ」における「ステージ本体」に該当する。ステージ11は、ステージ本体2における、ステージ摺動面15の母線方向(図3の上下方向)の両端に、それぞれ一つが設けられる。つまり、2つのステージ11は、ローラサポート1における2つのローラ51a,51bが並ぶ方向(図3の上下方向)の両端にそれぞれ配される。
【0017】
基部12は、その上部にステージ11を支持し、それ自体はローラサポート1が組み入れられるころの周面を超仕上等する装置に一体化するためのものである。
傾斜装置13は、傾斜用モータ21、傾斜用ピニオン22および傾斜用ラック23等からなる。傾斜用モータ21はサーボモータである。傾斜用ピニオン22は、傾斜用モータ21の水平に配された出力シャフトに取り付けられている。傾斜用ラック23は歯が円弧状に並ぶ円弧ラックである。傾斜用ラック23は、歯幅方向(一つの歯の歯先が伸びた方向)を水平にして傾斜テーブル3に固定され、その歯が傾斜用ピニオン22に噛み合わされている。
【0018】
揺動阻止クランプ14は、例えばローラサポート1が保持するころの研磨処理を行うとき、ステージ本体2に傾斜テーブル3を固定する役割をする。揺動阻止クランプ14における傾斜テーブル3の固定方法については、傾斜テーブル3の記載にて説明する。
ステージ11は、2つの誘導輪16,16を有する。誘導輪16,16についても、傾斜テーブル3の記載において説明する。
【0019】
傾斜テーブル3は、2つの摺動部26、アリガタ27、2つのアリミゾ28a,28bおよび間隔変更装置29等を備える。
摺動部26は、湾曲する厚板状であり、その両側の表面(図2における上下の表面)は、いずれも上方が凹状の円弧である。ローラサポート1において、両表面における円弧の曲率中心は円弧中心Cに一致する。また、摺動部26の下方の円弧状表面の曲率半径は、湾曲するステージ摺動面15の曲率半径に略等しい。
【0020】
摺動部26の少なくとも一方には、その端面近傍に、その上下の表面間を貫通しその円弧の周方向に長い開口を有する貫通孔30が設けられている。
摺動部26は、揺動可能にステージ11のステージ摺動面15上に載せられている。
アリガタ27は、矩形板状の厚板部、および厚板部の上面から突出し断面が逆台形の帯状に伸びた突出部分31を有する。突出部分31は、2つの摺動部26が並ぶ方向(図3の上下方向)に伸びる。
【0021】
アリガタ27の突出部分31には、突出部分31が伸びた方向に並ぶ2つの細長い矩形の溝38,38(以下「移動用溝38」という)が設けられ、これらの間をより幅が狭い溝が繋いでいる。
アリガタ27は、正面視(図2)においてその突出部分31を上にしてその厚板部が摺動部26の上に固定されている。
【0022】
アリミゾ28a,28bは、いずれもアリガタ27の突出部分31と嵌合する溝を有し、この溝に突出部分31が嵌め入れられて突出部分31が伸びた方向(以下「移動方向」という)に個別に移動可能である。アリガタ27とアリミゾ28a,28bとは、所謂「アリガタアリミゾ」の関係である。2つのアリミゾ28a,28bは、略同一の形状である。アリミゾ28a,28bは、平面視(図3)においてその溝に直交する方向が長い矩形である。
【0023】
間隔変更装置29は、間隔変更用モータ34、ギアボックス35、両ネジ36および2つの雌ネジ部材37a,37b等で構成される。
間隔変更用モータ34は、サーボモータが用いられる。間隔変更用モータ34の回転軸は、ギアボックス35により回転軸が90度変更されて両ネジ36の一端に連結される。
両ネジ36は、丸棒の一方の側に正ネジが、他方の側に逆ネジが設けられている。両ネジ36は、移動用溝38,38のそれぞれの内部において正ネジ用の雌ネジを有する雌ネジ部材37aおよび逆ネジ用の雌ネジを有する雌ネジ部材37bに螺合されている。
【0024】
雌ネジ部材37aおよび雌ネジ部材37bは、それぞれが互いに異なる一方のアリミゾ28a,28bに固定されている。
間隔変更装置29は、間隔変更用モータ34により両ネジ36が回転して雌ネジ部材37aと雌ネジ部材37bとを近づけまたは遠ざける。雌ネジ部材37aはアリミゾ28aにおよび雌ネジ部材37bはアリミゾ28bに固定されているので、間隔変更用モータ34を回転させることにより、2つのアリミゾ28a,28bの間隔を変更することができる。
【0025】
2つのアリミゾ28a,28bは、それぞれ固定ノブ39,…,39によりアリガタ27に対する摺動が制限される。
なお、前述した傾斜装置13における揺動阻止クランプ14は、そのロッドが摺動部26の貫通孔30を貫き、ステージ11の下面と摺動部26の上面とが接近する方向にこれ
らを押圧することで、ステージ本体2に傾斜テーブル3を固定する。
【0026】
また、傾斜装置13における誘導輪16,16は、摺動部26における湾曲する上面に接し、傾斜テーブル3を揺動(傾斜)させる際の湾曲する上面の移動に伴い回転する。2つの誘導輪16,16は、その回転軸がステージ11に一体化されており、傾斜テーブル3の揺動が円滑に行われるように摺動部26を誘導する役割をする。
一対の回転軸角変更装置4a,4bは、それぞれが回動装置41a,41b、回動台42a,42b等を有する。
【0027】
2つの回転軸角変更装置4a,4bはその構造が略同一なので、一方の回転軸角変更装置4aについて説明する。
回動装置41aは、回動用モータ43a、回動用ピニオン44aおよび回動用ラック45a等からなる。回動用モータ43aは、サーボモータでありその出力シャフトを上にして本体が一方のアリミゾ28aの側面に一体化されている。回動用ピニオン44aは、回動用モータ43aの出力シャフトに取り付けられている。
【0028】
回動用ラック45aは歯が円弧状に並ぶ円弧ラックである。回動用ラック45aは、その歯が回動用ピニオン44aに噛み合わされた状態で回動台42aに固定されている。
回動台42aは矩形の板状部材であり、回動用ラック45aはその長手方向の端部に固定される。回動台42aは、その長手方向をアリミゾ28aの長手方向に略一致させて、アリミゾ28aに対して回動軸46a回りに回動可能にアリミゾ28aの上に一体化されている。
【0029】
回動装置41aは、アリミゾ28aに一体化された回動用モータ43aが回動用ピニオン44aを回転させ、これに噛み合う回動用ラック45aを有する回動台42aを回動軸46a回りに回動させる。
他方の回転軸角変更装置4bにおける回動装置41bおよび回動台42bの構造および機能等は、回転軸角変更装置4aにおけるこれらと同じである。
【0030】
他方の回転軸角変更装置4bにおける回動台42bは、回動軸46bによりもう一方のアリミゾ28bの上に回動可能に一体化されている。したがって、一対の回転軸角変更装置4a,4bは、アリガタ27の突出部分31が伸びた方向に間隔をあけて並ぶ。
それぞれの回動軸46a,46bは、いずれも回動台42a,42bの長手方向における回動用ラック45a,45bとは反対側の端近傍の、それぞれにとって他方の回動台42b,42aに近い側に配されている。つまり、回転軸角変更装置4aの回動軸46aは、回動台42aの長手方向の端近傍における他方の回転軸角変更装置4bに近い側に配される。
【0031】
回転軸角変更装置4aと回転軸角変更装置4bとは、その構成各部の配置等が鉛直面に対して面対称である。
2つの回転軸角変更装置4a,4bにおける回動装置41a,41bは、それぞれの回動台42a,42bの回動方向が正反対となるように動作する。例えば、図3において回動装置41aが横方向に対して回動台42aを-θ度回動させると、回動装置41bは横方向に対して回動台42bをθ度回動させる。
【0032】
回動台42a,42bは、例えばその上にころを保持して研磨処理する等のときには、回動クランプ47により不要な回動が阻止される。
一対のころ保持部5a,5bは、それぞれがローラ51a,51bおよびローラ回転装置52a,52b等からなる。ローラ51a,51bはいずれも外観が円柱の形状であってその形状、大きさは全く同じである。
【0033】
ころ保持部5aにおけるローラ51aは、その回転軸を回動台42aの長手方向に一致させて、その回転軸の両側が回動台42aに固定された軸受により支持されている。ローラ回転装置52aは、回動用ラック45aに近い軸受に固定されている。ローラ回転装置52aはサーボモータであり、その出力シャフトはローラ51aの回転軸に連結されている。ローラ回転装置52aはローラ51aを任意の回転数で回転させることができる。
【0034】
ころ保持部5bもころ保持部5aにおけるものと全く同じ構成(軸受53b等)を有する。
一対のころ保持部5a,5bは、アリミゾ28a,28bの移動方向(正面視、図2)から見たとき、それぞれのローラ51a,51bが重なる。
次にローラサポート1が円筒ころおよび円すいころを保持するための動作を説明する。
【0035】
図5はローラサポート1が円筒ころW1を保持する様子を示す図、図6は円筒ころW1を保持するためのローラサポート1の動作を示す図である。
例えば、ころの周面を超仕上する超仕上装置では、砥石はコロの周面の母線方向にオシレーション(高速微振動)する。また、オシレーションの方向は略水平である。このことから、超仕上装置に用いられるローラサポート1は、ころの稜線が水平になるようにころを保持するのが好ましい。ここで「稜線」とは、ローラサポート1に保持されたころをその軸心に直交する水平方向から見たときのころの最上部の輪郭線をいう。例えば図5(b)においては、円筒ころW1における「E」を付した線である。
【0036】
さて、保持する円筒ころW1の稜線を水平にするには、ローラサポート1における一対のローラ51a,51bの回転軸を水平に且つこれらを平行にする必要がある(図5)。
図6(a)を参照して、ローラサポート1では、傾斜装置13における傾斜用モータ21を動作させ、図2におけるローラ51a,51bの回転軸が傾く状態から回転軸が水平になるまで、傾斜テーブル3を揺動させる。ローラ51a,51bの回転軸が水平になると傾斜用モータ21を停止させ、揺動阻止クランプ14,14により傾斜テーブル3がステージ11(ステージ本体2)に固定される。
【0037】
図6(b)を参照して、続いてそれぞれの回転軸角変更装置4a,4b(回動装置41a,41b)における回動用モータ43a,43bを動作させ、図3における2つのローラ51a,51bの回転軸の延長が交わる状態から2つの回転軸が平行になるまで、(ころ保持部5a,5bを支持する)回動台42a,42bを回動軸46a,46b回りに回動させる。2つのローラ51a,51bの回転軸が平行になったら、回動クランプ47により回動台42a,42bがアリミゾ28a,28bに固定される。
【0038】
図7は径が異なる円筒ころW1a,W1bをローラサポート1が保持する様子を示す図である。図7において、(a)は径小の円筒ころW1aを保持するローラサポート1の平面図、(b)は(a)の正面図、(c)は(a)のローラ51a,51bおよび円筒ころW1aの右側面図、(d)は(b)のローラ51a,51bおよび円筒ころW1aの右側面図、(e)は(d)において径大の円筒ころW1bを保持したときの右側面図である。
【0039】
ローラサポート1は、異なる大きさの径D1,D2を有する円筒ころW1a,W1bに対して、2つのローラ51a,51bの回転軸の間隔を変更(S1をS2に)することにより、その稜線Eの高さ(H1+H,H2+H)を一定に保つことができる。
2つのローラ51a,51bの間隔の変更は、間隔変更装置29における間隔変更用モータ34が両ネジ36を回転させ、アリミゾ28a,28bを互いに近づけまたは互いに遠ざけることにより行う。
【0040】
ローラサポート1は、円柱状の一対のローラ51a,51bの回転軸を水平にした状態では、径が異なる種々の円筒ころに対して、ローラ51a,51bの間隔を変更することにより、その稜線の高さを変えることなく保持することができる。
図8は大きさが異なる円すいころW2a,W2bをローラサポート1が保持する様子を示す図である。図8において、(a)は大きな円すいころW2aを保持するローラサポート1を上から斜め下((b)の矢印AR方向)方向に見た図、(b)は(a)の正面図、(c)は(a)のローラ51a,51bおよび円すいころW2aの右側面図、(d)は(b)のローラ51a,51bおよび円すいころW2aの右側面図、(e)は(d)において小さな円すいころW2bを保持したときの右側面図である。
【0041】
ローラサポート1は、例えば超仕上において、直前まで処理した円すいころW2aに代えてこれよりも大きさが小さな円すいころW2bを超仕上する場合、砥石の高さを変えないで、つまりローラサポート1が保持する円すいころW2bの稜線の高さを直前の円すいころW2aの稜線Eの高さと同じ(図8、H2=H1)とするために、以下の変更を行う。
【0042】
すなわち、間隔変更装置29により2つのアリミゾ28a,28bを近づけてころ保持部5a,5bの間隔を狭める(図8、S1>S2)。続いて回動装置41a,41bを動作させ、平面視(図8(a))において2つのローラ51a,51bの回転軸(軸心)の(延長が)なす角度を小さくする。
図8(e)において、α1およびα2は平面視でローラ51a,51bの回転軸がなす角度を示すものではないが、この図のα2<α1から、2つの回転軸がなす角度を小さくすれば、円すいころW2bの稜線Eの高さが直前の大きな円すいころW2aと同じになることが理解できる。
【0043】
ローラサポート1は、一対のローラ51a,51bがいずれも円柱状でありながら、これらの回転軸の延長を交差させ、且つローラ51a,51bを、回転軸の延長が交差する側が高くなるように位置させることで、その稜線Eが水平になるように円すいころW2a,W2bを保持することができる。
ローラサポート1は、形状および大きさが異なる円すいころに対して、2つのローラ51a,51bの間隔、これらの回転軸の水平面に対する傾斜の程度、およびこれらの回転軸(軸心)の(延長が)がなす角度を適宜選択することにより、その稜線Eの高さを一定に保つことができる。
【0044】
図9および図10は他の形態のローラ51Ba,51Bbおよびローラ51Ca,51Cbが円すいころW2を保持する様子を示す図である。図9および図10のいずれにおいても、(a)はこの様子の正面図、(b)は平面図、(c)は右側面図である。
図9および図10に示されるローラ51Ba,51Bb(図9)、51Ca,51Cb(図10)は、いずれも互いの径が異なる円柱形状である。
【0045】
なお、以下の説明においてローラ51Ba,51Bbまたはローラ51Ca,51Cbを有するローラサポートにおけるローラサポート1と同一のまたは類似の構成については、ローラサポート1と同じ符合を付す。
図9に示される一対のローラ51Ba,51Bbを有するローラサポートは、アリミゾ28a,28bそれぞれに別々のアリガタを組み合わせて一対のころ保持部5a,5bを個別に移動可能とし、またアリミゾ28a,28bに対する保持部5a,5b(回動台42a,42b)の回動も相互に独立して行うよう構成される。
【0046】
一対のローラ51Ba,51Bbを有するローラサポートでは、保持部5a,5bの回動が、保持する円すいころW2の軸心AXr(正面視(a)における稜線E)をアリミゾ
28a,28bの移動方向に直交させるために円すい形状の頂角に応じて互いに異なる(回動)角度で行われる(α3≠α4)。
また、一対のローラ51Ba,51Bbは、円すいころW2の稜線Eの(平面視(b)における)位置が例えば超仕上用砥石の直下となるように、間隔変更装置によりアリミゾ28a,28bの移動がそれぞれ独立して行われる。
【0047】
図10に示される一対のローラ51Ca,51Cbを有するローラサポートは、図9に示されるローラ51Ba,51Bbにおけるアリミゾ28a,28bそれぞれが独立して移動可能なこと、およびアリミゾ28a,28bに対する保持部5a,5bの回動が相互に独立して行えること、に加えて、ローラサポート1で傾斜装置13が行う水平に対する傾斜を2つのローラ51Ca,51Cbそれぞれについて別個に行うことが可能である。
【0048】
ローラ51Ca,51Cbの水平に対する傾斜動作を別々に行わせるには、それぞれにローラサポート1におけるような「ゴニオステージ」を配する。ローラ51Ca,51Cbは、それぞれが別個の傾斜装置、間隔変更用移動装置および回動装置によりその姿勢が変更される。
ローラ51Ca,51Cbは、図9に示されるローラ51Ba,51Bbと同じ姿勢とすることができる点で、保持できる円すいころの範囲がローラ51Ba,51Bbに比べてより広い。
【0049】
それぞれの一対のローラ51a,51b、51Ba,51Bb、51Ca,51Cbは、円すいころを保持するときはいずれも上から見たときにその回転軸(軸心)の延長が交わる。また、一対のローラ51a,51b、51Ba,51Bb、51Ca,51Cbの回転軸の延長が交わるときは、いずれも2つの回転軸の延長が交わる側が他方の側に対して高い。
【0050】
上述の実施形態において、ローラサポート、およびローラサポートの各構成または全体の構造、形状、寸法、個数、材質などは、本発明の趣旨に沿って適宜変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、センターレス(心なし)研磨装置等により断面円形のワーク表面を研磨等するときのころの保持に利用することができる。
【符号の説明】
【0052】
1 ローラサポート
13 傾斜装置
29 間隔変更装置
41a,41b 回動装置
51a,51b,51Ba,51Bb,51Ca,51Cb ローラ
AXa,AXb ローラの軸心
W2,W2a,W2b 円すいころ
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能な一対の円柱状のローラで断面が円形のころを保持する方法であって、
円すいころを保持するときは、
一対の前記ローラを、
上から見たときに水平方向に並んでその軸心の延長が交わるように、
且つ2つの前記ローラが並ぶ方向から見たときに2つの前記軸心が交わる側を他方の側に対して高くなるように位置させ、
前記円すいころを、その径小底面側を前記軸心が交わる側に位置させて一対の前記ローラの上に保持し、
円筒ころを保持するときは、
一対の前記ローラを、
上から見たときに水平方向に並んでそれぞれの軸心が平行になるように、
且つ2つの前記ローラが並ぶ方向から見たときにそれぞれの軸心がいずれも水平となるように位置させ、
前記円筒ころを、一対の前記ローラの上に保持する
ことを特徴とするころの保持方法。
【請求項2】
センターレス研磨装置において研磨対象を保持するローラサポートであって、
その上に前記研磨対象を保持可能に並び回転可能な外観が円柱状の一対のローラと、
前記一対のローラを上から見たときにそれぞれにおける軸心の一方の側の延長が交差しまたは前記軸心が平行となるように、前記一対のローラそれぞれを互いに逆方向に回動させる回動装置と、
前記一対のローラの並び方向から見たとき、前記軸心の延長が交差する側を他方の側より高くしまたはいずれも水平となるように前記ローラの傾きを変更させる傾斜装置と、を有する
ことを特徴とするローラサポート。
【請求項3】
前記一対のローラの間隔を変更する間隔変更装置を備えた
請求項2に記載のローラサポート。
【請求項4】
前記傾斜装置は、前記一対のローラが常に同じ傾きになるように構成された
請求項2または請求項3に記載のローラサポート。
【請求項5】
前記一対のローラの径が同じであり、
前記回動装置は、前記一対のローラそれぞれの逆方向への回動角度の絶対値が同じになるように、構成された
請求項4に記載のローラサポート。
【請求項6】
前記間隔変更装置は、前記一対のローラのそれぞれを互いに逆方向に移動させ且つその移動距離が同じとなるように構成された
請求項5に記載のローラサポート。