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特開2022-181543コンデンサ寿命推定方法、コンデンサ寿命推定プログラム、コンデンサ寿命推定装置、およびモータ駆動装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022181543
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】コンデンサ寿命推定方法、コンデンサ寿命推定プログラム、コンデンサ寿命推定装置、およびモータ駆動装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20221201BHJP
【FI】
H02M7/48 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021088547
(22)【出願日】2021-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002745
【氏名又は名称】弁理士法人河崎特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川名 潤
(72)【発明者】
【氏名】細川 智也
(72)【発明者】
【氏名】古川 哲試
【テーマコード(参考)】
5H770
【Fターム(参考)】
5H770AA17
5H770AA28
5H770BA01
5H770CA02
5H770DA03
5H770FA13
5H770HA03W
5H770JA17W
5H770LB05
5H770LB10
(57)【要約】
【課題】コンデンサの寿命を高精度に推定する。
【解決手段】モータ3に交流電力を供給するインバータ回路30と、コンデンサ11aを有する平滑回路11と、互いに直列接続されたスイッチング素子12aおよび回生抵抗12bを有する回生回路12と、を備えるモータ駆動装置4においてコンデンサ11aの寿命を推定する方法は、スイッチング素子12aが非導通の状態でコンデンサ11aの端子間電圧を第1電圧V1として測定する第1測定工程と、スイッチング素子12aを導通させることで回生抵抗12bを介してコンデンサを第1時間tにわたって放電させる放電工程と、放電後のコンデンサ11aの端子間電圧を第2電圧V2として測定する第2測定工程と、回生抵抗12bの抵抗値R、第1電圧V1、第1時間t、および第2電圧V2に基づいてコンデンサ11aの寿命を推定する推定工程と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータに交流電力を供給するインバータ回路と、前記インバータ回路に平滑化した直流電力を供給するコンデンサを有する平滑回路と、前記平滑回路と前記インバータ回路との間に設けられ、前記モータの回生動作時に回生電力を消費する回生回路と、を備え、前記回生回路は、互いに直列接続されたスイッチング素子および回生抵抗を有する、モータ駆動装置において前記コンデンサの寿命を推定する方法であって、
前記スイッチング素子が非導通の状態で前記コンデンサの端子間電圧を第1電圧として測定する第1測定工程と、
前記スイッチング素子を導通させることで前記回生抵抗を介して前記コンデンサを第1時間にわたって放電させる放電工程と、
放電後の前記コンデンサの端子間電圧を第2電圧として測定する第2測定工程と、
前記回生抵抗の抵抗値、前記第1電圧、前記第1時間、および前記第2電圧に基づいて前記コンデンサの寿命を推定する推定工程と、
を備える、コンデンサ寿命推定方法。
【請求項2】
前記推定工程では、前記回生抵抗の抵抗値、前記第1電圧、前記第1時間、および前記第2電圧から前記コンデンサの現在の容量を求め、前記現在の容量を前記コンデンサの初期容量と比較することで前記コンデンサの寿命を推定する、請求項1に記載のコンデンサ寿命推定方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載のコンデンサ寿命推定方法をコンピュータに実行させるためのコンデンサ寿命推定プログラム。
【請求項4】
モータに交流電力を供給するインバータ回路に平滑化した直流電力を供給するコンデンサを有する平滑回路と、
前記平滑回路と前記インバータ回路との間に設けられ、前記モータの回生動作時に回生電力を消費する回生回路と、
前記回生回路を用いて前記コンデンサの寿命を推定する推定部と、
を備え、
前記回生回路は、互いに直列接続されたスイッチング素子および回生抵抗を有し、
前記推定部は、前記スイッチング素子が非導通の状態で前記コンデンサの端子間電圧を第1電圧として測定し、前記スイッチング素子を導通させることで前記回生抵抗を介して前記コンデンサを第1時間にわたって放電させ、放電後の前記コンデンサの端子間電圧を第2電圧として測定し、前記回生抵抗の抵抗値、前記第1電圧、前記第1時間、および前記第2電圧に基づいて前記コンデンサの寿命を推定する、コンデンサ寿命推定装置。
【請求項5】
前記推定部は、前記回生抵抗の抵抗値、前記第1電圧、前記第1時間、および前記第2電圧から前記コンデンサの現在の容量を求め、前記現在の容量を前記コンデンサの初期容量と比較することで前記コンデンサの寿命を推定する、請求項4に記載のコンデンサ寿命推定装置。
【請求項6】
請求項4または5に記載のコンデンサ寿命推定装置と、
交流電源の交流電力を直流電力に変換して前記平滑回路に供給するコンバータ回路と、
前記平滑回路が供給する直流電力を交流電力に変換してモータに供給するインバータ回路と、
を備える、モータ駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示はコンデンサ寿命推定方法、コンデンサ寿命推定プログラム、コンデンサ寿命推定装置、およびモータ駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、交流電源の交流電力を直流電力に変換するコンバータ回路と、コンバータ回路の直流電力を平滑化するコンデンサを有する平滑回路と、平滑化された直流電力を交流電力に変換してモータに供給するインバータ回路と、平滑回路とインバータ回路との間に設けられ、互いに直列接続されたスイッチング素子および回生抵抗を有する回生回路とを備えるモータ駆動装置が知られている(例えば、特許文献1)。特許文献1のモータ駆動装置では、モータの回生動作時に、回生回路の回生抵抗において回生電力が消費される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-153222号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、平滑回路が有するコンデンサは、モータ駆動装置において寿命が短い素子の一つである。そのため、コンデンサの寿命を適時に推定する必要があるところ、従来、モータ駆動装置の駆動時間やコンデンサの周囲温度などの情報に基づいてコンデンサの寿命を推定している。しかし、そのような寿命推定方法では、寿命の推定精度が低くなることを避けられない。このような状況において、本開示は、コンデンサの寿命を高精度に推定することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示に係る一局面は、コンデンサ寿命推定方法に関する。当該方法は、モータに交流電力を供給するインバータ回路と、前記インバータ回路に平滑化した直流電力を供給するコンデンサを有する平滑回路と、前記平滑回路と前記インバータ回路との間に設けられ、前記モータの回生動作時に回生電力を消費する回生回路と、を備え、前記回生回路は、互いに直列接続されたスイッチング素子および回生抵抗を有する、モータ駆動装置において前記コンデンサの寿命を推定する方法であって、前記スイッチング素子が非導通の状態で前記コンデンサの端子間電圧を第1電圧として測定する第1測定工程と、前記スイッチング素子を導通させることで前記回生抵抗を介して前記コンデンサを第1時間にわたって放電させる放電工程と、放電後の前記コンデンサの端子間電圧を第2電圧として測定する第2測定工程と、前記回生抵抗の抵抗値、前記第1電圧、前記第1時間、および前記第2電圧に基づいて前記コンデンサの寿命を推定する推定工程と、を備える。
【0006】
本開示に係る別の一局面は、コンデンサ寿命推定プログラムに関する。当該プログラムは、上述のコンデンサ寿命推定方法をコンピュータに実行させるためのプログラムである。
【0007】
本開示に係る別の一局面は、コンデンサ寿命推定装置に関する。当該装置は、モータに交流電力を供給するインバータ回路に平滑化した直流電力を供給するコンデンサを有する平滑回路と、前記平滑回路と前記インバータ回路との間に設けられ、前記モータの回生動作時に回生電力を消費する回生回路と、前記回生回路を用いて前記コンデンサの寿命を推定する推定部と、を備え、前記回生回路は、互いに直列接続されたスイッチング素子および回生抵抗を有し、前記推定部は、前記スイッチング素子が非導通の状態で前記コンデンサの端子間電圧を第1電圧として測定し、前記スイッチング素子を導通させることで前記回生抵抗を介して前記コンデンサを第1時間にわたって放電させ、放電後の前記コンデンサの端子間電圧を第2電圧として測定し、前記回生抵抗の抵抗値、前記第1電圧、前記第1時間、および前記第2電圧に基づいて前記コンデンサの寿命を推定する。
【0008】
本開示に係る別の一局面は、モータ駆動装置に関する。当該装置は、上述のコンデンサ寿命推定装置と、交流電源の交流電力を直流電力に変換して前記平滑回路に供給するコンバータ回路と、前記平滑回路が供給する直流電力を交流電力に変換してモータに供給するインバータ回路と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、コンデンサの寿命を高精度に推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示に係るモータ駆動装置の一例を概略的に示す回路図である。
図2】本開示に係るコンデンサ寿命推定方法の一例のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示に係るコンデンサ寿命推定方法、コンデンサ寿命推定プログラム、コンデンサ寿命推定装置、およびモータ駆動装置の実施形態について例を挙げて以下に説明する。しかしながら、本開示は以下に説明する例に限定されない。以下の説明では、具体的な数値や材料を例示する場合があるが、本開示の効果が得られる限り、他の数値や材料を適用してもよい。
【0012】
(コンデンサ寿命推定方法)
本開示に係るコンデンサ寿命推定方法は、インバータ回路と、コンデンサを有する平滑回路と、回生回路とを備えるモータ駆動装置においてコンデンサの寿命を推定する方法であって、第1測定工程と、放電工程と、第2測定工程と、推定工程とを備える。
【0013】
インバータ回路は、モータ(例えば、三相同期電動機)に交流電力を供給する。インバータ回路は、複数(例えば、6つ)のスイッチング素子を有してもよい。各スイッチング素子は、ゲートドライブ回路によって導通状態と非導通状態を切り替えられてもよい。
【0014】
平滑回路は、インバータ回路に平滑化した直流電力を供給する。平滑回路が有するコンデンサは、電解コンデンサであってもよく、これ以外の種類のコンデンサであってもよい。コンデンサは、2つ以上が直列および/または並列に接続されたモジュールであってもよい。本開示では、この平滑回路が有するコンデンサの寿命を推定する。
【0015】
回生回路は、平滑回路とインバータ回路との間に設けられる。回生回路は、互いに直列接続されたスイッチング素子および回生抵抗を有する。回生回路は、モータの回生動作時に、スイッチング素子を導通状態にすることで、回生抵抗において回生電力を消費する。
【0016】
第1測定工程では、回生回路のスイッチング素子が非導通の状態でコンデンサの端子間電圧を第1電圧として測定する。コンデンサの端子間電圧の測定には、公知のモニタ回路を用いることができる。
【0017】
放電工程では、回生回路のスイッチング素子を導通させることで、回生抵抗を介してコンデンサを第1時間にわたって放電させる。第1時間は、任意に設定可能であるが、コンデンサが完全には放電されない程度の長さであることが好ましい。
【0018】
第2測定工程では、放電後のコンデンサの端子間電圧を第2電圧として測定する。第2電圧の測定方法は、第1電圧の測定方法と同じであってもよいし異なってもよい。
【0019】
推定工程では、回生抵抗の抵抗値、第1電圧、第1時間、および第2電圧に基づいてコンデンサの寿命を推定する。例えば、これらの値からコンデンサの放電時定数を求め、この放電時定数に基づいてコンデンサの寿命を推定することが考えられる。なお、回生抵抗の抵抗値は既知である。このように、コンデンサの端子間電圧を直接的に測定して当該コンデンサの寿命を推定することにより、従来の間接的な推定方法に比べて、コンデンサの寿命を高精度に推定することが可能となる。
【0020】
推定工程では、回生抵抗の抵抗値、第1電圧、第1時間、および第2電圧からコンデンサの現在の容量を求め、現在の容量をコンデンサの初期容量と比較することでコンデンサの寿命を推定してもよい。例えば、上述のように求めたコンデンサの放電時定数と、回生抵抗の抵抗値とに基づいて、コンデンサの現在の容量を求めることが考えられる。また、例えば、コンデンサの現在の容量が、コンデンサの初期容量の約80%を下回っている場合に、コンデンサが寿命を迎えたと判断してもよい。
【0021】
(コンデンサ寿命推定プログラム)
本開示に係るコンデンサ寿命推定プログラムは、上述のコンデンサ寿命推定方法をコンピュータに実行させるためのプログラム(ソフトウェア)である。コンデンサ寿命推定プログラムは、非一時的にデータを記憶可能なコンピュータ読み取り可能媒体に記録されてもよい。そのようなコンピュータ読み取り可能媒体に記録されたプログラムをコンピュータにインストールすることにより、当該コンピュータに上述のコンデンサ寿命推定方法を実行させることができる。
【0022】
(コンデンサ寿命推定装置)
本開示に係るコンデンサ寿命推定装置は、コンデンサを有する平滑回路と、回生回路と、推定部とを備える。
【0023】
平滑回路は、モータに交流電力を供給するインバータ回路に平滑化した直流電力を供給する。平滑回路が有するコンデンサは、電解コンデンサであってもよく、これ以外の種類のコンデンサであってもよい。
【0024】
回生回路は、平滑回路とインバータ回路との間に設けられる。回生回路は、互いに直列接続されたスイッチング素子および回生抵抗を有する。回生回路は、モータの回生動作時に、スイッチング素子を導通状態にすることで、回生抵抗において回生電力を消費する。
【0025】
推定部は、回生回路のスイッチング素子が非導通の状態でコンデンサの端子間電圧を第1電圧として測定し、スイッチング素子を導通させることで回生抵抗を介してコンデンサを第1時間にわたって放電させ、放電後のコンデンサの端子間電圧を第2電圧として測定する。コンデンサの端子間電圧の測定には、公知のモニタ回路を用いることができる。第1電圧の測定方法と第2電圧の測定方法は、互いに同じであってもよいし異なってもよい。第1時間は、任意に設定可能であるが、コンデンサが完全には放電されない程度の長さであることが好ましい。
【0026】
そして、推定部は、回生抵抗の抵抗値、第1電圧、第1時間、および第2電圧に基づいてコンデンサの寿命を推定する。例えば、これらの値からコンデンサの放電時定数を求め、この放電時定数に基づいてコンデンサの寿命を推定することが考えられる。なお、回生抵抗の抵抗値は既知である。このように、コンデンサの端子間電圧を直接的に測定して当該コンデンサの寿命を推定することにより、従来の間接的な推定方法に比べて、コンデンサの寿命を高精度に推定することが可能となる。
【0027】
推定部は、回生抵抗の抵抗値、第1電圧、第1時間、および第2電圧からコンデンサの現在の容量を求め、現在の容量をコンデンサの初期容量と比較することでコンデンサの寿命を推定してもよい。例えば、上述のように求めたコンデンサの放電時定数と、回生抵抗の抵抗値とに基づいて、コンデンサの現在の容量を求めることが考えられる。また、例えば、コンデンサの現在の容量が、コンデンサの初期容量の約80%を下回っている場合に、コンデンサが寿命を迎えたと判断してもよい。
【0028】
(モータ駆動装置)
本開示に係るモータ駆動装置は、上述のコンデンサ寿命推定装置と、コンバータ回路と、インバータ回路とを備える。
【0029】
コンバータ回路は、交流電源の交流電力を直流電力に変換して平滑回路に供給する。コンバータ回路は、複数(例えば、6つ)のダイオード素子を有してもよい。コンバータ回路は、全波整流方式であってもよいし、半波整流方式であってもよい。
【0030】
インバータ回路は、平滑回路が供給する直流電力を交流電力に変換してモータ(例えば、三相同期電動機)に供給する。インバータ回路は、複数(例えば、6つ)のスイッチング素子を有してもよい。各スイッチング素子は、ゲートドライブ回路によって導通状態と非導通状態を切り替えられてもよい。
【0031】
以上のように、本開示によれば、モータ駆動装置が備える平滑回路のコンデンサの寿命を高精度に推定することができる。
【0032】
以下では、本開示に係るコンデンサ寿命推定方法、コンデンサ寿命推定プログラム、コンデンサ寿命推定装置、およびモータ駆動装置の一例について、図面を参照して具体的に説明する。以下で説明する一例のコンデンサ寿命推定方法、コンデンサ寿命推定プログラム、コンデンサ寿命推定装置、およびモータ駆動装置の工程および構成要素には、上述した工程および構成要素を適用できる。以下で説明する一例のコンデンサ寿命推定方法、コンデンサ寿命推定プログラム、コンデンサ寿命推定装置、およびモータ駆動装置の工程および構成要素は、上述した記載に基づいて変更できる。また、以下で説明する事項を、上記の実施形態に適用してもよい。以下で説明する一例のコンデンサ寿命推定方法、コンデンサ寿命推定プログラム、コンデンサ寿命推定装置、およびモータ駆動装置の工程および構成要素のうち、本開示に係るコンデンサ寿命推定方法、コンデンサ寿命推定プログラム、コンデンサ寿命推定装置、およびモータ駆動装置に必須ではない工程および構成要素は省略してもよい。なお、以下で示す図は模式的なものであり、実際の部材の形状や数を正確に反映するものではない。
【0033】
図1に示すように、本実施形態のモータ駆動装置4は、交流電源1から供給される電力を利用してモータ3を回転駆動する装置である。交流電源1は、例えば商用電源であってもよい。モータ駆動装置4は、コンデンサ寿命推定装置10と、コンバータ回路20と、インバータ回路30とを備える。
【0034】
コンデンサ寿命推定装置10は、平滑回路11と、回生回路12と、制御器13とを有する。
【0035】
平滑回路11は、コンバータ回路20の下流に設けられる。平滑回路11は、コンバータ回路20が出力した直流電力を平滑化してインバータ回路30に供給する。平滑回路11は、コンデンサ11aを有する。本実施形態のコンデンサ11aは、電界コンデンサで構成されるが、これに限定されるものではない。
【0036】
回生回路12は、平滑回路11とインバータ回路30との間に設けられる。回生回路12は、互いに直列接続されたスイッチング素子12aおよび回生抵抗12bを有する。回生回路12は、モータ3の回生動作時に、制御器13によりスイッチング素子12aが導通状態にされた状態で回生電力を消費する。回生回路12は、回生抵抗12bと並列に接続されたダイオード12cをさらに有する。このダイオード12cは、スイッチング素子12aが導通状態から非導通状態に遷移する際のサージ電圧を低減する作用を有する。
【0037】
制御器13は、CPUと、CPUによって実行可能なプログラム(コンデンサ寿命推定プログラムを含む。)が格納された記憶装置とを有する。制御器13は、不図示の各センサ(例えば、モータ角度を検出する角度センサや、モータ電流を検出する電流センサなど)からの信号を受けて、スイッチング素子12aおよびインバータ回路30のスイッチング動作を制御する。制御器13は、回生回路12を用いてコンデンサ11aの寿命を推定する。制御器13によるコンデンサ寿命推定動作(コンデンサ寿命推定方法)について、詳しくは後述する。制御器13は、推定部の一例である。
【0038】
コンバータ回路20は、交流電源1および開閉器2(不図示の上位システムによって開閉される。)の下流に設けられる。コンバータ回路20は、交流電源1の交流電力を直流電力に変換して平滑回路11に供給する。本実施形態のコンバータ回路20は、6つのダイオード(図示せず)を備える全波整流式であるが、これに限定されるものではない。
【0039】
インバータ回路30は、平滑回路11および回生回路12の下流に設けられる。インバータ回路30は、平滑回路11が供給する直流電力を交流電力に変換してモータ3に供給する。インバータ回路30は、例えば、6つのスイッチング素子と、各スイッチング素子に対応する6つの還流ダイオードと(それぞれ図示せず)を備えてもよい。
【0040】
-コンデンサ寿命推定方法-
上述のモータ駆動装置4においてコンデンサ11aの寿命を推定する方法(コンデンサ寿命推定方法)について、図2を参照して説明する。コンデンサ寿命推定方法は、制御器13が、記憶装置に格納されたコンデンサ寿命推定プログラムをCPUで実行することにより実施される。
【0041】
まず、制御器13は、上位システム(例えば、モータ駆動装置4に指令を与えるコントローラ)からのメンテナンスモード移行指令の有無を確認する(ステップ1)。メンテナンスモードとは、通常のモータ駆動モードと区別されるモードであって、モータ駆動装置4のメンテナンスを行うためのモードである。メンテナンスモード移行指令がある場合(ステップ1でYes)、ステップ2へ進む。一方、メンテナンスモード移行指令がない場合(ステップ1でNo)、動作を終了する。
【0042】
ステップ2で、制御器13は、モータ駆動装置4をサーボオフ状態にする。具体的に、制御器13は、インバータ回路30の各スイッチング素子を非導通状態にする。続いて、ステップ3に進む。
【0043】
ステップ3で、制御器13は、上位システムからの放電指令の有無を確認する。放電指令とは、コンデンサ11aを放電させる指令であって、メンテナンスモードの中でも特にコンデンサ寿命推定動作を行うべきであることを意味する指令である。放電指令がある場合(ステップ3でYes)、ステップ4へ進む。一方、放電指令がない場合(ステップ3でNo)、動作を終了する。
【0044】
ステップ4で、制御器13は、電源遮断指令を上位システムへ出力する。電源遮断指令とは、交流電源1とコンバータ回路20との間にある開閉器2を開状態(非導通状態)にするための指令である。続いて、ステップ5へ進む。
【0045】
ステップ5で、制御器13は、電源遮断がなされたか否か(開閉器2が開状態になったか否か)を確認する。電源遮断が検出された場合(ステップ5でYes)、ステップ6に進む。一方、電源遮断が検出されない場合(ステップ5でNo)、動作を終了する。
【0046】
ステップ6で、制御器13は、回生回路12のスイッチング素子12aが非導通の状態で、平滑回路11のコンデンサ11aの端子間電圧を第1電圧V1(単位:V)として測定する(第1測定工程)。続いて、ステップ7に進む。
【0047】
ステップ7で、制御器13は、回生回路12のスイッチング素子12aを導通させることで、回生抵抗12bを介してコンデンサ11aを第1時間t(単位:秒)にわたって放電させる(放電工程)。第1時間tは、コンデンサ11aが完全には放電しない程度の長さに設定されることが好ましい。続いて、ステップ8に進む。
【0048】
ステップ8で、制御器13は、放電後のコンデンサ11aの端子間電圧を第2電圧V2(単位:V)として測定する(第2測定工程)。続いて、ステップ9に進む。
【0049】
ステップ9で、制御器13は、回生抵抗12bの抵抗値R、第1電圧V1、第1時間t、および第2電圧V2に基づいてコンデンサ11aの寿命を推定する(推定工程)。具体的に、制御器13は、回生抵抗12bの抵抗値R、第1電圧V1、第1時間t、および第2電圧V2から、例えばC=-t/[R・ln(V1/V0)]の式にしたがって、コンデンサ11aの現在の容量Cを求め、現在の容量をコンデンサ11aの初期容量C0と比較することでコンデンサ11aの寿命を推定する。例えば、制御器13は、コンデンサ11aの現在の容量Cが、コンデンサ11aの初期容量C0の80%以下である場合に、当該コンデンサ11aが寿命を迎えたと判断してもよい。続いて、ステップ10へ進む。
【0050】
ステップ10で、制御器13は、コンデンサ11aの寿命推定の結果を上位システムへ出力する。以上で、一連の動作が終了する。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本開示は、コンデンサ寿命推定方法、コンデンサ寿命推定プログラム、コンデンサ寿命推定装置、およびモータ駆動装置に利用できる。
【符号の説明】
【0052】
1:交流電源
2:開閉器
3:モータ
4:モータ駆動装置
10:コンデンサ寿命推定装置
11:平滑回路
11a:コンデンサ
12:回生回路
12a:スイッチング素子
12b:回生抵抗
12c:ダイオード
13:制御器(推定部)
20:コンバータ回路
30:インバータ回路
C:コンデンサの現在容量
C0:コンデンサの初期容量
R:回生抵抗の抵抗値
t:第1時間
V1:第1電圧
V2:第2電圧
図1
図2