(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022181579
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】固体撮像素子および電子機器
(51)【国際特許分類】
H04N 5/374 20110101AFI20221201BHJP
【FI】
H04N5/374
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021088606
(22)【出願日】2021-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】316005926
【氏名又は名称】ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121131
【弁理士】
【氏名又は名称】西川 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082131
【弁理士】
【氏名又は名称】稲本 義雄
(74)【代理人】
【識別番号】100168686
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 勇介
(72)【発明者】
【氏名】弘 智行
【テーマコード(参考)】
5C024
【Fターム(参考)】
5C024CY42
5C024GX03
5C024GX16
5C024GY39
5C024GY41
5C024JX30
(57)【要約】
【課題】より性能向上を図る。
【解決手段】画素は、フォトダイオードにおける光電変換で発生した電荷を検出するためのFD部と、FD部の電圧が上昇するときにソースフォロワ駆動する第1のトランジスタと、FD部の電圧が降下するときにソースフォロワ駆動する第2のトランジスタとを少なくとも有する。そして、第1のトランジスタは、電荷を増幅する増幅トランジスタとして用いられ、第2のトランジスタは、ゲートにFD部が接続されるとともに、ドレインに増幅トランジスタのソースが接続される。本技術は、例えば、InGaAsフォトダイオードの画素を備えるCMOSイメージセンサに適用できる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォトダイオードにおける光電変換で発生した電荷を検出するためのFD(Floating Diffusion)部と、
前記FD部の電圧が上昇するときにソースフォロワ駆動する第1のトランジスタと、
前記FD部の電圧が降下するときにソースフォロワ駆動する第2のトランジスタと
を少なくとも有し、
前記第1のトランジスタおよび前記第2のトランジスタのうちの一方は、前記電荷を増幅する増幅トランジスタとして用いられ、
前記第1のトランジスタおよび前記第2のトランジスタのうちの他方は、ゲートに前記FD部が接続されるとともに、ドレインに前記増幅トランジスタのソースが接続され、または、ソースに前記増幅トランジスタのドレインが接続される
画素を備える固体撮像素子。
【請求項2】
前記画素を構成する素子が設けられる画素領域に、前記第1のトランジスタおよび前記第2のトランジスタが組み合わされて配置される
請求項1に記載の固体撮像素子。
【請求項3】
前記第1のトランジスタが前記増幅トランジスタとして用いられ、
前記第2のトランジスタによって、前記FD部がリセットされるタイミングで垂直信号線の電圧降下がアシストされる
請求項1に記載の固体撮像素子。
【請求項4】
前記第1のトランジスタのオン/オフを切り替える閾値電圧は、前記第2のトランジスタのオン/オフを切り替える閾値電圧より小さい
請求項3に記載の固体撮像素子。
【請求項5】
前記第2のトランジスタが前記増幅トランジスタとして用いられ、
前記第1のトランジスタによって、前記フォトダイオードによって高光量が検出された際の前記増幅トランジスタの出力の立ち上がりがアシストされる
請求項1に記載の固体撮像素子。
【請求項6】
前記第2のトランジスタのオン/オフを切り替える閾値電圧は、前記第1のトランジスタのオン/オフを切り替える閾値電圧より小さい
請求項5に記載の固体撮像素子。
【請求項7】
前記第1のトランジスタおよび前記第2のトランジスタとして、エンハンスメント型とデプレッション型とのどちらかが採用される
請求項1に記載の固体撮像素子。
【請求項8】
フォトダイオードにおける光電変換で発生した電荷を検出するためのFD(Floating Diffusion)部と、
前記FD部の電圧が上昇するときにソースフォロワ駆動する第1のトランジスタと、
前記FD部の電圧が降下するときにソースフォロワ駆動する第2のトランジスタと
を少なくとも有し、
前記第1のトランジスタおよび前記第2のトランジスタのうちの一方は、前記電荷を増幅する増幅トランジスタとして用いられ、
前記第1のトランジスタおよび前記第2のトランジスタのうちの他方は、ゲートに前記FD部が接続されるとともに、ドレインに前記増幅トランジスタのソースが接続され、または、ソースに前記増幅トランジスタのドレインが接続される
画素を有した固体撮像素子を備える電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、固体撮像素子および電子機器に関し、特に、より性能向上を図ることができるようにした固体撮像素子および電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、デジタルスチルカメラやデジタルビデオカメラなどの撮像機能を備えた電子機器においては、例えば、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサなどの固体撮像素子が使用されている。例えば、固体撮像素子では、フォトダイオードにおいて光電変換された電荷がFD(Floating Diffusion)部に転送され、その電荷量に応じて増幅トランジスタを介して出力される画素信号がAD(Analog to Digital)変換される。
【0003】
また、特許文献1には、画素信号を伝送する垂直信号線に、電流値が可変である定電流源が接続された撮像装置において、垂直信号線の電圧の変動を測定して定電流源の電流値を制御する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来の撮像素子に対して、垂直信号線の電圧が収束するまでのセトリング時間を改善したり、定電流源の電流値の増加を抑制したりすることで、さらなる性能の向上が求められている。
【0006】
本開示は、このような状況に鑑みてなされたものであり、より性能向上を図ることができるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一側面の固体撮像素子は、フォトダイオードにおける光電変換で発生した電荷を検出するためのFD部と、前記FD部の電圧が上昇するときにソースフォロワ駆動する第1のトランジスタと、前記FD部の電圧が降下するときにソースフォロワ駆動する第2のトランジスタとを少なくとも有し、前記第1のトランジスタおよび前記第2のトランジスタのうちの一方は、前記電荷を増幅する増幅トランジスタとして用いられ、前記第1のトランジスタおよび前記第2のトランジスタのうちの他方は、ゲートに前記FD部が接続されるとともに、ドレインに前記増幅トランジスタのソースが接続され、または、ソースに前記増幅トランジスタのドレインが接続される画素を備える。
【0008】
本開示の一側面の電子機器は、フォトダイオードにおける光電変換で発生した電荷を検出するためのFD部と、前記FD部の電圧が上昇するときにソースフォロワ駆動する第1のトランジスタと、前記FD部の電圧が降下するときにソースフォロワ駆動する第2のトランジスタとを少なくとも有し、前記第1のトランジスタおよび前記第2のトランジスタのうちの一方は、前記電荷を増幅する増幅トランジスタとして用いられ、前記第1のトランジスタおよび前記第2のトランジスタのうちの他方は、ゲートに前記FD部が接続されるとともに、ドレインに前記増幅トランジスタのソースが接続され、または、ソースに前記増幅トランジスタのドレインが接続される画素を有した固体撮像素子を備える。
【0009】
本開示の一側面においては、画素には、フォトダイオードにおける光電変換で発生した電荷を検出するためのFD部と、FD部の電圧が上昇するときにソースフォロワ駆動する第1のトランジスタと、FD部の電圧が降下するときにソースフォロワ駆動する第2のトランジスタとが少なくとも設けられる。そして、第1のトランジスタおよび第2のトランジスタのうちの一方は、電荷を増幅する増幅トランジスタとして用いられ、第1のトランジスタおよび第2のトランジスタのうちの他方は、ゲートにFD部が接続されるとともに、ドレインに増幅トランジスタのソースが接続され、または、ソースに増幅トランジスタのドレインが接続される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本技術を適用した固体撮像素子が備える画素の第1の実施の形態の構成例を示す回路図である。
【
図5】シミュレーション結果の一例を示す図である。
【
図6】画素の平面レイアウトの一例を示す図である。
【
図7】画素の第2の実施の形態の構成例を示す回路図である。
【
図8】D層転送時におけるセトリング改善について説明する図である。
【
図9】画素の第3の実施の形態の構成例を示す回路図である。
【
図10】高光量時におけるセトリング改善について説明する図である。
【
図11】撮像装置の構成例を示すブロック図である。
【
図12】イメージセンサを使用する使用例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本技術を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0012】
<画素の第1の構成例>
図1は、本技術を適用した固体撮像素子が備える画素の第1の実施の形態の構成例を示す回路図である。
【0013】
図1に示す画素11は、破線で囲われた領域が画素領域である。画素11は、垂直信号線21を介して、定電流源となる負荷MOS(Metal Oxide Semiconductor)22に接続されており、垂直信号線21には寄生容量23が発生している。
【0014】
画素11は、InGaAsフォトダイオード31、SNノード32、容量33、排出トランジスタ34、転送トランジスタ35、FDノード36、容量37、増幅トランジスタ38、選択トランジスタ39、リセットトランジスタ40、および追加トランジスタ41を備えて構成される。排出トランジスタ34、転送トランジスタ35、リセットトランジスタ40、および追加トランジスタ41は、P型トランジスタであり、増幅トランジスタ38、および選択トランジスタ39は、N型トランジスタである。即ち、画素11の画素領域には、N型トランジスタおよびP型トランジスタが組み合わされて配置されている。
【0015】
InGaAsフォトダイオード31は、近赤外の波長域の光を光電変換し、その光電変換で発生した電荷をSNノード32に出力する。
【0016】
SNノード32には容量33が接続されており、InGaAsフォトダイオード31で発生した電荷が容量33に蓄積される。
【0017】
排出トランジスタ34は、ゲートに供給される排出信号OFGに従って、容量33に蓄積されている電荷を排出し、SNノード32の電位をリセット電圧Vrst1にリセットする。
【0018】
転送トランジスタ35は、ゲートに供給される転送信号TRGに従って、SNノード32からFDノード36へ電荷を転送する。
【0019】
FDノード36には容量37が接続されており、SNノード32から転送されてくる電荷が容量37に蓄積される。
【0020】
増幅トランジスタ38は、例えば、3.3Vの電源電圧と選択トランジスタ39とを接続し、ゲートに供給されるFDノード36の電位に応じて接続をオン/オフする。
【0021】
選択トランジスタ39は、ゲートに供給される選択信号SELに従って、増幅トランジスタ38を垂直信号線21に接続する。
【0022】
リセットトランジスタ40は、ゲートに供給されるリセット信号RSTに従って、容量37に蓄積されている電荷を排出して、FDノード36の電位をリセット電圧Vrst1にリセットする。
【0023】
追加トランジスタ41のゲートには、FDノード36が接続される。追加トランジスタ41のドレインには、増幅トランジスタ38のソースが接続されるとともに、選択トランジスタ39を介して垂直信号線21に接続される。追加トランジスタ41のソースは、接地レベルに接続されている。従って、追加トランジスタ41は、FDノード36の電位に応じて、選択トランジスタ39を介して垂直信号線21と接地レベルとの接続をオン/オフする。
【0024】
このように構成される画素11において、FDノード36は、InGaAsフォトダイオード31における光電変換で発生した電荷を検出するために用いられ、増幅トランジスタ38は、FDノード36に蓄積されている電荷を増幅する。増幅トランジスタ38はN型トランジスタであって、FDノード36の電圧が上昇するときにソースフォロワ駆動する。追加トランジスタ41はP型トランジスタであって、FDノード36の電圧が降下するときにソースフォロワ駆動する。
【0025】
従って、画素11は、FDノード36の電位に応じて、増幅トランジスタ38がオンになると追加トランジスタ41はオフになり、増幅トランジスタ38がオフになると追加トランジスタ41はオンになるように構成される。
【0026】
これにより、画素11は、リセットトランジスタ40によってFDノード36の電位がリセットされたタイミングにおいて、垂直信号線21の電圧VSLが降下してリセット電圧Vrst1に収束するまでのセトリング時間Tの短縮を図ることができる。例えば、このセトリング時間Tは、負荷MOS22により供給される電流I0、寄生容量23に蓄積可能な電荷の容量Cvsl、増幅トランジスタ38の相互コンダクタンスgm1、および追加トランジスタ41の相互コンダクタンスgm2を用いて、次の式(1)で表される。
【0027】
【0028】
ここで、
図2には、追加トランジスタ41が設けられていない従来の画素11Aの構成例が示されている。なお、
図2において、
図1の画素11と共通する構成要件には同一の符号が付してあり、その詳細な説明は省略する。
【0029】
図2に示すように構成される従来の画素11Aにおけるセトリング時間Tは、負荷MOS22により供給される電流I0、寄生容量23に蓄積可能な電荷の容量Cvsl、および増幅トランジスタ38の相互コンダクタンスgmを用いて、次の式(2)で表される。
【0030】
【0031】
従って、従来の画素11Aの構成におけるセトリング時間Tを低減するためには、負荷MOS22により供給される電流I0を増加させること、または、増幅トランジスタ38の相互コンダクタンスgmを増加させることが必要となる。しかしながら、負荷MOS22により供給される電流I0を増加させた場合には、定常的な消費電流が増加することになる。
【0032】
これに対し、画素11では、過渡的な動作でのみ追加トランジスタ41がオンとなる構成であることより、定常的な消費電量の増加が生じることはない。つまり、画素11は、消費電量が増加することを回避しつつ、セトリング改善を図ることができる。
【0033】
さらに、
図3および
図4を参照して、画素11におけるセトリング改善について説明する。
【0034】
【0035】
図3のAに示すようなトランジスタは、ゲート電圧とソース電圧との電圧差Vgsに応じて、ドレインからソースに流れる電流Idsが変化する。例えば、エンハンスメント型のトランジスタは、
図4のBに示すように電流Idsが変化し、デプレッション型のトランジスタは、
図4のCに示すように電流Idsが変化する。
【0036】
例えば、増幅トランジスタ38および追加トランジスタ41として、エンハンスメント型とデプレッション型とのどちらを採用してもよい。なお、デプレッション型の方が、トランジスタのオン/オフを切り替える閾値電圧VThが小さいため、ソースフォロワ駆動の切り替わりの感度を高くすることができ、セトリング時間を短縮する効果を高めることができる。
【0037】
また、増幅トランジスタ38の閾値電圧VThは、追加トランジスタ41の閾値電圧VThより小さくなるように設定される。
【0038】
図4のAには、画素11の動作タイミングが示されており、
図3のBには、従来の画素11Aの動作タイミングが示されている。
【0039】
図4に示すように、画素11と従来の画素11Aとのどちらにおいても、リセットトランジスタ40によってFDノード36の電位がリセットされたタイミングにおいて、垂直信号線21の電圧VSLの降下が開始される。また、この時点では、垂直信号線21の電圧VSLがFDノード36の電位より高いため、増幅トランジスタ38はオフとなっており、追加トランジスタ41はオンとなっている。
【0040】
例えば、
図4のBで拡大して示すように、従来の画素11Aでは、増幅トランジスタ38がオフとなっている期間(AMP_OFF期間)においては、負荷MOS22により供給される電流I0によってセトリング時間Tが決定される。そして、垂直信号線21の電圧VSLが降下するに伴って、垂直信号線21の電圧VSLがFDノード36の電位より低くなると、増幅トランジスタ38がオンとなる。その後、増幅トランジスタ38がオンとなっている期間(AMP_ON期間)においては、増幅トランジスタ38の相互コンダクタンスgmによってセトリング時間Tが決定される。
【0041】
つまり、従来の画素11Aでは、FDノード36の電圧が降下する際に、垂直信号線21の電圧VSLはFDノード36の電圧に追従するように降下する。このとき、FDノード36の電圧が降下した瞬間では、増幅トランジスタ38のソース電圧よりゲート電圧の方が低いため、増幅トランジスタ38はオフとなる。そのため、増幅トランジスタ38がオフとなっている期間では、セトリング時間Tは、負荷MOS22により供給される電流I0によって決定されることになる。
【0042】
これに対し、
図4のAで拡大して示すように、画素11では、増幅トランジスタ38がオフとなっている期間(AMP_OFF期間)においては、負荷MOS22により供給される電流I0、および、追加トランジスタ41の相互コンダクタンスgmによってセトリング時間Tが決定される。そして、垂直信号線21の電圧VSLが降下するに伴って、垂直信号線21の電圧VSLがFDノード36の電位より低くなると、増幅トランジスタ38がオンとなる一方で、追加トランジスタ41はオフとなる。その後、増幅トランジスタ38がオンとなっている期間(AMP_ON期間)においては、増幅トランジスタ38の相互コンダクタンスgmによってセトリング時間Tが決定される。
【0043】
つまり、画素11は、増幅トランジスタ38のソース電圧よりゲート電圧の方が低く、増幅トランジスタ38はオフする領域で動作する追加トランジスタ41が設けられた構成となっている。これにより、画素11では、FDノード36の電圧が降下した瞬間に、増幅トランジスタ38はオフになる一方で追加トランジスタ41がオンとなり、負荷MOS22により供給される電流I0と、追加トランジスタ41を介して流れる電流とによって垂直信号線21の電圧VSLを降下させることができる。その結果、画素11は、垂直信号線21の電圧VSLの降下時に、垂直信号線21の電圧VSLが収束するまでのセトリング時間Tの短縮を図ることができる。
【0044】
このように、画素11は、増幅トランジスタ38がオフとなっている期間において、追加トランジスタ41によって垂直信号線21の電圧VSLの降下がアシストされるので、従来の画素11Aよりもセトリング時間の短縮を図ることができる。
【0045】
図5は、セトリング時間のシミュレーション結果の一例を示す図である。
【0046】
図5に示すように、本技術を適用した画素11では、FDノード36の電圧が降下したタイミングから、垂直信号線21の電圧VSLが収束するまでのセトリング時間が0.858μ秒となるシミュレーション結果が求められた。また、従来の画素11Aでは、FDノード36の電圧が降下したタイミングから、垂直信号線21の電圧VSLが収束するまでのセトリング時間が1.125μ秒となるシミュレーション結果が求められた。また、追加トランジスタ41を流れる電流(AMPP電流)が、
図5に示すように発生するシミュレーション結果が求められた。
【0047】
このように、本技術を適用した画素11は、従来の画素11Aと比較して、セトリング時間を約25%低減させることができると期待される。このようにセトリング時間を低減させることで、画素11を備える固体撮像素子は、高フレームレート化を図ることができる。
【0048】
なお、
図5は、追加トランジスタ41のLW比を4としてシミュレーションを行ったシミュレーション結果であり、追加トランジスタ41のLW比を大きく(性能向上)することで、さらにセトリング時間を低減させることができる可能性がある。
【0049】
図6には、画素11の平面レイアウトの一例が示されている。
【0050】
図6に示すように、画素11は、例えば、P型トランジスタである排出トランジスタ34、転送トランジスタ35、リセットトランジスタ40、および追加トランジスタ41が一列に並び、N型トランジスタである増幅トランジスタ38、および選択トランジスタ39が一列に並ぶような平面レイアウトを採用することができる。
【0051】
以上のように構成される画素11を備える固体撮像素子は、従来よりもセトリング時間を短縮することによって高フレームレート化を図ることができ、その際の消費電力の増加を抑制することができるので、より性能向上を図ることができる。また、負荷MOS22の電流が少ないほど、追加トランジスタ41によるセトリング改善の効果を高めることができる。
【0052】
また、画素11は、従来の画素11Aと同様に、N型トランジスタおよびP型トランジスタが混合されるように組み合わされた構成であり、追加トランジスタ41を追加することによって工程が増加することはない。また、画素11は、容量分割(容量33と容量37との容量比をコントロール)するために、FDノード36に意図的に容量37を設ける構成となっているため、追加トランジスタ41を追加することよる容量が生じても、変換効率に影響を及ぼすことはない。また、画素11は、従来の画素11Aに対して追加トランジスタ41を追加するだけであって面積および電流の増加が少なく、他製品への汎用性を高くすることができる。
【0053】
<画素の第2の構成例>
図7は、本技術を適用した固体撮像素子が備える画素の第2の実施の形態の構成例を示す回路図である。なお、
図7に示す画素11Bにおいて、
図1の画素11と共通する構成要件については、同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0054】
例えば、画素11Bは、転送トランジスタ35、FDノード36、容量37、増幅トランジスタ38、選択トランジスタ39、リセットトランジスタ40、および追加トランジスタ41を備える点で、
図1の画素11と共通の構成となっている。そして、画素11がInGaAsフォトダイオード31を備えていたのに対し、画素11Bは、PN接合型のフォトダイオード42を備えた構成となっている。
【0055】
このように構成される画素11Bは、例えば、D層転送時におけるセトリング時間を短縮することができる。
【0056】
即ち、
図8に示すように、画素11Bでは、D層転送時において、転送信号TRGに従って転送トランジスタ35がオンとなってフォトダイオード42から転送される電荷によってFDノード36の電圧が降下する。このとき、増幅トランジスタ38がオフとなるとともに追加トランジスタ41がオンとなり、追加トランジスタ41によってFDノード36の電圧の降下がアシストされるので、FDノード36の電圧が収束するまでのセトリング時間を短縮することができる。
【0057】
このように、画素11Bは、増幅トランジスタ38のソースに追加トランジスタ41のドレインが接続されるような構成とすることで、D層転送時におけるFDノード36の電圧の立ち下がり速度の向上を図ることができ、セトリング改善を図ることができる。
【0058】
<画素の第3の構成例>
図9は、本技術を適用した固体撮像素子が備える画素の第3の実施の形態の構成例を示す回路図である。
【0059】
図9に示す画素11Cは、例えば、物体の移動などをイベントとして検出するイベントベースビジョンセンサに用いられる。例えば、イベントベースビジョンセンサは、センサ基板およびロジック基板が積層された積層構造となっている。そして、イベントベースビジョンセンサでは、画素11CごとにCu-Cu接続部51を介してセンサ基板とロジック基板とが電気的に接続され、画素信号が画素11CごとにAD変換される。
【0060】
図9に示すように、センサ基板側の画素領域52には、フォトダイオード61、並びに、N型トランジスタ62および63が設けられている。また、ロジック基板側の画素下AD領域53には、P型トランジスタ64乃至69、N型トランジスタ70乃至72、キャパシタ73および74、スイッチ75、並びに、負荷MOS76が設けられている。
【0061】
例えば、画素11Cでは、P型トランジスタ69が、
図1の増幅トランジスタ38に対応し、フォトダイオード61における光電変換で発生した電荷を増幅する。また、画素11Cでは、N型トランジスタ70が、
図1の追加トランジスタ41に対応し、フォトダイオード61によって高光量が検出された際のP型トランジスタ69の出力の立ち上がりがアシストされる。
【0062】
即ち、画素11Cは、フォトダイオード61における光電変換で発生した電荷に応じた画素領域52の出力電圧proutがP型トランジスタ69のゲートに供給されるように構成される。そして、画素11Cは、P型トランジスタ65および69により構成される増幅アンプによって出力電圧proutを増幅して、その増幅アンプから出力電圧fooutが出力されるように構成される。
【0063】
そして、画素11Cでは、
図10に示すように、照度が高くなって出力電圧proutが低照度から高照度に変化すると、出力電圧fooutが上昇する。このとき、P型トランジスタ69がオフになるとともに、N型トランジスタ70がオンになることで、出力電圧fooutが収束するまでのセトリング時間を短縮することができる。つまり、画素11Cは、N型トランジスタ70のソースにP型トランジスタ69のドレインが接続されるような構成とすることで、高照度の検出時における出力電圧fooutの立ち上がり速度の向上を図ることができる。
【0064】
このように、画素11Cは、フォトダイオード61によって高光量が検出された際のセトリング改善を図ることができる。
【0065】
なお、画素11Cでは、P型トランジスタ69の閾値電圧VThは、N型トランジスタ70の閾値電圧VThより小さくなるように設定される。
【0066】
<電子機器の構成例>
上述したような各構成例の画素11を備えた撮像素子は、例えば、デジタルスチルカメラやデジタルビデオカメラなどの撮像システム、撮像機能を備えた携帯電話機、または、撮像機能を備えた他の機器といった各種の電子機器に適用することができる。
【0067】
図11は、電子機器に搭載される撮像装置の構成例を示すブロック図である。
【0068】
図11に示すように、撮像装置101は、光学系102、撮像素子103、信号処理回路104、モニタ105、およびメモリ106を備えて構成され、静止画像および動画像を撮像可能である。
【0069】
光学系102は、1枚または複数枚のレンズを有して構成され、被写体からの像光(入射光)を撮像素子103に導き、撮像素子103の受光面(センサ部)に結像させる。
【0070】
撮像素子103としては、上述した各構成例の画素11を備えた撮像素子が適用される。撮像素子103には、光学系102を介して受光面に結像される像に応じて、一定期間、電子が蓄積される。そして、撮像素子103に蓄積された電子に応じた信号が信号処理回路104に供給される。
【0071】
信号処理回路104は、撮像素子103から出力された画素信号に対して各種の信号処理を施す。信号処理回路104が信号処理を施すことにより得られた画像(画像データ)は、モニタ105に供給されて表示されたり、メモリ106に供給されて記憶(記録)されたりする。
【0072】
このように構成されている撮像装置101では、上述した各構成例の画素11を適用することで、例えば、より高速かつ低消費電力で画像を撮像することができる。
【0073】
<イメージセンサの使用例>
図12は、上述のイメージセンサ(撮像素子)を使用する使用例を示す図である。
【0074】
上述したイメージセンサは、例えば、以下のように、可視光や、赤外光、紫外光、X線等の光をセンシングする様々なケースに使用することができる。
【0075】
・ディジタルカメラや、カメラ機能付きの携帯機器等の、鑑賞の用に供される画像を撮影する装置
・自動停止等の安全運転や、運転者の状態の認識等のために、自動車の前方や後方、周囲、車内等を撮影する車載用センサ、走行車両や道路を監視する監視カメラ、車両間等の測距を行う測距センサ等の、交通の用に供される装置
・ユーザのジェスチャを撮影して、そのジェスチャに従った機器操作を行うために、TVや、冷蔵庫、エアーコンディショナ等の家電に供される装置
・内視鏡や、赤外光の受光による血管撮影を行う装置等の、医療やヘルスケアの用に供される装置
・防犯用途の監視カメラや、人物認証用途のカメラ等の、セキュリティの用に供される装置
・肌を撮影する肌測定器や、頭皮を撮影するマイクロスコープ等の、美容の用に供される装置
・スポーツ用途等向けのアクションカメラやウェアラブルカメラ等の、スポーツの用に供される装置
・畑や作物の状態を監視するためのカメラ等の、農業の用に供される装置
【0076】
<構成の組み合わせ例>
なお、本技術は以下のような構成も取ることができる。
(1)
フォトダイオードにおける光電変換で発生した電荷を検出するためのFD(Floating Diffusion)部と、
前記FD部の電圧が上昇するときにソースフォロワ駆動する第1のトランジスタと、
前記FD部の電圧が降下するときにソースフォロワ駆動する第2のトランジスタと
を少なくとも有し、
前記第1のトランジスタおよび前記第2のトランジスタのうちの一方は、前記電荷を増幅する増幅トランジスタとして用いられ、
前記第1のトランジスタおよび前記第2のトランジスタのうちの他方は、ゲートに前記FD部が接続されるとともに、ドレインに前記増幅トランジスタのソースが接続され、または、ソースに前記増幅トランジスタのドレインが接続される
画素を備える固体撮像素子。
(2)
前記画素を構成する素子が設けられる画素領域に、前記第1のトランジスタおよび前記第2のトランジスタが組み合わされて配置される
上記(1)に記載の固体撮像素子。
(3)
前記第1のトランジスタが前記増幅トランジスタとして用いられ、
前記第2のトランジスタによって、前記FD部がリセットされるタイミングで垂直信号線の電圧降下がアシストされる
上記(1)または(2)に記載の固体撮像素子。
(4)
前記第1のトランジスタのオン/オフを切り替える閾値電圧は、前記第2のトランジスタのオン/オフを切り替える閾値電圧より小さい
上記(3)に記載の固体撮像素子。
(5)
前記第2のトランジスタが前記増幅トランジスタとして用いられ、
前記第1のトランジスタによって、前記フォトダイオードによって高光量が検出された際の前記増幅トランジスタの出力の立ち上がりがアシストされる
上記(1)または(2)に記載の固体撮像素子。
(6)
前記第2のトランジスタのオン/オフを切り替える閾値電圧は、前記第1のトランジスタのオン/オフを切り替える閾値電圧より小さい
上記(5)に記載の固体撮像素子。
(7)
前記第1のトランジスタおよび前記第2のトランジスタとして、エンハンスメント型とデプレッション型とのどちらかが採用される
上記(1)から(6)までのいずれかに記載の固体撮像素子。
(8)
フォトダイオードにおける光電変換で発生した電荷を検出するためのFD(Floating Diffusion)部と、
前記FD部の電圧が上昇するときにソースフォロワ駆動する第1のトランジスタと、
前記FD部の電圧が降下するときにソースフォロワ駆動する第2のトランジスタと
を少なくとも有し、
前記第1のトランジスタおよび前記第2のトランジスタのうちの一方は、前記電荷を増幅する増幅トランジスタとして用いられ、
前記第1のトランジスタおよび前記第2のトランジスタのうちの他方は、ゲートに前記FD部が接続されるとともに、ドレインに前記増幅トランジスタのソースが接続され、または、ソースに前記増幅トランジスタのドレインが接続される
画素を有した固体撮像素子を備える電子機器。
【0077】
なお、本実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。また、本明細書に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものではなく、他の効果があってもよい。
【符号の説明】
【0078】
11 画素, 21 垂直信号線, 22 負荷MOS, 23 寄生容量, 31 InGaAsフォトダイオード, 32 SNノード, 33 容量, 34 排出トランジスタ, 35 転送トランジスタ, 36 FDノード, 37 容量, 38 増幅トランジスタ, 39 選択トランジスタ, 40 リセットトランジスタ, 41 追加トランジスタ, 42 フォトダイオード, 51 Cu-Cu接続部, 52 画素領域, 53 画素下AD領域, 61 フォトダイオード, 62および63 N型トランジスタ, 64乃至69 P型トランジスタ, 70乃至72 N型トランジスタ, 73および74 キャパシタ, 67 スイッチ, 68 負荷MOS