(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022181593
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】二重容器
(51)【国際特許分類】
B65D 1/02 20060101AFI20221201BHJP
B29C 49/22 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
B65D1/02 111
B65D1/02 BRL
B65D1/02 BSF
B29C49/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021088626
(22)【出願日】2021-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000104674
【氏名又は名称】キョーラク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】室屋 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】樽野 真輔
(72)【発明者】
【氏名】倉橋 雄飛
【テーマコード(参考)】
3E033
4F208
【Fターム(参考)】
3E033AA02
3E033BA15
3E033BA16
3E033BA18
3E033BB08
3E033CA20
3E033DB01
3E033DE05
3E033EA05
3E033FA03
3E033GA02
4F208AG03
4F208AG07
4F208AG23
4F208AG25
4F208AG26
4F208AG28
4F208AH55
4F208LA08
4F208LB01
4F208LB22
4F208LG03
4F208LG06
4F208LG16
4F208LG28
(57)【要約】 (修正有)
【課題】インナーリングを有する口部装着部材を装着する際に内袋が捻れることが抑制され、かつ使用後には内袋を外殻から引き出すことが容易な、二重容器を提供する。
【解決手段】本発明によれば、容器本体を備える、二重容器1であって、前記容器本体2は、口部と、胴部と、底部を備え、前記口部は、開口端を有する筒状部位であり、前記胴部は、前記口部よりも前記開口端から離れた側に前記口部に隣接して配置され、且つ前記口部よりも外径が大きく、前記底部は、前記胴部の下端を閉塞するように構成され、前記容器本体は、内袋と、前記内袋を覆うように配置された外殻を備え、前記口部において前記外殻に対する前記内袋の一方向の相対回転の第1抵抗は、他方向の相対回転の第2抵抗よりも大きい、二重容器である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体を備える、二重容器であって、
前記容器本体は、口部と、胴部と、底部を備え、前記口部は、開口端を有する筒状部位であり、前記胴部は、前記口部よりも前記開口端から離れた側に前記口部に隣接して配置され、且つ前記口部よりも外径が大きく、前記底部は、前記胴部の下端を閉塞するように構成され、
前記容器本体は、内袋と、前記内袋を覆うように配置された外殻を備え、
前記口部において前記外殻に対する前記内袋の一方向の相対回転の第1抵抗は、他方向の相対回転の第2抵抗よりも大きい、二重容器。
【請求項2】
請求項1に記載の二重容器であって、
前記口部は、右ねじである雄ねじ部を備え、
前記一方向及び他方向は、それぞれ、前記容器本体の上側から見て時計回り方向及び反時計周り方向である、二重容器。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の二重容器であって、
口部装着部材を備え、
前記口部装着部材は、前記口部の雄ねじ部に螺合可能な雌ねじ部を備え、
前記一方向は、前記口部装着部材の締め方向であり、前記他方向は、前記口部装着部材の緩め方向である、二重容器。
【請求項4】
請求項1~請求項3の何れか1つに記載の二重容器であって、
前記内袋と前記外殻は、前記口部で凹凸係合しており、
前記凹凸係合は、第1抵抗が第2抵抗よりも大きくなるように構成されている、二重容器。
【請求項5】
請求項4に記載の二重容器であって、
前記凹凸係合は、前記内袋の外周面に設けた凸部と、前記外殻の内周面に設けた凹部の係合である、二重容器。
【請求項6】
請求項1~請求項5の何れか1つに記載の二重容器であって、
前記凹凸係合の凹部は、溝で構成され、
前記凹凸係合の凸部を前記溝に沿って移動させることによって前記凹凸係合が解除可能に構成されている、二重容器。
【請求項7】
請求項6に記載の二重容器であって、
前記溝の傾斜角度は、前記口部に設けられた雄ねじ部のねじ山の傾斜角度と一致する、二重容器。
【請求項8】
二軸延伸ブロー成形工程を備える二重容器の製造方法であって、
前記二軸延伸ブロー成形工程では、内プリフォームに外プリフォームを被せて構成されたプリフォームを加熱して二軸延伸ブロー成形することによって容器本体を形成し、
前記プリフォームの口部において、前記内プリフォームと前記外プリフォームが凹凸係合している、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二重容器が開示されている。
【背景技術】
【0002】
従来、外殻と内袋とを有する容器本体を備える二重容器が知られている。例えば、特許文献1には、外殻プリフォームと内袋プリフォームとを重ねた状態で二軸延伸ブロー成形を行い、内容物の減少に伴って内袋が収縮するよう構成された二重容器(いわゆる、積層剥離容器)を成形することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このような二重容器の外殻と内袋とが別素材で成形されている場合や、使用後の内袋内に内容物が付着している場合等において、当該二重容器をリサイクルする際には、外殻と内袋とを分別することが望まれる。
【0005】
内袋を外殻から分離することを容易にするためには、容器本体の口部において、内袋が外殻に締め付けられないように、内袋と外殻を緩やかに嵌合させることが好ましいが、この場合、容器本体の口部において、内袋が外殻に対して相対回転しやすくなる。このような容器本体内に内容物を充填した後に、インナーリングを有する口部装着部材(キャップやポンプなど)を容器本体の口部に螺合させて装着すると、インナーリングと口部内面の間の摩擦によって、内袋の口部とキャップとが一緒に回転してしまい、内袋が捻れてしまう場合がある。内袋が捻れると、内袋内の内容物が溢れ出てしまうという問題が生じる。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、インナーリングを有する口部装着部材を装着する際に内袋が捻れることが抑制され、かつ使用後には内袋を外殻から引き出すことが容易な、二重容器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、容器本体を備える、二重容器であって、前記容器本体は、口部と、胴部と、底部を備え、前記口部は、開口端を有する筒状部位であり、前記胴部は、前記口部よりも前記開口端から離れた側に前記口部に隣接して配置され、且つ前記口部よりも外径が大きく、前記底部は、前記胴部の下端を閉塞するように構成され、前記容器本体は、内袋と、前記内袋を覆うように配置された外殻を備え、前記口部において前記外殻に対する前記内袋の一方向の相対回転の第1抵抗は、他方向の相対回転の第2抵抗よりも大きい、二重容器が提供される。
【0008】
本発明の二重容器では、容器本体の口部において外殻に対する内袋の一方向の相対回転の第1抵抗は、他方向の相対回転の第2抵抗よりも大きい。このため、一方向を口部装着部材の締め方向とすることによって口部装着部材の装着時に内袋が捻れることが抑制される。使用後に内袋を外殻から分離する際には、内袋の口部を外殻に対して他方向に相対回転させることによって、内袋を容易に捻って縮径させることができるので、内袋を外殻から引き出すことが容易である。
【0009】
以下、本発明の種々の実施形態を例示する。以下に示す実施形態は互いに組み合わせ可能である。
好ましくは、前記記載の二重容器であって、前記口部は、右ねじである雄ねじ部を備え、前記一方向及び他方向は、それぞれ、前記容器本体の上側から見て時計回り方向及び反時計周り方向である、二重容器である。
好ましくは、前記記載の二重容器であって、口部装着部材を備え、前記口部装着部材は、前記口部の雄ねじ部に螺合可能な雌ねじ部を備え、前記一方向は、前記口部装着部材の締め方向であり、前記他方向は、前記口部装着部材の緩め方向である、二重容器である。
好ましくは、前記記載の二重容器であって、前記内袋と前記外殻は、前記口部で凹凸係合しており、前記凹凸係合は、第1抵抗が第2抵抗よりも大きくなるように構成されている、二重容器である。
好ましくは、前記記載の二重容器であって、前記凹凸係合は、前記内袋の外周面に設けた凸部と、前記外殻の内周面に設けた凹部の係合である、二重容器である。
好ましくは、前記記載の二重容器であって、前記凹凸係合の凹部は、溝で構成され、前記凹凸係合の凸部を前記溝に沿って移動させることによって前記凹凸係合が解除可能に構成されている、二重容器である。
好ましくは、前記記載の二重容器であって、前記溝の傾斜角度は、前記口部に設けられた雄ねじ部のねじ山の傾斜角度と一致する、二重容器である。
好ましくは、二軸延伸ブロー成形工程を備える二重容器の製造方法であって、前記二軸延伸ブロー成形工程では、内プリフォームに外プリフォームを被せて構成されたプリフォームを加熱して二軸延伸ブロー成形することによって容器本体を形成し、前記プリフォームの口部において、前記内プリフォームと前記外プリフォームが凹凸係合している、方法である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第1実施形態の二重容器1の正面図であり、口部装着部材8が容器本体2から分離されている状態を示す。図中の一点鎖線は、表面形状を構成する面の曲率が変化する境界線を表す。他の図についても同様である。
【
図4】
図4Aは、口部装着部材8の一部を切り欠いた斜視図であり、
図4Bは、口部装着部材8を斜め下側から見た斜視図である。
【
図5】
図5Aは、口部装着部材8が容器本体2に装着された状態の正面図であり、
図5Bは、
図5A中のB-B断面図である。
【
図7】
図7Aは、容器本体2の底部近傍を斜め下側から見た斜視図であり、
図7Bは、
図7Aから外殻3を除いた状態の内袋4の斜視図である。
【
図8】
図8Aは、容器本体2の底部近傍を斜め上側から見た斜視図であり、
図8Bは、
図8Aから外殻3を除いた状態の内袋4の斜視図である。
【
図9】内プリフォーム14及び外プリフォーム13が分離されている状態を示す斜視図である。
【
図12】内プリフォーム14に外プリフォーム13を被せることによって構成されたプリフォーム15の斜視図である。
【
図13】本発明の第2実施形態での、容器本体2から外殻3のみを取り出した、
図3Aに対応する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴について独立して発明が成立する。
【0012】
1.第1実施形態
1-1.二重容器1の構成
図1に示すように、本発明の一実施形態の二重容器1は、容器本体2と、口部装着部材8を備える。
【0013】
図1に示すように、容器本体2は、口部5と、胴部6と、底部7を備える。口部5は、開口端5cを有する筒状(好ましくは円筒状)部位である。口部5は、キャップやポンプなどの口部装着部材8を装着可能な係合部5aを備える。係合部5aは、口部装着部材8がネジ式の場合は雄ねじ部5a1であり、口部装着部材8が打栓式の場合は周方向に突出する環状突起である。口部装着部材8は、逆止弁(不図示)を有していてもよい。この場合、口部装着部材8を通じて内容物の吐出は可能であるが、外気が容器本体2内に流入しないようになっている。口部5には、フランジ5bが設けられている。フランジ5bは、口部5に口部装着部材8を装着する際に口部5を支持するために利用可能である。
【0014】
胴部6は、口部5よりも開口端5cから離れた側に口部5に隣接して配置される。胴部6は、口部5よりも外径(本明細書において、「外径」は、断面が円形でない場合は、外接円径を意味する。)が大きい。胴部6は筒状であり、底部7は、胴部6の下端に設けられ、胴部6の下端を閉塞する。胴部6は、口部5から離れるにつれて外径が大きくなる肩部6bと、肩部6bよりも底部7側に設けられ外径が略一定の胴部本体6cを備える。
【0015】
係合部5aを除いた口部5の直径は、例えば20~40mmであり、25~35mmが好ましく、具体的には例えば、20、25、30、35、40mmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。口部5の長さは、例えば15~35mmであり、具体的には例えば、15、20、25、30、35mmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0016】
図2に示すように、容器本体2は、内袋4と、内袋4を覆うように配置された外殻3を備える。内袋4は、後述する突出部4c以外の部位が外殻3内に収容されている。以下の説明では、内袋4のうち、容器本体2の口部5、胴部6、及び底部7に相当する部位をそれぞれ、内袋4の口部5、胴部6、及び底部7のように称する。外殻3についても同様である。
【0017】
口部装着部材8に逆止弁が設けられている場合には、内袋4の内容物の吐出に伴って内袋4が収縮する。口部装着部材8に逆止弁が設けられていない場合は、内袋4の内容物を吐出した後にも内袋4が収縮しないので、外殻3の口部5を通じて、内袋4を引き出すことが容易でない。本発明は、内袋4を捻って縮径することによって、内袋4を外殻の口部5を通じて引き出すことを容易にするものであるので、口部装着部材8に逆止弁が設けられていない場合には、本発明を適用する意義が特に顕著である。但し、口部装着部材8に逆止弁が設けられている場合でも、内袋4が収縮する際に適切に縮径しない場合があるので、口部装着部材8に逆止弁が設けられている場合でも、本発明を適用する意義は顕著である。
【0018】
胴部6又は底部7には、外気導入孔16が設けられている。外気導入孔16は、外殻3を貫通する貫通孔であり、外気導入孔16を通じて、外殻3と内袋4の間の中間空間に外気を導入することができる。二重容器1が外殻3の圧縮によって内容物を吐出する構成の、いわゆるスクイズ式容器である場合、外気導入孔16を通じてエアーの出入りを制御する逆止弁を設けることが好ましい。逆止弁は、外殻3の圧縮時に外気導入孔16を閉状態し、圧縮力を除いたときに外気導入孔16を開状態にするように構成されていることが好ましい。この場合、外殻3に圧縮力を加えたときに圧縮力が内袋4に加わりやすくなるとともに、内容物の吐出後には、中間空間に速やかに外気を導入して、外殻3の形状が速やかに復元する。
【0019】
外気導入孔16に逆止弁が設けられている場合、外気導入孔16は、胴部6に設けられた凹部6d内に配置することが好ましい。この場合、胴部6をシュリンクフィルムで覆った場合に逆止弁がシュリンクフィルムと干渉することを回避することができる。また、凹部6dから口部5に向かって延びる溝6eを設けることが好ましい。溝6eは、シュリンクフィルムで覆われない位置にまで延びている。これによって、凹部6dがシュリンクフィルムで密閉されることを回避することができる。
【0020】
図2に示すように、口部5と、胴部6のうち口部5に隣接した位置の少なくとも一方の内面には、凹条9aと凸条9bが口部5の周方向に交互に現れる凹凸形状9が設けられていることが好ましい。凹凸形状9は、内袋4の内面に設けられている。凹条9aの数は、例えば、4~30であり、10~20であることが好ましい。凹条9aと凸条9bは、口部5の周方向に非平行に延びることが好ましい。凹条9aと凸条9bが延びる方向は、口部5の軸方向に対して、0~60度が好ましく、0~30度が好ましい。この角度は、具体的には例えば、0、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60度であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。凹凸形状9は、口部5のみ設けられていても、胴部6のうち口部5に隣接した位置に設けられていてもよいが、口部5と胴部6にまたがって設けられることが好ましい。凹凸形状9は、内袋4の口部5の他の部位に比べて、凹条9aの肉厚を小さくして形成してもよく、凸条9bの肉厚を大きくして形成してもよく、凹条9aの肉厚を小さくするとともに凸条9bの肉厚を大きくして形成してもよい。
【0021】
凸条9bでの肉厚が凹条9aでの肉厚よりも大きいので、口部5が加えた捻りが胴部6に伝わる際に、凸条9bの方が凹条9aよりも力が伝達されやすいので、凸条9bの方が凹条9aよりも速く回転し、その結果、凹条9a及びその延長線上で内袋4に折れ目が形成されることによって、内袋4がひだ状に折り畳まれやすい。このため、凹凸形状9を設けることによって、胴部6がひだ状に折り畳まれ、その結果、胴部6が速やかに縮径される。なお、内袋4の外面には凹凸形状を設けないことが好ましい。内袋4の外面には凹凸形状を設けると、内袋4と外殻3が内袋4の回転方向について係合して、内袋4が外殻3に対して相対回転しにくくなるからである。
【0022】
口部5の凸条9bでの内袋4の肉厚(内袋4の外接円の半径-凸条9bの頂点を通る内接円の半径)をTとし、凹条9aの深さ(凹条9aの底を通る内接円の半径-凸条9bの頂点を通る内接円の半径)をDとすると、D/Tの最大値は、例えば、0.2~0.8であり、0.3~0.5が好ましい。この値は、具体的には例えば、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。口部5の、凹凸形状9以外の部位での内袋4の肉厚は、例えば1~2mmであり、具体的には例えば、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0mmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。凹条9aの深さが最大となる部位での凹条9aの深さは、例えば0.3~1.0mmであり、具体的には例えば、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0mmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0023】
口部5の開口端5cから凹凸形状9の上端までの距離は、例えば、0~30mmであり、具体的には例えば、具体的には例えば、0、5、10、15、20、25、30mmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。凹凸形状9の上端から下端までの距離は、例えば、10~40mmであり、具体的には例えば、10、15、20、25、30、35、40mmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0024】
図6~
図8に示すように、内袋4の底部7には、突起4eが設けられている。外殻3の底部7には、環状凸部3bが設けられており、環状凸部3bの内側の領域に貫通孔3cが設けられている。突起4eが貫通孔3cに挿入されることで、内袋4が外殻3に対して位置決めされている。環状凸部3b及びその内側の領域は、二軸延伸ブロー成形の際にほとんど延伸されないので、外殻3及び内袋4の両方において、肉厚が大きくなっている。
【0025】
環状凸部3bの外径をD1とし、外殻3の口部5の内径をD2とすると、D1/D2は、0.9以下が好ましい。環状凸部3b及びその内側の領域は、内袋4の肉厚が大きくなるので、D1/D2が小さいほど、内袋4の底部7が縮径されやすくなる。D1/D2は、例えば、0.1~0.9であり、具体的には例えば、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0026】
容器本体2の底部7(つまり、内袋4及び外殻3のそれぞれの底部7)には、底部凹領域7aと、底部凹領域7aを取り囲む周縁領域7bが設けられている。底部凹領域7aは、底部7が容器本体2の内部に向かって凹まされた領域である。周縁領域7bが容器本体2の接地面となる。
図6Aに示すように、底部凹領域7aの周面7a1では、周縁領域7bに近づくにつれて、内袋4及び外殻3のそれぞれの肉厚が徐々に薄くなっている。周面7a1は、周縁領域7bに向かって底部7の中央から離れるように傾斜した傾斜面になっている。言い換えると、周面7a1は、底部凹領域7aの底面7a2に向かってしぼむ円錐の一部を構成している。底部凹領域7aの底面7a2は、略平坦になっている。このため、底部凹領域7aは、略円錐台形状になっている。
【0027】
底部凹領域7aの底面7a2は、二軸延伸ブロー成形の際に延伸されにくく、肉厚が大きくなりやすいので、底面7a2の直径(言い換えると、底面7a2と周面7a1の境界線によって囲まれる領域の直径)D3が小さい方が内袋4の底部7が縮径されやすくなる。D3/D2は、0.9以下が好ましい。D3/D2は、例えば、0.1~0.9であり、具体的には例えば、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0028】
図6~
図8に示すように、内袋4の底部7に、薄肉部10aと、薄肉部10aよりも肉厚が大きい厚肉部10bが内袋4の周方向に交互に現れる交互肉厚形状10が設けられている。底部7に交互肉厚形状10を設けることによって、内袋4を捻ったときに薄肉部10aが折れ曲がることによって、底部7が蛇腹状に変形して底部7が縮径されやすくなる。
【0029】
図6Cに示すように、周面7a1は、底部7近傍での内袋4の側面4dに比べて肉厚が大きいので、底部7を縮径しやすくするには、周面7a1に交互肉厚形状10を設けることが特に重要である。また、周縁領域7bは、底部7近傍での内袋4の側面4dに比べて変形しにくいので、周縁領域7bに交互肉厚形状10を設けることが特に重要である。従って、交互肉厚形状10は、底部凹領域7aの周面7a1と、周縁領域7bの少なくとも一方に設けることが好ましく、周面7a1と周縁領域7bにまたがるように設けることがさらに好ましい。また、周縁領域7bと内袋4の側面4dにまたがるように設けられることも好ましい。交互肉厚形状10をこのように設けることによって、底部7がより一層縮径されやすくなる。
【0030】
図7Bに示すように、薄肉部10a及び厚肉部10bは、底部7の中央から放射状に延びるように設けることが好ましい。また、薄肉部10aの数は、例えば、4~30であり、10~20であることが好ましい。
【0031】
薄肉部10aは、内袋4の内面と外面の一方又は両方に凹条11を設けることによって形成することができる。内袋4の内面の凹条11と外面の凹条11は、互いに対向する。隣接する2つの凹条11の間の部位が厚肉部10bとなる。
【0032】
内袋4の高さ方向に垂直な断面(
図6Cのような断面)での、薄肉部10aでの内袋4の肉厚をT1とし、厚肉部10bでの内袋4の肉厚をT2とすると、T1/T2の最小値は、0.8以下であることが好ましい。T1/T2の最小値とは、断面の位置を内袋4の高さ方向に沿って移動させて各高さ位置でT1/T2を算出したときの最小値である。T1/T2が小さいほど、厚肉部10bに比べて薄肉部10aの厚さが小さくなり、底部7が蛇腹状に変形しやすくなる。この値は、0.1以上が好ましい。この値が小さすぎると、薄肉部10aでの厚さが小さくなりすぎてピンホールが発生しやすくなる。この値は、例えば0.1~0.8であり、具体的には例えば、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0033】
口部装着部材8は、口部5に装着可能に構成され、かつ口部装着部材8の回転(ここでは、外殻3に対する相対回転)に伴って内袋4が回転するように構成されていることが好ましい。このような構成によれば、口部装着部材8を回転させることによって内袋4を捻ることが可能である。容器本体2の胴部6は、口部5よりも外径が大きいので、単に、内袋4を引っ張るだけでは、外殻3の口部5を通じて内袋4を引き出すことは容易ではないが、内袋4を捻って内袋4の胴部6を縮径させることによって、内袋4の胴部6が外殻3の口部5を通過しやすくなり、外殻3から内袋4を容易に引き出すことができる。
【0034】
以下、口部装着部材8と内袋4の係合構造をより具体的に説明する。
【0035】
図2及び
図3に示すように、内袋4は、外殻3の開口端3aから突出する突出部4cを備える。突出部4cは、突出筒4c1と、係合突起4c2と、係合フランジ4c3と、当接フランジ4c4を備える。
【0036】
係合突起4c2は、突出筒4c1の周面から径方向外側に向かって突出する。係合フランジ4c3は、係合突起4c2よりも開口端3aから離れた位置に配置され且つ突出筒4c1よりも拡径された環状部位である。当接フランジ4c4は、開口端3aに当接する位置に配置され且つ突出筒4c1よりも拡径された環状部位である。当接フランジ4c4が開口端3aに当接することによって、内袋4が外殻3内に脱落することが回避される。一方、当接フランジ4c4を設けずに、係合突起4c2を開口端3aに当接させることによって内袋4が外殻3内に脱落することを回避するようにしてもよい。
【0037】
図3~
図5に示すように、口部装着部材8は、外筒8aと、中間筒8bと、内筒8cと、係合部8dと、爪部8eと、天板8fと、ノズル8gを備える。
【0038】
外筒8aの内面に、係合部8dが設けられている。係合部8dは、口部5の係合部5aに係合する係合部であり、係合部8dを係合部5aに係合させることによって、口部装着部材8が口部5に装着される。
【0039】
中間筒8bは、外筒8aよりも直径が小さく、外筒8aの上側に配置されている。内筒8cは、中間筒8bよりも直径が小さく、外筒8a及び中間筒8bの内部に配置される、いわゆるインナーリングである。中間筒8bの上面は、天板8fで覆われている。天板8fには、ノズル8gが設けられている。
【0040】
中間筒8bの内面には、爪部8eが設けられている。爪部8eは、周方向に離間して配置された複数(本実施形態では8個)設けられている。爪部8eの数は、例えば1~20であり、4~12個が好ましい。爪部8eは、上面8e1と、下側傾斜面8e2を備える。天板8fには、爪部8eに対向する位置に貫通孔8hが設けられている。
【0041】
このような形状の口部装着部材8は、上下方向に開閉する分割金型を用いて製造することができる。上側の金型に設けられた突起を用いて貫通孔8h及び上面8e1を形成することができるので、下側の金型を無理抜きすることなく爪部8eを形成することができる。このため、爪部8eの突出量を無理抜きが可能な突出量にする必要がなく、内袋4との係合に適した突出量(例:1mm以上)にすることができる。
【0042】
本実施形態では、係合部5aは雄ねじ部5a1であり、係合部8dは、雄ねじ部5a1に螺合可能な雌ねじ部8d1であるので、口部装着部材8を口部5に対して、締め方向(通常は上側から見て時計回り方向)に相対回転(以下、口部5に対する相対回転を、単に「回転」とも称する。)させることによって、口部装着部材8を口部5に装着することができる。口部装着部材8を締め方向に回転させると、
図4Bに示す内筒8cの外周面が内袋4の内周面に密着しながら雌ねじ部8d1が雄ねじ部5a1に螺合される。この際に、内筒8cの外周面と内袋4の内周面の間の摩擦によって、口部装着部材8と共に内袋4の口部5が回転すると、内袋4が捻れてしまう。口部装着部材8を装着する前の時点で、内袋4内には内容物が充填されており、内袋4が捻れてしまうと、内袋4内の内容物が溢れ出てしまうという問題が生じる。このような問題が発生を防ぐには、口部5において内袋4が外殻3に対して相対回転しないように内袋4と外殻3を強嵌合させればいいが、単に、強嵌合させると、内袋4を外殻3から引き出すことが困難になってしまうという新たな問題が発生する。
【0043】
そこで、本実施形態では、口部5において外殻3に対する内袋4の一方向の相対回転の第1抵抗が、他方向の相対回転の第2抵抗よりも大きいという構成を採用している。例えば、雄ねじ部5a1が右ねじである場合、一方向及び他方向は、それぞれ、容器本体2の上側から見て時計回り方向及び反時計周り方向である。言い換えると、一方向は、口部装着部材8の締め方向であり、他方向は、口部装着部材8の緩め方向である。このような構成によれば、口部装着部材8を装着する際には、内袋4が外殻3に対して相対回転しにくいので、口部装着部材8を装着する際に内袋4が捻れるという問題の発生が抑制される。また、他方向への相対回転の第2抵抗が比較的小さいので、使用後に内袋4を外殻3から分離する際には、内袋4の口部5を外殻3に対して他方向に相対回転させることによって、内袋4を容易に捻って縮径させることができるので、内袋4を外殻3から引き出すことが容易である。
【0044】
具体的には、内袋4と外殻3は、口部5で凹凸係合しており、この凹凸係合は、第1抵抗が第2抵抗よりも大きくなるように構成されている。さらに具体的には、凹凸係合は、
図2C及び
図3Bに示すように、内袋4の外周面に設けた凸部4fと、外殻3の内周面に設けた凹部3fの係合である。
図2Cに示すように、凸部4fの右側(緩め方向側)には、第2抵抗を低減するためのテーパー面4f1が設けられている。一方、凸部4fの左側(締め方向側)には、テーパー面が設けられていない。このため、口部5においては内袋4を外殻3に対して、締め方向に相対回転させるための抵抗(第1抵抗)が緩め方向に相対回転させるための抵抗(第2抵抗)よりも大きくなる。本実施形態では、凸部4fと凹部3fの組は、2つが180度間隔で設けられているが、凸部4fと凹部3fの組の数は、1つであっても3つ以上であってもよい。
【0045】
なお、テーパー面4f1を設ける代わりに又はテーパー面4f1を設けると共に、凹部3fにテーパー面を設けることによって、第2抵抗を低減させるようにしてもよい。さらに、凹凸係合は、内袋4の外周面に設けた凹部と、外殻3の内周面に設けた凸部の係合としてもよい。また、凹部3fは、外殻3を貫通する貫通孔によって構成しているが、凹部3fは、凸部4fに係合可能なものであればよく、外殻3を貫通していなくもよい。
【0046】
口部装着部材8を締め方向にさらに回転させると、雌ねじ部8d1が雄ねじ部5a1に螺合されながら、爪部8eが突出部4cに徐々に近づき、ある時点で下側傾斜面8e2が係合フランジ4c3に当接する。その状態で、口部装着部材8をさらに締め方向に回転させると、爪部8eが係合フランジ4c3を乗り越えて、
図5に示す状態となる。この状態では、爪部8eは、係合フランジ4c3と、当接フランジ4c4の間に配置される。係合フランジ4c3は、爪部8eと天板8fの間の隙間に収容される。
図5Bに示すように、突出筒4c1は、爪部8eと内筒8cの間に配置される。この時点で、雄ねじ部5a1と雌ねじ部8d1が締まりきっていない場合には、係合突起4c2に設けられた周方向傾斜面4c5によってガイドされて爪部8eが係合突起4c2を乗り越えることによって、口部装着部材8はさらに締め方向に回転可能である。雄ねじ部5a1と雌ねじ部8d1が締まりきった後には、口部装着部材8は締め方向に回転不能であり、且つ口部5の軸方向に移動不能となる。
【0047】
この状態では、係合突起4c2は、口部装着部材8の回転方向について、口部装着部材8の爪部8eに係合しており、係合フランジ4c3は、口部5の軸方向について、口部装着部材8の爪部8eに係合している。つまり、爪部8eが、係合突起4c2及び係合フランジ4c3に係合している。
【0048】
このため、内袋4内の内容物を使い切った後に、口部装着部材8を緩め方向(通常は上側から見て反時計回り方向)に回転させると、口部装着部材8の回転に伴って内袋4が回転する。これによって、内袋4が捻られて縮径される。
【0049】
口部装着部材8を緩め方向にさらに回転させて雌ねじ部8d1と雄ねじ部5a1の螺合が解除されると、口部装着部材8が開口端3aから離れる方向(つまり、口部5の軸方向)に移動可能になる。係合フランジ4c3は、口部5の軸方向について、口部装着部材8に係合しているので、口部装着部材8を口部5の軸方向に移動させると、内袋4も口部装着部材8と一緒に移動し、内袋4が外殻3から引き抜かれる。
【0050】
以上の通り、本実施形態の構成によれば、口部装着部材8を緩め方向に回転させるだけで、内袋4が捻られて縮径された後に、外殻3から引き抜かれるので、簡単な操作でスムーズに、内袋4と外殻3を分離することが可能になる。
【0051】
1-2.二重容器1の製造方法
図9~
図12に示すように、容器本体2は、内袋4となる内プリフォーム14に、外殻3となる外プリフォーム13を被せて構成されたプリフォーム15を加熱して二軸延伸ブロー成形することによって形成することができる。
【0052】
図9に示すように、内プリフォーム14は、有底筒状であり、口部14aと、胴部14bと、底部14cを備える。口部14aの開口端には、突出部14dが設けられている。突出部14dは、成形時に変形せずにそのままの形状で突出部4cとなる。従って、突出部4cについて述べた事項は、突出部14dにも当てはまる。底部14cは、胴部14bの下端を閉じるように設けられる。底部14cには、位置決めピン14c1が設けられている。
【0053】
図10に示すように、内プリフォーム14の内面には、凹凸形状19が設けられている。凹凸形状19は、そのままの形状又は成形時に延伸されて、容器本体2の凹凸形状9となる。凹凸形状9に関する説明は、その趣旨に反しない限り、凹凸形状19にも当てはまる。
【0054】
図9~
図10に示すように、内プリフォーム14の底部14cの近傍には、薄肉部20aと、薄肉部20aよりも肉厚が大きい厚肉部20bが周方向に交互に現れる交互肉厚形状20が設けられている。交互肉厚形状20が二軸延伸ブロー成形の際に延伸されて交互肉厚形状10となる。薄肉部20aの数は、例えば、4~30であり、10~20であることが好ましい。薄肉部20aは、内プリフォーム14の長手方向に沿った方向に設けることが好ましい。
【0055】
薄肉部20aは、内プリフォーム14の内面と外面の一方又は両方に凹条21を設けることによって形成することができる。内プリフォーム14の内面に凹条21を設けると、成形後に内袋4の内面に凹条11が形成される。内プリフォーム14の外面に凹条21を設けると、成形後に内袋4の外面に凹条11が形成され、かつ、外面の凹条11に対向する位置の内袋4の内面にも凹条11が形成される。ブローの際のエアーの圧力によって凹条11に対向する位置の樹脂が外部に向かって押圧されるからである。
【0056】
内プリフォーム14の高さ方向に垂直な断面(
図10Dのような断面)での、薄肉部20aでの内袋4の肉厚をt1とし、厚肉部20bでの内プリフォーム14の肉厚をt2とすると、T1/T2の最小値は、0.8以下であることが好ましい。t1/t2の最小値とは、断面の位置を内プリフォーム14の高さ方向に沿って移動させて各高さ位置でt1/t2を算出したときの最小値である。t1/t2の値は、T1/T2に相関しており、t1/t2を小さくすることによってT1/T2を小さくすることができる。t1/t2の値は、0.1以上が好ましい。この値は、例えば0.1~0.8であり、具体的には例えば、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0057】
図9に示すように、外プリフォーム13は、有底筒状であり、口部13aと、胴部13bと、底部13cを備える。底部13cは、胴部13bの下端を閉じるように設けられる。底部13cには、環状凸部13d及び位置決め孔(不図示)が設けられている。
【0058】
図11に示すように、プリフォーム15を形成する際に、突出部14dを口部13aの開口端に当接させると共に、位置決めピン14c1を位置決め孔に挿入する。これによって、内プリフォーム14と外プリフォーム13が互いに位置決めされる。この状態では、口部14aと口部13aが対向し、胴部14bと胴部13bが対向する。
【0059】
口部13a,14aがプリフォーム15の口部15aとなり、胴部13b,14bがプリフォーム15の胴部15bとなり、底部13c,14cがプリフォーム15の底部15cとなる。胴部15b及び底部15cが、二軸延伸ブロー成形において主に延伸される。但し、二軸延伸ブロー成形は、環状凸部13dを支持した状態で行われるので、環状凸部13d及びその内側領域は、二軸延伸ブロー成形の際にほとんど延伸されない。環状凸部13dは、成形後に環状凸部3bとなる。
【0060】
ところで、プリフォーム15を加熱して二軸延伸ブロー成形する際には、通常、プリフォーム15の内面側(つまり、内プリフォーム14の内面側)が支持される。プリフォーム15の搬送方法としては、底部15cを下側に向ける正立搬送と、底部15cを上側に向ける倒立搬送があり、正立搬送が一般的であり、好ましい。一方、プリフォーム15を正立搬送すると、外プリフォーム13が内プリフォーム14から外れて脱落してしまうという問題が発生する虞がある。口部15aにおいて外プリフォーム13と内プリフォーム14を強く嵌合させると、外プリフォーム13の脱落を抑制することが可能であるが、その場合、成形によって得られる容器本体2において、内袋4が外殻3から外れにくくなるという問題が新たに発生する。
【0061】
そこで、使用後には内袋4を外殻3から容易に引き出すことを可能にしつつ、外プリフォーム13の脱落を抑制すべく、本実施形態では、内プリフォーム14と外プリフォーム13を口部15aにおいて凹凸係合させている。
【0062】
本実施形態では、凹凸係合は、
図11に示すように、内プリフォーム14の口部14aの外周面に設けた凸部14fと、外プリフォーム13の口部13aの内周面に設けた凹部13fの係合である。凸部14f及び凹部13fがそれぞれ凸部4f及び凹部3fとなる。凸部14fには、4f1となるテーパー面14f1が設けられている。従って、凸部14f及び凹部13fの説明は、その趣旨に反しない限り、凸部4f及び凹部3fについても成り立ち、凸部4f及び凹部3fの説明は、その趣旨に反しない限り、凸部14f及び凹部13fについても成り立つ。
【0063】
図11に示すように、内プリフォーム14を外プリフォーム13内に挿入する際に、凸部14fが外プリフォーム13の開口縁を押し広げながら外プリフォーム13内に挿入され、凹部13fに係合させる。このような係合の際の抵抗を低減すべく、凸部14fの下側(外プリフォーム13に対向する側)には、テーパー面14f2が設けられている。一方、凸部14fの上側には、テーパー面が設けられていない。このため、凸部14fが凹部13fに係合した後は、係合が解除されにくくなっている。
【0064】
なお、テーパー面14f2を設ける代わりに又はテーパー面14f1を設けると共に、外プリフォーム13の開口縁にテーパー面を設けることによって、凸部14fを凹部13fに係合させる際の抵抗を低減させるようにしてもよい。さらに、凹凸係合は、内プリフォーム14の外周面に設けた凹部と、外プリフォーム13の内周面に設けた凸部の係合としてもよい。また、凹部13fは、外プリフォーム13を貫通する貫通孔によって構成しているが、凹部13fは、凸部14fに係合可能なものであればよく、外プリフォーム13を貫通していなくてもよい。
【0065】
内プリフォーム14及び外プリフォーム13は、ポリエステル(例:PET)やポリオレフィン(例:ポリプロピレン、ポリエチレン)等の熱可塑性樹脂のダイレクトブロー成形や射出成形等によって形成可能である。内プリフォームは、外プリフォームよりも成形収縮率が大きい材料で構成することが好ましい。この場合、成形収縮によって外殻3と内袋4の間に隙間が形成されて外殻3と内袋4の間の中間空間への外気導入が容易になる。
【0066】
一例では、内プリフォーム14がポリオレフィン(例:ポリプロピレン)で構成され、外プリフォーム13はPETで構成される。ポリオレフィンは、PETよりも成形収縮率が大きいので、このような樹脂構成にすることで、外殻3と内袋4の間に隙間が形成されやすくなる。また、内プリフォーム14と外プリフォーム13の材料を異ならせることによってブロー成形の際に互いに溶着することが抑制される。
【0067】
また、内プリフォーム14の口部14aがポリオレフィンで構成され、外プリフォーム13の口部13aが非晶質PETで構成されている場合、二軸延伸ブロー成形において、口部13aが加熱されることによって非晶質PETの結晶化が進んで、口部13aの寸法が縮小される。一方、口部14aも加熱されるが、ポリオレフィンは、結晶性樹脂であり、二軸延伸ブロー成形の前の時点で、既に、ある程度結晶化されているので、二軸延伸ブロー成形に加熱されても寸法の変化は、非晶質PETよりも小さい。このため、口部13aの収縮が口部14aの収縮よりも顕著となり、内プリフォーム14の突出部14dと外プリフォーム13の開口端の間に隙間が形成され、一対の分割金型でプリフォーム15を挟むのに支障が出る場合がある。また、成形後に得られる容器本体2については、
図3Aに示す内袋4の突出部4cと、外殻3の開口端3aの間に隙間ができ、外観が悪くなる虞がある。しかし、本実施形態では、内プリフォーム14と外プリフォーム13が口部15aにおいて凹凸係合しているので、内袋4と外殻3も口部5において係合され、上記の隙間の発生が抑制される。
【0068】
内プリフォーム14は、ダイレクトブロー成形で形成することが好ましい。ダイレクトブロー成形(溶融状態の筒状パリソンを用いたブロー成形)によれば、積層構造の内プリフォーム14を容易に形成することができる。外プリフォーム13は、射出成形で形成することが好ましい。
【0069】
プリフォーム15を二軸延伸ブロー成形した後は、外殻3に外気導入孔16を形成することによって
図1に示す容器本体2を得ることができる。その後に、内袋4内に内容物を充填した後に、口部装着部材8を口部5に装着することによって、二重容器1を得ることができる。
【0070】
2.第2実施形態
図2を用いて本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に類似しており、以下、相違点を中心に説明する。
【0071】
本実施形態では、
図13に示すように、凹部3fは、溝3f1で構成されている。溝3f1は、外殻3の開口端3a側の端部3f2と、外殻3の内側の端部3f3の間に延びる。
図2Cに示す凸部4fは、溝3f1内に配置され、溝3f1に沿って端部3f2に向かって凸部4fを移動させることによって、凸部4fと凹部3fによる凹凸係合を解除することができる。このような構成によれば、第2抵抗が非常に小さくなる。また、凸部4fが端部3f2に到達すると、凸部4fを、それ以上、溝3f1に沿って外殻3の内側に向かって移動させることができないので、第1抵抗が非常に大きくなる。
【0072】
溝3f1の傾斜角度は、雄ねじ部5a1のねじ山の傾斜角度と一致することが好ましい。この場合、口部装着部材8と内袋4を一緒に緩め方向に回転させる際に、凸部4fを溝3f1に沿ってスムーズに移動させることができる。
【0073】
溝3f1で構成された凹部3fは、外プリフォーム13の凹部13fを溝で構成することによって得ることができる。この場合、内プリフォーム14の凸部14fを溝に沿って移動させることによって凸部14fと凹部13fを係合することができるので、凹凸係合の際の抵抗が非常に小さくなる。外プリフォーム13の溝が外プリフォーム13の口部13aの中心軸が延びる方向に延びていると、外プリフォーム13が内プリフォーム14から脱落しやすくなるので、凹部13fを構成する溝は、外プリフォーム13の口部13aの中心軸に対して傾斜した方向に延びることが好ましい。
【0074】
なお、ここでは、外殻3又は外プリフォーム13に凹部がある場合を例に挙げたが、内袋4又は内プリフォーム14に凹部がある場合でも、この凹部を溝にして、上記と同様の作用効果を得ることが可能である。
【0075】
3.別観点の発明
二軸延伸ブロー成形工程の際に、プリフォーム15を正立搬送しても外プリフォーム13が脱落しないようにする観点や、内プリフォーム14の突出部14dと外プリフォーム13の間に隙間が生じないようにするという観点では、以下の発明が抽出される。
【0076】
二軸延伸ブロー成形工程を備える二重容器の製造方法であって、
前記二軸延伸ブロー成形工程では、内プリフォームに外プリフォームを被せて構成されたプリフォームを加熱して二軸延伸ブロー成形することによって容器本体を形成し、
前記プリフォームの口部において、前記内プリフォームと前記外プリフォームが凹凸係合している、方法。
【0077】
この観点の方法によって得られる容器本体2では、口部5において外殻3に対する内袋4の一方向の相対回転の第1抵抗が、他方向の相対回転の第2抵抗よりも大きいという構成になっていることは、必須ではない。
【0078】
4.その他の実施形態
・上記実施形態では、二軸延伸ブロー成形した後に外気導入孔16を形成しているが、外プリフォーム13に外気導入孔となる貫通孔を予め形成しておいてもよい。
・外気導入孔16は、外殻3の底部に形成してもよい。
・本発明では、内袋4を捻る構成は、特に限定されないので、口部装着部材8の回転に伴って内袋4が回転するように構成されていなくてもよい。この場合、例えば、指で内袋4をつまんで内袋4を回転させてもよい。従って、口部装着部材8としては、内袋4と係合する構造を有さないキャップやポンプを用いてもよい。また、容器本体2は、突出部4cを備えなくてもよく、例えば、突出部4cの代わりに、内袋4の開口端にフランジを設け、このフランジを外殻3の開口端に当接させることによって、内袋4が外殻3内に脱落することを回避することができる。
・上記実施形態では、凹条11,21を形成することによって交互肉厚形状10,20を実現しているが、内袋4又は内プリフォーム14の内面と外面の一方又は両方に凸条を形成して厚肉部を形成することによって交互肉厚形状10,20を形成してもよい。この場合でも、内袋4の捻れに伴って薄肉部が選択的に折れ曲がるので、底部7が蛇腹状に変形して縮径されやすくなる。また、交互肉厚形状10,20は、不要な場合には省略してもよい。
・凹凸形状9は、不要な場合には省略してもよい。
・環状凸部3b,13dは、省略可能である。
【符号の説明】
【0079】
1 :二重容器
2 :容器本体
3 :外殻
3a :開口端
3b :環状凸部
3c :貫通孔
3f :凹部
3f1 :溝
3f2 :端部
3f3 :端部
4 :内袋
4c :突出部
4c1 :突出筒
4c2 :係合突起
4c3 :係合フランジ
4c4 :当接フランジ
4c5 :周方向傾斜面
4d :側面
4e :突起
4f :凸部
4f1 :テーパー面
5 :口部
5a :係合部
5a1 :雄ねじ部
5b :フランジ
5c :開口端
6 :胴部
6b :肩部
6c :胴部本体
6d :凹部
6e :溝
7 :底部
7a :底部凹領域
7a1 :周面
7a2 :底面
7b :周縁領域
8 :口部装着部材
8a :外筒
8b :中間筒
8c :内筒
8d :係合部
8d1 :雌ねじ部
8e :爪部
8e1 :上面
8e2 :下側傾斜面
8f :天板
8g :ノズル
8h :貫通孔
9 :凹凸形状
9a :凹条
9b :凸条
10 :交互肉厚形状
10a :薄肉部
10b :厚肉部
11 :凹条
13 :外プリフォーム
13a :口部
13b :胴部
13c :底部
13d :環状凸部
13f :凹部
14 :内プリフォーム
14a :口部
14b :胴部
14c :底部
14c1 :位置決めピン
14d :突出部
14f :凸部
14f1 :テーパー面
14f2 :テーパー面
15 :プリフォーム
15a :口部
15b :胴部
15c :底部
16 :外気導入孔
19 :凹凸形状
20 :交互肉厚形状
20a :薄肉部
20b :厚肉部
21 :凹条