(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022181613
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】吸気マニホールド構造
(51)【国際特許分類】
F02M 35/104 20060101AFI20221201BHJP
【FI】
F02M35/104 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021088647
(22)【出願日】2021-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古谷 雅之
(72)【発明者】
【氏名】一木 爽
(72)【発明者】
【氏名】西岡 真宏
(72)【発明者】
【氏名】山田 拓也
(57)【要約】
【課題】エンジンをエンジンルームに縦置きする際に、車両前突時に吸気マニホールドと燃料配管とが干渉するのを抑制する。
【解決手段】吸気マニホールド10の前側に車両部品が配置され、吸気マニホールド10の後側に燃料配管が配置され、吸気マニホールド10は、複数の独立吸気管部11の吸気下流端側に設けられ、複数の独立吸気管部11をエンジンにおける車幅方向の一側の部分にそれぞれ接続する取付部33を有し、取付部33は、相対的に前側に位置する前側取付部36と、相対的に後側に位置する後側取付部37とを有し、後側取付部37は、前側取付部36と比較して剛性が高くなるように構成されている。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンルーム内に気筒列方向が車両前後方向になるように縦置きされた多気筒エンジンの車幅方向の一側の部分に接続された吸気マニホールドを備える吸気マニホールド構造であって、
前記吸気マニホールドの車両前側には、車両部品が配置され、
前記吸気マニホールドの車両後側には、燃料が流通する燃料配管が上下方向に延びるように配置され、
前記吸気マニホールドは、
気筒毎に分岐して形成され、車両前後方向に並んだ複数の独立吸気管部と、
前記複数の独立吸気管部の吸気下流端側に設けられ、該複数の独立吸気管部を前記エンジンにおける車幅方向の前記一側の部分にそれぞれ接続する取付部と、
を有し、
前記取付部は、相対的に車両前側に位置する前側取付部と、相対的に車両後側に位置する後側取付部とを有し、
前記後側取付部は、前記前側取付部と比較して剛性が高くなるように構成されていることを特徴とする吸気マニホールド構造。
【請求項2】
請求項1に記載の吸気マニホールド構造において、
前記後側取付部の車幅方向の厚みは、前記前側取付部の車幅方向の厚みよりも厚いことを特徴とする吸気マニホールド構造。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の吸気マニホールド構造において、
前記取付部は、外周面に、車両前後方向に延びる複数の横リブを有し、
前記後側取付部の前記横リブの数は、前記前側取付部の前記横リブの数よりも多いことを特徴とする吸気マニホールド構造。
【請求項4】
請求項3に記載の吸気マニホールド構造において、
前記取付部は、前記複数の横リブと交差するように車幅方向に延びる複数の縦リブを更に有し、
前記後側取付部の前記横リブ及び前記縦リブは、それぞれ、前記前側取付部の前記横リブ及び前記縦リブよりも厚いことを特徴とする吸気マニホールド構造。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1つに記載の吸気マニホールド構造において、
前記吸気マニホールドは樹脂製であることを特徴とする吸気マニホールド構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示された技術は、吸気マニホールド構造に関する技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来より、エンジンに接続される吸気マニホールドの構造を工夫することで、車両衝突時の対応を行うことが検討されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、気筒列方向が車幅方向となるようにエンジンルームに横置きされたエンジンにおいて、エンジンの車両前側に樹脂製の吸気マニホールドをその上部と下部とで締結し、吸気マニホールドの上部取付け部の下方に、クランク軸線方向に延びる燃料分配管を配置し、吸気マニホールドをエンジンに近い側と遠い側とで分割形成されるとともに、接合された複数の分割体で構成し、エンジンに近い側の基部分割体をエンジンより遠い側の他部分割体より強度を高くし、エンジンの車両前面側に樹脂製のオイルセパレータカバーを設け、基部分割体とオイルセパレータカバーに、衝突時に基部分割体の変位の過程で互に当接する後退規制部をそれぞれ設けた、エンジンの前部構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、エンジンを気筒列方向が車両前後方向となるように配置すると、吸気マニホールドは、エンジンの車幅方向の一側に配置される。このとき、エンジンの後側の部分には、燃料ポンプと燃料ポンプに接続される燃料配管が配置され、エンジンの前側の部分には、オルタネータなどの車両部品が配置されることがある。このような構成の場合、車両前突時には、車両部品が後退して吸気マニホールドと当接する。これにより、吸気マニホールドが玉突き後退すると、吸気マニホールドが燃料配管と干渉するおそれがある。
【0006】
特許文献1に記載のエンジン構造は、エンジンがエンジンルームに横置きされることを前提として、吸気マニホールドと燃料配管との干渉を抑制する構成であるため、エンジンをエンジンルームに縦置きする場合にまで、吸気マニホールドと燃料配管との干渉を抑制するものではない。よって、エンジンをエンジンルームに縦置きする際に、吸気マニホールドと燃料配管との干渉を抑制するという観点からは改良の余地がある。
【0007】
ここに開示された技術は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、エンジンをエンジンルームに縦置きする際に、車両前突時に吸気マニホールドと燃料配管とが干渉するのを抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、ここに開示された技術では、エンジンルーム内に気筒列方向が車両前後方向になるように縦置きされた多気筒エンジンの車幅方向の一側の部分に接続された吸気マニホールドを備える吸気マニホールド構造を対象として、前記吸気マニホールドの車両前側には、車両部品が配置され、前記吸気マニホールドの車両後側には、燃料が流通する燃料配管が上下方向に延びるように配置され、前記吸気マニホールドは、気筒毎に分岐して形成され、車両前後方向に並んだ複数の独立吸気管部と、前記複数の独立吸気管部の吸気下流端側に設けられ、該複数の独立吸気管部を前記エンジンにおける車幅方向の前記一側の部分にそれぞれ接続する取付部と、を有し、前記取付部は、相対的に車両前側に位置する前側取付部と、相対的に車両後側に位置する後側取付部とを有し、前記後側取付部は、前記前側取付部と比較して剛性が高くなるように構成されている、という構成とした。
【0009】
この構成によると、車両前突時には、前側取付部を衝突荷重により変形させる一方で、後側取付部については、出来る限り変形させないようにして、吸気マニホールドが玉突き後退するのを抑制することができる。特に、前側取付部の変形により衝突荷重を吸収することで、後側取付部で受ける荷重を低減することができるため、後側取付部の変形を出来る限り抑制することができる。これにより、車両前突時に吸気マニホールドと燃料配管とが干渉するのを抑制することができる。
【0010】
前記吸気マニホールド構造において、前記後側取付部の車幅方向の厚みは、前記前側取付部の車幅方向の厚みよりも厚い、という構成でもよい。
【0011】
すなわち、後側取付部が変形せずとも、後側取付部と独立吸気管部とが破断する可能性がある。前記の構成によると、独立吸気管部が衝突荷重により後側取付部から破断したとしても、独立吸気管部は、前側取付部よりもエンジンから遠い側で破断する。これにより、吸気マニホールドは、エンジンから離れながら後退する。詳しくは、独立吸気管部が取付部から破断するときには、前側取付部から破断した後に後側取付部から破断する。このため、独立吸気管部が後側取付部から破断するときには、独立吸気管部は後側取付部を支点に後側かつ車幅方向外側に回転しながら、後側取付部から破断する。この結果、独立吸気管部が後側取付部から破断したときには、後側かつ車幅方向外側に向かう力がかかった状態となるため、吸気マニホールドは後側かつ車幅方向外側に向かって後退する。したがって、吸気マニホールドと燃料配管とが干渉することをより効果的に抑制することができる。
【0012】
前記吸気マニホールド構造において、前記取付部は、外周面に、車両前後方向に延びる複数の横リブを有し、前記後側取付部の前記横リブの数は、前記前側取付部の前記横リブの数よりも多い、という構成でもよい。
【0013】
この構成によると、後側取付部の剛性が高くなるため、後側取付部の変形を出来る限り抑制させることができる。これにより、車両前突時に吸気マニホールドと燃料配管とが干渉するのをより効果的に抑制することができる。
【0014】
取付部に横リブが設けられた吸気マニホールド構造において、前記取付部は、前記複数の横リブと交差するように車幅方向に延びる複数の縦リブを更に有し、前記後側取付部の前記横リブ及び前記縦リブは、それぞれ、前記前側取付部の前記横リブ及び前記縦リブよりも厚い、という構成でもよい。
【0015】
この構成によると、後側取付部の剛性が高くなるため、後側取付部の変形をより効果的に抑制させることができる。これにより、車両前突時に吸気マニホールドと燃料配管とが干渉するのをより効果的に抑制することができる。
【0016】
前記吸気マニホールド構造において、前記吸気マニホールドは樹脂製である、という構成でもよい。
【0017】
この構成によると、吸気マニホールドを金属で構成した場合と比較して、前側取付部と後側取付部との間で剛性に差が生じる構造にしやすい。これにより、車両前突時に吸気マニホールドと燃料配管とが干渉するのを抑制する構造を、容易に実現することができる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、ここに開示された技術によると、車両前突時に吸気マニホールドと燃料配管とが干渉するのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、例示的な実施形態に係る吸気マニホールド構造を有するエンジンの側面図である。
【
図2】
図2は、エンジンの吸気マニホールドを拡大して示す正面図である。
【
図3】
図3は、エンジンの吸気マニホールドを拡大して示す背面図である。
【
図4】
図4は、吸気マニホールドを左上側かつ後側から見た斜視図である。
【
図5】
図5は、吸気マニホールドの第1分割ピースを右側から見た側面図である。
【
図7】
図7は、第5締結部を拡大して示す拡大斜視図である。
【
図8】
図8は、
図6のVIII-VIII線相当の平面で切断した断面図である。
【
図9】
図9は、
図6のIX-IX線相当の平面で切断した断面図である。
【
図10】
図10は、吸気マニホールドの左下側かつ後側から見た斜視図である。
【
図11】
図11は、吸気マニホールドの第2分割ピースの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、例示的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。尚、以下の説明では、車両に対する前、後、左、右、上及び下を、それぞれ単に前、後、左、右、上及び下という。左右方向は、後側から前側を見たときの左側を左といい、右側を右という。
【0021】
図1は、エンジン1を左側から見た側面図である。エンジン1は多気筒エンジンであり、具体的には4つの気筒を有している。エンジン1は、気筒列方向が前後方向となるように車両のエンジンルームに縦置きされている。エンジン1は、左側が吸気側となり、右側が排気側となるように配設されている。
【0022】
エンジン1のシリンダヘッドの左側側面には、吸気を気筒内に導入するための吸気マニホールド10が接続されている。吸気マニホールド10は、合成樹脂で構成されている。
図2及び
図3に示すように、吸気マニホールド10は、気筒毎に分岐して形成されかつ前後方向に並ぶ複数(ここでは4つ)の独立吸気管部11と、各独立吸気管部11の下端部に接続されかつ各独立吸気管部11に吸気を分配するサージタンク部13と、サージタンク部13の前側かつ上側の部分から前側に延びかつ不図示の吸気管から吸気を導入するための吸気導入管14と、を有する。吸気マニホールド10の詳細な構成については後述する。
【0023】
図1に示すように、吸気マニホールド10の前側には、車両部品、特にエンジン補機としてのオルタネータ2が配置されている。オルタネータ2は、エンジンの回転により発電するとともに、エンジンの始動時にはスタータとして機能する。オルタネータ2は、
図1及び
図2に示すように、サージタンク部13と同じ高さ位置に配置されており、前側から見てサージタンク部13と重複する位置に配置されている。
【0024】
図1及び
図3に示すように、吸気マニホールド10の後側には、燃料が流通する燃料配管3が配置されている。
図3に示すように、燃料配管3は、不図示の燃料タンクから、燃料ポンプ4に燃料を供給する低圧配管3aと、燃料ポンプ4により昇圧された燃料が流通する高圧配管3bとを含む。低圧配管3aは、柔軟性のある樹脂チューブで構成されている。高圧配管3bは、金属配管で構成されている。低圧配管3a及び高圧配管3bは、いずれも上下方向に延びるように配置されている。高圧配管3bの下流側の端部は、燃料分配管5の後側端部に接続されている。燃料分配管5は、各気筒に燃料を供給するための分配管であって、エンジン1の左側側面に沿って前後方向に延びている。燃料分配管5は、
図3に示すように、後述する取付部33とサージタンク部13との間の位置に配置されている。
【0025】
以下、
図4~
図11を参照しながら、本実施形態に係る吸気マニホールド10の構成について詳細に説明する。
【0026】
図4に示すように、吸気マニホールド10の各独立吸気管部11は、それぞれ、サージタンク部13の左下側の部分に一体に接続されている。各独立吸気管部11は、サージタンク部13との接続部分から上側かつ右側に湾曲するように延びていて、サージタンク部13の上側を覆うように配設されている。複数の独立吸気管部11のうち少なくとも一部(特に前側に位置する独立吸気管部11)は、吸気導入管14の上側を覆っている。各独立吸気管部11は、下端部においてサージタンク部13内に、それぞれに連通している。吸気は、吸気導入管14を通って、サージタンク部13に溜められた後、各独立吸気管部11を通って、気筒内に導入される。
【0027】
図6に示すように、各独立吸気管部11は、吸気上流側から順に、主通路部12と、中間部44(後述する第2分割ピース40の部分)と、下流側端部34(後述する第1分割ピース30の部分)とをそれぞれ有する。主通路部12、中間部44、及び下流側端部34が互いに結合されることで各独立吸気管部11が構成されている。
【0028】
各独立吸気管部11の主通路部12は、その長手方向の全体に亘って互いに一体化されている。すなわち、相隣接する主通路部12同士が、両独立吸気管部11の間に位置する連結部52を介して互いに連結されている。連結部52には、独立吸気管部11の剛性を向上させるための、前後方向及び左右方向に広がる複数の横リブ52aが設けられている。
【0029】
中間部44は、相隣接する中間部44同士が連結部44a(
図8及び
図9参照)を介して互いに連結されている。中間部44は、最も前側の中間部44を除いて、左右方向に延びる縦リブをそれぞれ有する。
【0030】
下流側端部34は、相隣接する下流側端部34同士が連結部34c(
図8及び
図9参照)を介して互いに連結されている。下流側端部34は、後側2つの下流側端部34が、前側2つの下流側端部34と比較して短くなっている。前側2つの下流側端部34には、前後方向に延びる横リブ34aと左右方向に延びる縦リブ34bとが、互いに直交して編み目状になるように形成されている。後側2つの下流側端部34には、横リブ34aが形成されず縦リブ34bのみが形成されている。各縦リブ34bは、後述する前側縦リブ36b及び後側縦リブ37bに連続して形成されている。
【0031】
図5及び
図6に示すように、各独立吸気管部11のサージタンク部13とは反対側の端部(つまり、下流側端部34の最下流側の部分)は、互いに一体化されていて、吸気マニホールド10をエンジン1のシリンダブロックに取り付けるための取付部33となっている。取付部33は、サージタンク部13に対して上側に離れた位置に位置している。
【0032】
取付部33は、複数の独立吸気管部11を互いに一体化するように前後方向に広がっている。取付部33は、フランジ状に形成されている。取付部33は、ボルト62(
図1参照)によりエンジン1のシリンダヘッドの左側側面に締結固定される複数の締結部35(ここでは5つ)を有する。締結部35は、
図5に示すように、最も前側の独立吸気管部11の前側の部分、相隣接する独立吸気管部11の間の部分、及び最も後側の独立吸気管部11の後側の部分に、それぞれ設けられている。複数の締結部35は、前後方向に対して上下方向に千鳥状に配置されている。具体的には、複数の締結部35を前側から第1締結部35a、第2締結部35b、第3締結部35c、第4締結部35d、及び第5締結部35eとしたときに、第1締結部35a、第3締結部35c、第5締結部35eは、相対的に下側に位置しており、第2締結部35b及び第4締結部35dは、相対的に上側に位置している。
図7に示すように、第5締結部35eは、第1締結部35aよりも左右方向に太くなるように形成されている。また、第5締結部35eと取付部33の後側かつ下側の端部との間には、補強リブ33aが設けられている。これにより、第5締結部35eの周辺部分は、他の締結部35a~35dよりも剛性が高くなっている。
【0033】
取付部33は、相対的に前側に位置する前側取付部36と、相対的に後側に位置する後側取付部37とを有する。前側取付部36は、複数の独立吸気管部11のうち前側2つの独立吸気管部11を前後方向に連結する部分であり、後側取付部37は、複数の独立吸気管部11のうち後側2つの独立吸気管部11を前後方向に連結する部分である。
図6に示すように、前側取付部36は、第3締結部35cの位置まで延びている。
【0034】
図6に示すように、前側取付部36には、前後方向に延びる複数の前側横リブ36aと左右方向に延びる複数の前側縦リブ36bとが、互いに直交して編み目状になるように設けられている。また、後側取付部37には、前後方向に延びる複数の後側横リブ37aと左右方向に延びる複数の後側縦リブ37bとが、互いに直交して編み目状になるように設けられている。前側横リブ36aは2つ形成されており、後側横リブ37aは3つ形成されている。つまり、後側横リブ37aの数は、前側横リブ36aの数よりも多くなっている。また、後側横リブ37a及び後側縦リブ37bは、前側横リブ36a及び前側縦リブ36bと比較して厚くなっている。これにより、後側取付部37は、前側取付部36よりも剛性が高くなっている。
【0035】
図8は、前側取付部36を第2締結部35bの位置で切断した断面であり、
図9は、後側取付部37を第4締結部35dの位置で切断した断面である。
図8及び
図9に示すように、後側取付部37の左右方向(つまり車幅方向)の厚みW2は、前側取付部36の左右方向の厚みW1と比較して、厚くなっている。具体的には、後側取付部37の厚みW2は、前側取付部36の厚みと比較して、約2倍の厚みになっている。これにより、後側取付部37は、前側取付部36よりも剛性が高くなっている。
【0036】
図5に示すように、サージタンク部13は、吸気導入管14の後端部に連続して構成されており、前後方向及び左右方向に広がっている。サージタンク部13は、前後方向から見て、左右方向に対して上下方向が長い楕円形状をなしている(
図3参照)。サージタンク部13は、右側の部分に剛性を高めるための複数の補強リブ13aを有する。
【0037】
吸気導入管14は、後側に向かって右側に傾斜して延びている。吸気導入管14は、サージタンク部13よりも右側には膨出しないようになっている。具体的には、エンジン1に取り付けた状態で、吸気導入管14における最も右側の頂部は、サージタンク部13の右側側面部と、左右方向における略同じ位置になるように形成されている。
【0038】
図5に示すように、吸気マニホールド10の右側の部分には、吸気マニホールド10の剛性を確保するために、後述するサージタンク基部31と、導入管基部32と、取付部33とを連結する前側及び後側架橋部71,72が上下方向に延びるようにそれぞれ設けられている。前側架橋部71は、前後方向における第2締結部35bの位置に設けられている。前側架橋部71の上端部は、前側取付部36の下端部、前側の下流側端部34の下端部、及び前側の中間部44の下端部に連結されている。前側架橋部71の下端部は、吸気導入管14の上側かつ右側の部分に連結されている。前側架橋部71の上端部は、前側2つの独立吸気管部11を前後方向に連結するように形成されている。後側架橋部72は、前後方向における第4締結部35dの位置に設けられている。後側架橋部72の上端部は、後側取付部37の下端部、後側の下流側端部34の下端部、及び後側の中間部44の下端部に連結されている。後側架橋部72の下端部は、サージタンク部13の上側かつ後側の端部に連結されている。後側架橋部72の上端部は、後側2つの独立吸気管部11を前後方向に連結するように形成されている。
【0039】
サージタンク部13の下部には、下側に突出する突出部38が形成されている。
図10に示すように、突出部38は、下側に加えて、右側(つまりエンジン側)に向かって突出するように形成されている。この突出部38の下端部は、ボルト61を介してエンジン1のシリンダブロックの左側側面に締結固定される。
【0040】
本実施形態では、吸気マニホールド10は、左右方向(車幅方向)に分割された3つの分割ピースで構成されている。具体的には、吸気マニホールド10は、最もエンジン1に近い側(右側)に位置する第1分割ピース30と、最もエンジン1から遠い側(左側)に位置する第3分割ピース50と、第1分割ピース30と第3分割ピース50との間に位置する第2分割ピース40とを有する。これら第1~第3分割ピース30,40,50は、それぞれ別々に金型により樹脂で一体成形されたものであって、その成形後に、振動溶着によって互いに結合されて一体化される。これにより、第1~第3分割ピース30,40,50の間には隙間が形成されないようになっている。
【0041】
第1分割ピース30は、サージタンク部13の右側部(以下、サージタンク基部31という)、吸気導入管14の前側部分の全部及び後側部分の右側部(以下、導入管基部32という)、取付部33、前側架橋部71の右側部71a、後側架橋部72の右側部72a、独立吸気管部11の下流側端部34、及び突出部38を構成する。第2分割ピース40は、
図11に示すように、サージタンク部13の左側部(以下、サージタンク他部41という)、吸気導入管14の後側部分の左側部分(以下、導入管他部42という)、独立吸気管部11の主通路部12の右側部分(以下、独立管基部43という)、独立吸気管部11の主通路部12と下流側端部34とを間の中間部44、前側架橋部71の左側部71b、後側架橋部72の左側部72bを構成する。第3分割ピース50は、独立吸気管部11の主通路部12の左側部分(以下、独立管他部51という)、主通路部12の連結部52、連結部52の横リブ52aを構成する。
【0042】
サージタンク部13は、該サージタンク部13において第1分割ピース30と第2分割ピース40とが互いに合わされることで形成される。サージタンク部13は、第1分割ピース30における半割のサージタンク基部31と第2分割ピース40における半割のサージタンク他部41とが互いに合わされることで形成される。
【0043】
吸気導入管14は、該吸気導入管14において第1分割ピース30と第2分割ピース40とが互いに合わされることで形成される。サージタンク部13は、第1分割ピース30における半割の導入管基部32と第2分割ピース40における半割の導入管他部42とが互いに合わされることで形成される。
【0044】
独立吸気管部11における主通路部12は、該主通路部12において第2分割ピース40と第3分割ピース50とが互いに合わされることで形成される。すなわち、主通路部12は、第2分割ピース40における半割の独立管基部43と第3分割ピース50における半割の独立管他部51(
図10参照)とが互いに合わされることで形成される。
図11に示すように、独立管基部43には、サージタンク部13内に連通する複数(ここでは4つ)の連通孔43aが、独立吸気管部11にそれぞれ対応して形成されている。この連通孔43aを介して、独立吸気管部11にサージタンク部13から吸気が導入される。
【0045】
独立吸気管部11は、第1~第3分割ピース30,40,50が互いに結合されることで、その長手方向全体に亘って形成される。独立吸気管部11の主通路部12よりも下流側の部分は、第1分割ピース30の各下流側端部34と第2分割ピース40の各中間部44とが左右方向に互いに結合されることで形成されている。
【0046】
前側架橋部71は、該前側架橋部71において第1分割ピース30と第2分割ピース40とが互いに合わされることで形成される。すなわち、前側架橋部71は、第1分割ピース30の上記右側部71aと第2分割ピース40の上記左側部71bとが互いに合わされることで形成される。
【0047】
後側架橋部72は、該後側架橋部72において第1分割ピース30と第2分割ピース40とが互いに合わされることで形成される。すなわち、後側架橋部72は、第1分割ピース30の上記右側部72aと第2分割ピース40の上記左側部72bとが互いに合わされることで形成される。
【0048】
ここで、本実施形態1のように、吸気マニホールド10の前にオルタネータ2が配置されている場合、車両前突時には、オルタネータ2が後退して、吸気マニホールド10と当接する。これにより、吸気マニホールド10が玉突き後退すると、吸気マニホールド10が燃料配管3と干渉するおそれがある。
【0049】
これに対して、本実施形態では、後側取付部37の剛性を前側取付部36よりも高くした。これにより、オルタネータ2と吸気マニホールド10とが当接したときに、前側取付部36を衝突荷重により変形させる一方で、後側取付部37については、出来る限り変形させないようにして、吸気マニホールド10が玉突き後退するのを抑制することができる。特に、前側取付部36を変形させて衝突荷重を吸収することで、後側取付部37で受ける衝突荷重を低減することができため、後側取付部37の変形を出来る限り抑制することができる。これにより、車両前突時に吸気マニホールド10と燃料配管3とが干渉するのを抑制することができる。
【0050】
また、本実施形態では、後側取付部37の車幅方向の厚みW2は、前側取付部36の車幅方向の厚みW1よりも厚い。これにより、独立吸気管部11が衝突荷重により後側取付部37から破断したとしても、独立吸気管部11は、前側取付部36よりもエンジン1から遠い側で破断する。詳しくは、独立吸気管部11が取付部33から破断するときには、相対的に剛性の弱い前側取付部36から破断した後に後側取付部37から破断する。このため、独立吸気管部11が後側取付部37から破断するときには、独立吸気管部11は後側取付部37を支点に後側かつ車幅方向外側に回転しながら、後側取付部37から破断する。この結果、独立吸気管部11が後側取付部37から破断したときには、後側かつ車幅方向外側に向かう力がかかった状態となるため、吸気マニホールド10は後側かつ車幅方向外側に向かって後退する。したがって、車両前突時に吸気マニホールド10と燃料配管3とが干渉するのをより効果的に抑制することができる。
【0051】
特に、本実施形態では、オルタネータ2がサージタンク部13と同じ高さ位置にあるため、オルタネータ2が後退したときには、サージタンク部13と当接する。このため、吸気マニホールド10には、取付部33を支点に後側かつ上側に向かって回転する力が作用する。このとき、後側取付部37の剛性が高くなっているため、後側取付部37が支点となりやすい。これにより、前側取付部36に接続された独立吸気管部11がねじれやすくなって、独立吸気管部11は、後側取付部37よりも先に前側取付部36から破断しやすくなる。したがって、独立吸気管部11が取付部33から破断したときには、吸気マニホールド10は後側かつ車幅方向外側に向かって後退するようになる。したがって、車両前突時に吸気マニホールド10と燃料配管3とが干渉するのをより効果的に抑制することができる。
【0052】
また、本実施形態では、取付部33は、外周面に、車両前後方向に延びる複数の前側横リブ36a及び後側横リブ37aを有し、後側横リブ37aの数は、前側横リブ36aの数よりも多い。
【0053】
さらに、本実施形態では、取付部33は、複数の前側横リブ36a及び後側横リブ37aと交差するように車幅方向に延びる複数の前側縦リブ36b及び後側縦リブ37bを更に有し、後側横リブ37a及び後側縦リブ37bは、それぞれ、前側横リブ36a及び前側縦リブ36bよりも厚い。
【0054】
これらの構成により、後側取付部37の剛性が高くなるため、後側取付部37の変形を出来る限り抑制させることができる。これにより、車両前突時に吸気マニホールド10と燃料配管3とが干渉するのをより効果的に抑制することができる。
【0055】
また、本実施形態では、第5締結部35eと取付部33の後側かつ下側の端部との間には、補強リブ33aが設けられている。これにより、第5締結部35eの周辺部分は、他の締結部35a~35dよりも剛性が高くなる。これにより、後側取付部37の変形を出来る限り抑制させることができる。この結果、車両前突時に吸気マニホールド10と燃料配管3とが干渉するのをより効果的に抑制することができる。
【0056】
(その他の実施形態)
ここに開示された技術は、前述の実施形態に限られるものではなく、請求の範囲の主旨を逸脱しない範囲で代用が可能である。
【0057】
例えば、前述の実施形態では、吸気マニホールド構造を4気筒エンジンに対して適用していた。これに限らず2気筒以上の気筒を有するエンジンであれば、前述の吸気マニホールド構造を適用することができる。
【0058】
また、前述の実施形態では、後側取付部37の車幅方向の厚みを、前側取付部36の車幅方向の厚みよりも厚くすることで、後側取付部37の剛性を前側取付部36よりも高くしていた。これに限らず、後側取付部37の車幅方向の厚みを前側取付部36の車幅方向の厚みと同じにした上で、後側横リブ37a及び後側縦リブ37bの数を、前側横リブ36a及び前側縦リブ36bよりも多くしたり、後側横リブ37a及び後側縦リブ37bの厚みを、前側横リブ36a及び前側縦リブ36bよりも厚くしたりして、後側取付部37の剛性を前側取付部36よりも高くしてもよい。
【0059】
また、前述の実施形態では、車両部品としてオルタネータを例示した。これに限らず、車両部品は、例えば、モータやバッテリ等でもよい。
【0060】
前述の実施形態は単なる例示に過ぎず、本開示の範囲を限定的に解釈してはならない。本開示の範囲は請求の範囲によって定義され、請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本開示の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0061】
ここに開示された技術は、エンジンルーム内に気筒列方向が車両前後方向になるように縦置きされた多気筒エンジンの車幅方向の一側の部分に接続された吸気マニホールドを備える吸気マニホールド構造として有用である。
【符号の説明】
【0062】
1 エンジン
2 オルタネータ(車両部品)
3 燃料配管
10 吸気マニホールド
11 独立吸気管部
33 取付部
36 前側取付部
36a 前側横リブ
36b 前側縦リブ
37 後側取付部
37a 後側横リブ
37b 後側縦リブ