(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022181614
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】段ボール家具組立キット
(51)【国際特許分類】
A47C 19/00 20060101AFI20221201BHJP
E04B 2/74 20060101ALI20221201BHJP
A47C 5/00 20060101ALI20221201BHJP
B32B 3/28 20060101ALI20221201BHJP
A47B 3/00 20060101ALN20221201BHJP
【FI】
A47C19/00 B
E04B2/74 561H
A47C19/00 Z
A47C5/00 A
B32B3/28 B
A47B3/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021088648
(22)【出願日】2021-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】511139051
【氏名又は名称】Jパックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】水谷 嘉浩
(72)【発明者】
【氏名】大越 雅之
(72)【発明者】
【氏名】望月 祐作
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100BA03
4F100BA06
4F100DD11A
4F100DG10A
4F100DG10B
4F100DG10C
4F100GB81
4F100JJ06
(57)【要約】
【課題】延焼防止に有利で、限られたスペースを有効活用して複数の段ボール家具を設置する。
【解決手段】
台座組み立て用段ボール、間仕切板用段ボール、及び任意に天板用段ボールを備える段ボール家具組立キットであって、少なくとも間仕切板用段ボールが防炎段ボールであり、隣接する段ボール家具から所定距離離して設置するように指示する説明書き、及び/又は、隣接する段ボール家具から所定距離離して設置するための距離測定手段が更に備えられ、前記所定距離が熱流束量測定により決定できる最適安全距離以上である組立キット;並びに、台座組み立て用段ボール、及び任意に天板用段ボールを備える段ボール家具組立キットであって、少なくとも台座の側面を構成する前記台座組み立て用段ボール部分が防炎段ボールである同様な組立キット;並びにこれらの組立キットにより組み立てられた段ボール家具。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一または複数の台座組み立て用段ボール;
一または複数の間仕切板用段ボール;及び
任意に一または複数の天板用段ボール;
を備える、段ボール家具組立キットであって、
少なくとも前記間仕切板用段ボールが、防炎段ボールであり、
隣接する段ボール家具から、所定距離離して設置するように指示する説明書き、及び/又は、
隣接する段ボール家具から所定距離離して設置するための距離測定手段が更に備えられ、
前記所定距離が、熱流束量測定により決定できる最適安全距離以上である組立キット。
【請求項2】
前記組立キットの段ボールのうち、前記間仕切板用段ボールのみが防炎段ボールである、請求項1に記載の組立キット。
【請求項3】
更に、少なくとも台座の側面を構成する前記台座組み立て用段ボール部分が防炎段ボールである、請求項1に記載の組立キット。
【請求項4】
前記間仕切板用段ボールの最大発熱速度が100(kW/m2)以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の組立キット。
【請求項5】
前記台座組み立て用段ボール、前記間仕切板用段ボール、及び前記任意の天板用段ボールが防炎段ボールである、請求項1に記載の組立キット。
【請求項6】
前記間仕切板用段ボールの最大発熱速度が100(kW/m2)以下である、請求項1~5のいずれか一項に記載の組立キット。
【請求項7】
前記台座組み立て用段ボール及び前記任意の天板用段ボールの最大発熱速度が100(kW/m2)以下である、請求項4に記載の組立キット。
【請求項8】
一または複数の台座組み立て用段ボール;及び
任意に天板用段ボール;
を備える、段ボール家具組立キットであって、
少なくとも台座の側面を構成する前記台座組み立て用段ボール部分が、防炎段ボールであり、
隣接する段ボール家具から、所定距離離して設置するように指示する説明書き、及び/又は、
隣接する段ボール家具から所定距離離して設置するための距離測定手段が更に備えられ、
前記所定距離が、熱流束量測定により決定できる最適安全距離以上である組立キット。
【請求項9】
前記台座組み立て用段ボール及び任意の天板用段ボールの最大発熱エネルギーが100以下である、請求項8に記載の組立キット。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の組立キットにより組み立てられた段ボール家具
【請求項11】
最大発熱速度が100(kW/m2)以下である難燃化された寝具、毛布、シーツ及びマットレスからなる群から選択される一つ以上を、請求項10の段ボール家具の天板上に配置することを特徴とした防炎システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、段ボール家具に関し、特に地震や豪雨等の災害の際に、避難所等において緊急避難的に使用することが可能で、かつ延焼防止に有利な段ボール製のベッド、椅子、ベンチ、テーブル、脚立、台等の段ボール家具の組立キット、及び該組立キットにより組み立てられた段ボール家具に関する。
【背景技術】
【0002】
地震や豪雨等の災害は避けることはできないが、避難所等での二次被害の発生を低減することはできる。このため、かかる二次被害の発生を防止する努力がなされている。このような努力の中、軽量で運搬容易、低コストで大量製造も容易であり、コンパクトに保管できる、組み立て式の段ボール家具、特に段ボール製の簡易ベッド(段ボールベッド)が注目されている(特許文献1~3参照)。特に、避難所の劣悪な生活環境ではエコノミークラス症候群が発生しやすく、簡易ベッドを導入することでエコノミー症候群に由来する災害関連死の防止が期待できる。また、通常、避難所は体育館等の暖房の効きにくい施設に開設されるのが通常であり、低体温症や凍死の危険もあるところ、段ボール自体に保温性があるため、これらの危険の発生を抑制できることも期待できる。
【0003】
もっとも、段ボールは紙等の可燃性材料で構成されており、避難所に多数の段ボール家具を配置すると火災の危険が大きい。特に冬季の寒冷な地域において、体育館等の暖房の効きにくい施設に避難所が開設された場合、強力な暖房により空気が乾燥し、火災の危険が更に大きくなる。段ボール材料自体を難燃化する試みは多くなされているが(特許文献4~7)、複数の段ボール家具の配置に着目して、延焼を防止すると共に、避難所等の限られたスペースを有効活用するという観点での試みはなされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-5902号公報
【特許文献2】登録実用新案第3222348号公報
【特許文献3】登録実用新案第3186821号公報
【特許文献4】特開2020-139233号公報
【特許文献5】特開2018-197218号公報
【特許文献6】特開2013-91210号公報
【特許文献7】特開2007-91325号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の課題は、複数の段ボール家具の配置に着目して延焼防止に有利な段ボール家具組立キット、及び該組立キットにより組み立てられた段ボール家具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明の第一の態様は、
一または複数の台座組み立て用段ボール;
一または複数の間仕切板用段ボール;及び
任意に一または複数の天板用段ボール;
を備える、段ボール家具組立キットであって、
少なくとも前記間仕切板用段ボールが、防炎段ボールであり、
隣接する段ボール家具から、所定距離離して設置するように指示する説明書き、及び/又は、
隣接する段ボール家具から所定距離離して設置するための距離測定手段が更に備えられ、
前記所定距離が、熱流束量測定により決定できる最適安全距離以上である組立キットである。
【0007】
また、本願発明の第二の態様は、
一または複数の台座組み立て用段ボール;及び
任意に天板用段ボール;
を備える、段ボール家具組立キットであって、
少なくとも台座の側面を構成する前記台座組み立て用段ボール部分が、防炎段ボールであり、
隣接する段ボール家具から、所定距離離して設置するように指示する説明書き、及び/又は、
隣接する段ボール家具から所定距離離して設置するための距離測定手段が備えられ、
前記所定距離が、熱流束量測定により決定できる最適安全距離以上である組立キットである。
【0008】
また、本願発明の第三の態様は、
本願発明の第一または第二の態様の組立キットにより組み立てられた段ボール家具である。
【0009】
また、本願発明の第四の態様は、酸素消費法による最大発熱速度が100kW/m2以下である難燃化された寝具、毛布、シーツ及びマットレスからなる群から選択される一つ以上を、本願発明の第三の態様の段ボール家具の天板上に配置することを特徴とした防炎システムである。
【発明の効果】
【0010】
本願発明により、避難所等の限られたスペースにおいて、複数の段ボール家具を設置する場合に、延焼防止に有利なように、かつ限られたスペースを有効に活用して、複数の段ボール家具を設置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本願発明の典型的な段ボール家具(間仕切板あり)の外観を示す図である。
【
図2】本願発明の典型的な段ボール家具(間仕切板なし)の外観を示す図である。
【
図3】難燃化段ボールベッドが、着火用段ボールベッドから100cm離れた位置に設置した様子を示す図である。
【
図4】着火用段ボールベッドについて、100cmの距離にある2方向から熱流束量を測定することを示す図である。
【
図5】2つの段ボール家具AB間の距離を段ボール家具Aの長辺中点a1からの距離d1と短辺中点a2からの距離d2で表わすことを説明する図である(d1<d2)。
【
図6】2つの段ボール家具AB間の距離を段ボール家具Aの長辺中点a1からの距離d1と短辺中点a2からの距離d2で表わすことを説明する図である(d1>d2)。
【
図7】着火後の着火用段ボールベッドの様子を示す写真である。
【
図8】燃焼面積を算出するためのグリッド線(10cm間隔)を引いた段ボールベッドを例示する写真である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(A)本願発明の第一の態様
本願発明の第一の態様は、
一または複数の台座組み立て用段ボール;
一または複数の間仕切板用段ボール;及び
任意に一または複数の天板用段ボール;
を備える、段ボール家具組立キットであって、
少なくとも前記間仕切板用段ボールが、防炎段ボールであり、
隣接する段ボール家具から、所定距離離して設置するように指示する説明書き、及び/又は、
隣接する段ボール家具から所定距離離して設置するための距離測定手段が更に備えられ、
前記所定距離が、熱流束量測定により決定できる最適安全距離以上である組立キットである。
【0013】
(A-1)
本態様にいう「段ボール家具」とは、段ボール製のベッド、椅子、ベンチ、テーブル、脚立、台等の家具を指す。災害時の避難所等において緊急避難的に使用するのに好適であり、段ボール材料から簡易に組み立てることができる。典型的な本態様に係る段ボール家具組立キットにより組み立てられた段ボール家具の外観を
図1に示す。
図1は段ボールベッドを想定した外観である。
【0014】
そして、本態様の第一の態様にいう「段ボール家具組立キット」は、一または複数の台座組み立て用段ボール、一または複数の間仕切板用段ボール、及び任意に一または複数の天板用段ボールを備える。
【0015】
(A-2)
本態様にいう「台座」とは天板を支える段ボール台であり、独立した天板がない場合は台座上面がそのまま天板の機能を果たす。
【0016】
台座組み立て用段ボールとしては、台座の外形を構成する一または複数の段ボール箱を形成するための、一または複数の第一の段ボールを含み;更に第一の段ボール箱の内部に収納して機械的強度を向上させるための第二の段ボール(補強用段ボール板)を含んでもよい。
【0017】
一つの第一の段ボールを組み立てて、そのまま本願発明にいう台座とすることもできるし;複数の第一の段ボールを組み立てて、複数の第一の段ボール箱とし、これらを組み合わせて配置する(好ましくは隣接配置する)ことで台座を形成できる。
【0018】
また、天板、ないし天板の機能を果たす台座上面に対しての圧力に十分に耐えることのできる機械的強度を得るために、第二の段ボールを第一の段ボール内に収納することが好ましい。第二の段ボールは、第一の段ボール内部に収納(好ましくはできるだけ隙間なく収納)することのできる一または複数の段ボール箱を提供するものでもよいし;あるいは前記第一の段ボール箱の内部横断面の一つ又は二つの対角線方向に、ほぼ該対角線の長さの幅を有する段ボール板(補強用段ボール板)であってもよい。あるいは、それらの組み合わせにより補強する態様、たとえば、第二の段ボール箱の内部横断面の一又は二の対角線方向に、ほぼ該対角線の長さの幅を有する補強用板ボール板を挿入して補強すると共に、一又は複数の第二の段ボール箱で、第一の段ボール箱の内部に収納(好ましくはできるだけ隙間なく収納)することを可能にするものでもよい。
【0019】
(A-3)
本態様にいう「間仕切板」とは、天板の周囲に設置される上方に伸びる段ボール板であり、段ボール家具使用者のプライバシーを守るために設置される。間仕切板は、段ボール家具使用者の安否確認の容易さも勘案して、適切な高さ、たとえば、110~160cm程度にあるのが好ましく、130~150cmにあるのがより好ましく、140~150cmにあるのが更に好ましい。複数の間仕切板用段ボールで構成されていてもよい。
【0020】
たとえば、間仕切板の最下端は、台座側面の最下端の位置(すなわち、段ボール家具設置場所の床上)と同じであってもよいし、台座の任意の高さで(たとえば、台座の上端)において台座に粘着テープ等の接着手段により固定してもよい。
【0021】
間仕切板は、台座上面ないし天板の少なくとも一辺に設置され、
図1の段ボールベッドの外観の一例では、三辺に設置されている。延焼防止の観点からは、防炎性の間仕切板が三辺に設置されていることが好ましい。
【0022】
(A-4)
本態様にいう「天板」とは、段ボール家具を屋内の床(ゆか)に設置した場合、該床にほぼ平行に配置される最上部の段ボール板のことをいう。たとえば、段ボール家具が段ボールベッドである場合、ここにいう天板は段ボールベッドの床板に相当する。
【0023】
本態様にいう天板は、台座の上面で構成される面を覆う新たな段ボール板である。
【0024】
本態様にいう天板は任意であり、これがない場合、台座の上面で構成される面を天板として機能させる。
【0025】
(A-5)
(i)
本態様にいう段ボールのうち、少なくとも間仕切板用段ボールが防炎段ボールである。間仕切板は一般に床面に垂直に設置されるものであるため、特に火が上方に広がりやすく、防炎の必要性が特に高いためである。
【0026】
また、同様な理由から、台座組み立て用段ボールのうち、少なくとも台座側面を構成する段ボール部分が防炎段ボールであることが好ましく、台座組み立て用段ボールのすべてが防炎段ボールであることがより好ましい。
【0027】
さらに、他の段ボール、たとえば任意の天板用段ボールも防炎段ボールであることが好ましい。
【0028】
(ii)
ここで「防炎段ボール」は、段ボール材料に適切な難燃材を所要量含浸ないし難燃材のコーティング層を形成させる、あるいは段ボール原材料(ライナー原材料及び/又はフルート原材料)に適切な難燃材を所要量含浸ないし難燃材のコーティング層を形成させた後、該原材料を用いて段ボール材料を製造することにより得ることのできる段ボールである。
【0029】
難燃材のコーティング層には、適切な難燃材を所要量含浸させた布シートまたは紙シートを段ボール表面に貼付したものも含まれる。
【0030】
そして、「段ボール」とは、平板(以下、「ライナー」と呼ぶ)と、波状加工した中芯あるいはリブ状芯材(以下、「フルート」と呼ぶ)とを貼り合わせて一つの構造体としたものであり、ライナーやフルートの数により、片面段ボール(ライナー1、フルート1)、両面段ボール(ライナー2、フルート1)、複両面段ボール(ライナー3、フルート2)、複々両面段ボール(ライナー4,フルート3)等が知られている。ライナーやフルートを構成する材料は典型的には紙であるが、樹脂製も知られている(特許文献7)。
【0031】
(iii)
難燃材としては公知の適切な難燃材を用いることができる(たとえば、特許文献4の段落0019;特許文献5の段落0021;特許文献6の請求項1,段落0017~0024;特許文献7の請求項1,3,段落0020~0024)。この中でも、より小さい最大発熱速度(HRRmax)を提供する観点から、リン系難燃材及び窒素系難燃材の組み合わせ、あるいはリン系難燃材、窒素系難燃材及びハロゲン系難燃剤の組み合わせが好ましく、リン系難燃材及び窒素系難燃材の組み合わせがより好ましい。
【0032】
ここで、最大発熱速度(Heat Release Ratemax)とは、発熱速度kW/m2、すなわち1秒あたりに変換・使用・消費されているエネルギー(仕事)を表すワットWをサンプル面積で除した値が最大値に達した値のことをいう。ISO5560の酸素1kg当たりの消費熱量が13.1MJになるとの原理から、燃焼ダクト内を通過する酸素濃度を測定することで発熱量が算出される。たとえば、東洋精機製作所製 マルチコーンカロリメータType2を用いて測定できる。
【0033】
(iv)
リン系難燃剤としては、有機リン化合物、赤燐、無機系燐酸塩等を例示できる。
【0034】
このうち有機リン化合物としては、例えばホスフィン、ホスフィンオキシド、ビホスフィン、ホスホニウム塩、ホスフィン酸塩、リン酸エステル、亜リン酸エステル等を挙げることができる。より具体的には、トリフェニルフォスフェート、メチルネオペンチルフォスファイト、ペンタエリスリトールジエチルジフォスファイト、メチルネオペンチルフォスフォネート、フェニルネオペンチルフォスフェート、ペンタエリスリトールジフェニルジフォスフェート、ジシクロペンチルハイポジフォスフェート、ジネオペンチルハイポフォスファイト、フェニルピロカテコールフォスファイト、エチルピロカテコールフォスファイト、ジピロカテコールハイポジフォスフェート、フェノキシプロポキシホスファゼン、ジフェノキシホスファゼン、フェノキシアミノホスファゼン、フェノキシフルオロアルキルホスファゼン等が例示される。
【0035】
また、無機系リン酸塩としては、燐酸アンモニウム、ポリ燐酸アンモニウム等を挙げることができる。
【0036】
上記のうち、特にリン酸水素二アンモニウム、もしくはリン酸二水素アンモニウムが好ましい。
【0037】
(v)
また、窒素系難燃剤としては、トリアジン系化合物、トリアゾール系化合物、テトラゾール化合物、ホスファゼン化合物、ジアゾ系化合物等が例示できる。
【0038】
より具体的には、グアニジン、メラミン、メラム、メレム、メロン、メラミンシアヌレート、リン酸メラミン、サクシノグアナミン、アジポグアナミン、メチルグルタログアナミン、メラミン樹脂、B T レジン等が例示される。
【0039】
上記のうち、特に、トリアジン系化合物、もしくはグアニジンが好ましい。
【0040】
(vi)
また、ハロゲン系難燃剤としては、ハロゲン化ビスフェノール、芳香族ハロゲン化合物、ハロゲン化ポリカーボネ-ト、ハロゲン化芳香族ビニル系重合体、ハロゲン化シアヌレート樹脂、ハロゲン化ポリフェニレンエーテル等が例示できる。
【0041】
より具体的には、デカブロモジフェニルエーテル、テトラブロムビスフェノールA、テトラブロムビスフェノールAのオリゴマー、ブロム化ビスフェノール系フェノキシ樹脂、ブロム化ビスフェノール系ポリカーボネ-ト、ブロム化ポリスチレン、ブロム化架橋ポリスチレン、ブロム化ポリフェニレンエーテル、ポリジブロムフェニレンエーテル、デカブロムジフェニルエーテルビスフェノール縮合物、含ハロゲンリン酸エステルおよび弗素系樹脂等が例示される。
【0042】
(vii)
防炎段ボールの難燃性の評価基準としては、以下の(a)及び(b)の防炎性能評価基準を用いることができる。すなわち、
(a)
最大発熱速度(HRRmax)が100kW/m2以下であり、かつ
(b)
バーナーを用いて着炎後、バーナーを取り去った後、
(b-1)
炎を上げて燃える状態がやむまでの経過時間(残炎時間)が3秒以下;
(b-2)
炎を上げずに燃える状態がやむまでの経過時間(残じん時間)が5秒以下;
及び
(b-3)
燃焼状態が止むまでの時間内での炭化面積が30cm2以下;
を満たすことである。
【0043】
少なくとも(a)の基準を満たすことが好ましく、より好ましくは(b)の基準も満たすことが好ましい。
【0044】
このため、本態様において、少なくとも間仕切板用段ボールの前記(a)の基準、すなわち最大発熱速度(HRRmax)が100kW/m2以下であることが好ましく、更に好ましくは前記(b)の基準も満たすことが好ましい。
【0045】
(A-6)
本態様にいう段ボール家具組立キットは更に、
隣接する段ボール家具から、所定距離離して設置するように指示する説明書き、
及び/又は、
隣接する段ボール家具から所定距離離して設置するための距離測定手段が更に備えられ、
前記所定距離が、熱流束量測定で決定できる最適安全距離以上である。
【0046】
(i)
本態様にいう「所定距離」とは、「最適安全距離」以上の距離をいい、延焼防止の観点からは「最適安全距離」の1.0倍以上が好ましい。他方で、スペースの有効活用の観点からは、「最適安全距離」の2.0倍以下が好ましく、1.5倍以下がより好ましく、1.3倍以下が更に好ましく、1.0倍であることが最も好ましい。 そして、「最適安全距離」は、後記(ii)で説明する測定法において測定された距離であって、延焼の危険がないと判断される、2つの段ボール家具の間の最適距離をいう。
【0047】
また、本態様にいう「所定距離離して設置するように指示する説明書き」は、組立キットに添付される製品説明書中における記載、説明書きのみを記載した添付紙片、段ボール表面上における表示(表示シールの貼付等)等、隣接する段ボール家具から所定距離離して設置するように指示するいかなる形態の説明書きをも含む。
【0048】
また、距離測定手段とは、少なくとも前記「所定距離」の長さを示す定規の機能を有するものであり、たとえば、前記「所定距離」の長さの線分を実際に示す紙片が挙げられる。
【0049】
後記するように、最適安全距離は段ボール家具の台座上面の長辺中点a1及び短辺中点a2からの距離(
図4~6参照)のそれぞれについて決定されるので、長辺中点a1からの最適安全距離と、短辺中点a2からの最適安全距離の2種類存在する。また、長辺・短辺共に2つあるが、より短い距離が得られる方の長辺・短辺の中点からの距離について適用する。
【0050】
このため、段ボール家具Aを設置する場合、他の段ボール家具Bとの間の距離として、段ボール家具Aの台座上面の長辺中点a1から他の段ボール家具Bとの間の最短距離d1;及び段ボール家具Aの台座上面の短辺中点a2から他の段ボール家具Bとの間の最短距離d2;それぞれについて、それぞれ決定された最適安全距離以上の特定距離離すように指示書きされる。もっとも、通常は、長辺中点a1からの最適安全距離と、短辺中点a2からの最適安全距離は大きく異ならないため、d1とd2のうち、より短い距離についての最適安全距離を採れば足りることが多い。この場合、d1とd2のいずれか短い方の距離について最適安全距離以上の特定距離離すとの指示書きでもよい。
【0051】
説明書きの記載は、必ずしも段ボール家具の台座上面の長辺中点a1あるいは短辺中点a2からの距離として表現されていなくてもよく、段ボール家具の台座上面の長辺中点a1あるいは短辺中点a2からの距離に換算した場合に、それぞれ最適安全距離の長さ以上の距離離して設置することを指示すると実質的に解釈される表現も含まれる。
【0052】
また、ここにいう短辺は、長辺と同じ長さの辺も包含するものとする。
【0053】
(ii)
最適安全距離は、下記の手順で測定できる。
【0054】
(a)難燃化段ボール材料についての熱流束量測定
所定サイズの測定用難燃化段ボール材料を準備し、下記の手順により、当該段ボールに熱の影響による変色が目視で観察される熱流束量の値を測定する。
【0055】
たとえば、ミクロバーナー又はメッケルバーナー[消防法施行規則第4条ミクロ <メッケル> バーナー法参照]を熱源(火源)として採用し、測定用難燃化段ボール材料を熱源の上方から種々の距離離した状態での測定用難燃化段ボール材料の状態を観察し、測定用難燃化段ボール材料が変色し始める距離(バーナーの先端部から測定用難燃化段ボールまでの距離)における熱流束量を、熱流計ガードン(Gardon)またはシュミット・ボエルター(Schmidt-Boelter)ゲージ CHF-SBG03で測定する。
【0056】
(b)着火用段ボール家具の着火、最大熱流束量測定
着火用段ボール家具として、本態様の組立キットにより組み立てられた段ボール家具に対応する難燃化処理していない、間仕切板付き段ボール家具(
図2参照)を用いる。
【0057】
着火用段ボール家具への着火は、ミクロバーナー又はメッケルバーナー[消防法施行規則第4条ミクロ <メッケル> バーナー法参照]を火源として段ボール家具前面の台座上面の長辺中点付近(
図7参照)に着火して行う。
【0058】
次いで、当該着火用段ボール家具の台座上面の長辺中点a1及び台座上面の短辺中点a2からの距離ゼロを含む複数の所定距離(たとえば0cm、50cm及び100cm)における最大熱流束量(着火から燃焼終了までの間に観察される最大の熱流束量)を測定する。
【0059】
最大熱流束量の測定には、熱流計ガードン(Gardon)またはシュミット・ボエルター(Schmidt-Boelter)ゲージ CHF-SBG03 を用いる。これを該段ボール家具からの正面(間仕切板のない側)、及び側面からの、たとえば50cm間隔の距離空けて、それぞれ所定距離を置いて設置し、着火から燃焼終了までの間の熱流束量の最大値を測定する。
【0060】
最大熱流束量を測定する距離としては、後記(c)で補間法(典型的には直線補間法)により、前記(a)で測定した難燃化段ボール材料について決定した変色し始める熱流束量に対応する距離を求めるのに便宜な間隔、たとえば50cm間隔で熱流束量を測定する。
【0061】
段ボール家具(典型的には段ボールベッド)の横断面は通常、長方形であることから、
図4に示すように、台座上面の長辺を2分割する直線(長辺中点a1を含む)上に熱流量計Aを、台座上面の短辺を2分割する直線(短辺中点a2を含む)上に熱流量計Bをそれぞれ所定距離(
図4では長辺あるいは短辺から100cmを例示)置いて測定する。実施例においてより詳しく説明する。
【0062】
(c)最適安全距離の決定
前記(b)の測定により得られた最大熱流束量と着火用段ボール家具からの距離との関係から、前記(a)で得られた難燃化段ボール材料が変色する熱流束量の値に相当する、当該着火用段ボール家具からの距離を、補間法(典型的には直線補間法)により予測する。
【0063】
このように予測された距離が、対応する本願の難燃化段ボール家具組立キットの最適安全距離となる。
【0064】
一般的には、最大熱流束100kW/m2以下となる距離が好ましい。
【0065】
もっとも、前記(b)において、台座上面の長辺中点a1からの距離に基づく最適安全距離と、台座上面の短辺中点a2からの距離に基づく最適安全距離の二種類が得られる。
【0066】
段ボール家具Aを設置する場合、他の段ボール家具Bとの間の距離として、段ボール家具Aの台座上面の長辺中点a1から他の段ボール家具Bとの間の最短距離d1;及び段ボール家具Aの台座上面の短辺中点a2から他の段ボール家具Bとの間の最短距離d2;それぞれについて、それぞれ決定された最適安全距離以上の「所定距離」離すことが好ましい。
【0067】
もっとも、通常は、長辺中点a1からの最適安全距離と、短辺中点a2からの最適安全距離は大きく異ならないため、d1とd2のうち、より短い距離についての最適安全距離を考慮すれば足りることが多い。この場合、d1とd2のいずれか短い方の距離について最適安全距離以上の「所定距離」離せば足りる。
【0068】
図5~6には、2つの段ボール家具AからBの間の距離として、上方から観察して、段ボール家具Aの台座長辺の中央点a1から段ボール家具Bまでの最短距離d1、及び段ボール家具Aの台座短辺の中央点a2から段ボール家具Bまでの最短距離d2を図示している。ここで、
図5は2つの段ボール家具AからBの間の距離としてd1の方がd2より小さい場合を例示し、
図6は2つの段ボール家具AからBの間の距離としてd2の方がd1より小さい場合を例示している。
【0069】
なお、熱流束量測定一般については、ISO 5658, 5560 及び 17554 STANDARD法を参照してもよい。
【0070】
(B)本発明の第二の態様
本発明の第二の態様は、
一または複数の台座組み立て用段ボール;及び
任意に天板用段ボール;
を備える、段ボール家具組立キットであって、
少なくとも台座の側面を構成する前記台座組み立て用段ボール部分が、防炎段ボールであり、
隣接する段ボール家具から、所定距離離して設置するように指示する説明書き、及び/又は、
隣接する段ボール家具から所定距離離して設置するための距離測定手段が備えられ、
前記所定距離が、 熱流束量測定で決定できる最適安全距離以上である組立キットである。
【0071】
本態様は、本発明の第一の態様の組立キットから間仕切板用段ボールを除き、かつ台座組み立て用段ボール及び任意の天板用段ボールを防炎段ボールとする態様である。
【0072】
それ以外は、前記(A)の記載を援用できる。
【0073】
なお、本態様での着火用段ボール家具は、難燃化処理していない、対応する段ボール家具(間仕切板なし)を使用する。
【0074】
(C)本発明の第三の態様
本願発明の第一または第二の態様の組立キットにより組み立てられた段ボール家具である。
【0075】
組み立て方については、前記(A)で説明した。
【0076】
なお、本願発明の第一または第二の態様の組立キットにおいて、天板用段ボールを備えている場合は、該天板用段ボールが、本発明の第三の態様にいう段ボール家具の天板となる。他方、本願発明の第一または第二の態様の組立キットにおいて、天板用段ボールを備えている場合は、組み立てられた台座の上面が、本発明の第三の態様にいう段ボール家具の天板となる。
【0077】
(D)本発明の第四の態様
最大発熱速度が100(kW/m2)以下である難燃化された寝具、毛布、シーツ及びマットレスからなる群から選択される一つ以上を、本発明の第三の態様の段ボール家具の天板上に配置することを特徴とした防炎システムである。
【0078】
本発明の第三の態様の段ボール家具の天板上には、下記の燃焼条件を満たすシーツ等を配置する態様である。
【0079】
実際の使用は、天板上に寝具を引くことが多い。一方、火災の危険性は、外部着火、及びストーブ等の輻射熱のみに限定されるものではなく、内部着火、例えば、タバコ、電子タバコ、携帯電話等の電池火災等生じる危険性がある。その対策としては、毛布、シーツ、マットレス等の寝具類の難燃化品を用いることで、外部、及び内部からの火災を防止する働きがある。これら寝具を一つ以上、天板上に配置することで火災危険性を防止することができる。
【0080】
毛布、シーツ、マットレス等の寝具類の難燃性の評価基準としては、以下の(a)及び(b)の防炎性能評価基準を用いることができる。すなわち、
(a)
最大発熱速度(HRRmax)が100kW/m2以下であり、かつ
(b)
バーナーを用いて着炎後、バーナーを取り去った後、
(b-1)
炎を上げて燃える状態がやむまでの経過時間(残炎時間)が3秒以下;
(b-2)
炎を上げずに燃える状態がやむまでの経過時間(残じん時間)が5秒以下;
及び
(b-3)
燃焼状態が止むまでの時間内での炭化面積が30cm2以下;
を満たすことである。
【0081】
少なくとも(a)の基準を満たすことが好ましく、より好ましくは(b)の基準も満たすことが好ましい。
【実施例0082】
(1)防炎段ボール材料の熱流量測定
測定用難燃化段ボール材料[サイズ(縦1300mm×横3000mm)]を準備し、下記の手順により、当該段ボールに熱の影響による変色が目視で観察される熱流束量の値を測定した。
【0083】
なお、測定用難燃化段ボール材料の難燃化は、縦1300mm×横3000mmのJPacks製 Wフルート段ボールを、40重量%リン酸アンモニウム水溶液に浸漬後、乾燥することにより得られたものである。乾燥後の重量が元の段ボール材料の重量に比べて20重量%増加したため、この増加分のリン酸アンモニウムが段ボール材料に担持されていることになる。
【0084】
ミクロバーナー[消防法施行規則第4条ミクロ <メッケル> バーナー法参照]を熱源(火源)として採用し、測定用難燃化段ボール材料を熱源の上方から種々の距離離した状態での測定用難燃化段ボール材料の状態を観察し、測定用難燃化段ボール材料が変色し始める距離(バーナーの先端部から測定用難燃化段ボールまでの距離)における熱流束量を、シュミット・ボエルター(Schmidt-Boelter)ゲージ CHF-SBG03で測定した。
【0085】
この測定の結果、測定用難燃化段ボール材料が変色し始める熱流量は212kW/m2であった。
【0086】
(2)着火用段ボールベッドの最大熱流束量測定
着火用段ボールベッドを用意した[非難燃化段ボールベッド:Jpacks製 暖段はこベッド(商標)]。組立後の当該段ボールベッドの本体サイズ(間仕切板除く)は、1920mm(長さ)×900mm(幅)×375mm(高さ)であった。
【0087】
図4に示すように着火用段ボールベッド(間仕切板あり:間仕切板の高さ145cm)の2方向の一定距離に熱流量計を置いて、着火から燃焼終了までの間の最大熱流束量を測定した。より具体的には、段ボールベッドの台座上面長辺を2分割する直線上の所定距離に熱流量計Aを、台座上面短辺を2分割する直線上の所定距離に熱流量計Bを置いて、最大熱流束量を測定した。
【0088】
その結果を以下の表1に示す。
【0089】
【表1】
なお、表中の「距離」とは、熱流量計Aについては、台座上面長辺の中点a1から熱流量計Aまでの距離d1を指し、熱流量計Bについては、台座上面短辺の中点a2から熱流量計Bまでの距離d2を指す(
図4~6参照)。
【0090】
(3)最適安全距離の決定
表1の結果から、台座上面長辺の中点a1を起点とした場合、最適安全距離は50センチメートルとなる。
【0091】
また、台座上面短辺の中点a2を起点とした場合、最適安全距離は、直線補間法により下記式のようにして求める。
【0092】
0.5+(1-0.5)×{(224-212)/(224-98)}
すなわち、0.548(メートル)あるいは約55センチメートルが最適安全距離となる。
【0093】
以上より、台座上面長辺の中点a1を起点としてd1が50cm以上、台座上面短辺の中点a2を起点としてd2が55cm以上となるように配置すれば、延焼の危険を回避できることが期待できる。
【0094】
これを以下の延焼試験で確認する。
【0095】
(4)延焼試験(A)
着火用段ボールベッドと、延焼の有無を調べるための試験用段ボールベッドを用意した。
【0096】
試験用段ボールベッドとしては、着火用段ボールベッドの間仕切板を難燃化した難燃化段ボールベッド(比較実施例1、実施例2~3)と、着火用段ボールベッドと同じ非難燃化段ボールベッド(比較例4~6)を用いた。組立後の試験用段ボールベッドの本体サイズ(間仕切板除く)は、1920mm(長さ)×900mm(幅)×375mm(高さ)であった(
図1参照)。また、間仕切板の高さは145cmであった。
【0097】
また、難燃化段ボールの材料は、前記(1)の測定用難燃化段ボール材料と同じ材料である。
【0098】
また、着火用段ボールと試験用段ボールベッドとの位置関係は、
図3に示すように、着火用段ボールベッドの長辺の延長線と試験用段ボールベッドの長辺の延長線が共通で、長辺の延長線の互いに反対側になるように配置した。また、これら2つの間仕切板の向き(ベッド使用者からみて間仕切り板のある方角)は同じであり、かつ2つの段ボールベッドの間に存在する間仕切り板が、試験用段ボールの間仕切板となるように配置した。試験用段ボールの間仕切板の難燃化の効果を確認するためである。なお、
図3では試験用ベッドが4つ配置されているが、本延焼試験では、試験用ベッドは1つだけ設置して試験した。
【0099】
次に、前記(2)と同様にして、着火用段ボールベッドに着火し、試験用段ボールベッドへの延焼について観察した。
【0100】
その結果を表2に示す。
【0101】
【表2】
ここで、表2中の用語について以下、解説する。
【0102】
「距離」:上方からみて、着火用段ボールベッドの横断面の長方形形状の外接円と接する試験用段ボールベッドの距離をゼロとし、前記外接円の同心円と接する試験用段ボールベッドの距離を、前記同心円の半径から前記外接円の半径を差し引いて得られる長さとしたものである。このため、ここにいう距離は表1に云う距離とは定義が異なる。
【0103】
「燃焼」;火炎と煙が生じ、燃焼面積を拡大かつ熾火(グローイング)が生じている状態を指す。
【0104】
「無煙燃焼」;火炎と煙は生じず、熾火(グローイング)のみで燃焼している状態を指す。
【0105】
「非燃焼」;火炎と煙、燃焼面積の拡大や熾火(グローイング)のいずれも生じていない状態を指す。
【0106】
「焦げ跡」;火炎と煙が生じ、燃焼面積を拡大、かつ熾火(グローイング)が生じてできた痕跡
「変色」;火炎や煙が生じず、燃焼面積の拡大や熾火(グローイング)も生じないが、従来色と異なる色(例、茶色)に変色した跡を示す状態を指す。
【0107】
「燃焼面積」:10cmごとにグリットを引いて、焦げ跡の写真を撮り、画像解析から燃焼面積を割り出した(
図8参照)
【0108】
表2中の距離を、着火用段ボールベッドの台座上面長辺の中点a1から試験用段ボールベッドの最短距離d1、及び着火用段ボールベッドの台座上面短辺の中点a2から試験用段ボールベッドの最短距離d2に換算した結果を以下に示す。
【0109】
【0110】
表2と3を参照すれば、間仕切板を難燃化していない段ボールベッド(比較例4~6)ではいずれの距離でも燃焼ないし無煙燃焼してしまったが、間仕切板を難燃化している段ボールベッド(比較実施例1,実施例2~3)では、最適安全距離(d1:50cm、d2:55cm)のうち、d1:50cm以上は満たすものの、d2:55cm以上を満たさない位置に設置した比較実施例1では非燃焼ではあるものの焦げ跡が生じてしまったが、最適安全距離(d1:50cm、d2:55cm)のいずれよりも遠い距離に設置した実施例2及び3では変色が生じる場合はあるものの焦げ跡のない非燃焼の結果が得られた。
【0111】
また、結果的には、距離d1及びd2のうち、より距離の近いd2の安全距離を確認すれば同じ結論に達する。
【0112】
(5)延焼試験(B)
前記(4)延焼試験(A)と同様にして、全段ボールを難燃化した試験用段ボール(比較実施例7,実施例8~9)を用いて延焼試験を行った。なお、難燃化段ボールの材料は、前記(1)の測定用難燃化段ボール材料と同じ材料である。
【0113】
その結果を表4に示す。
【0114】
【0115】
表4中の距離を、着火用段ボールベッドの台座上面長辺の中点a1から試験用段ボールベッドの最短距離d1、及び着火用段ボールベッドの台座上面短辺の中点a2から試験用段ボールベッドの最短距離d2に換算した結果を表5に示す。
【0116】
【0117】
表4と5を参照すれば、段ボール全部を難燃化している段ボールベッド(比較実施例7,実施例8~9)では、最適安全距離(d1:50cm、d2:55cm)のうち、d1:50cm以上は満たすものの、d2:55cm以上を満たさない位置に設置した比較実施例7では非燃焼ではあるものの焦げ跡が生じてしまったが、最適安全距離(d1:50cm、d2:55cm)のいずれよりも遠い距離に設置した実施例8及び9では変色が生じる場合はあるものの焦げ跡のない非燃焼の結果が得られた。
【0118】
また、結果的には、距離d1及びd2のうち、より距離の近いd2の最適安全距離を確認すれば同じ結論に達する。