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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022181618
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】建築物
(51)【国際特許分類】
   F21V 33/00 20060101AFI20221201BHJP
【FI】
F21V33/00 200
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021088652
(22)【出願日】2021-05-26
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和2年6月13日に、積水ハウス株式会社シャーウッドつくば展示場にて展示により公開。
(71)【出願人】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117101
【弁理士】
【氏名又は名称】西木 信夫
(74)【代理人】
【識別番号】100120318
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 朋浩
(72)【発明者】
【氏名】紀伊 陽子
(72)【発明者】
【氏名】安達 義一
【テーマコード(参考)】
3K014
【Fターム(参考)】
3K014AA01
3K014PB04
(57)【要約】
【課題】本発明は、部屋の内外へ空間的な繋がりを演出できる埋め込みスリット照明を備えた建築物を提供すること。
【解決手段】建築物10は、壁13と天井14に囲まれた部屋12と、軒天23を有する屋根11と、を具備する。天井14は、第1貫通孔35を有する第1ボード32と、第1ダウンライト34と、第1ボード32及び第1ダウンライト34を部屋12内に露出させる第1スリット41を有する第1仕上材33とを備える。軒天23は、第2貫通孔64を有する第2ボード60と、第2ダウンライト62と、第2ボード60及び第2ダウンライト62を軒下15に露出させる第2スリット72を有する第2仕上材61とを備える。壁13は、窓部材25,26を備えており、第1スリット41及び第2スリット72は、同じ方向に沿った仮想直線L2上に延びており、窓部材25,26を介して連なる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁及び天井によって囲まれた部屋と、当該壁から延びる軒天を有する屋根と、を具備する建築物であって、
上記天井は、
第1貫通孔を有する第1ボードと、
上記第1貫通孔内に位置する第1照明器具と、
上記第1ボードの下方に位置しており、上記第1ボード及び上記第1照明器具を上記部屋内に露出させる第1スリットを有する第1仕上材と、を備えており、
上記軒天は、
第2貫通孔を有する第2ボードと、
上記第2貫通孔内に位置する第2照明器具と、
上記第2ボードの下方に位置しており、上記第2ボード及び上記第2照明器具を軒下に露出させる第2スリットを有する第2仕上材と、を備えており、
上記壁は、窓部材を備えており、
上記第1スリット及び上記第2スリットは、同じ方向に沿った仮想直線上に延びており、上記窓部材を介して連なっている建築物。
【請求項2】
上記第1照明器具の下端は、上記第1ボードの下面より下方、且つ上記第1仕上材の下面より上方に位置する請求項1に記載の建築物。
【請求項3】
上記第1仕上材及び上記第2仕上材は、複数の長尺の木目板が長手方向の向きに揃えて連結された面材であり、
上記第1仕上材の下面と上記第2仕上材の下面とは同じ高さ位置であり、
上記仮想直線は、上記長手方向に沿っている請求項1又は2に記載の建築物。
【請求項4】
上記第1ボードの下面に濃色クロスが貼られており、
上記第2ボードの下面が濃色に塗装されている請求項1から3のいずれかに記載の建築物。
【請求項5】
上記第1照明器具は、上記第1スリットにおいて上記仮想直線に沿った方向に間隔を空けて複数が配置されている請求項1から4のいずれかに記載の建築物。
【請求項6】
上記天井に、複数の上記第1スリットが位置しており、
上記軒下に、上記窓部材を介して複数の上記第1スリットにそれぞれ連なる複数の上記第2スリットが位置する請求項1から5のいずれかに記載の建築物。
【請求項7】
上記第2仕上材は、上記仮想直線に沿った方向に延びる第3スリットを有しており、
上記第3スリットの上方に上記第2ボード及び上記第2照明器具が位置する請求項1から6のいずれかに記載の建築物。
【請求項8】
上記軒下に、上記部屋の床と同じ高さの床を有するテラスが位置する請求項1から7のいずれかに記載の建築物。
【請求項9】
上記窓部材は、上記部屋の床面付近から上記天井付近まで拡がるフィクス窓である請求項1から8のいずれかに記載の建築物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、埋め込みスリット照明を備える建築物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物内においては、明るく開放的な空間を実現する目的で部屋の壁に、部屋の内外に行き来ができる大開口の開口部が設けられる場合がある。
【0003】
例えば、特許文献1において開示する照明設置構造1は、設置に際して戸建住宅2のリビング21の天井3と隣接するテラス22の軒天井4との間に行き来ができる開口部2aが設置されている。そして、リビング21の天井3と、テラス22の軒天井4とにおいてそれぞれ照明設置構造1が設置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-47379号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に係る照明設置構造1では、リビング21の天井3の高さとテラス22の軒天井4の高さとを同じにして、リビング21とテラス22の一体感が高められている。リビング21とテラス22に設置された照明設置構造1のそれぞれは、開口部2aから離間した位置にそれぞれ配置されている。これにより、照明設置構造1において照明器具6を点灯すると、リビング21とテラス22とにおいて照明器具6が位置することが明確に認識され、リビング21とテラス22との空間的な繋がりが途切れたような印象となっていた。
【0006】
本発明は、前述された事情に鑑みてなされたものであり、部屋の内外へ空間的な繋がりを演出できる埋め込みスリット照明を備えた建築物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1) 本発明に係る建築物は、壁及び天井によって囲まれた部屋と、当該壁から延びる軒天を有する屋根と、を具備する。上記天井は、第1貫通孔を有する第1ボードと、上記第1貫通孔内に位置する第1照明器具と、上記第1ボードの下方に位置しており、上記第1ボード及び上記第1照明器具を上記部屋内に露出させる第1スリットを有する第1仕上材と、を備える。上記軒天は、第2貫通孔を有する第2ボードと、上記第2貫通孔内に位置する第2照明器具と、上記第2ボードの下方に位置しており、上記第2ボード及び上記第2照明器具を軒下に露出させる第2スリットを有する第2仕上材と、を備える。上記壁は、窓部材を備える。上記第1スリット及び上記第2スリットは、同じ方向に沿った仮想直線上に延びており、上記窓部材を介して連なっている。
【0008】
上記構成によれば、第1仕上材の第1スリットと第2仕上材の第2スリットは、窓部材を介して同じ方向に沿う仮想直線上において連なるため、天井から軒天まで継ぎ目なく認識される。これにより、部屋の内外へ空間的な繋がりを演出できる。
【0009】
(2) 好ましくは、上記第1照明器具の下端は、上記第1ボードの下面より下方、且つ上記第1仕上材の下面より上方に位置する。
【0010】
上記構成によれば、第1照明器具から照射される光の範囲が第1仕上材により制限される。これにより、第1照明器具の光が広範囲に拡がり、窓部材において反射することが軽減される。その結果、夜間において窓部材の存在感を抑えることができ、部屋の空間の開放感が演出される。
【0011】
(3) 好ましくは、上記第1仕上材及び上記第2仕上材は、複数の長尺の木目板が長手方向の向きに揃えて連結された面材であり、上記第1仕上材の下面と上記第2仕上材の下面とは同じ高さ位置であり、上記仮想直線は、上記長手方向に沿っている。
【0012】
上記構成によれば、天井及び軒天における第1スリットや第2スリットに違和感が少なく、天井及び軒天に統一感が演出される。
【0013】
(4) 好ましくは、上記第1ボードの下面に濃色クロスが貼られており、上記第2ボードの下面が濃色に塗装されている。
【0014】
上記構成によれば、第1ボート及び第2ボードにおいて光が反射されにくく、窓部材において光が目立ち難い。
【0015】
(5) 好ましくは、上記第1照明器具は、上記第1スリットにおいて上記仮想直線に沿った方向に間隔を空けて複数が配置されている。
【0016】
上記構成によれば、第1スリットの長さが強調され奥行きある広々とした空間が演出される。
【0017】
(6) 好ましくは、上記天井に、複数の上記第1スリットが位置しており、上記軒下に、上記窓部材を介して複数の上記第1スリットとそれぞれ連なる複数の上記第2スリットが位置する。
【0018】
上記構成によれば、天井から軒下に渡って連続性があり且つ拡がった空間が演出される。
【0019】
(7) 好ましくは、上記第2仕上材は、上記仮想直線に沿った方向に延びる第3スリットを有しており、上記第3スリットの上方に上記第2ボード及び上記第2照明器具が位置する。
【0020】
上記構成によれば、軒下と天井とが整然とした同じ意匠で統一されるので、統一感のある広い空間が演出される。
【0021】
(8) 好ましくは、上記軒下に、上記部屋の床と同じ高さの床を有するテラスが位置する。
【0022】
上記構成によれば、部屋とテラスの境界を感じさせない開放感ある空間が演出される。
【0023】
(9) 好ましくは、上記窓部材は、上記部屋の床面付近から上記天井付近まで拡がるフィクス窓である。
【0024】
上記構成によれば、ガラス面を大きくとることができるので、開放感がある空間が演出される。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、部屋の内外へ空間的な繋がりを演出できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、埋め込みスリット照明を備える建築物10の一例を示す平面図である。
図2図2は、部屋12と部屋12に隣接する軒下15の空間を断面で示す図である。
図3図3は、図2におけるIII-III断面図である。
図4図4は、図3におけるIV-IV断面図である。
図5図5は、図2におけるV-V断面図である。
図6図6は、図5におけるVI-VI断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、以下に説明される実施形態は本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、本発明の実施形態を適宜変更できることは言うまでもない。また、以下の説明においては、建築物10が施工された状態を基準として上下方向1が定義され、第1仕上材33及び第2仕上材61を構成する木目板42が延びる長手方向であって、上下方向1と直行する方向として左右方向2が定義され、木目板42の幅方向であって、上下方向1及び左右方向2のいずれにも直交する方向として前後方向3が定義される。
【0028】
図1および図2に示されるように、本実施形態における建築物10は、屋根11と、部屋12と、テラス16と、を具備する住居である。建築物10は、平屋であってもよいし、2階以上の複数階であってもよい。建築物10は、図1において破線で示されるように、左右方向2に延びる複数の埋め込みスリット照明24を備えている。
【0029】
図2に示されるように、屋根11は、複数の柱22によって支持されている。屋根11の下方には、室内側に天井14が位置し、軒下15側に軒天23が位置する。
【0030】
部屋12は、屋内空間である。部屋12は、壁13及び天井14(図2参照)によって囲まれる。部屋12は、例えば、キッチン、ダイニング、リビング、浴室、及び玄関等であるが、本実施形態においては、部屋12がリビングダイニングキッチンである場合を例に挙げて説明する。
【0031】
図2に示されるように、壁13は、部屋12を区画する側面である。壁13によって、部屋12とテラス16とが区切られている。壁13には、窓部材25,26が嵌め込まれている。
【0032】
窓部材25は、左右に引かれることによって開閉可能な掃き出し窓である。窓部材25が開かれると、部屋12とテラス16とを行き来可能な開口が形成される。窓部材25が閉じられると部屋12が閉塞される。窓部材25には、上下方向1と左右方向2又は前後方向3とに拡がる透明なガラス材を有する。窓部材26は、部屋12の床面付近から天井14付近まで拡がるフィクス窓である。窓部材26は、上下方向1と左右方向2または前後方向3とに拡がる透明なガラス材を有する。窓部材25,26の各ガラス材を通じて、部屋12からテラス16が視認可能である。
【0033】
図1及び図2に示されるように、埋め込みスリット照明24は、第1仕上材33に覆われる天井14及び第2仕上材61に覆われる軒天23において、5箇所に設置されている。埋め込みスリット照明24のうちの3つは、窓部材25,26を介して第1仕上材33及び第2仕上材61に連なり仮想直線L1に沿って配置される(図1参照)。これらの埋め込みスリット照明24には、第1仕上材33に第1スリット41が形成され、第2仕上材61に第2スリット72が形成されている。埋め込みスリット照明24の他の1つは、部屋12の天井14を覆う第1仕上材33において仮想直線L2に沿って配置されている(図1参照)。埋め込みスリット照明24の更に他の1つは、軒天23を覆う第2仕上材61において仮想直線L3に沿って配置されている(図1参照)。
【0034】
第1仕上材33は、第1スリット41を有しており、第2仕上材61は、第2スリット72を有している。また、軒天23の第2仕上材61は、第3スリット80を有している。すなわち、埋め込みスリット照明24は、第1スリット41、第2スリット72、及び第3スリット80のうち少なくともいずれかの1つ以上で構成される。
【0035】
天井14は、屋根11と部屋12とを区画する。図1及び図2に示されるように、天井14には、埋め込みスリット照明24が設置されている。図2及び図3に示されるように、天井14は、主として、梁などの構造材27から吊り金具28によって吊り下げられ前後方向3に延びる野縁受け29と、野縁受け29の下側に配置され左右方向2に延びる天井野縁30と、天井野縁30の下側に固定されている石膏ボード31と、木目板42とによって構成されている。また、天井14には、第1ダウンライト34(第1照明器具の一例)が配置されている。
【0036】
図2に示されるように、複数の吊り金具28は、上端が構造材27に固定され、構造材27から下方へ延びる棒状の部材である。複数の吊り金具28によって野縁受け29が指示されて前後方向3に延びている。前後方向3に延びる複数の野縁受け29は、左右方向2に概ね等間隔で並列されている。複数の野縁受け29の下方に天井野縁30が接続されている。天井野縁30は、左右方向2に延びており、前後方向3に並列している。複数の天井野縁30の下方に石膏ボード31が配置されて天井野縁30にビス留めされている。なお、各図においてビスは省略されている。石膏ボード31の下方には、第1板野縁38及び第2板野縁39を介して木目板42が取り付けられている。
【0037】
木目板42は、左右方向2を長手方向とする細長な木材が連結された面材である。各木目板42は、前後方向3の一方の側面と他方の側面において、だぼ43と、だぼ溝44とを有しており、だぼ溝44にだぼ43を嵌め合わされることによって連結されている。複数の木目板42が天井14に設置されることで第1仕上材33が形成される。
【0038】
図3及び図4に示されるように、天井14には、第1スリット41が形成されている。第1スリット41は、天井14において、木目板42の下面よりも上方に凹んだ空間であり、左右方向2に沿って細長に延びている。第1スリット41は、木目板42の長手方向に沿った仮想直線L1上に延びている。第1スリット41の周囲には、第1板野縁38及び第2板野縁39が配置されている。第1板野縁38は、左右方向2に沿って細長な木材であり、第2板野縁39は、前後方向3に沿って細長な木材である。第1板野縁38及び第2板野縁39によって囲まれた空間の一部に木目板42が配置されないことによって第1スリット41の開口が形成される。換言すれば、木目板42の端面によって第1スリット41の開口が形成される。
【0039】
図3及び図4に示されるように、第1板野縁38及び第2板野縁39で囲まれた空間に第1ボード32が配置されている。第1ボード32は、石膏ボード31に固定されている。第1ボード32には、第1ダウンライト34を配置するための第1貫通孔35が形成される。第1ボードの下面36には、濃色クロス37が貼られている。濃色クロス37は、例えば、黒色や焦げ茶色、濃青色など、明度が低い色のクロスであり、単色であっても複数色であってもよい。濃色クロス37は、第1ボード32の下面全体に貼り付けられている。濃色クロス37は、第1スリット41の終面(上面)となる。
【0040】
第1貫通孔35は、第1ボード32を厚み方向(上下方向1)に貫通する横断面が円形の孔である。石膏ボード31にも、第1貫通孔35と連通して厚み方向に貫通する円形の貫通孔40が形成されている。
【0041】
図3及び図4に示されるように、濃色クロス37の各端部の下方は木目板42によって覆われており、濃色クロス37の一部が木目板42の間から下方に向かって露出される。
【0042】
図3及び図4に示されるように、第1ダウンライト34は、下端部にフランジが突出する円柱形の外形である。第1ダウンライト34は、円盤形状のフランジの中央に光源が配置されており、光源が点灯することによって下面から下方へ向かって光を照射する。第1ダウンライト34は、フランジが濃色クロス37の下方に位置しており、第1貫通孔35及び貫通孔40に挿通されて石膏ボード31の上方へ上部が突出している。
【0043】
第1ダウンライトの下端34aは、濃色クロス37の下面より下方に位置する。第1仕上材の下面45は、第1ダウンライトの下端34aより下方に位置する。第1スリット41からは、第1ダウンライト34の全体が下方に露出される。換言すれば、第1ダウンライトの下端34aの外径は、第1スリット41の前後方向3の幅よりも小さい。このようにして、第1ダウンライト34は第1スリット41内に収まっている。
【0044】
図1及び図2に示されるように、テラス16は、屋内空間と屋外空間(庭)との間に位置する半屋外空間である。テラス16は、部屋12と隣接している。図2に示されるように、テラス16は軒下15の下方の空間である。テラス16は、部屋の床17と同じ高さの床18を有する。テラス16は、上方及び一方の側方(部屋12を向く側方)が壁13及び軒天23によって囲まれており、他方の側方(屋外空間を向く側方)が開放されている。
【0045】
軒天23は、壁13から迫り出した屋根11の下面である。図1及び図2に示されるように、軒天23には、埋め込みスリット照明24が設置されている。図2図5及び図6に示されるように、軒天23は、主として、構造材27から吊り金具28によって吊り下げられ前後方向3に延びる軒先野縁50と、軒先野縁50の下側に配置される軒裏野縁51と、木目板42と、によって構成されている。また、軒天23には、第2ダウンライト62(第2照明器具の一例)が配置されている。
【0046】
図2に示されるように、軒先野縁50は、天井野縁30と同様に、構造材27に吊り金具28を介して吊り下げられている。軒先野縁50は、前後方向3に延びており、左右方向2に並列している。複数の軒先野縁50の下方に軒裏野縁51が配置されて軒先野縁50にビス留めされている。軒裏野縁51の下方には、第1胴縁67、第2胴縁68、第3胴縁69、及び第4胴縁70を介して木目板42が取り付けられている。軒天23の木目板42は、天井14に使用されるものと同様のものが使用される。複数の木目板42が軒天23に設置されることで第2仕上材61が形成される。
【0047】
図5及び図6に示されるように、軒天23には、第2スリット72が形成されている。第2スリット72は、軒天23において、木目板42の下面よりも上方に凹んだ空間で有り、左右方向2に沿って細長に延びている。第2スリット72は、第1スリット41と同じ方向に沿った仮想直線L1上に延びている。第2スリット72は、窓部材25,26を介して第1スリット41から連なっている。第2スリット72は、天井14の複数の第1スリット41にそれぞれ連なる。第2スリット72の周囲には、第1胴縁67、第2胴縁68、第3胴縁69、及び第4胴縁70が配置されている。第1胴縁67は、左右方向2に沿って細長な木材であり、第2胴縁68は、前後方向3に沿って細長な木材である。第2胴縁68は、第1胴縁67と同じ厚みである。
【0048】
また、第1胴縁67の下側には、第3胴縁69が配置されている(図5参照)。第3胴縁69は、第1胴縁67よりも前後方向3における外側に配置されている。第3胴縁69の厚みは、第1胴縁67の厚みと同じであり、第2ボード60の厚みとスペーサ66の厚みとの和と同じである。また、第2胴縁68の下側には、第4胴縁70が配置されている(図6参照)。第3胴縁69は、左右方向2に沿って細長な木材であり、第4胴縁70は、前後方向3に沿って細長な木材である。第4胴縁70は、第3胴縁69と同じ厚みである。第3胴縁69及び第4胴縁70によって囲まれた空間の一部に木目板42が配置されないことによって第2スリット72の開口が形成される。換言すれば、木目板42の端面によって第2スリット72の開口が形成される。
【0049】
図5及び図6に示されるように、第3胴縁69及び第4胴縁70に囲まれた空間に第2ボード60が配置されている。第2ボード60は、第1胴縁67に固定されている。第2ボード60には、第2ダウンライト62を配置するための第2貫通孔64が形成される。第2ボードの下面65は、濃色に塗装が施されている。濃色の塗装は、例えば、黒色や焦げ茶色、濃青色など、明度が低い色であり、単色であっても複数色であってもよい。濃色の塗装は、第2ボード60の下面全体に施されている。濃色が施された第2ボードの下面65は、第2スリット72の終面(上面)となる。
【0050】
第2貫通孔64は、第2ボード60を厚み方向(上下方向1)に貫通する横断面が円形の孔である。
【0051】
第2ボード60の上方には、スペーサ66が配置されている。スペーサ66は、第1胴縁67の下側に配置されている。スペーサ66には、第2貫通孔64と連通して厚み方向に貫通する円形の貫通孔71が形成されている。
【0052】
図5及び図6に示されるように、濃色の塗装が施された第2ボードの下面65の前後方向3における端部の下方は木目板42によって覆われており、第2ボードの下面65のその他の部分が木目板42の間から下方に向かって露出される。
【0053】
図5及び図6に示されるように、第2ダウンライト62は、第1ダウンライト34と同様、下端部にフランジが突出する円柱形の外形である。第2ダウンライト62は、フランジの中央に光源が配置されており、下面から下方へ向かって光を照射する。第2ダウンライト62は、フランジが濃色に塗装された第2ボード60の下方に位置しており、第2貫通孔64及び貫通孔71に挿通されて軒裏野縁51の上方へ上部が突出している。
【0054】
第2ダウンライト62の下端62aは、濃色に塗装された第2ボードの下面65より下方に位置する。第2仕上材の下面73は、第2ダウンライト62の下端62aより下方に位置する。第2スリット72からは、第2ダウンライト62の全体が下方に露出される。換言すれば、第2ダウンライト62の下端62aの外径は、第2スリット72の前後方向3の幅よりも小さく、第2ダウンライト62は、第2スリット72内に収まっている。
【0055】
第3スリット80及びその周辺の構成は、第2スリット72と配置、長手方向の寸法、および第2ダウンライト62の数が異なる他は、第2スリット72と同様であるので、図示および詳細な説明が省略される。
【0056】
[本実施形態の作用効果]
本実施形態によれば、第1仕上材33の第1スリット41と第2仕上材61の第2スリット72は、部屋12と部屋12に隣接するテラス16との間に設置された窓部材25,26を介して、同じ方向に沿う仮想直線L1上において連なる。このため、第1スリット41と第2スリット72は、天井14から軒天23まで視覚的に継ぎ目なく認識される。これにより、部屋12の内外への空間的な繋がりを演出することができる。
【0057】
また、本実施形態によれば、第1ダウンライトの下端34aを、第1ボードの下面36よりも下方で第1仕上材の下面45よりも上方にすることで、第1ダウンライト34から照射される光の範囲が第1仕上材33により制限される。このため、第1ダウンライト34の光が広範囲に拡がって窓部材25,26において反射することが軽減される。窓部材25,26への反射光を軽減することで、特に夜間における窓部材25,26の存在感を抑えることができ、部屋12の空間の開放感が演出される。
【0058】
また、本実施形態によれば、仮想直線L1に沿う第1スリット41及び第2スリット72は、長尺の木目板42を左右方向2に揃えて連結した第1仕上材33及び第2仕上材61に沿っている。このため、天井14及び軒天23における第1スリット41及び第2スリット72に違和感が少なく、天井14及び軒天23に統一感が演出される。
【0059】
また、本実施形態によれば、第1ボードの下面36、及び第2ボードの下面65がクロス貼り及び塗装によって濃色に仕上げられているため、第1ボード32及び第2ボード60において光が反射されにくく、窓部材25,26において第1ボード32及び第2ボード60からの光の映り込みが軽減されて目立ち難くなる。その結果、特に夜間における窓部材25,26の存在感を抑えることができ、天井14から軒下15へと繋がる空間の開放感が演出される。
【0060】
また、本実施形態によれば、第1ダウンライト34が仮想直線L1,L2に沿い複数配置されることで、天井14に設置された第1スリット41の長さが強調され奥行きある広々とした空間が演出される。
【0061】
また、本実施形態によれば、窓部材25,26を介して連なる第1スリット41及び第2スリット72が、天井14と軒下15において複数位置する。このため、天井14から軒下15に渡って連続性があり且つ拡がった空間が演出される。
【0062】
また、本実施形態によれば、第2スリット72に加え、第2仕上材61Aの仮想直線L3に沿った方向に第3スリット80が配置される。このため、リビングダイニングキッチンから屋外空間に配置された第3スリット80を視た場合に、軒下15と天井14とが整然とした同じ意匠で統一される。このため、統一感のある広い空間が演出される。
【0063】
また、本実施形態によれば、テラスの床18が隣接する部屋の床17と同じ高さであるため、部屋12とテラス16の境界を感じさせない開放感ある空間が演出される。
【0064】
また、本実施形態によれば、窓部材26をフィクス窓とすることでガラス面を大きくとることができる。このため、部屋12からテラス16へと開放感がある空間が演出される。
【0065】
なお、本実施形態における建築物10は、住居である場合を例に挙げて説明したが、建築物10は、住居以外の例えば店舗、ビル、マンション等であってもよい。
【0066】
また、本実施形態における建築物10は、テラス16の軒天23に埋め込みスリット照明24が設置される場合を例に挙げて説明したが、埋め込みスリット照明24は、建築物10の2階以上の階の部屋及びベランダに渡って設置されるものであってもよい。
【符号の説明】
【0067】
10・・・建築物
11・・・屋根
12・・・部屋
13・・・壁
14・・・天井
15・・・軒下
16・・・テラス
17・・・部屋の床
18・・・床
23・・・軒天
25,26・・・窓部材
32・・・第1ボード
33・・・第1仕上材
34・・・第1ダウンライト(第1照明器具)
35・・・第1貫通孔
36・・・第1ボードの下面
37・・・濃色クロス
41・・・第1スリット
45・・・第1仕上材の下面
60・・・第2ボード
61・・・第2仕上材
62・・・第2ダウンライト(第2照明器具)
64・・・第2貫通孔
65・・・第2ボードの下面
72・・・第2スリット
73・・・第2仕上材の下面
80・・・第3スリット
L1,L2,L3・・・仮想直線
図1
図2
図3
図4
図5
図6