(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022181619
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】エンジンの側部構造
(51)【国際特許分類】
F02M 35/104 20060101AFI20221201BHJP
F02M 35/16 20060101ALI20221201BHJP
F02M 37/00 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
F02M35/104 A
F02M35/104 N
F02M35/16 F
F02M37/00 321B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021088653
(22)【出願日】2021-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古谷 雅之
(72)【発明者】
【氏名】山田 拓也
(57)【要約】
【課題】エンジンをエンジンルームに縦置きする際に、車両前突時における燃料配管の脱離や破損を抑制する。
【解決手段】吸気マニホールド10の前側に配置されたオルタネータ2と、吸気マニホールド10の後側に上下方向に延びるように配置された燃料配管3とを備える。吸気マニホールド10は、一端部がエンジン1の車幅方向における一側の部分にそれぞれ接続される複数の独立吸気管部11と、複数の独立吸気管部11における他端部がそれぞれ接続されるサージタンク部13と、を有し、後側から見て、燃料配管3におけるサージタンク部13に近い部分は、サージタンク部13よりもエンジン1の車幅方向の一側に位置する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンルーム内に気筒列方向が車両前後方向になるように縦置きされたエンジンの車幅方向における一側の部分に接続された吸気マニホールドを備える、エンジンの側部構造であって、
前記吸気マニホールドの車両前側に配置された車両部品と、
前記吸気マニホールドの車両後側に上下方向に延びるように配置され、燃料が流通する燃料配管と、を更に備え、
前記吸気マニホールドは、
一端部が前記エンジンの車幅方向における前記一側の部分にそれぞれ接続される複数の独立吸気管部と、
前記複数の独立吸気管における他端部がそれぞれ接続されるサージタンク部と、
を有し、
車両後側から見て、前記燃料配管における前記サージタンク部に近い部分は、前記サージタンク部よりも前記エンジンの車幅方向における前記一側に位置することを特徴とするエンジンの側部構造。
【請求項2】
請求項1に記載のエンジンの側部構造において、
前記サージタンク部は、その前記エンジンに近い側の面部が上下方向にわたって略平坦になるように配置されていることを特徴とするエンジンの側部構造。
【請求項3】
請求項2に記載のエンジンの側部構造において、
前記吸気マニホールドは、車両前後方向に延びかつ前記サージタンク部の上部に接続されかつ該サージタンク部に吸気を導入する吸気導入管を更に備え、
前記サージタンク部と前記吸気導入管との接続部分を通りかつ上下方向及び車幅方向に広がる平面で切断した断面において、前記サージタンク部の前記エンジンに近い側の面部は、前記吸気導入管における前記エンジンに近い側の頂部から該吸気導入管の接線方向に沿うように下側に延びていることを特徴とするエンジンの側部構造。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1つに記載のエンジンの側部構造において、
前記吸気マニホールドは、前記サージタンク部から下側かつ前記エンジン側に向かって突出する突出部を更に備え、
前記突出部は、前記エンジンに固定されて、前記サージタンク部を支持することを特徴とするエンジンの側部構造。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1つに記載のエンジンの側部構造において、
前記複数の独立吸気管部は、前記エンジンに近い側の部分よりも前記エンジンから遠い側の部分の方が、剛性が弱くなるようにそれぞれ構成されていることを特徴とするエンジンの側部構造。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1つに記載のエンジンの側部構造において、
前記吸気マニホールドは樹脂製であることを特徴とするエンジンの側部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示された技術は、エンジンの構造に関する技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来より、エンジンに接続される吸気マニホールドの構造を工夫することで、車両衝突時の対応を行うことが検討されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、気筒列方向が車幅方向となるようにエンジンルームに横置きされたエンジンにおいて、エンジンの車両前側に樹脂製の吸気マニホールドをその上部と下部とで締結し、吸気マニホールドの上部取付け部の下方に、クランク軸線方向に延びる燃料分配管を配置し、吸気マニホールドをエンジンに近い側と遠い側とで分割形成されるとともに、接合された複数の分割体で構成し、エンジンに近い側の基部分割体をエンジンより遠い側の他部分割体より強度を高くし、エンジンの車両前面側に樹脂製のオイルセパレータカバーを設け、基部分割体とオイルセパレータカバーに、衝突時に基部分割体の変位の過程で互に当接する後退規制部をそれぞれ設けた、エンジンの前部構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、エンジンを気筒列方向が車両前後方向となるように配置すると、吸気マニホールドは、エンジンの車幅方向の一側に配置される。このとき、エンジンの後側の部分には、燃料ポンプと燃料ポンプに接続される燃料配管が配置され、エンジンの前側の部分には、オルタネータなどの車両部品が配置されることがある。このような構成の場合、車両前突時には、車両部品が後退して吸気マニホールドと当接する。これにより、吸気マニホールドが玉突き後退すると、吸気マニホールドが燃料配管と干渉して、燃料ポンプから脱離したり、破損したりするおそれがある。
【0006】
特許文献1に記載のエンジン構造は、エンジンがエンジンルームに横置きされることを前提として、吸気マニホールドと燃料配管との干渉を抑制する構成であるため、エンジンをエンジンルームに縦置きする場合にまで、燃料配管の脱離や破損を抑制するものではない。よって、エンジンをエンジンルームに縦置きする際に、燃料配管の脱離や破損を抑制するという観点からは改良の余地がある。
【0007】
ここに開示された技術は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、エンジンをエンジンルームに縦置きする際に、車両前突時における燃料配管の脱離や破損を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、ここに開示された技術では、エンジンルーム内に気筒列方向が車両前後方向になるように縦置きされたエンジンの車幅方向における一側の部分に接続された吸気マニホールドを備える、エンジンの側部構造を対象として、前記吸気マニホールドの車両前側に配置された車両部品と、前記吸気マニホールドの車両後側に上下方向に延びるように配置され、燃料が流通する燃料配管と、を更に備え、前記吸気マニホールドは、一端部が前記エンジンの車幅方向における前記一側の部分にそれぞれ接続される複数の独立吸気管部と、前記複数の独立吸気管における他端部がそれぞれ接続されるサージタンク部と、を有し、車両後側から見て、前記燃料配管における前記サージタンク部に近い部分は、前記サージタンク部よりも前記エンジンの車幅方向における前記一側に位置する、という構成とした。
【0009】
この構成によると、車両前突時に車両部品が後退して、サージタンク部が玉突き後退したとしても、サージタンク部は燃料配管を避けて後退する。これにより、車両前突時に吸気マニホールドと燃料配管とが干渉するのを抑制することができる。この結果、燃料配管の脱離や破損を抑制することができる。
【0010】
前記エンジンの側部構造の一実施形態では、前記サージタンク部は、その前記エンジンに近い側の面部が上下方向にわたって略平坦になるように配置されている。
【0011】
この構成によると、サージタンク部を燃料配管よりもエンジンから遠い側に配置しつつ、吸気マニホールドをコンパクトに構成することができる。また、サージタンク部のエンジン側への突出量が小さくなるため、サージタンク部が後退したときに燃料配管と干渉しにくくなる。これにより、燃料配管の脱離や破損をより効果的に抑制することができる。
【0012】
前記一実施形態において、前記吸気マニホールドは、車両前後方向に延びかつ前記サージタンク部の上部に接続されかつ該サージタンク部に吸気を導入する吸気導入管を更に備え、前記サージタンク部と前記吸気導入管との接続部分を通りかつ上下方向及び車幅方向に広がる平面で切断した断面において、前記サージタンク部の前記エンジンに近い側の面部は、前記吸気導入管における前記エンジンに近い側の頂部から該吸気導入管の接線方向に沿うように下側に延びている、という構成でもよい。
【0013】
この構成によると、吸気マニホールドをよりコンパクトに構成することができる。また、吸気導入管と燃料配管との干渉も適切に抑制することができる。これにより、燃料配管の脱離や破損をより効果的に抑制することができる。
【0014】
前記エンジンの側部構造において、前記吸気マニホールドは、前記サージタンク部から下側かつ前記エンジン側に向かって突出する突出部を更に備え、前記突出部は、前記エンジンに固定されて、前記サージタンク部を支持する、という構成でもよい。
【0015】
この構成によると、サージタンク部と燃料配管との間の距離を維持しやすくなるため、サージタンク部と燃料配管との干渉をより効果的に抑制することができる。これにより、燃料配管の脱離や破損をより効果的に抑制することができる。
【0016】
前記エンジンの側部構造において、前記複数の独立吸気管部は、前記エンジンに近い側の部分よりも前記エンジンから遠い側の部分の方が、剛性が弱くなるようにそれぞれ構成されている、という構成でもよい。
【0017】
この構成によると、衝突荷重により独立吸気管が破断するときには、エンジンから出来るだけ遠い位置で破断する。これにより、吸気マニホールドが燃料配管と干渉することをより効果的に抑制することができる。この結果、燃料配管の脱離や破損をより効果的に抑制することができる。
【0018】
前記エンジンの側部構造において、前記吸気マニホールドは樹脂製である、という構成でもよい。
【0019】
この構成によると、吸気マニホールドを金属で構成した場合と比較して、変形が容易であるため、車両前突時に車両部品と吸気マニホールドとが当接したときに、吸気マニホールドの前側部分で、衝突荷重を出来る限り吸収することができる。これにより、吸気マニホールドの後退量を出来る限り小さくすることができ、サージタンク部と燃料配管とが干渉するのを効果的に抑制することができる。この結果、燃料配管の脱離や破損をより効果的に抑制することができる。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように、ここに開示された技術によると、車両前突時における燃料配管の脱離や破損を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、例示的な実施形態に係る吸気マニホールド構造を有するエンジンの側面図である。
【
図2】
図2は、エンジンの吸気マニホールドを拡大して示す正面図である。
【
図3】
図3は、エンジンの吸気マニホールドを拡大して示す背面図である。
【
図4】
図4は、吸気マニホールドを左上側かつ後側から見た斜視図である。
【
図5】
図5は、吸気マニホールドの第1分割ピースを右側から見た側面図である。
【
図7】
図7は、
図6のVII-VII線相当の平面で切断した断面図である。
【
図8】
図8は、吸気マニホールドの左下側かつ後側から見た斜視図である。
【
図9】
図9は、吸気マニホールドの第2分割ピースの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、例示的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。尚、以下の説明では、車両に対する前、後、左、右、上及び下を、それぞれ単に前、後、左、右、上及び下という。左右方向は、後側から前側を見たときの左側を左といい、右側を右という。
【0023】
図1は、エンジン1を左側から見た側面図である。エンジン1は多気筒エンジンであり、具体的には4つの気筒を有している。エンジン1は、気筒列方向が前後方向となるように車両のエンジンルームに縦置きされている。エンジン1は、左側が吸気側となり、右側が排気側となるように配設されている。
【0024】
エンジン1のシリンダヘッドの左側側面には、吸気を気筒内に導入するための吸気マニホールド10が接続されている。吸気マニホールド10は、合成樹脂で構成されている。
図2及び
図3に示すように、吸気マニホールド10は、気筒毎に分岐して形成されかつ前後方向に並ぶ複数(ここでは4つ)の独立吸気管部11と、各独立吸気管部11の下端部に接続されかつ各独立吸気管部11に吸気を分配するサージタンク部13と、サージタンク部13の前側かつ上側の部分から前側に延びかつ不図示の吸気管から吸気を導入するための吸気導入管14と、を有する。吸気マニホールド10の詳細な構成については後述する。
【0025】
図1に示すように、吸気マニホールド10の前側には、車両部品、特にエンジン補機としてのオルタネータ2が配置されている。オルタネータ2は、エンジンの回転により発電するとともに、エンジンの始動時にはスタータとして機能する。オルタネータ2は、
図1及び
図2に示すように、サージタンク部13と同じ高さ位置に配置されており、前側から見てサージタンク部13と重複する位置に配置されている。
【0026】
図1及び
図3に示すように、吸気マニホールド10の後側には、燃料が流通する燃料配管3が配置されている。
図3に示すように、燃料配管3は、不図示の燃料タンクから、燃料ポンプ4に燃料を供給する低圧配管3aと、燃料ポンプ4により昇圧された燃料が流通する高圧配管3bとを含む。低圧配管3aは、柔軟性のある樹脂チューブで構成されている。高圧配管3bは、金属配管で構成されている。低圧配管3a及び高圧配管3bは、いずれも上下方向に延びるように配置されている。高圧配管3bの下流側の端部は、燃料分配管5の後側端部に接続されている。燃料分配管5は、各気筒に燃料を供給するための分配管であって、エンジン1の左側側面に沿って前後方向に延びている。燃料分配管5は、
図3に示すように、後述する取付部33とサージタンク部13との間の位置に配置されている。
【0027】
燃料配管3のうち特に高圧配管3bは、後側から見て、サージタンク部13よりも右側、つまり、エンジン1の左側側面1aに近い側に位置する。また、低圧配管3aについても、無負荷状態(車両が駐車した状態等)において、後側から見て、サージタンク部13よりも右側に位置する。
【0028】
以下、
図4~
図9を参照しながら、本実施形態に係る吸気マニホールド10の構成について詳細に説明する。
【0029】
図4に示すように、吸気マニホールド10の各独立吸気管部11は、それぞれ、サージタンク部13の左下側の部分に一体に接続されている。各独立吸気管部11は、サージタンク部13との接続部分から上側かつ右側に湾曲するように延びていて、サージタンク部13の上側を覆うように配設されている。複数の独立吸気管部11のうち少なくとも一部(特に前側に位置する独立吸気管部11)は、吸気導入管14の上側を覆っている。各独立吸気管部11は、下端部においてサージタンク部13内に、それぞれに連通している。吸気は、吸気導入管14を通って、サージタンク部13に溜められた後、各独立吸気管部11を通って、気筒内に導入される。
【0030】
図6に示すように、各独立吸気管部11は、吸気上流側から順に、主通路部12と、中間部44(後述する第2分割ピース40の部分)と、下流側端部34(後述する第1分割ピース30の部分)とをそれぞれ有する。主通路部12、中間部44、及び下流側端部34が互いに結合されることで各独立吸気管部11が構成されている。
【0031】
各独立吸気管部11の主通路部12は、その長手方向の全体に亘って互いに一体化されている。すなわち、相隣接する主通路部12同士が、両独立吸気管部11の間に位置する連結部52を介して互いに連結されている。連結部52には、独立吸気管部11の剛性を向上させるための、前後方向及び左右方向に広がる複数の横リブ52aが設けられている。
【0032】
中間部44は、相隣接する中間部44同士が連結部44aを介して互いに連結されている。中間部44は、最も前側の中間部44を除いて、左右方向に延びる縦リブ44b(
図8参照)をそれぞれ有する。
【0033】
下流側端部34は、相隣接する下流側端部34同士が連結部34cを介して互いに連結されている。下流側端部34は、後側2つの下流側端部34が、前側2つの下流側端部34と比較して短くなっている。前側2つの下流側端部34には、前後方向に延びる横リブ34aと左右方向に延びる縦リブ34bとが、互いに直交して編み目状になるように形成されている。後側2つの下流側端部34には、横リブ34aが形成されず縦リブ34bのみが形成されている。
【0034】
図5及び
図6に示すように、各独立吸気管部11のサージタンク部13とは反対側の端部(つまり、下流側端部34の最下流側の部分)は、互いに一体化されていて、吸気マニホールド10をエンジン1のシリンダブロックに取り付けるための取付部33となっている。取付部33は、サージタンク部13に対して上側に離れた位置に位置している。
【0035】
取付部33は、複数の独立吸気管部11を互いに一体化するように前後方向に広がっている。取付部33は、フランジ状に形成されている。取付部33は、ボルト62(
図1参照)によりエンジン1のシリンダヘッドの左側側面に締結固定される複数の締結部35(ここでは5つ)を有する。締結部35は、
図5及び
図6に示すように、最も前側の独立吸気管部11の前側部分、相隣接する独立吸気管部11の間の部分、及び最も後側の独立吸気管部11の後側部分に、それぞれ設けられている。複数の締結部35は、前後方向に対して上下方向に千鳥状に配置されている。具体的には、複数の締結部35を前側から第1締結部35a、第2締結部35b、第3締結部35c、第4締結部35d、及び第5締結部35eとしたときに、第1締結部35a、第3締結部35c、第5締結部35eは、相対的に下側に位置しており、第2締結部35b及び第4締結部35dは、相対的に上側に位置している。
【0036】
取付部33は、相対的に前側に位置する前側取付部36と、相対的に後側に位置する後側取付部37とを有する。前側取付部36は、第1吸気管群11aを構成する独立吸気管部11を前後方向に連結する部分であり、後側取付部37は、第2吸気管群11bを構成する独立吸気管部11を前後方向に連結する部分である。
【0037】
図6を参照すると、後側取付部37の左右方向(つまり車幅方向)の厚みは、前側取付部36の左右方向の厚みと比較して、厚くなっている。具体的には、後側取付部37の厚みは、前側取付部36の厚みと比較して、約2倍の厚みになっている。これにより、後側取付部37と独立吸気管部11の下流側端部34との接続部は、前側取付部36と独立吸気管部11の下流側端部34との接続部よりも、エンジン1から遠い側(つまり左側)に位置する。
【0038】
前側取付部36及び後側取付部37には、それぞれ、前後方向に延びる横リブ36,37aと左右方向に延びる縦リブ36b,37bとが形成されている。後側取付部37の横リブ37aは、前側取付部36の横リブ36aと比較して厚くなっている。
【0039】
前述のように、独立吸気管部11は、エンジン1に近い側の部分、特に下流側端部34及び取付部33が、互いに連結されていたり、複数のリブが形成されたりしているため、エンジン1から遠い側の部分、すなわち、主通路部12及び中間部44よりも剛性が高くなっている。したがって、独立吸気管部11は、エンジン1に近い側の部分よりもエンジン1から遠い側の部分の方が、剛性が弱くなるようにそれぞれ構成されているといえる。
【0040】
図5に示すように、サージタンク部13は、吸気導入管14の後側端部に連続して構成されており、前後方向及び左右方向に広がっている。サージタンク部13は、
図7に示すように、前後方向から見て、左右方向に対して上下方向が長い楕円形状をなしている。サージタンク部13の右側側面部13bは、上下方向にわたって略平坦になるように配置されている。サージタンク部13は、サージタンク部13と吸気導入管14との接続部分を通りかつ上下方向及び車幅方向に広がる平面で切断した断面において、サージタンク部13の右側側面部13bは、吸気導入管14における最も右側の頂部Pから該吸気導入管14の接線方向に沿うように下側に延びている。また、前記断面において、サージタンク部13の左側側面部13cは、吸気導入管14の接線方向に沿うように、左側かつ下側に向かって延びている。サージタンク部13は、右側の部分に剛性を高めるための複数の補強リブ13aを有する。尚、前述の「略平坦」とは、完全に平坦な場合を含み、一部が左右方向に僅かに膨出していたり、補強リブ13aの分だけ僅かにエンジン1側に突出していたりする状態を含む。
【0041】
吸気導入管14は、後側に向かって右側に傾斜して延びている。吸気導入管14は、サージタンク部13よりも右側、すなわち、エンジン1に近い側には膨出しないようになっている。具体的には、エンジン1に取り付けた状態で、吸気導入管14における最も右側の頂部Pは、サージタンク部13の右側側面部13bと、左右方向における略同じ位置になるように形成されている。
【0042】
図5に示すように、吸気マニホールド10の右側の部分には、吸気マニホールド10の剛性を確保するために、後述するサージタンク基部31と、後述する導入管基部32と、取付部33とを連結する前側及び後側架橋部71,72が上下方向に延びるようにそれぞれ設けられている。前側架橋部71は、前後方向における第2締結部35bの位置に設けられている。前側架橋部71の上端部は、前側取付部36の下端部、前側の下流側端部34の下端部、及び前側の中間部44の下端部に連結されている。前側架橋部71の下端部は、吸気導入管14の上側かつ右側の部分に連結されている。前側架橋部71の上端部は、前側2つの独立吸気管部11を前後方向に連結するように形成されている。後側架橋部72は、前後方向における第4締結部35dの位置に設けられている。後側架橋部72の上端部は、後側取付部37の下端部、後側の下流側端部34の下端部、及び後側の中間部44の下端部に連結されている。後側架橋部72の下端部は、サージタンク部13の右側側面部13bにおける上側かつ後側の部分に連結されている。後側架橋部72の上端部は、後側2つの独立吸気管部11を前後方向に連結するように形成されている。
【0043】
前側架橋部71は、上端部から下端部に向かって左側に傾斜して延びている。また、後側架橋部72は、図示は省略しているが、上端部から下端部に向かって左側に傾斜して延びている。前側架橋部71及び後側架橋部72は、サージタンク部13がエンジン1に近づかないように(右側に移動しないように)、サージタンク部13の上側の部分を支持している。
【0044】
サージタンク部13の下部には、下側に突出する突出部38が形成されている。
図8に示すように、突出部38は、下側に加えて、右側(つまりエンジン側)に向かって突出するように形成されている。この突出部38の下端部は、ボルト61を介してエンジン1のシリンダブロックの左側側面に締結固定される。突出部38は、サージタンク部13がエンジン1に近づかないように(右側に移動しないように)、サージタンク部13の下側の部分を支持している。
【0045】
本実施形態では、吸気マニホールド10は、左右方向(車幅方向)に分割された3つの分割ピースで構成されている。具体的には、吸気マニホールド10は、最もエンジン1に近い側(右側)に位置する第1分割ピース30と、最もエンジン1から遠い側(左側)に位置する第3分割ピース50と、第1分割ピース30と第3分割ピース50との間に位置する第2分割ピース40とを有する。これら第1~第3分割ピース30,40,50は、それぞれ別々に金型により樹脂で一体成形されたものであって、その成形後に、振動溶着によって互いに結合されて一体化される。これにより、第1~第3分割ピース30,40,50の間には隙間が形成されないようになっている。
【0046】
第1分割ピース30は、サージタンク部13の右側部(以下、サージタンク基部31という)、吸気導入管14の前側部分の全部及び後側部分の右側部(以下、導入管基部32という)、取付部33、前側架橋部71の右側部71a、後側架橋部72の右側部72a、独立吸気管部11の下流側端部34、及び突出部38を構成する。第2分割ピース40は、
図9に示すように、サージタンク部13の左側部(以下、サージタンク部他部41という)、吸気導入管14の後側部分の左側部分(以下、導入管他部42という)、独立吸気管部11の主通路部12の右側部分(以下、独立管基部43という)、独立吸気管部11の主通路部12と下流側端部34とを間の中間部44、前側架橋部71の左側部71b、後側架橋部72の左側部72bを構成する。第3分割ピース50は、独立吸気管部11の主通路部12の左側部分(以下、独立管他部51という)を構成する。
【0047】
吸気導入管14は、該吸気導入管14において第1分割ピース30と第2分割ピース40とが互いに合わされることで形成される。サージタンク部13は、第1分割ピース30における半割の導入管基部32と第2分割ピース40における半割の導入管他部42とが互いに合わされることで形成される。
【0048】
独立吸気管部11における主通路部12は、該主通路部12において第2分割ピース40と第3分割ピース50とが互いに合わされることで形成される。すなわち、主通路部12は、第2分割ピース40における半割の独立管基部43と第3分割ピース50における半割の独立管他部51とが互いに合わされることで形成される。
図9に示すように、独立管基部43には、サージタンク部13内に連通する複数(ここでは4つ)の連通孔43aが、独立吸気管部11にそれぞれ対応して形成されている。この連通孔43aを介して、独立吸気管部11にサージタンク部13から吸気が導入される。
【0049】
独立吸気管部11は、第1~第3分割ピース30,40,50が互いに結合されることで、その長手方向全体に亘って形成される。独立吸気管部11の主通路部12よりも下流側の部分は、第1分割ピース30の各下流側端部34と第2分割ピース40の各中間部44とが左右方向に互いに結合されることで形成されている。
【0050】
前側架橋部71は、該前側架橋部71において第1分割ピース30と第2分割ピース40とが互いに合わされることで形成される。すなわち、前側架橋部71は、第1分割ピース30の上記右側部71aと第2分割ピース40の上記左側部71bとが互いに合わされることで形成される。
【0051】
後側架橋部72は、該後側架橋部72において第1分割ピース30と第2分割ピース40とが互いに合わされることで形成される。すなわち、後側架橋部72は、第1分割ピース30の上記右側部72aと第2分割ピース40の上記左側部72bとが互いに合わされることで形成される。
【0052】
ここで、本実施形態1のように、吸気マニホールド10の前にオルタネータ2が配置されている場合、車両前突時には、オルタネータ2が後退して、吸気マニホールド10と当接する。これにより、吸気マニホールド10が玉突き後退すると、吸気マニホールド10が燃料配管3と干渉するおそれがある。吸気マニホールド10と燃料配管3とが干渉すると、燃料配管3が燃料ポンプ4から脱離したり、破損したりするおそれがある。特に、高圧配管3bが破損すると、大量の燃料漏れが発生してしまう。
【0053】
これに対して、本実施形態では、後側から見て、燃料配管3におけるサージタンク部13に近い部分がサージタンク部13よりも右側に位置するようにした。オルタネータ2は、サージタンク部13と同じ高さ位置に位置するため、車両前突時には、オルタネータ2とサージタンク部13と当接する。このため、衝突荷重により吸気マニホールド10が変形すると、サージタンク部13が後退するが、サージタンク部13は、燃料配管3とは前後方向に重複していないため、サージタンク部13と燃料配管3との干渉が抑制される。これにより、燃料配管3の脱離や破損を抑制することができる。
【0054】
また、本実施形態では、サージタンク部13の右側側面部13bは、上下方向にわたって略平坦となっている。これにより、サージタンク部13を燃料配管3よりもエンジン1から遠い側に配置しつつ、吸気マニホールド10をコンパクトに構成することができる。また、サージタンク部13のエンジン1側への突出量が小さくなるため、サージタンク部13が後退したときに燃料配管3と干渉しにくくなる。これにより、燃料配管3の脱離や破損をより効果的に抑制することができる。
【0055】
また、本実施形態では、吸気マニホールド10は、前後方向に延びかつサージタンク部13の上部に接続されかつサージタンク部13に吸気を導入する吸気導入管14を備え、サージタンク部13と吸気導入管14との接続部分を通りかつ上下方向及び車幅方向に広がる平面で切断した断面において、サージタンク部13の右側側面部13bは、吸気導入管14における左側の頂部Pから吸気導入管14の接線方向に沿うように下側に延びている。これにより、吸気マニホールド10をよりコンパクトに構成することができる。また、吸気導入管14がサージタンク部13よりも右側に突出しないようになるため、吸気導入管14と燃料配管3との干渉も適切に抑制することができる。この結果、燃料配管3の脱離や破損をより効果的に抑制することができる。
【0056】
また、本実施形態では、吸気マニホールド10は、サージタンク部13から下側かつエンジン1側に向かって突出する突出部38を備え、突出部38は、エンジン1に固定されて、サージタンク部13を支持する。これにより、サージタンク部13と燃料配管3との間の距離を維持しやすくなるため、サージタンク部13と燃料配管3との干渉をより効果的に抑制することができる。この結果、燃料配管3の脱離や破損をより効果的に抑制することができる。
【0057】
また、本実施形態では、サージタンク部13は、吸気マニホールド10がエンジン1に取り付けられた状態で、サージタンク部13から右側に向かって上側に傾斜する前側架橋部71及び後側架橋部72により支持されている。これにより、サージタンク部13を出来る限りエンジン1から離した状態を維持することができ、結果として、サージタンク部13を燃料配管3に対して左側に離すことができる。この結果、サージタンク部13と燃料配管3との間の距離を維持しやすくなるため、サージタンク部13と燃料配管3との干渉をより効果的に抑制することができる。したがって、燃料配管3の脱離や破損をより効果的に抑制することができる。
【0058】
また、本実施形態では、複数の独立吸気管部11は、エンジン1に近い側の部分(下流側端部34及び取付部33)よりも、エンジン1から遠い側の部分(主通路部12及び中間部44)の方が、剛性が弱くなるようにそれぞれ構成されている。これにより、衝突荷重により独立吸気管部11が破断するときには、エンジン1から出来るだけ遠い位置で破断する。これにより、吸気マニホールド10が燃料配管3と干渉することをより効果的に抑制することができる。この結果、燃料配管3の脱離や破損をより効果的に抑制することができる。
【0059】
(その他の実施形態)
ここに開示された技術は、前述の実施形態に限られるものではなく、請求の範囲の主旨を逸脱しない範囲で代用が可能である。
【0060】
例えば、前述の実施形態では、吸気マニホールド構造を4気筒エンジンに対して適用していた。これに限らず、3気筒以下の気筒を有するエンジンに採用してもよいし、5気筒以上の気筒を有するエンジンに採用してもよい。
【0061】
また、前述の実施形態では、車両部品としてオルタネータを例示した。これに限らず、車両部品は、例えば、モータやバッテリ等でもよい。
【0062】
前述の実施形態は単なる例示に過ぎず、本開示の範囲を限定的に解釈してはならない。本開示の範囲は請求の範囲によって定義され、請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本開示の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0063】
ここに開示された技術は、エンジンルーム内に気筒列方向が車両前後方向になるように縦置きされた多気筒エンジンの車幅方向における一側の部分に接続された吸気マニホールドを備える吸気マニホールド構造として有用である。
【符号の説明】
【0064】
1 エンジン
1a 左側側面
2 オルタネータ(車両部品)
3 燃料配管
10 吸気マニホールド
11 独立吸気管部
12 主通路部(独立吸気管部のエンジンから遠い側の部分)
13 サージタンク部
13b 右側側面部(サージタンク部のエンジンに近い側の面部)
14 吸気導入管
33 取付部(独立吸気管部のエンジンに近い側の部分)
34 下流側端部(独立吸気管部のエンジンに近い側の部分)
38 突出部
44 中間部(独立吸気管部のエンジンから遠い側の部分)