(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022181620
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】電力供給監視システム、および電力供給監視方法
(51)【国際特許分類】
H02J 13/00 20060101AFI20221201BHJP
【FI】
H02J13/00 301D
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021088654
(22)【出願日】2021-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】満井 法嗣
(72)【発明者】
【氏名】篠田 誠一
【テーマコード(参考)】
5G064
【Fターム(参考)】
5G064AA01
5G064AA04
5G064AC09
5G064BA02
5G064CB03
5G064CB08
5G064CB17
5G064CB18
5G064DA01
(57)【要約】
【課題】需要家側で生じている異常を早期に検知して適切かつ迅速な対応を可能とし、電力供給サービスの質的向上を図る。
【解決手段】電力供給監視システムは、需要家側に設置され配電線の電圧値を計測する機能を有する一つ以上のスマートメータと通信可能に接続し、スマートメータにより計測された配電線の電圧値の時系列データを取得し、過去に取得された時系列データを学習データとして学習した、時系列データの異常の度合いを示す第1の確率を出力する機械学習モデルである異常判定モデルを記憶し、スマートメータから新たに取得した時系列データを異常判定モデルに入力して時系列データに異常がある確率を取得し、取得した第1の確率に基づく情報を出力する。例えば、電力供給監視システムは、第1の確率を予め設定された閾値と比較することにより時系列データの異常の有無を判定してその結果を出力する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサおよび記憶装置を有する情報処理装置を用いて構成され、
需要家側に設置され配電線の電圧値を計測する一つ以上のスマートメータと通信可能に接続し、
前記スマートメータにより計測された配電線の電圧値の時系列データを取得し、
過去に取得された前記時系列データを学習データとして学習した、前記時系列データの異常の度合いを示す第1の確率を出力する機械学習モデルである異常判定モデルを記憶し、
前記スマートメータから新たに取得した前記時系列データを前記異常判定モデルに入力することにより、前記時系列データに異常がある確率を取得し、取得した前記第1の確率に基づく情報を出力する、
電力供給監視システム。
【請求項2】
請求項1に記載の電力供給監視システムであって、
前記時系列データを学習データとして学習した、前記第1の確率と、前記時系列データの異常の種類が所定の種類である確率である第2の確率とを出力する機械学習モデルである異常判定モデルを記憶し、
前記スマートメータから新たに取得した前記時系列データを前記異常判定モデルに入力することにより、前記第1の確率と前記第2の確率を取得し、取得した前記第1の確率および前記第2の確率に基づく情報を出力する、
電力供給監視システム。
【請求項3】
請求項2に記載の電力供給監視システムであって、
前記時系列データを学習データとして学習した、前記第1の確率および前記第2の確率と、前記時系列データの異常の原因が所定の原因である確率である第3の確率とを出力する機械学習モデルである異常判定モデルを記憶し、
前記スマートメータから新たに取得した前記時系列データを前記異常判定モデルに入力することにより、前記第1の確率、前記第2の確率、および前記第3の確率を取得し、取得した前記第1の確率、前記第2の確率、および前記第3の確率に基づく情報を出力する、
電力供給監視システム。
【請求項4】
請求項1に記載の電力供給監視システムであって、
前記第1の確率を予め設定された閾値と比較することにより前記時系列データの異常の有無を判定してその結果を出力する、
電力供給監視システム。
【請求項5】
請求項2に記載の電力供給監視システムであって、
前記第1の確率および前記第2の確率を夫々について予め設定された閾値と比較することにより前記時系列データの異常の有無と異常の種類を判定してその結果を出力する、
電力供給監視システム。
【請求項6】
請求項3に記載の電力供給監視システムであって、
前記第1の確率、前記第2の確率、及び前記第3の確率を夫々について予め設定された閾値と比較することにより前記時系列データの異常の有無、異常の種類、および異常の原因を判定してその結果を出力する、
電力供給監視システム。
【請求項7】
プロセッサおよびメモリを有する情報処理装置が、
需要家側に設置され配電線の電圧値を計測する機能を有する一つ以上のスマートメータにより計測された配電線の電圧値の時系列データを取得するステップと、
過去に取得された前記時系列データを学習データとして学習した、前記時系列データの異常の度合いを示す第1の確率を出力する機械学習モデルである異常判定モデルを記憶するステップと、
前記スマートメータから新たに取得した前記時系列データを前記異常判定モデルに入力することにより、前記時系列データに異常がある確率を取得し、取得した前記第1の確率に基づく情報を出力するステップと、
を実行する、電力供給監視方法。
【請求項8】
請求項7に記載の電力供給監視方法であって、
前記情報処理装置が、
前記時系列データを学習データとして学習した、前記第1の確率と、前記時系列データの異常の種類が所定の種類である確率である第2の確率とを出力する機械学習モデルである異常判定モデルを記憶するステップと、
前記スマートメータから新たに取得した前記時系列データを前記異常判定モデルに入力することにより、前記第1の確率と前記第2の確率を取得し、取得した前記第1の確率および前記第2の確率に基づく情報を出力するステップと、
を更に実行する、電力供給監視方法。
【請求項9】
請求項8に記載の電力供給監視方法であって、
前記情報処理装置が、
前記時系列データを学習データとして学習した、前記第1の確率および前記第2の確率と、前記時系列データの異常の原因が所定の原因である確率である第3の確率とを出力する機械学習モデルである異常判定モデルを記憶するステップと、
前記スマートメータから新たに取得した前記時系列データを前記異常判定モデルに入力することにより、前記第1の確率、前記第2の確率、および前記第3の確率を取得し、取得した前記第1の確率、前記第2の確率、および前記第3の確率に基づく情報を出力するステップと、
を更に実行する、電力供給監視方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力供給監視システム、および電力供給監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、家庭やオフィスビル、工場、学校等、相当数の需要家宅へのスマートメータの設置が進み、スマートメータにより取得される情報を利用した様々な仕組みが提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、スマートメータから通信される電力データを処理する電力データ処理システムにおいて、一定期間の電力データを構成する電力量が計測された際の電力量の属性に関する電力量属性データを電力データに付加して処理データを生成し、生成した処理データの一定期間と対応する一定期間内で任意に設定された特定期間においてユーザの活動状態を活動状態データとして取得し、取得した活動状態データと該活動状態データを取得した特定期間と対応する特定期間における処理データとによって生成される学習データによって処理データに対応するユーザの活動状態を機械学習させた学習済みモデルに基づき、一定期間から特定期間を減じた残余期間におけるユーザの活動状態を推定することが記載されている。
【0004】
また例えば、特許文献2には、電源の引き込み箇所から分電盤までの配電線の異常を監視することを目的として構成された配電線異常監視システムについて記載されている。配電線異常監視システムは、柱上トランスから引き込み線を介して供給される電力量を計測するためのスマートメータと、該スマートメータに配電線を介して接続する主幹ブレーカを有する分電盤と、主幹ブレーカを流れる電流および電圧を計測するセンサとを備え、スマートメータが計測する一次計測値およびセンサが計測する二次計測値の差分に基づき、配電線の異常を判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-28208号公報
【特許文献2】特開2017-17794号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
電力会社等の電力供給者は、例えば、需要家において電力供給に何らか異常が発生した場合でも、現状ではこれを直接検知する仕組みがなく、例えば、需要家から電気がちらつく等の申し出を受けたことを契機として現場の調査等を開始するという受動的な対応を行っている。そのため、電力供給サービスの質的向上の観点から、電力供給者においては、需要家側で発生している異常を能動的かつ早期に検知して適切な対応が取れるようにするための仕組みの構築が必要とされている。
【0007】
本発明はこのような背景に鑑みてなされたものであり、需要家側で生じている異常を電力供給者側で能動的かつ早期に検知することが可能な、電力供給監視システム、および電力供給監視方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明のうちの一つは、電力供給監視システムであって、プロセッサおよび記憶装置を有する情報処理装置を用いて構成され、需要家側に設置され配電線の電圧値を計測する一つ以上のスマートメータと通信可能に接続し、前記スマートメータにより計測された配電線の電圧値の時系列データを取得し、過去に取得された前記時系列データを学習データとして学習した、前記時系列データの異常の度合いを示す第1の確率を出力する機械学習モデルである異常判定モデルを記憶し、前記スマートメータから新たに取得した前記時系列データを前記異常判定モデルに入力することにより、前記時系列データに異常がある確率を取得し、取得した前記第1の確率に基づく情報を出力する。
【0009】
例えば、電力供給監視システムは、前記第1の確率を予め設定された閾値と比較することにより前記時系列データの異常の有無を判定してその結果を出力する。
【0010】
本発明によれば、スマートメータから送られてくる電圧値の時系列データに基づき、需要家側で発生している異常を早期に検知することができる。そのため、電力供給者は、需要家側で生じている異常について迅速かつ適切に対応することができ、電圧管理が徹底され電力供給サービスの質的向上を図ることができる。
【0011】
本発明のうちの他の一つは、上記電力供給監視システムであって、前記時系列データを学習データとして学習した、前記第1の確率と、前記時系列データの異常の種類が所定の種類である確率である第2の確率とを出力する機械学習モデルである異常判定モデルを記憶し、前記スマートメータから新たに取得した前記時系列データを前記異常判定モデルに入力することにより、前記第1の確率と前記第2の確率を取得し、取得した前記第1の確率および前記第2の確率に基づく情報を出力する。
【0012】
例えば、電力供給監視システムは、前記第2の確率を予め設定された閾値と比較することにより前記時系列データの異常の種類を判定してその結果を出力する、
【0013】
本発明によれば、スマートメータから送られてくる電圧値の時系列データに基づき、需要家側で発生している異常の種類がいずれの種類であるのかについての情報を得ることができる。そのため、電力供給者は、需要家側で生じている異常について、異常の種類を把握した上で適切に対応することができる。
【0014】
本発明のうちの他の一つは、上記電力供給監視システムであって、前記時系列データを学習データとして学習した、前記第1の確率および前記第2の確率と、前記時系列データの異常の原因が所定の原因である確率である第3の確率とを出力する機械学習モデルである異常判定モデルを記憶し、前記スマートメータから新たに取得した前記時系列データを前記異常判定モデルに入力することにより、前記第1の確率、前記第2の確率、および前記第3の確率を取得し、取得した前記第1の確率、前記第2の確率、および前記第3の確率に基づく情報を出力する。
【0015】
例えば、電力供給監視システムは、前記第3の確率を予め設定された閾値と比較することにより前記時系列データの異常の原因を判定してその結果を出力する。
【0016】
本発明によれば、スマートメータから送られてくる電圧値の時系列データに基づき、需要家側で発生している異常の原因がいずれの原因であるのかについての情報を得ることができる。そのため、電力供給者は、需要家側で生じている異常について、異常の原因を把握した上で適切に対応することができる。
【0017】
その他、本願が開示する課題、およびその解決方法は、発明を実施するための形態の欄、および図面により明らかにされる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、需要家側で生じている異常を電力供給者側で能動的かつ早期に検知することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】電力供給監視システムの概略的な構成を示す図である。
【
図2】電力供給監視装置が備える主な機能を示す図である。
【
図3】電力供給監視装置の実現に用いる情報処理装置のハードウェア構成の一例である。
【
図4】スマートメータ(SM)のハードウェア構成の一例である。
【
図7A】正常時における計測電圧値の時系列の変化を示すグラフである。
【
図7B】異常時における計測電圧値の時系列の変化を示すグラフである。
【
図7C】異常時における計測電圧値の時系列の変化を示すグラフである。
【
図8】異常判定モデルを説明する図(ニューラルネットワーク)である。
【
図9】異常判定モデル学習処理を説明するフローチャートである。
【
図11】異常判定処理を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、一実施形態につき図面を参照しつつ説明する。以下の説明において、同一の又は類似する構成について共通の符号を付して説明を省略することがある。
【0021】
図1に、一実施形態として説明する、スマートメータを利用して需要家における電力の供給状態を監視する情報処理システム(以下、「電力供給監視システム1」と称する。)の概略的な構成を示している。同図に示すように、電力供給監視システム1は、電力供給監視装置100と、送配電系統を通じて電力の供給を受ける需要家2(家庭、公共施設、オフィスビル、各種公共施設、工場、インフラ施設等)側に設けられている多数のスマートメータ(以下、「SM200」と称する。)とを含む。
【0022】
電力供給監視装置100は、例えば、電力会社等の電力供給者における監視所やスマートグリッドのコントロールセンタ(以下、「電力供給監視センタ3」と総称する。)に設けられる。電力供給監視装置100は、情報処理装置(コンピュータ)を用いて構成され、各需要家2に設けられたSM200と通信ネットワーク5を介して無線通信又は有線通信により通信可能に接続されている。通信ネットワーク5は、例えば、WAN(Wide Area Network)、コンセントレータ、920Hz帯通信網、PLC(Power Line Communication)等の通信基盤を用いて構成される。
【0023】
各需要家2のSM200は、夫々が設置されている需要家2に送配電系統から供給される、電力に関する各種の計測値(電圧値、電流値、有効電力、無効電力、力率、温度等)を、電力供給監視センタ3の電力供給監視装置100に通信ネットワーク5を介して送信する。電力供給監視装置100は、SM200から随時(例えば、5分毎、30分毎等)に送られてくる計測値の時系列データについて機械学習モデルを用いた分析を行うことにより、需要家2における電力供給の異常の有無を監視する。尚、以下の説明において、「計測値」という場合、需要家2に電力を供給している配電線(単相2線式、単相3線式、三相3線式等)の電圧値(標準電圧100V(許容範囲101V±6V)、標準電圧200V(許容範囲202V±20V))をいうものとする。
【0024】
図2に電力供給監視装置100が備える主な機能を示している。同図に示すように、電力供給監視装置100は、記憶部110、スマートメータ情報管理部120、計測値取得管理部130、学習データ生成部135、モデル学習部140、異常判定部145、および判定結果提示部150の各機能を備える。
【0025】
上記機能のうち、記憶部110は、スマートメータ情報111、計測値情報112、学習データ113、異常判定モデル114、および判定結果115の各情報(データ)を記憶する。
【0026】
このうちスマートメータ情報111は、各需要家2に設けられているSM200の夫々についての各種の情報を含む。
【0027】
計測値情報112は、各需要家2のSM200から通信ネットワーク5を介して取得した計測値の時系列データを含む。
【0028】
学習データ113は、需要家2における電力供給の異常の有無の判定や異常の種類の特定に用いる機械学習モデル(以下、「異常判定モデル」と称する。)の学習に用いる学習データ(教師データ)である。
【0029】
異常判定モデル114は、上記異常判定モデルの実体(例えば、調整可能なパラメータを含んだ行列式や数式、ベクトル等で表される。)である。本実施形態では、異常判定モデル114は、DNN(Deep Neural Network)であるものとするが、勾配ブースティング(GBDT(Gradient Boosting Decision Tree))等の他の種類のモデルで実現してもよく、異常判定モデル114の種類は必ずしも限定されない。
【0030】
判定結果115は、異常判定モデル114を用いて行われた、需要家2における電力供給の異常の有無の分析結果に関する情報を含む。
【0031】
同図に示す計測値取得管理部130は、各需要家2のSM200から通信ネットワーク5を介して送られてくる計測値を受信し、受信した計測値に基づく時系列データを計測値情報112として記憶する。本実施形態では、計測値取得管理部130は、各需要家2のSM200から所定の時間間隔(例えば、5分毎、30分毎等)で計測値を取得し時系列データとして管理するものとする。計測値取得管理部130は、新たにSM200から取得した計測値の時系列データと、過去にSM200から取得した計測値の時系列データの双方を計測値情報112として管理する。
【0032】
学習データ生成部135は、異常判定モデル114の学習に用いる学習データを生成する。学習データ生成部135は、過去に取得した所定期間(半日、全日、一週間等。以下、「時間区間」と称する。)における計測値の時系列データを説明変数(特徴量)としてユーザに提示しつつ、ユーザから当該計測値についての目的変数(正解データ)であるラベル(異常又は正常、異常の場合における異常の種類等)の設定をユーザから受け付ける。そして、学習データ生成部135は、当該計測値の時系列データと受け付けた上記ラベルとを対応づけたデータを学習データとして生成し、学習データ113として管理する。
【0033】
上記の時間区間は、例えば、過去に異常が発生した際の計測値の時系列的な変化等に基づき経験的に設定される。また、複数の時間区間の夫々について複数の異常判定モデル114を生成し、生成した複数の異常判定モデル114を用いて需要家2における電力供給の異常の有無や異常の種類を様々な観点から判定するようにしてもよい。上記の時間区間は、例えば、過去の事例に基づき、異常の検出精度が向上するような長さに設定される。
【0034】
モデル学習部140は、学習データ113を用いて異常判定モデル114の学習を行う。モデル学習部140は、例えば、学習データ113を異常判定モデル114に入力し、それにより異常判定モデル114が出力する結果と入力した学習データ113との差分に基づき、異常判定モデル114を定義するパラメータを、例えば、誤差逆伝搬法(backpropagation)等の方法で調整することにより、異常判定モデル114の学習を行う。
【0035】
異常判定部145は、異常の有無の判定対象となる所定期間における計測値(例えば、新たにSM200から取得した最新の所定期間の計測値)を異常判定モデル114に入力することにより、当該需要家2における電力供給の異常の有無を判定し、その結果を判定結果115として管理する。
【0036】
判定結果提示部150は、判定結果115の内容をユーザに提示するための画面(後述する判定結果提示画面1200)を生成し、生成した判定結果提示画面をユーザインタフェースを介してユーザに提示(表示)する。
【0037】
図3に、電力供給監視装置100の実現に用いる情報処理装置のハードウェア構成の一例を示す。例示する情報処理装置10は、プロセッサ11、主記憶装置12、補助記憶装置13、入力装置14、出力装置15、および通信装置16を備える。情報処理装置10の具体例として、例えば、パーソナルコンピュータ、オフィスコンピュータ、各種サーバ装置、汎用機等がある。情報処理装置10は、その全部又は一部が、例えば、クラウドシステムによって提供される仮想サーバのように、仮想化技術やプロセス空間分離技術等を用いて提供される仮想的な情報処理資源を用いて実現されるものであってもよい。電力供給監視装置100は、通信可能に接続された複数の情報処理装置10を用いて実現してもよい。
【0038】
同図において、プロセッサ11は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、AI(Artificial Intelligence)チップ等を用いて構成されている。
【0039】
主記憶装置12は、プログラムやデータを記憶する装置であり、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、不揮発性メモリ(NVRAM(Non Volatile RAM))等である。
【0040】
補助記憶装置13は、例えば、SSD(Solid State Drive)、ハードディスクドライブ、光学式記憶装置(CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)等)、ストレージシステム、ICカード、SDカードや光学式記録媒体等の記録媒体の読取/書込装置、クラウドサーバの記憶領域等である。補助記憶装置13には、記録媒体の読取装置や通信装置16を介してプログラムやデータを読み込むことができる。補助記憶装置13に格納(記憶)されているプログラムやデータは主記憶装置12に随時読み込まれる。
【0041】
入力装置14は、外部からの入力を受け付けるインタフェースであり、例えば、キーボード、マウス、タッチパネル、カードリーダ、ペン入力方式のタブレット、音声入力装置等である。
【0042】
出力装置15は、処理経過や処理結果等の各種情報を出力するインタフェースである。出力装置15は、例えば、上記の各種情報を可視化する表示装置(LCD(Liquid Crystal Display)、グラフィックカード等)、上記の各種情報を音声化する装置(音声出力装置(スピーカ等))、上記の各種情報を文字化する装置(印字装置等)である。尚、例えば、情報処理装置10が通信装置16を介して他の装置との間で情報の入力や出力を行う構成としてもよい。
【0043】
入力装置14および出力装置15は、ユーザとの間で情報の受け付けや情報の提示を行うユーザインタフェースを構成する。
【0044】
通信装置16は、通信ネットワーク5等の通信基盤を介した他の装置との間での通信(有線通信又は無線通信)を実現する装置であり、例えば、NIC(Network Interface Card)、無線通信モジュール、USBモジュール等を用いて構成される。通信装置16は、通信ネットワーク5を介して各需要家2に設置されているSM200と通信する。また、通信装置16は、電力監視センサ3において稼働する配電制御システムや顧客管理システム等、送配電系統や各需要家2に設置されているSM200に関する情報を管理する他の情報処理システムと通信する。
【0045】
情報処理装置10には、例えば、オペレーティングシステム、ファイルシステム、DBMS(DataBase Management System)(リレーショナルデータベース、NoSQL等)、KVS(Key-Value Store)等が導入されていてもよい。
【0046】
電力供給監視装置100が備える機能は、情報処理装置10のプロセッサ11が、主記憶装置12に格納されているプログラムを読み出して実行することにより、もしくは、電力供給監視装置100を構成するハードウェア(FPGA、ASIC、AIチップ等)自体の機能によって実現される。電力供給監視装置100は、前述した各種の情報(データ)を、例えば、データベースのテーブルやファイルシステムが管理するファイルとして記憶する。
【0047】
図4にSM200のハードウェア構成の一例を示す。同図に示すように、SM200は、プロセッサ201、メモリ202、計時装置203、計測装置204、入力装置205、出力装置206、通信装置207、および電源装置208を備える。
【0048】
プロセッサ201は、CPUやMPU、電力演算エンジン(PCE:Power Calculation Engine)等を用いて構成され、メモリ202に格納されているプログラムを読み出して実行することにより、SM200が提供する各種の機能を実現する。メモリ202は、ROM、RAM、不揮発性メモリ等を用いて構成され、プログラム(ファームウェアを含む)やデータを記憶する。メモリ202が記憶するプログラムは、例えば、ファームウェアのアップデート等により適宜更新することができる。
【0049】
計時装置203は、例えば、温度補償型のRTC(Real Time Clock)等を用いて構成され、現在日時等の時刻情報を提供する。計時装置203が提供する時刻情報は、電圧計測値等の計測情報の計測日時を示す情報として利用される。計時装置203は、NTP(Network Time Protocol)等を利用して通信ネットワーク5を介して日時情報を取得する機能を備えていてもよい。
【0050】
計測装置204は、各種センサ(電圧センサ、電流センサ、温度センサ等)、ΔΣ型A/Dコンバータ、ゲインアンプ等を備え、SM200が設置されている需要家2において計測される各種の計測値を取得してメモリ202に格納する。
【0051】
入力装置205および出力装置206は、SM200が設置されている現場において作業員等がSM200を直接操作するためのユーザインタフェースを提供する。入力装置205は、例えば、キーボード、タッチパネル、操作ボタン等である。出力装置206は、例えば、LCD、有機ELパネル(Organic Electro-Luminescence panel)、LED(Light Emitting Diode)等の各種表示装置である。
【0052】
通信装置207は、通信ネットワーク5を介した電力供給監視装置100との間の通信を実現する。通信装置207は、例えば、無線通信モジュール(920MHz帯無線モジュール、1:N無線方式モジュール等)、有線通信モジュール(PLCモジュール(PLC:Power Line Communication)等)、を有する。
【0053】
電源装置208は、SM200が備える各構成に対して駆動電力を供給する装置であり、例えば、配電線の交流電力を直流に変換するA/Dコンバータ、配電線による電力供給が停止した際にSM200の単独動作を可能とするバッテリ、当該バッテリの充電回路等を有する。
【0054】
図5にスマートメータ情報111の一例を示す。同図に示すように、スマートメータ情報111は、メータID1111、需要家ID1112、各種情報1113の各項目を含む複数のレコードで構成される。スマートメータ情報111の一つのレコードは、需要家2に設置されている一つのスマートメータ(SM200)に対応する。スマートメータ情報111は、例えば、配電制御システムや顧客管理システム等から取得される。
【0055】
上記項目のうち、メータID1111には、スマートメータの識別子(以下、「メータID」と称する。)が格納される。需要家ID1112には、需要家の識別子(以下、「需要家ID」と称する。)が格納される。各種情報1113には、当該SM200に関する各種の情報、例えば、当該SM200が設置されている需要家2の電力供給契約のタイプ(契約アンペア(10A,30A,50A等)等)、当該SM200が設置されている配電線の区間、当該配電線の識別情報(線路名、引込柱番号)、当該SM200の当該需要家2への設置日時等が格納される。
【0056】
図6に計測値情報112の一例を示す。同図に示すように、計測値情報112は、メータID1121、計測日時1122、電圧値(1)1123、電圧値(2)1124等の項目を有する複数のレコードで構成される。計測値情報112の一つのレコードは、あるSM200から送られてくるある計測日時における計測値に対応している。
【0057】
メータID1121には、当該レコードの計測値を計測したSM200のメータIDが格納される。計測日時1122には、当該計測値が計測された日時が格納される。電圧値(1)1123、電圧値(2)1124、~には、当該SM200の計測対象である配電線の各計測点の計測値が格納される。
【0058】
図7A~
図7Cは、夫々、計測値情報112のある時間区間における計測値の時系列データ(電圧値(1)1123の時系列データ、および電圧値(2)1124の時系列データ)をグラフで表したものである。
図7Aは、需要家2における電力供給が正常に行われている時間区間における電圧値の時系列データの一例であり、
図7Bおよび
図7Cは、いずれも需要家2における電力供給に異常が生じている時間区間における電圧値の時系列データの一例である。
【0059】
図7Aに示すように、電力供給が正常に行われている時間区間においては、電圧値(電圧値(1)1123および電圧値(2)1124)は、許容範囲101V±6Vに収まっている。一方、
図7Bや
図7Cに示すように、電力供給に異常が生じている時間区間においては、電圧値(1)1123および電圧値(2)1124が許容範囲101V±6Vに収まらない期間が存在する。例えば、
図7Bでは、一時的に電圧値が90V以下となる期間が存在する。また、例えば、
図7Cでは、一時的に電圧値が90V以下となる期間が周期的に生じている。異常判定モデル114は、こうした正常時における電圧値の時系列データと異常時の電圧値の時系列データを学習することにより、新たに取得した電圧値の時系列データから、電力供給が正常に行われているか否か、および、異常が生じている場合における異常の種類と異常の原因の特定を行う。
【0060】
図8に異常判定モデル114の一例(ニューラルネットワークの構造)を示す。同図に示すように、異常判定モデル114の入力層811には、計測値情報112から取得される、所定の時間区間における計測値の時系列データが入力される。中間層812は、学習によって調整されるパラメータを含む一つ以上のノードからなる一つ以上の隠れ層を含む。中間層812は、入力層811に与えられた時系列データに基づき、出力層813の一つ以上の予測値(確率)を求める。本実施形態の異常判定モデル114は、出力層813は、複数の予測値(電力供給に異常が生じている確率、異常の種類毎の可能性を示す確率(生じている異常がAである確率、異常がBである確率、異常の種類毎の原因を示す確率(生じている異常Aの原因がαである確率、異常Bの原因がβである確率、~))を含む。
【0061】
尚、本実施形態では、異常判定モデル114の入力層811に、あるSM200から所定の時間区間に取得された一つの計測値の時系列データを与える場合を示すが、例えば、あるSM200から配電線の異なる計測点の夫々において所定の時間区間に計測された複数の計測値の時系列データを入力層811に与えるようにしてもよい。配電線の異なる計測点で取得された複数の計測値の時系列データを入力層811に与えることで、異常判定モデル114の精度の向上が期待できる。
【0062】
図9は、電力供給監視装置100の学習データ生成部135およびモデル学習部140が、学習データの生成並びに生成した学習データを用いた異常判定モデル114の学習に際して行う処理(以下、「異常判定モデル学習処理S900」と称する。)を説明するフローチャートである。尚、異常判定モデル学習処理S900を実行するタイミングは必ずしも限定されないが、例えば、電力供給監視装置100は、新たに学習データ113が生成されたことや、ユーザインタフェースを介してユーザから実行指示を受け付けたこと等を契機として、異常判定モデル学習処理S900を実行する。以下、同図とともに異常判定モデル学習処理S900について説明する。
【0063】
まず電力供給監視装置100の学習データ生成部135が、学習データ113として用いる計測値(説明変数)をユーザに提示しつつ、ユーザから当該計測値についてのラベル(目的変数)の設定を受け付け、当該計測値とラベルとを対応づけたデータを学習データ113として生成する(S911)。
【0064】
図10A~
図10Cに、学習データ生成部135が、上記計測値(説明変数)の提示とラベル(目的変数)の設定を受け付ける際にユーザインタフェースを介してユーザに提示する画面(以下、「学習データ設定画面1000」と称する。)の例を示す。
図10Aは、電力供給が正常である場合の学習データ設定画面1000の例であり、
図10Bおよび
図10Cは、電力供給が異常である場合の学習データ設定画面1000の例である。これらの画面に示すように、学習データ設定画面1000は、計測値(説明変数)の表示欄1010と、ラベルの設定欄1020とを有する。
【0065】
図9に戻り、続いて、電力供給監視装置100のモデル学習部140が、学習データ113に基づき異常判定モデル114を学習する(S912)。尚、モデル学習部140が、例えば、学習済の異常判定モデル114について予測精度の検証を行うようにしてもよい。その場合、例えば、学習データ113を学習用のデータと検証用のデータに予め分類しておき、異常判定モデル114の学習には学習用のデータを用いて学習し、異常判定モデル114の検証には検証用のデータを用いて検証を行うようにする。
【0066】
図11は、電力供給監視装置100の異常判定部145が、判定対象の説明変数(例えば、新たに取得した所定時間区間における計測値(電圧値)の時系列データ)を異常判定モデル114に入力することにより、目的変数(異常が生じている確率、異常の種類がAである確率、異常の種類がBである確率、~、異常Aの原因がαである確率、異常Bの原因がβである確率、~)を求め、電力供給監視装置100の判定結果提示部150が、求めた目的変数をユーザに提示する処理(以下、「異常判定処理S1100」と称する。)を説明するフローチャートである。異常判定処理S1100は、予め設定されたタイミング(定期的、スケジュールされた日時、ユーザから実行指示を受け付けた場合等)で実行される。以下、同図とともに異常判定処理S1100について説明する。
【0067】
まず異常判定部145が、判定対象の説明変数となる、新たに取得した計測値(電圧値)の時系列データを計測値情報112から取得する(S1111)。
【0068】
続いて、異常判定部145が、取得した説明変数を異常判定モデル114に入力し、異常判定モデル114の出力を判定結果115として取得する(S1112)。
【0069】
続いて、判定結果提示部150が、判定結果115を記載した画面(以下、「判定結果提示画面1200」と称する。)を生成し、生成した判定結果提示画面1200を出力装置15(表示装置)に出力(表示)する(S1113)。
【0070】
図12に判定結果提示画面1200の一例を示す。例示する判定結果提示画面1200は、判定対象の時間区間の表示欄1210、および判定結果の表示欄1220を有する。判定対象の時間区間の表示欄1210には、判定対象の計測値の時系列データの時間区間を示す情報が表示される。判定結果の表示欄1220には、
図11のS1112で取得された判定結果115の内容が表示される。同図に示すように、判定結果の表示欄1220は、メータID1221、正常/異常1222、異常種別1223、および原因予測1224の各項目を有する複数行からなる表が表示される。判定結果の表示欄1220の一つの行は、一つのSM200の判定結果に対応している。
【0071】
メータID1221には、メータIDが表示される。
【0072】
正常/異常1222には、当該SM200に異常が生じているか否かを示す情報(正常/異常)が表示される。例えば、計測値の時系列データの異常の度合いを示す確率(以下、「第1の確率」と称する。)が予め設定された閾値以下であれば、正常/異常1222に「正常」が表示される。また、第1の確率が上記閾値を超えていれば、正常/異常1222に「異常」が表示される。
【0073】
異常種別1223には、異常が生じている場合における当該異常の種別を予測した結果が表示される。例えば、計測値の時系列データの異常の種類が所定の種類である確率が予め設定された閾値を超えていれば、異常種別1223に、当該種類を示す情報「電圧一時低下」、「電圧周期的低下」等が表示される。
【0074】
原因予測1224には、異常が生じている場合における当該異常の原因を予測した結果が表示される。例えば、計測値の時系列データの異常の原因が所定の原因である確率が予め設定された閾値を超えていれば、原因予測1224に、当該原因を示す情報「接点不良」、「変圧器故障」等が表示される。異常判定処理S1100は、以上のようにして行われる。
【0075】
以上詳細に説明したように、本実施形態の電力供給監視システム1によれば、SM200から送られてくる電圧値の時系列データに基づき、需要家側で発生している異常を早期に検知することができる。そのため、電力供給者は、需要家側で生じている異常について迅速かつ適切に対応することが可能になる。
【0076】
また、本実施形態の電力供給監視システム1によれば、スマートメータから送られてくる電圧値の時系列データに基づき、需要家側で発生している異常の種類がいずれの種類であるのかについての情報を得ることができる。そのため、電力供給者は、需要家側で生じている異常について、異常の種類を把握した上で適切に対応することが可能になる。
【0077】
また、本実施形態の電力供給監視システム1によれば、スマートメータから送られてくる電圧値の時系列データに基づき、需要家側で発生している異常の原因がいずれの原因であるのかについての情報を得ることができる。そのため、電力供給者は、需要家側で生じている異常について、異常の原因を把握した上で適切に対応することが可能になる。
【0078】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、以上の説明は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明はその趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。例えば、上記の実施の形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また上記実施形態の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換をすることが可能である。
【0079】
例えば、以上の実施形態では、計測値である電圧値の時系列データを説明変数として学習データ113を生成したが、例えば、SM200の計測値から取得される他の計測値(電流値の時系列データ、有効電力の時系列データ、無効電力の時系列データ、力率の時系列データ、温度の時系列データ等)等を説明変数(特徴量)として学習データ113を生成してもよい。また、例えば、スマートメータ情報111から把握される、対象としている計測値の取得元のSM200の周辺の他のSM200(例えば、同じ変圧器に接続している他のSM200)から取得される計測値を説明変数(特徴量)としてもよい。そのようにすることで、対象としている計測値の取得元のSM200の周辺の状況を考慮した学習データ113を生成することができ、異常判定モデル114の更なる精度の向上を期待することができる。
【0080】
また、以上の実施形態では、異常判定モデル114を「教師あり学習」で学習する場合を例として説明したが、例えば、多数の正常な計測値情報112を機械学習モデルに入力して定常状態を学習することにより異常判定モデル114を生成するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0081】
1 電力供給監視システム、2 需要家、3 電力供給監視センタ、5 通信ネットワーク、100 電力供給監視装置、110 記憶部、111 スマートメータ情報、112 計測値情報、113 学習データ、114 異常判定モデル、115 判定結果、120 スマートメータ情報管理部、130 計測値取得管理部、135 学習データ生成部、140 モデル学習部、145 異常判定部、150 判定結果提示部、200 SM(スマートメータ)、1000 学習データ設定画面、1200 判定結果提示画面、S900 異常判定モデル学習処理、S1100 異常判定処理