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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022181642
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】角度誤差検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01S 3/42 20060101AFI20221201BHJP
   G01S 3/22 20060101ALI20221201BHJP
   G01S 13/44 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
G01S3/42 C
G01S3/22
G01S13/44
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021088689
(22)【出願日】2021-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000232483
【氏名又は名称】日本電波工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002756
【氏名又は名称】弁理士法人弥生特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 薫
【テーマコード(参考)】
5J070
【Fターム(参考)】
5J070AD07
5J070AE04
5J070AK04
(57)【要約】
【課題】追尾受信に用いられるアンテナの角度誤差検出を行う角度誤差検出装置に設けられている和信号用、差信号用の自動利得制御部のゲインを自動的に揃える技術を提供する。
【解決手段】追尾対象からの周波数信号の受信方向の角度誤差を検出する角度誤差検出装置12において、第1の自動利得制御部32a、432aはアンテナ11の異なる位置で受信した周波数信号の和信号を予め設定された信号レベルに増幅する。第2の自動利得制御部32b、432bは、一時的に和信号が供給され、第1の自動利得制御部とゲインを揃える操作を行った結果に基づき差信号を増幅する。角度誤差検出部41は、増幅された差信号に基づき、角度誤差を検出する。信号切替部36は、前記和信号と前記差信号との間で、前記第2の自動利得制御部に供給する信号を切り替える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
追尾対象からの周波数信号を、アンテナの第1の受信部にて受信した第1の受信信号と、前記第1の受信部とはアンテナ内の受信位置が異なる第2の受信部にて受信した第2の受信信号とに基づいて、前記アンテナの正面方向に対する、前記周波数信号の受信方向の角度誤差を検出する角度誤差検出装置において、
第1の可変増幅器と、当該第1の可変増幅器より出力される信号の信号レベルを制御するための制御値を出力する第1の制御部と、を備え、前記第1の受信信号及び第2の受信信号から求めた和信号を予め設定された信号レベルに増幅するための第1の自動利得制御部と、
第2の可変増幅器と、当該第2の可変増幅器より出力される信号の信号レベルを制御するための制御値を出力する第2の制御部と、を備え、前記第1の受信信号及び第2の受信信号から求めた差信号を前記第1の自動利得制御部と揃ったゲインで増幅するための第2の自動利得制御部と、
前記第2の自動利得制御部にて増幅された差信号に基づき、前記角度誤差を検出する角度誤差検出部と、
前記第2の自動利得制御部に前記和信号を供給した結果に基づいて、当該第2の自動利得制御部のゲインを、前記第1の自動利得制御部のゲインと揃える操作を行う操作部と、
前記ゲインを揃えるための操作を行う第1の期間中は前記和信号を供給し、前記角度誤差を検出する第2の期間中は前記差信号を供給するように、前記第2の自動利得制御部に供給する信号を切り替える信号切替部と、を備えたことを特徴とする角度誤差検出装置。
【請求項2】
前記操作部は、
前記第1の期間中に前記第2の自動利得制御部に対して前記和信号が供給され、前記第2の可変増幅器から出力された和信号が前記予め設定された信号レベルとなる前記第2の制御部の制御値と、前記第1の自動利得制御部に前記和信号が供給され、前記第1の可変増幅器から出力された和信号が前記予め設定された信号レベルとなる前記第1の制御部の制御値とのずれを補正するための補正値を取得する補正値取得部と、
前記第1の制御部の制御値に、前記補正値取得部で取得した補正値を加算する加算部と、
前記第1の期間中は、前記第2の可変増幅器に前記第2の制御部を接続し、前記第2の期間中は、前記第2の可変増幅器に前記加算部を接続して、当該第2の可変増幅器に入力される制御値を切り替える制御値切替部と、を備えることを特徴とする請求項1に記載の角度誤差検出装置。
【請求項3】
前記操作部は、前記第1の期間中に前記第2の自動利得制御部に前記和信号が供給され、前記第2の可変増幅器から出力された和信号が前記予め設定された信号レベルとなった状態で前記第2の期間中に前記第2の可変増幅器のゲインを固定するため、前記第2の制御部を前記第2の可変増幅器から切り離す操作を行う切り離しスイッチであることを特徴とする請求項1に記載の角度誤差検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は追尾対象に対するアンテナの角度誤差を検出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
通信衛星や航空機などの追尾対象から出力される周波数信号である通信信号を受信する受信システムには、アンテナの正面方向に対する通信信号の受信方向のずれ(角度誤差)を検出した結果に基づいて、通信信号の受信方向がアンテナの正面方向と揃うようにアンテナの向きを変えることができるもの(追尾受信システム)がある。
【0003】
角度誤差の検出手法としては、アンテナ内に設けられた、配置位置の異なる2つの開口部(第1の受信部、第2の受信部)にて各々、受信された通信信号の振幅差を求め、この振幅差に基づいて角度誤差を求める手法が知られている。
この手法においては、第1の受信部にて受信した通信信号Aと、第2の受信部にて受信した通信信号Bとの和信号A+B、及び差信号A-Bを用いて角度誤差を求める計算が行われる。
【0004】
一方、アンテナが受信する信号の信号レベルは、角度誤差の大きさや気象条件などに起因して変化する。このため、和信号や差信号は、自動利得制御部(以下、AGC(Automatic Gain Controller)とも記す)を用いて増幅した後、角度誤差の検出に用いられる。
しかしながら、互いに異なるAGCを用いて和信号、差信号を増幅すると、各々のAGCの増幅特性の違いが正確な角度誤差の算出を阻む要因となる場合がある
【0005】
ここで特許文献1には、衛星から送られる電波を受信しながら、当該受信を行う空中線(アンテナ)による衛星の自動追尾を行う利得差自動補正回路が記載されている。この利得差自動補正回路は、和信号用のAGC増幅器の制御に用いられるAGC電圧を、差信号用のAGC増幅器の制御に用いられるAGC電圧として用いる。この際、増幅後の和信号及び差信号とのレベルを比較した結果に基づいて、差信号用のAGC増幅器のAGC電圧を補正する。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の利得差自動補正回路は、上記レベルの比較結果をレベル変換器にて補正用の電圧に変換する必要があるので、当該レベル変換器における変換特性の把握や管理に手間がかかるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開平03-109446号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明はこのような事情の下になされたものであり、追尾受信に用いられるアンテナの角度誤差の検出を行う角度誤差検出装置に設けられている和信号用、差信号用の自動利得制御部のゲインを自動的に揃える技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本角度誤差検出装置は、追尾対象からの周波数信号を、アンテナの第1の受信部にて受信した第1の受信信号と、前記第1の受信部とはアンテナ内の受信位置が異なる第2の受信部にて受信した第2の受信信号とに基づいて、前記アンテナの正面方向に対する、前記周波数信号の受信方向の角度誤差を検出する角度誤差検出装置において、
第1の可変増幅器と、当該第1の可変増幅器より出力される信号の信号レベルを制御するための制御値を出力する第1の制御部と、を備え、前記第1の受信信号及び第2の受信信号から求めた和信号を予め設定された信号レベルに増幅するための第1の自動利得制御部と、
第2の可変増幅器と、当該第2の可変増幅器より出力される信号の信号レベルを制御するための制御値を出力する第2の制御部と、を備え、前記第1の受信信号及び第2の受信信号から求めた差信号を前記第1の自動利得制御部と揃ったゲインで増幅するための第2の自動利得制御部と、
前記第2の自動利得制御部にて増幅された差信号に基づき、前記角度誤差を検出する角度誤差検出部と、
前記第2の自動利得制御部に前記和信号を供給した結果に基づいて、当該第2の自動利得制御部のゲインを、前記第1の自動利得制御部のゲインと揃える操作を行う操作部と、
前記ゲインを揃えるための操作を行う第1の期間中は前記和信号を供給し、前記角度誤差を検出する第2の期間中は前記差信号を供給するように、前記第2の自動利得制御部に供給する信号を切り替える信号切替部と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
上述の角度誤差検出装置は、以下の構成を備えていてもよい。
(a)前記操作部は、前記第1の期間中に前記第2の自動利得制御部に対して前記和信号が供給され、前記第2の可変増幅器から出力された和信号が前記予め設定された信号レベルとなる前記第2の制御部の制御値と、前記第1の自動利得制御部に前記和信号が供給され、前記第1の可変増幅器から出力された和信号が前記予め設定された信号レベルとなる前記第1の制御部の制御値とのずれを補正するための補正値を取得する補正値取得部と、前記第1の制御部の制御値に、前記補正値取得部で取得した補正値を加算する加算部と、前記第1の期間中は、前記第2の可変増幅器に前記第2の制御部を接続し、前記第2の期間中は、前記第2の可変増幅器に前記加算部を接続して、当該第2の可変増幅器に入力される制御値を切り替える制御値切替部と、を備えること。
(b)前記操作部は、前記第1の期間中に前記第2の自動利得制御部に前記和信号が供給され、前記第2の可変増幅器から出力された和信号が前記予め設定された信号レベルとなった状態で前記第2の期間中に前記第2の可変増幅器のゲインを固定するため、前記第2の制御部を前記第2の可変増幅器から切り離す操作を行う切り離しスイッチであること。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、互いに異なる自動利得制御部を用いて和信号及び差信号の信号レベルを制御しつつ角度誤差の検出を行うにあたり、差信号側の自動利得制御部に和信号を供給することにより、和信号側の自動利得制御部のゲインと揃える操作を行う。この結果、2つの異なる自動利得制御部のゲインを自動的に揃えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】角度誤差検出装置を備えた追尾受信システムの構成図である。
図2】角度誤差検出装置の概要構成を示すブロック図である。
図3】比較形態に係る角度誤差検出装置のブロック図である。
図4】実施形態に係る角度誤差検出装置のブロック図である。
図5】実施形態に係る角度誤差検出装置の動作に係るタイミングチャートである。
図6】他の実施形態に係る角度誤差検出装置のブロック図である。
図7】他の実施形態に係る角度誤差検出装置の動作に係るタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、本発明の実施の形態に係る角度誤差検出装置を備えた追尾受信システム1の構成例を示している。
当該追尾受信システム1は、追尾対象から出力された通信信号(周波数信号)を受信するアンテナ11と、このアンテナ11の向きを変化させるアンテナ駆動機構15と、アンテナ11から取得した通信信号の和信号及び差信号に基づき、アンテナ11の正面方向に対する通信信号の受信方向のずれ(角度誤差)を検出する角度誤差検出装置12と、角度誤差検出装置12にて検出された角度誤差に基づいてアンテナ11の駆動方向や駆動量を求める追尾制御部13と、追尾制御部13にて決定された駆動方向や駆動量に基づき、アンテナ駆動機構15の駆動制御を行うアンテナ駆動部14と、を備える。
【0014】
図2は、上述の追尾受信システム1に含まれるアンテナ11及び角度誤差検出装置12を示すブロック図である。
例えば図2に示す追尾対象8は、予め設定された周波数の通信信号を出力する。この通信信号は、前記予め設定された周波数を有する搬送波によって変調されたベースバンド信号を含んでいる。
【0015】
アンテナ11は、互いに受信位置が異なる第1の受信部2a、第2の受信部2bを備える。方位方向の測角を行う場合は、第1の受信部2a、第2の受信部2bは横方向に異なる位置に配置され、高さ方向の測角を行う場合は、第1の受信部2a、第2の受信部2bは高さ方向に異なる位置に配置される。
【0016】
これら第1、第2の受信部2a、2bにて受信された通信信号(第1の受信信号A、第2の受信信号B)は、例えばアンテナ11側に設けられた加算部21、22を経て、各々、和信号A+B、差信号A-Bとして出力される。
なお、図2に示した例においては、アンテナ11側で和信号、差信号を得る場合について説明したが、これらの信号を得る加算部21、22は、角度誤差検出装置12側に設けてもよい。
【0017】
図3は、本発明を適用する前の比較形態に係る角度誤差検出装置12aのブロック図を示している。角度誤差検出装置12aは、不要な成分をろ波する受信フィルタ31a、31bと、ろ波後の和信号、差信号を増幅する第1の可変増幅器32a、第2の可変増幅器32bが設けられた受信処理部3と、信号処理ブロック4とを備える。
【0018】
信号処理ブロック4は、受信処理部3にて増幅された和信号、差信号のA/D変換を行うA/D変換部43と、ディジタル変換された和信号、差信号を復調する復調部41と、復調後の差信号の信号レベルに基づき角度誤差を求める角度誤差検出部42と、を備える。
【0019】
受信処理部3側に設けられた既述の第1の可変増幅器32a、第2の可変増幅器32bは、各々、A/D変換部43側に設けられたAGC制御部432と組み合わせて動作するAGC(自動利得制御部)を構成している。
【0020】
上述の構成を備える角度誤差検出装置12aにおいて、例えば復調部41は、加算部21、22から出力され、第1の可変増幅器32a、第2の可変増幅器32bにて増幅された後の和信号、差信号を直交復調する。復調された、和信号及び差信号は、互いに異なる信号レベルを有すると共に、これらの信号レベルは角度誤差に応じて変化する。このとき、角度誤差が小さい範囲においては、和信号(Σ)に対する差信号(Δ)の信号レベルの比が、角度誤差(θ)にほぼ対応する関係(θ≒Δ/Σ)がある。角度誤差検出部42は、この関係を利用して角度誤差を検出する。
【0021】
一方、追尾受信システム1が設けられている通信施設などにおいては、和信号をメインの復調系(不図示)にて復調し、後段の処理が行われるため、復調される和信号の信号レベルが一定であることが求められる。
【0022】
そこで、和信号、差信号の増幅を行う第1の可変増幅器32a、第2の可変増幅器32bにおいて、和信号側の第1の可変増幅器32aは、出力される信号レベルが一定となるように和信号を増幅する。一方、差信号側の第2の可変増幅器32bは、和信号側の第1の可変増幅器32aと同じゲインにて増幅を行う。この結果、第2の可変増幅器32bから出力される差信号の信号レベル(差信号レベル)は、第1の可変増幅器32aから出力される和信号の信号レベル(一定値)にて規格化された値(「Δ/Σ」に対応する値)となる。
【0023】
以上に説明したように、異なる第1の可変増幅器32a、第2の可変増幅器32bを用い、和信号と差信号とを互いに揃ったゲインにて増幅することは、角度誤差の検出をより正確に行ううえで重要となる。
そこで、図3に記載の角度誤差検出装置12aにおいては、和信号を予め設定された信号レベルに増幅するために、第1の可変増幅器32aに対して制御電圧(制御値)を出力するAGC制御部432を設けると共に、差信号の増幅を行う第2の可変増幅器32bに対しても同じAGC制御部432から出力された制御電圧を供給する構成となっている。第1の可変増幅器32a、第2の可変増幅器32bに共通の制御電圧を供給することにより、和信号、差信号のゲインを揃えることを企図している。
【0024】
しかしながら、実際の第1の可変増幅器32a、第2の可変増幅器32bは、各々固有の増幅特性を有し、同じ制御電圧を入力したとしても、必ずしも双方のゲインが揃わない場合もある。
そこで、図3に示す角度誤差検出装置12aは、差信号側の第2の可変増幅器32bに入力される制御電圧を補正するための補正値取得部434が設けられている。補正値取得部434は、差信号側の第2の可変増幅器32bにおいて、和信号側の第1の可変増幅器32aと共通のゲインを得るにあたり、第1の可変増幅器32a、第2の可変増幅器32bの制御電圧の差分(オフセット値)を補正値として記憶している。
【0025】
当該角度誤差検出装置12aにおいては、AGC制御部432から制御電圧が出力されると、和信号側の第1の可変増幅器32aに対しては、当該制御電圧がそのまま入力される。
一方、AGC制御部432の制御電圧は、差信号側の第2の可変増幅器32bへも供給される。差信号側への制御電圧の供給線路には、加算部34が介設されており、制御電圧の値に応じて補正値取得部434から読みだされた補正値が制御電圧に加算される。この結果、和信号を増幅する第1の可変増幅器32aと、差信号を増幅する第2の可変増幅器32bとの間でゲインを揃えることが可能となる。
【0026】
一方で、既述のようにそれぞれの第1の可変増幅器32a、第2の可変増幅器32bには固有の増幅特性があるところ、角度誤差検出装置12aの製造を行うたびに、第1の可変増幅器32a、第2の可変増幅器32bの増幅特性を検査し、制御電圧のオフセット値に対応した補正値を補正値取得部434に記憶させる作業を行うとすると、その作業量が膨大となってしまうという問題がある。
【0027】
このような問題に対応するため、図4に示す実施形態に係る角度誤差検出装置12は、第1の可変増幅器32a、第2の可変増幅器32bのゲインを自動的に揃えることが可能な構成となっている。以下、実施形態に係る角度誤差検出装置12の構成を説明する。
なお、図4図6に示す各角度誤差検出装置12、12bにおいて、図3を用いて説明した比較形態に係る角度誤差検出装置12aと共通する構成については、図4に付したものと同じ符号を付し、再度の説明を省略する。
【0028】
図4に示す角度誤差検出装置12において、和信号の増幅を行う第1の可変増幅器32aに対しては、当該第1の可変増幅器32aより出力される信号の信号レベルを制御するための制御電圧を出力する第1のAGC制御部432aが設けられている。第1のAGC制御部432aは、第1の可変増幅器32aから出力される信号の信号レベルを検出した結果に基づき、和信号の信号レベルが予め設定された信号レベルとなるように制御電圧を調節する。
第1のAGC制御部432aは第1の制御部に相当し、第1の可変増幅器32aと第1のAGC制御部432aとは、本例の第1のAGC(第1の自動利得制御部)を構成している。
【0029】
一方、本例の角度誤差検出装置12においては、差信号の増幅を行う第2の可変増幅器32bに対しても、当該第2の可変増幅器32bより出力される信号の信号レベルを制御するための制御値を出力する第2のAGC制御部432bが個別に設けられている。
第2のAGC制御部432bは第2の制御部に相当し、第2の可変増幅器32bと第2のAGC制御部432bとは、本例の第2のAGC(第2の自動利得制御部)を構成している。
【0030】
さらに第2の可変増幅器32bの入り口側(詳細には受信フィルタ31bの入口側)には、第2の可変増幅器32bに入力される信号を、和信号と差信号との間で切り替えるスイッチにより構成された信号切替部36が設けられている。信号切替部36は切替制御部435から取得した制御信号に基づき、第2の可変増幅器32bに入力される信号を和信号と差信号との間で切り替える。
【0031】
第2のAGC制御部432bは、第2の可変増幅器32bに和信号が入力されている期間中に限定して用いられる。当該期間中、第2のAGC制御部432bは、第2の可変増幅器32bから出力される信号の信号レベルを検出した結果に基づき、和信号の信号レベルが第1の可変増幅器32a側と共通の予め設定された信号レベルとなるように制御電圧を調節する。
【0032】
また角度誤差検出装置12には、第2の可変増幅器32bに供給される制御電圧の出力元を、第1のAGC制御部432aと第2のAGC制御部432bとの間で切り替えるスイッチにより構成された制御値切替部35が設けられている。制御値切替部35は切替制御部435から取得した制御信号に基づき、第2の可変増幅器32bに入力される制御電圧の切り替えを行う。
【0033】
さらに角度誤差検出装置12には、第1のAGC制御部432aから出力された制御電圧を第2の可変増幅器32bに供給するにあたり、当該制御電圧の補正値を加算する加算部34と、前記補正値を取得し加算部34へ向けて出力する補正値取得部434とを備える。
【0034】
補正値取得部434は、第1の可変増幅器32a、第2の可変増幅器32bに各々和信号が入力され、各出力が予め設定された信号レベルとなっている状態における第1のAGC制御部432aの制御電圧と、第2のAGC制御部432bの制御電圧とのずれを補正するための補正値を取得する。例えば第2のAGC制御部432bの制御電圧から第1のAGC制御部432aの制御電圧を差し引いた値(オフセット値)を補正値とする場合を例示できる。
補正値取得部434、加算部34及び制御値切替部35は、第2の可変増幅器32bに和信号を入力した結果に基づいて、当該第2の可変増幅器32bのゲインを、第1の可変増幅器32aのゲインと揃える操作を行う操作部を構成している。
【0035】
切替制御部435は、第1の可変増幅器32a、第2の可変増幅器32bのゲインを揃えるための操作を行う第1の期間中と、角度誤差を検出する第2の期間とで、第2の可変増幅器32bに供給される信号を和信号と差信号との間で切り替える信号切替部36の制御を行う。さらに切替制御部435は、第1のGC制御部432a側と、第2のAGC制御部432b側とで、第2の可変増幅器32bに入力される制御電圧を切り替える切替制御を行う。
【0036】
上述の構成を備える角度誤差検出装置12の作用について、図5のタイミングチャートも参照しながら説明する。
まず、アンテナ11が追尾対象8から通信信号を受信していない期間中は、第1のAGC(第1の可変増幅器32a、第1のAGC制御部432a)、第2のAGC(第2の可変増幅器32b、第2のAGC制御部432b)共に停止している。
【0037】
しかる後、時刻t1にて、アンテナ11が追尾対象8から通信信号を受信すると、予め設定した期間中、切替制御部435は信号切替部36のスイッチを接点A側に接続することにより、第2の可変増幅器32bにも和信号を供給する。また、当該期間中、切替制御部435は、制御値切替部35のスイッチを接点Aに接続することにより、第2のAGC制御部432bから出力された制御電圧を第2の可変増幅器32bに入力する。
【0038】
上記信号切替部36、制御値切替部35の設定により、第1の可変増幅器32a、第2の可変増幅器32bの双方に共通の和信号が供給され、各々、第1のAGC制御部432a、第2のAGC制御部432bから出力される制御電圧に基づいて、当該和信号の信号レベルを予め設定された共通の信号レベルに増幅する処理が行われる。
【0039】
このとき、第1の可変増幅器32a、第2の可変増幅器32bが互いに異なる増幅特性を有している場合には、第1のAGC制御部432a、第2のAGC制御部432bから各々出力される制御電圧は互いに異なる値となる場合がある。補正値取得部434はこれらの制御電圧の差分値を、第1のAGC制御部432aの制御電圧を補正するための補正値として保持する。
上述の動作を実行する期間(図5の時刻t1~t2の期間)は、第1の可変増幅器32aと第2の可変増幅器32bとのゲインを揃えるための操作を行う第1の期間に相当する。
【0040】
第1のAGC制御部432aの制御電圧を補正するための補正値を取得したら、時刻t2にて、切替制御部435は信号切替部36のスイッチを接点B側に接続する。この結果、第2の可変増幅器32bには差信号が供給される。
また上記動作に合わせて、切替制御部435は、制御値切替部35のスイッチを接点B側に接続する。この結果、第2の可変増幅器32bには、第1のAGC制御部432aから出力された制御電圧に対し、補正値が加算された制御値(補正後の制御電圧)が入力される。
【0041】
ここで第1のAGC制御部432aから出力される制御電圧は、和信号を予め設定した信号レベルに増幅する値となっている。また、補正値取得部434から出力される補正値は、第2の可変増幅器32bに和信号が入力された場合に、第2の可変増幅器32bから出力される信号の信号レベルが和信号側と揃うように、第1のAGC制御部432aから出力される制御電圧の補正を行う。
【0042】
この条件下で第2の可変増幅器32bに差信号を供給すると共に、補正値された第1のAGC制御部432aの制御電圧を入力すると、当該第2の可変増幅器32bは、第1の可変増幅器32aと揃ったゲインで差信号を増幅するように動作する。当該動作により、和信号と揃ったゲインで増幅された差信号の信号レベルは、和信号の信号レベルで規格化された状態(既述の「Δ/Σ」に対応するレベル)となる。
【0043】
当該規格化された差信号を後段の復調部41、角度誤差検出部42にて処理することにより、正しい角度誤差を検出することができる。
上記動作を実行する時刻t2以降の期間は、角度誤差を検出する第2の期間に相当する。
【0044】
図4図5を用いて説明した実施形態に係る角度誤差検出装置12によれば以下の効果がある。互いに異なる第1、第2のAGC用いて和信号及び差信号の信号レベルを制御しつつ角度誤差の検出を行うにあたり、差信号側の第2の可変増幅器32bに和信号を供給することにより、和信号側の第1の可変増幅器32aのゲインと揃える操作を行う。この結果、2つの異なる第1、第2のAGCのゲインを自動的に揃えることができる。
【0045】
ここで、差信号側の第2の可変増幅器32bに和信号を供給し和信号側の第1の可変増幅器32aのゲインと揃える操作部は、図4に記載の補正値取得部434、加算部34及び制御値切替部35により構成する場合に限定されない。
例えば図6は、他の実施形態に係る角度誤差検出装置12bのブロック図を示している。
【0046】
図6に示す角度誤差検出装置12bは、補正値取得部434、加算部34、制御値切替部35が設けられていない点において図4を用いて説明した第1の実施形態に係る角度誤差検出装置12と異なっている。上記構成の相違により、本例の角度誤差検出装置12bにおいては、第2のAGC制御部432bのから出力される制御電圧のみにより第2の可変増幅器32bのゲインの調節が行われる。
さらに当該角度誤差検出装置12bは、第2のAGC制御部432bを第2の可変増幅器32bから切り離す操作を行う切り離しスイッチ37を備えている。当該切り離しスイッチ37は、第2の可変増幅器32bのゲインを、第1の可変増幅器32aのゲインと揃える操作を行う操作部に相当する。
【0047】
上述の構成を備えた角度誤差検出装置12bの作用について、図7のタイミングチャートも参照しながら説明する。
まず、アンテナ11が追尾対象8から通信信号を受信していない期間中は、第1のAGC(第1の可変増幅器32a、第1のAGC制御部432a)、第2のAGC(第2の可変増幅器32b、第2のAGC制御部432b)共に停止している点は、第1の実施形態に係る角度誤差検出装置12と同様である。
【0048】
しかる後、時刻t1にて、アンテナ11が追尾対象8から通信信号を受信すると、予め設定した期間中、切替制御部435は信号切替部36のスイッチを接点A側に接続することにより、第2の可変増幅器32bにも和信号を供給する。また、当該期間中、切替制御部435は、切り離しスイッチ37を接点Aに接続した状態とすることにより、第2のAGC制御部432bから出力された制御電圧が第2の可変増幅器32bに入力される。
【0049】
上記信号切替部36、制御値切替部35の設定により、第1の可変増幅器32a、第2の可変増幅器32bの双方に共通の和信号が入力され、各々、第1のAGC制御部432a、第2のAGC制御部432bから出力される制御電圧に基づいて、当該和信号の信号レベルを予め設定された共通の信号レベルに増幅する処理が行われる。
【0050】
このとき、第1の可変増幅器32a、第2の可変増幅器32bが互いに異なる増幅特性を有している場合には、第1のAGC制御部432a、第2のAGC制御部432bから各々出力される制御電圧は互いに異なる値となる場合がある。第1の可変増幅器32a、第2の可変増幅器32bは、各々、これら互いに異なる制御電圧に基づいて、増幅後の和信号が共通の信号レベルとなるよう、ゲインが調節される。
上述の動作を実行する期間(図7の時刻t1~t2の期間)は、第1の可変増幅器32aと第2の可変増幅器32bとのゲインを揃えるための操作を行う第1の期間に相当する。
【0051】
第1の可変増幅器32a、第2の可変増幅器32bから出力される和信号のレベルが安定したら(第1の可変増幅器32a、第2の可変増幅器32bのゲインが安定したら)、時刻t2にて、切替制御部435は信号切替部36のスイッチを接点B側に接続する。この結果、第2の可変増幅器32bには差信号が供給される。
また上記動作に合わせて、切替制御部435は切り離しスイッチ37のスイッチを接点Aから切り離す。この結果、第2の可変増幅器32bは、ゲインが固定された状態となる。
【0052】
ここで第1の可変増幅器32aは、引き続き第1のAGC制御部432aによりゲインが制御され、和信号を予め設定した信号レベルに増幅する動作を継続する。
一方、第2の可変増幅器32b側においては、時刻t2の直前まで、和信号を第1の可変増幅器32aと共通の信号レベルに調節するようにゲインが調整され、時刻t2以降、第2の可変増幅器32bと第2のAGC制御部432btpを切り離すことにより、当該ゲインが固定されている。
【0053】
従って、時刻t2の前後において、アンテナ11側から供給される和信号の信号レベルに大きな変動がない場合、第2の可変増幅器32bに差信号を供給すると、当該第2の可変増幅器32bの固定されたゲインは、第1の可変増幅器32aと揃ったゲインで差信号を増幅するように動作することになる。当該動作により、和信号と揃ったゲインで増幅された差信号の信号レベルは、和信号の信号レベルで規格化された状態(既述の「Δ/Σ」に対応するレベル)となる。
【0054】
上記動作を実行する時刻t2以降の期間は、角度誤差を検出する第2の期間に相当する。
例えばTDD(Time Division Duplex)通信のように、追尾対象8から1秒程度の間隔で数ミリ秒ずつ間欠的に通信信号を受信する場合には、各通信信号の受信タイミングの初めに第1の期間を設定し、しかる後、第2の期間で角度誤差の検出を行う。数ミリ秒程度の時間であれば、各受信信号の受信期間中に信号レベルが大きく変動するおそれも少なく、第2の可変増幅器32bのゲインを固定しても、第1の可変増幅器32a側とゲインが揃った状態を保つことができる。
【0055】
以上の動作により、図6に示す角度誤差検出装置12bにおいても、前記規格化された差信号を後段の復調部41、角度誤差検出部42にて処理することが可能であり、この結果、正しい角度誤差を検出することができる。
【0056】
図6図7を用いて説明した他の実施形態に係る角度誤差検出装置12bにおいても、互いに異なる第1、第2のAGC用いて和信号及び差信号の信号レベルを制御し、角度誤差の検出を行うにあたり、差信号側の第2の可変増幅器32bに和信号を供給し和信号側の第1の可変増幅器32aのゲインと揃える操作を行う。この結果、2つの異なる第1、第2のAGCのゲインを自動的に揃えることができる。
【0057】
ここで、各実施形態に係る角度誤差検出装置12、12bの適用対処は、通信用の追尾受信システムに限定されない。例えばレーダーシステム内に本発明の角度誤差検出装置12、12bを設けてもよい。この場合は、追尾対象8は探知目標となり、追尾対象8からの周波数信号は、探知対象に周波数信号を照射して、反射された信号となる。
【符号の説明】
【0058】
1 追尾受信システム
11 アンテナ
12、12a、12b
角度誤差検出装置
2a、2b 受信部
21、22 加算部
32a 第1の可変増幅器
32b 第2の可変増幅器
36 信号切替部
42 角度誤差検出部
432a 第1のAGC制御部
432b 第2のAGC制御部
8 追尾対象
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7