(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022181644
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】遠心ブレーキ
(51)【国際特許分類】
F16D 59/00 20060101AFI20221201BHJP
E06B 9/322 20060101ALN20221201BHJP
【FI】
F16D59/00 A
E06B9/322
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021088694
(22)【出願日】2021-05-26
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-04-11
(71)【出願人】
【識別番号】000103976
【氏名又は名称】株式会社オリジン
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100102417
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100202496
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿角 剛二
(74)【代理人】
【識別番号】100194629
【弁理士】
【氏名又は名称】小嶋 俊之
(74)【代理人】
【識別番号】100202692
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 吉文
(72)【発明者】
【氏名】池川 汐里
【テーマコード(参考)】
2E043
3J058
【Fターム(参考)】
2E043AA00
2E043AA04
2E043BC02
2E043BE15
3J058AA03
3J058AA07
3J058AA13
3J058AA17
3J058AA24
3J058AA30
3J058AA37
3J058AB30
3J058BA46
3J058BA61
3J058CA03
3J058CC06
3J058FA49
(57)【要約】
【課題】支持軸の両端が夫々端板に接続固定された状態で一体的に成形される構成であっても、ウェイトを支持軸に充分容易に装着することができる、遠心ブレーキを提供すること。
【解決手段】支持軸18の断面形状は、基準円42の周縁の一部をなす円弧状外周部18aと上記基準円の周縁の一部の径を局所的に低減させた低減部18bとを有し、ウェイト30において回転体6の支持軸18が挿通される軸穴46の断面形状は、上記基準円の周縁の一部をなす円弧状内周部46aとこの円弧状内周部の両端から軸方向に対して垂直方向に延出して連通溝48を規定する一対の溝規定部46bとを有し、連通溝48はウェイト30の外周面において開放されており、支持軸18の低減部18bを
軸穴46の溝規定部46bに対向させることで、支持軸18は連通溝48に進入して支持軸18の円弧状外周部18aが軸穴46の円弧状内周部46bと面接触可能となる様に構成する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面円形の内周面を有する筒状のハウジングと、前記ハウジングの内側に配設される回転体とを具備し、前記回転体は前記ハウジングの前記内周面の中心軸を軸に回転可能であり、
前記回転体は前記中心軸に対して偏心して軸方向に延びる支持軸を有し、前記支持軸にはウェイトが旋回可能に軸支されており、
前記回転体が回転すると、前記ウェイトが前記支持軸を中心に旋回して前記ウェイトの外周面が前記ハウジングの前記内周面に当接する遠心ブレーキにおいて、
前記支持軸の断面形状は、基準円の周縁の一部をなす円弧状外周部と前記基準円の周縁の一部の径を局所的に低減させた低減部とを有し、
前記ウェイトにおいて前記支持軸が挿通される軸穴の断面形状は、前記基準円の周縁の一部をなす円弧状内周部と前記円弧状内周部の両端から軸方向に対して垂直方向に延出して連通溝を規定する一対の溝規定部とを有し、前記連通溝は前記ウェイトの外周面において開放されており、
前記支持軸の前記低減部を所要とおりに前記連通溝に整合させることで、前記支持軸は前記連通溝に進入して前記支持軸の前記円弧状外周部が前記軸穴の前記円弧状内周部と面接触可能となる、ことを特徴とする遠心ブレーキ。
【請求項2】
前記低減部は前記基準円の直径方向両側において平行に直線状に延びる一対の平坦面である、請求項1に記載の遠心ブレーキ。
【請求項3】
前記連通溝の溝幅は前記ウェイトの外周面に向かって漸次増大せしめられる、請求項1又は2に記載の遠心ブレーキ。
【請求項4】
前記回転体は軸方向に間隔をおいて配置された2つの端板を備え、前記支持軸の両端が前記2つの端板に接続された状態で一体成形される、請求項1乃至3のいずれかに記載の遠心ブレーキ。
【請求項5】
前記支持軸には複数の前記ウェイトが軸方向に直列に軸支されていると共に、前記回転体には前記回転体に対する周方向への移動は阻止されるが軸方向への移動は許容される調整部材が接続されており、前記調整部材は前記ウェイトの外周面と前記ハウジングの前記内周面との間に選択的に進入可能である、請求項1乃至4のいずれかに記載の遠心ブレーキ。
【請求項6】
前記回転体と前記調整部材との間には、前記回転体に対する前記調整部材の軸方向位置を段階的に調整可能な軸方向係合機構が設けられている、請求項5に記載の遠心ブレーキ。
【請求項7】
前記回転体には増速機が接続されている、請求項1乃至6のいずれかに記載の遠心ブレーキ。
【請求項8】
断面円形の内周面を有する筒状のハウジングと、前記ハウジングの内側に配設される回転体とを具備し、前記回転体は前記ハウジングの前記内周面の中心軸を軸に回転可能であり、
前記回転体は前記中心軸に対して偏心して軸方向に延びる支持軸を有し、前記支持軸にはウェイトが旋回可能に軸支されており、
前記回転体が回転すると、前記ウェイトが前記支持軸を中心に旋回して前記ウェイトの外周面が前記ハウジングの前記内周面に当接する遠心ブレーキを製造する際の、前記支持軸への前記ウェイトの装着方法において、
前記支持軸の断面形状は、基準円の周縁の一部をなす円弧状外周部と前記基準円の周縁の一部の径を局所的に低減させた低減部とを有し、
前記ウェイトにおいて前記支持軸が挿通される軸穴の断面形状は、前記基準円の周縁の一部をなす円弧状内周部と前記円弧状内周部の両端から軸方向に対して垂直方向に延出して連通溝を規定する一対の溝規定部とを有し、前記連通溝は前記ウェイトの外周面において開放されており、
前記ウェイトは、前記支持軸が前記連通溝に進入して前記支持軸の前記円弧状外周部が前記軸穴の前記円弧状内周部と面接触した後に、前記支持軸に対して所定の方向に旋回させられる、ことを特徴とする装着方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠心ブレーキに関する。
【背景技術】
【0002】
室内の窓際には日射を避ける等の目的からブラインドが配設されることがある。ブラインドは水平方向に延びるスラットを有し、スラットは上下方向に多数配置され、多数のスラットは夫々昇降コード(操作コードと称されることもある)によって上下方向に接続される。ブラインドは更に、最上端に位置するスラットの更に上方に配置される巻き取り機構と、最下端に位置するスラットの更に下方に配置されるボトムレール(ボトムパイプ或いはウェイトバーと称されることもある)とを備え、昇降コードの一端が巻き取り機構に他端がボトムレールに夫々接続される。かようなブラインドにあっては、巻き取り機構を操作して昇降コードを巻き取ることでボトムレールは上昇し、巻き取り機構が備える適宜のロック機構を作動させることでボトムレールは上昇した任意の位置で保持される。そして、上記ロック機構の作動を解除すればボトムレールは降下する。ここで、上記ロック機構の作動を解除するとボトムレールは自由落下してしまうことから、その降下速度を低減させるべく巻き取り機構には適宜のブレーキ機構が組み込まれることがある。このようなブレーキ機構としては周知の遠心ブレーキが採用されることが多い。
【0003】
下記特許文献1には、遠心ブレーキの一例として、断面円形の内周面を有する筒状のハウジングと、前記ハウジングの内側に配設される回転体とを具備し、前記回転体は前記ハウジングの前記内周面の中心軸を軸に回転可能であり、前記回転体は前記中心軸に対して偏心して軸方向に延びる支持軸を有し、前記支持軸にはウェイトが旋回可能に軸支されており、前記回転体が回転すると、前記ウェイトが前記支持軸を中心に旋回して前記ウェイトの外周面が前記ハウジングの前記内周面に当接する遠心ブレーキが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
然しながら、特許文献1に開示された遠心ブレーキにあっては、ウェイトを軸支する支持軸が所謂片持ち梁状態で支持されていることから、回転体が回転すると、この回転に起因して生じるウェイトの遠心力によって支持軸の基端部には過大な剪断応力が加わり、かような剪断応力により支持軸が折損してしまう虞がある。
【0006】
ところで、本発明者は本願に先立って出願した特願2020-187961の明細書及び図面において、支持軸の両端が夫々端板に接続固定され、支持軸が所謂両持ち梁状態で支持される遠心ブレーキを提案した(以下「先行遠心ブレーキ」という)。この遠心ブレーキにあっては、支持軸が所謂両持ち梁状態で支持されていることに起因して、支持軸に負荷がかかっても支持軸の基端部にかかる剪断応力を低減させることができる。それ故に、回転体の回転に起因して生じるウェイトの遠心力によって支持軸が折損してしまうことは可及的に防止される。
【0007】
而して、上記先行遠心ブレーキも充分に満足し得るものではなく、次のとおりの解決すべき課題を有する。即ち、支持軸の両端が接続固定される2つの端板のうちの一方のみが支持軸の一端と接続固定された状態で一体的に成形され、ウェイトに形成された軸穴に支持軸が挿通せしめられた後に、上記一方の端板及び支持軸とは別体で成形された他方の端板に支持軸の他端が接続固定(圧入)される、つまり2つの端板は各別に成形されるため、部品点数が増大し、組み立て工程が煩雑となる。また、支持軸の両端は2つの端板によって接続固定されて支持軸は両持ち梁状態で支持されるものの、他方の端板は支持軸と一体成形されておらず、端板に形成された穴に支持軸の端部が圧入されるにすぎないことから、上記遠心力によって生じる支持軸のひずみに起因して圧入された支持軸の端部と端板との嵌合力が低下し、支持軸の強度を充分に確保することができなくなる虞もある。
【0008】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術的課題は、支持軸の両端が夫々端板に接続固定された状態で一体的に成形される構成であっても、ウェイトを支持軸に充分容易に装着することができる、新規且つ改良された遠心ブレーキを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、鋭意検討の結果、支持軸の断面形状は、基準円の周縁の一部をなす円弧状外周部と上記基準円の周縁の一部の径を局所的に低減させた低減部とを有し、ウェイトにおいて回転体の支持軸が挿通される軸穴の断面形状は、上記基準円の周縁の一部をなす円弧状内周部とこの円弧状内周部の両端から軸方向に対して垂直方向に延出して連通溝を規定する一対の溝規定部とを有し、連通溝はウェイトの外周面において開放されており、支持軸の低減部を所要とおりにウェイトの連通溝に整合させることで、支持軸は連通溝に進入して支持軸の円弧状外周部が軸穴の円弧状内周部と面接触可能となる様に構成することで、上記主たる技術的課題を達成できることを見出した。
【0010】
即ち、本発明の第一の局面によれば、上記主たる技術的課題を達成する遠心ブレーキとして、断面円形の内周面を有する筒状のハウジングと、前記ハウジングの内側に配設される回転体とを具備し、前記回転体は前記ハウジングの前記内周面の中心軸を軸に回転可能であり、
前記回転体は前記中心軸に対して偏心して軸方向に延びる支持軸を有し、前記支持軸にはウェイトが旋回可能に軸支されており、
前記回転体が回転すると、前記ウェイトが前記支持軸を中心に旋回して前記ウェイトの外周面が前記ハウジングの前記内周面に当接する遠心ブレーキにおいて、
前記支持軸の断面形状は、基準円の周縁の一部をなす円弧状外周部と前記基準円の周縁の一部の径を局所的に低減させた低減部とを有し、
前記ウェイトにおいて前記支持軸が挿通される軸穴の断面形状は、前記基準円の周縁の一部をなす円弧状内周部と前記円弧状内周部の両端から軸方向に対して垂直方向に延出して連通溝を規定する一対の溝規定部とを有し、前記連通溝は前記ウェイトの外周面において開放されており、
前記支持軸の前記低減部を所要とおりに前記連通溝に整合させることで、前記支持軸は前記連通溝に進入して前記支持軸の前記円弧状外周部が前記軸穴の前記円弧状内周部と面接触可能となる、ことを特徴とする遠心ブレーキが提供される。
【0011】
好ましくは、前記低減部は前記基準円の直径方向両側において平行に直線状に延びる一対の平坦面である。前記連通溝の溝幅は前記ウェイトの外周面に向かって漸次増大せしめられるのが好適である。前記回転体は軸方向に間隔をおいて配置された2つの端板を備え、前記支持軸の両端が前記2つの端板に接続された状態で一体成形されるのがよい。好適には、前記支持軸には複数の前記ウェイトが軸方向に直列に軸支されていると共に、前記回転体には前記回転体に対する周方向への移動は阻止されるが軸方向への移動は許容される調整部材が接続されており、前記調整部材は前記ウェイトの外周面と前記ハウジングの前記内周面との間に選択的に進入可能である。この場合には、前記回転体と前記調整部材との間には、前記回転体に対する前記調整部材の軸方向位置を段階的に調整可能な軸方向係合機構が設けられているのが好ましい。好適には、前記回転体には増速機が接続されている。
【0012】
また、本発明の第二の局面によれば、断面円形の内周面を有する筒状のハウジングと、前記ハウジングの内側に配設される回転体とを具備し、前記回転体は前記ハウジングの前記内周面の中心軸を軸に回転可能であり、
前記回転体は前記中心軸に対して偏心して軸方向に延びる支持軸を有し、前記支持軸にはウェイトが旋回可能に軸支されており、
前記回転体が回転すると、前記ウェイトが前記支持軸を中心に旋回して前記ウェイトの外周面が前記ハウジングの前記内周面に当接する遠心ブレーキを製造する際の、前記支持軸への前記ウェイトの装着方法において、
前記支持軸の断面形状は、基準円の周縁の一部をなす円弧状外周部と前記基準円の周縁の一部の径を局所的に低減させた低減部とを有し、
前記ウェイトにおいて前記支持軸が挿通される軸穴の断面形状は、前記基準円の周縁の一部をなす円弧状内周部と前記円弧状内周部の両端から軸方向に対して垂直方向に延出して連通溝を規定する一対の溝規定部とを有し、前記連通溝は前記ウェイトの外周面において開放されており、
前記ウェイトは、前記支持軸が前記連通溝に進入して前記支持軸の前記円弧状外周部が前記軸穴の前記円弧状内周部と面接触した後に、前記支持軸に対して所定の方向に旋回させられる、ことを特徴とする装着方法が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明の遠心ブレーキにあっては、ウェイトを旋回可能に軸支する支持軸の断面形状は、基準円の周縁の一部をなす円弧状外周部と上記基準円の周縁の一部の径を局所的に低減させた低減部とを有し、ウェイトにおいて回転体の支持軸が挿通される軸穴の断面形状は、上記基準円の周縁の一部をなす円弧状内周部とこの円弧状内周部の両端から軸方向に対して垂直方向に延出して連通溝を規定する一対の溝規定部とを有し、上記連通溝はウェイトの外周面において開放されており、支持軸の低減部を所要とおりにウェイトの連通溝に整合させることで、支持軸は連通溝に進入して支持軸の円弧状外周部が軸穴の円弧状内周部と面接触可能であることから、ウェイトは、支持軸が連通溝に進入して支持軸の円弧状外周部が軸穴の円弧状内周部と面接触した後に、支持軸に対して所定の方向に旋回させられることで支持軸に装着される。それ故に、支持軸の両端が夫々端板に接続固定された状態で一体的に成形される構成であっても、ウェイトを支持軸に充分容易に装着することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に従って構成された遠心ブレーキの全体構成を示す図。
【
図2】
図1に示す遠心ブレーキを構成部品毎に分解して示す斜視図。
【
図3】
図1に示す遠心ブレーキのハウジングを単体で示す図。
【
図4】
図1に示す遠心ブレーキの回転体を単体で示す図。
【
図5】
図1に示す遠心ブレーキのウェイトを単体で示す図。
【
図6】
図5に示すウェイトを回転体の支持軸に装着する工程を説明する図。
【
図7】
図1に示す遠心ブレーキの調整部材を単体で示す図。
【
図8】
図1に示す遠心ブレーキの増速機の全体構成を示す図。
【
図9-1】
図1に示す遠心ブレーキの作動を説明するための図。
【
図9-2】
図1に示す遠心ブレーキの作動を説明するための図。
【
図9-3】
図1に示す遠心ブレーキの作動を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に従って構成された遠心ブレーキの好適実施形態を図示している添付図面を参照して、更に詳細に説明する。なお、以下の説明における「軸方向片側」及び「軸方向他側」とは、特に指定しない限り、
図1のA-A断面に示される状態を基準として、「軸方向片側」は同図において左側を、「軸方向他側」は同図において右側のことを言う。
【0016】
図1及び
図2を参照して説明すると、全体を番号2で示す遠心ブレーキは、筒状のハウジング4と回転体6とを具備している。
【0017】
図1及び
図2と共に
図3を参照して説明すると、ハウジング4は比較的硬質の合成樹脂により成形された円筒形状であって軸方向に貫通しており、断面円形の内周面8を有している。内周面8の中心軸をoで示す。ハウジング4の内周面8の軸方向片側端部には、径方向内側に向かって突出する円環形状の支持突条9が形成されている。また、
図3と共に
図2を参照することによって理解されるとおり、ハウジング4の外周面の軸方向片側端部には、直径方向の両側において軸方向片側に向かって直線状に延びる一対の延出片10が形成されており、一対の延出片10の各々の延出端部の外面には軸方向係止突起12が形成されている。ハウジング4の外周面の軸方向片側端部には更に、直径方向の両側において径方向外方に突出する一対の耳部14が形成されており、一対の耳部14の各々には軸方向片側に向かって突出する断面円形の位置決めピン16が形成されている。延出片10及び位置決めピン16は周方向に交互に90度の角度間隔をおいて配置されている。かようなハウジング4は適宜の固定手段によって固定される。
【0018】
図1に示すとおり、回転体6はハウジング4の内側に配設されて、中心軸oを軸に回転可能である。
図1と共に
図2及び
図4を参照して説明すると、回転体6は合成樹脂製であって、中心軸oに対して偏心して軸方向に延びる支持軸18を有する。図示の実施形態においては、支持軸18は直径方向の両側に1つずつ設けられている。かような支持軸18については後に更に言及する。図示の実施形態においては、回転体6は軸方向に間隔をおいて配置された2つの端板20a及び20bを備えており、支持軸18の両端は2つの端板20a及び20bに接続されている。端板20a及び20bは共に円形であって中心軸oに対して実質上垂直に配置されており、端板20a及び20bの中心は共に中心軸o上に位置する。端板20a及び20bは中心軸oに沿って軸方向に延びる接続円筒壁22によっても接続されている。端板20aの軸方向片側面には中心軸oと共通の回転軸を有する太陽歯車24が設けられている。
図1のA-A断面図に示されるとおり、端板20aの軸方向他側面の外周縁部はハウジング4の支持突条9の軸方向片側面と対向し、これにより回転体6がハウジング4に対して軸方向他側へ移動することは阻止される。一方、回転体6がハウジング4に対して軸方向片側へ移動することは、ハウジング4に固定される後述するシールド部材90及びこれの内側に配置されるキャリア体71によって阻止される。端板20bの外周縁部には、周方向に延在する円弧状の切り欠き26が周方向に等角度間隔をおいて4つ形成されており、周方向に隣接する2つの切り欠き26の間には円弧状の係合突起28が残留せしめられている。かような回転体6は射出成形により一体成形される。つまり、支持軸18の両端は2つの端板20a及び20bに接続された状態、換言すれば両持ち梁状態で一体成形される。
【0019】
図1の断面図に示すとおり、回転体6の支持軸18にはウェイト30(30a乃至30c)が軸支されている。図示の実施形態においては、2つの支持軸18の各々に3つのウェイト30が軸方向に直列に軸支されている。以下の説明において軸方向に直列に配置された3つずつのウェイト30の夫々について言及する際には、軸方向片側から軸方向他側に向かってa乃至cを付して言及する。
図1と共に
図2及び
図5を参照して説明を続けると、図示の実施形態においては、ウェイト30は金属製の主部32と、比較的軟質の合成樹脂からなる摺動片34とから構成されている。主部32は平面視において周方向に180度よりも幾分小さい角度範囲に亘って延在する円弧形状であって、所要軸方向幅を備えている。主部32の外周面の所要部位には軸方向に延びる装着溝38が形成されており、この装着溝38に摺動片34が適宜の固定方法によって交換可能に装着される。主部32の外周面の軸方向片側端部には、外径を幾分低減させることによって形成される段部40が周方向に連続して設けられている。摺動片34は断面が略矩形で軸方向に直線状に延在している。
【0020】
ここで、
図4のX部拡大図を参照して説明すると、本発明に従って構成された遠心ブレーキにあっては、回転体6の支持軸18の断面形状は、一点鎖線で示す基準円42の周縁の一部をなす円弧状外周部18aと基準円42の周縁の一部の径を局所的に低減させた低減部18bとを有する。図示の実施形態においては、円弧状外周部18a及び低減部18bは共に基準円42の直径方向両側に一対ずつ設けられており、円弧状外周部18aと低減部18bは周方向に交互に位置する。円弧状外周部18a及び低減部18bは夫々一つずつ設けられていてもよい。円弧状外周部18aは周方向に180度の角度範囲を超えて延在する。円弧状外周部18aは90度乃至150度の角度範囲に亘って延在するのがよく、図示の実施形態においては、一対の円弧状外周部18aの各々は周方向に略120度ずつ併せて略240度の角度範囲に亘って延在している。図示の実施形態においては、一対の低減部18bの各々は相互に平行な平坦面であって、基準円42の中心44からの距離は等しい。
図4のB-B断面図も参照することによって理解されるとおり、平坦面である一対の低減部18bの各々は同図において時計方向に向かって径方向内側に幾分傾斜している。
【0021】
次に、
図5(a)左図を参照して説明すると、ウェイト30の主部32には支持軸18が挿通される軸穴46が形成されている。軸穴46の断面形状は、基準円42の周縁の一部をなす円弧状内周部46aとこの円弧状内周部46aの両端から軸方向に対して垂直方向に延出する一対の溝規定部46bとを有しており、一対の溝規定部46bはウェイト30の外周面において開放される連通溝48を規定している。円弧状内周部46aは周方向に180度の角度範囲を超えて延在する。円弧状内周部46aは205度乃至265度の角度範囲に亘って延在するのがよく、図示の実施形態においては略235度の角度範囲に亘って延在している。連通溝48の溝幅Dは支持軸18において基準円42の中心44を通過する最小径d(
図4のX部拡大図も参照されたい)と対応し、支持軸18の低減部18bを連通溝48に整合、即ち低減部18bを溝規定部46bに対向させることで、支持軸18は連通溝48に進入して支持軸18の円弧状外周部18aが軸穴46の円弧状内周部46aと面接触可能となる。図示の実施形態においては、一対の溝規定部46bの各々は円弧状内周部46aの両端から軸方向に対して垂直方向に相互に離隔して延出しており、これにより連通溝48の溝幅Dはウェイト30の外周面に向かって漸次増大せしめられている。そして、溝幅Dの最小値はdと同一若しくはこれよりも僅かに大きく設定されている。
【0022】
本発明に従って構成された遠心ブレーキでは、回転体6の支持軸18及びウェイト30が上述したとおりの構成であることから、
図6に示すとおり、支持軸18の外周面に対してウェイト30の連通溝48の開放端を所要とおりに配置した後に支持軸18に対してウェイト30を移動させることで支持軸18は連通溝48に進入し(同図(a))、支持軸18の円弧状外周部18aは軸穴46の円弧状内周部46aに面接触する(同図(b))。しかる後に支持軸18を旋回中心としてウェイト30を中心軸oに向かってつまり同図において時計方向に旋回せしめる(同図(c))。支持軸18の円弧状外周部18a及び軸穴46の円弧状内周部46aはいずれも共通の基準円42の周縁の一部であることから、ウェイト30は支持軸18を旋回中心として旋回可能である。かくしてウェイト30は支持軸18に装着される。ここで、
図6(b)に示す状態における支持軸18に対するウェイト30の旋回角度は、後に言及するウェイト30の外周面がハウジング4の内周面8と当接する旋回角度よりも大きい。ここでいう「旋回角度」は、回転体6が回転していない状態つまり
図1のC-C断面乃至E-E断面に示される状態を基準とする。従って、ウェイト30は支持軸18に対し、ウェイト30の外周面がハウジング4の内周面8と当接する旋回角度よりも大きい旋回角度で支持軸18に装着される。換言すれば、ウェイト30は、(ウェイト30の)外周面がハウジング4の内周面8と当接するときよりも、(ウェイト30の)内周面が回転体6の中心軸oから離隔した状態で支持軸18に装着される。ウェイト30が支持軸18に装着された後に、回転体6及びウェイト30はハウジング4と組み合わされる。
【0023】
従って、本発明に従って構成された遠心ブレーキにあっては、ウェイト30は、これを軸支する回転体6の支持軸18が連通溝48に進入して支持軸18の円弧状外周部18aが軸穴46の円弧状内周部46aと面接触した後に、支持軸18に対して所定の方向に旋回させられることで支持軸18に装着される。それ故に、支持軸18の両端が夫々端板20a及び20bに接続固定された状態で一体的に成形される構成であっても、ウェイト30を支持軸18に充分容易に装着することができる。図示の実施形態においては、連通溝48の溝幅Dが軸穴46から開放端に向かって漸次増大せしめられているため、支持軸18を連通溝48に容易に案内することができる。
【0024】
再び
図1を参照して説明すると、回転体6には調整部材52が接続されている。
図1と共に
図2及び
図7を参照して説明すると、調整部材52は合成樹脂製であって全体的に円筒形状である。調整部材52は、軸方向他側端部に位置して径方向肉厚が比較的厚い把手部54と、把手部54以外の部分であって径方向肉厚が比較的薄い作用部56とに区画される。把手部54の外周面には周方向に等角度間隔をおいて複数個(図示の実施形態においては6個)の軸方向に延びる凹溝58が形成されている。把手部54の径方向肉厚が比較的厚く従って把手部54の剛性が比較的高いこと、及び把手部54には凹溝58が形成されていることに起因して、後述するとおり使用者は把手部54を容易に把手できる。
図7の上段右側面図に示されるとおり、把手部54には肉抜き穴60も適宜形成されている。作用部56には径方向に貫通して軸方向に直線状に延びる係合溝62が180度の角度間隔をおいて2つ形成されている。係合溝62の溝幅は回転体6の端板20bに形成された係合突起28の周方向幅よりも僅かに大きく、係合突起28が係合溝62に嵌り込んでこれと周方向に係合することで調整部材52は回転体6と一体となって回転可能となる。換言すれば、係合溝62と係合突起28との係合により回転体6に対する調整部材52の周方向への移動は阻止される。作用部56には更に径方向に貫通して軸方向に直線状に延びる補助溝64も180度の角度間隔をおいて2つ形成されている。補助溝64の溝幅は係合突起28の周方向幅よりも僅かに小さく(従って係合溝62の溝幅よりも僅かに小さく)、補助溝64及び係合溝62は周方向に90度の角度間隔をおいて交互に配置されている。補助溝64の軸方向所要位置には、溝幅が周方向両側に局所的に幾分増大せしめられた3つの係合穴66a乃至66cが形成されている。3つの係合穴66a乃至66cの軸方向位置は3個のウェイト30a乃至30cの軸方向位置と対応する。係合穴66a乃至66cの周方向幅は係合突起28の周方向幅よりも僅かに大きく、係合溝62に嵌り込んでいない係合突起28が係合穴66a乃至66cに嵌り込むことで調整部材52は回転体6と軸方向に係合し、回転体6に対する調整部材52の軸方向への移動は阻止される。このことから、係合突起28及び係合穴66a乃至66cは、回転体6に対する調整部材52の軸方向位置を段階的に調整することのできる軸方向係合機構を構成する。
【0025】
図1に示すとおり、回転体6には更に増速機68も接続されている。
図1と共に
図2及び
図8を参照して説明すると、増速機68は遊星歯車機構であって、これは回転体6に形成されている太陽歯車24、太陽歯車24と噛み合う遊星歯車70、遊星歯車70を回転可能に軸支すると共に自身も中心軸oを中心として回転可能なキャリア体71、及び遊星歯車70と噛み合う固定リング歯車72を含む。図示の実施形態においては、3個の遊星歯車70がキャリア体71によって軸支されている。キャリア体71は中心軸oに対して垂直に配置される円形のキャリア板76と、キャリア板76から軸方向に延出して遊星歯車70を軸支する3つのキャリア軸78と、周方向に隣接する2つのキャリア軸78の間に夫々設けられて軸方向に直線状に延出する3つの接続柱80とを備え、3つのキャリア軸78の夫々が遊星歯車70を軸支した状態で、遊星歯車70を挟んでキャリア板76とは軸方向の反対側に配置されるキャリア補助板82と組み合わされる。キャリア板76及びキャリア補助板82によって遊星歯車70は軸方向の両側から保持される。キャリア補助板82にはキャリア軸78の先端部が挿入される丸穴84及び接続柱80の先端部が挿入される円弧穴86が夫々形成されており、キャリア補助板82はキャリア体71と一体となって中心軸oの周りを自転する。キャリア板76の中央には軸方向に貫通する正6角形の接続穴88が形成されており、この接続穴88に例えばブラインドの巻き取り機構の回転軸(
図9-1乃至
図9-3において二点鎖線で示す)が挿通されて回転が伝達される。
【0026】
固定リング歯車72はハウジング4の軸方向片側に直列に配置されてこれに固定されるシールド部材90の内周面に形成されている。シールド部材90は略正方形のシールド端板92を有している。シールド端板92の中央部の軸方向他側面には円形の凹所94が形成されており、この凹所94にはキャリア体71が中心軸oの周りを自転可能な状態で嵌め合わされる。シールド端板92の中央には軸方向に貫通する円形の貫通穴96も形成されており、この貫通穴96を通って上述した回転軸はキャリア板76の接続穴88に挿通される。シールド端板92の軸方向他側面には、凹所94の外周縁を囲繞して軸方向他側に向かって軸方向に延びるシールド筒壁98が設けられており、固定リング歯車72はシールド筒壁98の内周面に形成されている。シールド筒壁98を軸方向他側から見たとき、つまり
図8(a)左図において直径方向の両側に位置する一方の一対の角部はシールド端板92の角部と整合し、かかる一対の角部には夫々、ハウジング4に形成された位置決めピン16が挿入される位置決め穴100が形成されている。一方、直径方向の両側に位置する他方の一対の角部はシールド端板92の角部よりも径方向内側に偏倚されてその外周面は円弧形状にせしめられており、円弧形状にせしめられた外周面には夫々軸方向に延びる一対の支持突条102が周方向に間隔をおいて形成されている。一対の支持突条102の各々の間の周方向角度領域のシールド端板92には、円弧形状にせしめられたシールド筒壁98の外周面に沿って軸方向に貫通する円弧穴104が形成されており、円弧穴104の軸方向他側端部にはハウジング4に形成された軸方向係止突起12と係止可能な軸方向被係止突起106が形成されている。従って、シールド部材90は、位置決めピン16と位置決め穴100との協働及び軸方向係止突起12と軸方向被係止突起106との協働によってハウジング4に固定される。
【0027】
図示の実施形態においては、太陽歯車24の歯数は18、これと噛み合う遊星歯車70の歯数は12、これと噛み合う固定リング歯車72の歯数は42であって、キャリア体71が入力部材に、太陽歯車24が出力部材に相当することから、以下の数式より、キャリア体71の回転は10/3倍に増速されて太陽歯車24に伝達される。なお、各歯車の歯数を変更すれば増速比を任意に調整することができることは多言を要さない。
【数1】
但し、
Zs:太陽歯車の歯数、Zr:リング歯車の歯数、
ns:太陽歯車の回転数、nr:リング歯車の回転数、nc:キャリア体の回転数
【0028】
次に、
図1と共に
図9-1乃至
図9―3を参照して、本発明に従って構成された遠心ブレーキ2の作動について説明する。
図1には、回転体6の端板20bに形成された係合突起28が調整部材52に形成された3つの係合穴66a乃至66cのうち最も軸方向他側に位置する係合穴66aに係合され、調整部材52の作用部56は3段のウェイト30a乃至30cのうち軸方向他側に位置する2段のウェイト30b及び30cとハウジング4の内周面8との間に進入している状態が示されている。
図1に示す状態では、回転体6は回転しておらず、ウェイト30a乃至30cの外周面はハウジング4の内周面8から離隔している。
【0029】
図1に示す状態から増速機68のキャリア体71に接続された回転軸が回転すると、キャリア体71の回転は増速して回転体6に伝達される。このとき、回転体6が反時計方向(A-A断面の右方向から見て)に回転すると、回転体6と共に調整部材52がこれと一体となって回転し、支持軸18によって支持された全てのウェイト30a乃至30cは遠心力によって支持軸18を軸として径方向外方に旋回しようとする。然しながら、ウェイト30b及び30cとハウジング4の内周面8との間には調整部材52さらに詳しくはその作用部56が進入していることから、ウェイト30b及び30cが上記遠心力によって支持軸18を軸として径方向外方に旋回することは阻止され、
図9-1に示すとおり、ハウジング4の内周面8との間に調整部材52が進入していないウェイト30aのみが上記遠心力によって支持軸18を軸として径方向外方に旋回する。ウェイト30aが旋回するとこれに装着された摺動片34がハウジング4の内周面8と当接し、摺動片34がハウジング4の内周面8に対して摺動する。これにより、回転体6にはウェイト30の摺動片34とハウジング4の内周面8との間の摩擦によるブレーキ(制動トルク)が作用する。図示の実施形態においては、ハウジング4は比較的硬質の合成樹脂製であると共にウェイト30の摺動片34は比較的軟質の合成樹脂製であることから、交換可能な摺動片34のみが偏摩耗してハウジング4の内周面が摩耗することは防止される。
【0030】
図示の実施形態においては、調整部材52を回転体6に対して軸方向に移動させることで、回転体6が回転した際にハウジング4の内周面8に当接するウェイト30の数を増減することができ、これにより上記制動トルクの大きさを段階的に調整することが可能である。調整部材52を軸方向に移動させるには、調整部材52の把手部54を把手して行う。
【0031】
回転体6が回転した際にこれに作用する制動トルクの大きさを
図9-1に示された状態よりも大きくするには、回転体6に対して調整部材52を軸方向他側に移動させて、支持軸18を軸として径方向外方に旋回可能なウェイト30の数を増やす。
図9-2に示すとおり、回転体6の端板20bに形成された係合突起28が調整部材52に形成された3つの係合穴66a乃至66cのうち軸方向中間に位置する係合穴66bに係合されれば、調整部材52の作用部56は3段のウェイト30a乃至30cのうち軸方向他側に位置する1段のウェイト30cとハウジング4の内周面8との間にのみ進入し、上記遠心力によってウェイト30aと共にウェイト30bも支持軸18を軸として径方向外方に旋回可能となり、回転体6にかかる制動トルクは増大される。
図9-3に示すとおり、回転体6の端板20bに形成された係合突起28が調整部材52に形成された3つの係合穴66a乃至66cのうち軸方向片側に位置する係合穴66cに係合されれば、調整部材52の作用部56はウェイト30とハウジング4の内周面8との間から完全に退去し、上記遠心力によってウェイト30a及びウェイト30bと共にウェイト30cも支持軸18を軸として径方向外方に旋回可能となり、回転体6にかかる制動トルクはより一層増大される。
【0032】
以上、本発明に従って構成された遠心ブレーキについて添付した図面を参照して詳述したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明を逸脱しない範囲内において適宜の修正や変更が可能である。例えば、図示の実施形態においては、2つの支持軸18の各々にウェイト30は軸方向に直列に3つずつ設けられていたが、支持軸18及びウェイト30の数は適宜変更することができる。また、図示の実施形態においては、回転体6が反時計方向(
図9-1のA-A断面の右方向から見て)に回転した際にウェイト30が支持軸18を軸として径方向外方に旋回したが、ウェイト30が表裏反転した状態で支持軸18にされれば、回転体が反対方向つまり時計方向に回転した際にウェイトが支持軸18を軸として径方向外方に旋回するようになる。更に、図示の実施形態においては、同一段における2つのウェイトは中心軸oを中心として点対称に配置されているが、同一段における2つのウェイトを直径方向に対して線対称に配置すれば、回転体が正逆いずれの方向に回転した場合であっても回転体に制動トルクを作用させることができる。この場合には、回転体の回転方向に応じて上記2つのウェイトのいずれか一方のみがハウジングの内周面に対して摺動する。更に、必要な制動トルクが小さい場合には、ウェイトを合成樹脂により成形することも可能であり、この場合には、ウェイトを上述した摺動片と同じ合成樹脂で成形し、ウェイトの主部と摺動片を一体成形することもあり得る。
【符号の説明】
【0033】
2:遠心ブレーキ
4:ハウジング
6:回転体
8:(ハウジングの)内周面
18:支持軸
18a:(支持軸の)円弧状外周部
18b:(支持軸の)低減部
20a及び20b:端板
30(30a乃至30c):ウェイト
42:基準円
46:軸穴
46a:(軸穴の)円弧状内周部
46b:(軸穴の)溝規定部
48:連通溝
52:調整部材
【手続補正書】
【提出日】2022-02-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項1
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項1】
断面円形の内周面を有する筒状のハウジングと、前記ハウジングの内側に配設される回転体とを具備し、前記回転体は前記ハウジングの前記内周面の中心軸を軸に回転可能であり、
前記回転体は前記中心軸に対して偏心して軸方向に延びる支持軸を有し、前記支持軸にはウェイトが旋回可能に軸支されており、
前記回転体が回転すると、前記ウェイトが前記支持軸を中心に旋回して前記ウェイトの外周面が前記ハウジングの前記内周面に当接する遠心ブレーキにおいて、
前記支持軸の断面形状は、基準円の周縁の一部をなす円弧状外周部と前記基準円の周縁の一部の径を局所的に低減させた低減部とを有し、
前記ウェイトにおいて前記支持軸が挿通される軸穴の断面形状は、前記基準円の周縁の一部をなす円弧状内周部と前記円弧状内周部の両端から軸方向に対して垂直方向に延出して連通溝を規定する一対の溝規定部とを有し、前記連通溝は前記ウェイトの外周面において開放されており、
前記支持軸の前記低減部を前記軸穴の前記溝規定部に対向させることで、前記支持軸は前記連通溝に進入して前記支持軸の前記円弧状外周部が前記軸穴の前記円弧状内周部と面接触可能となる、ことを特徴とする遠心ブレーキ。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
本発明者は、鋭意検討の結果、支持軸の断面形状は、基準円の周縁の一部をなす円弧状外周部と上記基準円の周縁の一部の径を局所的に低減させた低減部とを有し、ウェイトにおいて回転体の支持軸が挿通される軸穴の断面形状は、上記基準円の周縁の一部をなす円弧状内周部とこの円弧状内周部の両端から軸方向に対して垂直方向に延出して連通溝を規定する一対の溝規定部とを有し、連通溝はウェイトの外周面において開放されており、支持軸の低減部を軸穴の溝規定部に対向させることで、支持軸は連通溝に進入して支持軸の円弧状外周部が軸穴の円弧状内周部と面接触可能となる様に構成することで、上記主たる技術的課題を達成できることを見出した。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
即ち、本発明の第一の局面によれば、上記主たる技術的課題を達成する遠心ブレーキとして、断面円形の内周面を有する筒状のハウジングと、前記ハウジングの内側に配設される回転体とを具備し、前記回転体は前記ハウジングの前記内周面の中心軸を軸に回転可能であり、
前記回転体は前記中心軸に対して偏心して軸方向に延びる支持軸を有し、前記支持軸にはウェイトが旋回可能に軸支されており、
前記回転体が回転すると、前記ウェイトが前記支持軸を中心に旋回して前記ウェイトの外周面が前記ハウジングの前記内周面に当接する遠心ブレーキにおいて、
前記支持軸の断面形状は、基準円の周縁の一部をなす円弧状外周部と前記基準円の周縁の一部の径を局所的に低減させた低減部とを有し、
前記ウェイトにおいて前記支持軸が挿通される軸穴の断面形状は、前記基準円の周縁の一部をなす円弧状内周部と前記円弧状内周部の両端から軸方向に対して垂直方向に延出して連通溝を規定する一対の溝規定部とを有し、前記連通溝は前記ウェイトの外周面において開放されており、
前記支持軸の前記低減部を前記軸穴の前記溝規定部に対向させることで、前記支持軸は前記連通溝に進入して前記支持軸の前記円弧状外周部が前記軸穴の前記円弧状内周部と面接触可能となる、ことを特徴とする遠心ブレーキが提供される。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0013】
本発明の遠心ブレーキにあっては、ウェイトを旋回可能に軸支する支持軸の断面形状は、基準円の周縁の一部をなす円弧状外周部と上記基準円の周縁の一部の径を局所的に低減させた低減部とを有し、ウェイトにおいて回転体の支持軸が挿通される軸穴の断面形状は、上記基準円の周縁の一部をなす円弧状内周部とこの円弧状内周部の両端から軸方向に対して垂直方向に延出して連通溝を規定する一対の溝規定部とを有し、上記連通溝はウェイトの外周面において開放されており、支持軸の低減部を軸穴の溝規定部に対向させることで、支持軸は連通溝に進入して支持軸の円弧状外周部が軸穴の円弧状内周部と面接触可能であることから、ウェイトは、支持軸が連通溝に進入して支持軸の円弧状外周部が軸穴の円弧状内周部と面接触した後に、支持軸に対して所定の方向に旋回させられることで支持軸に装着される。それ故に、支持軸の両端が夫々端板に接続固定された状態で一体的に成形される構成であっても、ウェイトを支持軸に充分容易に装着することができる。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0022
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0022】
本発明に従って構成された遠心ブレーキでは、回転体6の支持軸18及びウェイト30が上述したとおりの構成であることから、
図6に示すとおり、支持軸18の
低減部18bが軸穴46の溝規定部46bに対向するように配置した後に支持軸18に対してウェイト30を移動させることで支持軸18は連通溝48に進入し(同図(a))、支持軸18の円弧状外周部18aは軸穴46の円弧状内周部46aに面接触する(同図(b))。しかる後に支持軸18を旋回中心としてウェイト30を中心軸oに向かってつまり同図において時計方向に旋回せしめる(同図(c))。支持軸18の円弧状外周部18a及び軸穴46の円弧状内周部46aはいずれも共通の基準円42の周縁の一部であることから、ウェイト30は支持軸18を旋回中心として旋回可能である。かくしてウェイト30は支持軸18に装着される。ここで、
図6(b)に示す状態における支持軸18に対するウェイト30の旋回角度は、後に言及するウェイト30の外周面がハウジング4の内周面8と当接する旋回角度よりも大きい。ここでいう「旋回角度」は、回転体6が回転していない状態つまり
図1のC-C断面乃至E-E断面に示される状態を基準とする。従って、ウェイト30は支持軸18に対し、ウェイト30の外周面がハウジング4の内周面8と当接する旋回角度よりも大きい旋回角度で支持軸18に装着される。換言すれば、ウェイト30は、(ウェイト30の)外周面がハウジング4の内周面8と当接するときよりも、(ウェイト30の)内周面が回転体6の中心軸oから離隔した状態で支持軸18に装着される。ウェイト30が支持軸18に装着された後に、回転体6及びウェイト30はハウジング4と組み合わされる。