(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022181671
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】換気空調システム
(51)【国際特許分類】
F24F 11/65 20180101AFI20221201BHJP
F24F 11/66 20180101ALI20221201BHJP
F24F 11/77 20180101ALI20221201BHJP
F24F 7/08 20060101ALI20221201BHJP
F24F 110/10 20180101ALN20221201BHJP
F24F 110/12 20180101ALN20221201BHJP
F24F 110/70 20180101ALN20221201BHJP
【FI】
F24F11/65
F24F11/66
F24F11/77
F24F7/08 101J
F24F110:10
F24F110:12
F24F110:70
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021088730
(22)【出願日】2021-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】白川 奈穗
(72)【発明者】
【氏名】松原 大介
【テーマコード(参考)】
3L260
【Fターム(参考)】
3L260AA01
3L260AB02
3L260AB17
3L260BA26
3L260BA41
3L260CA04
3L260CA12
3L260CA17
3L260CA32
3L260CB23
3L260CB53
3L260CB62
3L260DA13
3L260EA07
3L260FA02
3L260FA20
3L260FB12
3L260FC03
(57)【要約】
【課題】良質な睡眠を得る上で有利になる換気空調システムを提供する。
【解決手段】換気空調システム1は、室内90を換気する換気運転を実行可能な換気装置2と、室内90を昇温させる暖房運転を実行可能な空調装置14と、室内90の空気中の二酸化炭素濃度を検出する二酸化炭素濃度センサ13と、二酸化炭素濃度センサ13から二酸化炭素濃度に関する情報を取得し、換気装置2および空調装置14を制御する制御手段と、を備える。制御手段は、室内90での対象者91の就寝中に二酸化炭素濃度が濃度閾値以上になると、換気装置2および空調装置14に対して第1制御を実行する。第1制御が実行されると、換気装置2の換気運転が開始または換気装置2の換気運転による換気量が増加し、且つ、空調装置14の暖房運転が開始または空調装置14の暖房運転による昇温量が増加する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内を換気する換気運転を実行可能な換気手段と、
前記室内を昇温させる暖房運転を実行可能な暖房手段と、
前記室内の空気中の二酸化炭素濃度を検出する二酸化炭素濃度検出手段と、
前記二酸化炭素濃度検出手段から前記二酸化炭素濃度に関する情報を取得し、前記換気手段および前記暖房手段を制御する制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記室内での対象者の就寝中に前記二酸化炭素濃度が濃度閾値以上になると、前記換気手段および前記暖房手段に対して第1制御を実行し、
前記第1制御が実行されると、前記換気手段の換気運転が開始または前記換気手段の換気運転による換気量が増加し、且つ、前記暖房手段の暖房運転が開始または前記暖房手段の暖房運転による昇温量が増加する換気空調システム。
【請求項2】
前記室内の気温を検出する室温検出手段を備え、
前記制御手段は、前記室温検出手段から前記室内の気温に関する情報を取得し、
前記第1制御の実行後に前記室内の気温が低下すると、前記室内の気温が前記第1制御の実行開始時点における前記室内の気温に達するように、前記換気手段および前記暖房手段を制御する請求項1に記載の換気空調システム。
【請求項3】
前記室内の気温を検出する室温検出手段を備え、
前記対象者の睡眠状態を検出する睡眠状態検出手段を備え、
前記制御手段は、前記室温検出手段から前記室内の気温に関する情報を取得し、前記睡眠状態検出手段から前記睡眠状態に関する情報を取得し、
前記第1制御の実行後に前記室内の気温が低下すると、前記対象者の就床時における前記室内の気温または前記暖房手段の設定温度に前記室内の気温が達するように、前記換気手段および前記暖房手段を制御する請求項1に記載の換気空調システム。
【請求項4】
前記対象者の位置を検知する人位置検知手段を備え、
前記制御手段は、前記人位置検知手段から前記対象者の位置に関する情報を取得し、前記換気手段および前記暖房手段の少なくとも一方の送風方向を、睡眠中の前記対象者を避ける方向とする請求項1から請求項3の何れか1項に記載の換気空調システム。
【請求項5】
前記対象者の睡眠状態を検出する睡眠状態検出手段を備え、
前記制御手段は、前記睡眠状態検出手段から前記睡眠状態に関する情報を取得し、前記対象者の起床が近くなると、前記室内の気温が前記暖房手段の設定温度で維持されるように前記暖房手段に暖房運転を実行させる請求項1または請求項2に記載の換気空調システム。
【請求項6】
前記対象者の睡眠状態を検出する睡眠状態検出手段を備え、
前記制御手段は、前記睡眠状態検出手段から前記睡眠状態に関する情報を取得し、前記対象者の起床が近くなると、前記対象者の睡眠状態が深睡眠でない時点で前記対象者に向けた送風が行われるように前記換気手段および前記暖房手段を制御する請求項1または請求項2に記載の換気空調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、換気空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、対象者が良質な睡眠を得るために、冷房運転と換気運転とを組み合わせる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された冷房運転と換気運転とを組み合わせる技術においては、冬季等の外気温度が室内温度よりも低い場合には対応できないという課題がある。
【0005】
本開示は、上述のような課題を解決するためのものである。本開示の目的は、良質な睡眠を得る上で有利になる換気空調システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る換気空調システムは、室内を換気する換気運転を実行可能な換気手段と、室内を昇温させる暖房運転を実行可能な暖房手段と、室内の空気中の二酸化炭素濃度を検出する二酸化炭素濃度検出手段と、二酸化炭素濃度検出手段から二酸化炭素濃度に関する情報を取得し、換気手段および暖房手段を制御する制御手段と、を備える。制御手段は、室内での対象者の就寝中に二酸化炭素濃度が濃度閾値以上になると、換気手段および暖房手段に対して第1制御を実行する。第1制御が実行されると、換気手段の換気運転が開始または換気手段の換気運転による換気量が増加し、且つ、暖房手段の暖房運転が開始または暖房手段の暖房運転による昇温量が増加する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、良質な睡眠を得る上で有利になる換気空調システムを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態1による換気空調システムが設けられた部屋を示す断面側面図である。
【
図2】実施の形態1による換気空調システムの機能ブロック図である。
【
図3】人が睡眠を開始してから起床するまでの間の睡眠状態の変化の一例を示す図である。
【
図4】実施の形態1による換気空調システムの就寝モードの動作例を示すフローチャートである。
【
図5】
図4に示すフローチャートによる就寝モードが実行された場合の室温及び二酸化炭素濃度の経時変化の例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。各図において共通または対応する要素には、同一の符号を付して、重複する説明を簡略化または省略する。
【0010】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1による換気空調システム1が設けられた部屋を示す断面側面図である。換気空調システム1は、室内90を換気する換気運転を実行可能な換気手段の一例として、換気装置2を備えている。換気運転は、屋外の空気である外気を室内90に取り入れる動作である。
【0011】
室内90は、対象者91の生活空間である。換気装置2は、給気ファン3と、排気ファン4と、熱交換エレメント5と、を備えている。室内90の天井には、排気口6と給気口7とが設けられている。室内90を有する建物の外壁には、開口部として吸込み口8と吹き出し口9とが設けられている。給気ダクト10は、吸込み口8と給気口7との間を連通させる。排気ダクト11は、排気口6と吹き出し口9との間を連通させる。
【0012】
給気ファン3が作動すると、吸込み口8から吸い込まれた外気が、給気ファン3および熱交換エレメント5を通過した後、給気口7から室内90へ流入する。排気ファン4が作動すると、排気口6から吸い込まれた室内空気が、排気ファン4および熱交換エレメント5を通過した後、吹き出し口9から室外へ流出する。熱交換エレメント5は、給気ダクト10を流れる給気流と、排気ダクト11を流れる排気流との間で熱を交換させる。
【0013】
本開示における換気手段は、給排気と熱交換とを行う換気装置2に限られず、例えば、排気のみを行ういわゆる換気扇でもよい。本開示に係る換気手段は、自然吸気または自然排気を行う設備であってもよい。換気装置2は、給気と排気の双方にファンを用いる第1種換気装置に相当する。本開示における換気手段は、第1種換気装置に限定されるものではなく、例えば、給気にファンを用い、排気にはファンを用いない第2種換気装置でもよいし、排気にファンを用い、給気にはファンを用いない第3種換気装置でもよい。第3種換気装置の場合、部屋構造体の隙間などから、外気が室内90に流入可能である。
【0014】
以下の説明では、室内90の気温を「室温」と称する。また、室内90の空気中の二酸化炭素濃度を単に「二酸化炭素濃度」と呼ぶ。本実施の形態における換気装置2は、室温を検出する室温センサ12と、二酸化炭素濃度を検出する二酸化炭素濃度センサ13と、を備えている。図示の例では、排気口6の近くに室温センサ12および二酸化炭素濃度センサ13が配置されている。室温センサ12は、室温検出手段の一例である。二酸化炭素濃度センサ13は、二酸化炭素濃度検出手段の一例である。
【0015】
対象者91は、室内90にある寝床92に入って就寝可能である。本開示における「就寝中」とは、対象者91が就床してから起床するまでの間を意味する。図示の例では、寝床92は、ベッドである。図示の例に限らず、寝床92は、室内90の床に敷いた布団でもよい。図示の例では、対象者91は、寝具93を被って寝床92に寝ている。寝具93は、例えば、掛け布団、タオルケット、毛布などである。また、図示の例では、寝床92の枕元には、対象者91が使用するスマートフォン94が置かれている。
【0016】
また、換気空調システム1は、室内90を昇温させる暖房運転を実行可能な暖房手段の一例として、空調装置14を備えている。空調装置14は、室内90の空気調和を行うための空調運転を実行可能である。空調装置14は、室内機と、冷媒配管を介して室内機と接続された室外機(図示省略)と、を備える。
【0017】
空調装置14は、空調運転として少なくとも暖房運転を実行可能である。空調装置14は、冷房運転、除湿運転など、暖房運転以外の空調運転をさらに実行可能でもよい。図示の例では、室内90の天井の近くに空調装置14の室内機が配置されている。空調装置14の室内機は、室内90へ吹き出される気流の方向を制御するルーバ15を備えている。なお、本開示に係る暖房手段は、空調装置14に限られるものではなく、例えば、送風機能を有さない暖房機器等であってもよい。
【0018】
本実施の形態における空調装置14は、表面温度センサ16を備えている。表面温度センサ16は、例えば、複数の赤外線センサが一列に並んだ赤外線センサアレイと、赤外線センサアレイを動かすことにより室内90を走査するアクチュエータと、を有している。表面温度センサ16によれば、室内90にある人体および物体等の被検出体の表面温度を検出し、その温度分布をマッピングすることができる。例えば、表面温度センサ16は、対象者91の人体の表面温度、寝具93の表面温度、室内90の床の表面温度、および室内90の壁の表面温度を検出できる。表面温度センサ16は、表面温度を検出する動作を周期的に実行し、室内90の温度分布データを取得する。
【0019】
換気空調システム1は、表面温度センサ16により取得された温度分布データに基づいて、室内90における対象者91の有無を判定するとともに、室内90に対象者91が存在する場合には当該対象者91の位置を特定したり、対象者91が起きているか就寝しているかを判別したり、対象者91の人体の表面温度を検知したり、対象者91の顔または頭部の位置を特定したりすることが可能である。表面温度センサ16は、本開示に係る人位置検知手段の一例である。
【0020】
ただし、本開示における人位置検知手段は、表面温度センサ16に限定されるものではない。人位置検知手段は、例えば、可視光カメラ、赤外線カメラ、サーモグラフィーなどにより撮影された室内90の画像に基づいて人の位置を検知するように構成されたものでもよい。
【0021】
図2は、実施の形態1による換気空調システム1の機能ブロック図である。
図2に示すように、換気装置2は、制御手段に相当する換気制御部17と、通信手段に相当する通信部18とをさらに備えている。換気制御部17は、換気装置2の換気動作を制御する。換気制御部17は、日時を管理するタイマー機能を有していてもよい。通信部18は、例えば、無線通信用の送受信装置である。
【0022】
空調装置14は、温湿度センサ19と、制御手段に相当する空調制御部20と、通信手段に相当する通信部21とをさらに備えている。温湿度センサ19は、室温と、室内90の湿度とを周期的に検出する。空調制御部20は、空調装置14の空調運転を制御する。空調制御部20は、日時を管理するタイマー機能を有していてもよい。通信部21は、例えば、無線通信用の送受信装置である。なお、空調装置14に関し、空調運転の実現に必要な冷凍サイクル、送風ファン等の構成については、公知であるので、本開示では図示を省略する。
【0023】
換気装置2の通信部18と、空調装置14の通信部21との間では、双方向にデータの送受信が可能である。例えば、表面温度センサ16を用いて検出された情報を通信部21から通信部18へ送信してもよい。また、本実施の形態では、通信部18および通信部21の少なくとも一方とスマートフォン94との間で、双方向にデータの送受信が可能である。
【0024】
通信部18、通信部21およびスマートフォン94の間の通信は、例えば、赤外線通信、Bluetooth(Bluetoothは登録商標)のような近距離無線通信、あるいは、Wi-Fi(Wi-Fiは登録商標)のような無線LANによるネットワークを介した通信でもよい。また、通信部18、通信部21およびスマートフォン94が、図示しないホームエネルギーマネジメントシステム(HEMS)を介して通信してもよい。また、通信部18および通信部21の少なくとも一方は、スマートフォン94とは別のリモコンと通信可能であってもよい。
【0025】
本実施の形態において、換気制御部17および空調制御部20は、室温に関する情報を室温センサ12により取得可能である。このような構成に限らず、換気制御部17および空調制御部20は、換気装置2以外の機器に設けられた室温検出手段により検出された室温に関する情報を、当該機器との通信により取得してもよい。この場合、換気装置2は、室温センサ12を備えていなくてもよい。
【0026】
本実施の形態において、換気制御部17および空調制御部20は、二酸化炭素濃度に関する情報を二酸化炭素濃度センサ13により取得可能である。このような構成に限らず、換気制御部17および空調制御部20は、換気装置2以外の機器に設けられた二酸化炭素濃度検出手段により検出された二酸化炭素濃度に関する情報を、当該機器との通信により取得してもよい。この場合、換気装置2は、二酸化炭素濃度センサ13を備えていなくてもよい。
【0027】
ここで、人の睡眠について説明する。
図3は、人が睡眠を開始してから起床するまでの間の睡眠状態の変化の一例を示す図である。
図3は、睡眠の深さを示す睡眠深度と体動との関係を示している。体動を示す縦線の高さは、体動の大きさを示す。高い縦線は大きな体動を示す。
【0028】
図3に示すように、人が睡眠を開始してから次に目覚めるまでの間には、睡眠深度1、2、3、4の順に睡眠が深くなるように移行し、その後、睡眠深度3、2、1、REM睡眠へと移行するという睡眠サイクルが通常約90分周期で繰り返される。また、人が睡眠を開始してから起床するまでの睡眠時間は、比較的深い眠りの前半の時間帯(以下、「睡眠前半」と称する)と、比較的眠りの浅い後半の時間帯(以下、「睡眠後半」と称する)とに分けて考えることができる。睡眠前半では、眠りが深いため、気流および温湿度などの外的な刺激に対して比較的鈍感である。これに対し、睡眠後半では、眠りが浅くなり、睡眠深度3、4になることがあまりなくなり、外的な刺激に反応しやすくなる。なお、睡眠が深いほど体動が少なくなる。
【0029】
表面温度センサ16により検出される温度分布データによれば、対象者91の位置を特定できるので、時系列の温度分布データを比較することにより、対象者91の体動を検出することができる。上述したように、対象者91の体動は睡眠状態と関連している。対象者91の体動を検出することで、例えば、睡眠深度および睡眠サイクルなどの睡眠状態に関する情報を検出することができる。さらに、例えば以下のようにしてもよい。対象者91の体動を表面温度センサ16が検出した時刻を記憶する。そして、過去の一定時間に発生した体動の合計回数と、睡眠の深さを判別するための閾値とを比較し、その比較結果から睡眠の深さを推定する。また、体動が検出された時間幅、すなわち体動が検出されてから次に体動が検出されるまでの時間を閾値と比較し、その比較結果から睡眠の深さを推定してもよい。または、その他の方法で睡眠の状態を推定しても構わない。
【0030】
表面温度センサ16は、例えば上記のようにして、対象者91の睡眠状態を検出する睡眠状態検出手段として機能する。なお、本開示に係る睡眠状態検出手段は、表面温度センサ16に限られない。睡眠状態検出手段は、例えば、ドップラセンサのような電波センサ、スマートフォン94の加速度センサ、可視光カメラ、赤外線カメラ、サーモグラフィーおよび超音波レーダーのうちの少なくとも一つを用いたものでもよい。本開示に係る人位置検知手段と睡眠状態検出手段とは、表面温度センサ16のような一つの機器から構成されてもよいし、それぞれ別の機器から構成されてもよい。
【0031】
本実施の形態における換気空調システム1は、動作モードとして、「就寝モード」での運転が可能である。就寝モードは、室温よりも外気温度が低いときに室内90で対象者91が就寝するときに用いられる。例えば、冬季に空調装置14の暖房運転を伴って就寝する場合のように、室温よりも外気温度が低いときに就寝モードが用いられる。
【0032】
冬季に就寝する場合には、一般的に、以下のような課題がある。就寝中には窓を閉じて室内90が密閉されている場合が多いので、睡眠中に二酸化炭素濃度が徐々に上昇していく。二酸化炭素濃度が高くなると、睡眠の質が悪化する。
【0033】
本実施の形態の就寝モードによれば、上記のような課題を解決する上で有利になる。制御手段の一例である換気制御部17および空調制御部20は、就寝モードにおいて、室内90での対象者91の就寝中に二酸化炭素濃度が第1濃度閾値以上になると、第1制御を実行する。睡眠の途中で、第1制御が実行されると、換気装置2による換気運転が開始する。あるいは、第1制御の実行前の時点で換気装置2が運転している場合には、当該第1制御によって換気量を増加させてもよい。第1制御が実行されることで、新鮮な外気が室内90に流入し、睡眠中に上昇した二酸化炭素濃度を低下させることができる。この結果、睡眠の質を良好にする上で有利になる。上記の二酸化炭素濃度の第1濃度閾値は、例えば1000ppmである。
【0034】
また、睡眠の途中で、第1制御が実行されると、空調装置14による暖房運転が開始する。あるいは、第1制御の実行前の時点で空調装置14が暖房運転を実行している場合には、当該第1制御によって昇温量を増加させてもよい。第1制御が実行されることで、外気の取り込みによる室温の低下を抑制することができる。この結果、睡眠の質を良好にする上で有利になる。例えば、寒さによる対象者91の覚醒を防止することができる。
【0035】
第1制御によって換気装置2の運転状態が変化する時点と空調装置14の運転状態が変化する時点とは、同時でもよいし、いずれかが先でもよい。例えば、室温の低下の抑制を優先させる場合には、空調装置14の運転状態の変化を、換気装置2の運転状態の変化よりも先にするとよい。例えば、二酸化炭素濃度の低下を優先させる場合には、換気装置2の運転状態の変化を、空調装置14の運転状態の変化よりも先にするとよい。
【0036】
第1制御は、一例として、二酸化炭素濃度が第2濃度閾値まで低下するまで実行される。第2濃度閾値は、例えば、800ppmである。一例として、換気装置2は、二酸化炭素濃度が第2濃度閾値まで低下すると、換気運転を停止する。なお、第1制御による換気運転は、予め定められた所定時間だけ実行されてもよい。
【0037】
室内90では、複数人の対象者91が就寝する可能性がある。例えば、表面温度センサ16によれば、対象者91の人数を検出可能である。上記の第1濃度閾値および第2濃度閾値は、対象者91の人数に応じて変更してもよい。
【0038】
第1制御は、例えば、対象者91の眠りが深い時に実行されてもよい。換言すると、第1制御は、対象者91の眠りが浅い時には実行されないようにしてもよい。これにより、例えば、換気装置2および空調装置14の動作音によって対象者91が覚醒してしまうことを防止できる。
【0039】
また、換気装置2による送風方向および空調装置14の少なくとも一方の送風方向を、人位置検知手段の検知結果に応じて、睡眠中の対象者91を避ける方向としてもよい。これにより、対象者91の意図せぬ覚醒を防止することができる。
【0040】
換気制御部17および空調制御部20は、第1制御の実行後に室温が低下すると、室温が第1制御の実行開始時点における室温に達するように、換気装置2および空調装置14を制御してもよい。例えば、換気装置2による換気運転を停止した後、室温が第1制御の実行開始時点における室温に達するまで空調装置14の暖房運転を行い、当該暖房運転を停止してもよい。室温を第1制御の実行前に戻すことで、寒さによる覚醒および睡眠の質の低下を防止することができる。また、換気装置2および空調装置14を停止させることで、省エネ効果を得ることもできる。
【0041】
また、睡眠状態検出手段によって対象者91の起床が近いことが検出されると、当該対象者91が起床するまで室温を空調装置14の設定温度で維持するように暖房運転を行ってもよい。起床が近いとは、例えば、起床時刻から30分前などを意味する。起床時刻は、過去の対象者91の睡眠状態の変化の学習結果から推測することができる。起床が近いことは、体動の増加等から検出することができる。例えば、一定期間内における体動の量が所定の閾値を超えた場合に、起床が近いと判定してもよい。あるいは、対象者91が任意の起床時刻を設定してもよい。起床前に室内90を予め暖めて置くことで、対象者91の快適な起床を促すことができ、また、対象者91が寝具93から出たときの血圧の急上昇を抑制することができる。
【0042】
また、睡眠状態検出手段によって対象者91の起床が近いことが検出されると、対象者91の睡眠状態が深睡眠でない時点、すなわち浅睡眠またはREM睡眠である時点で、当該対象者91に向けた送風が行われるように換気装置2および空調装置14が制御されてもよい。これにより、対象者91の快適な起床を促すことができる。
【0043】
図4は、実施の形態1による換気空調システム1の就寝モードのときの動作例を示すフローチャートである。
図5は、
図4に示すフローチャートによる就寝モードが実行された場合の室温および二酸化炭素濃度の経時変化の例を示すグラフである。以下、
図4および
図5を参照して、換気空調システム1の動作の例についてさらに説明する。
【0044】
対象者91は、空調装置14によって事前に室内90を暖房し、室温を設定温度にした後、空調装置14の暖房運転をオフにして就床する。対象者91が就床すると、外気の影響で室温は徐々に低下する。なお、就床後も、室内90は暑くなりすぎない程度に暖房運転を継続してもよい。
【0045】
対象者91が寝床92に就床すると、就寝モードでの運転が開始する。例えば、対象者91は、寝床92に入った状態で、スマートフォン94または図示しないリモコンにより換気空調システム1を遠隔操作することで、就寝モードでの運転を開始させてもよい。また、換気空調システム1は、対象者91の就床を検出すると、自動で就寝モードでの運転を開始してもよい。
【0046】
対象者91が就床すると、睡眠状態検出手段によって就床が検出され、換気空調システム1はその時点での室内温度Bを検出する(ステップS1)。次に、二酸化炭素濃度が検出される(ステップS2)。二酸化炭素濃度が第1濃度閾値、例えば1000ppm以上の場合(ステップS3)には、室内温度Aの検知が行われ(ステップS4)、換気運転と暖房運転とが行われる(ステップS5)。このステップS5の処理は、上述した第1制御に相当するものである。ステップS5の処理によって、二酸化炭素濃度を低下させつつ、外気取り込みによる室温低下を抑えることができる。
【0047】
次に。二酸化炭素濃度が第2閾値、例えば800ppm以下になるまで換気すると(ステップS6)、換気装置2による換気運転をオフにする(ステップS7)。この時点で室温が上述した室内温度A以上であれば(ステップS8)、空調装置14の暖房運転もオフにする(ステップS9)。
【0048】
次に、睡眠状態検出手段により、睡眠状態を検出する。浅い睡眠が少ない睡眠前半である場合には、ステップS2の処理へ戻る。眠りが浅くなり、起床が近いと判定した場合には、次の処理に進む(ステップS10)。
【0049】
起床が近い睡眠後半においては、睡眠前半と同様に、二酸化炭素濃度に応じて、換気および暖房の制御を行う。二酸化炭素濃度が第1濃度閾値、例えば1000ppm以上の場合(ステップS11)には、換気運転と暖房運転とが行われる(ステップS12)。二酸化炭素濃度が第2閾値、例えば800ppm以下となった場合(ステップS13)には、換気運転をオフにし(ステップS14)、室温が室内温度Bとなったら(ステップS15)、暖房運転をオフにする(ステップS16)。なお、室内温度Bは、就床開始時の室温ではなく、就床前における空調装置14の暖房の設定温度でもよい。次に、睡眠状態検知手段によって起床が確認されるか、対象者91が意図的に運転を終了させた場合(ステップS17)に、就寝モードの運転を停止する。
【0050】
また、
図6は、実施の形態1の変形例を示すグラフである。
図6に示すように、換気制御部17および空調制御部20は、第1制御の実行後に室温が低下すると、室温が対象者91の就床時における室内温度Bに達するように、換気装置2および空調装置14を制御してもよい。あるいは、換気制御部17および空調制御部20は、第1制御の実行後に室温が低下すると、室温が対象者91の就床時における空調装置14の設定温度に達するように、換気装置2および空調装置14を制御してもよい。本例であれば、
図4および
図5に示す例における室内温度Aの検出が不要となることで、システムの処理を簡略化することできる。また、寒さによる覚醒および睡眠の質の低下を抑制することができる。
【0051】
換気制御部17および空調制御部20の少なくとも一方の制御部は、以下のように構成されてもよい。制御部の各機能は、処理回路により実現されてもよい。制御部の処理回路は、少なくとも1つのプロセッサと少なくとも1つのメモリとを備えてもよい。処理回路が少なくとも1つのプロセッサと少なくとも1つのメモリとを備える場合、制御部の各機能は、ソフトウェア、ファームウェア、またはソフトウェアとファームウェアとの組み合わせにより実現されてもよい。ソフトウェア及びファームウェアの少なくとも一方は、プログラムとして記述されてもよい。ソフトウェア及びファームウェアの少なくとも一方は、少なくとも1つのメモリに格納されてもよい。少なくとも1つのプロセッサは、少なくとも1つのメモリに記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、制御部の各機能を実現してもよい。少なくとも1つのメモリは、不揮発性または揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク等を含んでもよい。
【0052】
制御部の処理回路は、少なくとも1つの専用のハードウェアを備えてもよい。処理回路が少なくとも1つの専用のハードウェアを備える場合、処理回路は、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、またはこれらを組み合わせたものでもよい。制御部の各部の機能がそれぞれ処理回路で実現されても良い。また、制御部の各部の機能がまとめて処理回路で実現されても良い。制御部の各機能について、一部を専用のハードウェアで実現し、他の一部をソフトウェアまたはファームウェアで実現してもよい。処理回路は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、またはこれらの組み合わせによって、制御部の各機能を実現しても良い。
【符号の説明】
【0053】
1 換気空調システム、 2 換気装置、 3 給気ファン、 4 排気ファン、 5 熱交換エレメント、 6 排気口、 7 給気口、 8 吸込み口、 9 吹き出し口、 10 給気ダクト、 11 排気ダクト、 12 室温センサ、 13 二酸化炭素濃度センサ、 14 空調装置、 15 ルーバ、 16 表面温度センサ、 17 換気制御部、 18 通信部、 19 温湿度センサ、 20 空調制御部、 21 通信部、 90 室内、 91 対象者、 92 寝床、 93 寝具、 94 スマートフォン