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特開2022-181672射出成形型及びそれを用いた射出成形方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022181672
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】射出成形型及びそれを用いた射出成形方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/73 20060101AFI20221201BHJP
   B29C 33/38 20060101ALI20221201BHJP
   B29C 33/04 20060101ALI20221201BHJP
   B29C 45/26 20060101ALI20221201BHJP
   B29C 45/78 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
B29C45/73
B29C33/38
B29C33/04
B29C45/26
B29C45/78
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021088731
(22)【出願日】2021-05-26
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 集会名 日本初の「3D積層造形によるモノづくりプロセスのモデル化」成果発表会(第2弾)(オンライン開催) 開催日 令和3年5月17日 掲載年月日 令和3年5月20日 掲載アドレスhttps://dempa-digital.com/article/192729
(71)【出願人】
【識別番号】302010585
【氏名又は名称】株式会社前澤金型
(71)【出願人】
【識別番号】592029256
【氏名又は名称】福井県
(74)【代理人】
【識別番号】110003203
【氏名又は名称】弁理士法人大手門国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】玉田 隆則
(72)【発明者】
【氏名】井上 治
(72)【発明者】
【氏名】森下 和幸
【テーマコード(参考)】
4F202
4F206
【Fターム(参考)】
4F202AH71
4F202AJ02
4F202AK13
4F202AR20
4F202CA11
4F202CB01
4F202CD01
4F202CD27
4F202CD30
4F202CN01
4F202CN05
4F202CN14
4F202CN21
4F202CN30
4F206AH71
4F206AJ02
4F206AK13
4F206AR20
4F206JA07
4F206JQ81
(57)【要約】      (修正有)
【課題】眼鏡フレーム部材の成形において、効率よくかつ安定した成形処理を行うことができる射出成形型及びそれを用いた射出成形方法を提供する。
【解決手段】射出成形型は、キャビティ型1及びコア型2は、金属粉末焼結法で製作する場合の造形方向が一致して当接するように設定されており、キャビティ型の内部には、成形用空隙部分Cの枠状領域C1、C2に対して造形方向に所定間隔を置いて枠状のキャビティ側温調流路11、12が重なり合うように形成されており、コア型の内部には、枠状領域に対して造形方向に所定間隔を置いて枠状のコア側温調流路21、22が重なり合うように形成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属粉末材料を積層して焼結造形されたキャビティ型及びコア型を備えるとともにキャビティ型及びコア型の当接領域に形成された眼鏡フレーム部材に対応した成形用空隙部分に溶融樹脂が注入される射出成形型であって、前記キャビティ型及び前記コア型は、造形方向が一致して当接するように設定されており、前記キャビティ型の内部には、前記成形用空隙部分の枠状領域に対して前記造形方向に所定間隔を置いて枠状のキャビティ側温調流路が重なり合うように形成されており、前記コア型の内部には、前記枠状領域に対して前記造形方向に所定間隔を置いて枠状のコア側温調流路が重なり合うように形成されている射出成形型。
【請求項2】
前記キャビティ側温調流路には、前記枠状領域とは反対側において温調流体が流出入する一対のキャビティ側接続路が前記造形方向に沿うように形成されており、前記コア側温調流路には、前記枠状領域とは反対側において温調流体が流出入する一対のコア側接続路が前記造形方向に沿うように形成されており、前記キャビティ側接続路と前記コア側接続路は、互いに対向するように配置されている請求項1に記載の射出成形型。
【請求項3】
一対の前記枠状領域の間には、前記成形用空隙部分に連通する注入路が形成されており、前記枠状領域の前記注入路とは反対側には前記成形用空隙部分に連通するガス抜き部が形成されている請求項1又は2に記載の射出成形型。
【請求項4】
前記ガス抜き部は、ガスが流通可能な多孔質で形成されている請求項3に記載の射出成形型。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の射出成形型内に形成された前記成形用空隙部分に溶融樹脂を注入して成形する射出成形方法であって、前記キャビティ側温調流路及び前記コア側温調流路に温調流体を互いに反対方向となるように流通させる射出成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱溶融させた材料を金型内に注入して冷却・固化させる射出成形に用いる射出成形型及びそれを用いた射出成形方法に関し、特に、眼鏡フレーム部材を成形するのに好適な射出成形型及びそれを用いた射出成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、溶融した樹脂材料を金型内に射出注入して冷却・固化させることで成形品を製造する射出成形方法が広く行われている。金型内に高精度の成形用空隙部分を形成することで、高精度で複雑な形状の成形品を製造することができる。
【0003】
こうした射出成形方法では、成形品の複雑な形状に対応して高精度に形状加工された金型を使用し、充填された溶融樹脂を短時間で固化させるために、金型内に冷却流体を流通させる冷却流路が形成されている。例えば、特許文献1では、ラピッドプロトタイピングにより成形し、キャビティ面から均一な肉厚で形成された冷却通路を有する射出成形型が記載されている。また、特許文献2では、レーザー光を用いて金属粉末を焼結することにより金型を造形の際に、内部に温調回路を同時に形成する点が記載されている。また、特許文献3では、固定側金型と可動側金型とを備え、これらの当接領域に形成されたキャビティーに樹脂が射出される金型において、固定側金型又は可動側金型の少なくとも一方に、温調媒体が流動する流動チャネルと、流動チャネル内に荷重を支持する複数のチャネル支持柱とを備える温調部を設けた点が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4544398号公報
【特許文献2】特開平11-348045号公報
【特許文献3】特許第6191356号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、射出成形型のキャビティ面から均一の厚さで冷却通路を形成しているが、キャビティ面で形成された3次元形状の側面を囲むように1本の冷却通路を形成している。そのため、冷却通路を流通する冷却流体は、流通する間に温度変化していき、冷却ムラが生じることは避けられない。
【0006】
特許文献2では、造形された金型内に所望の温調回路を形成することが可能となっているが、キャビティの周囲にらせん状に温調回路を形成しており、温調回路に流通する冷却媒体の温度変化による冷却ムラが生じやすくなる課題がある。特許文献3では、固定側金型及び可動側金型に温調媒体が流動する流動チャンネルを形成しているが、温調媒体が流動チャンネルを流通する間の温度変化による冷却ムラといった課題がある。
【0007】
眼鏡フレーム部材を樹脂材料で射出成形する場合に、射出成形型内に形成された成形用空隙部分の両側に温調回路を配して成形処理が行われているが、眼鏡フレーム部材の冷却ムラによる変形で精度の低下が避けられず、眼鏡レンズを取り付ける際の微調整が必要となっている。
【0008】
そこで、本発明は、射出成形型内に形成された眼鏡フレーム部材に対応した成形用空隙部分の枠状領域に対して枠状の温調流路を形成することで、効率よくかつ安定した成形処理を行うことができる射出成形型及びそれを用いた射出成形方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る射出成形型は、金属粉末材料を積層して焼結造形されたキャビティ型及びコア型を備えるとともにキャビティ型及びコア型の当接領域に形成された眼鏡フレーム部材に対応した成形用空隙部分に溶融樹脂が注入される射出成形型であって、前記キャビティ型及び前記コア型は、造形方向が一致して当接するように設定されており、前記キャビティ型の内部には、前記成形用空隙部分の枠状領域に対して前記造形方向に所定間隔を置いて枠状のキャビティ側温調流路が重なり合うように形成されており、前記コア型の内部には、前記枠状領域に対して前記造形方向に所定間隔を置いて枠状のコア側温調流路が重なり合うように形成されている。さらに、前記キャビティ側温調流路には、前記枠状領域とは反対側において温調流体が流出入する一対のキャビティ側接続路が前記造形方向に沿うように形成されており、前記コア側温調流路には、前記枠状領域とは反対側において温調流体が流出入する一対のコア側接続路が前記造形方向に沿うように形成されており、前記キャビティ側接続路と前記コア側接続路は、互いに対向するように配置されている。さらに、一対の前記枠状領域の間には、前記成形用空隙部分に連通する注入路が形成されており、前記枠状領域の前記注入路とは反対側には前記成形用空隙部分に連通するガス抜き部が形成されている。さらに、前記ガス抜き部は、ガスが流通可能な多孔質で形成されている。
【0010】
本発明に係る射出成形方法は、上記の射出成形型内に形成された前記成形用空隙部分に溶融樹脂を注入して成形する射出成形方法であって、前記キャビティ側温調流路及び前記コア側温調流路に温調流体を互いに反対方向となるように流通させる。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、上記のような構成を有することで、キャビティ型及びコア型の内部に、眼鏡フレーム部材の枠部分に対応する枠状領域と重なり合うように温調流路をそれぞれ形成しているので、枠状領域全体を両側から効率的に温度調節して安定した品質の成形品を製造することができる。
【0012】
眼鏡フレーム部材の枠部分は眼鏡レンズを嵌め込むため、眼鏡レンズの周縁部分の3次元形状に合わせて高精度で成形する必要があるが、上述したように、枠部分に対応する枠状領域を両側から温度調節することで、枠状領域の周囲の予熱処理及び冷却処理を安定した温度状態で行うことが可能となり、成形処理を精度よく効率的に行うことができる。
【0013】
また、温調流体が流出入する一対の接続路を枠状領域とは反対側に形成しているので、接続路を流通する温調流体が枠状領域の温度状態に及ぼす影響を抑えることができ、温調流路を流通する温調流体による温度状態を安定して維持することができる。
【0014】
また、ガス抜き部をガスが流通可能な多孔質で形成しているので、処理に伴って発生するガスをスムーズに排気することができ、ガスに発生による成形処理への影響を抑止することができる。
【0015】
また、枠状領域の両側に形成された温調流路に互いに反対方向に温調流体を流通させるので、枠状領域全体をより均一で安定した温度状態に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係る射出成形型に関する概略構成を示しており、内部構造を透視するように描いた説明図である。
図2】キャビティ型に関する斜視図である。
図3図2のA-A断面図であり、内部構造を透視するように描いた説明図である。
図4】コア型に関する斜視図である。
図5図4のB-B断面図であり、内部構造を透視するように描いた説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る実施形態について詳しく説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明を実施するにあたって好ましい具体例であるから、技術的に種々の限定がなされているが、本発明は、以下の説明において特に発明を限定する旨明記されていない限り、これらの形態に限定されるものではない。
【0018】
図1は、本発明に係る射出成形型に関する概略構成を示しており、内部構造を透視するように描いた説明図である。眼鏡フレーム部材を成形する射出成形型は、キャビティ型1及びコア型2(それぞれ一点鎖線で図示)を備えており、この例では、眼鏡フレーム部材の眼鏡レンズを保持するフロント部分を樹脂材料により成形するようになっている。そのため、キャビティ型1及びコア型2を当接した状態では、当接領域にフロント部分に対応する成形用空隙部分C(細線で図示)が形成されており、成形用空隙部分Cには眼鏡レンズを嵌め込むリム部分に対応して一対の枠状領域C1及びC2が形成されている。
【0019】
一対の枠状領域C1及びC2の間には、成形用空隙部分Cに連通する注入路40が接続されており、枠状領域C1及びC2の注入路40とは反対側にはそれぞれ成形用空隙部分Cに連通するガス抜き部30a及び30bが形成されている。注入路40は、フロント部分のブリッジに対応する領域に接続されており、溶融した樹脂材料が供給装置(図示せず)から注入されるようになっている。ガス抜き部30aは、枠状領域C1のヨロイ部分に対応する端部から射出成形型の側面に向かって延設され、ガスが流通可能な多孔質に形成されている。そのため、成形用空隙部分C内に溶融樹脂を注入して射出成形を行う際に発生するガスを外部に排出するとともに、成形用空隙部分C内に充填された溶融樹脂が漏出することは防止される。ガス抜き部30bは、枠状領域C2のヨロイ部分に対応する端部から射出成形型の側面に向かって延設され、枠状領域C1と同様に、ガスが流通可能な多孔質に形成されている。そのため、成形用空隙部分C内に充填された溶融樹脂を漏出させることなく発生したガスを排出することができる。
【0020】
キャビティ型1は、一点鎖線で示すようにベースプレート10に一体形成されており、内部に枠状のキャビティ側温調流路11及び12(細線で図示)が形成されている。キャビティ側温調流路11及び12は、所定の温度に調整された水等の温調流体を流通するための管路で構成されている。キャビティ側温調流路11は、平面視で枠状領域C1と重なり合うように所定間隔を置いて形成されており、キャビティ側温調流路12は、平面視で枠状領域C2と重なり合うように所定間隔を置いて形成されている。
【0021】
キャビティ側温調流路11には、枠状領域C1とは反対側において温調流体が流出入する一対のキャビティ側接続路13a及び13bが形成されており、キャビティ側接続路13a及び13bは、それぞれベースプレート10内に形成された一対の流通路15a及び15bに連通するようになっている。
【0022】
キャビティ側温調流路12には、枠状領域C2とは反対側において温調流体が流出入する一対のキャビティ側接続路14a及び14bが形成されており、キャビティ側接続路14a及び14bは、それぞれベースプレート10内に形成された一対の流通路16a及び16bに連通するようになっている。
【0023】
コア型2は、一点鎖線で示すようにベースプレート20に一体形成されており、内部に枠状のコア側温調流路21及び22(細線で図示)が形成されている。コア側温調流路21及び22は、所定の温度に調整された水等の温調流体を流通するための管路で構成されている。コア側温調流路21は、平面視で枠状領域C1と重なり合うように所定間隔を置いて形成されており、コア側温調流路22は、平面視で枠状領域C2と重なり合うように所定間隔を置いて形成されている。
【0024】
コア側温調流路21には、枠状領域C1とは反対側において温調流体が流出入する一対のコア側接続路23a及び23bが形成されており、コア側接続路23a及び23bは、それぞれベースプレート20内に形成された一対の流通路25a及び25bに連通するようになっている。
【0025】
コア側温調流路22には、枠状領域C2とは反対側において温調流体が流出入する一対のコア側接続路24a及び24bが形成されており、コア側接続路24a及び24bは、それぞれベースプレート20内に形成された一対の流通路26a及び26bに連通するようになっている。
【0026】
上述した例では、枠状領域C1の上下の両側には、枠状のキャビティ側温調流路11及びコア側温調流路21が重なり合うように配置されており、枠状領域C2の両側には、枠状のキャビティ側温調流路12及びコア側温調流路22が重なり合うように配置されている。そのため、枠状領域の上下の両側に配置された温調流路に温調流体を流通することで、枠状領域を安定した温度状態に効率よく調整することができる。
【0027】
枠状領域の上下に配置されたキャビティ側温調流路及びコア側温調流路には、温調流体を互いに反対方向となるように流通させることで、枠状領域全体の温度状態をより均一化することができる。図1において矢印で示すように、枠状領域C1では、キャビティ側温調流路11では、温調流体が流通路15a→キャビティ側接続路13a→キャビティ側温調流路11→キャビティ側接続路13b→流通路15bの流通方向になり、コア側温調流路21では、温調流体が流通路25b→コア側接続路23b→コア側温調流路21→コア側接続路23a→流通路25aの流通方向になり、流通方向が互いに反対方向に設定されている。枠状領域C2においても、同様にキャビティ側温調流路12とコア型温調流路22では流通方向が互いに反対方向となるように設定されている。
【0028】
温調流体は、管路を流通する間に温度変化が生じるようになる。例えば、溶融樹脂の注入前の段階で射出成形型を予熱する場合には、温調流体は管路を流通する間に温度が低下するようになり、溶融樹脂を注入後の段階で射出成形型を冷却する場合には、温調流体は管路を流通する間に温度が上昇するようになる。したがって、温調流路の流入側の接続路と流出側の接続路では温調流体の温度が変化するため、枠状領域の温度状態にムラが生じるようになる。そこで、キャビティ側温調流路とコア型温調流路の流入側及び流出側を互いに反対方向となるように設定することで、枠状領域の温度状態をより均一化することができ、両方の枠状領域の温度状態をほぼ同じ状態とすることが可能となる。また、こうした温度調整を行うことで、温調流体の温度を変化させて型温度の調整を行うことも容易に行うことができる。
【0029】
こうした射出成形に用いるキャビティ型及びコア型は、公知の金属粉末焼結法で製作することができる。金属粉末焼結法では、まず、成形型の3次元CADデータに基づいて3次元形状のスライスデータを作成する。そして、平面上に所定の厚さで敷かれた金属粉末に対してスライスデータに基づいて高エネルギーのレーザ光を照射して金属粉末を溶融固化させることで断面形状を形成する。こうした断面形状を積層して3次元形状に造形することができる。こうした方法で成形型を製作することで、成形型内の温調流体が流通する管路の自由度を大きくすることができ、成形型内の温度状態を調整することが可能な配管を高精度で効率的に形成することが可能となる。
【0030】
図2は、キャビティ型に関する斜視図であり、図3は、図2のA-A断面図であり、内部構造を透視するように描いた説明図である。キャビティ型1は、フロント部分の形状に合わせて当接面が凸状の湾曲形状に形成されており、当接面には成形用空隙部分Cに対応して段差部分が3次元形状で形成されている。キャビティ型1の内部には、枠状領域C1に対して所定間隔を置いて枠状のキャビティ側温調流路11が形成され、枠状領域C2に対して所定間隔を置いて枠状のキャビティ側温調流路12が形成されている。
【0031】
キャビティ型1を金属粉末焼結法で製作する場合には、ベースプレート10の上面に所定の厚さで金属粉末を敷きレーザ光を照射して上下方向に積層して造形する。そのため、各キャビティ側温調流路を各枠状領域に対して造形方向に所定間隔を置いて正確に造形することができ、造形方向から見て重なり合うように正確に形成することが可能となる。また、造形方向と交差する枠状の温調流路を造形する場合には、温調流路11及び12の断面形状11a及び12aは、造形方向に沿う両側辺を有し上辺の両端部を斜め方向に切り欠いた略六角形状に形成することで安定した形状に造形することができる。
【0032】
キャビティ側温調流路11には、対向配置された一対のキャビティ側接続路13a及び13bが下方に向かって形成されており、キャビティ側温調流路12には、対向配置された一対のキャビティ側接続路14a及び14bが下方に向かって形成されている。ベースプレート10内には、両側面からドリル等により一対の流通路15a及び15b並びに一対の流通路16a及び16bが形成されており、流通路15a及び15bは、キャビティ側接続路13a及び13bにそれぞれ接続し、流通路16a及び16bは、キャビティ側接続路14a及び14bにそれぞれ接続している。
【0033】
こうした管路を構成する場合には、ベースプレート10に各流通路を形成しておき、各流通路の上面開口に合わせて各キャビティ側接続路を造形していくことで、連通した管路を正確に形成することができる。
【0034】
図4は、コア型に関する斜視図であり、図5は、図4のB-B断面図であり、内部構造を透視するように描いた説明図である。コア型2は、フロント部分の3次元形状に合わせて当接面が凹状の湾曲形状に形成されており、当接面には成形用空隙部分Cに対応して段差部分が3次元形状で形成されている。成形用空隙部分Cの一対の枠状領域C1及びC2には、それぞれ外側部に延びる帯状のガス抜き部30a及び30bが形成されており、コア型2の内部には、枠状領域C1に対して所定間隔を置いて枠状のコア側温調流路21が形成され、枠状領域C2に対して所定間隔を置いて枠状のコア側温調流路22が形成されている。
【0035】
コア型2を金属粉末焼結法で製作する場合には、キャビティ型1と同様に、ベースプレート20の上面に所定の厚さで金属粉末を敷きレーザ光を照射して上下方向に積層して造形する。そのため、各コア側温調流路を各枠状領域に対して造形方向に所定間隔を置いて正確に造形することができ、造形方向から見て重なり合うように正確に形成することが可能となる。コア型2をキャビティ型1と同様に、上下方向に積層して造形しているので、両者を当接した状態では造形方向が一致するようになる。
【0036】
造形方向と交差する枠状の温調流路を造形する場合には、温調流路21及び22の断面形状21a及び22aは、造形方向に沿う両側辺を有し上辺の両端部を斜め方向に切り欠いた略六角形状に形成することで安定した形状に造形することができる。
【0037】
ガス抜き部30a及び30bについては、ガス抜き部の形状に合わせてコア型とは別に金属粉末を低密度で積層し焼結することで多孔質の部材を造形しておく。そして、造形されたコア型を切削加工によりガス抜き部の位置に合わせて部分的にカットした後、カット位置に多孔質部材を嵌め込んで埋め込むことでガス抜き部を形成することができる。多孔質にガス抜き部を形成することで、成形用空隙部分Cと外部との間の通気性を確保することが可能となる。また、各ガス抜き部と各枠状領域との接続部分については、成形用空隙部分Cに充填した溶融樹脂が漏出しない程度に造形密度を高めておくことで、射出成形を確実に行うことが可能となる。
【0038】
コア側温調流路21には、対向配置された一対のコア側接続路23a及び23bが下方に向かって形成されており、コア側温調流路22には、対向配置された一対のコア側接続路24a及び24bが下方に向かって形成されている。ベースプレート20内には、両側面からドリル等により一対の流通路25a及び25b並びに一対の流通路26a及び26bが形成されており、流通路25a及び25bは、コア側接続路23a及び23bにそれぞれ接続し、流通路26a及び26bは、コア側接続路24a及び24bにそれぞれ接続している。
【0039】
こうした管路を構成する場合には、ベースプレート20に各流通路を形成しておき、各流通路の上面開口に合わせて各コア側接続路を造形していくことで、連通した管路を正確に形成することができる。
【実施例0040】
図2に示すキャビティ型を、鋼材からなるベースプレート(縦175mm×横225mm×厚さ30mm)に金属粉末焼結造形装置(株式会社松浦機械製作所製、LUMEX Avance-25)を用いて造形した。金属粉末としてマルエージング鋼(平均粒径45μm、株式会社松浦機械製作所製マツウラマルエージングII)を使用した。造形されたキャビティ型は、縦100.3mm×横200.3mm×厚さ19.4mmのサイズに形成し、その後切削加工により成形用空隙部分Cを含む当接面を精密加工した。
【0041】
図4に示すコア型を、鋼材からなるベースプレート(縦175mm×横225mm×厚さ20mm)にキャビティ型と同じ金属粉末焼結造形装置を用いて造形した。金属粉末としてキャビティ型と同じマルエージング鋼を使用した。造形されたコア型は、縦100.3mm×横200.3mm×厚さ20mmのサイズに形成し、その後切削加工により成形用空隙部分Cを含む当接面を精密加工した。ガス抜き部については、キャビティ型と同じ金属粉末で多孔質に造形した多孔質部材を準備し、コア型にガス抜き部に対応する細溝を切削加工により形成し、形成した細溝に多孔質部材を嵌め込んで固定する加工を行った。
【0042】
得られたキャビティ型及びコア型を互いの当接面を密着させて固定し、温調流路に温調流体(水、82℃)を流通させて予熱処理を行った。予熱処理で10分経過後には枠状領域の金型表面温度は両方とも47℃前後でほぼ均一な温度分布で安定した温度状態となった。それぞれの型に並列配置された温調流路に温調流体が同じ方向に流通し、キャビティ型とコア型で互いに反対方向に温調流体が流通するため、両方の枠状領域の温度分布をほぼ均一となった。
【0043】
次に、ポリアミド樹脂(ダイセル・エボニック社製)を高温(260℃~280℃)で溶融した状態でキャビティ型に設けられた注入口より注入して成形用空隙部分内に充填した。温調流路には継続して温調流体を流通させて冷却処理を20秒間行った。型開き後60秒経過後の金型表面温度は46℃~48℃に低下しており、枠状領域全体をほぼ均一に冷却処理を行うことができた。
【0044】
型開き後に脱型して得られた眼鏡フレーム部材は、リム部分の収縮率がほぼ均等で精度よく成形されており、ガス溜り等の不良個所は見当たらなかった。そのため、高品質の成形品を安定して得ることができた。
【0045】
また、予熱処理及び冷却処理を効率よく行うことが可能となり、処理時間の短縮化及び生産性の向上に有効であることが確認できた。
【0046】
<比較例>
キャビティ型及びコア型を鋼材を用いて切削により成形加工した。キャビティ型及びコア型の当接面には、実施例と同様の成形用空隙部分が形成されるように切削加工し、成形用空隙部分の枠状領域の下側には、直線状の管路を貫通するように穿孔して一対の温調流路を形成した。そして、温調流体を一方の温調流路に流通させた後他方の温調流路に流入させて循環させるように管路を構成した。
【0047】
キャビティ型及びコア型を互いの当接面を密着させて固定し、温調流路に温調流体(水、82℃)を循環させて予熱処理を行った。予熱処理では20分経過後でも枠状領域の金型表面温度が43℃~54℃で温度分布にムラが生じて均一な温度状態にはならなかった。こうした温度分布のムラが生じるのは、循環型で温調流体を流通させているため、流入口に近い方の枠状領域の温度が高く遠い方の枠状領域の温度が低くなる傾向となって温度ムラが生じるようになる。
【0048】
次に、実施例と同様に、ポリアミド樹脂を高温で溶融した状態でキャビティ型に設けられた注入口より注入して成形用空隙部分内に充填した。温調流路には継続して温調流体を流通させて冷却処理を35秒間行った。型開き後60秒経過後の金型表面温度は50℃~55℃で、枠状領域全体の冷却処理がムラのある状態で行われていた。
【0049】
型開き後に脱型して得られた眼鏡フレーム部材は、リム部分の収縮率が不均一で成形されており、精度が低くガス溜り等の不良個所が見られた。
【符号の説明】
【0050】
C・・・成形用空隙部分、C1,C2・・・枠状領域、1・・・キャビティ型、10・・・ベースプレート、11、12・・・キャビティ側温調流路、13a、13b、14a、14b・・・キャビティ側接続路、15a、15b、16a、16b・・・流通路、2・・・コア型、20・・・ベースプレート、21、22・・・キャビティ側温調流路、23a、23b、24a、24b・・・キャビティ側接続路、25a、25b、26a、26b・・・流通路、30a、30b・・・ガス抜き部、40・・・注入口
図1
図2
図3
図4
図5