(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022181674
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】アスベスト回収システム
(51)【国際特許分類】
E04G 23/08 20060101AFI20221201BHJP
B08B 3/02 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
E04G23/08 Z
B08B3/02 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021088735
(22)【出願日】2021-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】516049272
【氏名又は名称】株式会社マルホウ
(74)【代理人】
【識別番号】100119792
【弁理士】
【氏名又は名称】熊崎 陽一
(72)【発明者】
【氏名】日比 裕己
【テーマコード(参考)】
2E176
3B201
【Fターム(参考)】
2E176AA13
2E176BB36
3B201AA31
3B201AB53
3B201BB21
3B201BB90
3B201BB92
(57)【要約】
【課題】作業者の健康が害されるおそれのないアスベスト回収システムを提供する。また、作業コストを低減することができ、かつ、作業効率を良くすることができるアスベスト回収システムを提供する。
【解決手段】煙突10の壁11から除去されたアスベストと噴射された水とが混合した泥状の除去物ASを吸引する吸引ホース52と、吸引ホース52により吸引された除去物ASを一時的に蓄積する蓄積体54と、蓄積体54から排出された除去物Rを吸入し、その吸入した除去物ASを吐出する1軸偏心ねじポンプ100と、1軸偏心ねじポンプ100から吐出された除去物ASを収容する収容体と、1軸偏心ねじポンプ100を制御する制御部64と、を備えていることを特徴とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アスベストが含まれている構造物に水を高圧で噴射することにより、前記構造物から除去された前記アスベストを回収するアスベスト回収システムであって、
前記構造物から除去された前記アスベストと前記噴射された水とが混合した除去物を吸引する吸引ホースと、
前記吸引ホースにより吸引された前記除去物を吸入し、その吸入した前記除去物を吐出する1軸偏心ねじポンプと、
前記1軸偏心ねじポンプから吐出された前記除去物を収容する収容体と、
前記1軸偏心ねじポンプを制御する制御部と、
を備えていることを特徴とするアスベスト回収システム。
【請求項2】
前記収容体の重量が所定値に達したことを検知する第1センサを備えており、
前記制御部は、
前記第1センサが前記収容体の重量が所定の重量に達したことを検知したときに前記1軸偏心ねじポンプを作動停止にすることを特徴とする請求項1に記載のアスベスト回収システム。
【請求項3】
前記1軸偏心ねじポンプには、前記除去物を吐出する吐出口が設けられており、
前記収容体には、前記除去物を取り入れる取入口が設けられており、
前記吐出口と前記取入口との間には、前記吐出口から吐出される前記除去物を弁を介して前記取入口へ排出する弁装置が設けられており、
前記制御部は、
前記第1センサが前記収容体の重量が所定の重量に達したことを検知したときに前記弁が閉じるように前記弁装置を制御することを特徴とする請求項2に記載のアスベスト回収システム。
【請求項4】
前記吸引ホースの内部を負圧にする負圧発生装置と、
前記吸引ホースと前記負圧発生装置との間に設けられており、前記吸引ホースにより吸引された前記除去物を一時的に蓄積する蓄積体と、を備えており、
前記1軸偏心ねじポンプは、前記蓄積体に蓄積された前記除去物を吸入することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のアスベスト回収システム。
【請求項5】
前記蓄積体に蓄積された前記除去物の蓄積量が所定の蓄積量に達したことを検知する第2センサを備えており、
前記制御部は、
前記第2センサが前記蓄積体に蓄積された前記除去物の蓄積量が所定の蓄積量に達したことを検知したときに前記負圧発生装置を作動停止にすることを特徴とする請求項4に記載のアスベスト回収システム。
【請求項6】
前記吸引ホースから前記収容体に至るまでの経路には、前記吸引ホースにより吸引された前記除去物が外気に触れる箇所が存在しないことを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載のアスベスト回収システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アスベストが含まれている構造物に水を高圧で噴射することにより、構造物から除去されたアスベストを回収するアスベスト回収システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、構造物に使用されているアスベストを除去する作業を行う場合、使用されているアスベストの種類に応じてレベル1~レベル3の作業レベルに区分されている。レベル1は、アスベスト含有吹付け材に対する作業レベルであり、発塵性が著しく高いという区分である。レベル2は、アスベスト含有保温材、アスベスト含有耐火被覆材およびアスベスト含有断熱材に対する作業レベルであり、発塵性が高いという区分である。レベル3は、その他、アスベスト含有成形板などに対する作業レベルであり、発塵性が比較的低いという区分である。
構造物の中でも、煙突の内面には、発塵性の高いレベル2のアスベスト含有断熱材が打ち込まれている。レベル2のアスベスト含有断熱材は、その他のアスベストと比べて特に繊維の露出が多く、また硬度や比重が小さく単一では脆いという特徴がある。このため、粉塵が比較的飛散しやすく、少しの外圧で破損するという特性を有する。
つまり、レベル2のアスベスト含有断熱材を破砕等をもって除去する作業を行う場合は、作業場所の隔離、高濃度の粉塵量に応じた防塵マスクおよび保護衣の使用など、レベル1相当の厳重な暴露対策が必要となる。
【0003】
そこで、従来、煙突の内面に打ち込まれたレベル2のアスベスト含有断熱材を回収するシステムとして、例えば、
図10に記載のシステムが知られている。
図10に示すように、建造物900に設けられた煙突300の側方には、煙突300に沿って足場400が組まれている。また、建造物900の屋上には足場401が組まれており、足場400,401の上部には、隔離区域500が設けられている。隔離区域500の内面の全体は、養生シートによって覆われている。地上には、高圧水供給装置700が配備されており、その高圧水供給装置700に接続された高圧ホース701は、隔離区域500に設けられた滑車402,402を介して煙突300の内部に昇降可能に延びている。高圧ホース701の先端には、アスベスト除去装置702が接続されており、アスベスト除去装置702は、高圧ホース701を介して煙突300の内部を昇降可能になっている。
【0004】
煙突300の下部の側方には、隔離区域501が形成されている。隔離区域501の内面の全体は、養生シートによって覆われている。隔離区域501は、煙突300の下部に形成された開口部301と連通している。隔離区域501には、開口部301から排出されたアスベストを吸引する吸引装置600が配置されている。隔離区域501の隣には、セキュリティゾーン800が配置されており、セキュリティゾーン800には、エアーシャワー装置801が配置されている。
【0005】
アスベスト除去装置702は、高圧水供給装置700から供給される高圧水を煙突300の内面に噴射しながら水平方向に回転し、煙突300の内面に吹付けられたアスベストを除去する。作業者は、隔離区域500に入り、高圧ホース701を操作してアスベスト除去装置702を昇降させる。また、作業者は、全面型防塵マスクおよび保護衣を着用して隔離区域501に入り、煙突300の下に落下したアスベストを開口部301から隔離区域501内に掻き出し、その掻き出したアスベストを吸引装置600によって吸引する。アスベストの吸引作業を行った作業者は、セキュリティゾーン800に入り、エアーシャワー装置801によってエアーを全身に吹き付け、全身に付着したアスベストを除去する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、前述した従来のアスベスト回収システムは、作業者は、密室状態となった隔離区域501において長時間の作業を行うことで、除去されたアスベストを吸引するおそれがある。
また、気温が高いときに全面型防塵マスクおよび保護衣を着用して密室状態で行う作業は、アスベストで汚染された空間での作業になり、また、汗だくになるため、過酷を極める。
つまり、従来のアスベスト回収システムは、作業者の健康を害するおそれが高かった。
また、従来のアスベスト回収システムは、除去したアスベストの粒子が煙突300の先端から外部に飛散しないようにするために、煙突300の先端に隔離区域500を設け、その隔離区域500の内面全体を養生シートによって覆わなければならない。
また、前述したアスベスト除去方法は、セキュリティゾーン800およびエアーシャワー装置801を設置しなければならない。
つまり、前述したアスベスト回収システムは、作業コストが高いという問題がある。
また、前述したアスベスト回収システムは、密室状態となった隔離区域501にて長時間の作業を行うことが困難であるため、定期的に作業を中断するか作業員を交替させなければならないため、作業効率が悪いという問題もある。
【0008】
そこで、本発明は、上述した諸問題を解決するために鋭意研究の結果創出されたものであり、作業者の健康が害されるおそれのないアスベスト回収システムを提供することを目的とする。また、本発明は、作業コストを低減することができ、かつ、作業効率を良くすることができるアスベスト回収システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(第1の発明)
前述した目的を達成するため、本願の第1の発明に係るアスベスト回収システムは、
アスベストが含まれている構造物(10:
図1)に水を高圧で噴射することにより、構造物(10)から除去されたアスベストを回収するアスベスト回収システム(1:
図1)であって、
構造物(10)から除去されたアスベストと噴射された水とが混合した除去物(AS:
図1)を吸引する吸引ホース(52)と、
吸引ホース(52)により吸引された除去物(AS)を吸入し、その吸入した除去物(AS)を吐出する1軸偏心ねじポンプ(100:
図2)と、
1軸偏心ねじポンプ(100)から吐出された除去物(AS)を収容する収容体(61:
図2)と、
1軸偏心ねじポンプ(100)を制御する制御部(64:
図2)と、
を備えていることを特徴とする。
【0010】
本願の第1の発明に係るアスベスト回収システムは、構造物から除去されたアスベストと噴射された水とが混合した除去物を吸引する吸引ホースと、吸引ホースにより吸引された除去物を吸入し、その吸入した除去物を吐出する1軸偏心ねじポンプと、1軸偏心ねじポンプから吐出された除去物を収容する収容体と、1軸偏心ねじポンプを制御する制御部と、を備えている。つまり、1軸偏心ねじポンプは、吸引力が大きいため、粘度が高く、流動性が低い除去物でも吸引して吐出することができるので、アスベストを含む除去物の回収効率を高めることができる。
しかも、制御部を用いて、1軸偏心ねじポンプに設けられているモータの回転数を制御することにより、除去物の吐出量を制御することもできるため、回収すべき除去物の量や収容体の容量などに応じて除去物の吐出量を制御することができるので、作業効率を高めることもできる。
また、除去物を吸入してから吐出するまでの処理は、1軸偏心ねじポンプの内部において行われるため、吸入から吐出するまでの経路において除去物が外気に触れないようにすることができるため、除去物に含まれているアスベストを作業者が吸引するおそれがない。
さらに、1軸偏心ねじポンプは、除去物を定量で吐出することができるため、収容体に収容される除去物が一定時間で所定量に達するので、作業スケジュールを立てやすい。
【0011】
(第2の発明)
本願の第2の発明は、前述した第1の発明に係るアスベスト回収システム(1)において、
収容体(61)の重量が所定の重量に達したことを検知する第1センサ(62:
図2)を備えており、
制御部(64)は、
第1センサ(62)が収容体(61)の重量が所定の重量に達したことを検知したときに1軸偏心ねじポンプ(100)を作動停止にする(S3:
図8)ことを特徴とする。
【0012】
本願の第2の発明によれば、収容体の重量が所定の重量に達したときに1軸偏心ねじポンプを作動停止にすることができるため、収容体の重量が所定の重量を超えたために、収容体から除去物を取り出したときに作業者がアスベストを吸引するおそれがない。
しかも、収容体に収容された除去物の量を定期的に調べる必要がないし、常に同じ重量の収容体を運搬することができるため、作業効率を高めることもできる。
【0013】
(第3の発明)
本願の第3の発明は、前述した第2の発明に係るアスベスト回収システム(1)において、
1軸偏心ねじポンプ(100)には、除去物(AS)を吐出する吐出口(104:
図2)が設けられており、
収容体(61)には、除去物(AS)を取り入れる取入口(61a)が設けられており、
吐出口(104)と取入口(61a)との間には、吐出口(104)から吐出される除去物(AS)を弁を介して取入口(61a)へ排出する弁装置(200:
図2)が設けられており、
制御部(64)は、
第1センサ(62)が収容体(61)の重量が所定の重量に達したことを検知したときに弁が閉じるように弁装置(200)を制御する(S3:
図8)ことを特徴とする。
【0014】
本願の第3の発明によれば、1軸偏心ねじポンプの吐出口と収容体の取入口との間には、吐出口から吐出される除去物を弁を介して取入口へ排出する弁装置が設けられており、収容体の重量が所定の重量に達したときに、弁が閉じるように弁装置を制御することができるため、収容体の重量が所定の重量を超えたために、収容体から除去物を取り出したときに作業者がアスベストを吸引するおそれがない。
しかも、収容体に収容された除去物の量を定期的に調べる必要がないし、常に同じ重量の収容体を運搬することができるため、作業効率を高めることもできる。
【0015】
(第4の発明)
本願の第4の発明は、前述した第1ないし第3のいずれか1つの発明に係るアスベスト回収システム(1)において、
吸引ホース(52)の内部を負圧にする負圧発生装置(81:
図1)と、
吸引ホース(52)と負圧発生装置(81)との間に設けられており、吸引ホース(52)により吸引された除去物(AS)を一時的に蓄積する蓄積体(54:
図2)と、を備えており、
1軸偏心ねじポンプ(100)は、蓄積体(54)に蓄積された除去物(AS)を吸入することを特徴とする。
【0016】
本願の第4の発明によれば、吸引ホースにより吸引された除去物を一時的に蓄積体に蓄積し、その蓄積された除去物を1軸偏心ねじポンプが吸入することができるため、1軸偏心ねじポンプが吸入する除去物を定量化することができる。
また、蓄積体は、吸引ホースと負圧発生装置との間に設けられているため、蓄積体の内部は負圧になるので、蓄積体に蓄積されたアスベストが蓄積体から外部に漏れないようにすることができる。
【0017】
(第5の発明)
本願の第5の発明は、前述した第4の発明に係るアスベスト回収システム(1)において、
蓄積体(54)に蓄積された除去物(AS)の蓄積量が所定の蓄積量に達したことを検知する第2センサ(55:
図2)を備えており、
制御部(64)は、
第2センサ(55)が蓄積体(54)に蓄積された除去物(AS)の蓄積量が所定の蓄積量に達したことを検知したときに負圧発生装置(81)を作動停止にする(S7:
図8)ことを特徴とする。
【0018】
本願の第5の発明によれば、蓄積体に蓄積された除去物の蓄積量が所定の蓄積量に達したときに負圧発生装置を作動停止にすることができるため、蓄積体に蓄積された除去物の蓄積量が所定の蓄積量を超えたために、吸引ホースの負圧が小さくなり、吸引力が低下するおそれがない。
【0019】
(第6の発明)
本願の第6の発明は、前述した第1ないし第5のいずれか1つの発明に係るアスベストシステム(1)において、
吸引ホース(52)から収容体(61)に至るまでの経路(R1)には、吸引ホース(52)により吸引された除去物(AS)が外気に触れる箇所が存在しないことを特徴とする。
【0020】
本願の第6の発明によれば、吸引ホースから収容体に至るまでの経路には、吸引ホースにより吸引された除去物が外気に触れる箇所が存在しないため、作業者および作業現場の周囲に居る者がアスベストを吸引することにより健康を害するおそれがない。
さらに、従来のように、作業現場に隔離区域を設け、その隔離区域の内面全体を養生シートで覆う必要がないため、その分、作業効率を高めることができ、かつ、作業コストを低減することもできる。
【0021】
なお、上記各括弧内の符号および語句は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明の効果】
【0022】
本願発明によれば、作業者の健康が害されるおそれのないアスベスト回収システムを提供することができる。また、本願発明によれば、作業コストを低減することができ、かつ、作業効率を良くすることができるアスベスト回収システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の実施形態に係るアスベスト回収システムの説明図である。
【
図2】
図1に示すアスベスト回収システムに備えられたアスベスト回収装置を拡大して示す説明図である。
【
図3】
図2に示すアスベスト回収装置に備えられた1軸偏心ねじポンプの断面図である。
【
図4】閉塞部材の説明図であり、(A)は閉塞部材の正面図、(B)は閉塞部材の平面図である。
【
図5】
図4に示す閉塞部材の使用方法を示す平面説明図である。
【
図6】
図4に示す閉塞部材の使用方法を示す側面説明図である。
【
図8】
図2に示すアスベスト回収装置に備えられた制御部が実行する処理の流れを示すフローチャートである。
【
図10】従来のアスベスト回収システムを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
[アスベスト回収システムの構成]
本実施形態のアスベスト回収システムの構成について図を参照しつつ説明する。本実施形態では、アスベストが含まれている構造物として煙突を例に挙げて説明する。
【0025】
図1に示すように、建造物90には煙突10が設けられている。煙突10は、先端が開口された筒状の壁11を有する。壁11の内面には、レベル2のアスベスト含有断熱材が打ち込まれている。煙突10の側方には足場91が組まれており、建造物90の屋上には足場92が組まれている。足場92の上には、作業部屋40が設けられている。作業部屋40には滑車23,24が設けられている。また、作業部屋40の内部には、巻上機27が設けられている。煙突10の近傍には、本実施形態のアスベスト回収システム1が配置されている。
【0026】
アスベスト回収システム1は、作業車20と、作業車50と、作業車80とを備えている。作業車20には、高圧水供給装置21と、飛散抑制剤供給装置30とが搭載されている。飛散抑制剤供給装置30に接続されたホース31の先端には、液状の飛散抑制剤を泡状に変換する変換器32が接続されている。変換器32は、煙突10の先端を閉塞した蓋26に隙間無く挿通されている。飛散抑制剤供給装置30から供給される液状の飛散抑制剤は、変換器32によって泡状に変換され、その泡状に変換された飛散抑制剤の泡33は、煙突10の内部に供給され、所定時間を掛けて煙突10の内部に充填される。
飛散抑制剤の種類は、アスベストの粒子の飛散を効果的に抑制できるものであれば限定されるものではなく、例えば、ポリビニルアルコール、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂を主成分とする水溶性樹脂などを使用することができる。煙突10は、本発明の構造物の一例である。
【0027】
高圧水供給装置21に接続された高圧ホース22は、滑車23,24を介して煙突10の内部に延びており、その高圧ホース22の先端は、アスベストを除去する除去装置25に接続されている。また、除去装置25は、ワイヤ28を介して巻上機27と接続されており、巻上機27によって煙突10の内部を昇降可能となっている。除去装置25の詳細は図示しないが、除去装置25としては、公知の装置を用いることができ、例えば、基部と、この基部から煙突10の壁11の内面に向けて放射状に延びた複数の噴射ノズルと、上記基部を水平方向に回転させるエアモータとを備えている。各噴射ノズルは、高圧水供給装置21から高圧ホース22を介して供給される高圧水を煙突10の壁11の内面に噴射し、壁11の内面に吹付けられたアスベスト含有吹付け材を水圧によって除去する。除去装置25の能力は、例えば、245MPaの高圧水を噴射し、最高吐出流量が50リットル/分である。また、作業車20には、除去装置25に設けられたエアモータに圧縮空気を供給する圧縮空気供給装置(図示省略)が搭載されている。
【0028】
煙突10の下部の壁11には、煙突10の内部および外部に連通する開口部12が形成されており、その開口部12には、開口部12を閉塞する閉塞部材70が取付けられている。除去装置25が高圧水を煙突10の壁11に高圧水を噴射すると、壁11に含まれているアスベストの他、壁11を形成しているコンクリートの粒子および飛散抑制剤などが、噴射した水と混合され、それらは泥状の除去物ASとなって落下する。閉塞部材70には、煙突10の下部に落下して蓄積された除去物ASを吸引する吸引ホース52が挿通されている。吸引ホース52は、作業車50に搭載されたアスベスト回収装置51と接続されている。アスベスト回収装置51は、吸引ホース53を介して、作業車80に搭載された負圧発生装置81と接続されている。負圧発生装置81は、吸引ホース52の内部を負圧にし、かつ、吸引ホース52に吸引された除去物ASを回収する機能を備えている。負圧発生装置81には、除去物ASと共に吸引した気体を大気へ排気するための排気パイプ82が備えられている。
【0029】
本実施形態では、排気パイプ82にはヘパフィルタ(図示せず)が取付けられている。ヘパフィルタは、JISZ8122に規定されており、定格風量で粒径が0.3オmの粒子に対して99.97%以上の粒子捕集率をもち、かつ、初期圧力損失が245Pa以下の性能を持つエアフィルタである。つまり、ヘパフィルタを用いることにより、0.3オm以下のアスベスト粒子を99.97%以上濾過することができるため、排気パイプ82から大気中に排出されたアスベスト粒子を作業者が吸い込んで健康を害するおそれがなくなる。
【0030】
(アスベスト回収装置)
ここで、アスベスト回収装置51の構成について
図2を参照しつつ説明する。
アスベスト回収装置51は、蓄積体54と、1軸偏心ねじポンプ100と、弁装置200と、収容体61と、第1センサ62と、第2センサ55と、フィルタ59と、制御部64とを備えている。
【0031】
蓄積体54は、吸引ホース52と、負圧発生装置81(
図1)と接続された吸引ホース53との間に設けられている。本実施形態では、蓄積体54は、ホッパの形状に形成されている。蓄積体54の下部には、蓄積体54に蓄積された除去物ASを排出するための排出口54aが開口形成されている。
吸引ホース53は、蓄積体54の上部に取付けられている。こうすることにより、吸引ホース52から排出された除去物ASが、吸引された勢いで直接吸引ホース53に入らないようにすることができる。蓄積体54と吸引ホース53との接続箇所には、蓄積体54の内部に吸引された除去物ASに含まれているアスベストなどを濾過するフィルタ59が設けられている。フィルタ59の目を細かくすると吸引力が低下し、目を粗くすると濾過されないアスベストの粒子が大きくなるため、フィルタ59の種類は、吸引力および濾過能力を考慮して決定する。例えば、フィルタ59としてデミスターなどの金網を用いることができる。
第2センサ55は、蓄積体54に蓄積された除去物ASが所定量に達したことを検知するセンサであり、制御部64と接続されている。例えば、第2センサ55は、近接センサである。また、近接センサに代えてリミットスイッチを用いることもできる。
【0032】
1軸偏心ねじポンプ100は、モータ101と、ケーシング102とを備えており、そのケーシング102には、吸入口103および吐出口104が設けられている。吸入口103は、蓄積体54の排出口54aと接続されており、吐出口104は、接続部材60を介して弁装置200と接続されている。モータ101は、制御部64と接続されており、制御部64がモータ101の作動および停止を制御するように構成されている。接続部材60は、ホースまたはパイプである。
図3に示すように、1軸偏心ねじポンプ100は、モータ101と接続されたドライブシャフト105と、このドライブシャフト105を軸支する軸受111と、ドライブシャフト105と接続されたユニバーサルジョイント107と、ユニバーサルジョイント107に一端が接続されたカップリングロッド106と、カップリングロッド106の他端に接続されたユニバーサルジョイント108と、一端がユニバーサルジョイント108に接続されたロータ109と、このロータ109の周囲を覆うステータ110とを備えている。ドライブシャフト105の回転中心は、ユニバーサルジョイント107、カップリングロッド106およびユニバーサルジョイント108によって偏心され、ロータ109の回転が偏心する。
【0033】
蓄積体54の排出口54aから排出された除去物ASは、1軸偏心ねじポンプ100の吸入口103から吸入され、回転するユニバーサルジョイント107、カップリングロッド106およびユニバーサルジョイント108によってロータ109の方に送り出される。そして、ロータ109の方に送り出された除去物ASは、偏心して回転するロータ109により、ロータ109とステータ110との間に形成される空間内を吐出口104の方に送り出され、吐出口104から接続部材60に定量で吐出される。なお、モータ101を逆回転させると、ロータ109とステータ110との間に形成される空間内にある除去物Rは、カップリングロッド106の方に逆流し、吸入口103から吐出される。
【0034】
弁装置200は、弁が内蔵された本体201と、流入口202と、流出口204と、弁を作動するためのエアシリンダ203とを備えている。流入口202は、接続部材60を介して1軸偏心ねじポンプ100の吐出口104と接続されている。流出口204は、接続部材205を介して収容体61の取入口61aと接続されている。接続部材205は、例えば、ホースまたはパイプなどである。エアシリンダ203は、制御部64と接続されており、制御部64がエアシリンダ203を制御し、弁の開閉を行うことができるように構成されている。
【0035】
収容体61の上端には、弁装置200の流出口204から排出される除去物ASを受入れる取入口61aが密封可能に開口している。取入口61aには接続部材205の下端が挿通されており、取入口61aの下端には、封止部材56が装着されており、その封止部材56によって取入口61aと接続部材205とが封止されている。封止部材56は、例えば、ゴム製または合成樹脂製のバンドである。本実施形態では、収容体61は運搬可能な袋状に形成されている。例えば、収容体61は、アスベストの粒子が漏れることのない材料、例えば、ポリエチレンにより形成することができる。収容体61の肉厚が薄い場合は、収容体61を二重にすることにより、破損を防止し、アスベストが漏れないようにする。
【0036】
また、本実施形態では、収容体61の容量は、基本的に作業者が手で持ち上げて回収するため、回収されたアスベストを持ち上げることができる容量、例えば、20~40リットルである。また、収容体61としてさらに大きい容量(例えば、1立方メートル)のものを用いる場合は、ポリエチレンなどにより形成された収容体61を、通称、フレコン(株式会社ナシヨナルマリンプラスチツクの登録商標で、フレキシブルコンテナバッグの略称)と呼ばれるものに入れ、クレーンなどを使って運搬するようにしても良い。
収容体61は、収容体61の重量が所定の重量に達したことを検知する第1センサ62の上に載置されている。第1センサ62は制御部64と接続されており、制御部64は、第1センサ62の検知結果に基づいて1軸偏心ネジポンプ100の作動および停止、並びに、弁装置200の弁の開作動および閉作動を制御する。また、制御部64は、負圧発生装置81と接続されており、第2センサ55の検知結果に基づいて負圧発生装置81の作動および停止を制御する。
【0037】
(閉塞部材)
ここで、閉塞部材70の構造について図を参照しつつ説明する。
図4に示すように、閉塞部材70は、煙突10の下部の壁11に形成された開口部12(
図1)に合致した形状に形成されている。本実施形態では、開口部12は矩形に形成されており、閉塞部材70は、開口部12に合致した矩形で板状に形成されている。閉塞部材70は、開口部12に合致した矩形で板状の本体71を備えている。本体71には、吸引ホース52を挿通するために貫通形成された挿通孔72と、第1の貫通孔73と、第2の貫通孔74と、通気口77と、この通気口77に取付けられたフィルタ78とを備えている。本実施形態では、フィルタ78は、前述したヘパフィルタである。このため、通気口77から煙突10の外へ排出されたアスベスト粒子を作業者が吸い込んで健康を害するおそれがなくなる。また、本体71は、アクリルなどの合成樹脂により透明に形成されている。
【0038】
第1の貫通孔73からは、作業者Pの左腕に装着する第1のグローブ75が突出しており、第2の貫通孔74からは、作業者Pの右腕に装着する第2のグローブ76が突出している。第1のグローブ75および第2のグローブ76は、それぞれ少なくとも肘よりも肩に近い部分から指先までを密閉する構造になっている。また、第1のグローブ75の周囲は、第1の貫通孔73の周囲と密着しており、第1のグローブ75と第1の貫通孔73との間には隙間が形成されていない。また、第2のグローブ76の周囲は、第2の貫通孔74の周囲と密着しており、第2のグローブ76と第2の貫通孔74との間には隙間が形成されていない。
【0039】
つまり、本体71と、第1のグローブ75と、第2のグローブ76とは、いわゆるグローブボックスの構造を利用して構築することができる。グローブボックスとは、外気と遮断された状況下で作業が可能となるように、内部に腕だけが入れられるよう設計された密閉容器である。また、挿通孔72の周縁からは、挿通孔72の径よりも小径のスカート部72aが形成されている。本実施形態では、スカート部72aはゴム製であり、挿通孔72に挿通された吸引ホース52の外周面に密着し、吸引ホース52と挿通孔72との間に隙間が形成されないようになっている。
つまり、閉塞部材70は、アスベストの吸引作業を行うときに、アスベストが開口部12を通じて煙突10の外部に漏れない構造になっている。
また、本体71は、透明であるため、アスベストの吸引作業中に、吸引ホース52の位置を閉塞部材70の外から視認することができる。
【0040】
制御部64は、第1センサ62と、第2センサ55と、モータ101と、弁装置200と、負圧発生装置81とに接続されており、第1センサ62および第2センサ55の検知結果に基づいてモータ101と、弁装置200と、負圧発生装置81とを制御する。制御部64は、モータ101と、弁装置200と、負圧発生装置81とを制御するための制御プログラムやテーブルなどが格納されたROMと、このROMから読出された制御プログラムを展開して格納するRAMと、このRAMに展開された制御プログラムを実行するCPUとを備えている。また、RAMは、CPUの処理結果などを一時的に格納する。
【0041】
[アスベスト回収方法]
次に、アスベスト回収方法について
図7を参照しつつ説明する。
(工程1)
最初に、アスベストを除去して回収するための準備を行う。具体的には、
図1に示すように、煙突10の側方に足場91を組み、煙突10が設置された建造物90の屋上に煙突10の先端の周囲を囲むように足場92を組む。また、足場92の上に作業部屋40を設置し、作業部屋40に滑車23,24を取付け、作業部屋40に巻上機27を配置する。また、煙突10の近傍にアスベスト回収システム1を配置する。また、煙突10の先端に蓋26を被せて煙突10の先端を閉塞し、その蓋26に変換器32を隙間無く挿通する。また、煙突10の下部の壁11に形成された開口部12を閉塞部材70によって隙間無く閉塞する。また、高圧ホース22を滑車23,24に架け渡し、その高圧ホース22を除去装置25に接続し、ワイヤ28を除去装置25に接続し、煙突10内を下降させる準備をする。また、高圧ホース22およびワイヤ28は、蓋26に隙間無く挿通し、除去装置25を蓋26が装着された煙突10の内部上端に配置する。
【0042】
(工程2)
次に、飛散抑制剤供給装置30から飛散抑制剤を変換器32へ供給し、変換器32によって飛散抑制剤を泡状に変換し、その泡状の飛散抑制剤を煙突10の内部に充填する。泡状の飛散抑制剤が煙突10の内部に充填されるまでに要する時間は、煙突10の容積、変換器32が吐出する飛散抑制剤の単位時間当りの量などに応じて予め実験により求めておくことができる。
【0043】
(工程3)
次に、泡状の飛散抑制剤が煙突10の壁11の内面に打ち込まれたアスベストに浸透するまで所定時間待機する。この所定時間は、打ち込まれているアスベストの種類または厚さに応じて、予め実験により求めておくことができる。
【0044】
(工程4)
次に、高圧水供給装置21を作動させ、高圧水を高圧ホース22を介して除去装置25へ供給する。また、圧縮空気供給装置を作動させ、圧縮空気を除去装置25のエアモータへ供給する。これにより、除去装置25の各噴射ノズルは、水平方向に回転しながら高圧水を煙突10の壁11の内面に噴射し、その水圧でアスベストを剥離して除去する。
また、アスベストを除去しながら、巻上機27を操作し、除去装置25を所定の下降速度にて煙突10の底部に向けて下降させる。除去装置25の下降速度は、除去装置25の除去能力、アスベストの種類、アスベストの厚さなどに応じて、予め実験により求めておくことができる。
また、負圧発生装置81およびアスベスト回収装置51を作動させ、煙突10の底部に落下して蓄積される除去物ASを吸引し、アスベスト回収装置51に回収する。除去物ASの吸引作業を行う作業者Pは、前述したように、左腕を第1のグローブ75(
図4)に挿入し、右腕を第2のグローブ76に挿入する。そして、
図5および
図6に示すように、作業者Pが両手で吸引ホース52を操作し、煙突10の底部に蓄積した除去物ASを吸引ホース52によって吸引する。
【0045】
吸引された除去物ASは、蓄積体54(
図2)に一時的に蓄積され、蓄積体54の排出口54aから排出され、1軸偏心ねじポンプ100の吸入口103から吸入される。そして、1軸偏心ねじポンプ100の吐出口104から排出された除去物ASは、接続部材60を通じて弁装置200の流入口202から流入し、流出口204から収容体61に流出する。そして、収容体61に収容された除去物ASが所定の重量になったときに、1軸偏心ねじポンプ100を作動停止し、弁装置200の弁を閉作動させ、封止部材56を緩め、収容体61の取入口61aを接続部材205から外す。そして、直ぐに封止部材56を締め、取入口61aを封止し、収容体61を運び出し、新しい収容体61を接続部材205に接続する。
【0046】
(工程5)
次に、除去装置25が煙突10の底部に到達し、アスベストの除去を煙突10の底部まで行った後、煙突10の壁11の内面を撮影し、アスベストの除去状態を確認する。例えば、除去装置25、または、除去装置25を吊り下げていたワイヤ28にカメラおよび照明器具を取付け、そのカメラおよび照明器具を煙突10の内部で昇降させ、煙突10の壁11の内面を撮影し、その撮影画像を、作業現場に設けたモニタに映し、その映った画像を見て、アスベストの除去状態を確認する。その結果、アスベストが残存していることが分かった場合は、再度、工程2~工程5を実行する。この場合、残存しているアスベストに飛散抑制剤が浸透している場合、あるいは、残存量が少ない場合は、工程2,3を省略し、工程4のみを実行しても良い。
【0047】
(工程6)
次に、飛散抑制剤を煙突10の内面にコーティングする。例えば、除去装置25の各噴射ノズルから飛散抑制剤を煙突10の内面に噴射する。また、飛散抑制剤を噴射する噴射ノズルを除去装置25に取付け、その噴射ノズルから飛散抑制剤を煙突10の内面に噴射することもできる。この場合、飛散抑制剤の噴射速度は、高圧水を噴射してアスベストを除去するときのような噴射速度である必要はなく、噴射した飛散抑制剤が煙突10の内面に届く噴射速度であれば良い。また、除去装置25に代えて、飛散抑制剤を噴射する専用装置を煙突10の内部に吊り下げ、飛散抑制剤を噴射しながら、その専用装置を昇降させる方法でも良い。
【0048】
[制御部の処理内容]
次に、上述した工程4において制御部64(
図2)が実行する処理内容について
図8を参照しつつ説明する。以下の説明では、制御部64が実行する処理ステップをSと略す。
【0049】
制御部64は、負圧発生装置81(
図1)および1軸偏心ねじポンプ100に対して作動命令を出力し、除去物ASの吸引・回収を開始させる(S1)。このS1の処理は、制御部64に接続された吸引スイッチ(図示せず)がオンしたときに開始する。この吸引スイッチは、吸引ホース52を操作する作業者の近傍に配置することもできる。続いて、制御部64は、第1センサ62(
図2)がオンしたか否かを判断し(S2)、オンしたと判断した場合は(S2:Yes)、1軸偏心ねじポンプ100を作動停止するとともに弁装置200を閉作動させる(S3)。続いて、制御部64は、収容体61の重量が所定の重量に達したことを示す収容体満杯報知を実行する(S4)。例えば、制御部64には、収容体61の重量が所定の重量に達したことを報知する報知ランプおよび報知スピーカが接続されており、その報知ランプを点灯させ、かつ、報知スピーカから所定の音を出力することにより、収容体61が除去物で満杯になったことを周囲の作業者に報知する。報知ランプおよび報知スピーカは、吸引ホース52を操作する作業者の近傍に配置することもできる。
【0050】
続いて、制御部64は、第2センサ55(
図2)がオンしたか否かを判断し(S6)、オンしたと判断した場合は(S6:Yes)、負圧発生装置81を作動停止にする(S7)。つまり、第2センサ55がオンした状態は、蓄積体54に蓄積された除去物ASの蓄積量が所定の蓄積量に達したことを表しているから、除去物ASの吸引を中断する。続いて、制御部64は、蓄積体54に蓄積された除去物ASの蓄積量が所定の蓄積量に達したことを示す蓄積体満杯報知を実行する(S8)。例えば、制御部64には、蓄積体54に蓄積された除去物ASの蓄積量が所定の蓄積量に達したことを報知する報知ランプおよび報知スピーカが接続されており、その報知ランプを点灯させ、かつ、報知スピーカから所定の音を出力することにより、蓄積体54に蓄積された除去物ASの蓄積量が所定の蓄積量に達したことを周囲の作業者に報知する。報知ランプおよび報知スピーカは、吸引ホース52を操作する作業者の近傍に配置することもできる。
また、制御部64は、第1センサ62がオンしていないと判断した場合は(S2:No)、1軸偏心ねじポンプ100の作動を継続するとともに弁装置200の開作動状態を維持する(S5)。また、制御部64は、第2センサ55がオンしていないと判断した場合は(S6:No)、負圧発生装置81の作動を継続する(S9)。
【0051】
図9は、アスベスト回収経路の説明図である。前述した煙突10のようなアスベストの除去および回収を行う作業現場Wは、吸引ホース52によりアスベスト回収装置51と接続されており、アスベスト回収装置51は、吸引ホース53により負圧発生装置81と接続されている。アスベスト回収経路は、作業現場Wからアスベスト回収装置51に至る経路R1と、アスベスト回収装置51から負圧発生装置81に至る経路R2とから構成されている。作業現場W、吸引ホース52,53、作業者P、アスベスト回収装置51および負圧発生装置81が置かれている環境をEとすると、経路R1,R2では、回収されるアスベストが外気に触れる箇所が存在しないため、作業者Pを初めとして環境Eに存在する者がアスベストを吸引して健康を害するおそれがない。
従って、本来であれば、煙突10のアスベストは本来レベル2の区分であるが、切断・穿孔・研磨を伴う(破砕等を伴う)ため、レベル1に対応した作業環境(作業現場の隔離養生、作業者の全面型防塵マスクおよび防護衣など)を作る必要があるが、本実施形態のアスベスト回収装置51およびアスベスト回収システム1によれば、レベル3の区分に対応した作業環境を作れば良い。このため、作業効率を高めることができ、かつ、作業コストを低減することができる。
【0052】
[実施形態の効果]
(1)上述した実施形態のアスベスト回収システム1は、煙突10の壁11から除去されたアスベストなどと噴射された水とが混合した泥状の除去物ASを吸引する吸引ホース52と、吸引ホース52により吸引された除去物ASを吸入し、その吸入した除去物ASを吐出する1軸偏心ねじポンプ100と、1軸偏心ねじポンプ100から吐出された除去物ASを収容する収容体61と、1軸偏心ねじポンプ100を制御する制御部64と、を備えている。つまり、1軸偏心ねじポンプ100は、吸引力が大きいため、粘度が高く、流動性が低い除去物ASでも吸引して吐出することができるので、アスベストを含む泥状の除去物ASの回収効率を高めることができる。
【0053】
(2)しかも、制御部64を用いて、1軸偏心ねじポンプ100に設けられているモータ101の回転数を制御することにより、除去物ASの吐出量を制御することもできるため、回収すべき除去物ASの量や収容体61の容量などに応じて除去物ASの吐出量を制御することができるので、作業効率を高めることもできる。
【0054】
(3)また、除去物ASを吸入してから吐出するまでの処理は、1軸偏心ねじポンプ100の内部において行われるため、吸入から吐出するまでの経路において除去物ASが外気に触れないようにすることができるため、除去物ASに含まれているアスベストを作業者が吸引するおそれがない。
【0055】
(4)さらに、1軸偏心ねじポンプ100は、除去物ASを定量で吐出することができるため、収容体61に収容される除去物ASが一定時間で所定量に達するので、作業スケジュールを立てやすい。
【0056】
(5)さらに、前述した実施形態のアスベスト回収システム1によれば、収容体61の重量が所定の重量に達したときに1軸偏心ねじポンプ100を作動停止にすることができるため、収容体61の重量が所定の重量を超えたために、収容体61から除去物ASを取り出したときに作業者がアスベストを吸引するおそれがない。
しかも、収容体61に収容された除去物ASの量を定期的に調べる必要がないし、常に同じ重量の収容体61を運搬することができるため、作業効率を高めることもできる。
【0057】
(6)さらに、前述した実施形態のアスベスト回収システム1によれば、1軸偏心ねじポンプ100の吐出口104と収容体61の取入口61aとの間には、吐出口104から吐出される除去物ASを弁を介して取入口61aへ排出する弁装置200が設けられており、収容体61の重量が所定の重量に達したときに、弁が閉じるように弁装置200を制御することができるため、収容体61の重量が所定の重量を超えたために、収容体61から除去物ASを取り出したときに作業者がアスベストを吸引するおそれがない。
しかも、収容体61に収容された除去物ASの量を定期的に調べる必要がないし、常に同じ重量の収容体61を運搬することができるため、作業効率を高めることもできる。
【0058】
(7)さらに、前述した実施形態のアスベスト回収システム1によれば、吸引ホース52により吸引された除去物ASを一時的に蓄積体54に蓄積し、その蓄積された除去物ASを1軸偏心ねじポンプ100が吸入することができるため、1軸偏心ねじポンプ100が吸入する除去物ASを定量化することができる。
【0059】
(8)さらに、前述した実施形態のアスベスト回収システム1によれば、蓄積体54の内部は負圧になるため、蓄積体54に蓄積されたアスベストが蓄積体54から外部に漏れないようにすることができる。
【0060】
(9)さらに、前述した実施形態のアスベスト回収システム1によれば、蓄積体54の蓄積量が所定の蓄積量に達したときに負圧発生装置81を作動停止にすることができるため、蓄積体54の蓄積量が所定の蓄積量を超えたために、吸引ホース52の負圧が小さくなり、吸引力が低下するおそれがない。
【0061】
(10)さらに、前述した実施形態のアスベスト回収システム1によれば、吸引ホース52から収容体61に至るまでの経路R1には、吸引ホースにより吸引された除去物ASが外気に触れる箇所が存在しないため、作業者および作業現場の周囲に居る者がアスベストを吸引することにより健康を害するおそれがない。
さらに、従来のように、作業現場に隔離区域を設け、その隔離区域の内面全体を養生シートで覆う必要がないため、その分、作業効率を高めることができ、かつ、作業コストを低減することができる。
【0062】
〈他の実施形態〉
(1)1軸偏心ねじポンプ100として、吸入口103から吸入された除去物ASを破砕する破砕部が、カップリングロッド106およびユニバーサルジョイント107,108の前段または後段に設けられた構造のものを適用することもできる。この1軸偏心ねじポンプ100を用いれば、除去物ASの中に粒径の大きいコンクリートの破片などが混在している場合であっても、それを破砕して粒径を小さくしてから、ロータ109およびステータ110に送ることができるため、除去物ASがロータ109およびステータ110間に詰まるおそれがない。
【0063】
(2)弁装置200として、2つの流出口204を有する三方弁構造のものを用い、各流出口204のそれぞれに収容体61を取り付け、2つの第1センサ62を用意し、各収容体61を個別に第1センサ62の上に配置することもできる。そして、弁装置200の一方の流出口204に取り付けられた収容体61の重量が所定の重量になったことが第1センサ62によって検知されたときに、弁装置200の弁を切り替え、弁装置200の他方の流出口204に取り付けられた収容体61に除去物ASを収容するように切り替える。この構成を備えたアスベスト回収システムによれば、一方の収容体61を新しい収容体61に取り替える間に、他方の収容体61に除去物ASの収容を開始することができるため、作業効率を高めることができる。
【0064】
(3)蓄積体54に凝固剤を注入するように構成することもできる。例えば、ポンプ駆動によって凝固剤を噴射する構造の凝固剤供給装置と蓄積体54とをホースによって接続し、蓄積体54の内部から、ホースの先端に接続された噴射ノズルが露出した構造にする。また、制御部64が凝固剤供給装置を制御するように構成し、負圧発生装置81が作動していることを条件にして、一定時間置きに凝固剤を噴射し、蓄積体54の内部に蓄積された除去物ASを凝固させる。
【0065】
(4)また、収容体61の重量を計測する装置を設け、その装置が計測した重量を制御部64が検知し、重量が所定値増加する毎に凝固剤供給装置から凝固剤を蓄積体54の内部に噴射するように構成することもできる。
(5)また、凝固剤を1軸偏心ねじポンプ100に注入し、除去物ASがポンプ内を移動する過程で除去物ASを凝固させることもできる。
(6)凝固剤としては、例えば、高分子ポリマーを用いることができる。
【0066】
(7)煙突10の内面に吹付けられたアスベストの種類、アスベストの厚さ、飛散抑制剤がアスベストに浸透する時間、煙突10の容積などの外部要因と、飛散抑制剤を煙突10に充填するために必要な飛散抑制剤の容量との関係を実験により求め、上記外部要因が分かれば、飛散抑制剤の必要な容量が分かるようにしておくこともできる。
例えば、上記外部要因と飛散抑制剤の容量との対応関係をテーブルにして制御部64のRAMに記憶しておき、制御部64に接続された入力部(例えば、数値入力キーなど)から上記外部要因の各値を入力すると、制御部64がRAMの上記テーブルを参照し、入力された外部要因に対応する飛散抑制剤の容量を、制御部64に接続された表示部(例えば、液晶表示装置など)に表示するように構成することもできる。
また、飛散抑制剤供給装置30が供給する飛散抑制剤の容量が、上記の必要な容量に達したときに、飛散抑制剤供給装置30が自動的に飛散抑制剤の供給を停止するように構成することもできる。
【0067】
(8)工程2において、例えば、除去装置25の各噴射ノズルから飛散抑制剤を煙突10の内面に噴射することにより、飛散抑制剤を煙突10の壁11の内面にコーティングすることもできる。また、飛散抑制剤を噴射する噴射ノズルを除去装置25に取付け、その噴射ノズルから飛散抑制剤を煙突10の壁1に噴射することもできる。この場合、飛散抑制剤の噴射速度は、高圧水を噴射してアスベストを除去するときのような噴射速度である必要はなく、噴射した飛散抑制剤が煙突10の内面に届く噴射速度であれば良い。また、除去装置25に代えて、飛散抑制剤を噴射する専用装置を煙突10の内部に吊り下げ、飛散抑制剤を噴射しながら、その専用装置を昇降させる方法でも良い。
【0068】
(9)吸引ホース52によって除去物ASを吸引する前に、吸引ホース52によって飛散抑制剤を吸引し、飛散抑制剤を吸引ホース52、蓄積体54、接続部材60、1軸偏心ねじポンプ100、弁装置200および接続部材205の内部にコーティングしておくコーティング工程を加えることもできる。このコーティング工程を加えれば、作業終了後にアスベスト回収システム1を分解した際に、それら分解されたものの内部に残っていたアスベストが外部に漏れにくいようにすることができるため、作業現場にいる者がアスベストを吸引して健康を害するおそれがない。また、吸引ホース53の内面に飛散抑制剤をコーティングしておくこともできる。
【符号の説明】
【0069】
1 アスベスト回収システム
10 煙突
21 高圧水供給装置
25 除去装置
30 飛散抑制剤供給装置
51 アスベスト回収装置
52 吸引ホース
53 吸引ホース
54 蓄積体
54a 排出口
55 第2センサ
59 フィルタ
60 接続部材
61 収容体
61a 取入口
62 第1センサ
64 制御部
81 負圧発生装置
100 1軸偏心ねじポンプ
103 吸入口
104 吐出口
200 弁装置
202 流入口
204 流出口
AS 除去物
P 作業者
R1,R2 経路