(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022181713
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】製造装置
(51)【国際特許分類】
C23C 14/56 20060101AFI20221201BHJP
C23C 16/54 20060101ALI20221201BHJP
H01L 21/31 20060101ALN20221201BHJP
【FI】
C23C14/56 F
C23C16/54
H01L21/31 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021088804
(22)【出願日】2021-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(72)【発明者】
【氏名】浅井 海図
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健司
(72)【発明者】
【氏名】中田 勝之
【テーマコード(参考)】
4K029
4K030
5F045
【Fターム(参考)】
4K029AA24
4K029BB02
4K029DC16
4K029KA01
4K029KA09
4K030FA10
4K030GA12
4K030HA01
5F045AA19
5F045BB08
5F045GB17
(57)【要約】
【課題】
基板上に多層膜を成長させる製造装置において、組み合わせ計算に基づいて材料源の配置を決定することでスループットの向上を行うことを目的とする。
【解決手段】
基板搬送機構を備えた有する搬送チャンバーと、1つ以上の材料源を備えた少なくとも一つの成膜チャンバーを有する成膜チャンバー部と、を備え、成膜チャンバーは少なくとも一つの材料源を備え、成膜チャンバー部と、それぞれが前記搬送チャンバーと前記基板の受け渡しができるように、前記搬送チャンバーの周囲に配置されており、材料源の成膜チャンバー部での配置は、遺伝的アルゴリズムに基づいて決定される、基板上に多層膜を成長させる製造装置。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に多層膜を成長させる製造装置であって、
基板搬送機構を有する少なくとも一つの搬送チャンバーを有する搬送チャンバー部と、
少なくとも一つの成膜チャンバーを有する成膜チャンバー部と、を備え、
前記成膜チャンバーは少なくとも一つの材料源を備え、
前記成膜チャンバーと前記搬送チャンバーとの間で前記基板を受け渡しできるように、前記搬送チャンバーの周囲に前記成膜チャンバーが配置されており、
前記成膜チャンバーにおける前記材料源の配置は、遺伝的アルゴリズムに基づいて決定されることを特徴とする製造装置。
【請求項2】
前記成膜チャンバー部は複数の成膜チャンバーを有し、
前記複数の成膜チャンバー間での前記材料源の配置は遺伝的アルゴリズムに基づいて決定されることを特徴とする請求項1に記載の製造装置。
【請求項3】
前記遺伝的アルゴリズムは前記成膜チャンバーの数によって遺伝子長が決定され、
前記成膜チャンバー部の前記材料源の総数によって対立遺伝子の数が決定されることを特徴とする請求項1または2に記載の製造装置。
【請求項4】
前記遺伝的アルゴリズムは前記成膜チャンバーの数以上を遺伝子長とし、
前記成膜チャンバー部の前記材料源の総数以上を対立遺伝子の数とすることを特徴とする請求項3に記載の製造装置。
【請求項5】
前記遺伝的アルゴリズムは前記成膜チャンバーの数を遺伝子長とし、
前記成膜チャンバー部の前記材料源の総数を対立遺伝子の数とすることを特徴とする請求項4に記載の製造装置。
【請求項6】
前記成膜チャンバー内での前記材料源の配置は遺伝的アルゴリズムに基づいて決定されることを特徴する請求項1または2に記載の製造装置。
【請求項7】
前記成膜チャンバーの少なくとも一つは前記材料源を備えるためのスロットを有し、
前記遺伝的アルゴリズムは前記成膜チャンバー内の前記スロットの数によって遺伝子長が決定され、
前記材料源の数によって対立遺伝子の数が決定されることを特徴とする請求項6に記載の製造装置。
【請求項8】
前記遺伝的アルゴリズムは前記成膜チャンバー内の前記スロットの数以上を遺伝子長とし、
前記スロットに備えられる前記材料源の数以上を対立遺伝子の数とすることを特徴とする請求項7に記載の製造装置。
【請求項9】
前記遺伝的アルゴリズムは前記成膜チャンバー内の前記スロットの数を遺伝子長とし、
前記スロットに備えられる前記材料源の数を対立遺伝子の数とすることを特徴とする請求項8に記載の製造装置。
【請求項10】
前記製造装置の前記成膜チャンバー部は複数の成膜チャンバーを有し、前記複数の成膜チャンバーにおいて前記材料源の配置は遺伝的アルゴリズムに基づいて決定されることを特徴する請求項1に記載の製造装置。
【請求項11】
前記遺伝的アルゴリズムは前記製造装置内の全スロット数によって遺伝子長が決定され、
前記材料源の数によって対立遺伝子の数が決定されることを特徴とする請求項10の記載の製造装置。
【請求項12】
前記遺伝的アルゴリズムは前記製造装置内の全スロット数以上を遺伝子長とし、
前記材料源の数以上を対立遺伝子の数とすることを特徴とする請求項11に記載の製造装置
【請求項13】
前記遺伝的アルゴリズムは前記製造装置内の全スロット数を遺伝子長とし、
前記材料源の数を対立遺伝子の数とすることを特徴とする請求項12に記載の製造装置。
【請求項14】
基板上に多層膜を成長させる製造装置であって、
基板搬送機構を備えた搬送チャンバーと1つ以上の材料源を備えた複数の成膜チャンバーと、
プロセスチャンバーとを備え、
前記複数の成膜チャンバーと、前記プロセスチャンバーとは、それぞれが前記搬送チャンバーと前記基板の受け渡しができるように、前記搬送チャンバーの周囲に配置されており、
前記基板の受け渡しは、組み合わせ計算に基づいて制御されたスケジューリングに従い決定されることを特徴とする製造装置。
【請求項15】
前記組み合わせ計算は、有向グラフを介した遺伝的アルゴリズムによって計算が実行されることを特徴とする請求項14に記載の製造装置。
【請求項16】
前記有向グラフは、巡回経路を持たない有向非巡回グラフを介して計算が実行されることを特徴とする請求項15に記載の製造装置。
【請求項17】
前記遺伝的アルゴリズムは制約を有し、
前記制約は前記製造装置における前記成膜チャンバー数及び前記スロット数を反映する請求項1~13のいずれか一項に記載の製造装置。
【請求項18】
前記遺伝的アルゴリズムは制約を有し、
前記遺伝的アルゴリズムにおいてある個体が前記制約を満たさない場合においては確率を用いて前記制約を満たすように個体を生成し直す、請求項17に記載の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ウェハ上に多層膜を成膜する成膜装置が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
多層膜を成膜する製造装置が提案されている。この多層膜を成膜する製造装置ではターゲットが沢山設置されており、複数のウエハを最適なスループットで成膜することは困難である。例えば、成膜する順番に成膜チャンバーが設置されており、それぞれにターゲットが設置され、多層膜を形成する順番にウエハが成膜チャンバーを移動することできれば、スループットを改善することができる。しかしながら、成膜時間がそれぞれのチャンバーで異なる場合には、待機時間などの問題を解決するためには、さらに複数のチャンバーを設置するなど、設備投資が非常に大きくなってしまうという課題がある。
【0005】
複数の多層膜を並行して成膜する際に、スループットは各成膜チャンバーに配置する材料源の配置に依存するが、その組み合わせは膨大となり、最適化が困難である。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、本発明は組み合わせ計算に基づいて材料源の配置を決定することでスループットの向上を行うことを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明にかかる製造装置は、基板上に多層膜を成長させる製造装置であって、基板搬送機構を備えた搬送チャンバーと、1つ以上の材料源を備えた成膜チャンバー部を備え、成膜チャンバー部と、それぞれが前記搬送チャンバーと基板の受け渡しができるように、搬送チャンバーの周囲に配置されており、材料源の成膜チャンバー部での配置は、遺伝的アルゴリズムに基づいて決定されることを特徴とする製造装置である。
【0008】
遺伝的アルゴリズムとは、生物が進化の過程でその形態を最適化させる過程を模したアルゴリズムである。
【0009】
遺伝的アルゴリズムに於いて最適化される1つ以上の変数の各々を遺伝子と呼び、また各々の遺伝子の定義域を対立遺伝子と呼び、また考慮するすべての遺伝子の個数を遺伝子長と呼び、また考慮するすべての遺伝子を保有するデータを個体と呼び、1つ以上の個体の組を世代と呼び、世代に存在する個体の数を個体数と呼ぶ。各々の個体には最大化もしくは最小化したい項目の値を割り振られる。この最大化もしくは最小化したい項目のことを適応度と呼ぶ。
【0010】
ある世代の中から適当な2つ以上の個体を選択し、選択された個体からある規則に基づいて1つ以上の新たな個体を生成し新たな世代を生成することを交叉と呼び、ある世代の中から適当な2つ以上の個体を選択し、選択された各々の個体からある規則に基づいて新たな個体を生成することを突然変異と呼ぶ。
【0011】
初めにランダムに生成された世代を特に第一世代と呼ぶ。第一世代から交叉または突然変異を経て生成された新たな世代を第二世代と呼び、以下漸化的に世代を生成していく。最適化計算に用いた世代の数を世代数と呼ぶ。
【0012】
材料源の成膜チャンバー部での配置が組み合わせ計算に基づいて決定されることで、設備投資することなく、より短時間での基板受け渡しが可能となりスループットが向上する。
【0013】
製造装置の成膜チャンバー部は複数の成膜チャンバーを有し、複数の成膜チャンバー間での材料源の配置は遺伝的アルゴリズムに基づいて決定されることを特徴とする製造装置である。
【0014】
複数の成膜チャンバーでの配置が組み合わせ計算に基づいて決定されることで、設備投資することなく、より短時間での基板受け渡しが可能となり、更に成膜スループットが向上する。
【0015】
遺伝的アルゴリズムは成膜チャンバーの数によって遺伝子長が決定され、材料源の数によって対立遺伝子の数が決定されることを特徴とする製造装置である。
【0016】
遺伝子長が成膜チャンバーの数によって、対立遺伝子の数が材料源の数によって決定されることにより、遺伝的アルゴリズムによる最適化計算が可能となる。
【0017】
遺伝的アルゴリズムは成膜チャンバーの数以上を遺伝子長とし、材料源の数以上を対立遺伝子の数とすることを特徴とする製造装置である。
【0018】
成膜チャンバーの数以上を遺伝子長とし、材料源の数以上を対立遺伝子の数とすることにより、探索空間内に最適解が必ず含まれる。
【0019】
遺伝的アルゴリズムは成膜チャンバーの数を遺伝子長とし、スロットに備えられる前記材料源の数を対立遺伝子の数とすることを特徴とする製造装置である。
【0020】
遺伝子長が成膜チャンバーの数に、対立遺伝子の数が材料源の数に等しくなることにより、遺伝的アルゴリズムの計算コストを下げられる。
【0021】
製造装置の成膜チャンバー部は少なくとも一つの成膜チャンバーを有し、成膜チャンバーは材料源を備えるためのスロットを有し、チャンバー内での材料源の配置は遺伝的アルゴリズムに基づいて決定されることを特徴とする製造装置である。
【0022】
それぞれの成膜チャンバー内での配置を組み合わせ計算に基づいて決定されることで、設備投資をすることなく、より短時間での基板受け渡しが可能となり、更に成膜スループットが向上する。
【0023】
遺伝的アルゴリズムはスロットの数によって遺伝子長が決定され、スロットに備えられる材料源の数によって対立遺伝子の数が決定されることを特徴とする製造装置である。
【0024】
遺伝子長がそれぞれのチャンバー部のスロットの数によって、対立遺伝子の数が材料源の数によって決定されることにより、遺伝的アルゴリズムによる最適化計算が可能となる。
【0025】
遺伝的アルゴリズムはスロットの数以上を遺伝子長とし、スロットに備えられる材料源の数以上を対立遺伝子の数とすることを特徴とする製造装置である。
【0026】
スロットの数以上を遺伝子長とし、スロットに備えられる材料源の数以上を対立遺伝子の数とすることにより、探索空間内に最適解が必ず含まれる。
【0027】
遺伝的アルゴリズムは前記スロットの数を遺伝子長とし、スロットの数に備えられる材料源の数を対立遺伝子の数とすることを特徴とする製造装置である。
【0028】
遺伝子長がそれぞれのチャンバー部のスロットの数に、対立遺伝子の数が材料源の数に等しくなることにより、遺伝的アルゴリズムの計算コストを下げられる。
【0029】
製造装置の前記成膜チャンバー部は少なくとも一つの成膜チャンバーを有し、成膜チャンバーは材料源を備えるためのスロットを有し、チャンバー間及び成膜チャンバー内での材料源の配置は遺伝的アルゴリズムに基づいて決定されることを特徴する製造装置である。
【0030】
複数の成膜チャンバー及び成膜チャンバー内スロット部での配置が組み合わせ計算に基づいて決定されることで、設備投資をすることなく、より短時間での基板受け渡しが可能となり、更に成膜スループットが向上する。
【0031】
遺伝的アルゴリズムは製造装置内の全スロット数によって遺伝子長が決定され、材料源の数によって対立遺伝子の数が決定されることを特徴とする製造装置である。
【0032】
製造装置内の全スロット数以上を遺伝子長とし、材料源の数以上を対立遺伝子の数とすることにより、探索空間内に最適解が必ず含まれる。
【0033】
遺伝的アルゴリズムは製造装置内の全スロット数を遺伝子長とし、材料源の数を対立遺伝子の数とすることを特徴とする製造装置である。
【0034】
遺伝子長が製造装置全体のスロットの数に、対立遺伝子の数が材料源の数に等しくなることにより、遺伝的アルゴリズムの計算コストを下げられる。
【0035】
基板上に多層膜を成長させる製造装置であって、基板搬送機構を備えた搬送チャンバーと、1つ以上の材料源を備えた複数の成膜チャンバーと、成膜以外のプロセスを行うためのプロセスチャンバーとを備え、複数の成膜チャンバーと、プロセスチャンバーとは、それぞれが搬送チャンバーと基板の受け渡しができるように、搬送チャンバーの周囲に配置されており、基板の受け渡しは、組み合わせ計算に基づいて制御されたスケジューリングに従い決定されることを特徴とする製造装置である。
【0036】
基板受け渡しの順序が組み合わせ計算に基づいて決定されることにより、より短時間での基板受け渡しが可能となり、成膜スループットが向上する。
【0037】
組み合わせ計算は有向グラフを介した、遺伝的アルゴリズムによって計算が実行されることを特徴とする製造装置である。
【0038】
遺伝的アルゴリズムを用いることによってスケジューリング問題の計算時間を短縮することができる。
【0039】
遺伝的アルゴリズムにおける有向グラフは巡回経路を持たない有向非巡回グラフを介して計算が実行されることを特徴とする製造装置である。
【0040】
有向非巡回グラフで表現することで探索空間が小さくなり、遺伝的アルゴリズムによる最適化計算の時間を短縮することができる。
【0041】
遺伝的アルゴリズムは制約を有し、前記制約は前期製造装置における前記成膜チャンバー数及び前記スロット数を反映する製造装置である。
【0042】
制約を設けることによって、実現不可能な解を算出しないようにすることができる。
【0043】
遺伝的アルゴリズムは制約を有し、遺伝的アルゴリズムにおいてある個体が制約を満たさない場合においては確率を用いて制約を満たすように個体を生成し直す製造装置である。
【0044】
確率を用いて個体を生成し直すことによって、遺伝的アルゴリズムに於ける多様性を確保することができる。
【発明の効果】
【0045】
本発明に係る成膜システム、工場システム及びウェハの成膜方法は、成膜に要する時間を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【
図1】第一実施形態に係る製造装置の模式図である。
【
図2】遺伝的アルゴリズムに係る個体の模式図である。
【
図4】実施例で計算されたターゲット配置に基づいた成膜の手順を示す図である。
【
図5】第一比較例に用いたターゲット配置に基づいた成膜の手順を示す図である。
【
図6】本発明に係る計算の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0047】
以下、本実施形態について、図面を適宜参照しながら詳細に説明する。以下の説明で用いる図面は、本実施形態の特徴をわかりやすくするために便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などは実際とは異なっていることがある。以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0048】
「第1実施形態」
図1は、第1実施形態に係る成膜システム300の模式図である。成膜システム300は、成膜装置100と計算機200とを有する。
【0049】
成膜装置100は、例えば、複数の成膜チャンバー10とプロセスチャンバー20と搬送チャンバー30とロードロックチャンバー40とを備える。
【0050】
成膜装置100は、例えばウェハを1枚ずつ処理する方式である枚葉式を採用している成膜装置などでもよい。成膜装置100は、スパッタリング法を用いた成膜装置、化学気相成長法を用いた成膜装置等である。
【0051】
成膜チャンバー10は、ウェハへの成膜を行うチャンバーである。1つの成膜チャンバー10内には、例えば、1つ以上のターゲット1を設置できるスロットを有する。
図1に示す成膜チャンバー10は、それぞれ8つのスロットを有する。1つの成膜チャンバー10は、複数のスロットに複数のターゲット1を有することで、複数の層を成膜できる。それぞれの成膜チャンバー10におけるターゲットは、それぞれ異なってもよいし、使用頻度が高い材料からなるターゲットを複数有してもよい。
【0052】
プロセスチャンバー20は、成膜以外のプロセスを行うチャンバーである。成膜以外のプロセスとは、例えば、基板の加熱、冷却処理、成膜した膜の一部剥離処理、酸化等の化学反応処理である。搬送チャンバー30は、それぞれのチャンバー間のウェハの搬送を行うチャンバーである。ロードロックチャンバー40は、外部と真空領域とを繋ぐチャンバーであり、真空予備室と呼ばれる場合もある。例えば、ロードロックチャンバー40から搬送チャンバー30に入ったウェハは、プロセス順に、いずれかの成膜チャンバー10又はプロセスチャンバー20に搬送される。
【0053】
計算機200は、成膜装置100のターゲット1の配置を決める。ターゲット1の配置とは、どのチャンバーにどのターゲット1を配置するかである。計算機200は、成膜装置100内におけるウェハの搬送順、成膜装置100内へのウェハの投入タイミングを決めてもよい。
【0054】
計算機200は、計算領域201を有する。計算領域201は、遺伝的アルゴリズムに基づく計算モデルを含む。計算領域201は、ターゲット1の配置が特定の配置の場合に、成膜に要する時間を予測する。計算機200の計算結果に基づいてターゲット1の配置を決めることができる。
【0055】
図2は遺伝的アルゴリズムに於ける個体のイメージ図である。個体cはNこの遺伝子c(1)からc(N)の組からなるベクトルであり、遺伝子長Nは成膜過程におけるターゲット1の数N
target以上である。各々の遺伝子c(i)にはどのターゲット1がどの成膜チャンバー10もしくはプロセスチャンバー20に設置されるかに関する情報を有しており、各々の遺伝子の対立遺伝子の数N’は成膜チャンバー10の数とプロセスチャンバーの数20の総和N
chamber、もしくは成膜チャンバー10に設置可能なターゲットの数とプロセスチャンバー20に設置可能なターゲットの数の総和N
slotによって定まる.このN個のデータが全て定まれば、全てのターゲット1の各々が設置されている成膜チャンバー10もしくはプロセスチャンバー20は一意に定まる。各個体の適応度には各個体の遺伝子、プロセスの順番を与える表Rと、ある成膜チャンバー10、もしくはあるプロセスチャンバー20からある成膜チャンバー10、もしくはプロセスチャンバー20への移動時間J
ijによって計算される。ここでi,jはそれぞれ成膜チャンバー10もしくはプロセスチャンバー20に割り振られた番号である。またロードロックチャンバー40には番号Lを与える。Rは実行されるプロセスの数N
Rこの数字の集合で、例えばR
1は最初に成膜装置100で実行されるプロセスのターゲットを表す。各々の個体は各成膜チャンバーもしくはプロセスチャンバーに配置されるターゲット1の数が各成膜チャンバーもしくはプロセスチャンバーにおけるスロットの数を超えないような制約が加えられている。この制約を満たさない場合は確率的に各遺伝子を設定し直し、制約を満たすようにする。
【0056】
図6は本発明における遺伝的アルゴリズムのフローチャートである。
【実施例0057】
図3に示す成膜システム301におけるターゲット配置を最適化した。成膜システム301は成膜チャンバー11、成膜チャンバー12、成膜チャンバー13、成膜チャンバー14の4つと、ロードロック41を有する。成膜チャンバー11、成膜チャンバー12、成膜チャンバー13、成膜チャンバー14は各々5つのスロットを有している。また各チャンバー間の搬送時間は表1で与えられる(単位は秒)。使用するプロセスはT1からT20の全部で20の相異なるターゲット1を用いたR1からR30の工程から成る(表2)。また各ターゲット1の成膜時間は表3で与えられる(単位は秒)。各成膜時間は全ての成膜チャンバーで相等しい。遺伝的アルゴリズムにおける個体の遺伝子長Nは20でありターゲット1の種類の数N
targetに等しく、各遺伝子の対立遺伝子の数N’はすべて1,2,3,4、の4つであり、成膜チャンバーの数N
chamberに等しい。例えば個体cのi番目の遺伝子c(i)が1であった場合i番目ターゲットが成膜チャンバー11に設置されていることを意味する。また全ての世代を通して個体数は1500とした。
【表1】
【表2】
【表3】
【0058】
個体cの適応度f(c)は以下のように計算される。
【数1】
この適応度はウエハが成膜装置にロードロックチャンバー41から投入、全てのプロセスを経て再びロードロックチャンバー41に戻るまでの時間に等しく、この適応度を最小化することにより成膜装置に於けるターゲット配置の最適化が可能となる。
【0059】
ある世代から新たな世代の個体を生成する際に、まずある世代のうち最も小さい適応度をもつ5つの個体をそのまま新たな世代へと引き継いだ。次にある世代の個体を確率的に2つ選び交叉させ新たな個体を生成した。このときある個体が選ばれる確率はその個体の持つ適応度の逆数に比例している。交叉の方法は一方の個体の前半10個の遺伝子と、もう一方の個体の後半10個の遺伝子を新たな個体の全遺伝子とした。ただし各成膜チャンバーに設置されるターゲット1が各成膜チャンバーのスロットの個数を超える場合は、該当する成膜チャンバーに設置されるターゲット1の中から超えた個数のターゲット1を一様確率に従い選び、スロットが余っている成膜チャンバーに一様確率に従い割り振った。これを95回繰り返し新たな世代へと引き継いだ。また新たな世代の各々の個体に対して1%の確率で突然変異を実行した。ここでの突然変異では該当する個体の20の遺伝子のうち一様確率に従い2つを選び入れ替えた。この交叉、突然変異を100世代分実行して、最適なターゲットの配置を求めた。
【0060】
本実施形態を用いた成膜システムの最適なターゲット配置によって成膜時間を短縮化し、効率的な製造・生産が可能になる。本実施形態では成膜システムを例としたが、成膜システムに限定されない。例えば、製造工程における材料の設置場所と最短ルートの設計や、配達ルートの計画などにも応用することができる。
【0061】
(実施例1)
成膜システム301のターゲット配置を表1、表2及び表3の条件で計算した。その結果、表4に示すターゲット配置が得られた。なお計算時間はおよそ1分であった。
【表4】
【0062】
上記配置におけるスループットをシミュレーションによって求めたところ56分19秒であった。
【0063】
(比較例1)
比較例1では最適化計算を行う前の方法で各成膜チャンバーにターゲット1を設置した(表5)。この配置でのスループットを実機で確認したところ65分22秒であった。
【表5】
【0064】
実施例1は比較例1に対してスループットが9分3秒短縮された。これは
図4に示す実施例1で得られたターゲット配置ではチャンバー間の搬送が12回であり、
図5に示す比較例1で用いたターゲット配置ではチャンバー間の搬送が18回であるため、より搬送回数、搬送時間が少ないためであると考えられる。
【0065】
(比較例2)
実施例1と同じ条件のもと大域最適解をPanasonic社製コンピュータ(型番CF-LV9CDMQR)を用いた総当たり計算によって確認したところ、計算は24時間以内に終了しなかった。