(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022181718
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】ロータ機構、飛翔体、ロータ機構の収納方法及びロータ機構の展開方法
(51)【国際特許分類】
B64C 27/473 20060101AFI20221201BHJP
B64C 11/16 20060101ALI20221201BHJP
B64C 27/54 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
B64C27/473
B64C11/16
B64C27/54
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021088820
(22)【出願日】2021-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】520265871
【氏名又は名称】スカイリンクテクノロジーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100183564
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 伸也
(72)【発明者】
【氏名】井上 政和
(72)【発明者】
【氏名】森本 高広
(57)【要約】
【課題】水平飛行時にロータ機構を収納することができるロータ機構、飛翔体及びロータ機構の収納方法を提供することを課題とする。
【解決手段】飛翔体20に用いられるプロペラの羽根3であって、羽根3が、プロペラ軸2側の内羽根4およびその内羽根の外側に設けられる外羽根5からなり、内羽根および外羽根のプロペラの回転面22となす羽根角23がそれぞれ可変にされており、外羽根と内羽根の隣り合っている部位の付近に抑制機構6が設けられており、その抑制機構は、外羽根と内羽根の間を介し、外羽根の下面から上面へ回り込む気流30を抑制するものである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マストと、そのマストに設けられる1枚以上のブレードとを備え、且つ、飛翔体に設けられたロータ機構であって、
前記飛翔体の本体に設けられ、且つ、前記マストを傾動させる傾動機構と、
前記ブレードのフラッピング角を変更するフラッピング角変更機構と、
前記飛翔体の飛行状態が所定の条件を満たすと、前記傾動機構により前記マストを後方に傾動すると共に、前記フラッピング角変更機構により前記ブレードのフラッピング角を大きくすることにより、前記マスト及び前記ブレードを前記本体の前後方向にほぼ平行で、且つ、後方に向けて揃える制御部とを備えている、ロータ機構。
【請求項2】
前記傾動機構により前記本体の後方に押動され、且つ、前記マストを枢軸するベースと、
前記マストの傾動を許し、且つ、前記マストを回転駆動させる回転駆動機構とを備えている請求項1記載のロータ機構。
【請求項3】
マストと、そのマストに設けられる1枚以上のブレードとを備え、且つ、飛翔体に設けられたロータ機構であって、
前記飛翔体の本体に設けられる傾動機構と、
前記傾動機構により前記本体の後方に押動され、且つ、前記マストを枢軸するベースと、
前記ブレードのフラッピング角を変更するフラッピング角変更機構と、
前記マストの傾動を許し、且つ、前記マストを回転駆動させる回転駆動機構とからなり、
前記ブレードを回転させながら、前記傾動機構により前記ベースを後方に押動すると共に、前記フラッピング角変更機構により前記ブレードのフラッピング角を大きくすることにより、前記マスト及び前記ブレードを前記本体の前後方向にほぼ平行で、且つ、後方に向けて揃えるものである、ロータ機構。
【請求項4】
前記フラッピング角変更機構が、
前記ベースに設けられる駆動機構と、
前記駆動機構に連結され、略中央に前記マストが貫通し、前記マストの軸方向に移動自在である固定プレートと、
前記固定プレートと共に移動し、前記固定プレートに摺動自在で、略中央に前記マストが貫通し、前記マストと共に回転する回転プレートと、
前記回転プレートに一端が連結され、他端が前記ブレードに連結されるロッドとを備えており、
前記ロッドの押し引きにより前記マストのフラッピング角を変更する、請求項2又は3記載のロータ機構。
【請求項5】
*ピッチ制御
前記ブレードのピッチ角を変更するピッチ角変更機構をさらに備えている、請求項4記載のロータ機構。
【請求項6】
前記ピッチ角変更機構が、
前記ベースに設けられるピッチ角駆動機構と、
前記ピッチ角駆動機構に連結され、略中央に前記マストが貫通し、前記マストの軸方向に移動自在であるピッチ角用の固定プレートと、
前記ピッチ角用の固定プレートと共に移動し、前記ピッチ角用の固定プレートに摺動自在で、略中央に前記マストが貫通し、前記マストと共に回転するピッチ角用の回転プレートと、
前記ピッチ角用の回転プレートに一端が連結され、他端が前記ブレードに連結されるピッチ角用のロッドとを備えており、
前記ピッチ角用のロッドの押し引きにより前記ブレードのピッチ角を変更する、請求項5記載のロータ機構。
【請求項7】
前記フラップ角用又はピッチ角用のうちの一方で、固定プレート又は回転プレートが、前記マストに通されると共に上下動自在にされる筒状部を備えており、
他方の固定プレート及び回転プレートが、前記筒状部を介して前記マストに設けられている、請求項6記載のロータ機構。
【請求項8】
前記フラッピング角変更機構が前記ブレードの付け根付近に設けられている請求項1、2若しくは3のいずれかに記載のロータ機構
【請求項9】
前記フラッピング角変更機構が前記マストに設けられている、請求項1、2若しくは3のいずれかに記載のロータ機構。
【請求項10】
前記マストの中心軸に沿って前記フラッピング角変更機構を駆動させるための油圧経路又は電線のための経路が形成されている、請求項9記載のロータ機構。
【請求項11】
飛翔体の本体と、
前記本体に設けられる請求項1、2、3、4、5、6、7若しくは8のいずれかに記載のロータ機構とからなる、飛翔体。
【請求項12】
前記本体から左右に延びている固定翼と、
推進用プロペラとからなる請求項11記載の飛翔体。
【請求項13】
前記プロペラ機構が前記左右の翼にそれぞれ設けられ、
前記翼又はプロペラ機構が回動することにより、前記プロペラ機構のプロペラ軸を傾動するものである、請求項11記載の飛翔体。
【請求項14】
1枚以上のブレードと、前記ブレードを回転させるマストとを備えており、飛翔体の本体に設けたロータ機構の収納方法であって、
前記飛翔体の飛行状態が所定の条件を満たすことを確認し、
前記マストを傾動させながら、前記ブレードのフラッピング角を大きくし、且つ、ピッチ角を前進方向で小さくし、
前記マスト及び前記ブレードを前記本体の前後方向にほぼ平行で、且つ、後方に向けて揃える、ロータ機構の収納方法。
【請求項15】
請求項14の収納方法で収納したロータ機構を展開する方法であって、
前記飛翔体の飛行状態が所定の条件を満たすことを確認し、
前記マストを立ち上げながら、前記ブレードのフラッピング角を小さくし、且つ、ピッチ角を前進方向で大きくし、
前記マストを立ち上げ、且つ、前記ブレードを広げる、ロータ機構の展開方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータ機構、飛翔体、ロータ機構の収納方法及びロータ機構の展開方法に関する。さらには詳しくは、垂直離着陸機のロータ機構、飛翔体、ロータ機構の収納方法及びロータ機構の展開方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、コンパウンドヘリと呼ばれる航空機がある。このような航空機は、垂直離着陸用のプロペラとは別に推進用のプロペラを設けたり、揚力を発生するための固定翼を設けたりして、水平飛行時の回転翼の仕事を少なくしている。
【0003】
例えば特許文献1には、推進用のエンジンの他に、垂直離着陸および移行段階において用いられるブレード・ロータを備えた航空機が開示されている。その航空機は、水平飛行時に、垂直離着陸に用いるブレード・ロータを停止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
推進用のプロペラ及び垂直離陸用のプロペラを備えた航空機において、プロペラが大径であると、垂直離着陸時のメリットは大きい。一方で、大径のプロペラは水平飛行時には飛行の抵抗になる。
【0006】
そこで本発明は、水平飛行時にロータ機構を収納することができるロータ機構、飛翔体、ロータ機構の収納方法及びロータ機構の展開方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明のロータ機構は、マストと、そのマストに設けられる1枚以上のブレードとを備え、且つ、飛翔体に設けられたロータ機構であって、前記飛翔体の本体に設けられ、且つ、前記マストを傾動させる傾動機構と、前記ブレードのフラッピング角を変更するフラッピング角変更機構と、前記飛翔体の飛行状態が所定の条件を満たすと、記傾動機構により前記マストを後方に傾動すると共に、前記フラッピング角変更機構により前記ブレードのフラッピング角を大きくすることにより、前記マスト及び前記ブレードを前記本体の前後方向にほぼ平行で、且つ、後方に向けて揃える制御部とを備えている、ことを特徴としている。
【0008】
(2)このようなロータ機構は、前記傾動機構により前記本体の後方に押動され、且つ、前記マストを枢軸するベースと、前記マストの傾動を許し、且つ、前記マストを回転駆動させる回転駆動機構とを備えているのが好ましい。
【0009】
(3)本発明の他の態様のロータ機構は、マストと、そのマストに設けられる1枚以上のブレードとを備え、且つ、飛翔体に設けられたロータ機構であって、前記本体に設けられる傾動機構と、前記傾動機構により前記本体の後方に押動され、且つ、前記マストを枢軸するベースと、前記ブレードのフラッピング角を変更するフラッピング角変更機構と、前記マストの傾動を許し、且つ、前記マストを回転駆動させる回転駆動機構とからなり、前記ブレードを回転させながら、前記傾動機構により前記ベースを後方に押動すると共に、前記フラッピング角変更機構により前記ブレードのフラッピング角を大きくすることにより、前記マスト及び前記ブレードを前記本体の前後方向にほぼ平行で、且つ、後方に向けて揃えるものである、ことを特徴としている。
【0010】
(4)このようなロータ機構は、前記フラッピング角変更機構が、前記ベースに設けられる駆動機構と、前記駆動機構に連結され、略中央に前記マストが貫通し、前記マストの軸方向に移動自在である固定プレートと、前記固定プレートと共に移動し、前記固定プレートに摺動自在で、略中央に前記マストが貫通し、前記マストと共に回転する回転プレートと、前記回転プレートに一端が連結され、他端が前記ブレードに連結されるロッドとを備えており、前記ロッドの押し引きにより前記マストのフラッピング角を変更するのが好ましい。
【0011】
(5)また前記ブレードのピッチ角を変更するピッチ角変更機構をさらに備えているのが好ましい。
【0012】
(6)さらに前記ピッチ角変更機構が、前記ベースに設けられるピッチ角駆動機構と、前記ピッチ角駆動機構に連結され、略中央に前記マストが貫通し、前記マストの軸方向に移動自在であるピッチ角用の固定プレートと、前記ピッチ角用の固定プレートと共に移動し、前記ピッチ角用の固定プレートに摺動自在で、略中央に前記マストが貫通し、前記マストと共に回転するピッチ角用の回転プレートと、前記ピッチ角用の回転プレートに一端が連結され、他端が前記ブレードに連結されるピッチ角用のロッドとを備えており、前記ピッチ角用のロッドの押し引きにより前記ブレードのピッチ角を変更するのが好ましい。
【0013】
(7)さらに前記フラップ角用又はピッチ角用のうちの一方で、固定プレート又は回転プレートが、前記マストに通されると共に上下動自在にされる筒状部を備えており、他方の固定プレート及び回転プレートが、前記筒状部を介して前記マストに設けられているのが好ましい。
【0014】
(8)さらに前前記フラッピング角変更機構が前記ブレードの付け根付近に設けられているのが好ましい。
【0015】
(9)さらに前記フラッピング角変更機構が前記マストに設けられているのが好ましい。
【0016】
(10)さらに前記マストの中心軸に沿って前記フラッピング角変更機構を駆動させるための油圧経路又は電線のための経路が形成されているのが好ましい。
【0017】
(11)本発明の飛翔体は、本体に設けられる上述のロータ機構とからなることを特徴としている。
【0018】
(12)このような飛翔体は、前記本体から左右に延びている固定翼と、推進用プロペラとからなるのが好ましい。
【0019】
(13)また前記プロペラ機構が前記左右の翼にそれぞれ設けられ、前記翼又はプロペラ機構が回動することにより、前記プロペラ機構のプロペラ軸を傾動するものが好ましい。
【0020】
(14)本発明のロータ機構の収納方法は、1枚以上のブレードと、前記ブレードを回転させるマストとを備えるており、飛翔体の本体に設けたロータ機構の収納方法であって、前記飛翔体の飛行状態が所定の条件を満たすことを確認し、前記マストを傾動させながら、前記ブレードのフラッピング角を大きくし、且つ、ピッチ角を前進方向で小さくし、前記マスト及び前記ブレードを前記本体の前後方向にほぼ平行で、且つ、後方に向けて揃えることを特徴としている。
【0021】
(15)本発明のロータ機構の展開方法は、前述の収納方法で収納したロータ機構を展開する方法であって、前記飛翔体の飛行状態が所定の条件を満たすことを確認し、前記マストを立ち上げながら、前記ブレードのフラッピング角を小さくし、且つ、ピッチ角を前進方向で大きくし、前記マストを立ち上げ、且つ、前記ブレードを広げることを特徴としている。
【発明の効果】
【0022】
本発明のロータ機構、飛翔体、ロータ機構の収納方法及びロータ機構の展開方法は、水平飛行時の空気抵抗を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は飛行状態に応じた飛翔体に設けたロータ機構の様子を示す概略図である。
【
図4】
図4はロータ機構を傾動する様子を示す概略図である。
【
図5】
図5はブレードのフラッピング角を変更する様子を示す概略図である。
【
図6】
図6はブレードのピッチ角を変更する様子を示す概略図である。
【
図7】
図7は飛翔体に設けたロータ機構が収納される様子を示す概略図である。
【
図8】
図8は飛行条件の一実施形態を示すデータ構造の概略図である。
【
図9】
図9aはフラッピング角変更機構及びピッチ角駆動機構の変形例を示す概略図、
図9bはフラッピング角変更機構及びピッチ角駆動機構の他の変形例を示す概略図、
図9cはフラッピング角変更機構及びピッチ角駆動機構のさらに他の変形例を示す概略図である。
【
図10】
図10はロータ機構の他の実施形態を示す概略図である。
【
図11】
図11はロータ機構の他の実施形態を示す概略図である。
【
図14】
図14は制御部のハードウェア構成の一実施形態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
[1.概略説明]
<第1実施形態>
(飛翔体20)
まず
図1を用いて本発明の飛翔体を説明する。図に示す飛翔体20(状態V2参照)は、本体20aと、その本体20aの上面側に設けられる本発明のロータ機構1とを備えている。ロータ機構1は垂直離陸のプロペラ18を備えている。本体20aの前後方向の中央付近には左右一対の主翼21、21が設けられている。各主翼21に、推進用のプロペラ22が設けられている。
【0025】
(状態V1)
状態V1では飛翔体20は、垂直離陸状態若しくはホバリング状態である。飛翔体20は、離着陸時には、ヘリコプター同様にロータ機構1のプロペラ18により、下方へ空気を押し出す力の反作用で浮力を得る。
【0026】
(状態V2)
状態V2では飛翔体20は、垂直離陸から水平飛行への遷移状態である。遷移状態V2では低速で水平飛行できる。水平飛行時には、推進用のプロペラ22で推進し、主翼21によって生み出される揚力を利用し高度を保つ。仮に遷移状態V2において高速で水平飛行をすると、ロータ機構1が空気抵抗となる。
【0027】
(状態V3)
状態V3では飛翔体20は、水平飛行時にロータ機構1を収納し、抵抗を少なくしている。このため高速で飛行することができる。ロータ機構1の収納とは、収納部27a(
図11、
図12参照)に収納しなくてもよい。収納とは、マスト2を倒して、ブレード3を揃えることを含む。
【0028】
なお以後の説明において、前後・上下・左右の方向について、図中に記載された矢印で示している。例えば前後方向とは、平面視で本体20aが延びている方向である。例えば、前方とは水平飛行している際の飛翔体20の飛行している方向である。例えば左右方向とは、平面視で左右の主翼21、21が延びている方向である。例えば上下方向とは、本体20aのプロペラ18側を上方とし、前後方向及び左右方向に垂直な方向である。
【0029】
[2.各角度の説明]
まず
図1及び
図5を用いて、以後の説明で用いる各角度について説明する。
【0030】
(コーニング角α)
図1にはベクトル図(状態V2参照)が記載されている。そのベクトル図によれば、回転するブレード3は揚力Aと遠心力Bとの合力を受けており、上方向にフラッピングしている。このため回転するブレード3の軌跡は逆円錐形になっている。これはコーニング(コーン状態)と呼ばれる。上に反ったブレード3の翼端と逆円錐の底面との角度はコーニング角αと呼ばれる。例えば、ロータ機構1の回転数が小さくなれば、遠心力が減少してコーニング角αは大きくなる。また例えば、ロータ機構1の回転数が同じ場合で、揚力が小さくなれば、コーニング角αは小さくなる。
【0031】
(フラップ角β)
フラップ角βはブレード3が延びている方向の軸と回転面18aとがなす角である(
図1、
図5参照)。本実施形態ではコーニング角αとフラップ角βは同じである。
【0032】
(ピッチ角(フェザリング角)γ)
ピッチ角γはブレード3のピッチ角であり、ブレード3の回転面18aに対する傾きである(
図6のγ参照)。
【0033】
[3.各構成]
(ロータ機構1)
次いで、
図2を用いてロータ機構を説明する。
図2にはロータ機構1を示している。ロータ機構1は、本体20aに設けられ、且つ、マスト2を傾動する傾動機構4と、その傾動機構4により本体20aの後方に押動され、且つ、マスト2を枢軸するベース5と、ブレード3のフラッピング角β(
図1及び
図4参照)を変更するフラッピング角変更機構6と、傾動機構4及びフラッピング角変更機構6を作動させる制御部32とを備えている。
図ではブレード3が3枚の場合を図示している。図ではブレード3の付け根の付近はカバー3aで覆われている。
【0034】
(制御部32)
制御部32は、所定の飛行条件32aを満たしている場合に、傾動機構4及びフラッピング角変更機構6を作動させる。
具体的には、制御部18は飛行条件32aを満たしているか判断するための情報を取得する。例えば情報として、飛翔体20の飛行状態を示すものとして、水平飛行時の飛行速度を取得する。飛行速度が、飛翔体20が安全に飛行できる速度、すなわち予め定められた速度、例えば失速速度以上であることを判断条件とする。一例として、失速速度として、主翼21によって生み出される揚力を利用し高度を保つことができる速度としてもよい。条件を満たすと、傾動機構4及びフラッピング角変更機構6を作動させる。
その他の判断のための飛行状態を示す情報として、飛翔体20の飛行高度、飛行位置、対気速度、姿勢、天候、飛行時間の1つ若しくは複数を用いてもよい。失速速度にこれらを1つ以上加えて判断するための飛行条件32aとしてもよい。
なお飛行条件32aの詳細は後述する。
【0035】
図3はロータ機構1の部分断面図である。ロータ機構1は、その傾動機構4により本体20aの後方に押動され、且つ、マスト2を枢軸するベース5と、マスト2の傾動を許し、且つ、回転駆動させる回転駆動機構7とをさらに備えている。
【0036】
またロータ機構1は、ブレード3のピッチ角を変更するピッチ角変更機構8をさらに備えている。ピッチ角変更機構8はブレード3とプロペラ18の回転面18aとなすピッチ角β(
図6参照)を変更する。
【0037】
(マスト2、回転駆動機構7)
マスト2は、回転駆動機構7により回転する。その回転駆動機構7としては、例えば、ターボシャフトエンジン、或いは、電動モータが挙げられる。
回転駆動部7は傘歯車によりマスト2に回転力を伝達している。本実施形態ではマスト2の軸と回転駆動機構の軸とは直交若しくはほぼ直交している。このためマスト2を回転駆動機構7の回転軸7aを中心として傾動させることができる。本実施形態では、回転駆動部7の傘歯車の回転方向は、
図3におけるR方向である。なおL方向でもよい。
【0038】
(プロペラ18、ハブ19)
プロペラ18は、マスト2の先端に設けられるハブ19と、そのハブ19から外向き且つ反対向きに延びている2枚のブレード3、3とからなる。なおハブ19とその周囲の部分は、プロペラカバー3a(
図2参照)で覆ってもよい。
【0039】
(ブレード3、シャフト17、)
ブレード3はシャフト17を介してハブ19に連結されている。シャフト17は回動部19aで軸周りに回動自在である。一方で、シャフト17の先端にはブレード3の基端が連結されている
シャフト17にはヒンジ17aが設けられている。ヒンジ17aを回動中心として、ブレード3のフラッピング角β(
図5参照)を変更することができる。
【0040】
(フラッピングヒンジ17a、フェザリングヒンジ19a)
本実施形態の2枚のブレード3、3において、ヒンジ17aはフラッピングヒンジで、回動部19aがフェザリングヒンジに相当する。またロータ機構1としては、シーソー型のロータ機構でもよい。
【0041】
(傾動機構4)
傾動機構4はシリンダ機構を用いている。傾動機構4は、例えば、回転数をコントロールできるサーボモータ(図示せず)を備えている。そのサーボモータの駆動により、シリンダ機構のシリンダロッド4aのストローク量を制御している。傾動機構4の基端付近は、本体20aに対し左右方向に平行な軸4b周りに回動自在にされ、本体20aに連結されている。シリンダロッド4aの先端はベース5に対し軸4bと平行な軸周りに回動自在にされ、ベース5に連結されている。
本実施形態では、傾動機構4はベース5の左右端面に一対で設けられており、同期して作動する。図ではベース5の手前側の端面に連結されている傾動機構4が記載されている。ベース5の反対側の端面に連結されている傾動機構4は見えていない。なお、ベース5の左右方向の中央付近を傾動機構4で押動するようにしてもよい。
【0042】
(ベース5)
ベース5は中央の開口の内面側に軸受部材5aが設けられている。軸受部材5aはマスト2を枢軸している。
【0043】
(ロータ機構1が傾動する様子)
図4を用いてロータ機構1を傾動する様子を説明する。傾動機構4のサーボモータが駆動し、シリンダロッド4aが延びる。シリンダロッド4aはベース5を後方に押動する。ベース5はマスト2を枢軸しているため、マスト2はベース5を介して後方に力を受ける。マスト2は下端で回転駆動機構7と傘歯車で噛合している。マスト2は回動軸7aの上方でベース5により力を受けている。このためマスト2は回動軸7aを中心として、後方に傾動する。
【0044】
(フラッピング角変更機構6)
図5を用いてフラッピング角変更機構を説明する。フラッピング角変更機構6は、ベース5に設けられる駆動機構9と、駆動機構9に連結され、略中央にマスト2が貫通し、マスト2の軸方向に移動自在である固定プレート10と、固定プレート10と共に移動し、その固定プレート10に摺動自在で、略中央にマスト2が貫通し、マスト2と共に回転する回転プレート11と、回転プレート11に一端が連結され、他端がブレード3に連結されるロッド12とを備えている。ロッド12を押し引きすると、ブレード3のフラッピング角度βは変更できる。本実施形態では、回転プレート11は固定プレート10の上面に摺動自在である。
【0045】
(駆動機構9)
駆動機構9はシリンダ機構である。そのシリンダ機構は、例えば、回転数をコントロールできるサーボモータ(図示せず)を備えている。そのサーボモータの駆動により、シリンダ機構のシリンダロッド9aのストローク量を制御している。シリンダロッド9aの先端は固定プレート10の下面に連結されている。なお、ボールジョイントなどを用いて、シリンダロッド9aの先端を固定プレート10に回動自在に連結してもよい。
図では駆動機構9を1つしか図示していないが、本実施形態では2つの駆動機構9、9がマスト2を挟んでそれぞれ反対側に設けられている。それらの駆動機構9、9は同期して作動する。なお駆動機構9は1つ又は3つ以上でもよい。3つ以上の場合は等間隔で配置するのがよい。
【0046】
(固定プレート10)
固定プレート10の中心に形成された中央孔10aには、マスト2が貫通している。マスト2は中央孔10a内で回転する。固定プレート10は、駆動機構9に押し引きされ、マスト2に沿って上下動する。
【0047】
(回転プレート11)
回転プレート11は、マスト2を通すと共に上下動自在にされる筒状部11aと、筒状部11aの上端から外向きに延びている上鍔部11bと、下端から外向きに延びている下鍔部11cとからなる。
下鍔部11cは、その下面が固定プレート10の上面に摺接している。回転プレート11はマスト2と共に回転する。回転プレート11は、固定プレート10に押し引きされ、マスト2に沿って上下動する。
【0048】
(ロッド12)
ロッド12の基端(図の下方の端部)は、回転プレート11の上鍔部11bに連結されている。ロッド12の先端は、シャフト17に連結されている。ロッド12の先端は、ヒンジ17aよりも外側でシャフト17と連結されている。なお、ボールジョイントなどを用いて、ロッド12の先端をシャフト17に回動自在に連結してもよい。
【0049】
(ブレード3がフラッピングする様子)
駆動機構9のサーボモータが駆動し、シリンダロッド9aが延びる。シリンダロッド9aは固定プレート10を上方に押動する。固定プレート10は摺接している回転プレート11を上方に押動する。回転プレート11はロッド12を上方に押動する。ロッド12はシャフト17を上方に押動する。ロッド12は、シャフト17のヒンジ17aよりも先端側であるから、シャフト17はヒンジ17aを回動の中心として上方に押動される。このためブレード3がフラッピングする。
【0050】
(ピッチ角変更機構8)
図6を用いてピッチ角変更機構8を説明する。ピッチ角変更機構8は、ベース5に設けられるピッチ駆動機構13と、ピッチ角駆動機構13に連結され、略中央にマスト2が貫通し、マスト2の軸方向に移動自在であるピッチ用の固定プレート14と、ピッチ角用の固定プレート14と共に移動し、その上面で摺動自在で、略中央にマスト2が貫通し、マスト2と共に回転するピッチ用の回転プレート15と、ピッチ角用の回転プレート15に一端が連結され、他端がブレード3に連結されるピッチ角用のロッド16とを備えている。ピッチ角用のロッド16の押し引きによりブレード3のピッチ角を変更する。
【0051】
(ピッチ角駆動機構13)
ピッチ角駆動機構13はシリンダ機構である。そのシリンダ機構は、例えば、回転数をコントロールできるサーボモータ(図示せず)を備えている。そのサーボモータの駆動により、シリンダ機構のシリンダロッド13aのストローク量を制御している。
シリンダロッド13aの先端はピッチ角用の固定プレート14の下面に連結されている。なお、ボールジョイントなどを用いて、シリンダロッド13aの先端をピッチ角用の固定プレート14に回動自在に連結してもよい。
図ではピッチ角駆動機構13を1つしか図示していないが、本実施形態では2つのピッチ角駆動機構13、13がマスト2を挟んでそれぞれ反対側に設けられている。それらのピッチ角駆動機構13、13は同期して作動する。なおピッチ角駆動機構13は1つ又は3つい以上でもよい。3つ以上の場合は等間隔で配置するのがよい。
【0052】
(ピッチ角用の固定プレート14)
ピッチ角用の固定プレート14は、その中心に形成された中央孔14aに筒状部11aが貫通している。筒状部11aは中央孔14a内で回転する。ピッチ角用の固定プレート14は、ピッチ角駆動機構13に押し引きされ、筒状部11aに沿って上下動する。
【0053】
(ピッチ角用の回転プレート15)
ピッチ角用の回転プレート15は、その中心に形成された中央孔15aに筒状部11aが貫通している。ピッチ角用の回転プレート15は、その下面がピッチ角用の固定プレート14の上面に摺接している。ピッチ角用の回転プレート15は筒状部11aと共に回転する。ピッチ角用の回転プレート15は、ピッチ角用の固定プレート14に押し引きされ、筒状部11aに沿って上下動する。
【0054】
(ピッチ角用のロッド16)
ピッチ角用のロッド16は、その基端(図の下方の端部)は、ピッチ角用の回転プレート15に連結されている。ピッチ角用のロッド16の先端は、シャフト17から突出する突出部17bに連結されている。ピッチ角用のロッド16は上鍔部11bに形成された貫通孔11dを貫通している。突出部17bはヒンジ17aの近傍から突出している。ピッチ角用のロッド16と突出部17bは回動自在に連結されている。ピッチ角用のロッド16と突出部17bをボールジョイントで連結してもよい。本実施形態では、突出部17bはシャフト17に垂直な方向に突出している。なお、垂直な方向以外の方向に突出してもよい。
【0055】
(ブレード3のピッチ角の回動量)
ピッチ角用のロッド16の上下の移動量により、ブレード3のピッチ角の回動量が変化する。ロッド16の上下の移動量に対するピッチ角の回動量は、ピッチ角用のロッドロッド16の連結部とシャフト7までの距離(突出部17bの長さ)を変化させることにより変更できる。
【0056】
(ブレード3のピッチ角を変更する様子)
ピッチ角駆動機構13のサーボモータが駆動し、シリンダロッド13aが伸びる。シリンダロッド13aはピッチ角用の固定プレート14を上方に押動する。ピッチ角用の固定プレート14は摺接しているピッチ角用の回転プレート15を上方に押動する。ピッチ角用の回転プレート15はピッチ角用のロッド16を上方に押動する。ピッチ角用のロッド16はシャフト17の突出部17bを上方に押動する。シャフト17は回動部19aにより軸周りに一方に回動する。このためシャフト17と共にブレード3が一方に回動し、ピッチ角は変更される。
またシリンダロッド13aが縮むと、シリンダロッド13aはピッチ角用の固定プレート14を下方に引く。ピッチ角用の固定プレート14は摺接しているピッチ角用の回転プレート15と共に下方に移動する。ピッチ角用の回転プレート15はピッチ角用のロッド16を下方に引く。ピッチ角用のロッド16はシャフト17の突出部17bを下方に引く。シャフト17は回動部19aにより軸周りに他方に回動する。このためシャフト17と共にブレード3が他方に回動し、ピッチ角は変更される。
【0057】
[4.ロータ機構の収納の様子(収納方法31)]
次に
図7を用いてロータ機構を収納する様子を説明する。
図7は飛翔体20のロータ機構1を収納する方法31を示す概略図である。また
図7で示しているフローチャートは、制御部32で用いられる後述する収納プログラム31b、展開プログラム31c(
図14参照)の処理の一実施形態を示している。
【0058】
(工程S1)
ブレード3は、回転数に対応した揚力Aと遠心力B(
図1参照)との合力により、フラッピング角βで上方向にフラッピングしている。
制御部32は、図示しない検出器から飛行速度、飛行姿勢の情報を取得する。情報取得部32gは検出器から得た情報を取得する(
図2参照)。
制御部32は飛行条件32aに基づいて、飛翔体20が安全に飛行できる速度、すなわち予め定められた速度、例えば失速速度以上であることを確認する。一例として、主翼21によって生み出される揚力を利用し高度を保つことができる速度のことである。予め定められた速度以上であることを確認すると、マスト2を傾動し、回転数を下げながら、フラッピング角変更機構6(
図5参照)によりフラッピング角βを大きくする。
【0059】
(飛行条件32a)
図8は飛行条件の一実施形態を示すデータ構造の概略図である。
図8に示す飛行条件32aは、複数の条件がID32b毎に記載されている。例えば、飛行速度32c、飛行姿勢32dからなる。取得した飛行速度、飛行姿勢が条件に合致するか判断する。なお、これらの内容を特定できる情報であればよく、文字列、数字の他、入力内容に紐付けた識別番号としてもよい。なお本実施系形態では用いないが、
図8では飛行高度32e、対気速度32fを飛行条件32aとして記憶している。飛行高度32e、対気速度32fを加味して、ロータ機構1の収納を判断してもよい。
【0060】
(工程S2)
図7に戻って、回転数を下げると、遠心力Aが小さくなる。またマスト2を後方に傾動すると、ブレード3は進行方向からの風により抵抗力Cを受ける。遠心力Aと抵抗力Cとの合力の示す方向Dにブレード3が延びている。このときのフラッピング角βが安定するように、ピッチ角駆動機構13によりブレード3のピッチ角γを調整する(
図6参照)。風の抵抗があるにもかかわらず、ブレード3の回転による遠心力Aを利用して、ブレード3をゆっくりと確実に後方に畳むことができる。
【0061】
(工程S3)
回転数を下げながら、マスト2の傾動をさらに進める。ブレード3の回転を止める。マスト2及びブレード3を本体20aの前後方向にほぼ平行で、且つ、後方に向けて揃える。
【0062】
一方で、収納したロータ機構1を展開する際には、収納方法31と逆の手順(展開方法31a)で倒したマスト2を立ち上げて、ブレード3を広げる。
具体的には、飛翔体20の飛行条件32aが所定の条件を満たすことを確認する。条件を満たすなら、マスト2を立ち上げながら、ブレード3のフラッピング角を小さくし、且つ、ピッチ角を前進方向で大きくする。マスト2を立ち上げ、且つ、ブレード3を広げる。
なおロータ機構1を収納するときと、展開するときで、異なる飛行条件32aを用いてもよい。例えば、収納するときと、展開するときで、飛行速度などの飛行条件の項目の数値を異にしたり、異なる項目を用いたりである。
【0063】
<変形例>
(ロータ機構1の収納方法の変形例)
前述の実施形態では、マスト2の傾動量とその傾動量に対応するフラッピング角βの調整を連続的に行っているが、段階的に行ってもよい。例えば、予め定めたマスト2の傾動量と、その傾動量に対応するフラッピングの回動量とからなるセットを複数設け、ロータ機構1を収納するまでに、いくつかの段階に分けて、ロータ機構1を収納するようにしてもよい。
【0064】
(フラッピング角変更機構6及びピッチ角駆動機構8の変形例1)
図9aはフラッピング角変更機構6及びピッチ角駆動機構8の変形例を示す概略図である。
図9aの変形例では、ピッチ角駆動機構8のピッチ角用の回転プレート15は筒状部15aを有し、フラッピング角変更機構6の回転プレート11は筒状部を有しておらず板状にされている。そしてピッチ角用の回転プレート15の筒状部15aの外周に固定プレート10及び回転プレート11が上下動自在に設けられている。
【0065】
(フラッピング角変更機構6及びピッチ角駆動機構8の変形例2)
図9bはフラッピング角変更機構6及びピッチ角駆動機構8の他の変形例を示す概略図である。
図9bの変形例では、フラッピング角変更機構6の回転プレート11は筒状部を有しておらず板状にされており、固定プレート10が筒状部10aを有している。固定プレート10の筒状部10aの上下端からは上鍔部10b及び下鍔部10cがそれぞれ設けられている。固定プレートの上鍔部10bの上面で板状の回転プレート11が摺接している。
【0066】
(フラッピング角変更機構6及びピッチ角駆動機構8の変形例3)
図9cはフラッピング角変更機構6及びピッチ角駆動機構8のさらに他の変形例を示す概略図である。
図9cの変形例では、ピッチ角駆動機構8のピッチ角用の固定プレート14は筒状部14aを有し、フラッピング角変更機構6の回転プレート11は筒状部を有しておらず板状にされている。そしてピッチ角用の固定プレート14の筒状部14aの外周に固定プレート10及び回転プレート11が上下動自在に設けられている。
【0067】
[5.他の実施形態]
<第2実施形態>
図10はロータ機構1の他の実施形態を示す概略平面図である。本実施形態の説明において、前述した第1実施形態と異なる部分を説明し、同じ部分には同じ符号を付し、その説明は省略する。
図10に示しているロータ機構23は、フラッピング角変更機構6としてシリンダ機構を用いていない。シリンダ機構の代わりに揺動アクチュエータを用いている。揺動アクチュエータ24はハブ19に設けられている。揺動アクチュエータ24はヒンジ17aよりも内側でシャフト17に連結されている。揺動アクチュエータ24はシャフト17の基端側の部位を揺動し、ヒンジ17aを回動中心として、ブレード3をフラッピングする。
【0068】
<第3実施形態>
図11はロータ機構1のさらに他の実施形態を示す概略平面図である。本実施形態の説明において、前述した第1実施形態と異なる部分を説明し、同じ部分には同じ符号を付し、その説明は省略する。
図11に示しているロータ機構25は、駆動機構9がマスト2に設けられている。このため固定プレート10が不要である。またマスト2の中心軸に沿って駆動機構9を駆動させるための油圧経路又は電線のための経路2aが形成されている。
【0069】
[6.飛翔体]
図12aはロータ機構を用いた飛翔体を示す平面図、
図12bは
図12aの側面図である。
図12a及び
図12bには飛翔体26(20)を示している。飛翔体26は、本体27と、本体の中央付近で、且つ、その上面に設けられる前述のロータ機構1、23、25とからなる。本体27の上面には上方が開口した筒状の収納部27aが設けられている。収納部27aには後方に倒して揃えたブレード3、3及びマスト2などが収納される。
【0070】
また本体27の中央付近の左右からは固定翼28、28が延びている。さらに本体27の前側の左右からは前翼28a、28aが延びている。それらの前翼28a、28aにはそれぞれ推進用プロペラ29、29が設けられている。また本体27の後側の左右からは尾翼28b、28bが延びている。
【0071】
図13aはロータ機構を用いた他の飛翔体を示す平面図、
図13bは
図13aの側面図である。本飛翔体の説明において、前述した飛翔体と異なる部分を説明し、同じ部分には同じ符号を付し、その説明は省略する。
図13a及び
図13bには飛翔体30(20)を示している。飛翔体30の翼28又はプロペラ機構29は回動する。チルトウイング又はチルトロータと呼ばれるタイプの飛翔体である。飛翔体30のプロペラ機構29は垂直離陸用のプロペラと、推進用プロペラとを兼ねている。飛翔体30のロータ機構1、23、25は前述の飛翔体26に比べてブレード3の半径が小さい。ロータ機構1、23、25は機体の制御に用いられる。飛翔体30は前翼28aを備えていないが、垂直尾翼28cを備えている。
【0072】
[7.ハードウェア構成]
次に、
図14を用いて制御部32のハードウェア構成を説明する。
図14に示すように、この実施形態の制御部32にはコンピュータが用いられている。そのコンピュータは例えば、CPU41を備えており、そのCPU41には、不揮発性メモリ42、揮発性メモリ43、光を用いた記録デバイス(例えば、DVD)、あるいは磁気を用いた記録デバイス、さらにはUSBやSDカードなど書き換え可能なデバイス44を読み込むドライブ45および外部とネットワークを介して通信するための通信回路46がバスライン47を介して接続されている。不揮発性メモリ42、揮発性メモリ43(以下メモリ42等という。)は記録部である。さらに記録部には、制御部32に用いるロータ機構の収納プログラム31b、展開プログラム31c、飛行条件32a、さらにはOS48(オペレーティングシステム)、ブラウザプログラム49が記録されている。
【0073】
プログラム31b、31cは、制御部32にインストールされている。そのプログラム31b、31cは、ブラウザプログラム49およびOS48の機能を利用して、協働して動作するものである。なおプログラム31b、31cは、ブラウザプログラム49およびOS48と異なる別個のプログラムと協働して動作してもよい。
プログラム31b、31c、条件32a、ブラウザプログラム49およびOS48は、例えばDVD、さらにはUSBやSDカードなど書き換え可能なデバイス44に記録されており、ドライブ45を介して、記録部にインストールされる。
【0074】
[8.その他]
上述した実施形態、変形例は、それぞれを適宜に組み合わせて用いることができる。
羽根の枚数は1枚以上であればよい。
飛翔体20を、飛行するものでなく、例えば、車、ホバークラフトのように、プロペラ機構1により地上を推進する機体20としてもよい。
飛翔体20は、操縦者が乗っていてもよいし、地上コントロール局や管制から遠隔操縦されていてもよい。
飛翔体20としては、飛行機、ヘリコプターあるいはドローンなどである。例えば、飛翔体20は、垂直離着陸機(VTOL機)または離陸時に短距離を滑走し、着陸時に垂直着陸する短距離離陸垂直着陸機(STOVL機)として用いてもよい。
ロッド12、ピッチ角用のロッド16の代わりに、プッシュプルケーブルおよび導管からなるコントロールケーブルを用いてもよい。
【0075】
[9.まとめ]
(1)本発明のロータ機構1、23、25は、マスト2と、そのマスト2に設けられる1枚以上のブレード3とを備え、且つ、飛翔体20に設けられたロータ機構であって、飛翔体20の本体20aに設けられ、且つ、マスト2を傾動させる傾動機構4と、ブレード3のフラッピング角αを変更するフラッピング角変更機構6と、飛翔体20の飛行状態32aが所定の条件を満たすと、傾動機構4によりマスト2を後方に傾動すると共に、フラッピング角変更機構6によりブレード3のフラッピング角βを大きくすることにより、マスト2及びブレード3を本体20aの前後方向にほぼ平行で、且つ、後方に向けて揃える制御部32とを備えていることを特徴としている。
回転による遠心力で、風による抵抗があるにもかかわらず、ゆっくりと確実にブレード3を後方に畳むことができる。マスト2とブレード3を後方に揃えることができるので、水平飛行時の空気抵抗を削減できる。水平飛行中の上下方向からの風に対して安定性が向上する。
【0076】
(2)このようなロータ機構は、傾動機構4により本体20aの後方に押動され、且つ、マスト2を枢軸するベース5と、マスト2の傾動を許し、且つ、マスト2を回転駆動させる回転駆動機構7とを備えているので、ブレード3を回転させながら、マスト2を倒すことができる。
【0077】
(3)本発明の他の態様のロータ機構は、マスト2と、そのマストに設けられる1枚以上のブレード3とを備え、且つ、飛翔体に設けられており、本体20aに設けられる傾動機構4と、傾動機構により本体の後方に押動され、且つ、マストを枢軸するベース5と、ブレードのフラッピング角を変更するフラッピング角変更機構6と、マストの傾動を許し、且つ、マストを回転駆動させる回転駆動機構7とからなり、ブレードを回転させながら、傾動機構によりベースを後方に押動すると共に、フラッピング角変更機構によりブレードのフラッピング角を大きくすることにより、マスト及びブレードを本体の前後方向にほぼ平行で、且つ、後方に向けて揃えるものである、ことを特徴としている。
回転による遠心力で、風による抵抗があるにもかかわらず、ゆっくりと確実にブレード3を後方に畳むことができる。マスト2とブレード3を後方に揃えることができるので、水平飛行時の空気抵抗を削減できる。水平飛行中の上下方向からの風に対して安定性が向上する。
【0078】
(4)このようなロータ機構は、フラッピング角変更機構6が、ベース5に設けられる駆動機構9と、駆動機構に連結され、略中央にマスト2が貫通し、マストの軸方向に移動自在である固定プレート10と、固定プレートと共に移動し、固定プレートに摺動自在で、略中央にマストが貫通し、マストと共に回転する回転プレート11と、回転プレートに一端が連結され、他端がブレード3に連結されるロッド12とを備えており、ロッドの押し引きによりマストのフラッピング角βを変更するので、フラッピング角を制御することで、本体20aとの干渉を防いで、安全に収納ができる。
【0079】
(5)またブレード3のピッチ角γを変更するピッチ角変更機構8をさらに備えている場合は、ブレードのピッチ角を変更することにより、ブレードが受ける空気抵抗を調整して、傾動動作を安定させることができる。
【0080】
(6)さらにピッチ角変更機構8が、ベース5に設けられるピッチ角用の駆動機構13と、ピッチ角用の駆動機構に連結され、略中央に前記マスト2が貫通し、マストの軸方向に移動自在であるピッチ角用の固定プレート14と、ピッチ角用の固定プレートと共に移動し、固定プレート14に摺動自在で、略中央に前記マストが貫通し、マストと共に回転するピッチ角用の回転プレート15と、ピッチ角用の回転プレートに一端が連結され、他端がブレード3に連結されるピッチ角用のロッド16とを備えており、ピッチ角用のロッドの押し引きによりブレードのピッチ角を変更する場合は、ブレードが受ける空気抵抗を調整して、傾動動作を安定させることができる。ピッチ角用のロッドでブレードを支持する構造である。このため空気による抵抗を支持することができる。
【0081】
(7)さらにフラップ角用又はピッチ角用のうちの一方で、固定プレート又は回転プレートが、マスト2に通されると共に上下動自在にされる筒状部を備えており、他方の固定プレート及び回転プレートが、筒状部を介してマストに設けられている場合は、筒状部を用いることで、固定プレート及び回転プレートからなる機構を筒状部周りに設けることができる。
【0082】
(8)さらにフラッピング角変更機構6がブレード3の付け根付近に設けられている場合は、フラッピング角変更機構6を回転側のマスト2及び停止側のベース5の両側に設けなくてよいから構造が簡易である。
【0083】
(9)さらにフラッピング角変更機構6がマスト2に設けられている場合は、固定側のベース5に設けていた部材を省略できるので構造が簡易である。
【0084】
(10)さらにマスト2の中心軸に沿って前記フラッピング角変更機構6を駆動させるための油圧経路又は電線のための経路2aが形成されている場合は、マストを介して動力を供給できる。
【0085】
(11)本発明の飛翔体26は、本体27に設けられる上述のロータ機構1、23、25とからなることを特徴としている。
このため回転による遠心力で、風による抵抗があるにもかかわらず、ゆっくりと確実にブレード3を後方に畳むことができる。ロータ機構を後方に揃えるので、水平飛行時の空気抵抗を削減できる。水平飛行中の上下方向からの風に対して安定性が向上する。
【0086】
(12)このような飛翔体26は、本体27から左右に延びている固定翼28と、推進用プロペラ29とからなるので、水平飛行時の空気抵抗を削減でき、無駄が少なく、省エネである。
【0087】
(13)またプロペラ機構が左右の翼21にそれぞれ設けられ、翼又はプロペラ機構22が回動することにより、プロペラ18のプロペラ軸を傾動するものである場合は、水平飛行時の空気抵抗を削減でき、無駄が少なく、省エネである。
【0088】
(14)本発明の収納方法31は、1枚以上のブレード3と、ブレードを回転させるマスト2とを備えるており、飛翔体30の本体20aに設けたロータ機構の収納方法であって、飛翔体20の失速速度以上において、マストを傾動させながら、ブレードのフラッピング角βを大きくし、且つ、ピッチ角γを前進方向で小さくし、マスト及びブレードを本体の前後方向にほぼ平行で、且つ、後方に向けて揃えることを特徴としている。
このため回転による遠心力で、風による抵抗があるにもかかわらず、ゆっくりと確実にブレード3を後方に畳むことができる。ロータ機構1を後方に揃えるので、水平飛行時の空気抵抗を削減できる。水平飛行中の上下方向からの風に対して安定性が向上する。
【0089】
(15)本発明のロータ機構の展開方法は、前述の収納方法で収納したロータ機構を展開する方法31aであって、飛翔体20の飛行状態が所定の条件32aを満たすことを確認し、マスト2を立ち上げながら、ブレード3のフラッピング角を小さくし、且つ、ピッチ角を前進方向で大きくし、マストを立ち上げ、且つ、前記ブレードを広げることを特徴としている。
着陸時又はホバリングが必要な時に、ロータ機構を展開することができる。飛行条件32に基づいて、ロータ機構の展開を判断するので、安全な機構である。
【符号の説明】
【0090】
1 ロータ機構
2 マスト
2a 経路
3 ブレード
3a カバー
4 傾動機構
4a シリンダロッド
4b 軸
5 ベース
5a 軸受部材
6 フラッピング角変更機構
7 回転駆動機構
7a 回転軸
8 ピッチ角変更機構
9 駆動機構
9a シリンダロッド
10 固定プレート
10a 中央孔
10b 筒状部
10c 上鍔部
10d 下鍔部
11 回転プレート
11a 筒状部
11b 上鍔部
11c 下鍔部
12 ロッド
13 ピッチ角用の駆動機構
13a シリンダロッド
14 ピッチ角用の固定プレート
14a 中央孔
14b 筒状部
15 ピッチ角用の回転プレート
15a 中央孔
15b 筒状部
16 ピッチ角用のロッド
17 シャフト
17a ヒンジ
17b 突出部
18 プロペラ
18a 回転面
19 ハブ
19a 回動部
20 飛翔体
20a 本体
21 主翼
22 推進用のプロペラ
23 ロータ機構
24 揺動アクチュエータ
25 ロータ機構
26 飛翔体
27 本体
27a 収納部
28 固定翼
29 推進用プロペラ
30 飛翔体
31 収納方法
31a 展開方法
31b 収納プログラム
31c 展開プログラム
32 制御部
32a 飛行条件
32b ID
32c 飛行速度
32d 飛行姿勢
32e 飛行高度
32f 対気速度
32g 情報取得部
41 CPU
42 不揮発性メモリ
43 揮発性メモリ
44 デバイス
45 ドライブ
46 通信回路
47 バスライン
48 OS
49 ブラウザプログラム
A 揚力
B 遠心力
α コーンング角
β フラッピング角
γ ピッチ角