(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022181719
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】ロータ機構、飛翔体、ロータ機構の収納・展開方法
(51)【国際特許分類】
B64C 27/473 20060101AFI20221201BHJP
B64C 11/16 20060101ALI20221201BHJP
B64C 27/30 20060101ALI20221201BHJP
B64C 27/26 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
B64C27/473
B64C11/16
B64C27/30
B64C27/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021088821
(22)【出願日】2021-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】520265871
【氏名又は名称】スカイリンクテクノロジーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100183564
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 伸也
(72)【発明者】
【氏名】森本 高広
(57)【要約】
【課題】水平飛行時にロータ機構を収納することができるロータ機構、飛翔体及びロータ機構の収納方法を提供することを課題とする。
【解決手段】回転駆動機構7により回転駆動されるマスト2と、そのマストに設けた複数枚の回転翼3とを備えた飛翔体20の本体20aに設けたロータ機構1であって、マストを所定の停止位置に調整する位置調整機構16と、前記停止位置の調整後に、回転翼の運転位置19aとそれよりも低い下降位置19bとの間で回転翼3を昇降する昇降機構17と、所定の飛行条件18aを満たしている場合に位置調節機構16又は昇降機構17を作動させる制御部18とを備えているロータ機構1。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚の回転翼を備え、飛翔体の本体に設けられるロータ機構であって、
前記回転翼を所定の停止位置に位置調整する位置調整機構と、
前記回転翼の運転位置と前記本体側の下降位置との間で前記回転翼を昇降する昇降機構と、
前記飛翔体の飛行状態が所定の条件を満たすと、前記停止位置で前記回転翼を下降するのを許し、又は、前記回転翼を上昇するのを許す制御部とを備えている、ロータ機構。
【請求項2】
前記回転翼を揃えるように畳んだり開いたりする、畳む/開く機構をさらに備えており、
前記制御部は、前記回転翼を畳んだ後若しくは畳む際に、前記回転翼を下降するのを許し、又は、前記回転翼を開いた後若しくは開く際に、前記回転翼を上昇するのを許す、請求項1記載のローラ機構。
【請求項3】
前記昇降機構が、
回転駆動され、且つ、前記本体に対し前後方向に回動自在な下部マストと、
前記下部マストに対し前後方向に回動自在で、且つ、前記回転翼が設けられる上部マストと、
前記本体に設けられる傾動駆動部と、
前記傾動駆動部に傾動され、前記本体の前後方向に並列に設けられ、基端側が前記本体に枢軸され、前後方向に回動自在にされる同長の前後の脚リンクと、
前記前後の脚リンクの先端同士をそれぞれ回動自在に連結する中間リンクと、
前記中間リンクに設けられ、前記上部マストを枢軸するベースとを備えている、請求項1又は2記載のロータ機構。
【請求項4】
前記昇降機構が、
回転駆動され、且つ、複数の内歯が形成された筒状マストと、
前記筒状マストの内歯に噛合する外歯が形成され、且つ、前記回転翼が設けられる噛合マストと、
前記本体に設けられた上下動駆動部と、
前記上下動駆動部により前記噛合マストと共に上下動し、且つ、前記噛合マストを回転自在に枢軸するベースとからなる、請求項1又は2記載のロータ機構。
【請求項5】
複数枚の回転翼を備え、飛翔体の本体に設けられるロータ機構であって、
回転駆動され、且つ、前記本体に対して前後方向に回動自在な下部マストと、
前記下部マストに対して前後方向に回動自在な上部マストと、
前記マストに設けられる複数枚の回転翼と、
前記本体に設けられる傾動駆動部と、
前記傾動駆動部に傾動され、前記本体の前後方向に並列に設けられ、基端側が前記本体に枢軸され、前後方向に回動自在にされる同長の前後の脚リンクと、
前記前後の脚リンクの先端同士にそれぞれ回動自在に連結される中間リンクと、
前記中間リンクに設けられ、前記上部マストを枢軸するベースとを備えており、
前記回転翼の運転位置と前記本体側の下降位置との間で前記回転翼を昇降する、ロータ機構。
【請求項6】
複数枚の回転翼を備え、飛翔体の本体に設けられるロータ機構であって、
回転駆動され、且つ、軸方向に延びている複数の内歯が形成された筒状マストと、
前記筒状マストの内歯に噛合する外歯が形成された噛合マストと、
前記本体に設けられた上下動駆動部と、
前記上下動駆動部により前記噛合マストと共に上下動し、且つ、前記噛合マストを回転自在に枢軸するベースとを備えており、
前記回転翼の運転位置と前記本体側の下降位置との間で前記回転翼を昇降する、ロータ機構。
【請求項7】
前記回転翼を所定の停止位置に調整する位置調整機構をさらに備えている、請求項5又は6記載のロータ機構。
【請求項8】
前記位置調整機構は、前記回転翼が前後方向を向く位置で前記マストを停止する請求項1、2、3、4若しくは7のいずれかに記載のロータ機構。
【請求項9】
前記本体に収納部が設けられており、
前記下降位置において前記回転翼が前記収納部に収納される、請求項1、2、3、4、5、6、7若しくは8のいずれかに記載のロータ機構。
【請求項10】
前記ベースに回転翼のピッチ角を変更するピッチ角変更機構が設けられている、請求項1、2、3、4、5、6、7、8若しくは9のいずれかに記載のロータ機構。
【請求項11】
本体と、
前記本体の中央付近で、且つ、その上面に設けられる請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9若しくは10のいずれかに記載のロータ機構とからなる、飛翔体。
【請求項12】
前記本体から左右に延びている左右の固定翼と、
前記左右の固定翼にそれぞれ設けられる推進用プロペラとからなる請求項11記載の飛翔体。
【請求項13】
前記本体から左右に延びている左右の翼と、
前記左右の翼にそれぞれ設けられるプロペラ機構とからなり、
前記翼又はプロペラ機構が回動することにより、前記プロペラ機構の向きを傾動するものである、請求項12記載の飛翔体。
【請求項14】
複数枚の回転翼を備え、飛翔体の本体に設けられるロータ機構の収納・展開方法であって、
前記飛翔体の飛行状態が所定の条件を満たすと、
前記回転翼の停止位置を調整し、
前記回転翼を下降する、ロータ機構の収納・展開方法。
【請求項15】
前記飛翔体の飛行状態が所定の条件を満たすと、前記回転翼を上昇し、
前記回転翼を回転する、請求項14記載のロータ機構の収納・展開方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータ機構、飛翔体及びロータ機構の収納・展開方法に関する。さらには詳しくは、垂直離着陸機のロータ機構、飛翔体及びロータ機構の収納・展開方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、コンパウンドヘリと呼ばれる航空機がある。このような航空機は、垂直離着陸用のプロペラとは別に推進用のプロペラを設けたり、揚力を発生するための固定翼を設けたりして、水平飛行時の回転翼の仕事を少なくしている。
【0003】
例えば特許文献1には、推進用のエンジンの他に、垂直離着陸および移行段階において用いられるブレード・ロータを備えた航空機が開示されている。その航空機は、水平飛行時に、垂直離着陸に用いるブレード・ロータを停止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
推進用のプロペラ及び垂直離陸用のプロペラを備えた航空機において、プロペラが大径であると、垂直離着陸時のメリットは大きい。一方で、大径のプロペラは水平飛行時には飛行の抵抗になる。
【0006】
そこで本発明は、水平飛行時にロータ機構を収納することができるロータ機構、飛翔体及びロータ機構の収納・展開方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明のロータ機構は、複数枚の回転翼を備え、飛翔体の本体に設けられるロータ機構であって、前記回転翼を所定の停止位置に位置調整する位置調整機構と、前記回転翼の運転位置と前記本体側の下降位置との間で前記回転翼を昇降する昇降機構と、前記飛翔体の飛行状態が所定の条件を満たすと、前記停止位置で前記回転翼を下降するのを許し、又は、前記回転翼を上昇するのを許す制御部とを備えている、ことを特徴としている。
【0008】
(2)このようなロータ機構は、前記回転翼を揃えるように畳んだり開いたりする、畳む/開く機構をさらに備えており、前記制御部は、前記回転翼を畳んだ後若しくは畳む際に、前記回転翼を下降するのを許し、又は、前記回転翼を開いた後若しくは開く際に、前記回転翼を上昇するのを許すのが好ましい。
【0009】
(3)また前記昇降機構が、回転駆動され、且つ、前記本体に対し前後方向に回動自在な下部マストと、前記下部マストに対し前後方向に回動自在で、且つ、前記回転翼が設けられる上部マストと、前記本体に設けられる傾動駆動部と、前記傾動駆動部に傾動され、前記本体の前後方向に並列に設けられ、基端側が前記本体に枢軸され、前後方向に回動自在にされる同長の前後の脚リンクと、前記前後の脚リンクの先端同士をそれぞれ回動自在に連結する中間リンクと、前記中間リンクに設けられ、前記上部マストを枢軸するベースとを備えているのが好ましい。
【0010】
(4)さらに前記昇降機構が、回転駆動され、且つ、複数の内歯が形成された筒状マストと、前記筒状マストの内歯に噛合する外歯が形成され、且つ、前記回転翼が設けられる噛合マストと、前記本体に設けられた上下動駆動部と、前記上下動駆動部により前記噛合マストと共に上下動し、且つ、前記噛合マストを回転自在に枢軸するベースとからなるのが好ましい。
【0011】
(5)本発明のロータ機構の他の態様は、複数枚の回転翼を備え、飛翔体の本体に設けられるロータ機構であって、回転駆動され、且つ、前記本体に対して前後方向に回動自在な下部マストと、前記下部マストに対して前後方向に回動自在な上部マストと、前記マストに設けられる複数枚の回転翼と、前記本体に設けられる傾動駆動部と、前記傾動駆動部に傾動され、前記本体の前後方向に並列に設けられ、基端側が前記本体に枢軸され、前後方向に回動自在にされる同長の前後の脚リンクと、前記前後の脚リンクの先端同士にそれぞれ回動自在に連結される中間リンクと、前記中間リンクに設けられ、前記上部マストを枢軸するベースとを備えており、前記回転翼の運転位置と前記本体側の下降位置との間で前記回転翼を昇降する、ことを特徴としている。
【0012】
(6)本発明のロータ機構のさらに他の態様は、複数枚の回転翼を備え、飛翔体の本体に設けられるロータ機構であって、回転駆動され、且つ、軸方向に延びている複数の内歯が形成された筒状マストと、前記筒状マストの内歯に噛合する外歯が形成された噛合マストと、前記本体に設けられた上下動駆動部と、前記上下動駆動部により前記噛合マストと共に上下動し、且つ、前記噛合マストを回転自在に枢軸するベースとを備えており、前記回転翼の運転位置と前記本体側の下降位置との間で前記回転翼を昇降する、ことを特徴としている。
【0013】
(7)このようなロータ機構は、前記回転翼を所定の停止位置に調整する位置調整機構をさらに備えているのが好ましい。
【0014】
(8)また前記位置調整機構は、前記回転翼が前後方向を向く位置で前記マストを停止するのが好ましい。
【0015】
(9)さらに前記本体に収納部が設けられており、前記下降位置において前記回転翼が前記収納部に収納されるのが好ましい。
【0016】
(10)さらに前記ベースに回転翼のピッチ角を変更するピッチ角変更機構が設けられているのが好ましい。
【0017】
(11)本発明の飛翔体は、本体と、前記本体の中央付近で、且つ、その上面に設けられる上述のロータ機構とからなる、ことを特徴とする。
【0018】
(12)このような飛翔体は、前記本体から左右に延びている左右の固定翼と、前記左右の固定翼にそれぞれ設けられる推進用プロペラとからなるのが好ましい。
【0019】
(13)また前記本体から左右に延びている左右の翼と、前記左右の翼にそれぞれ設けられるプロペラ機構とからなり、前記翼又はプロペラ機構が回動することにより、前記プロペラ機構の向きを傾動するものであるのが好ましい。
【0020】
(14)本発明のロータ機構の収納・展開方法は、複数枚の回転翼を備え、飛翔体の本体に設けられるロータ機構の収納・展開方法であって、前記飛翔体の飛行状態が所定の条件を満たすと、前記回転翼の停止位置を調整し、前記回転翼を下降する、ことを特徴としている。
【0021】
(15)このようなロータ機構の収納・展開方法は、前記飛翔体の飛行状態が所定の条件を満たすと、前記回転翼を上昇し、前記回転翼を回転するのが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明のロータ機構、飛翔体及びロータ機構の収納・展開方法は、水平飛行時の空気抵抗を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は飛行状態に応じた飛翔体に設けたロータ機構の様子を示す概略図である。
【
図3】
図3aはロータ機構の部分断面図、
図3bは
図3aのA-A矢視を部分的に断面にした概略図である。
【
図4】
図4はロータ機構を収納・展開する様子を示す概略図である。
【
図5】
図5はピッチ角を変更する様子を示す概略図である。
【
図6】
図6はロータ機構を収納する方法の一実施形態を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は飛行条件の一実施形態のデータ構造を示す概略図である。
【
図8】
図8はロータ機構を展開する方法の一実施形態を示すフローチャートである。
【
図9】
図9はロータ機構の他の実施形態を示す概略図である。
【
図10】
図10はプロペラの他の実施形態を示す概略図である。
【
図11】
図11はプロペラのさらに他の実施形態を示す概略図である。
【
図12】
図12はロータ機構を収納する方法の他の実施形態を示すフローチャートである。
【
図13】
図13はロータ機構を収納する方法のさらに他の実施形態を示すフローチャートである。
【
図14】
図14はロータ機構の他の実施形態を示す概略図である。
【
図18】
図18はブレードを開いた状態と、ブレードを畳んだ状態を示す概略図である。
【
図25】
図25は制御部のハードウェア構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
[1.概略説明]
<第1実施形態>
(飛翔体20)
まず
図1を用いて本発明の飛翔体を説明する。図に示す飛翔体20(状態S1参照)は、本体20aと、その本体20aの上面側に設けられる本発明のロータ機構1とを備えている。ロータ機構1は垂直離陸のプロペラ6を備えている。本体20aの前後方向の中央付近には左右一対の主翼21、21が設けられている。各主翼21に、推進用のプロペラ22が設けられている。飛翔体20は垂直離陸状態若しくはホバリング状態(図の上方の状態S1)と、水平飛行状態(図の下方の状態S2)とからなる状態を有している。
【0025】
(状態S1)
状態S1では飛翔体20は、ヘリコプタ同様にロータ機構1のプロペラ6により、下方へ空気を押し出す力の反作用で浮力を得ている。回転翼3は垂直離陸状態若しくはホバリング状態のために回転する運転位置19aにある。運転位置19aは本体20aの上面を基準にした高さ位置である。状態S1において、高速で水平飛行をすると、ロータ機構1が空気抵抗となる。状態S1はロータ機構1を展開した状態である。
【0026】
(状態S2)
状態S2では飛翔体20は、水平飛行時にロータ機構1を収納部19(
図23参照)に収納し、抵抗を少なくしている。このため高速で飛行することができる。水平飛行時には、推進用のプロペラ22で推進し、主翼21によって生み出される揚力を利用し高度を保つ。回転翼3は水平飛行状態のために下降した下降位置19bにある。ロータ機構1の収納とは、収納部19に収納しなくてもよい。収納とは、回転翼3を本体20a側に下降させたり、回転翼3を畳んだり、回転翼3を位置調整したりすることのいずれか1つを含む。例えば、位置調整とは回転翼3が前後方向に向くように位置調整することである。さらに収納とは、回転翼3の下降、折り畳みまたは位置調整のいずれかを1つ以上含むものでもよい。
【0027】
なお以後の説明において、前後・上下・左右の方向について、図中に記載された矢印で示している。例えば前後方向とは、平面視で本体20aが延びている方向である。例えば、前方とは水平飛行している際の飛翔体20の飛行している方向である。例えば左右方向とは、平面視で左右の主翼21、21が延びている方向である。例えば上下方向とは、本体20aのプロペラ6側を上方とし、前後方向及び左右方向に垂直な方向である。
【0028】
[2.各構成]
(ロータ機構1)
次いで、
図2を用いてロータ機構の概略を説明する。ロータ機構1は、回転翼3の停止位置を調整する位置調整機構16と、位置調整機構16の位置調整後に、回転翼3の運転位置19a(
図1参照)と本体20a側の下降位置19bとの間で回転翼3を昇降する昇降機構17と、飛行状態が所定の条件18a(以後飛行条件という。)を満たすと、前記停止位置で回転翼3を下降するのを許し、又は、回転翼3を上昇するのを許す制御部18とを備えている。図では回転翼3が3枚の場合を図示している。さらにロータ機構1は、回転駆動機構7により回転駆動され、且つ、回転翼3が設けられたマスト2を備えている。図では回転翼の3の付け根の付近はカバー6bで覆われている。
【0029】
(回転駆動機構7、クラッチ7a)
回転駆動機構7としては、例えば、ターボシャフトエンジン、或いは、電動モータが挙げられる。本実施形態では、例えば、ターボシャフトエンジンを用いている。ターボシャフトエンジンとマスト2の間にはクラッチ7aが介在している。
【0030】
(マスト2)
ここから
図3を用いて、さらに詳細に説明する。マスト2は、回転駆動機構7により回転駆動力が伝達される。マスト2は、回転駆動機構7により回転駆動力伝達される基部マスト2dと、基部マスト2dの先端側で回動軸2cを軸として回動自在に連結される下部マスト2aと、下部マスト2aの先端側で回動軸2cを軸として回動自在に連結される上部マスト2bとからなる。回動軸2c、2c(
図3b参照)は、前記停止位置の調整後において、本体20aの左右方向に平行な軸である。図は回転翼3が上昇しており、回転可能な状態(状態T1)である。回転翼3は運転位置19a(
図1参照)にある。
【0031】
(回転翼3)
本実施形態では、回転翼3は2枚である。1枚若しくは3枚以上としてもよい。
【0032】
(マスト2と回転翼3の配置)
図3では、マスト2の回動方向である前後方向に、2枚の回転翼3、3が互いに反対向きに延びている。本実施形態では、例えば、2枚の回転翼3、3が前後方向に平行な位置で停止する位置は停止位置である。
【0033】
(プロペラ6、ハブ15)
プロペラ6は、マスト2の先端に設けられるハブ15と、そのハブ15に設けられる回転翼3とからなる。なおハブ15とその周囲の部分は、カバー6b(
図2参照)で覆ってもよい。
【0034】
(シャフト14)
回転翼3はシャフト14を介してハブ15に連結されている。シャフト14は回動部15eで軸周りに回動自在である。一方で、シャフト14の先端には回転翼3の基端が連結されている。
【0035】
(フェザリングヒンジ15e)
本実施形態の2枚の回転翼3、3において、回動部15eがフェザリングヒンジに相当する。またロータ機構1としては、シーソー型若しくは無間接型である。なおロータ機構として半関節型を採用してもよい。
【0036】
またロータ機構1は、回転翼3のピッチ角を変更するピッチ角変更機構9をさらに備えている。ピッチ角変更機構9はプロペラ6の回転面6aとなすピッチ角α(
図5参照)を変更する。
【0037】
(位置調整機構16)
図2に戻って、位置調整機構16は、本実施形態では、例えば、マスト2を回動する電動モータ16aと、マスト2の回転位置を検出するエンコーダ16bと、位置調整後にマスト2の回転をロックするロック機構16cとを備えている。
【0038】
(電動モータ16a)
電動モータ16aは、DCまたはACのサーボモータである。例えば、エンコーダ16bで検出した情報をコントローラ(制御部18)へフィードバックすることでマスト2の回転位置を制御する。なおサーボモータの他にステッピングモータを用いてもよい。電動モータ16aとして、従来公知のものを用いてもよい。
【0039】
(エンコーダ16b)
エンコーダ16bは、回転していることを物理的な変化量としてセンサ素子で検知し、回転・角度情報を電気信号として外部に発信するものである。例えば、マスト2の回転量、回転速度、回転方向、回転位置の情報を取得する。機械式、光学式、磁気式、電磁誘導式の検出方式のものを用いてもよい。エンコーダ16bとして、従来公知のものを用いてもよい。
【0040】
ロック機構16cは、図示しないロックピンをマスト2に挿し込むものや、ブレーキパッドでディスクを狭持するものなど、マスト2の回転を規制する機構である。
【0041】
(昇降機構17)
次いで、
図3を用いて昇降機構を説明する。
図3aには昇降機構17を示している。昇降機構17は、本体20aに設けられる傾動駆動部4と、傾動駆動部4に傾動され、本体20aの前後方向に並列に設けられ、基端側が本体20aに枢軸され、前後方向に回動自在にされる同長の前後の脚リンク8a、8aと、前後の脚リンク8a、8aの先端付近同士を回動自在に連結する中間リンク8bと、中間リンク8bに設けられ、上部マスト2bを枢軸するベース5とを備えている。本体20aと、脚リンク8a、8aと、中間リンク8bとは平行クランク機構8を形成している。
【0042】
(傾動駆動部4)
傾動駆動部4はシリンダ機構を用いている。傾動機構4は、例えば、回転数をコントロールできるサーボモータ(図示せず)を備えている。そのサーボモータの駆動により、シリンダ機構のシリンダロッド4aのストローク量を制御している。傾動駆動部4の基端付近は、本体20aに対し左右方向に平行な軸4b周りに回動自在にされている。一方、シリンダロッド4aの先端は図の前側の脚リンク8aに軸4bと平行な軸周りに回動自在にされている。なおシリンダロッド4aを後側の脚リンク8aに連結してもよい。
【0043】
(平行クランク機構8)
図3bに示すように、平行クランク機構8は、マスト2の左右に一対で設けられている。平行クランク機構8は、本体20aを静止節とし、シリンダロッド4aが連結された脚リンク8aを原動節とし、他の脚リンク8aを従動節とし、中間リンク8bを中間節としている。
【0044】
(ベース5)
ベース5は一対の平行クランク機構8、8の中間リンク8b、8b同士を連結するように設けられる板状の部材である。ベース5の中央付近は開口しており、その開口付近には軸受部材5aが設けられている。軸受部材5aは上部マスト2bを枢軸している。
【0045】
(制御部18)
図2に戻って、制御部18は、所定の飛行条件18aを満たしている場合に、停止位置で回転翼3を下降するのを許し、又は、回転翼3を上昇するのを許す。
具体的には、制御部18は飛行条件18aを満たしているか判断するための情報を取得する。例えば情報として、飛翔体20の飛行状態を示す情報である水平飛行時の飛行速度を取得する。飛行速度が、飛翔体20が安全に飛行できる速度、すなわち予め定められた速度、例えば失速速度以上であることを判断条件とする。一例として、失速速度として、主翼21によって生み出される揚力を利用し高度を保つことができる速度としてもよい。条件を満たすと、位置調節機構16又は昇降機構17を作動する。
その他の判断のための飛行状態を示す情報として、飛翔体20の飛行高度、飛行位置、対気速度、姿勢、天候、飛行時間の1つ若しくは複数を用いてもよい。失速速度にこれらを1つ以上加えて判断するための飛行条件18aとしてもよい。
また飛行条件18aに基づいて後述する、畳む/開く機構61の作動ができるかを判断し、その判断に基づいて、回転翼3を揃えるように畳むのを許し、又は、回転翼3を開くのを許す、ようにしてもよい。例えば畳んだ後に、回転翼3を下降したり、展開が許されると回転翼3を上昇したりする。
【0046】
(昇降機構17が作動する様子)
図4を用いてロータ機構1を昇降する様子を説明する。昇降機構17の傾動駆動部4のサーボモータが駆動し、シリンダロッド4aが伸びる。シリンダロッド4aは前側の脚リンク8aを後方に押動する。平行クランク機構8は後側に傾動する(状態T2)。下部マスト2aの傾動時に、ベース5は傾かない。ベース5は本体20aと平行である。ベース5と共に上部マスト2bは、傾かないで、そのまま後方に移動する。下部マスト2bは下方の回動軸2cを回動中心として後方に傾動する。次いで、シリンダロッド4aがさらに伸びて、一対の脚リンク8a、8a、下部マスト2aが、ほぼ一直線に並ぶように倒れる(状態T3)。
上昇する際には、倒れた状態である状態T3から状態T2を経て、上昇した状態である状態T1とする。昇降中にベース5の上面及び上部マスト2bは傾かない。
【0047】
(ピッチ角変更機構9)
図3aに戻って、次にピッチ角変更機構を説明する。
図3aに示しているピッチ角変更機構9は、ベース5に設けられるピッチ角駆動部10と、ピッチ角駆動部10に連結され、略中央にマスト2が貫通し、マスト2の軸方向に移動自在である固定プレート11と、固定プレート11と共に移動し、固定プレート11に摺動自在で、略中央にマスト2が貫通し、マスト2と共に回転する回転プレート12と、回転プレート12に一端が連結され、他端がシャフト14に連結されるロッド13とを備えている。ロッド13の押し引きにより回転翼3のピッチ角を変更する。固定プレート11及び回転プレート12はマスト2の中心軸に対して傾くことができる。固定プレート11及び回転プレート12はスワッシュプレートである。スワッシュプレートを用いてサイクリックピッチ制御、コレクティブピッチ制御が行われる。
【0048】
(ピッチ角駆動部10)
ピッチ角駆動部10はシリンダ機構である。そのシリンダ機構は、例えば、回転数をコントロールできるサーボモータ(図示せず)を備えている。そのサーボモータの駆動により、シリンダ機構のシリンダロッド10aのストローク量を制御している。
シリンダロッド10aの先端は固定プレート11に連結されている。なお、ボールジョイントなどを用いて、シリンダロッド10aの先端を固定プレート11に回動自在に連結してもよい。
図では簡便のため、ピッチ角駆動機構10、10を、マスト2を挟んで前後に2つ図示している。本実施形態では2つのピッチ角駆動機構10、10を平面視で90度の位置になるように配置している。なおピッチ角駆動機構10を3つ以上用いる場合は、マスト2の周囲に等間隔に配置してもよい。その他、ピッチ角駆動機構10は1つでもよい。
【0049】
(固定プレート11)
固定プレート11は、その中心に形成された中央孔11aに上部マスト2bが貫通している。上部マスト2bは中央孔11a内で回転する。固定プレート11は、ピッチ角駆動部10に押し引きされ、上部マスト2bに沿って上下動したり、上部マスト2bの軸に対して傾動したりする。
【0050】
(回転プレート12)
回転プレート12は、その中心に形成された中央孔12aに上部マスト2bが貫通している。回転プレート12は、固定プレート13に摺動自在である。図では、回転プレート12の下面が固定プレート11の上面に摺接している。回転プレート12は上部マスト2bと共に回転する。回転プレート12は、固定プレート11と共に上部マスト2bに沿って上下動したり、上部マスト2bの軸に対して傾いたりする。
【0051】
(ロッド13)
ロッド13は、その基端(図の下方の端部)が回転プレート12に連結されている。ロッド12の先端は、シャフト14と直交する方向に突出する突出部14aの先端付近に連結されている。
【0052】
(回転翼3のピッチ角の回動量)
ロッド13の略上下の移動量により、回転翼3のピッチ角の回動量が変化する。ロッド13の移動量に対するピッチ角の回動量は、例えば、突出部14aの長さを変化させることにより変更できる。
【0053】
(ピッチ角を変更する様子)
図5及び
図3を用いてピッチ角を変更する様子を説明する。状態U1ではピッチ角駆動部10のシリンダロッド10aはシリンダ内に引き込まれている。ピッチ角駆動部10のサーボモータが駆動すると、シリンダロッド10aが伸びる。シリンダロッド10aは固定プレート12を上方に押動する。固定プレート11は摺接している回転プレート12と共にロッド13を上方に押動する。ロッド13により突出部14aが押動され、シャフト14は軸周りに回動する(状態U2、L方向)。このためシャフト14と共に回転翼3が回動し、仰角αが変更される。
反対に、シリンダロッド10aを縮めてロッド13を引くと、突出部14aが引かれ、シャフト14が反対向きに回動し(R方向)、回転翼3が状態U2から状態U1の状態に戻る。
【0054】
[3.ロータ機構の収納の様子(収納方法31)]
次に
図6を用いてロータ機構を収納する様子を説明する。
図6は飛翔体20のロータ機構1を収納する方法31を示す概略図である。また
図6で示しているフローチャートは、制御部18で用いられる後述する収納プログラム78の処理の一実施形態を示している。
【0055】
(工程V1)
本実施形態では、制御部18は、図示しない検出器から飛行速度、飛行姿勢の情報を取得する。情報取得部18gは検出器から得た情報を取得される(
図2参照)。
【0056】
(工程V2)
情報取得部18gからの飛行速度及び飛行姿勢の情報に基づいて、水平飛行であり、且つ、失速速度以上であることを確認する。飛行条件18a(
図2参照)を満たすと、制御部18は、回転翼3の下降を判断する。
【0057】
(飛行条件18a)
図7は飛行条件の一実施形態を示すデータ構造の概略図である。
図7に示す飛行条件18aは、複数の条件がID18b毎に記載されている。例えば、飛行速度18c、飛行姿勢18dからなる。取得した飛行速度、飛行姿勢が条件に合致するか判断する。なお、これらの内容を特定できる情報であればよく、文字列、数字の他、入力内容に紐付けた識別番号としてもよい。なお本実施系形態では用いないが、
図7では飛行高度18e、対気速度18fを飛行条件18aとして記憶している。飛行高度18e、対気速度18fを加味して、ロータ機構1の収納を判断してもよい。
【0058】
(工程V3)
図6に戻って、回転駆動機構7は回転数を落とす。位置調整可能な程度の回転にする。
【0059】
(工程V4)
クラッチ7aを切って、エンジン側からの駆動力がマスト2に伝達しないようにする。
【0060】
(工程V5)
電動モータ16aの駆動力がマスト2に伝達できるように、マスト2と電動モータ16aを繋ぐ。
【0061】
(工程V6)
エンコーダ16bにより回転位置を取得し、電動モータ16により所定の停止位置までマスト2を回転する。本実施形態では、マスト2の回動軸2cの回動軸が本体20aの左右方向の軸と平行になる位置までマスト2を回転する。
【0062】
(工程V7)
位置調整したマスト2をロック機構16cでロックする。
【0063】
(工程V8)
昇降機構17を作動し、ロータ機構1を下降する。ロータ機構1を収納部19に収納する。
【0064】
[4.ロータ機構の展開する様子(展開方法32)]
次に
図8を用いてロータ機構1を展開する様子を説明する。
図8は飛翔体20のロータ機構1の展開方法32を示す概略図である。また
図8で示しているフローチャートは、制御部18で用いられる後述する展開プログラム79の処理の一実施形態を示している。展開方法32は収納方法31と共通する部分があるので、同じ部分の説明は省略する。
【0065】
(工程Z1)
飛行速度及び飛行姿勢の情報を取得する。
(工程Z2)
飛行速度及び飛行姿勢の情報に基づいて、水平飛行であり、且つ、失速速度以上であることを確認する。制御部18はロータ機構1の展開又は回転翼3の上昇を判断する。
【0066】
(工程Z3)
昇降機構17を作動し、回転翼3を上昇し、ロータ機構1を展開できる状態にする。
【0067】
(工程Z4)
クラッチ7aを回転駆動機構7に繋げる。ロック機構16cを解除する。
【0068】
なおロック機構16cを解除してから、クラッチ7aを繋げてもよい。
【0069】
[5.他の実施形態]
<第2実施形態>
図9はロータ機構1のさらに他の実施形態を示す概略図である。本実施形態の説明において、前述した第1実施形態と異なる部分を説明し、同じ部分には同じ符号を付し、その説明は省略する。
図9に示しているロータ機構33は昇降機構17aを備えている。またロータ機構33のマスト34は回動軸2cを備えていない。マスト34は、回転駆動機構7により回転駆動すると共に軸方向に延びている複数の内歯35aが形成された筒状マスト35と、筒状マスト35の内歯に噛合する外歯36aが形成された噛合マスト36とを備えている。
また昇降機構17aは、本体20aに設けられた上下動駆動部37と、上下動駆動部37により噛合マスト36と共に上下動し、且つ、噛合マスト36を枢軸するベース38とからなる。
【0070】
(筒状マスト35)
筒状マスト35の内部には、噛合マスト36が軸方向に移動自在である。筒状マスト35の回転駆動力は、互いの歯35a、36aの噛合いにより、噛合マスト36に伝達される。
【0071】
(噛合マスト36)
噛合マスト36の下端付近に外歯36aが形成されている。その外歯36aが形成される部位の上方には、鍔部36bが設けられている。
【0072】
(上下動駆動部37)
上下動駆動部37はシリンダ機構を用いている。上下動駆動部37は、例えば、回転数をコントロールできるサーボモータ(図示せず)を備えている。そのサーボモータの駆動により、シリンダ機構のシリンダロッド37aのストローク量を制御している。上下動駆動部37は基端が本体20aに取り付けられ、シリンダロッド37aの先端がベース38の下面に取り付けられている。なお上下動駆動部37は図では2つ設けられているが、3つ以上設けてもよい。
【0073】
(ベース38)
ベース38は中央の開口38aが形成されている。その内面には軸受部材38bが設けられている。軸受部材38bは噛合マスト36の鍔部36bを枢軸している。軸受部材38bは鍔部36bから受けるスラスト荷重を支持している。
【0074】
(ロータ機構33を展開する様子)
図9の上方に示しているロータ機構33はベース38が下降している。この状態は収納されている状態W1である。
図9の下方に示しているロータ機構33は回転翼3が上昇している。この状態はロータ機構33が展開している状態W2である。2本の上下動駆動部37、37のシリンダロッド37a、37aを同期して、同じストローク量で作動させる。このため、ベース38の上面は傾かず、ベース38は上下動する。下降する際には、シリンダロッド37a、37aを同期して、同じストローク量で下降する。
【0075】
(ロータ機構33の収納方法及び展開方法)
次にロータ機構33の収納方法及び展開方法は、前述した収納方法31及び展開方法32とほぼ同じであるので、同じ部分の説明を省略し、異なる部分の説明をする。ロータ機構33は前述のマスト2と異なり、回動軸2cを有していない。このためマスト2の停止位置は回転翼3の位置に基づいている。本実施形態では、回転翼3が2枚で互いに反対向きに延びている。このため、回転翼3、3が前後方向に延びている位置をマスト34の停止位置としている。
【0076】
<プロペラの他の実施形態>
(プロペラ39)
図10はプロペラの他の実施形態を示す概略図である。
図10に示しているプロペラ39は、回転翼3、3を同じ向きに揃えるようにして畳むことができる。プロペラ39のハブ15には折り畳みヒンジ15fが設けられている。ヒンジ15fのハブ15側には、ブラケット40を介してナット状の部材40aが設けられている。一方で、ヒンジ15fの回転翼3側には、駆動部41が設けられている。駆動部41はヒンジ15fの回動軸と平行な軸周りに回動自在である。駆動部42はボルト状の部材41aを回転駆動する。ナット状の部材40aはボルト状の部材41aに螺合している。
【0077】
ボルト状の部材41aを回転すると、ナット状の部材40aはボルト状の部材41aの軸方向に移動する。ナット状の部材40aが軸方向に移動することにより、回転翼3を畳んだり開いたりすることができる。
【0078】
図10の左方のプロペラ39は回転翼3、3を反対向きに延ばした状態X1である。状態X1では、ナット状の部材40aはボルト状の部材41aの根元付近で螺合している。一方で、
図10の右方のプロペラ39は回転翼3、3を畳んだ状態X2である。状態X2では、ナット状の部材40aはボルト状の部材41aの先端付近で螺合している。なおナット状の部材40aはボルト状の部材41aの根元付近で螺合しているときに、回転翼3、3は畳まれているようにしてもよい。
【0079】
<プロペラのさらに他の実施形態>
(プロペラ42)
図11にはプロペラのさらに他の実施形態を示す概略図である。
図11に示しているプロペラ42は、回転翼3、3を上下に重ねるようにして揃えることができる。プロペラ42のハブ15は、マスト2に沿って上下方向に移動自在な分割体15b(第2ハブ)を備えている。
【0080】
状態Y1では、回転翼3、3は反対向きに延びている。状態Y2では、第2ハブ15bと共に一方の回転翼3が下げられている。状態Y3では回転翼3、3が中心15gを回動中心として後側に回動している。状態Y4では、回転翼3、3が後方に揃えられ、且つ、上下に重ねられている。一方で、逆の手順で回転翼3、3を開くことができる。
【0081】
(回転翼の揃え方)
プロペラ39、42をロータ機構1、33に用いる際には、マスト2の停止位置において、回転翼3、3が本体20aの左右方向に配置されるようにする。
プロペラ39、42の回転翼3の枚数は3枚以上でもよい。複数枚の回転翼3がマスト2の周りに等角度で配置されているのがよい。
例えば回転翼3が3枚である場合は1枚を前後方向の一方の側に配置し、残りの2枚を回動させて他方の側に揃えるようにする。その他、回転翼3が3枚である場合に、1枚を前後方向の一方の側に配置し、残りの2枚を回動させて全ての回転翼3を揃えるようにしてもよい。
例えば4枚の場合は、2枚ずつ回動させて、前後方向の反対向きにそれぞれ揃える。
例えば5枚の場合は、1枚を前後方向の一方の側に配置し、隣り合う2枚と合わせて3枚を一方の側に揃え、残りの2枚を回動させて他方の側に揃えるようにする。
例えば6枚の場合は、反対向きの2枚を前後方向に配置し、前後方向に配置した回転翼3に隣り合う2枚を重ねて、合わせて3枚ずつを揃えて、前後方向に揃えるようにする。
【0082】
<ロータ機構の収納方法の他の実施形態>
図12を用いてロータ機構を収納する方法の他の実施形態を示す概略図である。
図12はロータ機構1、33を収納する方法43を示すフローチャートである。また
図12で示しているフローチャートは、制御部18で用いられる後述する収納プログラム78aの処理の一実施形態を示している。本実施形態の説明において、前述した収納する方法31と異なる部分を説明し、同じ部分には同じ符号を付し、その説明は省略する。
収納する方法43は、回転駆動機構7が電動モータである。このため電動モータの回転数を落として、そのままマスト2の位置を調整することができる(V5a参照)。
一方で、ロータ機構を立ち上げるには、前述の展開方法32(
図8参照)とほぼ同様であるが、工程T4のクラッチを繋げる工程が不要となる。
【0083】
<ロータ機構の収納方法のさらに他の実施形態>
図13はロータ機構を収納する様子のさらに他の実施形態を示す概略図である。
図13はロータ機構1、33を収納する方法44を示すフローチャートである。また
図13で示しているフローチャートは、制御部18で用いられる後述する収納プログラム78bの処理の一実施形態を示している。本実施形態の説明において、前述した収納する方法31と異なる部分を説明し、同じ部分には同じ符号を付し、その説明は省略する。
収納する方法44は、クラッチ7aを半クラッチ状態にして位置調整を行う。このため、クラッチ7aを解除する際に半クラッチ状態にする(工程V4a)。次いで、ディスクブレーキ7bにより位置調整を行う(工程V6a)。位置調整後にクラッチを切る(工程V4b)。
一方で、ロータ機構を展開するには、前述の展開方法32(
図8参照)とほぼ同様である。
【0084】
[6.畳む/開く機構付きのロータ機構60]
(ロータ機構60)
図14はロータ機構の他の実施形態を示す。
図14に示しているロータ機構60には、回転翼3を畳んだり開いたりする、畳む/開く機構61が設けられている。ロータ機構60は、
図11で示した回転翼3を揃えるための具体的な構成である。なおロータ機構60の説明において、上述のロータ機構と共通する部分には同じ符号を付して、その説明を省略する。
【0085】
(回転駆動機構7)
回転駆動機構7には、駆動軸7cが設けられている。駆動軸7cの先端には駆動傘歯車7dが設けられている。回転駆動機構7の上方付近には、軸受7eが設けられている。軸受7eはマスト2の下端側を枢軸している。回転駆動機構7の下方付近には、アイドルギアとしての傘歯車7fが回転自在に設けられている。アイドル傘歯車7fは、駆動傘歯車7dと噛合っている。アイドル傘歯車7fの中心には貫通孔7gが形成されている。貫通孔7gの内面には軸方向に延びているスプラインの内歯7hが形成されている。貫通孔7gには後述する内マスト67の下端付近が回動自在に通されている。
【0086】
(内マスト駆動部68)
回転駆動機構7の下方で、且つ、本体20aには、内マスト駆動部68が設けられている。内マスト駆動部68はシリンダ機構である。そのシリンダ機構は、例えば、回転数をコントロールできるサーボモータ(図示せず)を備えている。そのサーボモータの駆動により、シリンダ機構のシリンダロッド68aのストローク量を制御している。図ではシリンダロッド68aが伸びている様子を示している。
シリンダロッド68aの先端は把持部68bに連結されている。なお、ボールジョイントなどを用いて、シリンダロッド68aの先端を把持部68bに回動自在に連結してもよい。
把持部8bは後述する内マスト67の下端付近の鍔部67dを回転自在に把持する。
【0087】
(マスト2)
マスト2の基端には傘歯車2eが設けられている。マスト2の傘歯車2eは駆動傘歯車7dと噛合っている。マスト2は筒状の部材である。マスト2の筒内は軸孔2fである。
【0088】
(内マスト67)
内シャフト67は、マスト2の軸孔2fで回動自在で、且つ、軸孔2f内で軸方向に移動自在に収納される。図では内マスト67の上端はマスト2の軸孔2fから上方に突出している。
内マスト67の下端付近には、アイドル傘歯車7fの内歯7hと噛合うスプラインの外歯67eが形成されている。スプラインの内歯7hと外歯67eは、内マスト駆動部68がシリンダロッド68aを縮めて、内マスト67を下方に移動させると、噛合うようにされている。図ではスプラインの内歯7hと外歯67eは噛合っていない。内マスト67は、アイドル傘歯車7fの貫通孔7g内で回転自在である。
【0089】
(連結部材67f)
内マスト67の上端には、連結部材67fが設けられている。連結部材67fは有底筒状の部材である。
図16に示すように、内マスト67が下降すると、連結部材67fの筒状内にマスト2が収納される。そして連結部材67fの内底面がマスト2の上端面に近づく。本実施形態ではマスト2の上端面に接している。
【0090】
(ハブ15)
図14に戻って、ハブ15はマスト2及び内マスト67の先端付近に設けられている。ハブ15は第1ハブ15aと、第2ハブ15bとからなる。第1ハブ15aは筒状の部材である。第1ハブ15aはマスト2の上端付近の外周に取付けられている。第1ハブ15aはマスト2と共に回転する。第1ハブ15aの外周にはスプラインの外歯15cが形成されている。
第2ハブ15bは連結部材67fに連結されている。第2ハブ15bは筒状の部材である。第2ハブ15bは第1ハブ15aの外周に設けられている。第2ハブ15bの内周には外歯15cに噛合うスプラインの内歯15dが形成されている。図ではそれぞれの外歯15c及び内歯15dが噛合っている。第2ハブ15bは第1ハブ15aに係合している。
【0091】
(回転翼3)
この実施形態では回転翼3は2枚である。回転翼3は、第1回転翼3aと、第2回転翼3bとからなる。第1回転翼3aは第1ハブ15aから外向きに延びている。第2回転翼3bは第2ハブ15bから外向きに延びている。なお回転翼3は3枚以上としてもよい。
【0092】
(回転翼3の配置)
図18はロータ機構60を上方から見た概略図である。
図18の上側の図は、
図14のロータ機構60を上方から見た概略図に相当する。
図18に示すように、第1回転翼3a及び第2回転翼3bは、飛行方向Gと直交する左右方向に、それぞれ反対向きに延びている。
【0093】
(シャフト14)
回転翼3はシャフト14を介してハブ15に連結されている。シャフト14の先端には回転翼3の基端が連結されている。シャフト14には突出部14aが取り付けられている。
【0094】
(畳む/開く機構61)
図14に戻って、畳む/開く機構61は、マスト2、内マスト67、アイドル傘歯車7f、内マスト駆動部68及びハブ15を備えている。畳む/開く機構61は、前述したピッチ角変更機構9とほぼ同じ構成を含んでいる。このため共通する部分には同じ符号を付して、その説明を省略する。
【0095】
(ピッチ角変更機構9a)
畳む/開く機構61はピッチ角変更機構9aを備えている。ピッチ角変更機構9aは、本体20a側に部材に設けられるピッチ角駆動部10と、ピッチ角駆動部10に連結され、略中央にマスト2が通され、第1、第2回転翼3a、3bのそれぞれのピッチ角を変更する第1、第2スワッシュプレート62、63と、第1スワッシュプレート62の動きを第2スワッシュプレート63に伝達する伝達機構66と、第1、第2スワッシュプレート62、63に一端が連結され、他端が第1、第2回転翼3a、3bにそれぞれ連結される第1、第2ロッド13a、13bとを備えている。
図14に示している第1、第2スワッシュプレート62、63は傾いていない。傾いていない状態をB1とする。二点鎖線は昇降機構17b、17cであり、後述する。
【0096】
(ピッチ角駆動部10)
ピッチ角駆動部10はシリンダ機構である。そのシリンダ機構は、例えば、回転数をコントロールできるサーボモータ(図示せず)を備えている。そのサーボモータの駆動により、シリンダ機構のシリンダロッド10aのストローク量を制御している。
シリンダ10の基端は本体20a側の部材に連結されている。シリンダロッド10aの先端は第1スワッシュプレート62の固定プレート12a(後述する)に連結されている。これらの連結は、左右方向及び前後方向の軸に回動自在に連結されている。なおボールジョイントなどを用いて、回動自在に連結してもよい。
ピッチ角駆動機構10は、マスト2の周囲に90度の位置になるように、2つ配置されている。なお図においては、把握を容易にするため、2つのピッチ角駆動機構10、10を、マスト2を挟んで左右に配置して記載されている。ピッチ角駆動機構10は1つ又は3つ以上でもよい。3つ以上の場合はマスト2の周囲に等間隔で配置するのがよい。
【0097】
(第1、第2スワッシュプレート62、63)
第1、第2スワッシュプレート62、63は構造がほぼ同じなので、第1スワッシュプレート62を説明し、第2スワッシュプレート63については共通する部分の詳細な説明を省略する。
第1スワッシュプレート62は、中央にマスト2を配置し、マスト2と共に回転しないリング状の固定プレート12aと、そのリング状の内周に摺動自在で、中央のマスト2と共に回転する回転プレート11aとを備えている。回転プレート12aは第1トルクリンク64aにより、マスト2に連結されている。回転プレート11aはマスト2の軸方方向に移動自在で、且つ、マスト2を中心にして傾くことができる。シリンダロッド10aから伝達される動きは、固定プレート12aを介して回転プレート11aに伝達される。
第2スワッシュプレート63は、固定プレート12bと、回転プレート11bとを備えている。回転プレート11bには、第2トルクリンク64bにより、第2ハブ15bに連結されている。第2スワッシュプレート63にはマスト2の軸芯を中心にした円弧状の孔65が形成されている。
【0098】
(第1、第2ロッド13a、13b)
第1ロッド13aは、その基端(図の下方の端部)は、回転プレート11aに連結されている。第1ロッド13aは、第2スワッシュプレート63の円弧状の孔65を貫通して、第1回転翼3a側の突出部14a(
図18参照)に連結されている。第2ロッド13bは、その基端(図の下方の端部)は、回転プレート11bに連結され第2回転翼3b側の突出部14a(
図18参照)に連結されている。第1、第2ロッド13a、13bの上下の移動量により、第1、第2回転翼3a、3bのそれぞれのピッチ角の回動量が変化する。
【0099】
(伝達機構66)
伝達機構66はシリンダ機構である。そのシリンダ機構は、例えば、回転数をコントロールできるサーボモータ(図示せず)を備えている。そのサーボモータの駆動により、シリンダ機構のシリンダロッド66aのストローク量を制御している。
シリンダ66の基端は第1スワッシュプレート62の固定プレート11aに連結されている。シリンダロッド66aの先端は第2スワッシュプレート63の固定プレート11bに連結されている。これらの連結は、第1スワッシュプレート62が傾動できるように左右方向及び前後方向の軸に回動自在に連結されている。ボールジョイントなどを用いて、回動自在に連結してもよい。なお、図ではシリンダロッド66aが伸びている状態である。
伝達機構66はマスト2の周囲に90度の位置になるように、2つ配置されている(
図18の符号66a参照)。図では伝達機構66はピッチ角駆動機構10の上方に上下方向の同軸に配置されているが、同軸でなくてもよい。なおピッチ角駆動機構10は1つ又は3つ以上でもよい。
【0100】
(ピッチ角を変更する様子:サイクリックピッチ制御)
図15を用いてピッチ角を変更する様子を説明する。例えば、サイクリックピッチ制御の様子を示す。ピッチ角駆動部10、10のシリンダロッド10a、10aのストローク量を制御することにより、例えば、第1スワッシュプレート62を図の右方を上方に傾ける。図では、右方のシリンダロッド10aを伸ばし、左方のシリンダロッド10aを縮めている。
【0101】
(第1回転翼3aのピッチ角)
第1ロッド13aにより突出部14a(
図18参照)が上方に押動され、シャフト14は軸周りに回動する(状態B2)。このためピッチ用シャフト14と共に第1回転翼3aが回動し、ピッチ角が変更される。
【0102】
(第2ブレード3bのピッチ角)
第1スワッシュプレート62の動きは伝達機構66、66を介して第2スワッシュプレート63に伝達される。第1スワッシュプレート62と第2スワッシュプレート63は、ほぼ平行に傾く。第2ロッド13bにより突出部14a(
図18参照)が下方に引かれ、ピッチ用シャフト14は第1回転翼3aと反対の軸周りに回動する(状態B2)。このためピッチ用シャフト14と共に第2回転翼3bが第1回転翼3aと反対に回動し、ピッチ角が変更される。
【0103】
(コレクティブピッチ制御)
第1スワッシュプレート62を傾けないで、本体20aにほぼ平行に上下動すると、第2スワッシュプレート62は追従するように上下に同じ量で移動する。第1、第2ロッド13a、13bの作動量は、ほぼ同じである。このため、コレクティブピッチ制御ができる。
【0104】
(昇降機構17b)
図19は
図14の昇降機構を示す概略図である。前述した昇降機構17と異なる部分を説明し、同じ部分には同じ符号を付し、その説明は省略する。
図19に示している昇降機構17bは、内マスト67がマスト2と共に傾動する。図では回転翼3が運転状態にある(状態T1)。内マスト67は下がっていない。内マスト駆動部68のシリンダロッド68aは伸びている。
【0105】
(マスト2、内マスト67)
マスト2は、回転駆動軸7cからの回転駆動力が伝達される基部マスト2dを備えている。内マスト67は、マスト2とほぼ同じように3分割されている。回転駆動機構7に設けられた基部内マスト67aと、その上端付近に回動自在に設けられる下部内マスト67bと、その上端付近に回動自在に設けられる上部内マスト67cからなる。それぞれの回動軸を符号67g(
図20参照)で示している。
図20に示すように、回転翼3の停止位置の調整後において、マスト2の回動軸2cと内マスト67の回動軸67gは同軸になるように配置されている。このため、マスト2は内部に内マスト67を通した状態で同軸周りに回動する。
【0106】
(畳む/開く機構61が作動する様子、状態Y1)
図14、
図16、
図17及び
図18を用いて畳む/開く機構61が回転翼3を折り畳む様子を説明する。
図14に戻って、
図14に示している回転翼3は左右に延びている(状態Y1)。
【0107】
(状態Y2)
まず
図16を用いて内マスト67を下方に移動する様子を説明する。畳む/開く機構61の内シャフト駆動部68のサーボモータが駆動し、シリンダロッド68aが縮む。シリンダロッド68aは内マスト67を下方に引き込む。内マスト67の下側では、スプラインである内マスト67の外歯67eとアイドル傘歯車7fの内歯7hとが噛合う。一方で、内マスト67の上側では、連結部材67fを介して第2ハブ15bが下方に移動する。第2ハブ15bと第1ハブ15aのスプラインの噛合いが外れる。第2ハブ15bと第1ハブ15aの係合が解除される。このとき伝達機構66、66のシリンダロッド66a、66aを縮める。これにより第2ロッド13bをそのままに、第2回転翼3bを下げることができる。
【0108】
(状態Y3)
電動モータ16a(
図2参照)を回転駆動すると、駆動傘歯車7dを介してマスト2が回転する。マスト2の回転により、第1ハブ15a及び第1回転翼3aが、例えばR方向に回動する(
図18参照)。このとき第1トルクリンク64aを介して、第1スワッシュプレート62の回転プレート11a及び第1ロッド13aはR方向に回動する。
一方、駆動傘歯車7dを介してアイドル傘歯車7fが回転する。アイドル傘歯車7fとスプラインで噛合っている内マスト67が、シャフト2と反対向きに回転する。内マスト67の回転により、連結部材67fを介して第2ハブ15b及び第2回転翼3bが、第1回転翼3aと反対向きに、L方向(
図18参照)に回動する。このとき第2トルクリンク64bを介して、第2スワッシュプレート63の回転プレート11b及び第2ロッド13bはL方向に回動する。
【0109】
(状態Y4)
第1回転翼3aと第2回転翼3bは、互いに反対向きに、互いに近づくように回動する。第1、第2回転翼3a、3bは上下に重なるように、後方に向けて畳まれる(
図17及び
図18参照)。
このとき、第1ロッド13aは第2スワッシュプレートの円弧状の孔65内を進む。
【0110】
開く際には、畳まれた状態Y4から、互いに反対向きに第1回転翼3a及び第2回転翼3bを回動する。次いで、広げた状態Y3になる。その後、内シャフト67を上げて、第1ハブ15aと第2ハブ15bのスプラインを噛合わせる(状態Y2、Y1)。
【0111】
[7.回転翼3を畳む/開いて、ロータ機構を収納する方法]
(収納方法69)
図6に戻って、回転翼3を折り畳んで収納する方法(収納方法)を説明する。
図6の符号69はロータ機構60の収納方法を示している。また
図6で示しているフローチャートは、制御部18で用いられる後述する収納プログラム78cの処理の一実施形態を示している。前述した収納方法31(
図6参照)と異なる部分を説明し、同じ部分には同じ符号を付し、その説明は省略する。
【0112】
(工程V6a)
工程V1から工程V6までを経て、マスト2、回転翼3の位置調整をした後、畳む/開く機構61を作動し、第1ブレード3a及び第2ブレード3bを畳む。
【0113】
(工程V7)
ロック機構12cでマスト2をロックする。
【0114】
(工程V8)
ロータ機構60を収納する。
【0115】
(展開方法70)
次に
図8を用いて回転翼3を上昇し、回転翼3を広げ、ロータ機構60を展開する方法(展開方法)を説明する。
図8は飛翔体20の展開方法70を示す概略図である。また
図8で示しているフローチャートは、制御部18で用いられる後述する展開プログラム79aの処理の一実施形態を示している。展開方法70は前述の展開方法32と共通する部分があるので、同じ部分の説明は省略する。
【0116】
(工程Z3a)
工程Z1から工程Z3までを経て、回転翼3を上昇した後、ロック機構12cを解除し、畳む/開く機構61を作動し、回転翼3を展開する。
【0117】
(工程Z4)
クラッチ7aを操作し、回転駆動機構7からの回転駆動力をマスト2に伝達させる。
【0118】
[8.畳む/開く機構付きのロータ機構で用いる昇降機構の他の実施形態]
【0119】
(昇降機構17c)
図21は
図14のロータ機構で用いる昇降機構の他の実施形態を示す概略図である。
図21に示しているロータ機構60aは昇降機構17cを備えている。昇降機構17cは、前述した昇降機構17aとほぼ同じである。
【0120】
(昇降機構17cが昇降する様子、状態W2)
次いで
図21に加え、さらに
図22を用いて昇降機構17cが昇降する様子を説明する。
図22の状態W2は回転翼3が運転される状態である。2本の上下動駆動部37、37のシリンダロッド37a、37aは伸びている。ハブ15は運転位置19a(
図1参照)にある。
【0121】
(状態W1-2)
状態W1-2では、内マスト67は所定の量だけ下方に移動している。第1ハブ15aと第2ハブ15bの噛合いは外れ、係合は解除されている(
図16の状態Y2-Y3参照)。内シャフト駆動部68のシリンダロッド68a及び伝達機構66のシリンダロッド66aは縮んでいる。内マスト67の下方への移動により、内マスト67の外歯67eとアイドル傘歯車7fの内歯7hとは噛合い、係合している。
【0122】
(状態W1)
状態W1では、回転翼3が後方に揃えられている。さらに回転翼3が下降し、収納した状態である(
図9の状態W1参照)。2本の上下動駆動部37、37のシリンダロッド37a、37aは、同期して、同じストローク量で下降する。このとき、ベース38の上面は傾かず、ベース38と共に噛合シャフト36は下降する。さらに内マスト駆動部68のシリンダロッド68aは、前記同じストローク量で縮む。このため内マスト67は、噛合シャフト36と同じ量だけ下降する。このとき内マスト67の外歯67eは下方に移動し、アイドル傘歯車7fの内歯7hとの噛合いは解除されている。
【0123】
再び、回転翼3を上昇する際には、前述したのと逆の手順(状態W1、1-2)で、上下動駆動部37、37のシリンダロッド37a、37a及び内マスト駆動部68のシリンダロッド68aを同期して、同じストローク量で伸ばす。その後、内マスト駆動部68のシリンダロッド68aを伸ばし、第2ハブ15b第と1ハブ15aを係合する(状態W2)。
【0124】
[9.飛翔体]
(飛翔体45)
図23aはロータ機構を用いた飛翔体を示す平面図、
図23bは
図23aの側面図である。
図23a及び
図23bには飛翔体45(20)を示している。飛翔体45は、本体45aと、本体の中央付近で、且つ、その上面に設けられる前述のロータ機構1、33、60とからなる。本体45aの上面には上方が開口した略筒状の収納部19が設けられえいる。収納部19には下降したロータ機構1、33、60が収納される。
【0125】
また本体45aの中央付近の左右からは固定翼46、46が延びている。さらに本体45aの前側の左右からは前翼47、47が延びている。それらの前翼47、47にはそれぞれ推進用プロペラ48、48が設けられている。また本体45aの後側の左右からは尾翼49、49が延びている。
【0126】
(飛翔体50)
図24aはロータ機構を用いた他の飛翔体を示す平面図、
図24bは
図24aの側面図である。本飛翔体の説明において、前述した飛翔体と異なる部分を説明し、同じ部分には同じ符号を付し、その説明は省略する。
図24a及び
図24bには飛翔体50(20)を示している。飛翔体50の本体50aの左右からは翼51、51が延びている。翼51、51にはプロペラ機構52、52がそれぞれ設けられている。飛翔体50の翼51又はプロペラ機構52は回動する。チルトウイング又はチルトロータと呼ばれるタイプの飛翔体である。飛翔体50のプロペラ機構52は垂直離陸用のプロペラと、推進用プロペラとを兼ねている。飛翔体50のロータ機構1、33、60は前述の飛翔体45に比べて回転翼3の半径が小さい。この飛翔体50においてロータ機構1、33、60は機体の制御に用いられる。飛翔体50は前翼47を備えていないが、垂直尾翼53を備えている。
【0127】
[10.ハードウェア構成]
次に、
図25を用いて制御部18のハードウェア構成を説明する。
図25に示すように、この実施形態の制御部18にはコンピュータが用いられている。そのコンピュータは例えば、CPU71を備えており、そのCPU71には、不揮発性メモリ72、揮発性メモリ73、光を用いた記録デバイス(例えば、DVD)、あるいは磁気を用いた記録デバイス、さらにはUSBやSDカードなど書き換え可能なデバイス74を読み込むドライブ75および外部とネットワークを介して通信するための通信回路76がバスライン77を介して接続されている。不揮発性メモリ72、揮発性メモリ73(以下メモリ72等という。)は記録部である。さらに記録部には、制御部18に用いるロータ機構の収納プログラム78、78a、78b、78c、展開プログラム79、79a、飛行条件18a、さらにはOS80(オペレーティングシステム)、ブラウザプログラム80aが記録されている。
【0128】
プログラム78、78a、78b、78c、79、79aは、制御部18にインストールされている。そのプログラム78、78a、78b、78c、79、79aは、ブラウザプログラム39aおよびOS39の機能を利用して、協働して動作するものである。なおプログラム78、78a、78b、78c、79、79aは、ブラウザプログラム39aおよびOS39と異なる別個のプログラムと協働して動作してもよい。
プログラム78、78a、78b、78c、79、79a、条件18a、ブラウザプログラム39aおよびOS39は、例えばDVD、さらにはUSBやSDカードなど書き換え可能なデバイス74に記録されており、ドライブ75を介して、記録部にインストールされる。
【0129】
[11.その他]
上述した実施形態は、それぞれを適宜に組み合わせて用いることができる。
回転翼3の枚数は1枚以上であればよい。
回転翼3を開きながら上昇させたり、畳みながら下降させたりしてもよい。
飛翔体20を、飛行するものでなく、例えば、車、ホバークラフトのように、地上を推進する機体20としてもよい。
飛翔体20は、操縦者が乗っていてもよいし、地上コントロール局や管制から遠隔操縦されていてもよい。
飛翔体20としては、飛行機、ヘリコプタあるいはドローンなどである。例えば、飛翔体20は、垂直離着陸機(VTOL機)または離陸時に短距離を滑走し、着陸時に垂直着陸する短距離離陸垂直着陸機(STOVL機)として用いてもよい。
【0130】
[12.まとめ]
【0131】
(1)本発明のロータ機構1、33、60、60aは、複数枚の回転翼3を備え、飛翔体20の本体20aに設けられるロータ機構であって、回転翼を所定の停止位置に位置調整する位置調整機構16と、回転翼の運転位置19aと本体側の下降位置19bとの間で回転翼を昇降する昇降機構17、17aと、飛翔体の飛行状態が所定の条件18aを満たすと、停止位置で回転翼を下降するのを許し、又は、回転翼を上昇するのを許す制御部18とを備えている、ことを特徴としている。
ロータ機構1、33、60、60aを下降することができるので、水平飛行時の空気抵抗を削減できる。水平飛行中の上下方向からの風に対して安定性が向上する。
【0132】
(2)このようなロータ機構1、33、60、60aは、回転翼3を揃えるように畳んだり開いたりする、畳む/開く機構61をさらに備えており、制御部18は、回転翼を畳んだ後若しくは畳む際に、回転翼を下降するのを許し、又は、回転翼を開いた後若しくは開く際に、回転翼を上昇するのを許すので、一層水平飛行時の空気抵抗を削減できる。
【0133】
(3)また昇降機構17、17bが、回転駆動され、且つ、本体20aに対し前後方向に回動自在な下部マスト2aと、下部マストに対し前後方向に回動自在で、且つ、回転翼3が設けられる上部マスト2bと、本体に設けられる傾動駆動部4と、傾動駆動部に傾動され、本体の前後方向に並列に設けられ、基端側が前記本体に枢軸され、前後方向に回動自在にされる同長の前後の脚リンク8aと、前後の脚リンクの先端同士をそれぞれ回動自在に連結する中間リンク8bと、中間リンクに設けられ、上部マストを枢軸するベース5とを備えているので、上部マスト2bを上下方向に維持した状態で、回転翼3を確実に下降することができる。
【0134】
(4)さらに昇降機構17a、17cが、回転駆動され、且つ、複数の内歯35aが形成された筒状マスト35と、筒状マストの内歯に噛合する外歯36aが形成され、且つ、回転翼3が設けられる噛合マスト36と、本体20aに設けられた上下動駆動部37と、上下動駆動部により噛合マストと共に上下動し、且つ、噛合マストを回転自在に枢軸するベース38とからなるので、回転翼3が傾かない。このためロータ機構を安全に収納することができる。
【0135】
(5)本発明のロータ機構の他の態様は、複数枚の回転翼3を備え、飛翔体20の本体20aに設けられるロータ機構1、60であって、回転駆動され、且つ、本体に対して前後方向に回動自在な下部マスト2aと、下部マストに対して前後方向に回動自在な上部マスト2bと、マストに設けられる複数枚の回転翼と、本体に設けられる傾動駆動部4と、傾動駆動部に傾動され、本体の前後方向に並列に設けられ、基端側が前記本体に枢軸され、前後方向に回動自在にされる同長の前後の脚リンク8aと、前後の脚リンクの先端同士にそれぞれ回動自在に連結される中間リンク8bと、中間リンクに設けられ、上部マストを枢軸するベース5とを備えており、回転翼の運転位置19aと本体側の下降位置9bとの間で回転翼を昇降する、ことを特徴としている。
ロータ機構1、60を下降するので、水平飛行時の空気抵抗を削減できる。水平飛行中の上下方向からの風に対して安定性が向上する。
【0136】
(6)本発明のロータ機構のさらに他の態様は、複数枚の回転翼3を備え、飛翔体20の本体20aに設けられるロータ機構33、60aであって、回転駆動され、且つ、軸方向に延びている複数の内歯35aが形成された筒状マスト35と、筒状マストの内歯に噛合する外歯36aが形成された噛合マスト36と、本体に設けられた上下動駆動部37と、上下動駆動部により噛合マストと共に上下動し、且つ、噛合マストを回転自在に枢軸するベース38とを備えており、回転翼の運転位置19aと本体側の下降位置19bとの間で回転翼を昇降する、ことを特徴としている。ロータ機構33、60aを下降するので、空気抵抗を削減できる。
【0137】
(7)このようなロータ機構1、33、60、60aは、回転翼3を所定の停止位置に調整する位置調整機構16をさらに備えているので、回転翼3の位置を調整した上で回転翼を昇降するので、安全に、確実に回転翼を昇降することができる。
【0138】
(8)また位置調整機構16は、回転翼3が前後方向を向く位置でマスト2を停止するので、一層空気抵抗を削減できる。
【0139】
(9)さらに本体20aに収納部19が設けられており、下降位置19bにおいて回転翼3が収納部に収納されるので、さらに一層空気抵抗を削減できる。
【0140】
(10)さらにベース5、38に回転翼3のピッチ角を変更するピッチ角変更機構9が設けられているので、回転翼のピッチ角を変更できる。
【0141】
(11)本発明の飛翔体45(20)は、本体45aと、本体45aの中央付近で、且つ、その上面に設けられる上述のロータ機構1、33、60、60aとからなることを特徴としている。空気抵抗を削減できるので、燃費がよい。
【0142】
(12)このような飛翔体45は、本体45aから左右に延びている固定翼46と、左右の固定翼46にそれぞれ設けられる推進用プロペラ48とからなるので、空気抵抗を削減でき、速度が上昇する。
【0143】
(13)また本体50aから左右に延びている左右の翼51と、左右の翼51にそれぞれ設けられるプロペラ機構52とからなり、翼51又はプロペラ機構52が回動することにより、プロペラ機構52の向きが傾動するので、上昇時の飛行が安定し、水平飛行時には空気抵抗を削減できる。
【0144】
(14)本発明のロータ機構の収納・展開方法31、32、69、70は、複数枚の回転翼3を備え、飛翔体20本体20aに設けられるロータ機構の収納・展開方法であって、飛翔体の飛行状態が所定の条件18aを満たすと、ロータ機構1、33、60、60aの収納を判断し、回転翼の停止位置を調整し、回転翼を下降する、ことを特徴としている。安全に回転翼を下降することができる。
【0145】
(15)このようなロータ機構の収納・展開方法31、32、69、70は、飛翔体20の飛行状態が所定の条件18aを満たすと、収納した回転翼3を上昇し、回転翼を回転するので、安全に回転翼を上昇することができる。
【符号の説明】
【0146】
1 ロータ機構
2 マスト
2a 下部マスト
2b 上部マスト
2c 回動軸
2d 基部マスト
2e 傘歯車
3 回転翼
3a 第1回転翼
3b 第2回転翼
4 傾動駆動部
4a シリンダロッド
4b 軸
5 ベース
5a 軸受部材
6 プロペラ
6a 回転面
6b カバー
7 回転駆動機構
7a クラッチ
7b ディスクブレーキ
7c 駆動軸
7d 駆動傘歯車
7e 軸受
7f アイドル傘歯車
7g 貫通孔
7h 内歯
8 平行クランク機構
8a 脚リンク
8b 中間リンク
9 ピッチ角変更機構
10 ピッチ角駆動部
10a シリンダロッド
11 固定プレート
11a 固定プレート
11b 固定プレート
12 回転プレート
12a 回転プレート
12b 回転プレート
13 ロッド
13a 第1ロッド
13b 第2ロッド
14 シャフト
14a 突出部
15 ハブ
15a 第1ハブ
15b 第2ハブ
15c 外歯
15d 内歯
15e 回動部
15f 折り畳みヒンジ
15g 中心
16 位置調整機構
16a 電動モータ
16b エンコーダ
16c ロック機構
17 昇降機構
17a 昇降機構
17b 昇降機構
17c 昇降機構
18 制御部
18a 飛行条件
18b ID
18c 飛行速度
18d 飛行姿勢
18e 飛行高度
18f 対気速度
18g 情報取得部
19 収納部
19a 回転位置
19b 収納位置
20 飛翔体
20a 本体
21 主翼
22 推進用のプロペラ
31 収納方法
32 立ち上げ方法
33 ロータ機構
33a ロータ機構
34 マスト
35 筒状マスト
35a 内歯
36 噛合マスト
36a 外歯
36b 鍔部
37 上下動駆動部
38 ベース
38a 開口
38b 軸受部材
39 プロペラ
40 ブラケット
40a ナット状の部材
41 駆動部
41a ボルト状の部材
42 プロペラ
42a 分割体
43 収納方法
44 収納方法
45 飛翔体
45a 本体
46 固定翼
47 前翼
48 推進用プロペラ
49 尾翼49
50 飛翔体
51 翼
52 プロペラ機構
53 垂直尾翼
60 ロータ機構
60a ロータ機構
61 畳む/開く機構
62 第1スワッシュプレート
63 第2スワッシュプレート
64a 第1トルクリンク
64b 第2トルクリンク
65 孔
66 伝達機構
66a シリンダロッド
67 内マスト
67a 基部内マスト
67b 下部内マスト
67c 上部内マスト
67d 鍔部
67e 外歯
67f 連結部材
68 内マスト駆動部
68a シリンダロッド
68b 把持部
69 収納方法
70 展開方法
71 CPU
72 不揮発性メモリ
73 揮発性メモリ
74 デバイス
75 ドライブ
76 通信回路
77 バスライン
78 プログラム
78a プログラム
78b プログラム
78c プログラム
79 プログラム
79a プログラム
80 OS
80a ブラウザプログラム
α ピット角