(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022181724
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】ストラップの側方屈曲を調整するアジャスター
(51)【国際特許分類】
A44B 11/04 20060101AFI20221201BHJP
A44B 11/12 20060101ALI20221201BHJP
A44B 11/10 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
A44B11/04
A44B11/12
A44B11/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021088827
(22)【出願日】2021-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】721001122
【氏名又は名称】青田 洋一
(72)【発明者】
【氏名】青田 洋一、青田 涼佑
【テーマコード(参考)】
3B090
【Fターム(参考)】
3B090AA04
3B090AD10
(57)【要約】
【課題】ストラップの側方への屈曲を調整し、また二つのストラップでY字状・X字状の分枝・結合形態を作成するアジャスターを複数提供する。
【解決手段】その一つはストラップの一定範囲をS字と逆S字曲線を接合して中央が表面側に隆起した曲線とし、その曲線のたわみが凹側ほど大きくなるように整形したパッド10に複数のベルト通しを設置しパッドの彎曲にストラップを沿わせるアジャスターである。もう一つはストラップが反転する二つの軸が扇型に開大し、ストラップに開大した軸を周回させるものである。後者には、その反転軸の扇型の開大角度を調整可能なもの、またパッチン錠61,62など挟持機構により反転軸に対して、あるいは反転軸の近傍でストラップを挟持できるものも提供し、これらにより分枝・結合形態の調整が可能となる。
【選択図】
図29
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ストラップの裏面に設置するパッド(10)を本体とし、パッド(10)は背面からみて両脇の直線部(13,14)が扇状に開大し、大きな円弧からなる曲線である外側縁(11)と直線部(13,14)は同一平面上にあり、パッド(10)背面の内側縁(12)はS字状の曲線とそれを反転させた逆S字状曲線を接合し中央が隆起した曲線からなる稜線であり、その軌道長は外側縁(11)の長さと等しく、また内側縁(12)と外側縁(11)をそれぞれ等分割して相対する点をパッド(10)背面上で結ぶ放射状に広がる線は両脇の直線部(13,14)と同じ長さの直線、あるいは曲線であり、また上記の放射状に広がる線を等分割して、内側縁(12)、あるいは外側縁(11)から任意の偏位量とする点を直線部(13,14)の間で結んだ曲線の軌道長は内側縁(12)、あるいは外側縁(11)の軌道長と等しい曲面、あるいは上記曲面から切り出した曲面、あるいは上記曲面をその一部とする曲面をパッド(10)の背面とし、上記パッド(10)の背側に複数設置したベルト通し(17)でストラップをパッド(10)背面の彎曲に沿わせて押圧してストラップを屈曲させるアジャスター。
【請求項2】
ストラップが反転する軸が扇型に開大しており、ストラップがその扇形を周回して、アジャスター入口部からアジャスター出口部までのストラップ軌道の長さを、ストラップ横軸上の凸側から凹側への偏位と比例関係に漸増させるアジャスター。
【請求項3】
ストラップ横軸から背側方向に扇状に開大する軸(22)の開大角を調節できることを特徴とする請求項2のアジャスター。
【請求項4】
扇型に開大したストラップが反転する2本の軸(42、43)の間にストラップが1枚通過できる間隙(44)があり、また反転する軸(42、43)の外側にはストラップが1枚通過できる間隙(47、48)が設置されている請求項2のアジャスター(41)。
【請求項5】
2本の軸(51,52)の開大角を調整可能であり、その2本の軸の内側あるいは外側に隣接して軸(55,56)を設置し、開大可能な軸(51,52)とそれに隣接する軸(55,56)との間でストラップ面を挟持できるようにパッチン錠(61,62)など挟持機構を設置した請求項2のアジャスター。
【請求項6】
開大可能な2本の軸(51,52)と、その2本の開大可能な軸の内側あるいは外側に設置した軸(55,56)の両者に着脱可能としたストラップを挟持しやすくするためのパッド(57,58)を有する請求項5のアジャスター。
【請求項7】
ストラップが反転する2本の軸(51,52)の開大角を調整可能であり、波形ピン(75,76)、あるいは開閉可能な一対の棒(94、95)とパッチン錠(97)などにより、軸で反転したところの近傍で反転前後の2枚のストラップ面を挟持できる請求項2のアジャスター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はストラップを側方に屈曲させるための、あるいは左記の屈曲部に別のストラップを結合してY字状、ないしX字状の分枝・結合形態を作成するためのアジャスターに関するものである。
【背景技術】
【0002】
本明細書のストラップはリュックサック、バックパック、デイパック、ナップザック、ランドセルなど様々な名称で呼ばれている背負い型バッグ、肩かけ鞄、荷物を絞めるラッシングベルト、楽器・武器・乳児などの吊り下げ・保持に用いられているストラップ、衣類としてのベルト、およびヘルメットなどの装備品やスポーツ・高所作業用ハーネス、整形外科・リハビリ領域で使用されるコルセット・義肢・装具の部材としてのベルトを対象とする。
【0003】
ベルトやストラップは種々の素材からなる帯状物である。物理的特徴は長軸方向への伸びと側方への屈曲に制限がある素材を使用することにより、物体の締めつけ、物体の吊り下げ、あるいは吊り下げて特定の位置で保持する用途で用いられている。
【0004】
ストラップと人体との接触面での不適合はしばしば問題となる。頻度の高い例は楽器、バッグ、リュックなどのストラップが肩の形態と適合しないことであり、その場合には荷重伝達性が不良となり、また肩への荷重分散が低下する。
【0005】
上記の問題を解消するために、ストラップを外側へと緩く屈曲させて裁断・製造する発明が複数あった。対象物別に列挙すると特許文献1ではギターで、特許文献2ではライフル銃で、また特許文献3のようにリュックサックの肩ストラップでは一般的となっている。 以下、このようなストラップの側方への屈曲を本明細書では単に屈曲と称する。
【0006】
屈曲する角度を調整できるストラップの発明もある。特許文献4ではストラップに設置した紐の締め付け具合により、特許文献5では腰ベルトの特定の部位に切り込みを加えその間隙の拡がりにより、特許文献6は腰ベルトの背部中央にベルクロ(商標)を設置し、左右のベルトの重なり具合により屈曲角度を調整可能としている。
【0007】
ストラップの付属品である肩パッドでストラップの走行を調整する発明があった。特許文献7は肩パッド上に設置したベルト通しの配列によりストラップを屈曲させている。
【0008】
肩のストラップと肩の接触面は外側ほど間隙が生じやすい。特許文献8や非特許文献1、非特許文献2で使用した肩パッドは上記の外側間隙を埋めるように、肩パッド上での外側のストラップの走行路を体表から持ち上がるようにしている。
【0009】
また特許文献9では肩ストラップの下面に角度調節を可能とした支持具を設置してストラップ面の傾斜を水平化させている。
【0010】
図1に示すように屈曲部の前後のストラップの長軸どうしのなす角度を以下、屈曲角と称し、角度は度数法で表記する。屈曲角が140から180度の範囲の緩い屈曲をアジャスターで作成する場合、一般的なものは特許文献10で使用されている2本のストラップの端末7どうしを角度つきのベルト環で結合させる方法である。このような複数のストラップの端末どうしを結合する方法、あるいは
図2に示すようにストラップの長さ調整用アジャスターでストラップを折り返し、長さ調整用アジャスターをストラップ端として、アジャスターどうしを結合する方法を以下、端々結合と略す。
図1は端々結合のアジャスターにより屈曲角をαとしたところである。
【0011】
端々結合のアジャスターには屈曲角度を調整できるものがある。特許文献12が肩ストラップで使用しているアジャスターは2本のストラップを端々結合させるものであり、屈曲角度αは90から170°の範囲で調整可能である。
【0012】
一本のストラップで緩い角度で屈曲させるアジャスターがある。特許文献11の中で使用したアジャスターはE字型の金属を使用して凹側のストラップを表面側に持ち上げつつ、その両脇を表面側から圧迫して走行路凹側を波打たせて撓ませることにより、緩い角度で屈曲させるものである。
【0013】
特許文献11のアジャスターは一本のストラップを使用し、ストラップ面がアジャスターに入る前と後とで同一面になるものである。以下、このようなアジャスターを順行法アジャスターと略す。
【0014】
ストラップをT字状、ないしY字状の分枝・結合形態とすることにより荷重伝達性を向上させる発明は多数存在する。
図2は特許文献13で3本のストラップの長さ調整用アジャスターを断端として端々結合させるアジャスターをメッセンジャーバッグに使用している例を示している。このアジャスターでは、各ストラップの長さと結合位置、およびそれぞれの結合角度を調整可能である。またこのアジャスターでは各ストラップの取り外しも容易となっている。
【0015】
端々結合以外でT字状、ないしY字状の分枝形態をつくる方法にはストラップの側方にもう一つのストラップの断端を結合させる方法がある。以下、この分枝形態を側端結合、側方から結合されるストラップを主ストラップ、主ストラップの側方に断端で結合するストラップを副ストラップと称する。
【0016】
側端結合のアジャスターの一つは
図3に示すT字状の分枝形態を作成するためのものである。主ストラップはアジャスターの前後で同一面となるものであるので、順行法アジャスターによる側端結合の一例である。
【0017】
側端結合のアジャスターには上記の順行法のほかに、
図4のように軸で主ストラップを反転させて Y字状の分枝形態を作るアジャスターがある。 以下、このように主ストラップがアジャスターの前後で表裏別の面となるものを反転法アジャスターと称する。
【0018】
反転法アジャスターの問題の一つは
図5に示すように、副ストラップの牽引力が小さい場合に主ストラップが反転しきらず、アジャスターに捻じれが生じることである。
【0019】
上記のアジャスターの捻じれを解消するために、特許文献14では
図6に示すように反転法アジャスターのストラップが通過する間隙を入口部と出口部に設けている。
【0020】
ギターは左右非対称であるため、ギターヘッドが下がりやすく、特に体格の小さい演奏者では適正な位置に保持することは難しい。特にベースギターはネックが長いため、この問題は生じやすい。またベースギターは重いために左肩への負担が大きい。これらの問題を解消するために2本ないし3本のストラップを結合して分枝・結合形態をつくり、荷重伝達性を改善する発明が複数ある。
【0021】
代表例は特許文献15で示されたように、演奏者の背部で二又に分枝させストラップを左右の肩にかけ、前方で結合する方法である。以下、この分枝形態を二又両肩法と略す。
図7は二又両肩法のストラップを演奏者背面から眺めたところを、分枝・結合部に設置するアジャスターを省略して示した図である。
【0022】
ギターに新たなストラップの結合点を追加する発明もある。特許文献16では演奏者の前方で分枝させてギターヘッドにもストラップを結合させており、以下、ヘッド結合法ストラップと称す。
図8は反転法アジャスターを使用してヘッド結合法ストラップを作成したところを前方からみたところの、演奏者を省略した図である。
【0023】
その他の分枝・結合形態のギターストラップとして、追加するストラップの結合をヘッド以外のギター上や、演奏者の衣類に設置するものなど、また分枝したストラップの一側を右脇から通すものなど通過経路を変更するものもある。これらの極めて多種多様の分枝・結合形態の一つ一つに専用の特殊ストラップが製造されている。
【0024】
非特許文献3のcotopaxi社(米国ユタ州)製のリュック(Veloz Hydration Pack 6L)では左右の肩ストラップを正中で反転させて屈曲し、反転部どうしを結合するアジャスターによりX字状の分枝・結合形態を作っている。
【0025】
以下、このようなストラップの端末以外の中間の部位どうしを結合させる方法を側側結合と称す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0026】
【特許文献1】US-A1-004148423
【特許文献2】US-B2-007048161
【特許文献3】特開2019-180515
【特許文献4】US-A1-005431320
【特許文献5】実用新案登録第3223871号
【特許文献6】特開平6-110
【特許文献7】US-A1-003237502
【特許文献8】特開2001-78821号
【特許文献9】特開2014-50572号
【特許文献10】特開2019-180515
【特許文献11】特開2001-348715
【特許文献12】特開2015-112448
【特許文献13】US-A1-2013/0277405
【特許文献14】特開2011-52349
【特許文献15】CZ-23630-U1
【特許文献16】US-A1-005936173
【非特許文献】
【0027】
【非特許文献1】OrthoTote社、“OrthoTote”、[on line]、[令和3年4月05日検索]、インターネット<OrthoTote : TriPower Design : TriPower Design>
【非特許文献2】ErgoPad Epad社、“Ergonomic 2”、[on line]、[令和3年3月28日検索]、インターネット<Amazon.com: ErgoPad Epad Ergonomic 2" Shoulder Strap Pad in Black: Computers & Accessories>
【非特許文献3】Cotopaxi社、“Veloz Hydration Pack 6L”、[on line]、[令和2年11月21日検索]、インターネット<https://hiconsumption.com/cotopaxi-veloz-hydration-pack/>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
特許文献1から3の発明による緩い屈曲をつけて裁断し製造する方法や特許文献10の一定の角度で端端結合して作成したストラップは、屈曲位置と屈曲角度が固定されているので、屈曲位置や屈曲角度の調整はできない。しかし肩の傾斜などの体形には個人差があるため、また牽引する対象物の違いや、対象物の保持したい位置によっても適する屈曲部位と屈曲角度が異なるため、良好な荷重伝達性が獲得できないことがある。
【0029】
また特許文献4から6のストラップ自体に屈曲角度調整機構を備えるストラップはストラップ上での屈曲できる部位が限定されている。
【0030】
図1、
図2は端端結合のアジャスターの使用例を示す。端端結合では2本のストラップの断端が必要となる。試作するためには1本のストラップを切断する必要があり、ストラップを無駄にしやすい。
【0031】
図4で示した反転法アジャスターの最低限必要なアジャスター内径bとストラップ幅a、およびストラップ屈曲角αの関係は、
(数1)
a=b・cos(α/2)となる。
そのため180度に近い屈曲角を作成しようとすると、アジャスター内径bは長大にする必要があり、反転法の使用は適さない。そのため反転法アジャスターの使用は
図4に示すように、主ストラップの屈曲角度が凡そ120度以下で、その屈曲部位に副ストラップで牽引力を加えてY字状の分枝・結合形態を作成する場合に限られている。
【0032】
以下、肩パッドなどストラップの付属品を使用して屈曲角度を調整する上での問題点を述べる。特許文献7の肩パッドに設置したベルト通しによりベルトの走行を調整する方法は使用できるストラップは横幅が細く、素材も曲げやすいものに限られている。
【0033】
特許文献8、非特許文献1、非特許文献2の肩パッドはストラップ下面の肩の外側よりに生じる間隙を埋めることを目的としているものである。肩のようなストラップの裏面から表面側へと突き上げる力が加わる部位以外での使用は困難である。また分厚い革のような曲げにくいストラップ素材では意図したストラップの軌道にならない。想定している屈曲角度以外に調整することも困難である。
【0034】
特許文献9の肩ストラップ下面に介在物は角度調整可能であるが、設置部位が肩直上に限定されており、また介在物を肩の上で保持することが難しい。
【0035】
特許文献11の中で使用したE字型のバックルは、分厚い革のような曲げにくいストラップ素材では屈曲させることが難しい。またストラップ素材に関わらず特定の屈曲角度以外に調整することは困難である。
以上をまとめると、次のような問題点があった。
(イ) 屈曲角度が鈍角のゆるい屈曲を一本のストラップを使用して作る場合、硬い素材のストラップに使用できるアジャスターがなく、またストラップ素材に関わらず特定の角度以外に調整することが困難である。
【0036】
以下、T字状、あるいはY字状の分枝形態を作成するアジャスターの問題点を以下に述べる。順行法側端結合のアジャスターにはT字状の分枝・結合形態を作成するためのものがあるが、Y字状の分枝・結合形態を想定したものがない。
T字状の分枝・結合形態のアジャスターでは副ストラップ7の牽引力が強い場合に、
図3に示すように主ストラップ2,4のアジャスター近傍に皺が生じてしまう。以上をまとめると、次のような問題点があった。
(ロ)順行法側端結合でT字状の分枝・結合形態を作成するアジャスターは副ストラップ7の牽引力が強い場合の使用に適さない。
【0037】
Y字状の分枝形態を作成する場合、使用可能なアジャスターは
図2に示す端端結合法と
図4に示す反転法側端結合の2種類がある。しかし、これらのアジャスターで作成可能な分枝・結合形態には制限があることを、以下に説明する。
【0038】
端端結合法のアジャスターを使用してストラップのY字状の分枝・結合形態を作る際、ストラップを鋭角で結合させる場合には制限が生じる。
図2は特許文献13のアジャスターの使用例を示すものである。角ACBを構成する2本のストラップのアジャスター同志が接触しており、角ACBをさらに小さくすることはできない。
【0039】
この端端結合法における分枝・結合角度の制限を
図8に示したヘッド連結法を例に説明する。分枝部より演奏者側のストラップ5と分枝部より前方のストラップ6の屈曲角αは
図9に示すように反転軸と同じ方向から眺めると計測できない。
図10はストラップ5とストラップ6とが同一面になるまで完全に反転させ、その同一面と直行する方向、すなわち反転軸に直行する方向から分枝部を眺めたところを示すものである。屈曲角が極めて小さく2本のストラップが重なっており、端端結合法アジャスターを使用できないことがわかる。
【0040】
特許文献16のヘッド連結法ストラップでは反転法アジャスターを使用している。 端端結合法アジャスターではストラップを無駄にしやすいことは前述したが、使用できるストラップの分枝・結合形態にも制限がある。以上をまとめると、次のような問題点があった。
(ハ)端端結合法アジャスターはストラップを切断するためストラップを無駄にしやすく、またストラップの屈曲角が0度に近い鋭角となる屈曲は作成できない。
【0041】
反転法は主ストラップの屈曲が鈍角となる分枝形態の作成に適さないことは前述した。またアジャスターの設置する位置にも制限があることを
図4で説明する。
反転法アジャスターは主ストラップのA端とB端、および副ストラップのD’ 端のそれぞれの位置からの牽引力の均衡がとれる位置で安定する。主ストラップのA端とB端からの牽引力が均等な場合、アジャスターが安定する位置C点は点線で示した角A D’Bの2等分線上となる。すなわち点線で示した角ACBの2等分線の延長線からD’が外れていれば、アジャスターをC点に設置できない。
【0042】
実例を
図7に示した二又両肩法ストラップで説明する。
図7はY字状の分枝位置をC点に設けた場合にストラップの両肩への適合性が良好で、かつベースギターを最適な位置に保持できる例を示している。すなわち最良の荷重伝達性と最適な肩への荷重分散が獲得するにはC点にアジャスターを設置する必要がある例である。
図4の点線で示した角ACBの2等分線上にあるD’方向にベースの固定ピンが存在する場合にのみ、反転法アジャスターは C点で安定する。しかし
図7のように点線で示した角ACBの2等分線からγの角度に外れたD方向にベースの固定ピンがある場合、アジャスターはC点から右へと移動してしまう。その結果、最良の荷重伝達性と最適な肩への荷重分散が獲得できない。
以上より、反転法アジャスターをC点に設置できるのは角度γが0度の場合に限られている。特許文献15では反転法を使用せずに、丸環による端々結合を二又両肩法ストラップに採用している。
以上をまとめると、次のような問題点があった。
(二)反転法アジャスターでストラップのY字状の分枝形態を作成する場合、主ストラップの屈曲角度を鈍角とすること、およびアジャスターの設置できる位置に制約が生じる。
【0043】
上記のとおり既存のアジャスターでは作成できる屈曲角度やアジャスターの設置位置には制限がある。そのため、二又両肩法ストラップ(
図7)とヘッド連結法ストラップ(
図8)の2種類の分枝形態ですら、両者を作成可能なアジャスターはない。
汎用性の高いアジャスターが存在しないために、特定の屈曲、あるいは分枝形態のみに特化した専用の特殊ストラップが製造されている。当然のことながら、これらの専用ストラップは互換性、多用途性に乏しく、想定した屈曲や分枝形態以外の形態で使用することは困難である。
【0044】
反転法で捻じれることは
図5で示すように牽引物が軽過ぎる場合、あるいはストラップ素材が硬すぎる場合にストラップが軸で反転しきらないために生じる。
図6で示す特許文献14のアジャスターはこの捻じれを解消できるが、この反転法アジャスターでは屈曲角度の調整はできない。 以上をまとめると、次のような問題点があった。
(ホ)反転軸でストラップが反転しきらないことを解消するアジャスターには、屈曲角度が調整可能なものがない。
【0045】
二つの主ストラップを反転させて屈曲させ、両者の屈曲部位で結合しX字状の分枝を形成するアジャスターは非特許文献3で使用されている。この二つのストラップを側側結合させるアジャスターには、次のような問題点があった。
(ヘ)側側結合させるアジャスターには二つのストラップが結合する角度、およびストラップ上でのアジャスターの設置位置を選択できるものがない。
本発明は以上の問題点を解決するためのものである。
【課題を解決するための手段】
【0046】
本発明の鈍角的屈曲を作る機構の一つは、はストラップの一定範囲を表面側へ隆起させるものであり、隆起したストラップの長軸はS字と逆S字曲線を接合した曲線で、そのたわみが凹側ほど大きい軌道となるように整形したパッド(10)をストラップの裏面に設置し、またパッド10に複数設置したベルト通し(17)により、ストラップをパッドの彎曲に強制的に沿わせるアジャスターである。
【0047】
もう一つの鈍角的屈曲を作る機構は、ストラップが反転する軸が扇型に開大しており、ストラップがその扇形を周回させてアジャスター入口部からアジャスター出口部までのストラップ軌道の長さを、ストラップ横軸上の凸側から凹側への偏位と比例関係に漸増させる機構を有するアジャスター。
その発展型は反転軸の扇型の開大角度の調整と、パッチン錠など挟持機構を一側に有する棒状構造や波形ピンで反転軸に対して、あるいは反転軸の近傍でストラップを挟持可能とするものであり、これにより順行法と反転法の使い分けを可能とし、また反転法でのアジャスターの設置位置を自由に選択することが可能となる。
【発明の効果】
【0048】
一本のストラップで大きな曲率半径の、あるいは鈍角的な緩い屈曲を作成し、その角度調整が可能となる。二本のストラップで作成するY字状あるいはX字状の分枝・結合の形態の調整が容易となる。個々の分枝・結合形態ごとに、特殊な専用ストラップを作成する必要性なくなる。体の成長など体格・体形の変化に応じて、あるいはストラップの対象物の変更に応じて、屈曲角や分枝形態の変更が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【
図1】ストラップの端末どうしの結合(端々結合)により作成した屈曲を示す。
【
図2】3本のストラップの端々結合で作成したY字状の分枝・結合形態を示す。
【
図3】順行法側端結合アジャスターの使用例を示す。
【
図4】反転法側端結合アジャスターの使用例を示す。
【
図5】ストラップの不十分な反転のために捻じれたアジャスターを示す。
【
図6】捻じれを防止する反転法アジャスターの使用例を示す。
【
図7】二又両肩法ギターストラップを背面からみた図を示す。
【
図8】反転法アジャスターにより作成したヘッド結合法ギターストラップを示す。
【
図9】反転軸の方向からみたヘッド結合法ストラップの分枝・結合部を示す。
【
図10】ヘッド結合法の分枝・結合部を反転軸に正対して眺めた図を示す。
【
図11】第1実施形態のパッドを背面からみたところを示す。
【
図12】第1実施形態のパッドを凸側となる外側縁側からみたところを示す。
【
図13】第1実施形態のパッド内側縁を通る断面図を示す。
【
図14】第1実施形態のアジャスターの完成形の背面図を示す。
【
図15】第1実施形態のアジャスターを二つ連結した使用例の背面図を示す。
【
図16】二つ連結した第1実施形態の使用例の屈曲凹側縁の断面図を示す。
【
図17】第1実施形態により変形S字状に彎曲させたギターストラップを示す。
【
図18】第2実施形態のアジャスターを左側前方から眺めたところを示す。
【
図19】開大角度をβとした第2実施形態のアジャスターを示す。
【
図20】第2実施形態のアジャスターで側端結合を作成したところを示す。
【
図21】第2実施形態による側端結合を背面方向から眺めたところを示す。
【
図22】第3実施形態のアジャスターの背面図を示す。
【
図23】第3実施形態アジャスターにストラップを通したところを示す。
【
図24】第3実施形態アジャスターで屈曲が完成したところを示す。
【
図25】第3実施形態のリュックの肩ストラップでの使用例を示す。
【
図26】第4実施形態のアジャスターの構成部品を示す。
【
図27】第4実施形態の順行法アジャスターの組み立て方を示す。
【
図28】第4実施形態の順行性アジャスターにストラップを通したところを示す。
【
図29】第4実施形態によりストラップの鈍角的屈曲を作成したところを示す。
【
図30】第4実施形態により作成したストラップの鈍角的屈曲の断面図を示す。
【
図31】第4実施形態により屈曲させたギターストラップの前面図を示す。
【
図32】第4実施形態の順行性アジャスターに必要なアジャスター幅bを示す。
【
図33】第4実施形態の反転法で作成したY字状の分枝・結合形態を示す。
【
図34】第4実施形態の反転法によるY字状分枝・結合形態の断面図を示す。
【
図35】第5実施形態のアジャスターの構成部品を示す。
【
図36】第5実施形態のアジャスターを組み立てたところを示す。
【
図37】第5実施形態の順行法で作成した鈍角的屈曲の正面図を示す。
【
図38】第5実施形態の順行法で作成した鈍角的屈曲の断面図を示す。
【
図39】第5実施形態の反転法で作成したY字状の分枝・結合形態を示す。
【
図40】第5実施形態の反転法によるY字状分枝・結合形態の断面図を示す。
【
図41】第5実施形態反転法による肩ストラップのX字状分枝・結合形態を示す。
【
図42】第6実施形態アジャスターの構成部品と組み立て方を示す。
【
図43】第6実施形態反転法でのX字状の分枝・結合形態の作成過程を示す。
【
図44】第6実施形態反転法による肩ストラップのX字状分枝・結合形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0050】
多種多様な屈曲・挟持機構が考えうるが、例示的説明に不可欠と思われる6つの実施形態のみ詳述する。
【0051】
以下の6つの実施形態はすべて鈍角的屈曲を作成可能である。第1および第3実施形態は特定の屈曲角度をつくるものであるため単体では角度調整はできないが、複数のアジャスターを連結して使用することにより角度調整が可能である。第2実施形態、第4実施形態、第5実施形態、および第6実施形態は単体で鈍角的な屈曲角度の調整を可能とするものである。
【0052】
第4実施形態、第5実施形態、および第6実施形態は前述したもう一つの主要な特徴であるストラップを挟持する機構を具有するものである。これにより順行法と反転法を使い分け、すべての角度の屈曲を作成することが可能となる。またY字・X字状の分枝・結合形態を自在に作成し、調整することが可能である。第6実施形態はX字状の分枝・結合形態の作成、および結合を解除し分離することを容易とする。
以下、本発明による6つの実施形態について説明する。
(第1実施形態)
【0053】
以下、
図11,
図12、
図13、
図14、
図15,
図16、
図17を基に本発明の第1実施形態のアジャスターを説明する。本発明の第1実施形態はストラップの一定範囲を表面側へ隆起させるものであり、隆起したストラップの長軸はS字と逆S字曲線を接合した曲線で、そのたわみが凹側ほど大きい軌道となるように整形したパッド10をストラップの裏面に設置し、またパッド10に複数設置したベルト通し17により、ストラップをパッドの彎曲に強制的に沿わせるアジャスターである。
【0054】
図11は上記パッド10をストラップが設置される背面側からみたところを示す。背側からみると背面の両脇の同一の長さからなる直線部13,14は扇状に開大し、上記扇型の弧からなる外側縁11と直線部13,14は同一平面上にある。
【0055】
パッド10の背面は中央が隆起した曲面である。
図12は外側縁11の側からみたところを示す。外側縁11の側からみた内側縁12の稜線はS字状の曲線とそれを反転させた逆S字状曲線を接合し中央が隆起した曲線である。
図11、
図12では内側縁12を一点鎖線で示した。
【0056】
パッド10の背面は以下の条件を満たす曲面とする。パッド10の背面の内側縁12と外側縁11の中央どうしを結ぶ稜線は直線であり、その長さは直線部13,14の長さと等しい。その他のパッド10背面上の内側縁12と外側縁11とをそれぞれ等分割し相対する点を結ぶ線はパッド10背面上に放射状に広がる直線、あるいは極めて直線に近い緩やかな曲線でなぞることが可能であり、その直線、あるいは曲線の長さは直線部13,14の長さと等しい。
また上記のパッド10背面上の内側縁12と外側縁11とを結ぶ放射状に広がる線を等分割して、内側縁12、あるいは外側縁11から任意の偏位量の点を直線部13,14の間で結んだ曲線もS字と逆S字曲線を接合して中央を隆起させた曲線である。その直線部13,14を結ぶ中央が隆起した曲線の軌道の長さは一定であり、内側縁12、あるいは外側縁11の軌道の長さと等しい。
【0057】
上記により直線部13と直線部14に直行する角度でストラップが入り、直行する角度でストラップが出ていくように設置することが可能となる。ストラップの軌道は外側縁11側から内側縁12側へと徐々にたわみが大きくなる。
パッド10の背面は上記の条件を満たす曲面、あるいは上記曲面の一部を切り出した曲面、あるいは上記曲面をその一部とする曲面でもよい。
【0058】
上記の関係を満たす内側縁12の曲線は複数存在する。説明を容易にするために、内側縁12を以下の条件に規定して例示する。
図13は内側縁12を通り、パッド10表面に直行する曲面でのパッド10の断面図である。その断面で内側縁12は半径r0、中心角δの円弧を4分割して両外側4分の一を変曲点として接線で反転させた曲線とする。
両脇の直線部13,14の長さをXとし、パッド外側の弧11の曲率半径、すなわち背側からみた扇型の半径外をR、扇型の中心角、すなわち両脇の直線部13,14のなす角をγとすると、上記の条件は
(数2)
R・γ=r0・δおよび
(数3)
(R-X)・Sin(γ/2)=2・r0・Sin(δ/2)の二つの式を満たすことになる。
【0059】
上記二つの式の4つの変数R、γ、r0、δ二つの変数を確定すると残る2変数のXとの関係が確定する。γ=10度に設定したい場合にはR、r0、δのうち、もう一つの変数を確定すれば残る2変数が確定することになる。例えばδ=180度を選択すれば、R≒10.148X、r0≒X/1.774であり、あるいはδ=188度を選択すれば、R≒9.4X、r0≒X/2となる。
図11,
図12、
図13、
図14、
図15,
図16、
図17はγ=10度、δ=180度を選択した例を示している。内側縁12は180度を4分割した外側45度が変曲点となる曲線となる。そのとき、パッド10の表面背側外側の弧11の中央と内側縁12の中央を結ぶ稜線の傾斜はおおよそ18度となる。
【0060】
パッド10には外側縁11と内側縁12を等分割してベルト通し15を複数設置する。ベルト通し15を設置するための穴16を外側縁11と内側縁12の近傍にて穿っておく。
図14はアジャスターの完成図であり、リベット18をベルト通し17を介して穴16に設置したところを示している。一対のベルト通しを設置するための穴16を結んだ長さYが使用できるストラップの横幅の最大値となる。
ストラップを背側からベルト通し17で十分に押圧し、パッド背面の彎曲どおりに沿わせる必要があり、ベルト通し17はストラップの素材より硬い素材を用いる。
【0061】
パッド10の素材はゴム、合成樹脂等、ある程度の弾性を有するものとする。また
図11,
図12、
図13に示すように均等にスリット15を加えて、パッドが体表など設置する面に適合して曲がりやすくする。
図11,
図12、
図13で図示したパッド10は3か所にスリット15を設置して4分割した例を示している。さらに細かく分割してスリット15を増設して、曲がりやすくしても良い。
【0062】
両脇の直線部13,14のなす角γとストラップ屈曲角αは
(数4)
180-γ=αの関係となる。
【0063】
図15は二つのアジャスターを連結しγ=20度、ストラップの屈曲角α=160度としたところを表面側から眺めたところを示す。
図16は
図15のストラップの凹側縁でのストラップ面に直行する曲面での断面図である。ストラップの凹側辺縁はパッド内側の縁12より凸側、すなわちパッドの外側縁11よりになるので、その曲率半径r1は必ずr0より大きい。二つのアジャスターを連結したところの曲率半径r2はストラップの厚み分だけr1より小さくなる。よってストラップは曲率1/r2まで曲げることができる素材を選択する必要がある。
【0064】
図17は第1実施形態のアジャスターを4つ連結して左凸40度に弯曲させ、それに隣接して反対向きにアジャスターを設置し、右凸10度の弯曲も加えて変形S字状のギターストラップを作成したところを示す。
第1実施形態は緩い彎曲を作りたい場合に適しており、一定の曲率で屈曲角度を段階的に選択できる。
(第2実施形態)
【0065】
以下、
図18、
図19、
図20、
図21を基に本発明の第2実施形態の実施方法について説明する。第2実施形態はストラップ横軸から背側方向に扇状に開大可能な軸22をストラップ裏面に設置するアジャスターである。
【0066】
図18は角度調整前であり支柱21には開大可能な反転する軸22、角度調整板23、左のフレーム24、右のフレーム25、および副ストラップ結合用ループ環26が結合されている。開大可能な反転する軸22、角度調整板23の支柱21への付着端は撓みやすいよう細く設計してあり、金属、プラスチック等、一定程度、撓む素材が適している。
【0067】
本発明の第2実施形態を使用するときは、
図19に示すように角度調整板23上の複数の穴から一つの穴を選択し、その穴に開大可能な反転する軸22の末端の突起をはめ込んで開大角度を確定する。
図20,21は主ストラップ2,4を順行性に通し、副ストラップ7を副ストラップ結合用ループ環26に結合したところである。
図20は副ストラップ側の左側方から眺めた図であり、
図21は2つのストラップ面に正対する背面方向から眺めた図である。
【0068】
図3に示したように従来の順行法アジャスターでは結合する副ストラップの牽引力が強いと撓みが生じてしまう。第2実施形態は、このような副ストラップの牽引力と主ストラップの屈曲角の不均衡による撓みを屈曲角の調整により解消するものである。
【0069】
主ストラップ2,4および副ストラップ7の3方向の牽引力が同等な場合、それぞれのストラップのなす角が120度であれば、ストラップ面の撓みは消失する。そのときの反転する軸22の開大角度βは支柱21に対する左のフレーム24と右のフレーム25の開大具合が小さい場合、約30°となる。
(第3実施形態)
【0070】
第3実施形態は扇状に開大した2本の軸でストラップを2回反転させることにより、一定角度の鈍角的屈曲を作成するものである。本明細書では
図22、
図23、
図24、
図25を基に、第3実施形態のアジャスターついて説明する。
【0071】
図22は第3実施形態のアジャスター41である。2本の軸42,43の開大角βとストラップの屈曲角αは
(数5)
180-2・β=αの関係となる。
図22、
図23、
図24、
図25は屈曲角を136度とするためのアジャスターの例であり、左に11度傾斜した反転軸42と右に11度傾斜した反転軸43を有しており、反転軸42と反転軸43との開大角βは22度となる。反転軸42と反転軸43に挟まれる中央の部分は台形の間隙44となる。反転軸42の外側脇には間隙45を、反転軸43の外側脇には間隙46を設ける。左最外側には右に22度に傾斜した間隙47があり、右最外側には,左に22度に傾斜した間隙48を設ける。中央の台形の間隙44の高さとその両脇の間隙45,46および最外側の間隙47、48の長さはストラップの幅よりわずかに長い程度とする。副ストラップ連結用スリット49は反転軸42と反転軸43との開大の軸側、すなわち台形間隙44の短い底の側に彎曲の凸側を外に向けて設ける。
【0072】
本発明の第3実施形態を使用するときの、上記アジャスター41に左側からストラップを通す場合の通し方を
図23に示す。ストラップ2は左最外側間隙47を裏面から貫通し、間隙46に入り、反転軸43で反転させて裏面3となる。中央の台形間隙44を裏面から貫通し、次に間隙45を表面から貫通して、反転軸42を反転して表面4となり、間隙48を裏面から貫通し、アジャスター41から出ていく。
【0073】
図24は入り口側ストラップ2と出口側ストラップ4に牽引力を加えてストラップのたわみを消失させ136度の屈曲角αを獲得したところを示す。 ストラップの裏面3の長軸は中央の台形間隙44の底と平行になる。
【0074】
図25は第4実施形態のアジャスター使用しリュックの左右の肩ストラップを屈曲角136度として、前胸部中央で副ストラップにより連結したところを示す。アジャスター41の表裏は副ストラップの連結用スリット49の設置しやすい向きになるように選択する。
(第4実施形態)
【0075】
第4実施形態のアジャスターは扇状に開大した2本の軸の開大角が調整可能であり、その2本の軸に隣接する着脱可能な軸があり、2本の軸と隣接する軸との間でストラップを挟持するためのパッチン錠が設置されており、ストラップを挟持しやすくするためのパッドが開大可能な2本の軸と、その隣接する軸のどちらにでも着脱可能なアジャスターである。
【0076】
第4実施形態は順行法と反転法を使い分けが可能である。それにより、すべての角度の屈曲が作成可能となり、また副ストラップと結合するY字状の分枝・結合の形態を調整することが可能となる。第4実施形態はベースギターなどの重い牽引物も対象とするため、角度調整機構や挟持機構に強度を持たせる構造を採用している。
【0077】
説明を容易とするために扇状に開大し、開大角が調整可能な2本の軸を角度調整棒51,52と称する。また隣接する着脱可能な軸は角度調整棒51,52の内側に設置しても良いが、本明細書では角度調整棒51,52の外側に設置する例を基に説明するので外側棒55,56と称する。また外側棒55,56は角度調整棒51,52の開大軸側に旋回自由に取り付けてもよいが、角度調整棒51,52の開大軸と反対側となる円弧側に旋回自由に固定した例で説明する。またパッチン錠61,62は角度調整棒51,52に設置してもよいが、外側棒55,56に取り付けた例で説明する。以下に説明する。
以下、
図26、
図27、
図28、
図29、
図30、
図31、
図32、
図33、
図34を基に説明する。第4実施形態のアジャスターの部品構成を
図26に示す。挟持パッド57、58はストラップを軸に対して圧着するためのものでありゴムなどの弾性素材とする。挟持パッド57、58以外はすべて金属など強度のある剛性素材を用いる。角度調整部は扇状に開大可能な円柱状の一対の角度調整棒51,52よりなる。 角度調整棒52と角度調整板53は開大の円弧側末端で L字形に結合し一体化している。角度調整板53上には複数の穴を設け、その全ての穴から開大軸50までの長さは角度調整棒51の両端に設けた穴50と69を結ぶ長さと同じにする。
【0078】
図27、
図28、
図29、
図30、
図31、
図32は屈曲角αが鈍角となる緩い屈曲を形成するための順行法アジャスターとしての使用法を説明するためのものである。
図27に、その順行法アジャスターの組み立てを示す。角度調整棒51,52の開大軸の軸受となる穴50に挿入する開大軸ピン63を軸として旋回自由に結合する。
【0079】
角度調整棒51の円弧側は角度調整板53と嵌合する形態とする。角度固定ピン64は角度調整棒51の円弧側の穴69を介し、角度調整板53上の複数の穴のうち一つを選択し挿入し、二つの角度調整棒51、52の開大角度が固定される。
【0080】
外側棒56は角度調整棒52の円弧側の穴54にリンクコネクター60を介し旋回自由に連結する。外側棒55の円弧側端にはリンクコネクター59を設置し、リンクコネクター59を介して角度調整板53上に設置した穴に連結する。その穴は角度調整棒51を固定するために角度固定ピン64を挿入した角度調整板53の穴に外側で隣接する穴とする。これにより外側棒55は角度調整棒51の外側に、外側棒56は角度調整棒52の外側に旋回自由に設置される。
【0081】
外側棒55の開大軸50側にはパッチン錠61によるロック機構を設置する。同様に外側棒56の開大軸50側にはパッチン錠によるロック機構62を設置する。
種々のストラップの厚みに対応すべく、パッチン錠61、62の受鈎67、68は数段階から選択できるものとする。
【0082】
挟持パッド57、58はストラップとの接触面積を増やすため、その断面は挟持部が陥凹した形としている。また挟持面と反対側で長軸方向に割を入れておき、角度調整棒51、52あるいは外側棒55、56に付け替えが可能とする。そのため、角度調整棒51、52と外側棒55,56とは断面の形が正円など同一とする。
図27に示した鈍角的屈曲を形成するための順行法アジャスターでの構成では挟持パッド57は外側棒55に,挟持パッド58は外側棒56に設置する。
【0083】
図28は角度調整板53上の複数の穴のうち一つを選択し、角度調整棒51,52の開大角βが固定したところでのストラップの通し方を示す。手前側から追っていくとストラップ2は角度調整棒52で反転させて裏面3となり、角度調整棒51で再度反転させて表面4となる。
【0084】
図29は鈍角的屈曲の完成したところを示す。ストラップには手前側2と奥側4との間で緊張を加えストラップのたるみを取り除いた状態で、パッチン錠61,62の受鈎67,68のうち強く挟持できるところを選択して外側棒55と角度調整棒51の間、および外側棒56と角度調整棒52の間で2枚のストラップを挟持する。
【0085】
図30は
図29の円弧側からみた断面図である。角度調整棒51、52との間はストラップ3が通過するので、開大角βが0度のときであってもストラップ一枚が通過できるだけの間隙を設ける必要がある。 そのため
図26に示すように角度調整棒51に設けた開大軸の軸受となる穴50は角度調整棒51の長軸上から上記の間隙分だけ角度調整棒52の側に偏位して設置する。
【0086】
ストラップ面2,4間に牽引力が加わると、
図29で示した正面からみるとストラップ2,4ともに開大軸50から離れる方向への横ずれする力が加わる。また、
図30に提示した断面では角度調整棒51,52との間には反時計回りの回旋力が加わる。特に開大角βが大きい場合やベースギターなど重い楽器のストラップで使用するためには、角度調整棒51,52、外側棒56,57、およびパッチン錠61,62には上記の横ずれと回旋する力に対抗するだけの強度を持たせる必要がある。
【0087】
角度調整棒52と角度調整板53を円弧側末端で L字形に結合し一体化したのは部品を減らすためであり、十分な強度が得られれば角度調整棒52と角度調整板53とは結合ピンなどで旋回自由に結合してもよい。
【0088】
図31はギターのストラップを鈍角に屈曲させている例を示す。
【0089】
Y字状の分枝・結合形態で主ストラップの屈曲が鈍角の場合は上記により作成したアジャスターの追加結合部65に副ストラップを結合したループ環66を結合する。ループ環66をopen型としたのは副ストラップの断端を繋ぎやすいよう配慮したものであり、用途に応じてclosed型ループ環を選択しても良い。ループ環66と追加結合部65の結合面を鋸歯状としたのは、ループ環66と追加結合部65の結合角度を固定したい場合を想定したものであり、用途によってはフックなどで連結するだけでも良い。
【0090】
図32でストラップの幅a、ストラップの屈曲角αと角度調整棒51,52の開大角β、および必要とされるアジャスターの幅bの関係を説明する。太いストラップを使用するためには裏面3の左端をなるべく軸50に近接させ、角度βの2等分線と直行する方向に裏面3のストラップ長軸をおくように設置する必要がある。
【0091】
開大角βが0の時に必要とされる角度調整棒51,52の間隙を0mmとみなし、また角度調整棒51,52の太さを無視した概算では、
(数6)
b=a/cos{(540-3α)/4}となり、前述した反転法とは逆に、順行法では屈曲角度αが小さい鋭的な屈曲ほど、長いアジャスター幅bが必要となる。
【0092】
よって(数1)で示した反転法で必要なアジャスター幅を考え合わせると、ストラップ屈曲角108から180度の鈍角の場合には順行屈曲法、0から108°の鋭角の場合には後述する反転法を使用すれば、より太いストラップにも対応できることになる。屈曲角108°を順行法と後述する反転法の境界に設定すると、(数5)より角度調整棒51,52の開大角 β は36°まで開大可能とする必要がある。
【0093】
反転法アジャスターとしての使用法について、
図33、
図34をもとに説明する。
図33は反転法として第4実施形態のアジャスターを使用する場合の組み立てとストラップの設置法を示し、
図34はその矢状断の断面図を示す。順行法とのアジャスターの組み立ての違いは外側棒55および挟持パッド57を取り外して使用しないこと、および挟持パッド58を角度調整棒52に設置していることである。主ストラップは外側棒56で反転したところで、外側棒56と角度調整棒52との間で挟持される。
【0094】
ギターストラップの二又両肩法(
図7)での2等分線からの傾きγは角度調整棒51,52の開大角βになる。これによりギターストラップの二又両肩法で使用した場合も任意に傾き角度γを設定できるので、設置位置の制限がなくなる。
(第5実施形態)
【0095】
以下、
図35、
図36、
図37、
図38、
図39、
図40、
図41を基に本発明の第5実施形態の実施方法について説明する。第5実施形態の第4実施形態との違いは軽い対象物を想定していることである。そのため第4実施形態ほどの強度が不要となる。その一方、牽引力が小さいために
図5のように反転軸の近傍でストラップが反転しきらない問題を解消する必要がある。そのために波形ピン75,76を挟持機構として使用し、反転部の近傍で2枚のストラップを挟持する。この第5実施形態での波形ピンで挟持する方法は特許文献14と異なり、屈曲角度の制限はなく角度は任意に決定できる。
【0096】
第5実施形態の構成部品を
図35に、組み立てたところを
図36に示す。軸受70に挿入するボルト73をナット74で絞めて角度調整棒71、72は所望の開大角βにて固定される。角度調整棒71,72の軸受70の周りは鋸歯状としたのは開大角βの固定にあそびが生じないよう施したものである。
図35では角度調整棒71の鋸歯状部分を示すように角度調整棒71を反転させてある。
【0097】
波形ピン75,76は折り返し部には留め具81,82を介して連結ピン79、80を設置する。連結ピン79、80は角度調整棒の外側端の穴83、84に挿入し、波形ピン75,76の断端側はまとめて穴77,78に挿入し、角度調整棒と一体化し固定する。
【0098】
図37は屈曲角αが鈍角となる緩い屈曲の完成形である。ストラップの走行経路を追っていくと、ストラップ手前側2からアジャスターに入り、角度調整棒71で反転してストラップ裏面3となり、角度調整棒72で反転しストラップ表面4となる。ストラップ手前側表面2は角度調整棒72の近傍で、ストラップ奥側表面4は角度調整棒71の近傍で波形ピン75,76により挟持し固定される。
【0099】
図38は
図37のストラップの屈曲部を円弧側から眺めた断面図である。角度調整棒71と72との間はストラップ裏面3が通過するので、開大角βが0度のときに、最低でもストラップ一枚分の間隙を設ける必要がある。 そのため
図35に示すように角度調整棒71、72の長軸から外れた部位に軸受70を設ける。
【0100】
ストラップ両端2、4間に牽引力が加わると、
図38の断面では角度調整棒71と72の間のストラップの反転がほどける方向となる反時計回りに回転する力が加わり、また
図37に示す正面ではストラップには軸70から円弧側へと横ずれする力が加わる。よって、これらを抑制できるだけのストラップを挟持し固定する力が波形ピン75,76には必要である。
【0101】
主ストラップの屈曲が鈍角のY字状の分枝・結合形態を作成する場合は、
図37で作成した屈曲に加えて、副ストラップをループ環86に結合してループ環86を追加結合部となるフック85に接続する。
【0102】
上記の
図37で作成した鈍角的屈曲のストラップを二つ作成して鈎状の追加結合部85にて、両者を結合すれば、X字状の分枝・結合形態が作成できる。
【0103】
主ストラップの屈曲が鋭角の場合は、反転法を用いる。
図39は完成したストラップの屈曲を示し、
図40はその断面を示す。下方となる波形ピン76はストラップ7の横ずれを防止し、位置を角度調整棒72上で固定するために使用している。
【0104】
主ストラップの屈曲が鋭角のX字状の分枝・結合形態も作成できる。
図41は第5実施形態によりリュックサックの左右のストラップを反転法で屈曲させて、前胸部で結合した例を示すものである。ストラップの屈曲位置や屈曲角度α、および左右のストラップが結合する角度も調整可能であり、角度調整棒71、72の開大角βが左右のストラップが結合する角度となる。
(第6実施形態)
【0105】
以下、
図42、
図43、
図44を基に本発明の第6実施形態の実施方法について説明する。第6実施形態は第5実施形態よりも強い牽引力がストラップに加わることを想定し、また二つの反転させたストラップを反転部で側側結合させてX字状の分枝・結合形態を作成すること、さらに結合された状態からの解除が容易であることが求められるリュックサックの肩ストラップでの使用を想定したものである。
【0106】
図42は第6実施形態の構成部品と組み立て方を示す。角度調整棒91は角度調整板93と一体化している。角度調整棒91と角度調整棒92は開大軸側で嵌合し開大軸の穴を軸受として挿入する開大軸固定ピン90を軸として旋回自由に結合する。角度調整板93上には複数の穴を設け、そのうち一つの穴を選択して開大角度βを決定し、固定ピン99を挿入して固定する。角度調整棒92にはそれの外側に平行となる位置に反転したストラップをひっかける鈎状の突起100を一体化して設置する。角度調整棒91の外側には一対の挟持棒94,95を設置する。
【0107】
一対の挟持棒94,95はリンクコネクター96で連結し旋回自由に固定する。挟持棒94,95は2枚のストラップを同時に挟持する。ストラップを挟持した際の挟持棒94,95の中間線、および角度調整棒91,92とひっかけ鈎100と同一面とする。
【0108】
図43はストラップの通し方を示す。向かって右側のストラップを角度調整棒91で反転させ、ストラップが反転する部位とストラップの屈曲角αを選択して、
図43の点線上で反転部近傍のストラップ2枚を挟持棒94,95で挟持し、パッチン錠97で固定する。
【0109】
もう一つのストラップとの結合する角度は二つの角度調整棒91,92の開大角度βとなる。角度調整棒92の円弧側の穴と角度調整板93上の穴から選択した一つを介して固定ピン99で固定して、開大角度βを確定する。矢印に示すように向かって左側から第2の主ストラップを反転させて、角度調整棒92の外側に設置されたひっかけ鈎100に連結する。
【0110】
図44は第6実施形態によるX字状の分枝・結合形態の作成例であり、リュックサックの左右のストラップを反転法で屈曲させて、前胸部で結合したところを示す。左右のストラップの結合と分離が容易であるためリュックの着脱に難はない。
【符号の説明】
【0111】
2 ストラップの順行法アジャスターへの入口部
3 ストラップの順行法アジャスター内反転裏面部
4 ストラップの順行法アジャスターからの出口部
5 ストラップの反転法アジャスターでの手前側の表面
6 ストラップの反転法アジャスターで反転した後の裏面
7 ストラップの他のストラップに結合する結合端
10 (第1実施形態の)パッド
11 (第1実施形態のパッド10の)背側表面の外側縁
12 (第1実施形態のパッド10の)背側表面の内側縁
13 (第1実施形態のパッド10の)背側表面の左側直線部
14 (第1実施形態のパッド10の)背側表面の右側直線部
15 (第1実施形態のパッド10の)凸側と凹側を結ぶスリット
16 (第1実施形態のパッド10の)ベルト通し固定のための穴
17 (第1実施形態の)ベルト通し
18 (第1実施形態の)ベルト通し固定用のリベット
21 (第2実施形態の)支柱
22 (第2実施形態の)角度可能なストラップが反転する軸
23 (第2実施形態の)角度調整板
24 (第2実施形態の)左フレーム
25 (第2実施形態の)右フレーム
26 (第2実施形態の)副ストラップ結合用ループ環
41 第3実施形態のアジャスター
42 (第3実施形態の)入口側反転軸
43 (第3実施形態の)出口側反転軸
44 (第3実施形態の)中央に位置する台形の間隙
45 (第3実施形態の入口側反転軸42の)脇スリット
46 (第3実施形態の出口側反転軸43の)脇スリット
47 (第3実施形態の)入口側スリット
48 (第3実施形態の)出口側スリット
49 (第3実施形態の)副ストラップ連結用スリット
50 (第4実施形態の角度調整棒51,52の)開大軸の軸受となる穴
51 (第4実施形態の)角度調整棒
52 (角度調整棒51の対面となる)角度調整棒
53 (第4実施形態の)角度調整板
54 (角度調整棒 52の円弧側の)外側棒56を連結する穴
55 (第4実施形態の)外側棒
56 外側棒(外側棒55と同じ)
57 (第4実施形態の)挟持パッド
58 挟持パッド(挟持パッド57と同じ)
59 (第4実施形態の) リンクコネクター
60 リンクコネクター ( リンクコネクター59と同じ)
61 (第4実施形態の)パッチン錠
62 パッチン錠 ( パッチン錠61と同じ)
63 (第4実施形態の)開大軸固定ピン
64 (第4実施形態の)角度固定ピン
65 (第4実施形態の)追加ストラップ結合部
66 (第4実施形態の)追加ストラップ結合用ループ環
67 (角度調整棒51の)パッチン錠の受鈎
68 (角度調整棒52の)パッチン錠の受鈎
69 (角度調整棒51の)円弧側の連結用の穴
70 (第5実施形態の)開大軸
71 (第5実施形態の)角度調整棒
72 (角度調整棒71の対面となる)角度調整棒
73 (第5実施形態の)開大軸固定ボルト
74 (第5実施形態の)開大軸固定ナット
75 (第5実施形態の)波形ピン
76 波形ピン (波形ピン75と同じ)
77 (角度調整棒71の)波形ピン75の断端部挿入用の穴
78 (角度調整棒72の)波形ピン76の断端部挿入用の穴
79 (波形ピン75の)連結ピン
80 (波形ピン76の)連結ピン
81 (連結ピン79の)絞め具
82 (連結ピン80の)絞め具
83 (角度調整棒71の)連結ピン79挿入用の穴
84 (角度調整棒72の)連結ピン80挿入用の穴
85 (第5実施形態の)追加ストラップ結合用フック
86 (第5実施形態の)追加ストラップ結合用ループ環
90 (第6実施形態の)開大軸固定ピン
91 (第6実施形態の)角度調整棒
92 (角度調整棒91の対側となる)角度調整棒
93 (第6実施形態の)角度調整板
94 (第6実施形態の)ストラップの挟持棒
95 挟持棒94の対面となる挟持
96 挟持棒94と挟持棒95を連結するリンクコネクター
97 (第6実施形態の)パッチン錠
98 パッチン錠97の受鈎
99 (第6実施形態の)開大角度を固定するピン
100 ストラップのひっかけ鈎