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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022181734
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】空気調和機
(51)【国際特許分類】
   F24F 13/20 20060101AFI20221201BHJP
【FI】
F24F1/0007 401B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021088852
(22)【出願日】2021-05-27
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】永田 剛史
(72)【発明者】
【氏名】米澤 勝
(72)【発明者】
【氏名】和田 賢宣
(72)【発明者】
【氏名】大城 崇裕
【テーマコード(参考)】
3L051
【Fターム(参考)】
3L051BG06
(57)【要約】
【課題】本開示は可動パネル開閉構造の小型化および低コスト化を可能とし、室内機の薄型化と省エネ性を向上した空気調和機を提供する。
【解決手段】本開示における空気調和機は、吸込口、吹出口を備えた筐体と、筐体に着脱自在に取り付けられる前面パネルと、筐体に形成された前部吸込口を開閉するためリンク機構を介して前面パネルに取り付けられる可動パネルとを備え、可動パネルの開閉機構は、駆動モータと、駆動モータに連結された減速機構と、リンク機構とを有し、リンク機構は減速機構の出力ギヤと噛合するギヤ部と、駆動軸に連結されたボス部と、可動パネルを取り付け可能な駆動リンク部とを有し、駆動リンク部とギヤ部とは、正面視において略直線状に形成されている。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸込口、吹出口を備えた筐体と、前記筐体に着脱自在に取り付けられる前面パネルと、前記筐体に形成された前部吸込口を開閉するためリンク機構を介して前記前面パネルに取り付けられる可動パネルとを備え、
前記可動パネルの開閉機構は、駆動モータと、前記駆動モータに連結された減速機構と、前記リンク機構とを有し、前記リンク機構は、前記減速機構の出力ギヤと噛合するギヤ部と、駆動軸に連結されたボス部と、前記可動パネルを取り付け可能な駆動リンク部とを有し、前記駆動リンク部と前記ギヤ部とは、正面視において略直線状に形成されていることを特徴とする空気調和機。
【請求項2】
前記可動パネルの開閉機構は、正面視において熱交換器に重ならないように前記熱交換器の側方に配置されることを特徴とする請求項1記載の空気調和機。
【請求項3】
前記可動パネルの開閉機構において、前記駆動モータは前記減速機構を挟んで、熱交換器の反対側に配置されることを特徴とする請求項1又は2に記載の空気調和機。
【請求項4】
前記可動パネルの開閉機構は、前記リンク機構と前記駆動軸を介して連結され熱交換器の反対側に配置された第二リンク機構とを有し、前記可動パネルが開いたとき、前記第二リンク機構は、前記リンク機構に対して早く駆動するように前記第二リンク機構における前記駆動軸のボス部と前記リンク機構における前記駆動軸のボス部とが角度をずらして前記駆動軸に連結されていることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の空気調和機。
【請求項5】
前記可動パネルの開閉機構において、前記可動パネルが閉じたとき、前記ギヤ部と前記駆動リンク部との間に形成された突起部が前記減速機構のケーシング部に形成されたストッパ部と嵌合することを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の空気調和機。
【請求項6】
前記可動パネルの開閉機構において、前記可動パネルが閉じたとき、前記駆動軸に連結されたボス部の上部に形成された突起部が前記前面パネルに形成されたリブに当接し、さらに前記ギヤ部が閉じる方向へ回転したとき、前記前面パネルが開かないように前記ギヤ部で抑えられていることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の空気調和機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、空気調和機に関し、前面吸込口を開閉できるようにした可動パネル開閉構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から空気調和機には、より多くの空気を取り込むために、室内機の前面枠から前側へ迫り出す可動パネルを備えた室内機を有するものがある。
【0003】
特許文献1に記載の空気調和機は、室内機の筐体に前面パネルが着脱自在に取り付けられるとともに、筐体に形成された前部吸込口を開閉するための可動パネルがリンク機構を介して前面パネルに取り付けられ、可動パネルの開閉機構は、駆動モータと、駆動モータに連結された減速機構と、減速機構と嵌合する駆動ギヤと、駆動ギヤに連結された駆動軸と、駆動軸に連結されたリンク機構とを備え、駆動ギヤは室内機の略前面上方からのみ減速機構に噛合することを特徴とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4437029号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は可動パネルの開閉構造の小型化および低コスト化を可能とし、室内機の薄型化と省エネ性を向上した空気調和機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示における空気調和機は、吸込口、吹出口を備えた筐体と、筐体に着脱自在に取り付けられる前面パネルと、筐体に形成された前部吸込口を開閉するためリンク機構を介して前面パネルに取り付けられる可動パネルとを備え、可動パネルの開閉機構は、駆動モータと、駆動モータに連結された減速機構と、リンク機構とを有し、リンク機構は、減速機構の出力ギヤと噛合するギヤ部と、駆動軸に連結されたボス部と、可動パネルを取り付け可能な駆動リンク部とを有し、駆動リンク部とギヤ部とは、正面視において略直線状に形成されている。
【発明の効果】
【0007】
本開示における空気調和機は、ギヤ部と駆動リンク部とを略直線状に配置することで、可動パネルの開閉機構を正面視において幅方向に小型化でき、直接ギヤ部からリンクへ駆動力を伝達することが可能となる。そのため、室内機の奥行サイズのコンパクト化と、省エネ性能の向上でき、駆動軸を介することないのでガタツキを抑制した開閉機構を備えることができる。また、ギヤ部と駆動リンク部とを一体化した場合は部品点数を削減でき、開閉機構の低コスト化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1の室内機における可動パネルが閉止した状態の断面図
図2】実施の形態1の室内機における可動パネルが開放した状態の断面図
図3】実施の形態1の室内機における前面パネルと可動パネルの分解斜視図
図4図3の矢視Aから見た可動パネルのリンク機構周辺の部分斜視図
図5図4の矢視Bから見た可動パネルのリンク機構の側面図
図6】実施の形態1の室内機における可動パネルのリンク機構部分の正面図
図7】実施の形態1における前面枠を取り外したときの室内機の正面図
図8】実施の形態1における熱交換器、リンク機構および減速機構の正面図
図9】実施の形態1における駆動モータ、リンク機構および減速機構の側面図
図10】実施の形態1における駆動モータおよび減速機構の斜視図
図11】実施の形態2の室内機における前面パネルと可動パネルの分解斜視図
【発明を実施するための形態】
【0009】
(本開示の基礎となった知見等)
発明者らが本開示に想到するに至った当時、意匠性に優れ、奥行きコンパクトでかつ省エネ性能が高い室内機を備える空気調和機がユーザから要望されていた。また、従来から空気調和機には、より多くの空気を取り込むために、室内機の前面枠から前側へ迫り出す可動パネルを備えた室内機を有するものがあり、特に奥行がコンパクトな室内機において、可動パネルを構成することにより、省エネ性と意匠性とを両立することが可能であることは公知であった。
【0010】
一般的な空気調和機には塵埃を捕集するエアフィルターが設けられているが、使用者がエアフィルターをお手入れするときには、前面パネルを開いた上で、エアフィルターを取り外して、お手入れをする必要がある。
【0011】
そのため、特許文献1に記載の可動パネル開閉構造は、駆動源の駆動力をギヤ部を介して駆動軸に伝達して可動パネルを開閉する。駆動源は本体に取り付けられる一方、駆動軸は可動パネルが取り付けられる前面パネルに取り付けられ、前面パネルを可動パネルとともに本体に対し開閉する必要があることから、前面パネルの開閉も考慮した構成となっている。
【0012】
このようにお手入れ時の前面パネルの開閉と、運転動作時の可動パネルの開閉を両立させる駆動機構の駆動ギヤ部の配置を考慮すると、可動パネルの開閉機構は室内機における略前面上方に配置する必要があり、熱交換器の風上側に配置されることになる。
【0013】
また、可動パネルの開閉機構において、駆動源の駆動力をギヤ部を介して駆動軸に伝達し、駆動軸に連結される少なくとも2つ以上のリンク機構を用いて、それらリンク機構が連動して可動パネルを開閉させるという製品設計を行うのが一般的であった。しかし、従来のこの構成では奥行がコンパクトな室内機においては、熱交換器風上側に可動パネルの開閉機構があるため、熱交換器への空気の流れの遮蔽物となり、送風性能への影響が大きく、省エネ性能が悪化するという課題があった。そうした状況下において、発明者らは、駆動源の駆動力を伝達するギヤ部の回転軸と、連結する駆動軸と、リンク機構における駆動リンクの回転軸とが同軸で回転して駆動していることをヒントにして、駆動源から駆動軸を介さずにギヤ部および駆動リンクへ直接駆動力を伝達するという着想を得た。この着想から可動パネルの開閉機構を室内機の正面視において幅方向に小型化する構成を発見し、上記の課題を解決するために、本開示の主題を構成するに至った。
【0014】
そこで、本開示は、可動パネルの開閉機構において、駆動リンク部とギヤ部とを、正面視において略直線状に形成することで、可動パネル開閉構造の小型化および低コスト化を可能とし、室内機の薄型化と省エネ性を向上した空気調和機を提供する。
【0015】
以下、図面を参照しながら、実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明、または、実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が必要以上に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
【0016】
なお、添付図面および以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図していない。
【0017】
(実施の形態1)
以下、図1図10を用いて、実施の形態1を説明する。
[1-1.構成]
[1-1-1.空気調和機の構成]
図1は本開示にかかる空気調和機の室内機を示しており、冷媒配管を介して室外機(図示せず)に接続される。
【0018】
室内機は長手方向に直交する方向の断面形状が略矩形の筐体1を有し、筐体1の上部および前部に複数の吸込口2aが形成されるとともに、筐体の下部には吹出口3aが形成されている。また、吸込口2aと吹出口3aとを連通する空気通路9が形成されている。図1に示すように、筐体1に熱交換器4、ファンモータ(図示しない)、クロスフローファン5、およびファンモータを駆動する駆動電源や制御基板などを収納した電装部が備えられている。
【0019】
空気調和機では、ファンモータによってクロスフローファン5が回転駆動され、前面枠2で形成された吸込口2aより室内空気を吸い込み、熱交換器4で熱交換された空気を室内へ吹出口3aより吹き出す。また、熱交換器4が蒸発器として機能する冷房運転時に熱交換器4より空気中の水分が結露した凝縮水が発生し、筐体1や吹出しグリル3などで形成されるドレンパンに捕集され、ドレンパンに接続されるドレンホースを介して室外に排出される。さらに室外機に備えられる熱交換器と室内機の熱交換器4との間で冷媒を循環するために、高圧用と低圧用の2種類の冷媒配管が断熱材で覆われた補助配管が接続される。この補助配管は、筐体1の背面側の下部へ引き回され、空気調和機の背面側下部に配置される壁の穴を通して、室外機に接続される。
【0020】
[1-1-2.前面パネルの構成]
前部吸込口を覆うように、筐体1の前面には前面パネル6が着脱自在に取り付けられており、前面パネル6には、二つ以上の複数のリンク機構10を介して、可動パネル7が前部吸込口を開閉自在に取り付けられている。さらに、筐体1の左右どちらかの一端の前面側の略上方には、リンク機構10を介して、可動パネル7を開閉駆動するための駆動モータ30と減速機構20とが取り付けられている。
【0021】
なお、図1は風向を上下に変更する羽根8と可動パネル7が吹出口3aおよび前面吸込口をそれぞれ閉止した状態を、図2は羽根8および可動パネル7が吹出口3aおよび前面吸込口をそれぞれ開放した状態を示している。
【0022】
図3は前面パネル6と可動パネル7とを分解して示した斜視図であり、図4図3における矢視Aよりみた部分的な斜視図を示している。図に示されるように、前面パネル6におけるベースパネル6aには両端部を除く部分には複数の矩形開口部6bが形成されており、可動パネル7が開いた際に、吸込口となり、その上部に配置された駆動軸10cは例えば略D字状の断面形状を有し、前面パネル6の上方内側に配置され、所定の間隔で離間した軸受け部6cにより回動自在に支持されている。また、前面枠の両端部には、縦方向における中央部から上部にかけて複数の凹部が形成されており、この凹部は第一リンク機構10a、第二リンク機構10bの収容部として機能する。
【0023】
[1-1-3.リンク機構の構成]
また、上述した二つ以上のリンク機構10は、中間部が互いに回動自在に連結された駆動リンク部11および従動リンク部12により構成されており、前面パネル6の凹部に対向する駆動軸10cには、各リンク機構を構成する駆動リンク部11の上端部が保持されている。すなわち、駆動リンク部11の上端部には、略D字状の駆動軸挿通孔が形成されており、この駆動軸挿通孔に駆動軸10cが挿入されることで、駆動軸10cの回転に伴い駆動リンク部11が揺動する構成である。
【0024】
図5は室内機正面から見て左側に位置する第一リンク機構10aのみを取り出したとき、図4における矢視Bからみた側面図を示しており、図6は第一リンク機構10aを組付けたときに前面パネル6の左側の一部分を正面視したときの図を示している。
【0025】
図4および図6に示されるように、駆動リンク部11の下端部は二股状に形成されており、この二股状の下端部の内側に内方に向かって突出する一対のピンが一体的に形成されており、このピンが可動パネル7の駆動リンク取付部7aに形成された円孔に挿入されることで、駆動リンク部11の下端部は可動パネル7に形成された駆動リンク取付部7aに回動自在に取り付けられる。
【0026】
一方、駆動リンク部11とともにリンク機構を構成する従動リンク部12の上端部もまた、二股状に形成されており、この二股状上端部の内面には内方に向かって突出する一対のピンが一体的に形成されるとともに、従動リンク部12の下端部には側方に向かって突出するピンが一体的に形成されている。また、可動パネル7の内面における駆動リンク取付部7aから上方に所定の長さだけ離間した部位には従動リンク取付部7bが一体的に形成されており、この従動リンク取付部7bに形成された円弧状長孔に従動リンク部12上端部のピンが遊びを持って挿入されることで、従動リンク部12の上端部は従動リンク取付部7bに摺動自在かつ回動自在に取り付けられている。さらに、リンク収容孔である矩形開口部の周囲にはリブが後方に向かって突出するように形成されており、リブの一部に形成された長孔に従動リンク部12下端部のピンが遊びを持って挿入されることで、従動リンク部12の下端部はリブに摺動自在かつ回動自在に取り付けられている。
【0027】
また、駆動軸10cの一端部(正面から見て左側、図4では右側)には、図5に示されるように、所定の角度範囲で扇状に形成されたギヤ部11bが形成されている。また、図6に示すように室内機を正面視したとき、ギヤ部11bが駆動リンク部11と略一直線(図6における一点鎖線)上に配設されるとともに駆動リンク部11の上端部に一体的に形成されており、駆動軸を回転駆動するとともに、構成部品を介さずに駆動リンク部11を直接回動動作する。なお、ギヤ部11bと駆動リンク部11は一体的に形成されてもよく、また複数の部材を組み合わせた構造であってもよい。ギヤ部11bが形成された駆動リンク部11は、略D字状の駆動軸挿通孔が形成されたボス部11aを有し、この駆動軸挿通孔に駆動軸10cが挿入されることで、駆動モータ30の駆動力が減速機構20およびギヤ部11bを介して、駆動リンク部11かつ駆動軸10cに伝達し、さらには駆動軸10cのもう一方の端部(正面から見て右側)に取り付けられる第二リンク機構10bに伝達される。ギヤ部11bはボス部11aの中心とする円弧状に所定の間隔でベース部上に配置された複数のピンを有し、これらの複数のピンはギヤ部の先端部において円弧状リブにより互いに連結されている。すなわち、ギヤ部は従来のようにインボリュート歯車ではなく複数のピンで構成されていることから、ギヤ部の歯先面は半円形を呈している。
【0028】
第二リンク機構10bは、第一リンク機構10aが駆動モータ30から直接駆動力を伝達するのに対して、駆動軸10cを介して駆動力を伝達する。そのため、第一リンク機構10aは減速機構20のバックラッシ分のガタツキや駆動リンク部11の上方に形成される駆動軸挿入部の略D字形状の隙間により、リンク機構の回動動作が第一リンク機構10aと第二リンク機構10bとでわずかながら回転角度がずれることとなる。可動パネル7を平行に開閉するためには、この回転角度のずれを抑制しなければならない。したがって、第二リンク機構10bにおける駆動リンク部11の略D字形状の挿入孔は第一リンク機構10aにおける駆動リンク部11の略D字形状の挿入孔とで予め、第二リンク機構10bが先に回動動作するように略D字形状の挿入孔が駆動軸10cの回転中心に0.1度~1度程度ずらした配置になるように形成されている。
【0029】
なお、図2に示されるように、可動パネル7の各リンク機構が接続される各端部には上下方向に離間した二つの取付け部材が一体的に形成されるとともに、図1および図2に示されるように、前面枠2の対応する部位には取付部材挿入孔が形成されており、前面パネル6の取付部材6dを前面枠2の取付部材挿入孔に挿入することにより前面パネルは可動パネル7とともに手動で回動可能なように前面枠2に取り付けられ、ベースパネル6aの各端部の下方にツメ部6eが形成されており、前面枠2に形成されるツメ嵌合部に保持されることで前面パネル6が筐体1に固定される。
【0030】
[1-1-4.減速機構の構成]
図7は前面枠を取り外した状態における室内機の正面図を示しており、図8は熱交換器4、リンク機構10および減速機構20を正面視からみたときの正面図を示している。
【0031】
図9は熱交換器の側方に取り付けられた駆動モータ30、減速機構20、リンク機構10を示しており、可動パネル7が閉じた状態と開いた状態を両方を示している。また、図10は駆動モータ30および減速機構20の斜視図を示している。
【0032】
図8から図10に示されるように、減速機構20は二分割されるケーシング21と、ケーシング内に収容される第1ギヤ22と第2ギヤ23および第3ギヤ24とを備えている。ケーシング21は熱交換器の一端の樹脂端板に固定される第1ケーシングハーフ21aと第1ケーシングハーフ21aに対し着脱可能な第2ケーシングハーフ21bとから成り、正面視において熱交換器4の左側に取り付けられる。
【0033】
また、第1ケーシングハーフ21aの内面には、駆動モータ30の駆動軸と同心状に配置された第1ギヤ22の軸受け部と、駆動モータ30の駆動軸に隣接する第2ギヤ23の軸受け部と、第2ギヤ23の軸受け部に隣接する第3ギヤ24の軸受け部とが一体的に形成されている。第2ギヤ23の軸受け部および第3ギヤ24の軸受け部が突出して形成された第1ケーシングハーフ21aの面の反対面が熱交換器4に近接した配置となり、熱交換器4と一番離間した第2ケーシングハーフ21bの平坦面に駆動モータ30が固定されている。
【0034】
一方、第2ケーシングハーフ21bは第1ケーシングハーフ21aの平坦面と平行に延びる第1平坦面を有しており、その内面には、第1ケーシングハーフ21aの第2ギヤ23の軸受け部および第3ギヤ24の軸受け部とそれぞれ同心状に配置された第2ギヤ23の軸受け部および第3ギヤ24の軸受け部とが一体的に形成されている。
【0035】
さらに、第1ギヤ22は単一ギヤでとして形成される一方、第2ギヤ23および第3ギヤ24は小径ギヤと大径ギヤとを有する2段ギヤとして形成されている。第1ギヤ22は、第2ケーシングハーフ21bに固定された駆動モータ30の駆動軸に取り付けられるとともに、第1ケーシングハーフ21aに形成された第1ギヤ22の軸受け部により回転自在に取り付けられる。一方、第2ギヤ23、第3ギヤ24は、第1ケーシングハーフ21aおよび第2ケーシングハーフ21bに形成された第2ギヤ23の軸受け部および第3ギヤ24の軸受け部により回転自在に取り付けられる。
【0036】
また、駆動モータ30の駆動軸に取り付けられた第1ギヤ22は第2ギヤ23の大径ギヤと噛合い、第2ギヤ23の小径ギヤは第3ギヤ24の大径ギヤと噛合い、第3ギヤ24の小径ギヤはギヤ部11bと噛合う。このため、第3ギヤ24の小径ギヤの歯底面はギヤ部11bの歯先面と相補形状を有しており、小径ギヤの歯底面は半円形を呈している。また、小径ギヤの歯先面は、ギヤ部11bとの噛合時における干渉をさけるため、所定の角度をなす凸状面として形成されており、インボリュート歯車と異なり平坦な歯先面は存在しない。なお、本開示の実施例では、第1ギヤ22、第2ギヤ23の大径および小径ギヤ、第3ギヤ24の大径ギヤはインボリュート歯車として形成されている。
【0037】
また、駆動モータ30としては、例えばステッピングモータが使用されるが、駆動モータ30の駆動力を受け揺動するギヤ部11bの揺動角を設定するために、駆動モータ30の回転角を設定する必要がある。そこで、第1ケーシングハーフ21aのストッパ部21cと当接するように、駆動リンク部11はギヤ部11bの端部下方に突起部11cが一体的に形成されており、可動パネル7の閉止時には、突起部11cが第1ケーシングハーフ21aのストッパ部21cに当接した位置を位置決めの原点に設定するようにしている。
【0038】
なお、ギヤ部11bは揺動中心に対し所定の角度範囲にのみ形成されており、可動パネル7が開放位置から閉止位置まで揺動して筐体に当接すると、ギヤ部11bの端部に位置する歯の歯先面が第3ギヤ24の小径ギヤの歯底面に面接触している。このとき、駆動モータ30は短時間ではあるがさらに回転しようとすることから、第3ギヤ24の小径ギヤは図9において反時計方向にさらに回転するので、突起部11cおよびストッパ部21cがないと、ギヤ部11bと小径ギヤとの噛合状態が解除される歯飛び現象が発生するおそれがある。したがって、突起部11cおよびストッパ部21cはギヤ部11bの位置決め用原点を設定するばかりでなく、歯飛び防止手段として作用する。
【0039】
また、図5に示すように駆動軸10cが連結される駆動リンク部11のボス部11aの上部に突起部11dが形成されており、突起部11dがベースパネル6aの内面の上方に形成されたリブ6fに当接されている。突起部がベースパネル6aのリブ6fを押さえることで、可動パネル7の閉止後、万一ギヤ部11bが閉止方向に回動したとき、ギヤ部11bと第3ギヤ24の小径ギヤとで歯飛び現象を起こし、前面パネル6が筐体1に係止されていた引掛け部を乗り越えて、意図せずに前面パネル6が開放することを防止する。
【0040】
また、第3ギヤ24の小径ギヤに対するギヤ部11bの着脱性を考慮して、可動パネル7の閉止時において小径ギヤと当接するギヤ部の端部に位置する歯と同一面上に突起部11cが当接するように、ストッパ部21cの位置は設定されている。
【0041】
また、第1ケーシングハーフ21aは、熱交換器4のU字管4aの側方に隙間をとって、熱交換器4の樹脂などで形成される左側構造体に配置され、正面からドライバーなどの工具でネジで固定することが可能なようになっている。
【0042】
[1-2.効果等]
以上のように、本実施の形態において、筐体1には前面パネル6が着脱自在に取り付けられるとともに、前部吸込口を開閉するための可動パネル7がリンク機構10を介して前面パネル6に取り付けられ、可動パネル7の開閉機構は、駆動モータ30、駆動モータ30に連結された減速機構20と、リンク機構10とを備え、リンク機構10は、減速機構20の出力ギヤと噛合するギヤ部11bと、駆動軸10cに連結されたボス部11aと、可動パネル7を取り付け可能な駆動リンク部11とを有し、駆動リンク部11とギヤ部11bとは、正面視において略直線状に形成されている。
【0043】
これにより、可動パネル7の開閉機構を室内機の正面視における幅方向に小型化でき、ギヤ部11bから駆動軸10cを介してリンク機構10へトルクを伝達することから、ギヤ部11bからリンク機構10へトルクを直接伝達することが可能となる。そのため、室内機の奥行サイズのコンパクト化と、省エネ性能の向上、さらには、開閉機構の低コスト化が可能となり、駆動軸を介することないのでガタツキを抑制した開閉機構を備えることができる。また、ギヤ部11bと駆動リンク部11とを一体化した場合は部品点数を削減でき、開閉機構の低コスト化が可能となる。
【0044】
本実施の形態のように、可動パネル7の開閉機構は、正面視において熱交換器4に重ならないように熱交換器4の側方に配置されるようにしてもよい。
【0045】
これにより、図8に示すように熱交換器風上側の遮蔽物をなくすことができる。そのため、コンパクトな室内機を実現することができ、熱交換器4の有効長EL寸法部分での送風性能の悪化を抑制でき、熱交換器の伝熱を促進して、空気調和機を高性能化することができる。
【0046】
本実施の形態のように、可動パネル7の開閉機構において、駆動モータ30は減速機構20を挟んで、熱交換器4の反対側に配置されるようにしてもよい。
【0047】
これにより、熱交換器4のU字管4aが冷やされて結露したとき、駆動モータ30へ結露水が付着することを抑制することができる.そのため、モータの故障の原因となる水分の付着を抑制でき、信頼性の高い可動パネル7の開閉機構を備えたコンパクトな室内機を実現することができる。
【0048】
本実施の形態のように、可動パネル7の開閉機構は、リンク機構10と駆動軸10cを介して連結され熱交換器4の反対側に配置された第二リンク機構10bとを有し、可動パネル7が開いたとき、第二リンク機構10bは、第一リンク機構10aに対して早く駆動するように第二リンク機構10bにおける駆動軸10cのボス部と第一リンク機構10aにおける駆動軸10cのボス部とが、角度をずらして駆動軸10cに連結されているようにしてもよい。
【0049】
これにより、駆動リンク部11を有する駆動側の第一リンク機構10aは、ガタツキが少ないが、もう一方の第二リンク機構10bは駆動軸10cを介して連結されており、可動パネル7との連結部で減速機構20がないため、ガタツキが発生する。このガタツキ発生分を考慮して、第二リンク機構10bを予め、角度をずらして駆動軸10cと連結することにより、ガタツキが発生しても、第一リンク機構10aと第二リンク機構10bとが略平行に可動することができる。そのため、コンパクトな室内機を実現することができ、複数のモータを必要とせずに可動パネル7を筐体に対して平行に開閉することができる。
【0050】
本実施の形態のように、可動パネル7の開閉機構において、可動パネル7が閉じたとき、ギヤ部11bと駆動リンク部11との間に形成された突起部11cが減速機構20のケーシング部に形成されたストッパ部21cと嵌合するにしてもよい。
【0051】
これにより、ギヤ部11b近傍に形成される突起部11cが減速機構20のストッパ部21cに嵌合して当接することで、省スペースな構造体で開閉機構の原点位置であることを判別することができる。そのため、コンパクトな室内機を実現することができ、高価なセンサを必要とせずに可動パネル7の原点位置を検出することができ、ギヤ部11bと減速機構20の出力ギヤとで回転ずれが発生した時に起こる歯飛びを抑制することができる。
【0052】
本実施の形態のように、可動パネル7の開閉機構において、可動パネル7が閉じたとき、駆動軸10cに連結されたボス部11aの上部に形成された突起部11dが前面パネル6に形成されたリブ6fに当接し、さらにギヤ部11bが閉じる方向へ回転したとき、前面パネル6が開かないようにギヤ部11bで抑えられているようにしてもよい。
【0053】
これにより、ギヤ部11bの回転中心となるボス部11a近傍に形成された突起部11dが開閉機構の原点復帰時に前面パネル6のリブ6fに当たり、手動で開閉する前面パネル6自体を可動パネル7の運転時の開閉動作で開かないように抑えることができる。そのため、コンパクトな室内機を実現することができ、ギヤ部11bと減速機構20の出力ギヤとで回転ずれが発生した時に起こる歯飛びを抑制し、前面パネル6が意図せずに開かないようにすることができ、信頼性の高い可動パネル7の開閉機構を備えた空気調和機を提供することができる。
【0054】
(実施の形態2)
以下、図11を用いて、実施の形態2を説明する。なお、実施の形態2では、主に、実施の形態1と異なる点について説明する。実施の形態2においては、実施の形態1と同一又は同等の構成については同じ符号を付して説明する。また、実施の形態2では、実施の形態1と重複する説明を省略する。
【0055】
[2-1.可動パネルの開閉機構の構成]
室内機の前部吸込口を覆うように、筐体1の前面には前面パネル6が着脱自在に取り付けられており、前面パネル6には、二つ以上の複数のリンク機構10を介して、可動パネル7が前部吸込口を開閉自在に取り付けられている。さらに、筐体1の左右両端の前面側の略上方には、リンク機構10を介して、可動パネル7を開閉駆動するための駆動モータ30と出力ギヤ25とが左右両端にそれぞれ取り付けられている。
【0056】
なお、室内機の断面は、実施の形態1と同様に、風向を上下に変更する羽根8と可動パネル7が吹出口3aおよび前面吸込口をそれぞれ閉止した状態が図1となり、羽根8および可動パネル7が吹出口3aおよび前面吸込口をそれぞれ開放した状態が図2となる。
【0057】
図11は前面パネル6と可動パネル7とを分解して示した斜視図を示している。図に示されるように、前面パネル6におけるベースパネル6aには両端部を除く部分には複数の矩形開口部6bが形成されており、可動パネル7が開いた際に、吸込口となり、左右のリンク機構はともに図5に示す構成となっており、左右それぞれの駆動モータ30が第一リンク機構10a、第二リンク機構10bをそれぞれ動かす構成となっている。可動パネル7を開閉動作させる際は、それぞれのリンク機構10で原点復帰動作を行い、左右それぞれの駆動モータ30を同時に動作させて、出力ギヤ25を回転動作させる。これにより、可動パネル7は筐体1に対して、左右平行に開閉することができる。駆動モータ30に連結する出力ギヤ25はギヤ部11bと噛合う。このため、出力ギヤ25の歯底面はギヤ部11bの歯先面と相補形状を有しており、ギヤの歯底面は半円形を呈している。また、ギヤの歯先面は、ギヤ部11bとの噛合時における干渉をさけるため、所定の角度をなす凸状面として形成されており、インボリュート歯車と異なり平坦な歯先面は存在しない。
【0058】
本実施例の場合、出力ギヤ25は駆動モータ30の出力軸に直接連結した構成としているが、減速機構を介して駆動させてもよい。
【0059】
[2-2.効果等]
以上のように、本実施の形態において、空気調和機の可動パネル7の開閉機構において、可動パネル7を開閉駆動するために、少なくとも2つ以上の駆動モータ30と、出力ギヤ25と、リンク機構10とを備える。リンク機構10は、出力ギヤ25と噛合するギヤ部11bと、駆動軸10cに連結されたボス部11aと、可動パネル7を取り付け可能な駆動リンク部11とを有し、駆動リンク部11とギヤ部とは、正面視において略直線状に形成されている。
【0060】
これにより、ギヤ部11bと駆動リンク部11とを略直線状に配置することで、可動パネル7の開閉機構を正面視における幅方向に小型化でき、駆動軸を介さずに、左右それぞれ、ギヤ部11bから駆動リンク部11へトルクを直接伝達することが可能となる。そのため、室内機の奥行サイズのコンパクト化と、省エネ性能の向上、さらには、開閉機構の低コスト化が可能となり、駆動軸を介することないのでガタツキを抑制した開閉機構を備えることができる。また、ギヤ部11bと駆動リンク部11とを一体化した場合は部品点数を削減でき、開閉機構の低コスト化が可能となる。
【0061】
(他の実施の形態)
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、実施の形態1および2を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用できる。また、上記実施の形態1および2で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施の形態とすることも可能である。
【0062】
そこで、以下、他の実施の形態を例示する。
【0063】
実施の形態1および2では、空気調和機の可動パネルの開閉機構の構成の一例として、リンク機構がクロス型のものを説明した。空気調和機における可動パネルの開閉機構は、室内機の前面側の吸込み面積を可動時に大きく確保できるように可動パネルを開放させる構成とし、可動パネルを閉止する時にコンパクトに収納できる構成であればよい。したがって、リンク機構としてクロス型のものに限定されない。ただし、空気調和機として、正面視でリンク機構、駆動モータおよび減速機構が熱交換器と重ならないように配置されれば、リンク機構の種類に関わらず送風性能の悪化を抑制でき、熱交換器の伝熱促進を大きくすることができ、室内機の奥行サイズのコンパクト化と、省エネ性能の向上を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本開示は、奥行サイズがコンパクトで省エネ性能の高い空気調和機の室内機に適用可能である。具体的には、一般家庭用空気調和機などに、本開示は適用可能である。
【符号の説明】
【0065】
1 筐体
2 前面枠
3 吹出しグリル
4 熱交換器
5 クロスフローファン
6 前面パネル
7 可動パネル
8 羽根
9 空気通路
10 リンク機構
11 駆動リンク部
12 従動リンク部
20 減速機構
21 ケーシング
22 第1ギヤ
23 第2ギヤ
24 第3ギヤ
25 出力ギヤ
30 駆動モータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11