(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022181735
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】酸化染毛剤および染毛処理方法
(51)【国際特許分類】
A61K 8/06 20060101AFI20221201BHJP
A61K 8/41 20060101ALI20221201BHJP
A61K 8/86 20060101ALI20221201BHJP
A61Q 5/10 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
A61K8/06
A61K8/41
A61K8/86
A61Q5/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021088855
(22)【出願日】2021-05-27
(71)【出願人】
【識別番号】592255176
【氏名又は名称】株式会社ミルボン
(72)【発明者】
【氏名】平 夏樹
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB012
4C083AB082
4C083AB312
4C083AB352
4C083AB412
4C083AC071
4C083AC072
4C083AC122
4C083AC181
4C083AC182
4C083AC351
4C083AC352
4C083AC532
4C083AC551
4C083AC552
4C083AC892
4C083AC902
4C083AD642
4C083BB13
4C083BB42
4C083CC36
4C083DD06
4C083DD33
4C083EE03
4C083EE26
(57)【要約】
【課題】第2剤への酸の配合に伴う染色性悪化を低減できる酸化染毛剤、及び染毛処理方法の提供。
【解決手段】酸化染毛剤は、第1剤と第2剤を混合して得られるものであって、第1剤が、トルエン-2,5-ジアミン、パラアミノフェノール、又はこれらの塩と、2,4-ジアミノフェノキシエタノール又はその塩と、アルカリ剤と、が配合されたものであり、第2剤が、有機酸及び/又は無機酸と、酸化剤と、が配合されたものであり、第1剤及び/又は第2剤が、炭素数22以下の液状高級アルコール、一価アルコール及び脂肪酸の液状エステル油、並びにポリオキシプロピレンブチルエーテルから選ばれた一種又は二種以上と、が配合されたものであり、染毛処理方法は、上記酸化染毛剤を使用するものである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1剤と第2剤を混合して得られる酸化染毛剤であって、
前記第1剤が、
トルエン-2,5-ジアミン、パラアミノフェノール、及びこれらの塩から選ばれた一種又は二種以上と、
2,4-ジアミノフェノキシエタノール及びその塩から選ばれた一種又は二種以上と、
アルカリ剤と、が配合されたものであり、
前記第2剤が、
有機酸及び/又は無機酸と、
酸化剤と、が配合されたものであり、
前記第1剤及び/又は前記第2剤が、
炭素数22以下の液状高級アルコール、一価アルコール及び脂肪酸の液状エステル油、並びにポリオキシプロピレンブチルエーテルから選ばれた一種又は二種以上と、が配合されたものであることを特徴とする
酸化染毛剤。
【請求項2】
前記第1剤とのアルカリ度の差が5.5ml/g以上である請求項1に記載の酸化染毛剤。
【請求項3】
前記第1剤のアルカリ度が8.0ml/g以上である請求項1又は2に記載の酸化染毛剤。
【請求項4】
前記第2剤のpHが3.5以下である請求項1~3のいずれか1項に記載の酸化染毛剤。
【請求項5】
前記第2剤における有機酸及び無機酸の総配合量が0.2質量%以上である請求項1~4のいずれか1項に記載の酸化染毛剤。
【請求項6】
前記第2剤における酸化剤の配合量が8質量%以下である請求項1~5のいずれか1項に記載の酸化染毛剤。
【請求項7】
前記第1剤及び/又は前記第2剤がポリオキシプロピレンステアリルエーテルが配合されたものである請求項1~6のいずれか1項に記載の酸化染毛剤。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の酸化染毛剤を使用する染毛処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化染毛剤および当該酸化染毛剤を使用する染毛処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
毛髪を着色するために用いられる酸化染毛剤は、酸化染料及びアルカリ剤が配合された第1剤と、酸化剤が配合された第2剤とを混合して得られるものであり、酸化染毛剤を使用した染毛処理は、酸性染毛料などのヘアカラーリング剤に比して毛髪の色持ちが長期にわたって持続する。この持続は、配合されたアルカリ剤が毛髪の膨張を促進し、酸化染料を毛髪内に浸透させることで生じる。一方、毛髪の膨潤は、毛髪からのタンパク質の流出などの毛髪損傷を生じさせる場合があり、この損傷の抑制が望まれる。
【0003】
染毛処理における損傷抑制に関して、第1剤のアルカリ剤の中和を第2剤への酸の配合により行う手段がある。その例として、特許文献1は、レブリン酸を配合した第2剤を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、第2剤への酸の配合は、毛髪の膨潤促進、膨潤速度を低下させてしまう結果、染色性を悪化させてしまう。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑み、第2剤への酸の配合に伴う染色性悪化を低減できる酸化染毛剤、及び染毛処理方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者が鋭意検討を行った結果、特定の酸化染料を配合する酸化染毛剤において炭素数22以下の液状高級アルコール、一価アルコールと脂肪酸の液状エステル油、又はポリオキシプロピレンブチルエーテルを配合すれば、第2剤への酸配合による染色性悪化を低減できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明に係る酸化染毛剤は、第1剤と第2剤を混合して得られるものであって、前記第1剤が、トルエン-2,5-ジアミン、パラアミノフェノール、及びこれらの塩から選ばれた一種又は二種以上と、2,4-ジアミノフェノキシエタノール及びその塩から選ばれた一種又は二種以上と、アルカリ剤と、が配合されたものであり、前記第2剤が、有機酸及び/又は無機酸と、酸化剤と、が配合されたものであり、前記第1剤及び/又は前記第2剤が、炭素数22以下の液状高級アルコール、一価アルコール及び脂肪酸の液状エステル油、並びにポリオキシプロピレンブチルエーテルから選ばれた一種又は二種以上と、が配合されたものであることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る酸化染毛剤は、前記第1剤とのアルカリ度の差が5.5ml/g以上であるものが良い。ここで「前記第1剤とのアルカリ度の差」とは、「本発明における前記第1剤のアルカリ度」から「本発明に係る酸化染毛剤のアルカリ度」を減じた値を意味する。アルカリ度が5.5ml/g以上であると、一般的に、毛髪の損傷抑制に適する一方で、染色性が悪化する傾向となるが、本発明におけるその悪化は、炭素数22以下の液状高級アルコール、一価アルコールと脂肪酸との液状エステル油、又はポリオキシプロピレンブチルエーテルの配合により低減する。
【0010】
本発明における前記第1剤のアルカリ度は、8.0ml/g以上であると良い。アルカリ度が8.0ml/g以上であると毛髪に損傷が加わる虞があるが、前記第2剤に有機酸及び/又は無機酸が配合されているので、その損傷を低減できる。
【0011】
本発明における前記第2剤のpHは、3.5以下が良い。pHが3.5以下であると、毛髪に加わる損傷を低減できる。また、低いpH設定であると染色性が悪化するのが一般的であるが、本発明におけるその悪化は、炭素数22以下の液状高級アルコール、一価アルコールと脂肪酸の液状エステル油、又はポリオキシプロピレンブチルエーテルの配合により低減する。
【0012】
前記第2剤における有機酸及び無機酸の総配合量は、0.2質量%以上が良い。総配合量が0.2質量%以上であると、毛髪に加わる損傷を低減できる。また、アルカリ剤の中和により染色性が悪化するのが一般的であるが、本発明におけるその悪化は、炭素数22以下の液状高級アルコール、一価アルコールと脂肪酸の液状エステル油、又はポリオキシプロピレンブチルエーテルの配合により低減する。
【0013】
前記第2剤における酸化剤の配合量は、8質量%以下が良い。酸化剤が8質量%以下であると、毛髪に加わる損傷を低減できる。また、酸化剤の配合量を少なく設定すると染色性が悪化するのが一般的であるが、本発明におけるその悪化は、炭素数22以下の液状高級アルコール、一価アルコールと脂肪酸の液状エステル油、又はポリオキシプロピレンブチルエーテルの配合により低減する。
【0014】
本発明における前記第1剤及び/又は前記第2剤は、ポリオキシプロピレンステアリルエーテルが配合されたものが良い。ポリオキシプロピレンステアリルエーテルの配合により、染色性の悪化をより低減でき、特に、トルエン-2,5-ジアミン及び/又はその塩と、2,4-ジアミノフェノキシエタノール及び/又はその塩とが配合されている場合、染色性悪化の低減効果が大きい。
【0015】
また、本発明に係る染毛処理方法は、本発明に係る酸化染毛剤を使用するものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る酸化染毛剤によれば、第2剤に配合されている有機酸及び/又は無機酸がアルカリ剤を中和するものの、炭素数22以下の液状高級アルコール、一価アルコールと脂肪酸の液状エステル油、又はポリオキシプロピレンブチルエーテルが配合されているから、特定の酸化染料による染色性の悪化を低減できる。
【0017】
本発明に係る染毛処理方法によれば、使用する酸化染毛剤において、第2剤に配合されている有機酸及び/又は無機酸がアルカリ剤を中和するものの、炭素数22以下の液状高級アルコール、一価アルコールと脂肪酸の液状エステル油、又はポリオキシプロピレンブチルエーテルが配合されているから、特定の酸化染料による染色性の悪化を低減できる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態に基づき、本発明を以下に説明する。
(酸化染毛剤)
本実施形態の酸化染毛剤は、酸化染毛用第1剤(以下、「第1剤」と称することがある。)と酸化染毛用第2剤(以下、「第2剤」と称することがある。)とを混合して得られる水中油型組成物である(本実施形態の酸化染毛剤として典型的なものは、水の配合量が70質量%以上のものである。)。
【0019】
本実施形態の酸化染毛剤の25℃でのpHは、第1剤などに配合されるアルカリ剤の配合によりアルカリ性に調整されていると良く、8.5以上12.0以下が良く、9.0以上11.0以下が好ましく、9.5以上10.5以下がより好ましい。pHが8.5以上であると、毛髪内部への酸化染料の浸透促進に好適であり、pHが12.0以下であると、皮膚への刺激抑制に好適である。
【0020】
上記酸化染毛剤のアルカリ度は、4.0ml/g以上6.5ml/g以下が良く、4.5ml/g以上6.0ml/g以下が好ましく、4.8ml/g以上5.8ml/g以下がより好ましく、5.0ml/g以上5.5ml/g以下が更に好ましい。アルカリ度が4.0ml/g以上であると、染色性向上に好適であり、アルカリ度が6.5ml/g以下であると、毛髪に加わる損傷の低減に好適である。なお、酸化染毛剤のアルカリ度は、水100ml、酸化染毛剤1.0g、及びエタノール10mlの溶液に、pHメーターの値が4.8になるまで0.1N塩酸水溶液を滴下し、このときに要した当該塩酸水溶液の容量(酸化染毛剤1.0gに対して要した0.1N塩酸水溶液の容量)である。
【0021】
「本実施形態における酸化染毛剤のアルカリ度」と「本実施形態における第1剤のアルカリ度」との差は、5.5ml/g以上7.5ml/g以下が良く、5.8ml/g以上7.0ml/g以下が好ましく、6.0ml/g以上6.5ml/g以下がより好ましく、6.2ml/g以上6.5ml/g以下が更に好ましい。このアルカリ度の差が5.5ml/g以上であると、毛髪に加わる損傷の低減に好適であり、7.5ml/g以下であると、染色性向上に好適である。
【0022】
本実施形態に係る酸化染毛剤の使用時の剤型は、特に限定されず、例えば、液状、クリーム状、ワックス状、ゲル状、フォーム状(泡状)が挙げられる。本実施形態の酸化染毛剤の粘度は、使用する際の毛髪への塗布、垂れ落ち等のハンドリング性を考慮すれは、クリーム状が良い。
【0023】
本実施形態の酸化染毛剤を得るための第1剤と第2剤との混合比率は、例えば、第1剤:第2剤=1:0.5以上2以下の質量比である。
【0024】
本実施形態の酸化染毛剤には、炭素数22以下の液状高級アルコール、一価アルコールと脂肪酸の液状エステル油、又はポリオキシプロピレンブチルエーテルが配合される。この配合は、本実施形態の第1剤及び第2剤の一方又は双方への配合により行われると良い。そして、この配合によれば、第2剤に配合した有機酸及び/又は無機酸が酸化染毛剤のアルカリ度を低下させたとしても、染色性の悪化を低減できる。
【0025】
本実施形態の酸化染毛剤には、炭素数22以下の液状高級アルコール、一価アルコールと脂肪酸の液状エステル油、及びポリオキシプロピレンブチルエーテルから選ばれた一種又は二種以上が配合される。この選定した成分の本実施形態に係る酸化染毛剤における総配合量は、染色性を向上させる観点から、0.05質量%以上2質量%以下が良く、0.1質量%以上1質量%以下が好ましく、0.3質量%以上1質量%以下がより好ましい。
【0026】
上記炭素数22以下の液状高級アルコールは、20℃で液状かつ一価の高級アルコールである。当該高級アルコールは、炭素数が12以上22以下である公知の液状高級アルコールから選ばれた一種又は二種以上が良く、例えば、2-ブチル-1-オクタノール、2-ヘキシルデカノール、2-オクチルデカノール、2-オクチルドデカノールが挙げられる。本実施形態の酸化染毛剤に当該液状高級アルコールを配合する場合、配合量は、染色性向上の観点から、0.05質量%以上2質量%以下が良く、0.1質量%以上1質量%以下が好ましく、0.3質量%以上1質量%以下がより好ましい。
【0027】
上記一価アルコールと脂肪酸の液状エステル油は、20℃で液状のエステル油である。当該液状エステル油は、公知の液状エステル油から選ばれた一種又は二種以上が良く、例えば、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ブチル、パルミチン酸イソプロピルなどの直鎖脂肪酸と低級アルコールとのエステル;カプリル酸セチル、ラウリン酸ヘキシルなどの直鎖脂肪酸と直鎖高級アルコールとのエステル;ミリスチン酸2-ヘキシルデシル、ミリスチン酸2-オクチルドデシル、ステアリン酸2-ヘキシルデシルなどの直鎖脂肪酸と分枝高級アルコールとのエステル;イソステアリン酸イソプロピルなどの分枝脂肪酸と低級アルコールとのエステル;2-エチルヘキサン酸セチルなどの分枝脂肪酸と直鎖高級アルコールとのエステル;イソステアリン酸2-ヘキシルデシル、イソステアリン酸イソステアリルなどの分枝脂肪酸と分枝アルコールとのエステル;が挙げられる。ここで、液状エステルを構成するための「分枝脂肪酸」とは、炭素数6以上かつモノカルボン酸に該当する分枝飽和脂肪酸を意味し、「直鎖脂肪酸」とは、炭素数6以上かつモノカルボン酸に該当する直鎖飽和脂肪酸を意味し、「分枝高級アルコール」とは、炭素数6以上かつ一価アルコールに該当する分枝飽和アルコールを意味し、「直鎖高級アルコール」とは、炭素数6以上かつ一価アルコールに該当する直鎖飽和アルコールを意味し、「低級アルコール」とは、炭素数5以下かつ一価アルコールに該当する直鎖又は分枝飽和アルコールを意味する。本実施形態の酸化染毛剤に当該液状エステル油を配合する場合、配合量は、染色性向上の観点から、0.05質量%以上2質量%以下が良く、0.1質量%以上1質量%以下が好ましく、0.3質量%以上1質量%以下がより好ましい。
【0028】
上記ポリオキシプロピレンブチルエーテは、公知のポリオキシプロピレンブチルエーテル(以下において、「ポリオキシプロピレン」を「POP」と称することがあり、「P.O.」の前に記載した数値は、POPの平均付加モル数を表す。)から選ばれた一種又は二種以上が良く、例えば、POPブチルエーテル(9P.O.)、POPブチルエーテル(12P.O.)、POPブチルエーテル(14P.O.)、POPブチルエーテル(17P.O.)、POPブチルエーテル(20P.O.)、POPブチルエーテル(24P.O.)、POPブチルエーテル(33P.O.)、POPブチルエーテル(40P.O.)、POPブチルエーテル(52P.O.)、POPブチルエーテル(53P.O.)が挙げられ、POPの平均付加モル数は、例えば8以上53以下である。本実施形態の酸化染毛剤にPOPブチルエーテルを配合する場合、配合量は、染色性向上の観点から、0.05質量%以上2質量%以下が良く、0.1質量%以上1質量%以下が好ましく、0.3質量%以上1質量%以下がより好ましい。
【0029】
本実施形態の酸化染毛剤は、ポリオキシプロピレンステアリルエーテル(POPステアリルエーテル)が配合されたものが良い。POPステアリルエーテルを、炭素数22以下の液状高級アルコール、一価アルコールと脂肪酸の液状エステル油、又はPOPブチルエーテルと併用することで、配合した有機酸及び/又は無機酸による染色性の悪化をより低減できる。この低減効果は、特に、トルエン-2,5-ジアミン及び/又はその塩と、2,4-ジアミノフェノキシエタノール及び/又はその塩とが配合されている場合に大きい。
【0030】
上記POPステアリルエーテルは、公知のPOPステアリルエーテルから選ばれた一種又は二種以上が良く、例えば、POPステアリルエーテル(11P.O.)、POPステアリルエーテル(15P.O.)が挙げられ、POPの平均付加モル数は、例えば8以上20以下である。本実施形態の酸化染毛剤にPOPステアリルエーテルを配合する場合、配合量は、染色性向上の観点から、0.05質量%以上2質量%以下が良く、0.1質量%以上1質量%以下が好ましく、0.3質量%以上1質量%以下がより好ましい。
【0031】
(第1剤)
本実施形態の酸化染毛剤を得るための第1剤は、酸化染料とアルカリ剤が配合されたものである(本実施形態の第1剤として典型的なものは、水の配合量が70質量%以上のものである。)。また、炭素数22以下の液状高級アルコール、一価アルコールと脂肪酸の液状エステル油、及びPOPブチルエーテルから選ばれた一種又は二種以上や、POPステアリルエーテルが適宜配合される他、公知の第1剤用成分を任意成分として本実施形態に係る第1剤に配合しても良い。
【0032】
本実施形態の第1剤における酸化染料の配合量は、例えば0.05質量%以上10質量%以下である。
【0033】
上記第1剤に配合する酸化染料として、酸化反応により単独で発色する公知の染料中間体から選択した一種又は二種以上を採用する。当該第1剤には、トルエン-2,5-ジアミン若しくはその塩、又は、パラアミノフェノール若しくはその塩が配合され、これら染料中間体の一種又は二種以上を配合しても良い。トルエン-2,5-ジアミンの塩としては、例えば塩酸トルエン-2,5-ジアミン、硫酸トルエン-2,5-ジアミンが挙げられ、パラアミノフェノールの塩としては、例えば硫酸パラアミノフェノールが挙げられる。本実施形態の第1剤にトルエン-2,5-ジアミン及び/又はその塩を配合する場合、その総配合量は、例えば0.01質量%以上2質量%であり、本実施形態の第1剤にパラアミノフェノール及び/又はその塩を配合する場合、その総配合量は、例えば0.01質量%以上2質量%である。
【0034】
本実施形態の第1剤には、上記以外の染料中間体を配合しても良い。この染料中間体としては、例えば、塩酸ニトロパラフェニレンジアミン、ニトロパラフェニレンジアミン、パラフェニレンジアミン等のフェニレンジアミン誘導体;塩酸2,4-ジアミノフェノール、硫酸オルトアミノフェノール、オルトアミノフェノール等のフェノール誘導体;等が挙げられる。
【0035】
また、上記第1剤に配合する酸化染料として、染料中間体により酸化されて色調を呈する公知のカップラーから選択した一種又は二種以上を採用する。当該第1剤には、2,4-ジアミノフェノキシエタノール及びその塩から選ばれた一種又は二種以上が配合される。2,4-ジアミノフェノキシエタノールの塩としては、例えば塩酸2,4-ジアミノフェノキシエタノールが挙げられる。本実施形態の第1剤に2,4-ジアミノフェノキシエタノール及び/又はその塩を配合する場合、その総配合量は、例えば0.01質量%以上2質量%である。
【0036】
本実施形態の第1剤には、上記以外のカップラーを配合しても良い。このカップラーとしては、例えば、塩酸メタフェニレンジアミン、メタフェニレンジアミン等のフェニレンジアミン誘導体;硫酸5-アミノオルトクレゾール、5-アミノオルトクレゾール、メタアミノフェノール等のアミノフェノール誘導体;レゾルシン;α-ナフトール等が挙げられる。
【0037】
上記第1剤に配合するアルカリ剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの金属水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどの金属炭酸塩;リン酸ナトリウムなどの金属リン酸塩;アンモニア水;炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム、硫酸アンモニウムなどのアンモニウム塩;モノエタノールアミン、トリエタノールアミン、イソプロパノールアミンなどのアルカノールアミン;などが挙げられる。
【0038】
炭素数22以下の液状高級アルコール、一価アルコールと脂肪酸の液状エステル油、及びPOPブチルエーテルから選ばれた一種又は二種以上を本実施形態の第1剤に配合する場合、当該第1剤への総配合量は、染色性を向上させる観点から、0.1質量%以上4質量%以下が良く、0.2質量%以上2質量%以下が好ましく、0.6質量%以上2質量%以下がより好ましい。
【0039】
POPステアリルエーテルを本実施形態の第1剤に配合する場合、当該第1剤への配合量は、染色性を向上させる観点から、0.1質量%以上4質量%以下が良く、0.2質量%以上2質量%以下が好ましく、0.6質量%以上2質量%以下がより好ましい。
【0040】
本実施形態の第1剤に任意配合する公知の第1剤用成分としては、例えば、高級アルコール、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、多価アルコール、炭化水素、油脂、抗炎症剤、酸化防止剤、キレート剤である。これら任意成分を配合する場合、配合量は適宜設定されるべきものであるが、例えば、高級アルコールが2質量%以上10質量%以下、ノニオン界面活性剤が0.5質量%以上5質量%以下、アニオン界面活性剤が0.5質量%以上5質量%以下、カチオン界面活性剤が0.5質量%以上3質量%以下、多価アルコールが2質量%以上10質量%以下である。
【0041】
本実施形態の第1剤の25℃でのpHは、8.5以上12.5以下が良く、9.0以上11.0以下が好ましく、9.5以上10.5以下がより好ましい。pHが8.5以上であると、毛髪内部への酸化染料の浸透促進に好適であり、pHが12.5以下であると、皮膚への刺激抑制に好適である。なお、第1剤のpHは、上記アルカリ剤の配合により調整可能である。
【0042】
本実施形態の第1剤のアルカリ度は、8.0ml/g以上20.0ml/g以下が良く、9.0ml/g以上18.0ml/g以下が好ましく、10.0ml/g以上16.0ml/g以下がより好ましく、11.0ml/g以上16.0ml/g以下が更に好ましい。第1剤のアルカリ度が8.0ml/g以上であると、染色性向上に好適であり、20.0ml/g以下であると、毛髪に加わる損傷の低減に好適である。なお、第1剤のアルカリ度は、水100ml、第1剤1.0g、及びエタノール10mlの溶液に、pHメーターの値が4.8になるまで0.1N塩酸水溶液を滴下し、このときに要した当該塩酸水溶液の容量(第1剤1.0gに対して要した0.1N塩酸水溶液の容量)である。
【0043】
また、本実施形態に係る第1剤の剤型は、特に限定されず、例えば、液状、クリーム状、ワックス状、ゲル状等のO/Wエマルションである。クリーム状の剤型である場合の第1剤の粘度は、例えば、B型粘度計を使用して25℃、12rpmで計測した60秒後の値が30000mPa・s以上60000mPa・s以下である。
【0044】
(第2剤)
本実施形態の酸化染毛剤を得るための第2剤は、酸化剤と、有機酸及び/又は無機酸が配合されたものである(本実施形態の第2剤として典型的なものは、水の配合量が70質量%以上のものである。)。また、炭素数22以下の液状高級アルコール、一価アルコールと脂肪酸の液状エステル油、及びPOPブチルエーテルから選ばれた一種又は二種以上や、POPステアリルエーテルが適宜配合される他、公知の第2剤用成分を任意成分として本実施形態に係る第2剤に配合しても良い。
【0045】
上記第2剤に配合する酸化剤としては、例えば、過酸化水素、臭素酸塩、過炭酸塩、過ホウ酸塩が挙げられる。本実施形態の第2剤における酸化剤の配合量は、特に限定されないが、1質量%以上8質量%以下が良く、2質量%以上6質量%以下が好ましく、2質量%以上5質量%以下がより好ましく、2質量%以上4質量%以下が更に好ましい。酸化剤の配合量が2質量%以上であると染色性向上に好適であり、8質量%以下であると、毛髪に加わる損傷の低減に好適である。
【0046】
本実施形態の第2剤には、毛髪に加わる損傷の低減のために、有機酸、無機酸、又は、有機酸及び無機酸が配合される。第2剤に配合される有機酸及び無機酸の総配合量は、0.2質量%以上5.0質量%以下が良く、0.5質量%以上3.0質量%以下が好ましく、0.7質量%以上2.0質量%以下がより好ましく、0.7質量%以上1.5質量%以下が更に好ましい。0.2質量%以上の配合量であると、毛髪に加わる損傷の低減に好適であり、5.0質量%以下であると染色性の向上に好適である。
【0047】
上記無機酸は、染色性及び第2剤における過酸化水素の安定性の観点から好ましく、例えば、リン酸、硫酸、塩酸、ホウ酸等が挙げられ、毛髪全体に対する均一な染色の観点から、リン酸が好ましい。一種又は二種以上の無機酸を配合すると良く、本実施形態の第2剤における無機酸の配合量は、0.2質量%以上5.0質量%以下が良く、0.5質量%以上3.0質量%以下が好ましく、0.7質量%以上2.0質量%以下がより好ましく、0.7質量%以上1.5質量%以下が更に好ましい。0.2質量%以上の配合量であると、毛髪に加わる損傷の低減に好適であり、5.0質量%以下であると染色性の向上に好適である。
【0048】
上記有機酸としては、例えば、クエン酸、レブリン酸、グリコール酸、乳酸、グリセリン酸、グルコン酸、リンゴ酸、酒石酸、コハク酸、マレイン酸等が挙げられる。
【0049】
炭素数22以下の液状高級アルコール、一価アルコールと脂肪酸の液状エステル油、及びPOPブチルエーテルから選ばれた一種又は二種以上を本実施形態の第2剤に配合する場合、当該第2剤への総配合量は、染色性を向上させる観点から、0.1質量%以上4質量%以下が良く、0.2質量%以上2質量%以下が好ましく、0.6質量%以上2質量%以下がより好ましい。
【0050】
POPステアリルエーテルを本実施形態の第2剤に配合する場合、当該第2剤への配合量は、染色性を向上させる観点から、0.1質量%以上4質量%以下が良く、0.2質量%以上2質量%以下が好ましく、0.6質量%以上2質量%以下がより好ましい。
【0051】
本実施形態の第2剤に任意配合する公知の第2剤用成分としては、高級アルコール、ノニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、多価アルコール、エステル油、酸化防止剤、キレート剤などである。これら任意成分を配合する場合、配合量は適宜設定されるべきものであるが、例えば、高級アルコールが1質量%以上6質量%以下、ノニオン界面活性剤が0.5質量%以上5質量%以下である。
【0052】
本実施形態の第2剤の25℃でのpHは、0.5以上3.5以下が良く、1.0以上3.0以下が好ましく、1.0以上2.5以下がより好ましく、1.0以上2.0以下が更に好ましい。pHが0.5以上であると、過酸化水素が配合されている場合の当該過酸化水素の安定性に好適であり、pHが3.5以下であると、毛髪に加わる損傷の低減に好適である。なお、第2剤のpHは、上記有機酸及び/又は無機酸の配合により調整可能である。
【0053】
第2剤の剤型は、特に限定されず、例えば、液状、クリーム状、ゲル状が挙げられる。第2剤の粘度は、例えば、B型粘度計を使用して25℃、12rpmで計測した60秒後の値が1000mPa・s以上10000mPa・s以下である。
【0054】
(染毛処理方法)
本実施形態の染毛処理方法は、公知の染毛処理方法と同様、本実施形態の酸化染毛剤を毛髪に塗布後に例えば5分以上30分以下放置し、当該酸化染毛剤の洗浄除去を経て行われるものである。この染毛処理対象となる毛髪は、化学的損傷を受けた毛髪(酸化染毛剤による染毛処理後の毛髪、縮毛矯正やウェーブ形成などのパーマ処理後の毛髪など)、ブラッシングなどで物理的損傷を受けた毛髪であっても良い。
【実施例0055】
以下、実施例に基づき本発明を詳述するが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるものではない。
【0056】
(第1剤)
クリーム状の水中油型乳化物である実施例1a~1g、比較例1a~1c、参考例1、実施例2a~2g、比較例2a~2b、参考例2の第1剤を、水と他の成分を配合して製造した。当該他の成分は、硫酸トルエン-2,5-ジアミン、パラアミノフェノール、塩酸2,4-ジアミノフェノキシエタノール、アスコルビン酸、無水亜硫酸ナトリウムエチレンジアミンヒドロキシエチル三酢酸三ナトリウム二水塩、リン酸ジセチル、セトステアリルアルコール、ポリオキシエチレンセチルエーテルリン酸(10E.O.)、ポリオキシエチレンステアリルエーテル(21E.O.)、プロピレングリコール、アンモニア25質量%水溶液、及び炭酸水素アンモニウムから選定し、当該選定した成分とその配合量は、下記表1~2に記載の通りとした。
【0057】
(第2剤)
水中油型乳化物である実施例1a~1g、比較例1a~1c、参考例1、実施例2a~2g、比較例2a~2b、参考例2の第2剤を、水と他の成分を配合して製造した。当該他の成分は、セトステアリルアルコール、ポリオキシエチレンセチルエーテル(30E.O.)、ヒドロキシエタンジホスホン酸、過酸化水素35質量%水溶液、リン酸、2-ヘキシルデカノール、2-オクチルドデカノール、2-デシルテトラデカノール、パルミチン酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、POPブチルエーテル(12P.O.)、POPブチルエーテル(52P.O.)、及びPOPステアリルエーテル(15P.O.)から選定し、当該選定した成分とその配合量は、下記表1~2に記載の通りとした。
【0058】
(酸化染毛剤)
実施例1aの第1剤と第2剤とを、第1剤:第2剤=1:1の質量比で混合し、実施例1aの酸化染毛剤を製造した。また、これと同様にして、実施例1b~1g、比較例1a~1c、参考例1、実施例2a~2g、比較例2a~2b、参考例2の酸化染毛剤を製造した。
【0059】
(染毛処理)
製造した実施例、比較例、参考例の各酸化染毛剤2gを、市販の白色毛束(ビューラックス社製ヤク毛束「BM-YK-A」、質量1g、長さ10cm程度)に塗布し、室温で20分間放置してから、市販のシャンプー(ミルボン社製「ディーセス ノイ ドゥーエ ウィローリュクス シャンプー」)を使用して洗浄、温風乾燥させることで、毛束の染毛処理を行った。
【0060】
(染色性)
染毛処理を行った毛束について、色差計(コニカミノルタ社製「分光測色計 CM-5」)により測定した。実施例1a~1g及び比較例1a~1cでは、無機酸であるリン酸を配合しなかった参考例1の測定値との差(ΔE*ab)を算出し、実施例2a~2g及び比較例2a~2bでは、無機酸であるリン酸を配合しなかった参考例2との測定値の差(ΔE*ab)を算出した。ΔE*abの値が小さいほど、第2剤への酸配合による染色性悪化を低減できたと評価される。
【0061】
下記表1~2に、水と配合した成分、配合量を、酸化染毛剤のpH、第1剤のアルカリ度、酸化染毛剤のアルカリ度、第1剤のアルカリ度と酸化染毛剤のアルカリ度との差、及びΔE*abを示す。
【0062】
表1において、実施例1a~1gと比較例1a~1cとの対比により、炭素数22以下の液状高級アルコール、一価アルコールと脂肪酸の液状エステル油、又はPOPブチルエーテルを配合すると、ΔE*abが小さくなる傾向であり、第2剤への無機酸(リン酸)の配合による染色性の悪化を低減できたことを確認できる。また、比較例1aのΔE*ab「2.89」との対比に関して、POPステアリルエーテルを配合した比較例1cが2.88で同等である一方、POPステアリルエーテルと共に炭素数22以下の液状高級アルコール(2-オクチルドデカノール)を配合した実施例1gのΔE*ab「1.40」は、実施例1bのΔE*ab「1.84」との対比により、その併用による相乗効果が認められたことを確認できる。
【0063】
【0064】
表2において、表1と同様、炭素数22以下の液状高級アルコール、一価アルコールと脂肪酸の液状エステル油、又はポリオキシプロピレンブチルエーテルを配合すると、ΔE*abが小さくなる傾向であり、第2剤への無機酸(リン酸)の配合による染色性悪化を低減できたことを確認できる。また、POPステアリルエーテルと炭素数22以下の液状高級アルコール(2-オクチルドデカノール)の併用による相乗効果が認められたことを確認できる。
【0065】